似たような名前のバンドがチラホラいますが、こちらは英国ブリストル出身の4人組。UKシーンにおけるクラスト/パンクからスラッシュ・メタル方面へのクロスオーバー現象を語る上で欠かすことの出来ない重要バンドであり、NAPALM DEATH、BOLT THROWER、CEREBRAL FIXといったバンドに影響を与えたことでも知られるSACRILEGEが、'87年に発表した2ndアルバム。 MUSIC FOR NATIONS傘下のスラッシュ・メタル専門レーベルUNDER ONE FLAGと契約を交わしたことが関係あるのかどうか、ともかくDISCHARGE辺りからの影響を伺わせるリフ&リズムのササクレ感はそのままに、よりメロディックに歌うようになった金髪女性シンガー、リンダ“タム”トンプソンのVoといい、一層の拡充が図られたインスト・セクションといい、10分越えの大作ナンバーも収録する等ブリティッシュHM然とした薄暗いドラマ性を宿す曲展開といい、これまで以上にサウンドのスラッシュ~正統派HM度数がUP。個人的には聴いていてZNOWHITEのことを思い出したりしましたよ。 無論それがマイナスに働くなんてことは全然なく、寧ろこっちにはバッチ来い。インストの前半と歌入りの後半の二部構成からなるOPナンバー①、アコギと緩急を活かしてドラマティックな盛り上がりを演出する③、次作ドゥーム・メタル路線への萌芽が既に感じられる⑦、本編ラストをオラつきながら走り抜ける⑧といった楽曲のカッコ良さは、音質の悪さを差し引いてもくすまぬ輝きを放っています。 スラッシャーにも、ブリティッシュHM好きにもお薦めできる歯応えのある力作。
テクニカル・デス・メタルの最重要バンド、PESTILENCEの結成メンバーの1人だった ランディ・メインハード(G)がオランダにて結成したテクニカル・スラッシュ・メタル・バンド。 (国内盤のライナーに「西ドイツ出身」と書かれていた為、長らくドイツのバンドだと思い込んでました) デモ『THE DIE IS CAST』を制作の後、NO REMORSE RECORDSと契約を交わし、 '90年に1st『TRUTH IS - WHAT IS』を発表。(これは国内盤も出た) アルバムを全くサポートしてくれないレーベルの姿勢に不満を感じたバンドはそこを離れ、 新たに1 MF RECORDSと契約。'91年に2nd『RECESSES FOR THE DEPRAVED』を、 '93年には3rd『TRAGIC INTENSE』を発表。ただ、結局レコード会社からのサポート不足が 解消される事はなく、バンドは'94年に解散している。 余談ながら、NO REMORSE RECORDSはそのすぐ後に倒産。同レーベル絡みの作品は 全く再発が掛からない状態が今も続く。GRINDERのアルバムとか再発して欲しいんだけどなぁ。
'18年に惜しまれながらも解散ツアーを行い、40年以上に及ぶキャリアに堂々終止符を打ったカナダ出身プログレ・ハード・バンドの古豪SAGA。本作は彼らが'15年にドイツのハンブルグで行ったショウの様子をCD2枚組に収録、翌年発表した実況録音盤です。 代表曲“ON THE LOOSE”を筆頭にセットリストは初期の名曲を中心に編まれているとはいえ、プログレ系バンドのライブということで、観客は熱心に演奏に聴き入って曲終わりに歓声を上げる程度でライブは比較的淡々と進行していく…なんて光景を想像していたのですが(偏見)、ところがどっこい。本作で繰り広げられているのは、観客によるコーラスの合唱や、バンドとの息の合った掛け合い等、ステージ上と客席のエネルギーの交換がしっかりとフィーチュアされた熱気溢れるパフォーマンス。これはマイケル・サドラー(Vo)によるドイツ語のMCや、観客とのアットホームなやり取りを始め、昔からSAGAがドイツのファンを愛し(何せ解散公演の地としてもドイツを選んだぐらいで)、ドイツのファンもまたSAGAを愛したことの証であると共に、彼らが過去にクリエイトしてきた楽曲の数々が、いかにキャッチーな魅力を有しているかの証明ではないかと。張り良し伸び良しのマイケル・サドラーの歌声を始め、経年劣化をまるで感じさせないメンバーの熱演に煽られる、名曲“DON’T BE LATE”や“ICE DREAM”、スリリングな“CAREFUL WHERE YOU STEP”辺りの盛り上がりには相当にグッとくるものが有りますよ。 日本では過小評価に泣いたSAGAですが、彼らの実力と人気の一端を知るのにお薦めの1枚。月並みな台詞ですが「入門盤にいかがでしょうか」
3代目Key奏者としてジム・ギルモアが加入。これにてマイケル・サドラー(Vo)、ジム(B)とイアン(G)のクリットン兄弟にスティーヴ・二ーガス(Ds)という、いわゆる黄金期のメンバーが揃ったSAGAが'80年に発表した3rdアルバム。 場面によってトリプル・キーボード編成にまで変化する、このバンド独自のスタイルを更に発展させ、時に華やかに、時にドラマティックに楽曲を彩る分厚いKeyサウンドの存在が益々強調された本作は、例えば“MOUSE IN THE MAZE”のようなハードな名曲こそ見当たらないものの、まろやかな味わいを増し、丹念なアレンジを施された収録楽曲はいずれもキャッチーなメロディ、ポップなノリの良さ、そしてドラマティックな曲展開とが無理なく同居。SAGAならではのプログレ・ハード・サウンドは、本作において遂に完成の域へと至ったように思う。 アメリカ・デビュー作ともなった次作『WORLD APART』以降は、ニューウェーブ風味やAOR/産業ロック色が増量され一気にサウンドが垢抜けて行くが、本作辺りまではメロディにヨーロッパ的な暗さや湿り気が横溢。取り分け、勇ましく本編の幕開けを飾る躍動感に満ちた①、優雅な曲調に思わずステップを踏みたくなる③、宇宙的で壮大なイントロがたまらなくドラマティックな⑤、よく歌いよく泣くGに胸を締め付けられる⑧といった名曲の素晴しさは、アメリカとヨーロッパの文化が入り混じるカナダ出身のSAGAというバンドならでは。 前作『IMAGES AT TWILIGHT』と並んで、個人的にはSAGA入門編としてお薦めしたい捨て曲なしの名作。
ドイツやアメリカのHMバンド・・・ではなくて、韓国は仁川にて結成された5人組。 未聴の1st『THE SEVEN YEARS OF DROUGHT』('93年)ではネオクラシカル路線のHRを演っていたそうですが、続く2nd『SELF EGO』('97年)ではDREAM THEATER影響下のプログレ・メタル・サウンドを披露。これが輸入盤市場で話題となり、後にテイチクから国内盤もリリースされ日本デビューを果たしている。 尚、その際の雑誌インタビューの受け答えにおける腰の低い好青年っぷりは、スウェーデンのTAD MOROSEに匹敵するものがあったとかなかったとか・・・。
'79年に活動を開始し、当初はPOWER FAITHと名乗っていた模様。 SAINTと改名の後、'84年にデビューEP『WARRIORS OF THE SON』、'86年に1stフル『TIME'S END』、そして'88年には代表作とされる2nd『TOO LATE FOR LIVING』を発表し、いずれもクリスチャン・ミュージック・シーンを中心に好評を博するも、間もなく解散。 自分が聴いたことがあるのはこの時期の作品だけなのですが、実際のところバンドは、21世紀を目前に再結成を遂げてからの方が、より積極的に活動している印象あり。 なお、バンド名や歌詞カードに聖書の一節を引用したりすることからも分かる通り、クリスチャン・メタル・バンドである。
名曲“LEGIONS OF THE DEAD”を収録する自主制作EP『WARRIORS OF THE SON』で'84年にデビューを飾った4人組が、'86年にPURE METAL RECORDSから発表した1stフル・アルバム。 ロブ・ハルフォードの生霊を憑依させたかのようなシンガーのイタコ真っ青な歌唱を筆頭に、JUDAS PRIESTに瓜二つな音楽性がマニアの間で評判となった彼ら・・・と書くと、単なる物真似バンドと思われるかもしれませんが、逆に「メタル・ゴッドと聴き紛う程のクオリティを有していた」とも言えるわけで。 もっさりとした音質に、まとわりつく垢抜けないマイナー・メタル風味と、アメリカのバンドらしいキャッチーさが加わった2nd『TOO LATE FOR LIVING』の名盤っぷりにはまだまだ及ばないまでも、デビューEPに比べると肩の力が抜け、ロブ・ハルフォー度を増したシンガーの歌唱から、前作より練られたフレーズを閃かせるようになったGまで、バンドとしてのレベルは格段にUP。中期JUDAS PRIESTばりの光沢を放つ③⑤⑧といった正統派HMナンバーが提示するカッコ良さは、(ゴールドクロス級とまでは行かずとも)とりあえずブロンズセイント並の破壊力は感じさせてくれる逸品です。 車田まさみ風に言うところの、「彼らはようやく登り始めたばかりだからな。この果てしなく遠いJUDAS PRIEST坂をよ・・・」と、SAINTの今後に大いに期待が持てる1枚。(事実、次作で大当たりを出してくれる)
後にCHURCH OF MISERYを結成する、三上タツ(B)が嘗て在籍していた事で知られる、東京出身の4人組プログレ・パワーメタル・バンドが、 レコード・デビュー以前の'88年~'93年に発表した3本のデモ・テープ『DEMO 2』『BACK TO THE FRONT』『PROMO DEMO』に リマスターを施しCD化した、後追いファン(俺です)には非常に有り難い初期音源集。 荒々しくもしっかりと「歌う」Vo、時にリード楽器の役割も果たすメロディアスなB、手数の多いダイナミックなリズムを 叩き出すDs、そして、エモーショナルなメロディを紡ぎ出すGとが、テクニカル且つスリリングに絡み合って生み出される、 カテゴライズ無用の個性的なサウンドは、これらデモ音源の時点で既に完成済み。 個人的に、特に興味深く聴かせて貰ったのが、初代Vo.山田哲也時代のナンバー⑧⑨⑩で、IRON MAIDENからの濃厚な影響と、 よりダークでスラッシーな攻撃性が宿った楽曲の数々を聴くにつけ、なぜ彼らがこのサイトにおいて「スラッシュ・メタル」の カテゴリーに登録されているのか、ようやっと理解できた次第。いやぁ、カッコイイ。 一部楽曲は、'91年にHOWLING BULL RECORDSから1000枚限定でリリースされたデビューEP『LIFE WITH NO HOPE』や、 1stフル『REASON FOR EXISTENCE』('93年)と重複しているものの、両作とも現在では廃盤のため入手は困難だし、 何より本作収録バージョンの方が、より生々しくハードなアレンジが施されていて、単純にカッコイイ仕上がりだしね。 SALEM未体験者には、入門編としての機能も果たす、かなり重宝な1枚。出来れば、1stとEPも再発して欲しいなぁ。
‘96年にVAN HALENを脱退したサミー・ヘイガーが、'02年にSAMMY HAGER AND THE WABORITAS名義で発表した作品。 VAN HALENの偉大さは知っていても、代表作を2、3枚持っている程度でとても熱心なファンとは言い難い身ゆえ、サミー・ヘイガーのソロ・アルバムなんて更に興味の対象外になってしまうのは致し方なし。申し訳ない。しかしながら本作は、そうした一歩引いたリスナーの首根っこをフン捕まえてグイッと引き寄せるだけの魅力が備わっていました。 気の合う仲間達とリラックスして作り上げた感のある、伸び伸び開放的な作風と、サミー曰く「レコーディングから完成まであっという間だった」という短期集中型の制作過程が見事にマッチ。一応、映画『ロック・スター』挿入歌“STAND UP”がリーダー・トラックということになるのかもしれませんが、あの映画に全く好感を持ってないこっちにとっちゃ、それよりも2曲目以降こそが本作の本領ですよ。一緒に歌わずにはいられないリフレインを持つ②、爽やかな哀愁薫るメロハー③④、LED ZEPPELINのカヴァー・メドレー⑤、アクセルを踏み込んでブッ飛ばすハード・ドライヴィンな⑨といった楽曲の数々を、真っ赤に燃る炎の如き歌声がエネルギッシュに盛り立てる本編は、問答無用で聴き手を高揚させる爽快感に満ち溢れています。流石はVOICE OF AMERICA。ラストを締め括るドラマティックなバラード⑩にも涙がちょちょ切れるかと思いましたね。 どうせ能天気なロックンロール演ってんじゃないの?というサミー・ヘイガーに対する偏見を綺麗さっぱり払拭してくれる1枚。
'79年にトロントにて結成された、リック(Vo、G)とマーク(Ds)のサンターズ兄弟と、 リック・ラザロフ(B)の3人編成からなる、カナディアン・ハード・ロック・バンドで、 '81年に1st『SHOT DOWN IN FLAMES』、'82年に2nd『RACING TIME』、'84年に3rd『GUITER ALLEY』を発表、 同郷の先輩バンドTRIUMPHにも通じる、メロディアスなハード・ロック・サウンドで好評を博す。 (制作されたままお蔵入りとなった4th『TOP SECRECY』もある。ボックスセットで聴く事が可能) そのTRIUMPHとの親交は深く、3rdアルバムのプロデュースを務めたのはリック・エメットだし、 リック・サンターズが『THE SPORT OF KINGS』『SURVEILLANCE』に楽曲提供をしたり、 TRIUMPHのツアーにサイドGとして同行し、エメット脱退後は、彼の後任として TRIUMPH加入を打診されたりしていたのは、良く知られた話。