プロデューサーに、以降、数作に亘ってコンビを組む事となる売れっ子ロン・ネヴィソンを迎えてレコーディング、'82年に発表された3rdアルバム。 SHOOTING STARのカタログ中、最もハードな作風に仕上がっていた前作から一転、Keyサウンドを前面に打ち出して、プログレ色や南部的な泥臭いハードネスを払拭、代わりにポップな味わいが強調された本作は、例えばヴァイオリン大活躍のOPナンバー“ARE YOU READY”からさえもプログレ色や土の匂いが殆ど漂って来ないという徹底振りで、その洗練された作風はやはりロン・ネヴィソンの起用効果と言うべきか。 「ありがちなJOURNEYクローンになってしまった」「ロン・ネヴィソン許すまじ」と批判の声も少なからず上がった本作ですが、もともと彼らのメロウ・サイドに魅力を感じていた身としては、今回もまた良く出来たアルバムとして十分楽しませて貰った次第。 中でもしっとりとした哀メロに聴き惚れる“HEARTACHE”や、まるでNHKで放送されている海外ドラマの主題歌の如き爽やかさを誇る“WHERE YOU GONNA RUN”、アルバム収録曲の中では比較的ハードな仕上がりの“LET IT OUT”、分厚くスペーシーなKey主体で展開されるスケールの大きなバラード“WHOLE WORLD'S WATCHING”辺りは、メロディ愛好家ならグッとくること請け合いの名曲じゃないでしょうか。 尤も、これ!といった強力な決め手に欠くフラットな構成など、前2作と比較して弱さを感じる部分があるのも実際のところで、これはやはり本作がプログレ・ハード路線からAOR/産業ロック路線へと移行していく過渡期の産物であったからなのかな、と。
帯やライブ中のMCでも表明されている通り、SHOW-YAの看板シンガーであった寺田恵子在籍時代最後のツアーとなった「HARD WAY TOUR 1991」の中から、大阪厚生年金会館と名古屋市公会堂でのパフォーマンスの模様を収めた、彼女達にとっては2枚目となる実況録音盤。確か個人的にこれが初めて購入したSHOW-YA作品だったような…。 『GLAMOUR』『OUTERLIMITS』『HARDWAY』といった傑作を連発してオリコン・チャート上位を席巻する等、名実共にバンドが完全に「仕上がっていた」時期のライブだけに聴き応え十分なのは当然のこと。’89年リリースの『TURN OVER』と聴き比べれば明らかな通り、歌謡ロック路線から本格派HM路線へとシフト完了したバンドは、最早「ガールズ・ロック・バンド」なんて括りを必要としない、並の野郎バンドじゃ束になっても敵わない堂々たる貫禄と迫力を身に纏っています。とりわけ過酷なロード生活を経てイイ具合に燻された(逆に言えば相当喉に負担があったということなのでしょうが…)寺田の歌声は圧巻で、代表曲“私は嵐”のようなヘヴィ・メタリックな疾走ナンバーにおけるパワフルなハイトーンから、ブルージーな“BLUE ROSE BLUES”におけるハスキー・ボイスを活かしたセクシーな歌い回しまで、幅広い表現力を駆使し、ラスト・ツアーに持てる力全てを注ぎ込まんとする気迫漲るパフォーマンスにゃ胸を打たれること必定です。寺田のVoと、五十嵐美貴のGを始めとする楽器陣が火花を散らしながら突っ走る“FAIRY”“ギャンブリング”“限界LOVERS”というラストのスピード・ナンバー三連打のカッコ良さなんて、まさに本編のクライマックス。 若き日のバンドの全力疾走ぶりが克明に刻まれたライブの名盤。入門編にもどうぞ。
傑作の誉れ高い1stソロ『LONG WAY FROM LOVE』(’93年)の発表や、KING KOBRAの名盤『READY TO STRIKE』(’84年)の再発、更にブルース・ゴウディらと結成したUNRULY CHILDの始動等を経て、シンガーのマーク・フリー(現マーシー・フリー姐さん)に対する興味がグングン高まっていた時期にチェックしたのが、SIGNALが’89年に残していたこの唯一のアルバム。 SIGNALはマークと、元ALCATRAZZのヤン・ウヴェナ(Ds)らにより結成されており、本作のプロデューサーには売れっ子ケヴィン・エルソンを起用。哀愁成分こそ然程ではないものの、米メジャーのEMI RECORDSからのリリースだけあって、厚みのあるプロダクションを得て繰り出されるフックの効いたメロディ満載のハードポップ・サウンドは、梅雨時のジメジメを吹き飛ばしてくれるような爽やかさ満ちた仕上がり。特に本編開巻を宣言する①はメロディ愛好家からも名曲として太鼓判押される爽快なOPナンバーで、逆に「この曲以外はイマイチ」みたいな評価もあったりするようですが、個人的には断じて否を唱えさせて頂きたいところ。重厚な⑤、キャッチーな⑥、感動的なバラード⑦、レゲエ調の導入からサビへ進むにしたがって哀愁が増していく⑨、TRIUMPHも演っていた⑩あり…とどこに出しても恥ずかしくない逸曲が揃っていますし、加えて「まさに全盛期!」という力強さで伸びていくマークの艶やかなハイトーンVoがそれらの魅力を更に底上げしてくれていますよ。 昔も今も日本盤が発売されたことがない、ということ以外は弱点が見当たらない名盤じゃないでしょうか?
'87年に結成された北海道は札幌出身の古豪HMバンド。 '92年制作の8曲入り(アルバム・レベルのボリュームですよね)デモ『DIVINE CAPRICE』を筆頭に、数本のデモテープを発表して活動を軌道に乗せると、'94年に1stアルバム『UNCULTIVATED LAND』を自主制作。 '96年にはSABER TIGERの木下昭仁(G)をプロデューサーの座に迎えてレコーディングされた2nd『NATIVE』をリリース。(こっちも自主制作だったかな) RDX等へのゲスト参加で知られる伊熊誠(Vo)の脱退という事件が勃発するも、バンドは後任メンバーを入れることなくトリオ編成で活動を継続。 '04年には8年振りとなる新作アルバム『A THOUGHT ON LIFE DURATION OF SPECIES AND HUMAN BEHAVIORS』を発表している。
エンジェル・シュライファーとマティアス・ディート。ジャーマン・メタル・シーン指折りの実力派ギタリスト二人を新メンバーに加え、マット・シナーも「SINNERが最も充実していた時期の一つ」と述懐する強力なラインナップでレコーディングが行われ、'86年に発表された5thアルバム。(尤も、エンジェル・シュライファーは制作途中でPRETTY MAIDSに引き抜かれてしまうのですが) 前作『TOUCH OF SIN』は、絶妙なバランスでハードネスと哀愁のメロディが共存する「SINNER節」と表すべきサウンドを確立させた名盤でしたが、ドン・エイリーをゲストに迎えてKeyのフィーチュア度が格段に高まった今作は、コマーシャル路線へと大きく舵を切り、早くも音楽性に拡散の兆が見受けられるようになりました。 とは言え、明るくポップに疾走する①にしろ、タイトル“FASTER THAN LIGHT”に反して全く走らないけれど憂いを帯びたメロディには非常にグッとくる②や、本編のハイライトの一つに挙げたいぐらいハマっているビリー・アイドルのカヴァー⑤、それに軽快に駆け抜けていく⑥にしろ、シンセ類を活かした洗練を感じさせるアレンジから、相変わらずフックに富むメロディまで、楽曲の完成度は前作にも引けを取らない充実度。尚且つ攻撃的なツインGが映える⑨みたいなHMナンバーもちゃんと押さえられていたりと、隙のない作りが実に立派です。SINNERファンの間で高評価を受ける1枚なのも納得ですなぁと。 ちなみに、かつて再発された日本盤は次作『DANEROUS CHARM』との2㏌1仕様(発売元のビクターの得意技でした)。もしご購入を検討される場合はお得なそちらをどうぞ。
ツインGの片割れを元ACCEPT~現PANZERのハーマン・フランクに代え、’85年に発表された4thアルバム。ファンからは「初期SINNERの最高傑作」との高評価を獲得、バンド側にしても、初期楽曲の再録アルバムに『A TOUCH OF SIN 2』(’13年)なるタイトルを冠するぐらいですから、内容に対する自信の程が伺えます。ジャケットだけ見るとまずそんな風には思えないかもしれませんが(笑)。 THIN LIZZYからの影響を感じさせるメロディアスHRが胸を打った1stと2nd、ACCEPT、JUDAS PRIESTを思わすパワー・メタル路線に寄せた3rdと来て、今回は従来作の美点の集約を企図。哀メロを纏って踊るツインGのハモリっぷりに思わず目が細くなる②や、ポップ・センスも活かされたキャッチーな③という、SINNER屈指の名曲が雄弁に物語る通り、2本のGが印象的に紡ぐメロディの哀愁とHM然とした力強さの絶妙なバランス、ハードに疾走しようがクサく泣こうが(あとマットの歌声がお世辞にも美声とは言い難かろうが)、常に透明感を失わない本作は、前3作の「美味しいとこ取り」とでも言うべきサウンドに仕上がっています。 以降も、タイトル通り一緒に叫びたくなる④、メロウな⑤、アグレッシブに疾駆する⑦、これまたツインGの活躍が印象的な⑨etc.…と、本編はラストまで一切捨て曲なし。振り返ってみると、聴かせるよりもノらせるタイプの代表曲①が一番地味に感じられたりするのですが、あれはライブで真価を発揮するタイプの楽曲ですからね。 SINNERは山程アルバムを発表していて何から手を付ければいいのか分からないという方は、「SINNER節」の基礎が確立した本作から入ってみるのが良いのではないでしょうか。
日本の紫、アルゼンチンのRATA BLANCA、イタリアのVANADIUM、フィンランドのZERO NINE、イギリスのWHITE SPIRIT等々…。世にDEEP PURPLEの魂を継承するバンドは数多く存在しますが、SIX FEET UNDER(アメリカのデス・メタル・バンドにあらず)は「スウェーデンのDEEP PURPLE」と評されたボルレンゲ出身の4人組で、本作はその彼らが’86年に発表した1stアルバムに当たる作品です。 主役は「北欧のロバート・プラント」なんて呼ばれてたらしいビョルン・ローディン(Vo)の歌声と、その彼とBALTIMOORE等でも行動を共にするトーマス・ラーソン(G)の押しと引きを心得たGプレイ。時にスリリングに、時に軽快に駆け抜けて行くこの二人のパフォーマンスを基軸に、そこに濃厚なDEEP PURPLE風味を演出するピーター・オストリング(Key)の操るハモンド・オルガンが切り込んで来る本編は、もろパープル路線の①(Gリフも“SMOKE ON THE WATER風)にて幕が上がります。但し後に続くのはSURVIVORの“EYE OF THE TIGER”にインスパイアされたような③だったり、OZZY OSBOURNEが演りそうな(?)⑧だったりと、収録曲は結構バラエティ豊か。総合的な仕上がり具合は「良心的北欧メタル・アルバム」と呼べるものではないかと。それでも本作のハイライトが、バッキングがメロディアスに歌っているアップテンポの⑥、静と動のコントラストが劇的極まりない疾走ナンバー⑦という紫色が濃いめの2曲であることは疑いようがありませんけどね。 2nd『ERUPTION』と共に'94年にゼロ・コーポレーションがCD化してくれた国内盤が、現在でも中古屋に行けば比較的容易に入手可能ですので、是非ともご一聴下さいませ。
“SACRIFICE FOR THE SLAUGHTERGOD"と双璧を為す、 2ndアルバムのラストを締め括るハイライト・ナンバー。 イントロのツインGからしてもろIRON MAIDENしているが、 北欧デス/ブラック+スラッシュ+NWOBHMという このバンドならではの魅力が最も判り易く体感できる逸曲。
“SACRIFICE FOR THE SLAUGHTERGOD"と双璧を為す、 2ndアルバムのラストを締め括るハイライト・ナンバー。 イントロのツインGからしてもろIRON MAIDENしているが、 北欧デス/ブラック+スラッシュ+NWOBHMという このバンドならではの魅力が最も判り易く体感できる逸曲.