ホルストの組曲『惑星』から“火星"と、 グリーグのペールギュント組曲から“山の魔王の宮殿にて"の メロディを引用した、クラシカルでドラマチックなインスト曲。 次曲“HALL OF THE MOUNTAIN KING"の序曲的存在だが、 これ単体でも十分に魅力的。 華麗に舞うクリス・オリヴァのGがナイス。
1st『SIRENS』の好評を受け、晴れてメジャー・レーベルATLANTICとディールを結んだまでは良かったものの、 契約上のトラブルに巻き込まれ、イギリスのインディ・レーベル大手MUSIC FOR NATIONSからも作品を発表する事を 余儀なくされたSAVATAGEが、メジャー・デビュー作『POWER OF THE NIGHT』と同時期('85年)に 契約消化のために発表したのが本作。 国内盤の帯には「2ndアルバム」と表記されているけれど、実際はSAVATAGEの前身であるAVATOR時代の楽曲や、 1st発表後、PAR RECORDSとの契約を巡るゴタゴタで身動きが取れなかった時期に書き溜められた楽曲等、 比較的古いマテリアルを中心に構成されているので、正確にはEPに分類すべき作品のように思う。 まぁ、それはさて置き内容の方だが、同年に発表された『POWER~』が、如何にもメジャー制作らしい、スッキリと垢抜けて 聴き易くコンパクトにまとめられていたのに対して、こちらは前作の延長線上にある、ヘヴィでダーク、 且つオドロオドロしい雰囲気を纏ったパワー/スラッシュ・メタル路線。 この方向性は、4th『HALL OF THE MOUNTAIN KING』で頂点を迎えるわけだが、現在でもライブでプレイされている 劇的な名曲①や、ドッシリとしたヘヴィネスの効いた②④といった楽曲を収録した本作の完成度も、決して侮れたものではない。 尚、国内盤にはロスト・サヴァタージ・トラック(要するに未発表曲)2曲を追加収録。
黒地に、バンドロゴ/エンブレム/タイトルをあしらっただけの飾り気無用のアートワークが、質実剛健なSAXONサウンドの魅力を表しているかのようで逆にカッコイイ、’82年発表の傑作ライブ・アルバム。 お馴染みの「SAXON!」(チャチャチャ)「SAXON!」(チャチャチャ)というチャントと、バイクの爆音SEに導かれて、ショウは疾走ナンバー“MOTORCYCLE MAN”で豪快にスタート。憂いに満ちたメロディアスな“747(STRANGER IN THE NIGHT)”がその後に続き、間髪入れずハードネスとメロディのギアがガッチリ噛み合った初期SAXON屈指の名曲“PRINCESS OF THE NIGHT”でアクセルを再び踏み込むという、この劇的極まりない冒頭の流れだけでこっちはメタル・ハートを完全に掌握されてしまった気分ですよ。本作のハイライトを担う“WHEELS OF STEEL”での、革ジャン軍団で埋め尽くされていると思しき客席との一体感溢れるコール&レスポンスなんて「胸のエンジンに火を点けろ!」(by串田アキラ)とシャウトしたくなるアガりっぷりで、もう最高としか。 バイカーズ・ロック時代の名曲が連打されるセットリスト、それらを熱気溢れる演奏で叩き付けて来るメンバーに、観客の野太い声援まで、SAXON(最初の)全盛期を代表する名盤として、またNWOBHMの熱い盛り上がりを伝えてくれるドキュメント作品として高評価を受けるのも当然の1枚。つか、これのみで十分な満足感を得てしまって、なかなかSAXONの初期作をコンプリートしようとしない困ったちゃん(俺のことですが)をも生み出してしまう罪作りな名盤です。
基本的音楽性の確立からウルリッヒ・ロート加入まで、SCORPIONSの重要な第一歩となった’74年発表の2ndアルバム。『電撃の蠍団』なる邦題も、原題『FLY TO THE RAINBOW』もカッコイイなぁ、とか思いながらジャケットに目を転じると、そこに描かれているのは謎の怪人プロペラ男。お前が虹まで飛ぶんかい。 ウリのインプロゼーション重視のGワークがダイナミックに炸裂する③(早くもリードVoも担当しちゃってますが)、静と動を切り替えながら10分に迫る長尺をドラマティックに語り切るアルバム表題曲⑧といった楽曲や、Key、メロトロンを隠し味的に用いたアレンジ術等、デビュー作で聴かせたクラウト/プログレッシブ・ロックの残り香を随所に漂わせつつも、イマイチ掴みどころがなかった前作に対し、こっちはウリ加入により増強された「泣きメロ」という強力な武器によって、焦点がきっちり絞り込まれています。 特に、バラード調の前半をスパニッシュ・タッチのGリフが切り裂く②、東北地方を巡業している昭和の演歌歌手ばりに泣きまくる④、哀愁に満ちたメロディとスウィングするリズムのコンビネーションに惹き込まれる⑤は、捨て曲なしの本編の中にあっても一際輝く名曲。シャウトよりもムーディに歌い上げることに重点を置いたクラウス・マイネの歌唱スタイルも、この時期ならではの魅力をサウンドに付与してくれています。 ウリ在籍時代のアルバムはいずれも甲乙つけ難いクオリティを誇りますが、「一番好きなアルバムは?」と問われたならば、個人的には真っ先にその名を挙げる1枚。
デビー・ガン(Vo)を中心に、'84年頃からカリフォルニア州サクラメントを中心に活動を開始。当初はNWOBHMの影響を全面に打ち出した(ベルギーのACID辺りに通じる)ダークなHMをプレイしていたが、同時期にベイエリアを中心に盛り上がり始めていたスラッシュ・シーンと交流を持ち、強く影響を受けたことで音楽性が先鋭化。デモテープ制作とメンバー・チェンジを繰り返す内に次第にスラッシュ色を強めていった彼らの音楽的変遷は、'10年リリースのコンピ盤『UP FROM THE ASHES』で窺い知ることができる。 '86年、ビル・メトイヤーのプロデュースの下、METAL BLADE RECORDSから1st『DEPTHS OF DEATH』をリリースしてデビュー。攻撃的なパワー/スラッシュ・サウンドがマニアから高く評価されたにも関わらず、バンドはこれ1枚でアッサリ解散。デビー嬢はZNOWHITEに加入(がアルバム制作には至らず)、テクニカルなBプレイでバンドの屋台骨を支えたマーク・スペンサーは、ジェイソン・ニューステッドの後任として、短期間ながらFLOTSAM & JETSAMに籍を置いた。 尚、近年バンドは再結成を果たしているが、ニュー・アルバムがリリースされる気配はない。
“METAL HEART”(ACCEPT)“WILD FRONTIER”(GARY MOORE)、“BACK TO BACK”(PRITTY MAIDS)等、メタル者なら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲の数々を、多数のゲスト・ミュージシャンを招きカヴァーするというコンセプトが、本作が(タイトルこそ異なれど)実質的に『STAND PROUD!ALL FOR HEAVY METAL』の続編であることを物語っている、'14年発表の屍忌蛇のカヴァー・アルバム。 日本で最もHR/HMが売れていた時期に、メジャー資本で制作され、お祭り騒ぎ的賑々しさに満ち溢れていた前作に比べると、名義のみならず、アレンジも雰囲気もグッと落ち着いて屍忌蛇のソロ作としての趣きを強めた今回は、ANGRAやBLIND GUARDIANといった比較的新しめのバンドの名曲もセレクト。 尤も、Gソロでは彼らしい繊細な泣きメロを注入して個性を主張するスタイルは流石の味。特にそれが上手くハマっているのがJUDAS PRIESTの⑨で、さりげないピアノの使い方や、TESTAMENTの“OVER THE WALL”のフレーズの導入も非常に効果的です。 オリジナルと比べても決して聴き劣りしない実力派ミュージシャン達のパフォーマンスも、前作同様「日本人にしては」等というエクスキューズが不必要なレベルですし、またRIOTの⑩でスピーディなBプレイを披露しているのが、先日急逝したUNITEDの横山明裕であることも謹んで付け加えさせて頂きます。 前作が気に入った方なら当然購入して損のない1枚。HR/HM入門盤代わりにもどうぞ。