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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 5101-5200
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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 5101-5200
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SAXON - Solid Ball of Rock ★★ (2018-01-10 23:48:31)

湾岸戦争がメタル・バブルに暗い影を落とし、グランジ/オルタナティブ・ロック勢の台頭により、80年代型HR/HMの黄金時代に終止符が打たれた’91年。未だ暗中模索の時期を過ごしていたSAXONはこの10thアルバムを発表しました。
思い切ってメロハー路線にフルスイングした前作『DESTINY』(’89年)は流石にやり過ぎと思ったのか、今回はKeyによる装飾は控えめに、再びGの存在を前面に押し出して、幾分かでも本来のSAXONらしいサウンドへ軌道修正を図ろうとした跡が伺える仕上がり。
但し、こぢんまりとした音作りはあまりメタルっぽくはなく、ハード・ドライヴィンな疾走ナンバーから、BON JOVIばりのポップ・メタル・チューンまで並んだ本編は、バラエティ豊か…と言うよりも、当時のSAXONの「どっちへ向かって進めばいいのやら」という迷いが、そのまんま音に表れてしまっている感がありあり。『DESTINY』が異色の名盤足り得たのは、方向性はどうあれ全力でやり切ったからこそであり、それに比べると本作におけるバンドの姿勢は些か中途半端と言わざるを得ないわけで。
…ってな具合にどうしても苦言が先立つアルバムではありますが(デビュー10周年を記念する作品でもありますし)、それでも実は1曲1曲を取り出してみると然程悪くないんですよ、これが。土煙立ててブッ飛ばす疾走ナンバー②⑥や、英国産メタルらしい湿気ったメロディラインにグッとくる④みたいな楽曲がカッコイイのは当然のこととして、ゴッドに「まるでBON JOVI」と評されたシングル③とかも個人的には悪くない出来だと思う次第。
真っ先にチェックすべき作品でなくとも、見掛けたら押さえておいて損はない1枚ですよ。


SAXON - Solid Ball of Rock - Baptism of Fire ★★★ (2018-01-10 23:53:22)

疾走ナンバーですが、かつてに比べると
格段に洗練を感じさせる仕上がりです。
歌メロからそこはかとなく哀感が漂ってくる辺り
いかにもブリティッシュHMらしくて良し。


SAXON - Solid Ball of Rock - Requiem (We Will Remember) ★★ (2018-01-10 23:58:49)

ゴッドに「まるでBON JOVIじゃねえか」と叱られた
シングル曲ですが、80年代の音楽的変遷(迷走とも言う)
を経て、この手の楽曲も上手くこなせるようになった
SAXONなのでありました。良い曲で結構好きです。


SAXON - The Eagle Has Landed ★★★ (2016-11-08 09:55:57)

黒地に、バンドロゴ/エンブレム/タイトルをあしらっただけの飾り気無用のアートワークが、質実剛健なSAXONサウンドの魅力を表しているかのようで逆にカッコイイ、’82年発表の傑作ライブ・アルバム。
お馴染みの「SAXON!」(チャチャチャ)「SAXON!」(チャチャチャ)というチャントと、バイクの爆音SEに導かれて、ショウは疾走ナンバー“MOTORCYCLE MAN”で豪快にスタート。憂いに満ちたメロディアスな“747(STRANGER IN THE NIGHT)”がその後に続き、間髪入れずハードネスとメロディのギアがガッチリ噛み合った初期SAXON屈指の名曲“PRINCESS OF THE NIGHT”でアクセルを再び踏み込むという、この劇的極まりない冒頭の流れだけでこっちはメタル・ハートを完全に掌握されてしまった気分ですよ。本作のハイライトを担う“WHEELS OF STEEL”での、革ジャン軍団で埋め尽くされていると思しき客席との一体感溢れるコール&レスポンスなんて「胸のエンジンに火を点けろ!」(by串田アキラ)とシャウトしたくなるアガりっぷりで、もう最高としか。
バイカーズ・ロック時代の名曲が連打されるセットリスト、それらを熱気溢れる演奏で叩き付けて来るメンバーに、観客の野太い声援まで、SAXON(最初の)全盛期を代表する名盤として、またNWOBHMの熱い盛り上がりを伝えてくれるドキュメント作品として高評価を受けるのも当然の1枚。つか、これのみで十分な満足感を得てしまって、なかなかSAXONの初期作をコンプリートしようとしない困ったちゃん(俺のことですが)をも生み出してしまう罪作りな名盤です。


SAXON - The Inner Sanctum ★★ (2010-05-09 00:29:00)

『FOREVER FREE』('92年)以降のSAXONのアルバムにハズレはないが、取り分け00年代突入以降は、全盛期の
名盤と比較しても何ら遜色ないハイレベルな作品を連発しており、特にこの17thアルバムはその中でも屈指。
圧倒的個性と説得力でもって聴き手を捻じ伏せるビフ・バイフォードのVo、力強く骨太なGリフ、タフでソリッドなリズム、
それに湿っぽくならない程度にフィーチュアされた憂いを帯びたメロディ(2本のGが良い仕事してます)とが、
一丸となって突き進む武骨で男気溢れるサウンドは、これぞ英国産HM!といったカッコ良さに満ち溢れ、
中でも、荘厳なイントロに導かれて走り始める劇的なOPナンバー①に始まり、地響き立てて爆走する
疾走チューン②を経て、本編最初のハイライトと言うべきメランコリックにして重厚、且つドラマティックな
名曲③へと雪崩れ込むアルバム序盤の見事な流れは、現在のSAXONが第2の黄金期にある事を端的に物語る完成度の高さ。
そして後半には、叙情的なインストの小曲⑨から繋がり、アルバムを壮大に締め括るエスニックなエピック・チューン⑩が
控えるという、全く持って隙のない構成。(大量に収録されたボーナストラックの存在は賛否分かれるかな)
ベテランらしい重厚感溢れる佇まいと、ベテランらしからぬ活きの良さが無理なく同居した逸品。
本作リリースに伴うLOUD PARK 07でのライブの盛り上がりっぷりも圧巻でしたね。


SCANNER - Hypertrace ★★ (2014-12-23 21:57:08)

弦楽器隊を中心に再編され、LION'S BREED改めSCANNERとして生まれ変わった5人組が、プロデューサーにELOYのフランク・ボーネマン、エンジニアはトミー・ニュートンという布陣でレコーディング作業を行い、'88年にNOISE RECORDSから発表したデビュー作。(ラルフ・シーパースもゲストVoとして③に参加)
疾走感溢れるリズムに、劇的にハモる2本のGがメロディックに絡み、微妙な実力のシンガー(カイ・ハンセン以上/マイケル・キスク未満)が線の細いハイトーンをその上に乗せる・・・という音楽性は、所謂「ジャーマン・メタル」の王道スタイル。ただ、HELLOWEENブレイク以前からキャリアを積み重ねて来たバンドゆえ、どちらかと言えばJUDAS PRIESTやACCEPTといったオーセンティックなメタル軍団から影響の方が、より顕著に表れているかな?
「さぁ皆さんご一緒に」系の楽曲もないことはないのですが(②とか④とか)、個人的にはそれよりも①③⑤のような、シャープな疾走感とドイツのバンドらしい鋼鉄感が融合をみた楽曲の方にメタル心をくすぐられます。特にタイトな切れ味に気の逸る⑥は名曲。
メンバーの出で立ちからアルバム・コンセプトまで、ばっちりSFタッチで固めながら、脱力感満点の「イキったオッサン」ジャケでそれらを台無しにしてしまう辺りにB級メタルの悲哀を感じずにはいられませんが(アレンジもちょっと野暮ったい)、まぁそれはそれで趣きがありますよねと。


SCANNER - Hypertrace - Grapes of Fear ★★★ (2014-12-23 22:05:37)

ジャーマン・メロパワ・メタル的大仰さよりも
ヨーロピアンHM寄りのタイトな疾走感が
印象的なスピード・ナンバー。
Gが奏でるテーマ・メロディにメタル魂が逸りますよ。
個人的にはアルバムで一番お気に入り。


SCANNER - Terminal Earth ★★ (2014-01-13 23:17:06)

LION'S BREED名義でEARTHSHAKER RECORDSからアルバムも出していた長いキャリアを誇っているにも関わらず、万年Bクラスのイメージが拭い難く、熱心なファンからはそれなりに評価されているのに、なかなか芽が出ず一軍とファーム間を行ったり来たりしている(引退後は球場近くで焼肉屋を経営してそうな)プロ野球選手・・・的な哀愁を(勝手に)感じていたバンドが、'90年に発表した2ndアルバム。
ACCEPTとHELLOWEENの丁度中間を行く、両者の美味しいトコ取りなパワー・メタル・サウンドを目指した筈が、悲しいかな、実際に出来上がったのはACCEPT程パワフルではなく、さりとてHELLOWEEN程メロディがキャッチーでもないという「帯に短し襷に長し」な作品。コレ聴くとなぜ彼らがブレイク出来なかったのか、その理由に察しがついてしまうのが悲しい。
それでも、ジャーマン・メタルらしく雄々しげに疾走するリズムの上で、元ANGEL DUSTのS.L.クーの荒っぽいハイトーンVoと、ドラマティックなツイン・リード・ギターとが暴れ回る、①②⑥⑦といったスピード・ナンバーのカッコ良さからは「あんまり俺達を舐めんなよ!」との気迫が迸ります。なんのかんの良いながらも、結構お気に入りで時々聴き返しています。
RISKをもっとメロディアスにしたような音、という表現にピンと来る方にお薦めしたい1枚。


SCORPIONS - Animal Magnetism ★★ (2016-10-24 23:19:21)

80年代の幕開けを飾った7th。「犬の頭の位置が卑猥」という、中学生か君は!な理由でアートワークの差し替え処分を食らっていますが、ここまで来ると最早「発禁されてなんぼ」な恒例行事感も漂い、特に驚きもありません。(ところで『電獣』ってこの犬のこと?)
さて本作。クサすような出来ではないですし、安定感だって抜群なのに、しかしながら絶賛するには今一歩なにかが足りない…。そのため「悪くはない作品」と微妙に後ろ向きな褒め方をされることの多い1枚で、個人的にもSCORPIONSカタログにおける存在感は薄め。彼らのアルバム・コンプリートを目指してた頃、全部揃えていたつもりでいたら、実はコレが抜け落ちていたことに長らく気付かずにいたという有様で。
1曲毎に取り出してみれば、軽快なGカッティングが気持ちいい①、人肌の温もりを感じさせるバラード⑤、クラウスの歌唱がウリ時代を彷彿とさせる⑦、へヴィ且つ重厚に迫り来る⑨等、十分耳を惹かれる楽曲が揃っています。だのに通して聴くと何故かフラットに流れて行ってしまうのは、ミドル・テンポの楽曲を中心に揃えられた本編構成が少々淡泊なせいか、はたまた「これ!」という強力なキメ曲が見当たらないせいか…。
それでもこの経験が次へと活かされ、名盤『BLACKOUT』として昇華するわけですから、本作とて決して軽んじていいわけはありません。…まぁ購入は最後の方でも良いとは思いますが(ドクロ)。


SCORPIONS - Blackout ★★★ (2016-10-26 00:10:36)

歌手生命を絶たれかねない苦境を見事克服したクラウス・マイネと、彼の復帰を信じて待ったSCORPIONS。両者の信念が実を結び、全米チャート最高第10位に食い込む大ヒット作となった’82年発表の8thアルバム。蠍団のアメリカ制覇の先駆けとなったこの実績に、ゴットフリート・ヘルンヴァインの手掛けたインパクト大なアートワーク、それに邦題『蠍魔宮』のカッコ良さと、本作はSCORPIONSの代表作としてのみならず、80年代HR/HMシーンの隆盛を語る上でも欠かすことのできない輝きを放つ大名盤であると。
特筆すべきは、バンド史上最もアグレッシブなサウンドでこのサクセスを成し遂げた点ですよ。どこか慎重に置きに行った感もあった前作『電獣』に対し、今回は研ぎ澄まされたGリフから、タイトにストレッチされたリズムや曲展開まで、一気にHMの領域までエンジン・フルスロットルで突入。ルドルフ・シェンカーが刻むカミソリGリフと、魂を燃焼させるが如きクラウスのシャウトが聴く者の鼓膜を切り裂くアルバム表題曲①や、負けず劣らず攻撃的な⑤、個人的には①以上に贔屓にしている疾走ナンバー⑥、重厚な緊迫感漂わす⑧といった、メタリックな名曲群のカッコ良さは只事じゃあない。
無論、③④⑨のようなSCORPIONSらしい哀メロ・センスが活かされた楽曲の素晴らしさについては今更言及するまでもなく。あとポップにハジける②⑦も聴かせてくれますし…って、要するに捨て曲なしの名盤ってことですか。
どちらかと言えばウリ時代に強い思い入れを持つ我が身ですが、「SCORPIONS入門盤にどれか1枚選べ」と言われたならば、やはり本作しかないよなぁと。


SCORPIONS - Fly to the Rainbow ★★★ (2016-10-11 22:30:35)

基本的音楽性の確立からウルリッヒ・ロート加入まで、SCORPIONSの重要な第一歩となった’74年発表の2ndアルバム。『電撃の蠍団』なる邦題も、原題『FLY TO THE RAINBOW』もカッコイイなぁ、とか思いながらジャケットに目を転じると、そこに描かれているのは謎の怪人プロペラ男。お前が虹まで飛ぶんかい。
ウリのインプロゼーション重視のGワークがダイナミックに炸裂する③(早くもリードVoも担当しちゃってますが)、静と動を切り替えながら10分に迫る長尺をドラマティックに語り切るアルバム表題曲⑧といった楽曲や、Key、メロトロンを隠し味的に用いたアレンジ術等、デビュー作で聴かせたクラウト/プログレッシブ・ロックの残り香を随所に漂わせつつも、イマイチ掴みどころがなかった前作に対し、こっちはウリ加入により増強された「泣きメロ」という強力な武器によって、焦点がきっちり絞り込まれています。
特に、バラード調の前半をスパニッシュ・タッチのGリフが切り裂く②、東北地方を巡業している昭和の演歌歌手ばりに泣きまくる④、哀愁に満ちたメロディとスウィングするリズムのコンビネーションに惹き込まれる⑤は、捨て曲なしの本編の中にあっても一際輝く名曲。シャウトよりもムーディに歌い上げることに重点を置いたクラウス・マイネの歌唱スタイルも、この時期ならではの魅力をサウンドに付与してくれています。
ウリ在籍時代のアルバムはいずれも甲乙つけ難いクオリティを誇りますが、「一番好きなアルバムは?」と問われたならば、個人的には真っ先にその名を挙げる1枚。


SCORPIONS - In Trance ★★★ (2016-10-13 00:35:32)

ドラマーをユルゲン・ローゼンタールからルディ・レナーズに代えて、’75年に発表された3rdアルバム(邦題『復讐の蠍団』)。「ギターに跨って悶えるブロンド美女」という、小生の愚息も思わず昇天な(スポーツ新聞風俗欄的表現)、SCORPIONS発禁ジャケット史の記念すべき第一歩ともなった1枚ですが、暗喩を感じさせるエロスの方向性がやっぱヨーロッパのバンドのセンスだなと。
涙なしには聴けぬドラマティックな名曲②、“人生は川の如し”なんて演歌みたいな邦題がドハマりする哀愁ダダ漏れの③、重々しくも憂いに満ちた⑤、タメを効かせて劇的に盛り上がっていく⑦等、ウルリッヒ・ロートが紡ぐ、日本人の感性にぴったりフィットして横漏れしない泣きメロの大洪水と、クラウス・マイネのコブシの入った熱唱を核に、情念が濃密に渦巻く70年代型ロック・サウンドは、基本的に前作『電撃の蠍団』と作風を同じくします。
但し今回は楽曲がコンパクトに、アレンジはタイトにまとめられ、SCORPIONS版“移民の歌”(?)的なOPナンバー①や、耳をつんざく⑥といった楽曲における、2本のGのアグレッシブな暴れっぷりや、スピーカーを食い破らんばかりの勢いで炸裂する、クラウスの(ルドルフ・シェンカーのお株を奪う)カミソリの如きシャウトを聴けば分かる通り、バンドがよりハードな方向へ、ギアを一段も二段も上げたことが伝わって来る仕上がり。
従来のプログ・ロック色を薄れさせたSCORPIONSが、シャープで切れ味鋭いHRバンドとして覚醒する3rd『VIRGIN KILLER』へと至る、その過渡期の魅力を捉えた名盤ではないでしょうか。


SCORPIONS - Love at First Sting ★★★ (2016-10-28 01:10:13)

所謂「出世作」「大ヒット作」というヤツは、然るべきバンドが、然るべきタイミングで、然るべき作品を発表することによって生み出されると言います。とするならば、アメリカにおいてHMブームの盛り上がりが最高潮に達しようとしていた84年に、当時飛ぶ鳥落とす勢いだった蠍団により、捨て曲なしの最高の内容で発表されたこの9thアルバム(邦題『禁断の刺青』)が、同地においてバンド史上最大の成功を収めたのもむべなるかな。
前作『BLACKOUT』に比べるとハードネスやクドさは抑え気味で、より万人向けにすっきりとキャッチーに…『美味しんぼ』風に例えるなら(なぜ?)、本作の味付けは「しゃっきりポン」な感じに整えられています。カミソリ感を控えめに伸びやかに歌い上げるクラウスのVo、サウンドの輪郭をハード且つ明瞭に保つルドルフのリズムG、マティアス・ヤプスのSCORPIONSのリードGとして自信に満ち溢れた演奏をフィーチュアし、ライブの定番曲としてファンから愛される代表曲②⑥や、憂いを帯びたイントロから疾走へと転じる④、特に欧州圏で高い評価を得るというヒット・バラード⑨etc.…と、スタジアム級の会場で演奏されるに相応しいスケール感とフックを有した収録曲の数々は、最早ドイツのローカル・ヒーローではなく、ワールドクラスの人気者の仲間入りを果たしたSCORPIONSの余裕と貫禄を伝えてくれる仕上がり。
これ以降のSCORPIONSサウンドの変化は基本的に本作のバリエーションであり、ポップになったり、へヴィになったり、実験的になったりしても、その「基礎」として頑として揺るがないサウンド・スタイルを完成させたのが、このアルバムだったのではないかなぁと。


SCORPIONS - Lovedrive ★★★ (2016-10-22 00:08:32)

ヒプノシスの手掛けた『遊星からの物体X』風アートワークが「女性蔑視」との批判に晒され、アメリカでは差し替え騒ぎに発展。しかし同時にチャート50位台にランクインする好リアクションも獲得し、同地進出への足掛かりともなった’79年発表の6thアルバム。
ウリの後任は旧知の仲だったマティアス・ヤプス(G)に決定。でもレコーディング中に経験不足が露呈したことから、当時ちょうど暇してたマイケル・シェンカーのヘルプも仰いでアルバムは完成(マイケルは5曲でプレイしてる)。そのままツアーに出たまでは良かったが、ここで神の失踪癖が再発。バンドは慌ててマティアスを呼び戻してツアーを続行…と、制作の舞台裏は相当にドタバタしていたご様子。実際、ウリが去って本編の泣きメロ含有量は激減。更にOPナンバー①のパンチの弱さや、レゲエ調の⑥があったりと、初聴時の感想は「変わってしまったのね…」と、あまり芳しいものではありませんでした。
しかしリピート再生するうちに印象は大きく変化してきます。ウェット感が減ってドライさが増したことで、これまで以上にルドルフ・シェンカー(G)のカミソリ・カッティングの威力がダイレクトに伝わって来るようになりましたし、切れ味全開の②⑤⑦で要所をアグレッシブに締めつつ、哀愁が滲む③、シェンカーのGが冴え渡るインスト曲④といったメロディアスな楽曲(レゲエ調の⑥もメロディは美味)を経て、ドラマティックな名曲⑧にて締め括られる本作の完成度には、制作時の混乱が影を落とした様子は見受けられません。
限定地域にピンポイントで訴えかけた従来のダークネスや情念の迸りを抑え、より広範囲な地域&リスナーにアピールすべく、音楽性を垢抜けさせ始めた蠍団の契機となった1枚ですね。


SCORPIONS - Taken by Force ★★★ (2016-10-15 09:28:02)

病気により脱退したルディ・レナーズの後任として、新たにハーマン・ラレベル(Ds)を加えた陣容でレコーディングが行われ、「墓場での銃撃戦」ジャケットが「テロを思わせる」という、殆ど難癖みたいな理由から一部地域で差し替えを余儀なくされつつも、’77年に発表された5thアルバム。(邦題は『暴虐の蠍団』)
ウルリッヒ・ロート(G)が参加した最後のスタジオ作品ということで、内容的にも(それを意識したかどうかはさておき)ウリ在籍時代のSCORPIONSを総括するかの如き充実っぷり。80年代アリーナ・ロック路線の試し打ち的なスケール感を有するOPナンバー①を皮切りに、泣いて泣いて泣き倒すドラマティックな②あり、隠れた名曲と評判の(俺の中で)④あり、若き日のイングヴェイを始め、速弾きギタリスト勢に多大なるインスピレーションを与えた⑤あり、パワー/スラッシュ系バンドが好んでカヴァーする攻撃的な⑦あり、日本人女性によるポエトリー・リーディングまでフィーチュアされた劇的な大作ナンバー⑧(てっきりウリ作曲かと思いきや違うのね)あり…といった具合に、バラエティ豊か&完成度の高い楽曲がズラリ揃う本編は、勿論捨て曲なし。そして何より今回は、長らく「クラウス・マイネを差し置いて何故歌いたがる?」とファンを訝しがらせて来た、ウリ自作自演のジミヘン・タイプの楽曲がない!(笑)
独自のサウンドを模索し、「テッペン取ったる!」とガムシャラに攻めてた従来作に比べると、本作は地歩を固め終えたバンドが、純粋に完成度を追求して作り上げたような風格が感じられる1枚。そんなわけで初期SCORPIONS入門盤に自信を持ってお薦め致します。


SCORPIONS - Tokyo Tapes ★★★ (2016-10-20 23:37:54)

中野サンプラザでの初来日公演の模様を収めた実況録音盤(邦題『蠍団爆発!スコーピオンズ・ライブ』)。上り調子のバンドによる白熱のパフォーマンス、それを真っ向から迎え撃つ観客の熱狂とが克明に捉えられており、SCORPIONSの存在を一躍満天下に知らしめ、後の大躍進の切っ掛けになったというのも納得の1枚。
選曲も2nd~5thアルバムの美味しいところが押さえられていて、初期の彼らのベスト盤としても機能。無論、名曲を山ほど抱えているバンドゆえ漏れは当然あります。つか“HELL CAT”演るぐらいなら他に演るべき曲が幾らでもあるでしょ!とか思わなくもないのですが、いやでも既に脱退が確定していたウルリッヒ・ロート(G)への最後の接待だと思えば、楽勝で我慢できる…どころか、寧ろ名残惜しく感じられるぐらいですよ。
そして今回、そんなウリ以上の存在感を放つのがクラウス・マイネ(Vo)その人。テクニックや表現力に磨きを掛け、シンガーとして数段上のステージに昇った喉の手術以降に比べると、本作で炸裂する若さに任せたパワー全開のシャウトは、粗削りでありつつも、触れた物すべてを切り裂くような剃刀の如きエネルギーが迸る。お陰で収録曲はどれもスタジオ・バージョンを軽く凌駕する迫力を獲得。中でも“荒城の月”なんて、日本語詞を朗々歌い上げるクラウスの熱唱と、ウリのエモーショナル極まりない泣きのGプレイに、哀切に満ちた和風メロディとが相俟って、未だ語り草なのも当然の感動的な仕上がりっぷり。
尚、例によって海外では発禁食らったアートワークですが、どう見比べてもオリジナル(日本盤ジャケット)の方が素晴らしいことは言うまでもありません。


SCORPIONS - Virgin Killer ★★★ (2016-10-13 23:45:06)

股間に亀裂の入った全裸幼女をジャケットに戴き、オマケにタイトルが『VIRGIN KILLER』…。このご時世じゃ完全アウトな’76年発表の4thアルバム(邦題『狂熱の蠍団』)。
とは言え、ロリコンを狙い撃ちしたわけでも露悪趣味に走ったわけでもなく、SCORPIONSが繰り出す切れ味鋭いHRサウンドが身に纏う、過激さや危険な雰囲気、それらと相反する美しさといった要素を巧みに可視化したこのジャケットは、センスフルな「アート」としての価値も十分。特に再発盤ジャケの脱力具合と見比べると、尚更そう感じざるを得ませんよ。まぁ流石にこれをLPサイズでディスプレイする度胸は持ち合わせていませんけどね。
音楽性の方では、哀愁とハードネスが絶妙な融合を見たOPナンバー①や、クラウス・マイネの熱唱が胸焦がす疾走ナンバー②による畳み掛けが雄弁に物語る通り、初期プログレ色はほぼ一掃され、暗く、激しく、それでいてどこか物悲しげな響きも湛えた「ウリ・ロート在籍時代のSCORPIONS」と言われて想起するサウンドが確立。ハードな曲は徹底的にハードに、抒情的な曲は徹底的に悲しくメロディアスに…と磨き込まれた作風の美点は、全メンバーがカミソリの如き切れ味で荒れ狂うアルバム表題曲⑤と、逆に「落ち込んでる時に聴いたら自殺したくなる」と評された、暗闇の中で途方に暮れるかのようなバラード⑨という、「動」と「静」の名曲に集約。特に前者は元祖HMナンバーの一つとして、後のNWOBHMにも少なからずインスピレーションを与えたのではないかと。
あと余談ですが、ジャケットでモデルを務めた少女は、この件のについて「若い頃の良い思い出」とメンバーに語ってくれたそうな。


SCORPIONS - World Wide Live ★★★ (2016-11-01 00:19:35)

これまでアートワークのヤバさについて散々取り沙汰されてきたSCORPIONSですが、このジャケットについては「クラウス・マイネの生え際の後退っぷりがヤバ過ぎて発禁モノ」と、ファンの間で話題騒然になったとかならなかったとか。
そんなHR/HMシーン屈指の薄毛軍団として鳴らしたSCORPIONSが帽子を被り出す以前。『禁断の刺青』で全米制覇を成し遂げた直後。まさしくワールドワイドな人気者となった蠍団絶頂期のライブ・パフォーマンスがたっぷり堪能できる本作は、選曲は全てマティアス・ヤプス加入以降の作品からで、『TOKYO TAPE』との楽曲の被りは一切なし。更にホール・クラスの会場で収録されたため、バンドと客席の距離が(物理的にも心理的にも)近かった『TOKYO~』に対し、毛髪量は減ったが代わりに爆発的に増えた観衆を見事に煽動するバンドの手腕がスタジアム仕様にスケールUPしている本作…といった具合に、同じライブ盤でも両者の作風はかなり異なってます。例えるなら、野心に満ち溢れたSCORPIONSが鯉の如く滝を昇っていくピチピチの姿を捉えていたのが前者で、こっちは滝を昇り切って龍と化したSCORPIONSの円熟ぶりを伝えてくれる仕上がりというか。
ともかく、次々に繰り出されるヒット曲&名曲のオンパレード、脂の乗り切ったバンドの白熱のパフォーマンス、地面を揺るがすかのような大観衆の盛り上がりと、優れたライブ盤に必要な要素がてんこ盛りに盛られた内容は、アメリカだけで100万枚を超えるセールスを記録したというのも十分に頷けます。出来れば『TOKYO TAPE』と併せて持っていたい1枚ではないかと。


SDI ★★ (2007-03-21 17:55:00)

旧西ドイツはオスナブリュック出身の3人組スラッシュ・メタル・バンド。
SATANS DEFLORATION INCORPORATED、略してS.D.I。(S.O.D.とかS.O.B.とか色々あってややこしいけど)
初期HELLOWEENを、よりストレートに、よりスピーディにしたかのようなそのサウンドは、
まさに「スピード・メタル」を絵に描いたかのよう。
'86年に1stアルバム『S.D.I』でデビュー、'88年にバンドの最高傑作と名高い2nd『SIGN OF THE WICKED』を、
'89年には、メロディック・パワー・メタル方面へと接近した3rd『MISTREATED』を発表。
その後、4枚目のアルバム製作の噂もあったが、結局リリースされないまま解散に至った。
その発表されず終いの4枚目のアルバムの音源は、最近、まとめて再発された過去3作のリマスター盤に
ボーナス・トラックとして収録されているので、興味がある方は是非。


SDI - Mistreated ★★ (2007-03-23 23:35:00)

Gをフランク・ティーシングからライナー・レイジに代えて、'89年に発表された3rdアルバムにしてラスト・アルバム。
一聴して、かなりメロディ重視の姿勢を取っている事が明らかな内容で、別にそれで疾走感が失われてしまった
ワケではないのだけれども、前作『SIGN OF THE WICKED』に比べ、長尺・複雑化(と言うほど大袈裟なモノじゃないが)が
進んだ楽曲の数々は、スラッシュ/スピード・メタルと言うよりは、当時、ドイツで大流行の兆しを見せていた
「メロディック・パワー・メタル」と表現した方がしっくり来る印象。
勿論、それが悪いなんて事もなく、ダイナミックな曲展開が魅力のOPチューン①、疾走する正統派へヴィ・メタリックなリフと
Gソロがカッコイイ②、スラッシーな③、全収録曲中、最もジャーマン・メロディック・パワーメタル風味が強い⑦
といった楽曲は、疾走感をしっかりと保ちつつ、尚且つドラマチックで聴き応え十分。
新たに加入したGも、前任者に勝るとも劣らぬ煽情度のGソロを披露していて文句なし。
ただ、ここまで楽曲のメロディアス化が進むと、リーダーのレイナード・クルーゼがBと兼任するVoの弱さが
ハッキリと露呈してしまっていて、スラッシュ・ソングを歌うには何ら問題ない彼氏だが、
今回のような起伏に富んだ歌メロを歌うには、明らかに実力不足。また、ここに来て「陽性」のメロディが
チラホラと顔を覗かせるようになったのも、本作の印象を弱めてしまっている原因の1つのように感じられる。


SDI - Mistreated - Night of Tears ★★ (2007-03-24 21:29:39)

他の3rdアルバム収録曲同様、メロディアスな歌メロは
スラッシュと言うよりメロディック・パワー・メタル的。
スピーディな前半から、中盤のアコギ・パートでスッと引いて、
そこから再びアクセル全開で突っ走る曲展開や、
勇壮なGソロは非常にカッコイイ。
ただ、Voが起伏に富んだメロディを歌いきれていないのが惜しい。


SDI - Satan's Defloration Incorporated ★★ (2007-03-21 17:34:00)

S.O.D.とかS.O.B.とかM.O.D.とかD.R.I.とか、色々あってややこしいが、このS.D.I.は西ドイツは
オスナブリュック出身のトリオ・スラッシャーで、本作は'86年発表の1stアルバムにあたる。
初期HELLOWEENを更に野蛮にして、「野卑になったカイ・ハンセン」といった感じのVoがシャウトしまくる
そのスピーディなスラッシュ・サウンドは、初期HELLOWEENより数倍ストレートで、数倍速く、そして数倍バカ(笑)。
デビュー作ゆえまだまだラフな勢いが勝ち気味で、勢い余ってパンキッシュな③、ハードコアちっくな
瞬間風速ナンバー⑪のような楽曲も収録されているが、このバンドの核にあるのは、
メロディックなインスト・パートを聴けば明らかな通り、飽くまでもヘヴィ・メタル。
特に、アルバムOPを猛スピードで駆け抜ける①や、高速スラッシュ・チューン④といった楽曲は、
そのヤケクソ気味な疾走感といい、ドラマチックなツイン・リード・ギターといい、唐突にドイツ民謡風のメロディが
挿入される曲展開といい、もろ初期HELLOWEENを彷彿とさせる名曲だ。(ちょっぴりファニーな部分もそれっぽい)
また、初期JUDAS PRIESTを思わせる⑥では、ヘタクソなりにVoがロブ・ハルフォード役を務めて、
何とか劇的なドラマ性を演出しようと頑張っていたりと、ガッツ漲る作風には非常に好感が持てる。
このデビュー作の時点では、まだまだイモだけどね。


SDI - Satan's Defloration Incorporated - Quasimodo ★★ (2007-03-21 21:51:09)

ヤケクソ気味の疾走感といい、ドイツ民謡風のメロディといい、
下手なりに一生懸命メロディを歌うVoといい、
もろ初期HELLOWEENを彷彿とさせる
1stアルバムのOPを飾る高速スラッシュ・チューン。


SDI - Sign of the Wicked ★★ (2007-03-23 23:18:00)

多くのファンがSDIの最高傑作と太鼓判を押す、'88年発表の2ndアルバム。
スピーディでストレートなスラッシュ・メタルが堪能できる反面、ややチープな感が無きにしも非ずだった
デビュー作『SATANS DEFLORATION INCORPORATED』に比べ、一層研ぎ澄まされたリフにビルドアップされたリズム、
勇壮さを増した歌メロ、煽情度を高めたGソロetc・・・と、パンキッシュなラフさやオチャラケた雰囲気が払拭された本作は、
かなり硬派でシリアス、程好い緊張感を漂わせた作風に仕上がっている。
楽曲の練り込み具合も前作の比ではなく、例えばアコギに導かれてスタートする、SDI屈指の名曲①を聴けば明らかな通り、
疾走感はそのままに、静と動、緩急を巧みに取り入れた曲展開は、楽曲に宿るドラマ性を
急上昇させるだけでなく、その疾走感をも更に引き立てることに成功している。
名曲①で爆走を開始し、地を這うようなヘヴィ・チューン②、“MEGAMOSH"のタイトルに偽りなしの
高速スラッシュ・チューン③へと繋がっていく、メリハリの効いた曲順も良く考えられていて、
ノリの良い④で一息ついて(と言っても十分速いんだけど)、リードBがイカス⑤で再びアクセルを限界まで踏み込んだ後は、
初期HELLOWEENを彷彿とさせる⑦、後半のハイライトと言うべきドラマチックな⑧といった楽曲を経て
ラスト・ナンバー⑨に至るまで、そのテンションとスピードは片時も緩む事無く、一気呵成に駆け抜けていく。
ジャーマン・スラッシュ・メタルを語る上で、欠かす事の出来ない名盤の1つ。


SDI - Sign of the Wicked - Comin' Again / Sign of the Wicked ★★★ (2007-03-24 21:24:55)

2ndアルバムのOPを飾る、SDI屈指の名曲。
初期HELLOWEENを倍速化したかのような、
カミソリの如き高速スラッシュ・ナンバーだが、
中盤にきっちりと「溜め」パートを作っていたりと、
力押しに頼らない曲作りの巧さも光る。


SENTINEL BEAST (2014-10-11 01:09:09)

デビー・ガン(Vo)を中心に、'84年頃からカリフォルニア州サクラメントを中心に活動を開始。当初はNWOBHMの影響を全面に打ち出した(ベルギーのACID辺りに通じる)ダークなHMをプレイしていたが、同時期にベイエリアを中心に盛り上がり始めていたスラッシュ・シーンと交流を持ち、強く影響を受けたことで音楽性が先鋭化。デモテープ制作とメンバー・チェンジを繰り返す内に次第にスラッシュ色を強めていった彼らの音楽的変遷は、'10年リリースのコンピ盤『UP FROM THE ASHES』で窺い知ることができる。
'86年、ビル・メトイヤーのプロデュースの下、METAL BLADE RECORDSから1st『DEPTHS OF DEATH』をリリースしてデビュー。攻撃的なパワー/スラッシュ・サウンドがマニアから高く評価されたにも関わらず、バンドはこれ1枚でアッサリ解散。デビー嬢はZNOWHITEに加入(がアルバム制作には至らず)、テクニカルなBプレイでバンドの屋台骨を支えたマーク・スペンサーは、ジェイソン・ニューステッドの後任として、短期間ながらFLOTSAM & JETSAMに籍を置いた。
尚、近年バンドは再結成を果たしているが、ニュー・アルバムがリリースされる気配はない。


SENTINEL BEAST - Depths of Death ★★★ (2014-10-11 01:13:30)

カリフォルニア出身の5人組、SENTINEL BEASTが'86年に残した、捨て曲なしのUSメタル裏街道を行く名盤。
このバンド名でMETAL BLADE所属。しかも『METAL MASSACRE Ⅶ』に楽曲提供もしていた・・・と聴けば、凡そどんな音楽性の連中か想像が付くかと思いますが、正解です。「とても女が出してる声とは思えない」と評されたデビー・ガン嬢の剣呑な歌唱、傍若無人に弾き倒す2本のG(片翼のマーク・コヨサコは日系人かな?)、アタッキーに主張しまくるBと、暴れ馬の如く跳ね回るDsという初期IRON MAIDENリスペクトなリズム隊とが、生き急ぐかのように突っ走るパワー/スラッシュ・サウンドは、あられもなくJUDAS PRIESTとIRON MAIDENからの影響をモロ出しにしつつも、更にそこにUS産メタラーらしい肉食系アグレッションも加味。本編はまんま“THE HELLION”風のイントロで幕が上がりますが、威厳や風格よりも、荒んだ喧嘩っ早さが勝る楽曲の数々は、メタル・ゴッドならぬメタル・チンピラといった趣き。
特に、地獄の番犬が姿勢を低く構えて地を駆ける姿が思い浮かぶ①③⑥のカッコ良さは特筆モノで、勢い任せに暴れ回っているようにみえて(事実その通りなんですが)、緩急を踏まえたドラマティックな曲展開等にも気が払われている点も高評価ポイント。なればこそIRON MAIDENの名曲“PHANTOM OF THE OPERA”のカヴァーもバッチシ決まっています。
SIGHの川嶋未来が「エクストリーム・メタル史において女性Voをフィーチュアした最も偉大なアルバム」としてそのタイトルを挙げるのも納得の1枚ではないでしょうか。


SENTINEL BEAST - Depths of Death - Sentinel Beast ★★★ (2014-10-12 00:55:49)

バンドのテーマ曲であり、
アルバムのハイライト・ナンバーにも推したい名曲。
ドスを効かせて煽るように歌うデビー・ガンのVo、
出出しをトチろうが構わず弾き倒すツイン・リードG、
緩急を飲み込みつつ、前のめりに突進するリズムetc…と
パンキッシュな炸裂感とドラマティックな構成美の融合
(要するに初期IRON MAIDENっすね)が光る逸品です。


SEPULTURA - Arise ★★★ (2006-07-11 22:32:00)

とてつもなくキャッチーな、'91年発表の4thアルバム。
キャッチーと言っても、勿論ポップという意味ではなく(当たり前だ)、この場合は「印象的」という意味でのキャッチーさ。極限まで研ぎ澄まされたリフ、雄々しく吠えまくるド迫力Vo、メロディアスなソロと、要所で聴かせるハーモニー・プレイが効果的なGコンビ、如何にもモーリ・スタジオ仕込みといった感じの、図太く引き締まったサウンドで押し出してくるリズム隊etc・・・そのいずれもが異様なまでにカッコ良く、ゆえに恐ろしいまでにキャッチーさを誇る。
名曲中の名曲①“ARISE"を筆頭に、ストレートなスラッシュ・チューンを多数収録する一方、より整合性の増した③“DESPERATE CRY"のような「ドラマティック」と表現して差し支えない楽曲も収められていて、静と動の対比/緩急の効いた作品全体に漂うダイナミズムは、これまでの作品の比ではない。
本作以降、SEPULTURAはダーク&へヴィ/民族音楽回帰路線を強く打ち出していくわけですが、こんな越えようのない凄まじい完成度のスラッシュ・メタル・アルバムを作ってしまったら、それ(路線変更)も無理ない事のように思える次第。


SEPULTURA - Morbid Visions ★★ (2018-04-15 00:05:13)

SEPULTURAの記念すべき1stフル・アルバム(’86年発表)。ちなみに’91年リリースの国内盤は、OVERDOSEとのスプリット仕様で発売されたEP『BESTIAL DEVASTATION』(’85年)をボーナス・トラックとして追加収録してましたっけね。
劣悪なプロダクションの下で炸裂するのは、エコーに埋もれた咆哮Vo、音質が不明瞭なせいで「刻む」よりも「蠢く」といった趣きのGリフ、ひたすら暴走を繰り返すリズムとがアンサンブル崩壊寸前の所をギリギリに突っ走る、オブスキュアなスラッシュ・メタル。
たった2日間で突貫レコーディングとか、金がなかったんでチューニングが狂ってるとか、スネア・ドラムは破けたままレコーディングに挑んだとか、数々の武勇伝に相応しい地下室臭をプンプンに漂わす本作において、まず何よりも優先されているのは初期衝動の発散。制作当時全員がローティーンだったというメンバーに己の初期衝動の迸りを律する気はゼロであり、そのため演奏に関しちゃメチャ不安定。しかしながら、メンバーの身体能力のキレはこの時点で既に半端なく、中でもイゴールのドラムの迫力は(不安定さ込みで)群を抜いていて耳奪われます。彼の暴れん坊ドラムに引っ張られる形で遮二無二に突っ走る③④⑤⑥辺りは、初期SLAYER、あるいは独産スラッシュ三羽烏に通じるサタニック&ブラッキーな禍々しさと、バンドの磨けば光る曲作りのポテンシャルの高さとが同居した逸品ではないかと。「もっと良い音でセルフカヴァー希望」と表明したくなること必定です。
ちなみに本作、『タモリ倶楽部』においては④が革ジャン獲得、⑥が2017年空耳アワー大賞受賞と空耳の宝庫としても知られているので、そういう意味でもお薦め…か?


SERENITY - Fallen Sanctuary - Words Untold & Dreams Unlived (2010-05-01 00:09:55)



SERENITY - Words Untold & Dreams Unlived ★★ (2010-04-30 23:50:00)

オーストリアは、西部チロル地方ヴェルグル出身の5人組プログレッシブHMバンドが、
'07年にNAPALM RECORDSから発表した1stアルバム。(邦題は『夢言』)
音楽雑誌や、このサイトにおいても高評価を獲得したノルウェーのCIRCUS MAXIMUSと同時期に、
同じレーベル(サウンド・ホリック)から日本デビューを飾り、且つ演ってる音楽も「ポップな
ヴォーカル・メロディにも気を配った、独り善がりにならないキャッチーなプログレ・メタル」
という類似性を備えながら、CIRCUS MAXIMUSの『ISOLATE』に比べると悲しいぐらい話題にならなかった本作。
どっこい、要所にインストの小曲を配して、本編全体をドラマ性たっぷりに物語っていく構成といい
(コンセプト・アルバムってわけではない様だが)、各曲に付けられた仰々しい邦題が決して大袈裟には感じられない、
細部まで練り込まれたドラマティックな楽曲の数々といい、そのクオリティは決して馬鹿に出来たものではない。
取り分け、流麗且つ潤いに満ちたKey、キレのあるメロディックなG、重厚なリズム、そして憂いを帯びたVoとが
一体となって、劇的なドラマを構築していく⑤⑥なんぞ、プログレ・メタルとメロディック・パワー・メタルの
味わいが程好く織り交ぜられた、このバンドならではの名曲かと。
ジャンル・ファン以外にもアピールし得る魅力を備えた力作。CIRCUS MAXIMUSのアルバムが気に入った方はご一緒にどうでしょ。


SERENITY - Words Untold & Dreams Unlived - Engraved Within ★★★ (2010-05-01 00:19:31)

邦題は“務験"
Key大好き人間としては、冒頭の流麗なKeyプレイだけで
ご飯おかわり三杯は可能。
楽曲自体、起承転結を伴ってドラマティックに展開する
隙のない仕上がりで文句なし。


SERENITY - Words Untold & Dreams Unlived - Forever ★★★ (2010-05-01 00:21:50)

リリカルなKeyにキレのあるG、
泣きの入った歌メロに重厚なリズムが心地良く疾走する、
このバンドならではの魅力に溢れた名曲。
邦題は“無限"


SHAH - Beware ★★★ (2013-01-03 19:07:32)

シャー!(挨拶)「ソビエト連邦初のスラッシュ・メタル・バンド」として話題を読んだ3人組が、'88年にATOM H RECORDSからリリースした(テイチクから国内盤も出た)1stアルバム。
昔聴いた時は、トリオ編成、吐き捨て型のハイピッチVo、それに1曲目のタイトルが“TOTAL DEVASTATION”ということもあって「DESTRUCTION影響下のバンド」との印象を受けたのですが、今回改めて聴き直してみたら、歌にしろ演奏にしろ楽曲にしろ、別にDESTRUCTIONっぽさは然程でもなかったなぁ、と。
疾走感自体は大したことないのですが、演奏にはキレがあり、ザクザクと小気味良く刻まれるGリフ、随所で差し込まれるキンと冷えた滑らかなメロディ、そしてタテノリで突っ走るリズムからなるサウンドは、むしろベイエリア出身のその手のバンドに近しい印象。寒々しく底冷えする反面、カラッカラに乾燥しているというプロダクションが、まさしくシベリアの大陸性気候を彷彿とさせ、「おお、ロシアン・スラッシュ!」とエキゾチシズムが刺激されます(?)。
シャープ&メロディックに切り込んでくるGがテンションを高める①、ハジけたBラインに体が動き出す⑤、流麗なG、図太いB、歯切れの良いDsが一体となって突っ走る⑥、冷厳且つ劇的に展開する⑦等、聴き応えのある楽曲が並ぶ本作は、「ロシア産にしては~」等という前置きを全く必要としないスラッシュ・メタルの力作に仕上がっています。


SHAH - Beware - Age of Dismay ★★ (2013-01-03 20:30:36)

アルバムでは比較的ストレートにスラッシュ色が
打ち出されている楽曲ですね。
青臭いコーラスがせっかくの迫力を減じてしまっている感が
無きにしも非ずですが、それでもカッコイイものはカッコイイ。


SHAH - Beware - Save the Human Race ★★★ (2013-01-03 20:28:11)

疾走感よりもグルーヴィなノリの良さが際立つ
楽曲ですが、クランチーな音作りと切れ味鋭い
演奏のお陰でマッタリ感は皆無。
図太い音色で唸りを上げてアクセントを加える
Bもカッコイイですね。


SHAH - Beware - Threshold of Pain ★★★ (2013-01-03 20:32:22)

この曲に限ってはVoが「歌っている」こともあり、
かなり正統派HM風味が強く感じられ、
実際、劇的且つ緩急を飲み込んだ曲展開も
それを裏付けてくれています。
アルバムのクライマックスを飾るに相応しい
堂々たる名曲です。


SHAH - Beware - Total Devastation ★★ (2013-01-03 20:23:16)

スラッシュ・メタルとしては少々スロー・スタート気味かな?
と思わせておいて、聴き進むに従ってグングンとテンションが
高まっていく構成。特にキリリと冷えた音色でGが滑らかに
切り込んで来るラスト・スパート部分のカッコ良さは格別です。


SHAH - Escape From Mind ★★★ (2016-12-21 23:16:54)

ソ連初のスラッシュ・メタル・バンドとも言われたSHAH。本作は彼らが‘87~’88年にかけて録り溜めたデモ音源のリ・レコーディングと、未発表曲の各4曲ずつ、計8曲により構成される3rdアルバム。カセットテープのみの流通だったことから入手は困難を極めたという作品で(まぁ「SHAHのカタログで入手が簡単だったモノなんてあんのか?」っつー話ですけども)、今回の正式CD化は快挙と言えましょうや。
本作がリリースされた'94年と言えば、欧米にはスラッシュ冬の時代が到来。誰も彼もがへヴィ&グルーヴィにうねりまくっていた頃合いなれど、遠く極東ロシアの地にはまだその流行の波は到達していなかったようで、ここで聴かれるのは実にオールドスクールなスラッシュ・メタル。堅実な演奏能力を駆って、荒涼たる冷気を撒き散らしながら小気味良く突っ走る、デビュー作のノリを受け継ぐ名曲②や⑦、そして従来型ロシアン・スラッシュにパワー・メタリックなメロディを合体させた⑤といった楽曲を好例に、そのサウンドからはまるで実家のような安心感が漂って来ますよ。
デビュー当初よりもメロディを歌うようになったVoといい、ドヨンとしたイントロから疾走へ転じるOPナンバー①、“MASTER OF PUPPETS”を彷彿とさせる大作曲③の存在といい、整合性を増した本編は結構あからさまにMETALLICAからの影響を感じますが(バンドはプログレ方面からのインスパイアを主張)、どっちにせよクオリティの高さには微塵の揺るぎもないので、全く以て許容範囲内かと。
再び入手困難になる前に、スラッシュ愛好家の諸兄には是非ゲットをお薦めする1枚です。


SHAH - Escape From Mind - Last In The Night ★★★ (2016-12-23 09:36:18)

せかせかとスラッシーに疾走する「らしい」スピード・ナンバーな
一方で、その上に乗っけられたVoは愁いを帯びた歌メロを
結構しっかりと追いかけていて、これまでの楽曲に比べると
異色な感じを受けます。いやでもこれはこれでカッコイイのですが。


SHAH - Escape From Mind - No Return ★★★ (2016-12-23 09:31:28)

小気味良いタテノリの疾走感に、
インスト・パートではいかにもロシアのバンドっぽい
荒涼として乾いたメロディが絡み、
「あぁ、SHAHだな」と感じさせてくれる逸品。


SHAH - P.S.I.H.O. ★★ (2011-04-12 20:25:37)

DESTRUCTIONを彷彿とさせるスラッシュ・メタル・サウンドがマニア筋から高く評価され、中古盤も高値で取引されている1st『BEWARE』('89年)に比べ、全くと言っていいほど話を聞く機会がない(中古盤も安い)、ロシアン・スラッシャー筆頭、SHAHが'94年に発表した4thアルバムにしてラスト作。
まぁ正直な話、メロディアスに歌うVoに長尺化が押し進められた楽曲、疾走感が失われグルーヴ重視のビートを叩き出すリズム隊・・・と、90年代の流行に色目を使った内容を聴けばそれもむべなるかなと言った感じなのだが、ところが、最近久し振りに引っ張り出して聴き直してみたら、これが案外に楽しめる事に気付かされた。
音作りや演奏はしっかりとしていること、Gが結構頑張って耳に残るフレーズを紡いでくれていること、そして時代が一回りして、この手の音すらオールドスクールに聴こえるようになったこと等がその要因として考えられるが、取り敢えず、ノリの良さと緊迫感を併せ持った②③、エレアコを上手く取り入れ、ツインGがドラマティックにハモる④、ブラック・アルバムを発表した頃のMETALLICAを思わせる横ノリ・ナンバー⑤、それに本編唯一の正統派スラッシュ・ナンバー⑧辺りが聴けた事で、個人的に購入費の元は取れたように思う。リリース当時は「ロシアにまでモダン・へヴィネス症候群は飛び火したのか」と実感させてくれる資料的価値ぐらいしか見出す事が出来なかったのだが・・・。
但し、SHAH入門編には1stアルバムの方がお薦めなのは言うまでもない。願・再発。


SHAW BLADES - Influence ★★★ (2019-05-23 23:32:51)

STYXのトミー・ショウと、NIGHT RANGERのジャック・ブレイズという、DAMN YANKEESでも同じ釜の飯を食っていたコンビが立ち上げたデュオ・プロジェクトSHAW BLADES。'95年に1st『HALLUCINATION』を発表したきり、しばらく音沙汰のなかった彼らから久方ぶりに届けられたカヴァー曲集。('07年発表)
YES、EL&P、BUFFALO SPRINGFIELD、THE HOLLIES、THE ORLEANS等々、カヴァー対象は2人のルーツというべき60~70年代の人気アーティストが中心で、さながら彼らの「青春のサントラ」といった趣き。洋楽に興味がなくともTVやラジオ、あるいは映画、ドラマの主題歌として一度くらいは耳にしたことがあるじゃろうか?という有名なヒット曲/代表曲がズラリ並ぶ本編からは、甘酸っぱくも爽やかな郷愁が薫ります。
一応NIGHT RANGERの僚友ケリー・ケイギー(Ds)がゲスト参加しているものの、ロック色が感じられるのは④ぐらいで、基本アコースティック・アレンジが主体となるサウンドにHR/HM色は皆無。それでも、トミー&ジャックの瑞々しい歌声と、息の合ったボーカル・ハーモニーの美しさには聴き惚れてしまいますし、何より当人たちが楽しんでレコーディング作業を進めたであろうことがじんわり伝わってくる、作品全体を包み込むリラックスした雰囲気の良さに聴いてるこっちも思わず笑顔になってしまうという。特にサイモン& ガーファンクルの⑥、ママス & パパスの⑦の出来栄えは原曲の良さと相俟って絶品ですよ。
ゴールデンウィーク明けのダウナーなハートを心地よく癒してくれる1枚。疲れていてあんまり重いものは聴きたくないという方にお薦め致します。って、日本盤はいつの間にか廃盤かい。


SHAW BLADES - Influence - The Sound of Silence ★★★ (2019-05-24 00:33:48)

近年だとDISTURBEDがカヴァーして大ヒットさせたことでも
記憶に新しい、サイモン&ガーファンクルの代表曲。
トミー・ショウとジャック・ブレイズも、惚れ惚れするぐらい息の合った、
美しさの極みというべきボーカル・ハーモニーを駆使して
この学校の音楽の教科書に載ってしまうぐらいの名曲をカヴァーしてくれています。


SHE-JA - Dual World ★★★ (2014-08-14 11:01:27)

“METAL HEART”(ACCEPT)“WILD FRONTIER”(GARY MOORE)、“BACK TO BACK”(PRITTY MAIDS)等、メタル者なら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲の数々を、多数のゲスト・ミュージシャンを招きカヴァーするというコンセプトが、本作が(タイトルこそ異なれど)実質的に『STAND PROUD!ALL FOR HEAVY METAL』の続編であることを物語っている、'14年発表の屍忌蛇のカヴァー・アルバム。
日本で最もHR/HMが売れていた時期に、メジャー資本で制作され、お祭り騒ぎ的賑々しさに満ち溢れていた前作に比べると、名義のみならず、アレンジも雰囲気もグッと落ち着いて屍忌蛇のソロ作としての趣きを強めた今回は、ANGRAやBLIND GUARDIANといった比較的新しめのバンドの名曲もセレクト。
尤も、Gソロでは彼らしい繊細な泣きメロを注入して個性を主張するスタイルは流石の味。特にそれが上手くハマっているのがJUDAS PRIESTの⑨で、さりげないピアノの使い方や、TESTAMENTの“OVER THE WALL”のフレーズの導入も非常に効果的です。
オリジナルと比べても決して聴き劣りしない実力派ミュージシャン達のパフォーマンスも、前作同様「日本人にしては」等というエクスキューズが不必要なレベルですし、またRIOTの⑩でスピーディなBプレイを披露しているのが、先日急逝したUNITEDの横山明裕であることも謹んで付け加えさせて頂きます。
前作が気に入った方なら当然購入して損のない1枚。HR/HM入門盤代わりにもどうぞ。


SHE-JA - Stand Proud! All for Heavy Metal ★★★ (2013-11-10 22:27:15)

ANIMETALのギタリストとして名を上げた屍忌蛇(G)が'97年に発表した初のソロ・アルバムにして、日本が誇る辣腕ミュージシャン達がHR/HMの名曲をカヴァーする人気企画アルバム『STAND PROUD!』シリーズの第一弾作品。
選曲は、M.S.G.の“ASSAULT ATTACK”、VANDENBERGの“THIS IS WAR”、JUDAS PRIESTの“EXCITER”、RIOTの“WARRIOR”etc・・・と端から挙げていっても明らかな通り、「これがHMだ!」と名刺代わりに使えそうなド王道のド名曲ばかりを収録。80年代前半に発表された楽曲を集中的にカヴァーしてるのも偶然ではありますまい。
ベタと言えばベタ極まりないのですが、それもここまで徹底されると芸になっていると言うか、いっそ清々しいと言うか。腕利き揃いの参加ミュージシャン達のバックアップを受けて、アレンジからは「ANIMETALで取った杵柄」とばかりに遊び心が感じられ、何より“荒城の月”のメロディを合体させたSCORPIONSの“BLACKOUT”を筆頭に、より「泣き度」の高いソロを奏でる屍忌蛇のGプレイが冴え渡っています。イージーリスニング系のピアノ曲をヘヴィにアレンジした“LONGING/LOVE”では、後のVOLCANOの萌芽を見て取ることも。
初めてHR/HMを聴く人向けの入門盤にも使用可能かもしれない1枚です。


SHEELA - BURNED DOWN - RENO ★★★ (2015-02-07 01:58:51)

これは本当に名曲。
あと数年早く発表されていたら
ヒット・チャートを賑わしてたって
不思議じゃなかったのですが・・・。
個人的にアルバム自体は期待していた方向性とは
異なったのですが、この名曲の哀愁っぷりには、
期待以上のものがありましたよ。


SHELL SHOCK - Beyond Resurrection ★★★ (2017-05-31 00:12:49)

活動後期の実験精神剥き出しな音楽性にはイマイチ馴染めず、また復活作『肆-SHI』にしても、タイトルからしてそっち系の匂いが感じられたため購入を躊躇していたSHELL SHOCKの最新作は、何と初期スラッシュ・メタル時代の楽曲をリ・レコーディングした6曲入りEPとのこと。なら買うしかねえだろ!と。
選曲は、それぞれ1st『MORTAL DAYS』から3曲、2nd『PROTEST AND RESISTENCE』から1曲、3rd『FIEL LARM』から1曲、そしてX、DOOM、JURASSIC JADE、GROUND ZERO、ROSE ROSEと共に参加したオムニバス盤『SKULL THRASH ZONE Vol. 1』から1曲というチョイス。正直「新たな解釈」の名の下に、それらが前衛的な変貌を遂げているのでは…との不安は直前まで拭いきれませんでしたが、しかし実際は、例えば構築美すら感じさせる③のGソロもしっかり再現していることからも明らかな通り、変にアレンジを弄ったり崩したりはしていない。寧ろインディーズ制作ゆえの音質の粗さが改善され、更に切れ味鋭い演奏も得て、ストレートにビルドアップして蘇った往年の名曲の数々を前に、思わず安堵の溜息を洩らすと共にガッツポーズを決めた次第。
Voのエフェクト処理に関しては好悪が分かれそうですが、「SHELL SHOCKがスタジオ盤でここまで直球勝負のスラッシュ・メタルを演ってくれたのは一体いつ以来だ?」という喜びの前には「細けぇことはいいんだよ!」と。雑誌等ではかなり厳しいジャッジを下されていましたけれども、本作単品で評価すれば十二分に楽しめる1枚ではないでしょうか?個人的にはこの路線でフル・アルバムを是非。


SHELL SHOCK - FIEL LARM ★★ (2007-05-03 18:46:00)

前作『PROTEST AND RESISTANCE』から目立ち始めたハードコア・テイストを更に大胆に導入、
より実験色を強めて'92年に発表された3rdアルバム。
全24曲の収録曲中、単なるSEから、ノイズ、カントリー、ジャズ、インダストリアルまで、
多彩な要素を飲み込んだインスト・ナンバーの数々が本編の大半を占める実験的な作風と、
楽曲の輪郭がハッキリしない轟然とした音作りが好きになれず、購入当時は2、3回聴いたきりで
売り払ってしまった覚えがあるのだが、数年後、改めて買い直して聴いてみたら、これが案外悪くなかった。
インスト・ナンバーへの印象の悪さは当時と大差ないのだけれども、それを抜きにして
②⑤⑦⑩⑰⑳(22)(23)といった硬質でアグレッシブなスピード・チューンのみを摘み食いしてみれば、
最早単純なスラッシュ・メタルを演っているわけではないにしろ、これまでのSHELL SHOCKの
作品同様、十分に質は高く楽しませてくれる。
特に、ドスの効いたVoとわめき型のVoが左右のチャンネルに振り分けられ、波状攻撃を仕掛けてくる
ツイン・ボーカル(時にトリプル・ボーカル)のカッコ良さは特筆モノ。
全体的にアバンギャルドな仕上がりなれど、メンバーのスキルの高さゆえ、付け焼刃な印象が全くないのも良い。


SHELL SHOCK - MORTAL DAYS ★★ (2006-07-09 20:54:00)

EXPLOSION WORKSから'89年に発表した1stアルバム。総合的な完成度、殊に「問答無用のスピード感」という点に措いては、
2nd「PROTEST AND RESISTANCE」に一歩譲るものの、本作もまた非常に優れた内容であることは疑いようが無い。
次作「PROTEST~」(というかHOWLING BULL RECORDS移籍)以降は、大幅にハードコアの要素を注入して楽曲の
ビルドアップを図る彼らだが、この時点ではまだ高純度のスラッシュ・メタルを体現。Voも直線的な
ハードコア・スタイルではなく、ダーティな歌唱ながらメロディを追いかけているし、何より、単なるアクセントに
留まらず、しっかり構築され曲を盛り上げる、メロディアスなGソロが大変素晴しい。
取り分け、パンキッシュに爆走する⑥、尖がった曲調に劇的なGソロが映える⑧、そして、メロウなイントロから一気に疾走へと
転じる高速スラッシュ・チューン⑨といった、三ツ星級の名曲が畳み掛けるように連続する後半の流れはスラッシャーなら必聴。
尚、長らく廃盤状態が続いていた本作だったが、今年遂に再発が叶い、しかもボーナス・トラックとして、
デビュー・シングル『SELF DEFENCE』、カセット作品『INTO SHELTER』、オムニバス盤提供楽曲は勿論のこと、
果ては未発表の蔵出しライブ音源までが大量に追加収録され、殆ど初期音源集の様相を呈しているのだから有り難い。
既に旧盤を持っているファンも、買い直す価値が大いにある1枚かと。


SHELL SHOCK - MORTAL DAYS - DANGER ZONE ★★★ (2009-03-18 22:19:23)

触れれば切れそうな鋭利な疾走感と、
本編随一の構築美を誇る、ドラマティックなGソロの
コントラストも鮮やかな名曲。


SHELL SHOCK - MORTAL DAYS - KILLED BY MYSELF ★★ (2009-03-18 22:17:02)

ほんのりパンキッシュな雰囲気を漂わせつつ
猛烈な勢いで突っ走る、理屈抜きにカッコイイ
高速スラッシュ・ナンバー。


SHELL SHOCK - MORTAL DAYS - THE CAGE ★★★ (2009-03-18 22:22:02)

2nd以降はハードコア・テイストが増強されていくSHELL SHOCKだが、
メロウなイントロから激烈な疾走を開始し、
最後は再びメロウなアウトロで締め括られる本曲は、
「正統派HMに根差したスラッシュ・メタル」
ならではのカッコ良さに満ち溢れた仕上がり。


SHELL SHOCK - Nothing Solves Nothing ★★★ (2023-01-19 00:09:39)

国内スラッシュ・シーン黎明期から始動し、一度の解散期間を挟んで既にキャリアが35年に到達しているという東京出身の古豪SHELL SHOCKが’22年に発表した6thアルバム。
3rd『FIEL LARM』(’94年)以降は音楽性をどんどん拡散させ、デス・メタル/グラインド・コア/ノイズ/インダストリアル等々、多彩なジャンルを横断するアバンギャルドかつプログレッシブなサウンドを意欲的に追求していましたが、’18年リリースのEP『BEYOND RESSURECTION』で初期の楽曲のセルフ・カヴァーに挑んだのを転機に原点回帰の姿勢を表明するようになり、今回もそのスタイルは継承…というか、全編スピード・ナンバーの固め打ちで攻めて来る本作は、よりハッキリと軸足がスラッシュ・メタル方向に振り戻されたことを物語る仕上がり。
カオティックな曲展開やヒネリの効いたコード進行、複雑精緻なリズム・ワーク等、最早このバンドを語る上で欠かすことの出来ない重要な個性となったエッセンスを脈々と息衝かせつつも、やはりそれ以上に印象に残るのは前掛かりな突撃感覚や刺々しいアグレッションの方。ゲストに迎えられた羽鳥恭充(CASBAH)のド迫力Voを得てオラオラと威圧的に押し出して来る⑪、緊迫感と切れ味の鋭さを伴って突っ走る⑬、そしてダブルVoとツインG、暴風の如きリズムが猛然と畳み掛けて来る⑭といった痺れるスラッシュ・ナンバーの数々は、まるで初期2作を聴いているような錯覚を覚える程ですよ。
演りたいことと演るべきことに、バンドがきっちりと落としどころを見つけた会心作。これ聴いたらもう「方向性に迷いが感じられる」なんて声はなくなるんじゃないでしょうか。


SHELL SHOCK - PROTEST AND RESISTENCE ★★ (2006-12-05 22:05:00)

今から十数年前、BURRN!!のスラッシュ・メタル特集を読んでいたら、本作が海外のバンドに混じって
「お薦めの1枚」として取り上げられていて、早速買いに走った記憶がある(うろ覚え)'91年発表の2ndアルバム。
高純度のスラッシュ・メタル・アルバムだったデビュー作『MORTAL DAYS』に対し、今回はハードコア度が
大幅に増しているのが大きな特徴で(⑦⑪のような瞬間最大風速ナンバーを収録)、直線的な歌メロを
ドスを効かせて歌いこなす迫力のVo、リフにソロにと鋭く切り込んでくるG、作品のビルドアップに大きく貢献、
リード楽器の役割も果たしているB、急き立てられるかのように疾走するDs、そして無駄なく
タイトに引き締まった楽曲と、いずれもハイテンションなカッコ良さを誇る。特に、イントロ①を皮切りに、
極上のスラッシュ・チューンが連打される②~④の猛ラッシュには、スラッシャーならノックダウン必至。
B主導で突っ走る一際キャッチーな⑫、中間部のメロウなBソロ冴える⑬といったスピード・チューンも素晴しい。
スラッシュ度とハードコア度の比率が絶妙な本作、SHELLSHOCKの最高傑作と言えばやはりコレでしょうか。


SHELL SHOCK - PROTEST AND RESISTENCE - POISON ★★★ (2006-04-11 22:47:48)

不穏なSE“SLAMMIN'…BUT THRILLIN'"とヘヴィ・パートをイントロ代わりに、
アルバムのOPを猛スピードで駆け抜ける激烈スラッシュ・チューン。
「叙情的」と言うのとは一味違う、メロディアス且つ攻撃的なギター・ソロにも耳惹かれるが、
やはりこの曲の肝はリフ。
切迫感溢れるシャープなリフと、直線的歌メロをドスを効かせて歌いこなすハードコア調のVoとが、
互いに煽り合ってテンションを急上昇させていく終盤の展開は、小便チビりそうになるぐらいカッコイイ。


SHELL SHOCK - PROTEST AND RESISTENCE - THE ANSWER OF TECHNOLOGY ★★★ (2006-03-30 21:36:00)

左右のチャンネルから波状攻撃を仕掛けてくるヴォーカル(MANOWARの得意技のアレ)、
ゴリゴリと曲を引っ張るベース、それに攻撃的なギター・リフとが一丸となって、前のめりに突進する様が最高にカッコイイ。
聴いてると勝手に体が動き出す!
3rdアルバム以降は急速にハードコア化を強めていくけれど、ここではまだスラッシュ度とのバランスが丁度良い塩梅で、
それがまたメタル者の耳には心地よい。


SHELL SHOCK - Unpredictable ★★ (2020-04-09 01:41:14)

日本のスラッシュ・シーン黎明期を支え、再結成を遂げたSHELL SHOCKが自ら設立したレーベルSYSTEM KILLS RECORDINGSから'19年に発表した、通算5枚目のスタジオ・アルバム。
事前に「SHELL SHOCKがスラッシュ・メタル路線に回帰した!」との評判を耳にしていましたが、実際はそこまでシンプルなサウンドではなく。OPナンバーのイントロ数秒を聴いただけで明らかなように、一筋縄では行かないコード進行や、ヒネリを効かせたリフとリズムの絡み、達者な演奏に支えられストップ&ゴーを繰り返す曲展開等々、活動後期や復活作に顕著だったプログレッシブ&アバンギャルドな試みは本作にも着実に息衝いています。
と同時に、収録曲のランニング・タイムは大半が2~3分台、疾走パートを基軸とする曲調や、威勢の良いギャング・コーラス等、アグレッションをスピードに乗せて叩きつけて来るサウンドは確かにスラッシーな取っ付き易さを大幅回復してくれていて、強いて言うなら復活作『肆—SHI—』と、初期スラッシュ・メタル時代の楽曲のカヴァー集だったEP『BEYOND RESURRECTION』の中間ぐらいに位置する作風といった趣き。特に緩急を交え、切迫感を煽りながら突っ走る⑪のカッコ良さには、そうした本編の美味しいトコ取りな魅力が凝縮されていますよ。
近作は「迷走している」との批判に晒されもしましたが、そうした試行錯誤が糧になったからこそ、かつて硬質な突進力と、ミュージシャンとしてより熟成された現在のSHELL SHOCKのやりたいことを無理なく溶け合わせた本作の完成があったのではないかと。


SHELL SHOCK - Unpredictable - Fragment ★★★ (2020-04-10 00:17:19)

スラッシュ・メタル然としたエッジの鋭さで刻まれるGリフを
フィーチュアして突っ走るアルバムのラスト・ナンバー。
終盤のオラオラな突進ぶりにメタル魂が煽られますよ。


SHIVA(80'S) - Firedance ★★★ (2020-05-12 00:32:23)

一口にNWOBHMといっても、スラッシュ・メタル誕生を促したアグレッシブなバンドからポップ/メロディアスな方向に振り切ったバンド、更には70年代に隆盛を極めたプログレッシブ・ロックの精神を継承するバンドまで、その音楽性は非常に多岐に亘っていました。
ヒンドゥー教最高神からバンド名を頂く英国はブリストル出身の3人組が、’82年発表の本デビュー作で聴かせてくれるのは、レザー&スタッドで身を固めたメンバーと、ソフト帽&スーツ姿のメンバーが入り混じる一風変わったアー写の出で立ちからも窺い知れる通り、NWOBHMのエッセンスとプログレッシブ・ロックのエッセンスが溶け合わされた個性的なHRサウンド。同じ方向性&トリオ編成ということでLIMELIGHTのことを思い出したりもしますが、“ASHES TO ASHES”みたいな分かり易い名曲も書いてくれていたLIMELIGHTに対し、こっちは万人向けとは言い難いクセの強さが全編に漲っているという。
逆に言えばそこが魅力でもあるわけで、ヘタウマVoが気怠げに歌う抒情メロディと美しいボーカル・ハーモニー、沈み込むようなリフを刻むバンマス役も担うBによって生み出されるスペーシーな浮遊感が印象的な②、情熱的に弾きまくるGがフィーチュアされた劇的な⑤、中間部で「別の曲が始まったの?」つーぐらい曲調が不気味に変化するバンドのテーマ曲⑩等は、とりわけこのバンド独特の世界観が色濃く描写された名曲。比較的シンプルに疾走する、ノリ易い⑥みたいな楽曲も味わい深いですけどね。
現在に至るまでバンドが再結成をしていないことも、本作が纏うミステリアスな魅力を底上げしてくれているように感じられる1枚。


SHIVA(80'S) - Firedance - En Cachent ★★★ (2020-05-13 00:21:40)

妙に艶っぽいBがリード楽器の役割を果たすことで
HR的ヘヴィネスと、プログ・ロック的なドラマ性が同居した
独特な魅力が浮遊するこのバンドならではの名曲に仕上がっています。
美しいボーカル・ハーモニーも印象的。


SHIVA(80'S) - Firedance - Stranger Lands ★★★ (2020-05-13 00:37:24)

素直に乗らせてはくれない、引っ掛かり気味に進行する
山あり谷ありな曲展開と、哀愁迸るVoの熱唱、
それにエモーションを滾らせたGソロとが楽曲を
一層ドラマティックに盛り上げる、本編指折りの名曲の一つ。


SHOK PARIS - Concrete Killers ★★★ (2022-03-16 22:04:07)

ヘタウマなメンバーの似顔絵がB級感を醸し出すジャケットだけ見ると「本当にメジャー作品?」と首を捻りたくなりますが、前作で目出度くメジャー・レーベルとの契約をゲットしたSHOK PARISが'89年に発表し、日本デビュー作となった(そして残念ながら最終作ともなった)3rdアルバム。
二井原実とグラハム・ボネットを足して、ロニー・J・ディオで割ったような特濃な声質の持ち主であるシンガーは今回もパワフルに歌いまくっていますが、劇的なメロディを歌えばその魅力を十二分に引き立ててくれるこの声、逆にフック不足だと暑苦しい声質が聴き手の疲労感を倍増させる諸刃の剣でもあり、特に曲調はスピーディながら、アメリカン・ドリームを高らかに歌い上げる歌詞とメロディ・ラインは結構大味で捉えどころがないOPナンバー①などは、そうした彼氏の弱点がもろに露呈してしまっています。
そんなわけで立ち上がり早々猛烈な不安感に襲われる本作でしたが、2曲目以降は泣きのGが映えるヘヴィ・バラード③から、ドスの効いたカッコ良さに「こっちをOPナンバーにすれば良かったのに」と思わされる⑪に至るまで、熱血VoとツインGを存分に活かした、アメリカのバンドらしからぬ硬派な正統派HMサウンドを追及。メジャー・リリースと言えども一切日和ることのない姿勢が頼もしいったらありゃしません。勇壮かつ劇的な②はSHOK PARIS屈指の名曲の一つではないでしょうか。
以前はメジャー流通ということで一番入手が容易だったのですが、1stと2ndが再発された現在では、逆に最も手に入れにくいアルバムになってしまったことが惜しまれる1枚です。


SHOK PARIS - Concrete Killers - The Heat and the Fire ★★★ (2022-03-19 02:01:49)

ツインGがハモリ倒すイントロだけで名曲の風格は十分。
顔も声もクドめのVoですが、この曲のような憂いを帯びて
ドラマティックなメロディを歌わせれば、それも全て長所へと転化。
曲調はJUDAS PRIESTからの影響を伺わせる硬派さな一方、
コーラスは厚めに盛ってキャッチーな魅力も漂わせる辺りは
アメリカのバンドならでは。


SHOK PARIS - Go for the Throat ★★★ (2017-04-05 23:22:55)

地元クリーブランド発のコンピ盤『CLEVELAND METALS』(’83年)に、名曲“GO DOWN FIGHTING”を提供したことが縁でAUBURN RECORDSと契約を結んだSHOK PARIS(コンピ盤の選曲を手掛けたのが後にAUBURN RECORDSを設立するティム・スチュワートだったという)が、同レーベル第1弾アーティストとして’84年に発表したデビュー作。
NWOBHMにアメリカンな解釈を施して再構築。威勢の良いコーラスをフィーチュアして、バラードなんぞには目もくれず迫り来るUSメタル・サウンドは、いかにも肉食系のパワーと重厚感が横溢。“TOKYO ROSE”や“ON YOUR FEET”といったキラー・チューンがギラリと光を放っていた次作に比べると、キメ曲不在の本編はやや起伏に乏しいのですが、それを差し引いてもこの完成度の高さは立派ですよ。
本作の武器は、JUDAS PRIESTお手本の色艶で印象的なメロディを次々に紡ぎ出す2本のGと、グラハム・ボネットとロニー・J・ディオと二井原実をシェイカーに掛けて一気に飲み干したような暑苦しい声質のVo。この二枚看板を前面に押し出した楽曲の数々は、クドイ熱唱が映える④や、ツインG主導で正統派HM然とした盛り上がりを聴かせる⑤、パワフルに突き進む⑥、疾走ナンバー⑩等、バンドの非凡な才能を感じさせる聴き応え十分のものばかり。再発盤CDでは、冒頭で述べた前任Voのバディ・マコーマックが歌う“GO DOWN FIGHTING”がボーナス・トラックとして収録されているのも嬉しいですね。
本作の完成度と評判の良さが認められ、SHOK PARISはメジャー・シーンへと打って出ていくこととなるのですが、それも当然の帰結のように思える充実作。


SHOK PARIS - Go for the Throat - Chosen Ones ★★★ (2017-04-06 23:01:07)

DIOがJUDAS PRIEST風の楽曲を演奏しているような?
パワフルな正統派HMナンバー。
重厚な前半、テンポアップして2本のGがハモリながら
疾走する後半の劇的な盛り上がりは「これぞHM」という
王道のカッコ良さに満ち溢れていますよ。


SHOK PARIS - Steel and Starlight ★★★ (2015-11-11 22:24:28)

オハイオ州クリーブランド出身でツインGを擁する5人組が、'87年に発表した2ndアルバム。
その昔、日曜洋画劇場でヘヴィ・ローテーションされてたB級SFアクション映画の傑作『ヒドゥン』劇中のカーチェイス・シーンで流れ、人間に寄生するナメクジ型宇宙人さえもガンガンにヘッドバンギングさせていたスピード・ロックの名曲“ON YOUR FEET”聴きたさに、輸入盤屋を散々巡って漸く本作をゲット。そしたらそれ以外の楽曲も逸品揃いじゃありませんか。
DIO風の“GO DOWN FIGHTING”、泣きのツインGが劇的に絡み合う様に胸打たれる“TOKYO ROSE”(RIOTのカヴァーではない)、猛烈な哀愁が滲み出す“CASTLE WALLS”、そして鋭利なGリフが疾走する“EXHIBIT A”etc・・・、こりゃ足を棒にして探し回った甲斐がありましたな!と。
こうした楽曲のインパクトを更に増大させるのが、ロニー・J・ディオとグラハム・ボネットがマッスル・ドッキングしてしまったかのようなシンガーのメーター振り切った熱唱ぶり。ばんからラーメンの豚骨スープばりにクドイ歌声は人によっては胃もたれ必至なれど、慣れると病みつきになる・・・かも。少なくとも「クリーブランドのDIO」と呼ばれた(かどうか定かじゃありませんが)、アメリカンな押し出しの強さとヨーロピアン風味の泣きを併せ持つ、彼らのパワフルなHMサウンドを歌い上げるのにこれほど相応しい人材はいませんて。


SHOK PARIS - Steel and Starlight - Castle Walls ★★★ (2015-11-13 22:59:04)

アコギ・インストの前半と、バンド全体が加わる後半の
二部構成で組み立てられたドラマティックなナンバー。
泣きのGによって先導される哀愁に満ちた曲調の中で
青筋立てたシンガーの力みまくりの熱唱が
笑いと感動を呼び起こします。


SHOK PARIS - Steel and Starlight - Exhibit A ★★★ (2015-11-12 23:09:22)

これぞメタル!というイントロのGリフだけで
星3つ進呈したくなるカッコ良さ。
AUBRN RECORDS用にバンドが作成した2ndアルバムの
オリジナル・バージョンでは、ピアノのイントロ付きで
この曲がOPナンバーでした。
まるで、床まで油でギトギトなラーメン屋のように
クドイぐらいパワフルなシンガーの歌唱も
楽曲の持つ無闇矢鱈なパワーを増幅してくれていて◎。


SHOK PARIS - Steel and Starlight - On Your Feet ★★★ (2015-11-11 22:46:33)

SFアクション物の大傑作として、個人的に
愛して止まない「ヒドゥン」冒頭の
カーチェイス・シーンの緊迫感と疾走感を盛り上げた
スピード・ロック(DIO風の表現)の名曲。
そりゃこんなん聴かされたら、宇宙人だって
頭振りたくなりますわな。


SHOK PARIS - Steel and Starlight - Tokyo Rose ★★★ (2015-11-12 23:23:44)

タイトルと歌詞は勿論、太平洋戦争中に日本軍が
連合軍に対し行ったプロパガンダ放送の
女性アナウンサーの愛称に因む。(RIOTの代表曲とは同名異曲)
イントロからGが泣きまくりで、
「トキオォ~ロォ~ズゥ~♪」という猛烈にクドイ
シンガーの歌い回しが、楽曲の哀愁を引き立ててくれています。


SHOOTING STAR - Burning ★★★ (2012-08-19 00:54:52)

再度ロン・ネヴィソンとタッグを組んで作り上げられた'83年発表の4thアルバム。
ラジオ・ヒットとなった②⑧、それに⑨といったポップな躍動感に満ちた楽曲が顕著に表している通り、ヴァイオリン奏者を擁しながらもそれを飛び道具としては用いず、飽くまでアンサンブルを重視してコンパクトにまとめられた「脱プログレ・ハード、おいでませAOR/産業ロック」な方向性を模索する本作ですが、次の『SILENT SCREAM』程はそっち路線に開き直れておらず、随所にプログレ・ハード時代の残り香を漂わせた作風は、バンドが未だ過渡期にある事実を物語っています。
但し、モータウン・バンドFOUR TOPSの名曲の秀逸なカヴァー⑦を含む本編は、前作を大きく上回る捨て曲なしのクオリティを提示。また全体的にハードネスの底上げが図られているのは、ポップ方向に振れた前作の反動か、はたまた当時アメリカで隆盛の機運を見せ始めていたLAメタルの存在に触発されたのか。
中でも、ヴァイオリンとGが一体となって引っ掛かり気味に刻むリフがKANSASを彷彿とさせる⑥は本作ならではの名曲と言えましょう。勿論、哀愁を帯びたメロディと壮大且つ感動的な盛り上がりが胸を打つ⑤⑩といった、プログレ・ハード・テイストが強めに出た楽曲の魅力も相変わらず。


SHOOTING STAR - Burning - Burning ★★★ (2012-08-19 23:58:59)

ロン・ネヴィソン繋がりで
中期JOURNEYを思わせる
雄大なスケール感を備えた
アルバム表題曲でもある
メロハー・チューン。


SHOOTING STAR - Burning - Reach Out I'll Be There ★★★ (2012-08-20 00:11:53)

モータウン所属のR&Bコーラス・グループFOUR TOPSの
全米№1ヒット・ソングのカヴァー。
(確かリッチー・コッツェンもカヴァーしてましたっけね)
元々メンバー全員が歌えるバンドゆえ
文句ないハマリっぷりのうえ
ビートを効かせたHR調のアレンジにも◎を進呈したい。


SHOOTING STAR - Burning - Reckless ★★★ (2012-08-20 00:19:03)

ランニング・タイムは4分台とコンパクトに
聴き易くまとめられていますが、バイオリンを
巧みに用いたドラマティックなアレンジ等、
プログレ・ハード・バンドとしてのバンドの出自が
はっきりと確認できるアルバム後半のハイライト・ソング。


SHOOTING STAR - Burning - Straight Ahead ★★★ (2012-08-20 00:22:06)

ちょっぴりLAメタル的な味わいも感じさせてくれる
力強く高揚感に溢れたOPナンバー。
本編への没入度を効果的に煽ってくれるインスト序曲
“PREVIEW”とセットでお楽しみ下さい。


SHOOTING STAR - Burning - Winner ★★★ (2012-08-20 00:04:03)

個人的にアルバムで一番お気に入り。
Gとバイオリンがユニゾンで刻むリフが
『暗黒への曳航』の頃のKANSASを思わせる
ハードさとキャッチーさのバランスが絶妙な名曲で、
ラジオ・ヒットとなったのも納得ですよ。


SHOOTING STAR - Circles ★★★ (2020-07-02 00:40:38)

結成以来、長年バンドを支え続けてきたオリジナル・メンバーのヴァン・マクレイン(G)が闘病の末、'15年に逝去。彼の遺族の後押しもあり、現在も活動を継続中というミズーリ州カンザスシティ出身のベテラン・メロハー・バンドSHOOTING STARが、'07年にFRONTIERS RECORDSから発表した8枚目のフル・アルバム。
久々に国内盤のリリースが実現しただけでなく、恐らく所属レーベルから要請があったのであろう(推測)、バイオリン奏者がメンバーの一員として名を連ね、またTHE STORM、707、TWO FIRES他での活動で知られる名シンガー、ケヴィン・チャルファントが加入。ライブには不参加の雇われ仕事ながら文句なく素晴らしい歌声を披露する等、お膳立てはバッチリ。たおやかな抒情メロディと、中西部のバンドらしい埃っぽいハードネス、ほんのり薫るプログレ・ハード的構築美を兼ね備えたサウンドは、ファンがSHOOTING STARに期待する路線をきっちり踏襲してくれています。
特にOPナンバー①、エキゾチックでドラマティックな雰囲気を纏った③、どこかKANSASっぽいバラード⑤といった秀曲からも明らかなように、バイオリンが単なる刺身のツマでなく、リフを刻んだりソロを取ったりと、ちゃんとアレンジの一部として有効に機能している点からも、原点に立ち返って曲作りに励んだバンドの気合の程が伺えるのではないかと。スリリング且つメロディアスに弾むシャッフル・チューン⑧なんて、このレベルの名曲が生み出せるならアナタ方はまだまだイケル!と親指を立てたくなる魅力を発散していますよ。
日本盤も手に入るので、何だったらSHOOTING STAR入門盤として如何でしょうか。


SHOOTING STAR - Circles - We're Not Alone ★★★ (2020-07-03 01:05:41)

哀愁を増幅するバイオリンと、ケヴィン・チャルファントの
伸びやかなVoが映える、憂いを湛えて軽快に弾むシャッフル・ナンバー。
Keyの使い方等、確かにバーニー・ショウ時代のURIAH HEEPっぽさ有り。
結成から30年を数えてもこのレベルの名曲を生み出せるのですから
脱帽です。


SHOOTING STAR - Hang On for Your Life ★★ (2012-03-19 06:59:02)

米産ロック・バンドとしては初めて英国のVIRGIN RECORDSと契約を交わし、'80年に発表したセルフ・タイトルのデビュー作が好評を博したSHOOTING STARが、トミー・ボーリンやミック・ロンソンとの仕事で知られるデニス・マッケイをプロデューサーに迎えてレコーディング作業を行い、'81年に発表した2ndアルバム。
いかにも南部出身バンドらしいワイルドな演奏と、メンバーにヴァイオリン奏者を擁する強みを活かしたプログレ・ハード調の繊細なアレンジとが同居したメロハー・サウンドは、基本的には前作のスタイルを踏襲。ヴァイオリンの哀切な調べに胸打たれる1曲目“FLESH & BLOOD”なんて、これだけでアルバムの出来の良さを確信させるに十分な名曲ですよ。
イギリスでHR/HMが隆盛を見せていた時期と重なるためか、シンプル且つコンパクトにまとめられた楽曲からはプログレ色が減少傾向にあり、特にシングル・カットされPVも作られたらしいブルーカラー・ソング“BREAKOUT”は、FM局のエアプレイ・チャートで好リアクションを獲得したというバンドの代表曲の1つ。
尤も、個人的にはそれらハード・ロッキンな楽曲群よりも、彼らならではのメロディ・センスが堪能できる前述のOPナンバー“FLESH~”や、小粋且つプログレ・ハード風の柔和な空気に包まれた“HOLLYWOOD”、感傷的なバラード“SWEET ELATIA”といったメロウな楽曲の方がお気に入りなのですが。
また、エッジの効いた演奏とキャッチーな哀メロが無理なく融合した“TEASER”、グルーヴィなアフリカン・リズムに乗って凝った曲展開が開陳される“YOU'VE GOT LOVE”もユニークな個性が光る逸曲。


SHOOTING STAR - Hang On for Your Life - Flesh and Blood ★★★ (2012-03-19 21:21:05)

ヴァイオリンが奏でる優美で哀愁に満ちた
イントロだけで掴みはOKな哀愁の叙情HRナンバー。
華麗に踊るヴァイオリンに、複数のシンガーが
交互にリードVoを担当し時に美しくハモる
このバンドの個性もしっかりと発揮されています。


SHOOTING STAR - Hang On for Your Life - Hollywood ★★ (2012-03-19 21:12:35)

プログレ・ハード風味が一際強く漂って来る名曲。
といってもドラマティックな大作ではなく、
Voが歌うポップなメロディ、お洒落で粋なアレンジを
活かしてコンパクトにまとまっている辺りが
本作ならではの味わい。


SHOOTING STAR - Hang On for Your Life - Sweet Elatia ★★★ (2012-03-20 07:27:08)

2ndアルバムをしんみり締め括る哀愁のバラード。
リリカルなピアノとヴァイオリン、泣きを孕んだVoの歌声、
3人のシンガーが織り成す美しいハーモニーとが
じわりと胸と涙腺に沁みてきますねぇ。


SHOOTING STAR - Hang On for Your Life - Teaser ★★★ (2012-03-19 21:08:02)

ワイルドで泥臭いハードネスが横溢する
ヴァースから一転、美しいボーカル・ハーモニーと
物悲しげなヴァイオリンの旋律がキャッチーな
サビメロへと転調する展開が非常に秀逸な
アルバムでも1、2を争う名曲。
一説には、死去したトミー・ボーリンに
捧げられているとかいないとか。


SHOOTING STAR - III Wishes ★★ (2012-03-20 07:27:59)

プロデューサーに、以降、数作に亘ってコンビを組む事となる売れっ子ロン・ネヴィソンを迎えてレコーディング、'82年に発表された3rdアルバム。
SHOOTING STARのカタログ中、最もハードな作風に仕上がっていた前作から一転、Keyサウンドを前面に打ち出して、プログレ色や南部的な泥臭いハードネスを払拭、代わりにポップな味わいが強調された本作は、例えばヴァイオリン大活躍のOPナンバー“ARE YOU READY”からさえもプログレ色や土の匂いが殆ど漂って来ないという徹底振りで、その洗練された作風はやはりロン・ネヴィソンの起用効果と言うべきか。
「ありがちなJOURNEYクローンになってしまった」「ロン・ネヴィソン許すまじ」と批判の声も少なからず上がった本作ですが、もともと彼らのメロウ・サイドに魅力を感じていた身としては、今回もまた良く出来たアルバムとして十分楽しませて貰った次第。
中でもしっとりとした哀メロに聴き惚れる“HEARTACHE”や、まるでNHKで放送されている海外ドラマの主題歌の如き爽やかさを誇る“WHERE YOU GONNA RUN”、アルバム収録曲の中では比較的ハードな仕上がりの“LET IT OUT”、分厚くスペーシーなKey主体で展開されるスケールの大きなバラード“WHOLE WORLD'S WATCHING”辺りは、メロディ愛好家ならグッとくること請け合いの名曲じゃないでしょうか。
尤も、これ!といった強力な決め手に欠くフラットな構成など、前2作と比較して弱さを感じる部分があるのも実際のところで、これはやはり本作がプログレ・ハード路線からAOR/産業ロック路線へと移行していく過渡期の産物であったからなのかな、と。


SHOOTING STAR - III Wishes - Heartache ★★★ (2012-03-20 23:36:03)

タイトル通り感傷的な哀メロに貫かれた
叙情バラード。
3rdアルバム中、最も美しいボーカル・ハーモニーが
堪能できる名曲でもあります。


SHOOTING STAR - III Wishes - The Whole World's Watching ★★ (2012-03-20 23:48:52)

従来のプログレ・ハード色はほぼ払拭された
3rdアルバムですが、この曲には仄かにその名残りが
感じられなくもないような・・・。
伸びやかなゲイリー・ウェストの歌いっぷりと、
透明感を湛えてスペーシーな雰囲気を演出してくれる
Keyと美麗なボーカル・ハーモニーに聴き惚れます。


SHOOTING STAR - III Wishes - Where You Gonna Run ★★★ (2012-03-20 23:42:28)

NHKで放送されたファミリー物海外ドラマの
テーマソングのような、洗練された爽やかさに
心洗われる名曲。
プログレ・ハードというよりも、
完全にAOR/産業ロックのノリですね。
(勿論、良い意味で)


SHOOTING STAR - Shooting Star ★★★ (2012-03-18 07:10:33)

幼馴染のヴァン・マクレイン(G)とロン・ヴァーリン(B)がカンザス・シティにて結成した6人組、'80年発表の記念すべき1stアルバム。
3人のリードVoに、2人のGとKey奏者、そしてヴァイオリン奏者を含む6人編成の大所帯と聞けば、てっきり同郷のKANSASばりのプログレ・ハード系バンドかと思いきや、THE BEATLESに触発されてミュージシャンを志したという彼らが聴かせてくれるのは、高いポピュラリティを有したラジオ・フレンドリーなメロハー・サウンド。KANSASはKANSASでも中期(『VINYL CONFESSION』の頃の)KANSASでしたね。
とは言え、そこはやはりデビュー作。ロン・ネヴィソンと組んだ後の作品群に比べれば洗練の度合いはそれ程でもない代わりに、如何にも南部風の土の匂いを運んでくるGは太くハードな音色で存在感を主張しているし、何よりKeyとヴァイオリンを用いて、時折効果的に編みこまれるプログレ・ハード調のアレンジが良い具合に本編のアクセントとなっています。
躍動感溢れる演奏とメロディ・センスのマッチングが秀逸な“BRING IT ON”、熱くハードに盛り上がる哀愁のメロディにグッとくる“TONIGHT”、そして楽器陣のスリリングな応酬とドラマティックな曲展開が圧巻のアルバムのハイライト的存在“LAST CHANCE”を筆頭に、充実した楽曲がズラリ顔を並べる1枚。
下積み時代の長さは伊達じゃねえな!と思わされる名盤です。


SHOOTING STAR - Shooting Star - Bring It On ★★ (2012-03-18 21:22:16)

いかにもアメリカ南部を思わせる泥臭いハードネスと
躍動感溢れるノリの良さに満ちた演奏、
そしてプログレ・ハード物らしい仄かな哀愁を湛えた
ポップなメロディとが見事に一体化した名曲。


SHOOTING STAR - Shooting Star - Last Chance ★★★ (2012-03-18 21:18:34)

ストレートにプログレ・ハード色が打ち出されている
楽曲をSHOOTING STARが演るのはデビュー作が最初で最後。
特にこの曲は6分以上に及ぶランニング・タイムに、
G、Key、B、Ds、そしてヴァイオリンとが激しい応酬を
繰り広げながら劇的に盛り上がっていく曲展開といい、
まさに「ザ・プログレ」な仕上がりを聴かせてくれる名曲。
それでいて叙情味を湛えたVoがキャッチーなメロディを
マイルドに歌い上げるため、難解さも皆無という隙のなさ。


SHOOTING STAR - Shooting Star - Tonight ★★★ (2012-03-18 21:27:24)

複数(3人)のリードVoとヴァイオリン奏者を
抱える大編成の強みが如何なく発揮され、
力強く、それでいて優美に盛り上がっていく
哀愁のメロディアスHRナンバー。
ボーカル・ハーモニーの美しさに聴き惚れますね。


SHOOTING STAR - Silent Scream ★★★ (2009-11-22 17:35:00)

フロントマンの座にケヴィン・チャルファントを迎えて現在もしぶとく活動中(多分)の、ミズーリ州はカンザスシティ出身の5人組ロック・バンドがプロデューサーにロン・ネヴィソンを迎えて制作、'85年に発表した彼らの最高傑作と評価の高い5thアルバムにして、取り敢えずのラスト作。(後にリユニオン)
結成は60年代まで遡り、メンバーにヴァイオリン奏者を含む編成が同郷の先輩バンドKANSASを彷彿とさせるが、実際のところ、本作にプログレ色は殆どないと言ってよく(KANSASっぽさはあるけどね)、ヴァイオリンの使用は味付け程度に留められ、本編の叙情性を増幅し、作風を決定付ける重要な働きっぷりを披露するKeyを中心に丁寧にまとめ上げられた楽曲の数々は、強力なフックを有する叙情メロディに豊かに彩られ、まさに洗練されたAOR/産業ロック系サウンドのお手本のような仕上がり具合を聴かせてくれる。
殊に、アルバム前半の完成度の高さには目を瞠るものがあり、中でも“SUMMER SUN"のタイトル通り、夏の鮮烈な日差しを想起させる躍動感と爽快感に溢れたOPナンバー①は、ビルボード・チャートで健闘したという話も大いに納得の行く名曲だし、また、印象的なKeyのイントロからスタートする⑤も素晴しい哀メロ・チューン。
再発CDには映画のサントラに提供した楽曲も追加収録され、全13曲収録で捨て曲なしの充実度を誇る1枚。
バックVoとしてエリック・マーティンも参加しているので、メロディ愛好派のみならずMr.BIGファンも是非どうぞ。


SHOOTING STAR - Silent Scream - Summer Sun ★★★ (2009-11-22 17:38:22)

AOR/産業ロック・アルバムのOPナンバー斯くあるべし!な
ポップでキャッチー、爽快で躍動感に溢れた名曲。
タイトル通り「夏の日差し」的な雰囲気を漂わせたKeyが
いい仕事をしてますね。


SHOTGUN MESSIAH - Violent New Breed ★★ (2019-03-13 00:41:53)

LAを拠点に活動していたSHOTGUN MESSIAHが、故郷スウェーデンへと戻り、新たにVoとGのユニット体制となって'93年に発表した3rdアルバム。
GUNS’N ROSESの流れを汲むスリージーなロックンロールを演っていた前2作に対し、サポート皆無だった所属レーベルに対する鬱憤をブチ撒けたという本作で炸裂するのは、エフェクトで歪められたVo、ザクザク刻まれるスラッシーなGリフ、冷徹な打ち込みリズムに支配されたマシーナリーなインダストリアル・メタル・サウンド。その変貌ぶりときたら、夏休み明けに不良デビューを飾った生徒を発見した担任教師ばりに「一体何があったんだよ…」と呟くレベルですが、後知恵で考えるなら、バンドの中心メンバーで後にマリリン・マンソンのブレーンとして、またドイツのKMFDMのメンバーとしても活躍することとなるティム・スコルド(G)が、いよいよその本領を発揮しただけと言えなくもないという。
ともあれ、ロックンロール+インダストリアル・メタル。どちらも積極的に嗜もうとは思わないジャンルでしたが、実際に聴いてみるとこの取り合わせが意外に珍味…つかコレ結構カッコ良くね?と。エフェクトが掛けられていてもVoは威勢よく歌っており、ロックンロールの生命線と言うべきクールなGリフ/ノらずにはいられないグルーヴ/キャッチーなメロディもそこここに健在。Gソロだってしっかりとフィーチュアされていて、安易に流行に身を委ねるのではなく、いかにそうした要素を自分達のフィールドに引き込んで料理するかを真剣に考え抜いたことが伝わってくるサウンドは非常にカッコイイ。
発表時期が早過ぎた…当時より今の方が案外正当な評価を得られる1枚なのかもしれません。


SHOW-YA - Hard Way Tour 1991 ★★★ (2021-06-30 23:46:45)

帯やライブ中のMCでも表明されている通り、SHOW-YAの看板シンガーであった寺田恵子在籍時代最後のツアーとなった「HARD WAY TOUR 1991」の中から、大阪厚生年金会館と名古屋市公会堂でのパフォーマンスの模様を収めた、彼女達にとっては2枚目となる実況録音盤。確か個人的にこれが初めて購入したSHOW-YA作品だったような…。
『GLAMOUR』『OUTERLIMITS』『HARDWAY』といった傑作を連発してオリコン・チャート上位を席巻する等、名実共にバンドが完全に「仕上がっていた」時期のライブだけに聴き応え十分なのは当然のこと。’89年リリースの『TURN OVER』と聴き比べれば明らかな通り、歌謡ロック路線から本格派HM路線へとシフト完了したバンドは、最早「ガールズ・ロック・バンド」なんて括りを必要としない、並の野郎バンドじゃ束になっても敵わない堂々たる貫禄と迫力を身に纏っています。とりわけ過酷なロード生活を経てイイ具合に燻された(逆に言えば相当喉に負担があったということなのでしょうが…)寺田の歌声は圧巻で、代表曲“私は嵐”のようなヘヴィ・メタリックな疾走ナンバーにおけるパワフルなハイトーンから、ブルージーな“BLUE ROSE BLUES”におけるハスキー・ボイスを活かしたセクシーな歌い回しまで、幅広い表現力を駆使し、ラスト・ツアーに持てる力全てを注ぎ込まんとする気迫漲るパフォーマンスにゃ胸を打たれること必定です。寺田のVoと、五十嵐美貴のGを始めとする楽器陣が火花を散らしながら突っ走る“FAIRY”“ギャンブリング”“限界LOVERS”というラストのスピード・ナンバー三連打のカッコ良さなんて、まさに本編のクライマックス。
若き日のバンドの全力疾走ぶりが克明に刻まれたライブの名盤。入門編にもどうぞ。


SHOW-YA - Hard Way Tour 1991 - Fairy ★★★ (2021-07-01 23:38:17)

初期の名曲として人気の高い、GとKeyのバトルも組み込まれた疾走ナンバー。
まだ線の細さも感じられた(そこが魅力でもあった)スタジオ・バージョンに対し
こっちのライブ・バージョンだと、寺田のVoを筆頭に各メンバー、パフォーマンスの
迫力が各段に増していて圧倒されてしまいますよ。


SHY - Excess All Areas ★★ (2009-11-20 22:16:00)

SHYと言えば「IRON MAIDENのスティーブ・ハリスと同姓同名のGがいるバンドだっけ?」程度の認識しか持たない
不届き者でも、本作の完成度の高さ・・・分けても名曲“EMERGENCY"の魅力には素直に脱帽せざるを得ません。
トニー・ミルズの透明度の高いハイトーンVo、スティーヴ・ハリスのウェット且つコンパクトに練り込まれたG、
そしてビバ80年代!的なキラキラさ加減で本編を華やかに彩るKeyとが組み合わさって生み出される楽曲の数々は、
ソング・ライターとしてマイケル・ボルトン、ドン・ドッケンら錚々たる面子が名を連ねてるだけあって、
ポップでキャッチー、それでいてヨーロピアンな叙情性をたっぷりと含んだ隙のない仕上がり。
イントロからして名曲の風格が漂う①(作曲はマイケル・ボルトン)のインパクトがデカ過ぎるせいで、②以降の
楽曲の存在が霞んでしまっている気がしなくもないが、とは言えそれらも十二分に秀曲揃いで、例えばラストに
置かれた哀愁のHRチューン⑩なんて生半可なバンドじゃ逆立ちしたって書けっこないレベルの名曲。無論、捨て曲はない。
多数の外部ライターが参加しようとも、SHYならではの個性にブレがないのだから大したもの。文句なしの名盤でしょう。


SHY - Shy ★★★ (2013-09-09 23:05:51)

楽曲を壮麗に肉付けするKeyサウンドを積極的に取り入れつつ、OPナンバー①の重厚なイントロが示す通り、SHYのカタログの中ではかなりハード&へヴィな方向に振られている本作ですが、これだけ全編に亘って哀愁のメロディが大盤振る舞いされていれば、そりゃ大味感なんぞが入り込む余地は絶無ってもんですよ。
力んで歌っても押し付けがましくならない、青い炎が揺らめくような熱唱ぶりが正しく英国シンガー然とした風情漂わす新Vo.リー・スモールの歌声、弾きまくっても、一音一音を丁寧に紡いでも、常に歌心を失わないスティーヴ・ハリスのGプレイとが、それを見事に援護射撃。いつもならイチャモン付けたくなる70分オーバーという長尺に関してもまるで気にならないのは、別に故人に遠慮して・・・等というヌルイ理由からではなく、ただ単純に、捨て曲皆無の本編のハイクオリティさゆえです。
ドラマティックにしてあまりに哀しいメロディ展開に悶絶させられる年間ベスト級の名曲②⑥だけでも「勝負あり」ですが、他にも①④⑧⑩等、これ1曲を聴くためだけにでもアルバムを購入しても損はない!と思わされる楽曲がゴロゴロ収録されているのだから凄まじい。
しかし絶賛すればするほどに、スティーヴ・ハリス不在という現実が重く圧し掛かる、そんな1枚でもあります。合掌。