基本的音楽性の確立からウルリッヒ・ロート加入まで、SCORPIONSの重要な第一歩となった’74年発表の2ndアルバム。『電撃の蠍団』なる邦題も、原題『FLY TO THE RAINBOW』もカッコイイなぁ、とか思いながらジャケットに目を転じると、そこに描かれているのは謎の怪人プロペラ男。お前が虹まで飛ぶんかい。 ウリのインプロゼーション重視のGワークがダイナミックに炸裂する③(早くもリードVoも担当しちゃってますが)、静と動を切り替えながら10分に迫る長尺をドラマティックに語り切るアルバム表題曲⑧といった楽曲や、Key、メロトロンを隠し味的に用いたアレンジ術等、デビュー作で聴かせたクラウト/プログレッシブ・ロックの残り香を随所に漂わせつつも、イマイチ掴みどころがなかった前作に対し、こっちはウリ加入により増強された「泣きメロ」という強力な武器によって、焦点がきっちり絞り込まれています。 特に、バラード調の前半をスパニッシュ・タッチのGリフが切り裂く②、東北地方を巡業している昭和の演歌歌手ばりに泣きまくる④、哀愁に満ちたメロディとスウィングするリズムのコンビネーションに惹き込まれる⑤は、捨て曲なしの本編の中にあっても一際輝く名曲。シャウトよりもムーディに歌い上げることに重点を置いたクラウス・マイネの歌唱スタイルも、この時期ならではの魅力をサウンドに付与してくれています。 ウリ在籍時代のアルバムはいずれも甲乙つけ難いクオリティを誇りますが、「一番好きなアルバムは?」と問われたならば、個人的には真っ先にその名を挙げる1枚。
デビー・ガン(Vo)を中心に、'84年頃からカリフォルニア州サクラメントを中心に活動を開始。当初はNWOBHMの影響を全面に打ち出した(ベルギーのACID辺りに通じる)ダークなHMをプレイしていたが、同時期にベイエリアを中心に盛り上がり始めていたスラッシュ・シーンと交流を持ち、強く影響を受けたことで音楽性が先鋭化。デモテープ制作とメンバー・チェンジを繰り返す内に次第にスラッシュ色を強めていった彼らの音楽的変遷は、'10年リリースのコンピ盤『UP FROM THE ASHES』で窺い知ることができる。 '86年、ビル・メトイヤーのプロデュースの下、METAL BLADE RECORDSから1st『DEPTHS OF DEATH』をリリースしてデビュー。攻撃的なパワー/スラッシュ・サウンドがマニアから高く評価されたにも関わらず、バンドはこれ1枚でアッサリ解散。デビー嬢はZNOWHITEに加入(がアルバム制作には至らず)、テクニカルなBプレイでバンドの屋台骨を支えたマーク・スペンサーは、ジェイソン・ニューステッドの後任として、短期間ながらFLOTSAM & JETSAMに籍を置いた。 尚、近年バンドは再結成を果たしているが、ニュー・アルバムがリリースされる気配はない。
“METAL HEART”(ACCEPT)“WILD FRONTIER”(GARY MOORE)、“BACK TO BACK”(PRITTY MAIDS)等、メタル者なら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲の数々を、多数のゲスト・ミュージシャンを招きカヴァーするというコンセプトが、本作が(タイトルこそ異なれど)実質的に『STAND PROUD!ALL FOR HEAVY METAL』の続編であることを物語っている、'14年発表の屍忌蛇のカヴァー・アルバム。 日本で最もHR/HMが売れていた時期に、メジャー資本で制作され、お祭り騒ぎ的賑々しさに満ち溢れていた前作に比べると、名義のみならず、アレンジも雰囲気もグッと落ち着いて屍忌蛇のソロ作としての趣きを強めた今回は、ANGRAやBLIND GUARDIANといった比較的新しめのバンドの名曲もセレクト。 尤も、Gソロでは彼らしい繊細な泣きメロを注入して個性を主張するスタイルは流石の味。特にそれが上手くハマっているのがJUDAS PRIESTの⑨で、さりげないピアノの使い方や、TESTAMENTの“OVER THE WALL”のフレーズの導入も非常に効果的です。 オリジナルと比べても決して聴き劣りしない実力派ミュージシャン達のパフォーマンスも、前作同様「日本人にしては」等というエクスキューズが不必要なレベルですし、またRIOTの⑩でスピーディなBプレイを披露しているのが、先日急逝したUNITEDの横山明裕であることも謹んで付け加えさせて頂きます。 前作が気に入った方なら当然購入して損のない1枚。HR/HM入門盤代わりにもどうぞ。
プロデューサーに、以降、数作に亘ってコンビを組む事となる売れっ子ロン・ネヴィソンを迎えてレコーディング、'82年に発表された3rdアルバム。 SHOOTING STARのカタログ中、最もハードな作風に仕上がっていた前作から一転、Keyサウンドを前面に打ち出して、プログレ色や南部的な泥臭いハードネスを払拭、代わりにポップな味わいが強調された本作は、例えばヴァイオリン大活躍のOPナンバー“ARE YOU READY”からさえもプログレ色や土の匂いが殆ど漂って来ないという徹底振りで、その洗練された作風はやはりロン・ネヴィソンの起用効果と言うべきか。 「ありがちなJOURNEYクローンになってしまった」「ロン・ネヴィソン許すまじ」と批判の声も少なからず上がった本作ですが、もともと彼らのメロウ・サイドに魅力を感じていた身としては、今回もまた良く出来たアルバムとして十分楽しませて貰った次第。 中でもしっとりとした哀メロに聴き惚れる“HEARTACHE”や、まるでNHKで放送されている海外ドラマの主題歌の如き爽やかさを誇る“WHERE YOU GONNA RUN”、アルバム収録曲の中では比較的ハードな仕上がりの“LET IT OUT”、分厚くスペーシーなKey主体で展開されるスケールの大きなバラード“WHOLE WORLD'S WATCHING”辺りは、メロディ愛好家ならグッとくること請け合いの名曲じゃないでしょうか。 尤も、これ!といった強力な決め手に欠くフラットな構成など、前2作と比較して弱さを感じる部分があるのも実際のところで、これはやはり本作がプログレ・ハード路線からAOR/産業ロック路線へと移行していく過渡期の産物であったからなのかな、と。
帯やライブ中のMCでも表明されている通り、SHOW-YAの看板シンガーであった寺田恵子在籍時代最後のツアーとなった「HARD WAY TOUR 1991」の中から、大阪厚生年金会館と名古屋市公会堂でのパフォーマンスの模様を収めた、彼女達にとっては2枚目となる実況録音盤。確か個人的にこれが初めて購入したSHOW-YA作品だったような…。 『GLAMOUR』『OUTERLIMITS』『HARDWAY』といった傑作を連発してオリコン・チャート上位を席巻する等、名実共にバンドが完全に「仕上がっていた」時期のライブだけに聴き応え十分なのは当然のこと。’89年リリースの『TURN OVER』と聴き比べれば明らかな通り、歌謡ロック路線から本格派HM路線へとシフト完了したバンドは、最早「ガールズ・ロック・バンド」なんて括りを必要としない、並の野郎バンドじゃ束になっても敵わない堂々たる貫禄と迫力を身に纏っています。とりわけ過酷なロード生活を経てイイ具合に燻された(逆に言えば相当喉に負担があったということなのでしょうが…)寺田の歌声は圧巻で、代表曲“私は嵐”のようなヘヴィ・メタリックな疾走ナンバーにおけるパワフルなハイトーンから、ブルージーな“BLUE ROSE BLUES”におけるハスキー・ボイスを活かしたセクシーな歌い回しまで、幅広い表現力を駆使し、ラスト・ツアーに持てる力全てを注ぎ込まんとする気迫漲るパフォーマンスにゃ胸を打たれること必定です。寺田のVoと、五十嵐美貴のGを始めとする楽器陣が火花を散らしながら突っ走る“FAIRY”“ギャンブリング”“限界LOVERS”というラストのスピード・ナンバー三連打のカッコ良さなんて、まさに本編のクライマックス。 若き日のバンドの全力疾走ぶりが克明に刻まれたライブの名盤。入門編にもどうぞ。