ラス・バラード(Vo)というと、ミュージシャンとしてよりも、RAINBOWがカヴァーした“SINCE YOU BEEN GONE”や“I SURRENDER”等のヒット曲の作者(ソングライター)としての印象が強いのですが、実際は70年代半ばからソロ・キャリアを歩み始めた実績の持ち主。大きなヒットにこそ恵まれなかったものの優れたアルバムを残しており、本作は彼が’80年にリリースした4枚目のアルバムとなります。 自身の楽曲がHRシーンで好意的に受け入れられたことや、英国でのNWOBHMの盛り上がりに触発されたのか、「ラス・バラードご乱心?」と疑うぐらいB級メタル然としたアートワークと、Gリフ主導で走り始める曲調にグッと力の入ったラスのパワフルなシャウトが乗っかったOPナンバー①が物語る通り、ポップ寄りだった前3作に比べ、今回は(メロディのキャッチネスはしっかりと担保しつつ)大幅にハードネスとバンド・アンサンブルを強化。無論、キャリアのある御仁ゆえゴリゴリにヘヴィ・メタリックなサウンドというわけじゃありませんが、レゲエ調のヴァースから転調してシリアスなサビメロに雪崩込む③や、後にURIAH HEEPがカヴァーすることとなる④、重厚なムード漂わす⑥等は、HR/HMリスナーが聴いても素直にカッコ良いと思える仕上がり。その最たる例が、ブルース・ディッキンソン擁するSAMSONが3rd『魔界戦士』のOPナンバーに採用したシャープな疾走ナンバー⑧(その時の邦題は“地獄の天使”でしたっけね)だったんじゃないかと。 捨て曲なしの名盤であり、手持ちのラス・バラードのカタログの中では最も聴き返す頻度の高い1枚。紙ジャケ再発されていますので、入門盤としてもお薦めですよ。
RIOTファンならバンド名に聞き覚えがあるかもしれない、'82年にテキサス州サンアントニオで結成され、ロサンゼルスのSLAYERとの混同を避けるために、出身地名を付け足してS.A. SLAYERを名乗ったスピード/スラッシュ・メタル・バンド。 マーク・リアリとNARITA~RIOTで行動を共にしたドン・ヴァン・スタヴァン(B)、名ドラマー、ボビー・ジャーゾンベクが在籍していたJUGGERNAUT等での活動で知られるボブ・キャレトン(G)、後にWATCHTOWERに加入するロン・ジャーゾンベク(G)、それに現在はMACHINE HEADに籍を置くデイヴ・マクレイン(Ds)と、構成面子は腕利き揃いで、'83年にデビューEP『PREPARE TO DIE』を、'84年に1stフル『GO FOR THE THROAT』をそれぞれ発表。但し、所属レコード会社にリリースを拒否られた『GO~』が実際に陽の目を見たのは、バンド解散後の'88年になってからだった。
'83年制作の5曲入りデビューEP。 後の1stフル『GO FOR THE THROAT』同様、『BRITISH STEEL』発表時のJUDAS PRIESTをお手本に、ダークでアグレッシブな味付けを加えたメタルを演っていますが、時節柄まだスラッシュ・メタル色はそれほどでもなく、またロン・ジャーゾンベク(G)加入前だからなのか、テクニカル・メタルっぽさも薄め。むしろGリフ主体でストレートに押してくる曲調は、NWOBHMからの影響が色濃く刻まれています。 それと、本作を聴いていて随所で感じるのがRIOTっぽさ。後にマーク・リアリと行動を共にするメンバーを擁する等、元々RIOTと関係の深いバンドってこともあるのでしょうが、例えば独特のエコーを伴ったVoが、疾走感溢れるGリフとリズムに乗っかった②なんて、もろ『FIRE DOWN UNDER』を発表した頃のRIOTを彷彿。 一方で、ゴリゴリ鳴りまくるドン・ヴァン・スタヴァンのBが、スピーディな曲調を牽引する④⑤といった、このバンドならではの個性を宿した楽曲のカッコ良さも相当なものですし、EPと言えども、結構な満足感を覚えさせてくれる1枚に仕上がっています。
この曲を初めて聴いたのは、 S.O.D.がSTORMTROOPERS OF DEATH名義で参加したオムニバス・アルバム「STARS ON THRASH」でだったか・・・。 とにかく一発で気に入り、後に「SPEAK ENGLISH OR DIE」も買ったが、やはりこの曲のベストの座は揺ぎ無かった。 笑っちゃうぐらい速く、スカッと短く(2分ちょい)、でもリフは驚異的なまでのカッコ良さを誇る。 思わず一緒に叫びたくなるキャッチー(?)なサビも良い。 反復リフで徐々にテンションを上げていく、ミッドテンポの後半も最高。 つまり文句なしの超名曲って事ですな。
現在では、引く手数多の敏腕プロデューサーとして名を馳せるアンディ・スニープ(G)や、 SKYCLADのマーティン・ウォルキーア(Vo)が在籍していた事で知られる、英国はノッティンガム出身の スラッシュ・メタル・バンド、'89年発表の2ndアルバム。(ちなみに、本作からツインGを擁する5人編成となった) ストレートなスラッシュ・サウンドを聴かせたデビュー作『HISTORY OF A TIME TO COME』に比べ、 今回はマーティンの「色」が強く反映された、ファンタジックな雰囲気漂うコンセプト・アルバムという事で、 スラッシーな疾走感はそのままに、リフはより重厚に、Gは艶を増し、アコギ、ストリングス、女性Voの導入等、 細部へのアレンジにもこれまで以上に気の払われた、起伏に富んだドラマチックな楽曲がズラリと並ぶ。 前作では、割とありがちなシャウト・スタイルだったマーティンのVoにも凄みが増し、 ある種呪術的とも言えるドスの効いた歌唱でアルバムの幻想的な雰囲気を盛り上げる。 個人的には、イントロ①に続く②や、④のようなシャープに疾走するリズムに、劇的なツインGが乗っかる楽曲が好みなれど、 マーティンがノーマルVoで歌い上げ、そこにバイオリンが絡む③も、後のSKYCLADに繋がる重要な存在として見逃せない。 全体的に見ると、アルバムのハイライトとなるべき大作曲にイマイチ冴えが見られないのが残念だが (リフが次々に展開していく⑤とかはユニークな仕上がりなんだけど)、本作をSABBATの最高傑作とする意見に異論はない。 尚、最近長年のファンの願いが叶って、アンディ・スニープによりリマスターが施された再発盤がリリースされた。
SKYCLADテイストも感じられる小曲“ADVENT OF INSANITY"から、 組曲形式でスピーディなスラッシュ・チューン “DO DARK HORSES DREAM OF NIGHTMARES?"へと繋がっていくのだが、 “DO DARK~"の方も、荒々しい曲調の中でアコギを閃かせてみたり、 劇的なGソロを炸裂させてみたりと、一筋縄ではいかない、 個性的な内容に仕上がっている。
初の女性Vo、久保田陽子(FASTDRAW~PROVIDENCE)の加入のみならず、コンポーザーとしての才も発揮するサイドGの田中康治を迎え、SABER TIGER史上初めてとなるツインG編成への移行。更には十数年の活動歴において初のフル・アルバムのレコーディング・・・と、初物尽くしで'92年に発表された1stフル・アルバム。 赤尾和重の系譜に連なる、男性シンガー顔負けの力強さでメタル魂を鼓舞してくれる久保田のハスキー・ボイス、劇的な構築美を湛えてスリリングに絡み合うツインG、それにリフ/リズム・チェンジや変拍子の多用、ドラマティックな曲展開といったプログレ・メタル的要素がふんだんにフィーチュアされた楽曲の数々は、80年代のストレートなジャパニーズHM路線とは大きく異なり、また一方で、次作以降に確立されるSABER TIGER流HMサウンドともやや味わいを異する、本作でしか聴くことの出来ない過渡期的なユニークさを秘めており、特にOPナンバー“STORM IN THE SAND”は久保田時代を代表する名曲の一つじゃないかと。 その“STORM~”と、ラストに置かれたツインGによるドラマティックなイントロの時点でガッシと掴まれてしまう逸品“MISERY”のインパクトがデカ過ぎるせいで、中盤の楽曲の存在が完全に霞んでしまっているきらいはあるものの、じっくり聴いてみれば個々の楽曲の完成度も決して低くはない(特に本編前半)。満を持して作り上げられただけの事はあるデビュー作だ
限りなく木下昭仁(G)のソロ作に近い、SABER TIGER、4枚目のフル・アルバム。 元KEELのロン・キールがフロントマンとして迎えられた事でも話題となった本作だが、これまで久保田陽子の艶とパワーを併せ持った歌声に慣れ親しんでいた身にしてみりゃ、その後任Voがワイルドで野太いロン・キールってのはギャップがデカ過ぎた。 実際、テクニックより勢いと個性勝負!な彼氏の歌声と、綿密に構築されたSABER TIGERサウンドの相性はあまり良好とは言えず、無理めな高音域を苦しげに歌っているのを耳にすると、そもそも木下御大はもっと広いレンジを備えたシンガーを想定して曲作りを進めていたんじゃねぇかなぁ?と思ったりも。 それでもそこはベテラン、合わないなりに起伏の激しいメロディを何とか歌いこなしているし、他方、余裕綽々でボトムを支える柴田直人&本間大嗣のヘヴィで躍動感溢れる演奏もアルバムの質向上に大きく貢献。 そして何より本作は楽曲が素晴しい。ここに収められたマテリアルを聴く限り、交通事故に端を発するSABER TIGER活動休止騒動が、木下の創作意欲にも、Gプレイの冴えにも何ら影を落していない事がハッキリと分かる。特に“RECKLESS AND YOUNG”と“GIVE ME ALL YOUR LOVE TONIGHT”は本作を代表する名曲!それと“HARD WIRE”も、後の下山が歌い直した『狂獣伝説』よりこっちの軽快なバージョンの方が好きだな。