結局、国内盤はリリースされず終いだった2nd『EDGE OF THE EARTH』('11年)を間に挟んで、'12年に発表された3rdアルバム。 知らぬ間にシンガーが今風の怒号を響かせる新Vo(Gが兼任)にチェンジしていて、それに併せてってわけではないのでしょうが、サウンドからも直線的な攻撃性は減退傾向が見受けられます。 本編を重厚に覆うKey、そして一層エモーショナル&メロディアスに花開くツインGの絡みが増量されたことに加えて、クリーンVoをヴァースやブリッジに組み込み、従来の「サビメロのみをメロディアスに歌い上げる」というお約束パターンを廃した楽曲は、スラッシュ・メタル・サウンドを基調としつつも、これまで以上に緩急の落差が強調された、ある意味プログレ/テクニカル・メタル方面への踏み込みを感じさせる仕上がりに。 特に、シュレッド・リフが鬼のように吹き荒れる①、静動/美醜/モダンとオールドスクール風味を飲み込んで疾走する⑤⑦、キレキレなGリフをフィーチュアした⑩等は、精緻な演奏が生み出すスピード感とカタルシスに満ちた曲展開に否応なくテンションが上がる逸品。 1stの頃の前のめりな作風が恋しくないと言えば嘘になりますが、収録各曲それぞれのキャラ立ちが明確になったことでアルバム全体の質は間違いなく高まりまった1枚。(ちなみに最後に隠しトラックあり)
'91年、ニュージャージーにおいて結成。音頭を取ったのはトレイシー・ホワイト(Vo)とチャーリー・カルヴ(B)の2人で、その後ARTIST WORLDWIDE MANAGEMENTと契約を交わすと、'93年にセルフ・タイトルの1stアルバムでデビュー。同作はゼロ・コーポレーションを通じて日本でもリリースされ、彼らの出す90年代のアメリカのバンドらしからぬ、メロディアスでドラマティック、且つ親しみやすいキャッチーさを備えたHMサウンドが高く評価された。 その後、2nd『FORGET THE RAIN』で流行に感化されたり、3rd『ON THE LINE OF FIRE』で初心を取り戻したりと、紆余曲折を経ながら活動を続け、'02年に解散。 しかし'10年にはライブ盤『LIVE AT FIREFEST 2010』を引っ提げて再結成を果たしている。
2nd『FORGET THE RAIN』収録のバラード“EYS OF ANGER”の 続編に当たる(?)アルバムのラスト・ナンバー。 トレイシー・ホワイトの濡れ濡れな美声が堪能できるメロウな前半だけで 十分素晴らしいのですが、4分過ぎてからのもう一山の盛り上がりが この曲をドラマティックな名曲たらしめています。
TALISMANが'93年に川崎クラブチッタで行った初来日公演の模様を収めたライブ・アルバム。 作品を重ねる毎に(メロディアスでありつつも)リズミック且つグルーヴィなHRサウンドへと進化していった彼らですが、デビュー当初はキラキラなKeyをフィーチュアし、美旋律と透明感を前面に押し立てた北欧メタル然とした音楽性が持ち味でした。特に、2nd『GENESIS』リリース後に行われたライブの模様が捉えられている本作は、これ以降の路線変更を鑑みるに「初期TALISMANの総決算的内容」と言えるかもしれません。 太く熱い歌声を披露するジェフ・スコット・ソート(Vo)に、テクニカルなフレーズを難なくこなす現OPETHのフレドリック・オーケソン(G)、そして躍動感溢れるリズム・ワークでボトムを支える故マルセロ・ヤコブ(B)&ジェイミー・ボーガー(Ds)という巧者揃いのラインナップゆえ、骨太なパフォーマンスには北欧のバンドにありがちな不安定感や線の細さは皆無。 コール&レスポンスからコーラスまで大いに盛り上がる観客の歓声と、スタジオ・アルバム以上にハードで熱気溢れる演奏に乗せて、“COMIN' HOME”“I'LL BE WAITING”“BREAK YOUR CHAINS”といった名曲の数々が、次から次へと繰り出されるわけですから(確か当日はイングヴェイの“I AM A VIKING”もチラッと演奏されたと記憶しています)、本作の完成度の高さは約束されたようなもの。 ZEROコーポレーション謹製の「LIVE IN JAPAN」物の中では上位にランクインするクオリティを備えた1枚ではないかと思われます。
'93年発表の3rd。丁度、北欧メタルが再び盛り上がりを見せていた日本でも国内盤がリリースされ、ファンから高い評価を得た作品。 この時期の北欧バンド群は「1作目は良かったのに次作で流行に擦り寄ってコケる」というパターンが非常に多かったのだが、TAROTの作品は 安定して高いクオリティを保持。中でも本作は特に楽曲が粒揃いで、全14曲捨て曲なし。バンドの最高傑作に推す声も多い。(俺の中で) 基本はトニー・マーティン在籍時のBLACK SABBATHを彷彿とさせる(実際、カヴァー曲⑬“CHILDREN OF THE GRAVE"を収録)、 ダークさと潤いの同居するドラマチックな様式美メタル・サウンドながら、どこかヒンヤリとした空気を伝える楽曲は 北欧のバンドならではの味。これは、氷塊のように硬質なリフと、透明感と哀感を演出するKey、 それに「憂いを帯びたロニー・J・ディオ」風のマルコ・ヒエタラのVoに依るところ大。 まぁ兎に角、アルバムのOPチューン①“DO YOU WANNA LIVE FOREVER"や、本編ラストを劇的に締めるバラード⑭“GUARADIAN ANGEL" といった楽曲を聴いてみて欲しい。北欧メタル・ファンのみならず、メロディ重視派の方ならグッと掴まれること請け合いよ?