マイク・スラマー(G)の立ち上げたメロハー・プロジェクト、STEELHOUSE LANEがデビュー作『METALIC BLUE』の高評価を受けて正式バンド化。『METALIC~』ではバックアップ役に留まっていたマイクもメンバーとしてラインナップにその名前を連ね、これが真のデビュー作とも言われる2nd『SLAVES OF THE NEW WORLD』は'99年に発表されました。(つってもこれが最終作?) サウンドの方は、重厚なプロダクションの下、カラッとポップに弾けるメロディック・ロック路線を継承しつつも、「バンドらしさ」を強調するためか、前作よりもグッとハードネスを前面展開。確かにバンドとしてのまとまりの良さはガッツリ伝わって来ますが、反面、メロディのフックはやや弱まったかな?とも。 マイク・スラマーというミュージシャンの「音楽半生ベスト盤」的様相を呈していた前作に比べてしまうと多少の聴き劣りは止むなしか・・・等と舐めて掛かったら、どっこい。キース・スラック(Vo)のソウルフルな歌声が映えるブルージーな④、爽快な躍動感に満ち溢れた⑤⑫、STREETS時代の楽曲のリメイク⑧⑪、そしてマサ伊藤もイチオシのバラード⑥etc・・・と、聴き進める内に収録楽曲の魅力はグングンUP。その決定打とも言うべきポップな名曲⑩にトドメを刺される頃には、本作の評価は「前作に勝るとも劣らぬ力作」というものに落ち着いておりました。
スティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)が結成したSTREETSをキャリアの出発点に、その後もメロディック・ロック街道一筋に歩んで来た職人、マイク・スラマーが新たに立ち上げたバンドの'98年発表のデビュー作。 尤も、マイク自身は正式メンバーとして名は連ねておらず、彼が担当しているのは、バンド・メンバーの選抜からアルバムのプロデュース、そして楽曲提供といった、つんくとか秋元康的な裏で全てを牛耳るビッグボスの役回り(違うか)。 ちなみに、その収録楽曲は半分が新曲、もう半分が、これまでマイクがHOUSE OF LORDS、HARDLINE、TOWERCITY、WALL OF SILENCE・・・等々の他アーティストに提供して来た楽曲のリメイクで構成されていて、いずれもアメリカン・メロディアスHRの模範的なシルエットを描き出す秀曲揃い。特にスカッとハジけるOPナンバー①は、雲一つない抜けるような青空の下でオープンカーをかっ飛ばす爽快感に満ち溢れ、アルバムに対する期待感を開巻早々にMAXまで引き上げてくれる名曲です(どこか聴き覚えがある⑩もお薦め)。 全体的に泣きや哀愁成分は薄めなれども、キャッチーに洗練された大陸産ハードポップ・サウンドは、これはこれで十分に胸躍るサムシング有り。巧いVoに巧いGを得て、全編に亘ってマイク・スラマーのメロディ職人としての匠の技が冴える1枚。
'91年、JAKEY(Vo)、YOSHIO(B)、JIRO(G)が中心となって東京にて結成、'92年にシングル『IN DISGUISE』を自主製作してデビューを飾る。 流動的なラインナップが足枷となって活動がなかなか安定しなかったものの、2ndギタリストを加えた5人編成となった時点でフル・アルバムのレコーディング作業を開始。『GYPSY OF THE NIGHT』と名付けられた1stフル・アルバムは'95年に発表された。 同作は海外のレーベルを通じて欧州でもリリースされるなど好評を博し、翌年にはMANDRAKE ROOT RECORDSが編纂するオムニバス盤『MAKE IT SHINE VOL.2』に参加(この時には4人編成に逆戻りしてた)、その後の躍進が期待されたが、どうも不安定なラインナップが最後まで足を引っ張ったようで、間もなく活動停止状態に陥っている。 '00年代にメンバーを一新して再結成を果たし、2ndアルバムのレコーディングがアナウンスされましたが、現在に至るも発表はない・・・筈。
RISING FORCE時代のイングヴェイを彷彿とさせる様式美HMサウンドをバリバリ追求し続ける(た?)スウェーデン出身の5人組、'03年発表の6thアルバム。 彼らの作品は何枚か所持していますが、最も聴き返す頻度が高いのが本作です。壮大にして激しくドラマティックな①②(文字通り“雷鳴のシンフォニー”状態)の流れに始まって、初期の名曲のセルフカバー⑩にて幕が下りる本編は、収録楽曲のクオリティから無駄なく締まった構成まで、STORMWINDのカタログの中でも頭一つ飛び抜けた出来栄え。「スウェーデンの極新カラテ王者」なる異色の経歴を誇るギタリスト、トーマス・ウルフがここでクリエイトする音世界には、「鶴の構え」を取ったダニエルさん(古い)ばりに付け入る隙が全く見当たりませんよ。 そんなコブラ会ですらお手上げの本作を更なる高みへと押し上げるのが、元TALK OF THE TOWN他の実力派シンガー、トーマス・ヴィクストロムその人。広い声域/豊かな声量/抜群の表現力を併せ持つこんな強力無比な歌聴かされたら、そりゃNHKでなくとも「昼はオペラ、夜はメタルの二足の草鞋を履くボーカル・マスター」として音楽番組で特集を組みたくなるってもんですわなと。 その彼氏の堂々たる歌声と、トーマス・ウルフ謹製の荘厳!クラシカル!スピーディ!な楽曲とがガップリ四つに組んだ④は、北欧様式美HMファンを感涙に咽ばせる名曲っぷり。 STORMWINDのアルバムはどれから手をつけて良いか分からないという方は、まずはこちらかどうぞ。入手が容易だし、中古盤も安いっすよー。
スコットランドのメロディアスHRバンドSTRANGEWAYSが、FRONTIER RECORDSのバックアップを受けて再編。久々にテリー・ブロック(Vo)をフロントマンの座に復帰させて発表した・・・多分6枚目ぐらい?のアルバム。 彼らの作品をちゃんと聴くのは3rd『WALK IN THE FIRE』以来なんだけど、その第1印象は「随分マッタリとしちゃったなぁ」というもの。初期作とは趣きを異するアダルトでムーディな空気が支配的な作風は、キャリア相応の落ち着きが感じられると言えば聞こえは良いが、実際のところコレってただ地味なだけじゃね?と、違和感を覚えずにはいられなかったのだが、昨年暮の購入以降、折に触れては本作をリピート再生している自分に気付き、最近になって漸く「俺はどうやらこのアルバムの事が好きならしい」と自覚するに至った次第。 1st~3rdアルバムのレベルに達しているわけではないが、昨年発表されたソロ作でも衰え知らずの歌声を披露していたテリー・ブロックと、一音一音に豊かなエモーションを込めて紡ぎ出すイアン・スチュワートのGプレイが各楽曲のクオリティの底上げに大きく貢献しており、①⑦⑨はその両者の最良な部分が抽出された名曲だし、バンドの新たな魅力を提示するエスニックな雰囲気漂う⑧や、横ノリ・ナンバー⑩等も聴き応え十分の仕上がり具合。 そして何より、本編の白眉たるケルト風味のバラード④や、JOURNEYばりの麗しさを誇る⑤⑪の素晴しさよ!これら珠玉の楽曲の数々を聴いていると、「イギリスのJOURNEY」なんて評された往時のSTRANGEWAYSを思い起こさずにはいられませんね。 初期作と同様の作風を期待すると肩透かしを食うことは確実ながら、単体のメロディアスHRアルバムとしての完成度は間違いなくハイレベルな1枚。
WHITE WOLF(もう新作は作らんのでしょうか)のカム・マクレオドをプロデューサーに起用してレコーディング作業を行い、'10年にリリース。バンドの世界レベルでの知名度向上に大きく貢献した1stフル・アルバム。 思わず苦笑を誘われるジャケット・アートワークや、締まりに欠けるサウンド・プロダクションの質はデビューEPと五十歩百歩な感じですが、一方でスラッシュ・メタルばりの鋭角さで刻まれるGリフや、流麗且つ劇的に乱舞するツインGの切れ味、勇壮さをいや増したコーラス・ワーク等、収録楽曲のクオリティは目に見えてパワーアップ。バンドが前のめりな勢いよりも整合性を意識し始めたことがハッキリと伝わってくる本編は、こうなると、声質はやや甘めながらも確かな歌唱力で楽曲の雄々しさや、ドラマ性の底上げに一役買ってくれる歌の上手いフロントマンを擁している点も活きて来ます。 特に、勢いで誤魔化すことなく聴かせきるドラマティックな④は、正統派HMバンドの諸先輩方からの影響を咀嚼吸収しつつ、STRIKERというバンドならではの個性も加えて仕上げられたアルバムのハイライトと言うべき名曲です。 NWOTHM好きなら聴いて損なしの充実作。
“IN GOD WE TRUST”を聴けなかった事だけが残念でしたが HR/HMシーン屈指の三声ハーモニーの美しさと、 “SOLDIERS UNDER COMMAND”を筆頭とする必殺の名曲の連打の前に、 多少の不満も綺麗さっぱり洗い流されてしまいました。 ライブでもマイケル・スウィートの美声には 全く陰りが感じられませんでしたね。
雲間からゴッドが「とんでもねぇ!あたしゃ神様だよ!」と降臨しそうな勢いの神々しいコーラスで幕が開く、'15年発表の8thアルバム。 クリスチャン・ミュージック・シーンという安定した支持母体にも支えられ、チャート上位に発表アルバムを送り込む等、復活組の中でも順調な活動を継続している彼ら。ゆえに今回も、マイケル・スウィートが衰え知らずの美声を駆使して歌い上げる憂いを湛えたキャッチーなメロディに、メタリックな光沢を放つGリフ、そして華麗に舞う美の極みというべきボーカル・ハーモニーetc・・・と、これぞクリスチャン・メタルの鑑!というべきSTRYPERサウンドは健在です。 イントロとヴァースの弱さを、サビの劇的なメロディ展開で挽回するという、「才能の閃き」よりも「蓄積したベテランの業」を感じさせる曲作りの傾向はここ数作同様で、滑り出し①②の快調さに比べると、中盤の楽曲の弱さがやや気になるところではあります(BLACK SABBATHのカヴァー⑧は果たして必要だったのか?とか)。 それでも、壮麗なコーラスに圧倒される⑩、疾走感溢れる⑪、名曲“SOLDIER UNDER THE COMMAND”を彷彿とさせる⑫という、ラストのヘヴィ・メタリックなナンバー三連発による畳み掛けが大変素晴らしいため、聴き終えた後の帳尻をきっちりと合わせて来る辺りは流石。 STRYPERがアルバムを発表する毎に、どんどん往年の輝きを回復させていっていることを証明してくれる1枚ですよ。ハレルヤ。
復活以降はモダンさのアピールにも余念のなかったSTRYPERですが、カヴァー・アルバムやリメイク・アルバムの制作(来日公演も敢行)といったアクティブな活動を通じて己の原点を見つめ直したのか、久々に届けられたニュー・アルバム('13年)ではそうした不純物をごっそり浄化。よりシャープに、より歯切れ良く、ファンが理想とする「STRYPER像」に忠実なサウンドをクリエイトすることにのみ傾注してくれています。 闇を引き裂くマイケル・スウィートの鮮烈なハイトーンVo、JUDAS PRIESTばりの光沢を帯びた劇的なメロディを奏でるツインG、ソリッドに刻まれるリフ&リズム、そしてSTRYPERサウンドの要たる麗しき3声ハーモニーによって眩く彩られた楽曲群は、悪魔も裸足で逃げ出すホーリーっぷり。加えて、デビュー作『THE YELLOW AND BLACK ATTACK』以来ともいえる正統派へヴィ・メタリックなハードネスを発散しており、特に本年度のベスト・チューン候補の疾走ナンバー⑦は、思わずキリスト教に入信したくなるほどのカッコ良さを誇っていますよ。 あえて苦言を呈するならば、重厚なミッド・チューンが連続する本編の立ち上がりが少々もたつくことぐらいでしょうか(尤も、楽曲自体はドラマティックで素晴らしい)。というか再結成STRYPER作品は「掴み」がどれも弱い印象が・・・。 ともあれ、全米チャートにおいても久々に好成績(初登場第35位)を記録したという話も「さもありなん」な充実作。