90年代のジャーマン・メタルの盛り上がりを(主に底辺方面から)支えマニアに愛された、リッキー・ヴァン・ヘルデン大将率いるATTACKが、当時誰も欲しがらなかった・・じゃなくて入手困難だった初期作、並びに近作の楽曲をリミックス&リ・レコーディング、更にそこに新曲も加えて発表したベスト盤がこちら。 IRON MAIDENとHELLOWEENの中間ぐらいに位置する正統派HMサウンドを志向しながらも、リッキー自身のへなちょこボーカルと、調子っ外れなコーラス、不安定な演奏にしょっぱいプロダクションが足を引っ張って、彼らについて語る際には常に「ATTACK(笑)」と、名前の後に(笑)マークが付いて回っていたような気がするのですが、どっこい、キラリと光る大将の曲作りの才は決してバカにしたもんじゃありませんでした。 取り分け“WONDERLAND”と“DEATHRIDER”(共に『DESTINIES OF WAR』収録)のカッコ良さは出色で、特に10分に及ばんとする長尺を、勇壮且つ疾走感たっぷりに語り切った後者は、独産メタル・マニアなら一度は聴いておいて損のない出来栄え。その昔バイトしていた喫茶店でBGMとして流させて貰ったら、お客さんから「お、この曲良いねぇ」と好評を得たことでも思い出に残っている名曲であります。 今日び果たして需要があるのかどうかはともかく、ATTACK入門編には本作が打って付けですよ。
フランスの南東部に位置する都市、ヴォクリューズ県アヴィニョンにおいてに結成されたHMバンド。 NWOBHMの盛り上がりがフランスへも伝播する中、シングル『BOLOUSON NOIR』を'80年に発表してデビュー。‘87年の活動停止までの期間中に1st『ATTENTAT ROCK』(’81年)、2nd『LE GANG DES SAIGNEURS』(’84年)、Voをディディエ・ロケットからマーク・クーに変えた3rd『STRIKE』(’85年)という3枚のアルバムを発表、フレンチ・メタル・シーンの盛り上がりに貢献した。 '88年にはエルヴェ・レーナル(G)が抜けた編成でPINK ROSEと改名し、アルバム1枚を残しているが、こちらは短命に終わってしまった模様。’08年に再結成。
タッピングの名手スティーヴ・リンチ(G)と、ハスキー声が特徴的なスティーヴ・プランケット(Vo)という二人のタレントを擁し、80年代に3枚のアルバムを発表。シングル“TURN UP THE RADIO”をヒット・チャート上位に送り込むも、善戦及ばず解散へと至ったLAの5人組AUTOGRAPHでしたが、マニア筋からの評価は一貫して高く、バンド解散後にUSG RECORDSのヨルグ・ダイジンガー(BONFIRE~SABU)から「未発表曲とかないの?あったらウチからリリースするで」と声を掛けられたことをきっかけに発売が実現した蔵出し音源集がこちら。(日本盤は'94年にテイチクからリリースされています) 内容の方は、これが嬉しくなるぐらいAUTOGRAPHらしさ満点のアメリカンHRサウンドが徹底。それというのも元々は幻に終わった4thアルバム用にレコーディングされたデモテープ収録の楽曲が使われているらしく、なのでこれはもう単なる未発表曲集というよりは、実質的な4thアルバムというべき1枚ではないかと。 前3作に比べるとテンポは若干落ち着き気味ながら、確かなヒット・ポテンシャルを感じさせるキャッチーなメロディ、LAメタル界隈屈指のテクニシャンと謳われたリンチのフラッシーなGプレイも健在。特に仄かな哀愁を塗したメロディをプランケットがオヤジ声…もといハスキー声で歌い上げ、華やかなハーモニーが援護射撃する③⑤辺りは、発表が80年代だったらバンド活動のその後だって多少なりとも変わっていたのでは?と思わずにはいられない出来栄えですよ。 AUTOGRAPHは00年代に入って再結成を遂げてくれましたが、ならば是非とも本作のクオリティを超える新作のリリースを期待したいことろであります。
MCA RECORDSからのリストラ、Bのメンバー・チェンジといったゴタゴタを乗り越えて、'82年に発表された3rdアルバム。 欧州でのNWOBHM勃発と歩調を合わせるように、荒々しさを増したGサウンドが前面に押し出され、 Keyやボーカル・ハーモニーの使用頻度が下がる等、全体的にHM度が大幅アップを遂げた本作は、 この方向転換が奏功したのか、AXEの作品史上最高のセールスを記録(米ビルボードの81位にランクイン)。 欧米では彼らの代表作としてこのアルバムの名を挙げるファンも多いと聞く。 繊細さよりもヘヴィさ重視の作風とは言え、本編に潤いをもたらすウェットなメロディ・ラインのフックには 相変わらず微塵の鈍りもなく、例えばAXEが誇るヒット曲①なんて、“ROCK'N'ROLL PARTY IN THE STREETS"という バカっぽさ丸出し(失礼)のタイトルにも関わらず、印象的なKeyリフと哀メロがノリ良く疾走する名曲に仕上がっているし、 それ以外も、アグレッシブな②⑥⑦、重厚且つ劇的な③⑨、ポップでキャッチーな④⑧等、バラエティ豊かに 取り揃えられた楽曲は、何れも「AXEらしさ」がしっかりと刻印されており捨て曲なし。(因みに⑥はMONTROSEのカヴァー) 取り分け、ヘヴィ・メタリックなエッジとキャッチネスが絶妙な融合を見た⑥、そして後にCAUGHT IN THE ACTも カヴァーするドラマティックなラスト・ナンバー⑨は、本作を代表する名曲ではないかと。 初期作に比べると入手も容易な作品ゆえ、AXE入門篇に最適な1枚。再結成後のアルバムと併せてどうぞ。
デビュー作『KINGDOM OF THE NIGHT』(’90年)が、本国ドイツにおいて発売開始から2週間足らずで2万枚以上を売り上げる大ヒットとなり(ナショナル・チャートに12日間連続でランクインし、国内HR/HMバンドの1stアルバムの売り上げレコードを更新したのだとか)、勢いに乗ったAXXISが'91年に早くも発表したのがこの2ndアルバム。 前回が『暗黒の支配者』で、今回は『帝国興隆』。邦題は相変わらず大仰ですが、追及している音楽性はタイトでスマート&機動力に富むメロディックHRサウンド。寧ろKey奏者の加入で収録曲のバラエティは更なる広がりをみせていて、HELLOWEENを彷彿とさせるメロパワ・メタル調の①②があったかと思えば、レゲエのリズムを取り入れた③や、明るく躍動する④、ノリノリに突っ走る⑩があり、一方で哀愁たっぷりのバラード⑤、重厚だがコーラスは非常にキャッチーな⑧のようなタイプの楽曲もある…といった感じ。前作のヒットを踏まえ、よりライブ映えしそうな明快なメロディやコーラスが増強されているのもポイントで、中でもKeyを前面に押し出し軽快に弾みまくるポップな高揚感を湛えた⑦は、アルバムのハイライトにしてAXXISを代表する名曲の一つです。 これらの楽曲を歌い上げる、細かい「揺れ」を伴うバーナード・ワイスのハイトーンVoは人によって好き嫌いがハッキリ分かれるところではありますが、この声あってのAXXIS。バンドに欠かせぬ看板声として強力な個性を放っていることは間違いありません。 昔は「随分とポップだなぁ」とあまりピンと来なかった覚えがあるのですが、今聴き直すと寧ろポップな部分にこそグッとくる1枚。
日本人離れした実力を誇る5人組として、舶来志向のメタル・ファンからも高い評価を得る、東京/神奈川をベースに活動を続けるメロディック・パワー・メタル・バンドAZRAELが、'97年に2000枚限定でリリースした自主制作の1stアルバム。 中古屋にてバカ高いプレミア価格が付けられていたので、はて、それほど優れた内容だったっけ?と、 久し振りに棚から引っ張り出して聴き直してみたのだけれど・・・。うん、良く出来ています。BURRN!!誌で高得点を獲得した3rd『SUNRISE IN THE DREAMLAND』に比べると、貧弱なサウンド・プロダクションといい、ハイトーンで歌うと声が引っ繰り返りそうになる、線の細いVoの不安定さといい、全体的にまだまだ青臭い印象は否めないものの、曲作りの上手さに関してはこの頃から既に光るモノを感じさせてくれる。 特に、Keyのアレンジが秀逸な哀愁のHRチューン④や、ポップで爽やかなノリの⑪を筆頭に、適度な軽快さを持ち合わせた楽曲で本編のコテコテ度を緩和して、腹にもたれる事なく、全13曲という長丁場を一気に聴かせる手腕はなかなかのもの。(とは言え、もっと曲数は絞った方が良かったと思うが) 勿論、ドラマティックな序曲を経て走り出す②、アルバム・タイトル・トラックの⑤、クライマックスを締める⑫等、要所に配置された、お約束のスピード・チューンのカッコ良さも素晴しい。 磨かれる前の原石的な魅力を感じさせる1枚、か?