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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 5801-5900
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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 5801-5900
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SWEET - Level Headed ★★★ (2020-11-05 00:24:18)

所属レーベルをRCAからポリドールへと替えたSWEETが'78年に発表した、多分6、7枚目ぐらい?のフル・アルバム。英米のチャートにおいてトップ10に食い込む好成績を残したヒット・シングル“愛が命”を収録し、これを最後に中心メンバーのブライアン・コノリーが脱退して不動の4人組の一角が崩れてしまい、以降は大きなヒットに恵まれぬまま解散へと至ったことから、一般的にSWEET全盛期最後の作品とされる1枚です。
彼らのアルバムは飛び飛びでしか所持していないのですが、本作では『荒廃の街角』(’74年)で開眼したHR路線から趣きを変えて、シャラシャラと乾いた音色で奏でられるアコギの使用比率を上げ、アメリカでの更なる成功を見据えたコマーシャル路線へと方向を軌道修正。そのことはカリフォルニアへの憧れが爽やかに歌い上げられるウェスト/コースト風味のOPナンバー“CALOFORNIA NIGHTS”が端的に物語る通り。
但し安易に売れ線に走るのではなく、持ち前のキャッチーなメロディ・センスは存分に活かしつつ、アレンジや曲展開の練り上げに更に注力した結果、本作からはBOSTON、KANSAS、STYXといった同時期にヒット・チャートを賑わせたバンドに通じるプログレ・ハード風味も立ち昇るようになりました。その好例が、クラシカルなチェンバロが効果的なアクセントとなっている名バラード“ふたりの誓い”や、スペーシーにアルバムを締め括る“永遠の詩”~“AIR ON ’A’ TAPE LOOP”のメドレーであり、そして7分近くに及ぶ長尺の中で曲調が次々に表情を変えていくドラマティックな大ヒット・ナンバー“愛が命”であったと。
SWEETは名曲が多い!と今更ながら実感させられた1枚であります。


SWEET - Level Headed - Fountain ★★★ (2020-11-05 23:09:25)

邦題は“ふたりの誓い”
哀切を湛えて歌われるメロディと、それを引き立てる美麗な
ハーモニー&アコースティック・ギター、そしてエンディングを
盛り上げるハープシコードのクラシカルな響きが辛抱堪らない名曲です。


SWEET - Level Headed - Love Is Like Oxygen (extended version) ★★★ (2020-11-05 23:17:17)

邦題は“愛が命”。
7分に及ぶ長尺の中で、次々に表情を変えていく
プログレッシブかつドラマティックな曲展開を有しつつも、
一貫して甘くポップなメロディが楽曲をリードするため
小難しい印象は一切なし。英米チャートでTOP10に食い込む
ヒット・シングルとなったのも納得の名曲です。


SWEET - Off the Record ★★★ (2022-04-19 01:22:28)

キャッチーなメロディ・ライン、ブライアン・コノリーの個性的なハスキー・ボイス、それらを重厚かつ立体的に包み込む高音ボーカル・ハーモニーといった、SWEETをSWEETたらしめる要素はそのままに、お仕着せのアイドル・ロック・グループというイメージを払拭するべく、アルバム・リリースを重ねる毎に自作曲の増強とハードネスの底上げに努めてきた彼らが行き着いた、SWEETのカタログの中で最もHRテイストが色濃く打ち出されていると言われる’75年発表の5thアルバム。邦題は『明日なき青春』。
メンバー自らの手によるプロデュースという点からも、バンドが演りたいことを全て本作に詰め込んだことが伝わってきます。シングル・カットされ欧州圏でスマッシュ・ヒットを飛ばしたOPナンバー①、後にGAMMA RAYがカヴァーしたことで知られる②のような、QUEENの「天使のハーモニー」に対して当時「悪魔のハーモニー」と評されたという、単に華美なだけでなく、目まぐるしく飛び交う圧の強さがいっそ攻撃的にすら感じられるボーカル・ハーモニーが活かされたアンセミックな楽曲、一緒に叫びたくなるリフレインを有してキャッチーに駆け抜ける⑦なんかも大変素晴らしいですが、個人的にガツンとヤられたのはスピード・ナンバーの⑨。70年代半ばにしてこのエネルギー、この切れ味。アレンジは洗練されていますが、それこそJUDAS PRIESTの“EXCITER”にだって匹敵する名曲…ってのは見当違いの誉め方過でしょうかね?いやでもカッコイイですよ。
こうしたHR路線は、しかしセールス的にはイマイチな結果に終わり、SWEETは次作以降、新たにメロハー路線へと舵を切っていくこととなります。


SWEET - Off the Record - She Gimme Lovin' ★★★ (2022-05-11 00:41:27)

コーラス・ワークの華麗さはそのままに、
“SET ME FREE”を上回るアグレッションで畳み掛ける
「プレHMナンバー」といった趣きの疾走ナンバー。
'77年でこの勢いには目を瞠るものがありますよ。


SWEET - Sweet Fanny Adams - Set Me Free ★★★ (2020-09-18 01:15:42)

仄かな憂いを帯びたメロディ、一度聴けば耳にこびりつくコーラス、
そして快活な疾走感と、元祖HMナンバーの一つに数えられる名曲。
HEATHENのカヴァーを聴いてそのカッコ良さに痺れた時は、てっきり彼らが
メタリックにアレンジしているからだと思ったのですが、
後追いでSWEETのオリジナルを聴いて、ほぼほぼ完コピだった分かった際は吃驚でしたよ。


SWORD - Metalized ★★★ (2015-05-07 23:49:34)

リック(Vo)とダン(Ds)のヒューズ兄弟により結成された(元々はKISSのトリビュート・バンドだったとか)カナダはケベック州出身の4人組が、地元インディーズのAQUARIUS RECORDSから'86年に発表したデビュー作。
明らかにJUDAS PRIEST影響下の正統派HMを志向しながらも、そのサウンドにドラマ性や構築感の類は希薄。むしろ「やんのかコラ」と派手に土煙蹴立てて暴れ回る無頼漢っぷりこそが本作の魅力かと。
その真髄たるのがOPナンバー①で、飼い慣らされない野生動物の如きワイルドさ漂わすVoに(「メタリックなレット・フォリスター」的趣きあり)、鈍い光沢を放つササクレ・リフを刻みつつソロは華やかにキメてみせるGとが、バキバキにブッ叩かれる全力投球リズムに乗ってパワフルに迫り出してくる、メタル魂滾るこの名曲を聴くためだけにでも本作は購入するべきである!と(極論)。
正直、この曲と、その後に続く②のインパクトが劇的過ぎて本編中盤の印象が霞みまくりなのですが(退屈なわけではない)、それでも地を這うヘヴィ・チューン⑩が存在感たっぷりに本編を締め括ってくれるため、尻すぼみ感はなく聴後感も良好。
リリース当時、ここ日本でも高く評価された(BURRN!!誌のバックナンバーを確認したら92点を獲得してた)のも納得の1枚。


SWORD - Metalized - F.T.W. ★★★ (2015-05-08 23:58:33)

スラッシュ/パワー・メタリックなササクレ感を
撒き散らすGリフのカッコ良さ、喧嘩上等なリズムの迫力、
いかにも80年代らしいフラッシーなGソロ、
そして男臭いシンガーの噛み付くような歌いっぷりと、
(音程を伴わないシャウトがレット・フォリスター似なとこも良い)
いずれの要素にも花丸を差し上げたくなる名曲も名曲。超名曲。
バイクのエンジン音に併せてメイン・リフが刻まれる箇所なんて
何度聴いてもゾクゾクさせられますよ。


SYLOSIS - Conclusion of an Age ★★★ (2013-04-09 23:23:23)

自らの音楽性を「エピック・スラッシュ」と呼称するイギリスはレディング出身の5人組が、'08年に発表した1stフル・アルバム。
喉から出血しそうな勢いでシャウトをひり出すVo、高い演奏力を活かし猛射されるGリフと息つく間もなく畳み掛けるリズムは、正しくオールドスクールなスラッシュ・メタルの作法に則っている一方、曲によってはクリーンVoやKeyの使用にも躊躇がない(そしてまたそれを上手くこなしている)辺りは、やっぱり現代っ子バンドですな。
特にクリーンVoの導入は効果的。メンバーが「1曲でバンドの全てを物語っている」と語るドラマティックなOPナンバー②(①は序曲)を皮切りに、メロデス風味も取り入れられたモダンな④、叙情イントロから疾走へと転じる⑦から、本編のクライマックスを飾る壮大な⑩まで、クリーンVoがボンヤリと浮遊するのではなく、聴き手の血を沸き立たせるスケール感を伴ったメロディを歌い上げているのが評価ポイント。(比較的ストレートに突進する⑧みたいな楽曲のカッコ良さもナイス)
欧州HM然とした光沢を放つテクニカル&メロディックなツインGの存在と併せて「エピック・スラッシュ」の標榜は伊達じゃねぇな、と思わせてくれる1枚です。


SYLOSIS - Conclusion of an Age - After Lifeless Years ★★★ (2013-04-11 22:15:15)

期待感を煽る劇的な序曲“DESOLATE SEAS”から
繋がっていくアルバムのOPナンバー。
スラッシーな疾走感、テクニカルなインスト・パートと
緩急を飲み込んだドラマティックな曲展開、
それに壮大さを演出するクリーンVoパートなど、
バンドが標榜する「エピック・スラッシュ」の何たるかが
凝縮された、アルバム購入の試金石代わりにもってこいの名曲。


SYLOSIS - Conclusion of an Age - Last Remaining Light ★★★ (2013-04-11 22:18:41)

アルバムのクライマックス役を担う、7分以上に及ぶ大作曲。
これまた「エピック・スラッシュ」の何たるかを
体現したかのような起承転結の決まったドラマティックな
楽曲ですが、ゴテゴテと飾り付けられた大仰さはなく、
研ぎ澄まされたソリッドさを強く感じさせてくれるのが
このバンドならでは。


SYLOSIS - Conclusion of an Age - Swallow the World ★★ (2013-04-11 22:21:29)

今風のへヴィネスを湛えてスタートし、
サビへ向けてスピードアップ。
「オ~オ~」というクリーン・コーラスと共に
曲が疾走を開始する場面のカッコ良さは
かなりのものですよ。


SYLOSIS - Dormant Heart ★★ (2015-06-29 23:20:20)

3rd『MONOLITH』で完全に自己のスタイルを確立。次なる一手に注目の集まっていたSYLOSISが、期待高まる中、'15年に発表した4thアルバム。
OPナンバー①の重苦しいイントロが始まった時は「ふむふむ。で、こっから一気に疾走へ転じるわけでがすね?」とほくそ笑んだのですが、最後まで重苦しいまま終わってしまって、あれ?と。
そんな感じに開巻早々、これまでとの作風の違いを明白に宣言してみせる本編は、他にも思わず「ヘヴィ・バラード」と表現したくなる悲壮な⑥や、クリーン・パートをメインに10分近い長尺をプログレッシブに物語る⑪といったメロディアスな楽曲を収録。勿論②③⑨等のスピード・ナンバーは健在なれど、全体的に焦燥感というか前のめり感は抑制気味で、今回は「走る」ことは主目的に非ず、楽曲のスケール感や、緩急の効いた精緻な曲展開のダイナミズムを際立たせるための手段の1つと位置付けられている印象有り。リズム/リード両面においてテクニカルに、ソロではメロディックに冴え渡るツインGに導かれ、静と動の対比もドラマティックに突っ走る⑩は、そうした彼らの試みが鮮やかに咲き誇るアルバムのハイライト・ナンバー。
掴みの弱さ、60分オーバーの収録時間、即効性よりも聴き込みを要する作風とが相俟って、当初はあまり印象が良くなかったのですが、現在では星2つレベルにまで評価が上昇。来年ぐらいには三ツ星評価に変化してるやもしれませんで。


SYLOSIS - Monolith ★★★ (2013-04-10 22:45:27)

結局、国内盤はリリースされず終いだった2nd『EDGE OF THE EARTH』('11年)を間に挟んで、'12年に発表された3rdアルバム。
知らぬ間にシンガーが今風の怒号を響かせる新Vo(Gが兼任)にチェンジしていて、それに併せてってわけではないのでしょうが、サウンドからも直線的な攻撃性は減退傾向が見受けられます。
本編を重厚に覆うKey、そして一層エモーショナル&メロディアスに花開くツインGの絡みが増量されたことに加えて、クリーンVoをヴァースやブリッジに組み込み、従来の「サビメロのみをメロディアスに歌い上げる」というお約束パターンを廃した楽曲は、スラッシュ・メタル・サウンドを基調としつつも、これまで以上に緩急の落差が強調された、ある意味プログレ/テクニカル・メタル方面への踏み込みを感じさせる仕上がりに。
特に、シュレッド・リフが鬼のように吹き荒れる①、静動/美醜/モダンとオールドスクール風味を飲み込んで疾走する⑤⑦、キレキレなGリフをフィーチュアした⑩等は、精緻な演奏が生み出すスピード感とカタルシスに満ちた曲展開に否応なくテンションが上がる逸品。
1stの頃の前のめりな作風が恋しくないと言えば嘘になりますが、収録各曲それぞれのキャラ立ちが明確になったことでアルバム全体の質は間違いなく高まりまった1枚。(ちなみに最後に隠しトラックあり)


SYLOSIS - Monolith - Out From Below ★★★ (2013-04-13 00:45:07)

鬼のように刻まれるGリフにスラッシーな疾走感、
ダイナミックな曲展開、劇的なメロディと、
OPから早くも勝負を着けにくるキラー・チューン。
単なる技巧のひけらかしとは異なり、
楽器陣が「ここぞ!」という場面で炸裂させる
ハイテクニックが、カタルシスを生み出すことに
大きく貢献しています。


SYLOSIS - Monolith - The River ★★★ (2013-04-14 00:06:42)

中間部のGソロはメロディアスというより
もはや「エモーショナル」と表現したくなる領域。
そこから雄々しいメロディと共に疾走へと
移行していく堪らなくドラマティックな曲展開からは
SYLOSIS流の美学が感じられます。


Santa - No hay piedad para los condenados ★★★ (2017-02-21 23:50:40)

長らくCDで探していたスパニッシュ・メタル・アイテム2点を、何の気なしに立ち寄った中古盤屋にてゲット。思わず小躍りしてしまいましたね。1枚はスペインのクサメタル機甲師団PANZERが’87年に残したライブ盤で、もう1枚が「スペインの女ロニー」ことアズセナ・マルティン(Vo)を擁し、DEEP PURPLE~RAINBOW直系の様式美HMを聴かせてくれたSANTAが、’86年に発表していた本2ndアルバムです。
バンドには今回から専任Key奏者が加入。様式美HMバンドとして一層盤石の布陣となっており、本編では早速その強みを活かした曲作りが行われています。Gリフ主体で荒々しく突っ走っていたデビュー作に比べると、曲構成がよりメロディアス&キャッチーに作り込まれ、柔和に弾む②があったかと思えば、メロドラマのテーマ曲みたいに甘く切ない⑤があり、明るく快活な⑨もある…といった具合に、収録曲のバラエティが大きく拡大。
但し、それでもアルバムの本分をコテコテの様式美HMチューンに置くバンドの姿勢にブレはありません。例えば起承転結が劇的に決まった①や、戦場のSEに導かれてスタートする⑩等は、コブシの効いたVoの歌いっぷりといい、GとKeyのバトルっぷりといい、「実は彼らはTERRA ROSAの生き別れの兄弟」と言われたら信じてしまいそうなカッコ良さ。アズセナ姐さんの情念渦巻く激唱が炸裂する⑧⑪も聴きモノですよ。
荒々しい1stと、ポップさを増した3rdの丁度中間に位置するサウンドが託され、SANTAの代表作としてその名を挙げるファンが多いのも納得の1枚。個人的には1st派なのですが、聴き易さ/取っ付き易さではこっちの方が上かもしれません。


Santa - Reencarnación ★★★ (2016-02-09 23:15:20)

メタル者にとってサンタと言えば、北欧に生息するヒゲ面の老人ではなく、「スペインの女ロニー」ことアズセナ・マルティン-ドラド・ガルボ(Vo)を擁するマドリッド出身の4人組のことに決まってますが(嘘)、本作はそのSANTAが'84年に発表したデビュー作。
母国では初回生産分だけで1万7000枚を売り上げたヒット作というだけあって、シンガーのパワフルな歌声、楽器陣のタイトな演奏力、それにガッチリ組み上げられた収録楽曲etc・・・と、彼らの提示するコテコテな様式美HMサウンドは実に堂々たる完成度。切れ味鋭く突進するスピード・ナンバー⑥の只事じゃないカッコ良さなんて、「どうせ辺境メタルでしょ(笑)」と舐めて掛かる輩を「逆にブッ飛ばしてやらぁ!」ってな気迫が憑依しているかのよう。
歌詞はもちろん巻き舌バリバリのスペイン語なれど、アズセナ姐さんの情熱的な歌い回しにマッチしており全く違和感はなし。どころかパワーUPしてくれてる印象すらあって、赤尾和重ばりにコブシの効きまくった彼女の熱唱が映える、泣きと哀愁に満ちた劇的な⑨なんて、「本当は大阪のバンドなんじゃないの?」と尋ねずにはいられないアルバムのハイライト。思わず、よっ!スペインのTERRA ROSA!と声援送りたくなりますね。(余談ながら、アズセナ姐さんは2nd発表後にSANTAを脱退。その後はソロ・アーティストに転身しましたが、'05年、肺気腫によりマドリッドの自宅で死去しています)
言語に拘りのない様式美HMファンなら一度は聴いておくべき力作ではないでしょうか。


Santa - Reencarnación - Al lado del diablo ★★★ (2016-02-10 22:45:50)

目の覚めるような屈強さで疾走するスピード・ナンバー。
楽曲が放出するパワーに一歩も引かずに、むしろ打ち勝つ勢いの
アズセナ・マルティンのド迫力の歌いっぷりが圧巻ですよ。
まさにディアブロ・・・。


Santa - Reencarnación - Sobrevivir ★★★ (2016-02-10 23:00:34)

「大阪で生まれた女?(by BORO)」と思わず尋ねたくなる
コブシの効きまくったアズセナ・マルティン入魂のシャウトに
胸揺さぶられる、TERRA ROSA辺りにも通じる
泣きと哀愁に満ちたドラマティックな名曲。
よく女性シンガーをして「ルックスに似合わぬ力強い歌唱」とか評したりしますが
この人の場合はまさしく「ルックスに違わぬド迫力の歌唱」なのが凄いなぁと。


Santa - Templario ★★★ (2016-02-13 00:14:13)

看板シンガーだったアズセナ・マルティン脱退後、'86年に発表された3rdアルバム。
前作レコーディング前にKey奏者がラインナップに加わったこともあり、「今回もKeyがGとバトル繰り広げる本格派様式美HMが詰まってるに違いないですぞ」とかニヤつきながら再生したのですが、OPナンバー①は明るく弾むLAメタル風。続く②もメロディアスなポップ・チューンで、「確かにKeyサウンドは大々的に使われてるけどさぁ…」と、少なからず落胆したような覚えが。
但し決して完成度は低くない。いや、むしろ立派。新加入エレノール・マルケージ(Vo)の実力は前任者と比べても遜色はなく、彼女の器用で耳当たりの良い歌唱が活かされた楽曲は、従来のコテコテ感を薄れさせて、よりキャッチーで聴き易い仕上がりに。リバーブを深めに掛けたドラム・プロダクションとか、作品全体がグッと洗練されてメジャー感が漂うようになりました。
音質の軽さや、スパニッシュな泣き・哀愁が薄まってしまっている点は少々残念ではありますが、軽快に駆け抜ける⑥⑦、Keyによるファンファーレ・リフが印象的な⑩等、新味を感じさせるキャッチーな楽曲の出来は良いですし、また闇雲に売れ線に走ったわけじゃないことは、GとKeyがハードにバトる③からも明白。トドメは疾走する様式美HMナンバー④で、思わず膝を打つカッコ良さには「これぞSANTA!」と。
本作発表の翌年、解散を選択することとなるバンドの有終の美を飾るに相応しい品質を備えた1枚。


Santa - Templario - Dama de noche ★★★ (2016-02-15 22:40:39)

ファンファーレ調のKeyリフが何となくEUROPEの
“THE FINAL COUNTDOWN”を思い出させるのですが
同年作品なので単なる偶然か。
様式美HM色はあまり感じられないものの、
バンドの新境地を開拓したメロディックHRの逸品で
これはこれでイケてますよ。


Santa - Templario - Fuego en el alma ★★★ (2016-02-13 23:37:18)

ポップ・テイストも強めた3rdアルバムの中にあって
最も様式美HM色を色濃く留めている疾走ナンバー。
音作りは随分と洗練されましたが、ちゃんとGとKeyの
リレーも聴けますし、何より新加入の女性Voの
堂々たる歌唱力が素晴らしい。声質的には彼女の方が、
前任のアズセナ・マルティンよりロニーに近いかも。


Scheherazade - Scheherazade ★★★ (2018-11-23 08:58:51)

日本プログレッシブ・ロック界のレジェンドとして語り継がれるSCHEHERAZADEが復活。デビューから15年目にしてようやく発表に漕ぎ着けた’92年リリースの1stアルバムがこちら。(3曲入りCDシングルもボーナストラックとして封入)
本作で繰り広げられるのは、基本的にはNOVELAに通じるシンフォニックでドラマティックなお城系プログレ・サウンド。実にクセが強い五十嵐久勝のヴィブラートびんびん物語なハイトーンVoも、勿論変わることなく健在。和製デヴィッド・サーカンプ(PAVLOV’S DOG)的というか、この五十嵐の独特な唱法をどう表現したもんか長年思い悩んでいたのですが、失恋船長さんの「ロックを歌う美輪明宏」という表現に「それだ!」と喉の支えがストンと落ちた気分ですよ。本作で言えば特に②はまさにそんな感じで、確かに好悪が分かれるVoとはいえ、ここまで個性的ならば立派な武器として昇華。ゴッドも太鼓判を押す「ビジュアル系の源流」の一つとして一聴の価値がある歌声ではないでしょうか。
リード楽器の役目を担って華麗に舞う永川敏郎のKeyと、ダイナミックにボトムを構築する大久保寿太郎&引頭英明のリズム隊の活躍が光る楽曲は、平山照継のGがイントロから唸りを上げる様式美HR風味の⑤を始め、その大半が4~5分台と比較的コンパクトにまとめられた、思いのほかハードにして重厚な作風を提示。曲調からタイトルまでQUEENリスペクトなバラード③や、17分以上に及ぶ大作ナンバー⑦のような「これぞプログレ」な楽曲も押さえつつ、作品全体としては、HR/HMリスナーにも取っ付き易いメロディ/技巧/ドラマ性のバランスが秀逸な、メリハリの効いた内容に仕上がっています。


Sheriff - Sheriff ★★★ (2018-07-26 22:45:03)

バンド解散後の‘89年にラジオを起点に火が点き、最終的には(国内盤CDの帯に誇らしげに表記されている通り)全米チャート№1の座を獲得するリバイバル・ヒットとなった名バラード“WHEN I’M WITH YOU”を収録する、カナダの5人組SHERIFFが’82年に残した最初で最後のフル・アルバム。
自分はフレディ・カーシ(Vo)とスティーヴ・デマーチ(G)が結成したSHERIFFの後継バンドというべきALIASを先に聴き、そこから遡って本作を入手したのですが、基本的に両者の音楽性は同一。どちらも大陸的ポップ・センスと、欧州風味の仄かな哀愁がない交ぜのキャッチーなメロディに彩られたカナディアン・メロディアスHRを持ち味としていて、幾分AOR/産業ロック色が強まっていたALIASに比べると、こちらの方はフレディが微笑ましいぐらい元気一杯にハイトーンVoを決めまくり、スティーヴのGが溌剌と動き回る、より若々しいサウンドとの印象あり。(印象も何も実際若いのですが)
本編の目玉はやはり、Key奏者のアーノルド・デヴィッド・ラニが恋人に捧げるため書き上げたという甘々なバラード“WHEN~”なのでしょうが、快活に弾むポップな②があったかと思えば、イントロからGリフがシャープな切れ味を発揮するハード・ロッキンな疾走ナンバー④もあり、そしてアメリカン・プログレ・ハード風味漂わす⑧やドラマティックに盛り上がる⑨の二連発もある…といった具合に、バラエティに富む収録曲の完成度はどれも高値で安定しており聴き応え十分。
個人的にはALIASのアルバムよりも気に入りましたよ。ぼちぼち再発してくれないものか。


Sheriff - Sheriff - Elisa ★★★ (2018-07-29 01:19:19)

Keyを効果的に運用して抒情的且つドラマティックな雰囲気を盛り上げる
アメリカン(カナダのバンドだけど)プログレ・ハード的な魅力も湛えた逸品。
しっとりと聴かせるスティーヴ・デマーチのGも美味。
アルバム後半のハイライト・ナンバーですよ。


Sheriff - Sheriff - Kept Me Coming ★★★ (2018-07-29 01:07:04)

SHERIFFを“WHEN I'M WITH YOU”一発だけのバラード・バンドだと思ってる連中に
「舐めないで頂きたい!」とブチかまされるハードな疾走ナンバー。
リフがシャープ、Gは弾きまくり、Voも耳をつんざくハイトーンを決めてくれますが、
それでいてメロディはキャッチーですんなり耳に入ってくる辺りがこのバンドらしい。


Sheriff - Sheriff - When I'm With You ★★★ (2018-07-29 01:11:26)

Key奏者のアーノルド・デヴィッド・ラニが恋人に捧げるために書き上げた
歌詞からメロディまで虫歯になりそうなぐらい甘いバラード。
結婚式で流すのに打ってつけの1曲と言えましょうや。
フレディ・カーシのVoがデニス・デ・ヤング風なこともあり、
後期STYX的な味わいが感じられたりも。


Shotgun Symphony (2014-01-16 23:03:48)

'91年、ニュージャージーにおいて結成。音頭を取ったのはトレイシー・ホワイト(Vo)とチャーリー・カルヴ(B)の2人で、その後ARTIST WORLDWIDE MANAGEMENTと契約を交わすと、'93年にセルフ・タイトルの1stアルバムでデビュー。同作はゼロ・コーポレーションを通じて日本でもリリースされ、彼らの出す90年代のアメリカのバンドらしからぬ、メロディアスでドラマティック、且つ親しみやすいキャッチーさを備えたHMサウンドが高く評価された。
その後、2nd『FORGET THE RAIN』で流行に感化されたり、3rd『ON THE LINE OF FIRE』で初心を取り戻したりと、紆余曲折を経ながら活動を続け、'02年に解散。
しかし'10年にはライブ盤『LIVE AT FIREFEST 2010』を引っ提げて再結成を果たしている。


Shotgun Symphony - Sea of Desire ★★★ (2019-05-15 00:19:35)

ニュージャージー出身のKey奏者を含む5人組で、初期BON JOVIを更に欧州寄りにしたようなメロディアスHRサウンドと、ドラマティックな名曲“HIGHWAY TO TOMORROW”のインパクトでメロハー愛好家のハートを掴んだSHOTGUN SYMPHONYが、'99年に発表した4thアルバム。そして残念ながらこれが彼らのラスト作になってしまったという。(現在は再結成済み)
セルフ・タイトルのデビュー作が日本とヨーロッパで評判を呼ぶも、2nd『FORGET THE RAIN』(’95年)で当時流行のダーク&ヘヴィ路線への接近を試みて急失速。以降彼らのカタログ・チェックは怠っていたのですが、'10年頃に再結成を遂げたとのニュースを耳にして久々にSHOTGUN SYMPHONYのバンド名を思い出し、遅ればせながら本作を購入。したらばウェットなメロディといい、メジャー感溢れるアレンジに、煌びやかなKey、分厚く盛られたハーモニーといい、全編に亘り初心に立ち返ったかのようなキャッチーで爽快なサウンド・スタイルが復活を果たしていて、その充実っぷりに「リリース当時に聴いとくべきだった…」と、すっかりバンドに対して申し訳ない気持ちになってしまいましたよ。
特に、(人によっては少々クドく感じられる可能性もあるものの)憂いを含んだ声質がサウンドに湿潤を加えるトレイシー・ホワイトの美声Voが最大限に活かされた、感動的なピアノ・バラード⑥と、プログレ・ハードに通じるドラマティックな曲展開でアルバムのクライマックスを飾る⑩はまさに名曲。
今聴けば、もしかしたら2ndも楽しめるのかなぁと、ふと考えてしまいましたよ。


Shotgun Symphony - Sea of Desire - Between the Eyes (Eyes of Anger Part II) ★★★ (2019-05-16 00:01:57)

2nd『FORGET THE RAIN』収録のバラード“EYS OF ANGER”の
続編に当たる(?)アルバムのラスト・ナンバー。
トレイシー・ホワイトの濡れ濡れな美声が堪能できるメロウな前半だけで
十分素晴らしいのですが、4分過ぎてからのもう一山の盛り上がりが
この曲をドラマティックな名曲たらしめています。


Shotgun Symphony - Sea of Desire - What I Wouldn't Give ★★★ (2019-05-15 23:52:47)

抒情的なピアノ、泣きのG、エモーショナルなVoに
壮麗なハーモニーと、聴く者を励まし勇気づけるような
ポジティブなエネルギーを感じさせる感動的なバラード。


Shotgun Symphony - Shotgun Symphony ★★★ (2014-01-16 23:14:00)

「90年代《やみ》を切り裂くメロディの銃弾《きらめき》。ニュージャージーから放たれたSHOTGUN SYMPHONY、ここに推参・・・」と、思わずこっちの書く文章までゼロ・コーポレーション調になってしまう、Key奏者を含む5人組が'93年に発表した1stアルバム。
哀愁を帯びたメロディと、ドラマティックな曲展開を組み立てるヨーロピアンなセンス、それらをキャッチーにまとめ上げるアメリカンなアレンジ・センスとを併せ持ったバンドで、彼らの才能が集約されたOPナンバー①をラジオで初めて聴いた時は、速攻で本作の購入を決意させられた程でした。
シンセサイザーによる荘厳な味付け、ハードロッキンなエッジと重量感を失わないリフ&リズム、その上で憂いを帯びたメロディを熱唱するトレイシー・ホワイトのハイトーンVo・・・正直な話、この名曲のインパクトがデカ過ぎて本編自体の存在感が掻き消されてしまっているのですが、とにもかくにもHR/HMファンなら①だけは聴いておいて損はない。
それに、冷静になれば2曲目以降もハード&ウェットな⑥⑧、ドラマティックなバラード⑤⑩と、本編に捨て曲は皆無です。
次作でヘヴィ&グルーヴィな流行に流された結果(少なくとも日本では)人気が急落してしまったことが惜しまれるバンドでした。


Shotgun Symphony - Shotgun Symphony - Highway To Tomorrow ★★★ (2014-01-17 23:10:55)

ドラマティックな曲展開は欧州へヴィ・メタリックですが
ノリ易い曲調と、一緒に歌えるキャッチーなサビメロの構築術は
アメリカのバンドならではという、美味しいとこ取りな名曲。
SHOTOGUN SYMPHONY=この曲、と言っても過言ではありません。
多分。


Steel Crown (2020-01-21 00:08:16)

イタリアのフリウリ・ベネチア・ジュリア自治州の州都トリエステにて'80年に結成。
デモテープやライブ音源の発表、あるいはコンピレーション・アルバムへの楽曲提供で実績を積み上げて、80年代半ばにダンス・ミュージック・レーベルとして知られるDISCOMAGICと契約を交わし、'86年に1st『SUNSET WARRIORS』でデビュー。NWOBHM直系の正統派HMサウンドのカッコ良さと、漫画研究会所属の中学生が描いたようなジャケットがマニアのハートを震わせたという。
'89年に4曲入りEP『NIGHT WALK』をリリースした後解散したが、00年代に入って復活を果たした模様。


Steel Crown - Sunset Warriors ★★★ (2020-01-21 00:16:22)

HR/HMが音楽シーンのメインストリームへと浮上した’86年。多くのバンドが「洗練」目指して舵を切る最中にあって、メタルバブルとは100パー無縁なのが一目瞭然の貧相…もとい、手作り感溢れるアートワークのインパクトでマニアのハートをカツアゲした、イタリア出身の5人組のデビュー作。ちなみにこのジャケ絵、最初は脱力を誘われますが、ずっと見てると段々愛しさを覚えて来るから不思議ですよ。(え?覚えない?)
本作で聴かれるのは、Gリフでグイグイと押して来るNWOBHMからの濃厚な影響を伺わせる正統派HM。音質はチープで、Voも音痴。世紀末チックなアートワークと併せて、垢抜けなさのオーラがヒューマンガス様も怯むレベルでモワモワ立ち昇ってきます。しかし楽器陣の演奏はタイトでキレがあり、Voだって歌唱能力不足は擁護し難いものがありつつ、彼が歌う哀愁を孕んだメロディは結構魅力的なんですよ、これが。そして何よりテク/センス共にグンバツな輝きを放つギタリストの演奏こそがアルバムのハイライト。
忙しなく回転する曲調の中で劇的に組み上げられたソロが閃く②や、イントロがUFOの名曲“DOCTOR, DOCTOR”を彷彿とさせる⑥、バラード風の導入部からスピードアップして畳み掛けるNWOBHM然とした仕上がりの疾走ナンバー⑦といった楽曲を聴いていると、何故だか「イタリアのSILVER MOUNTAIN」との表現が脳裏を過って仕方がないという。
本国では名作として人気が高いらしいのも納得の1枚。しっかりCD化だってされていて、そちらは’89年発表のEP『NIGHT WALK』とのお得な2㏌1仕様。踏み絵替わりのジャケを見て、素敵なサムシング(byサトームセン)を感じた方にお薦め致します。


Steel Crown - Sunset Warriors - Drifting in My Mind ★★★ (2020-01-21 23:10:55)

Gリフで押しまくるNWOBHMの洗礼を受けた疾走ナンバー。
音程の怪しいVoに、イマサンな音質がアングラ臭をプンプンに漂わせつつも
ドラマティックに組み上げられたGソロが鮮烈に走り始めると
全てを許せる気になるというもの。
1stの頃のSILVER MOUNTAINに通じる魅力あり。


Steel Crown - Sunset Warriors - Sunset Warriors ★★★ (2020-01-21 23:16:38)

穏やかなバラード風の導入を経て、
突如アグレッシブにテンポアップするアルバム表題曲。
キレキレに動き回るGのカッコ良さは勿論のこと、
地味にBが印象的な仕事をしてくれているのもポイントです。


Stephen Crane - Kicks ★★★ (2023-09-21 23:45:46)

サザン・ロック・バンドBABYの一員としてデビューを飾り、同バンド解散後はロスを拠点にセッション・ミュージシャンとしてキャリアを築いてきたスティーヴン・クレイン(Vo)。本作は彼が米メジャーのMCA RECORDSとの契約を得て’85年にリリースした1stソロ・アルバムで、いつの間にかCD化されていたことに吃驚ですよ。贅沢いえば国内盤を再発して欲しかったところなんですけども(当時レコードは国内盤も発売された)、日本がCD化大国としてブイブイ言わせてたのはもう20年も昔の話ですからね…。
ともあれ、こうしてこの名盤をCDで聴くことが出来るのは有難い限り。プロデュースはスティーヴ・ルカサーが担当。バックもTOTOのメンバーを始めとする腕利きセッション・ミュージシャンが固めていることからAORのジャンルで語られることの多い本作ですが、各楽器の存在感を強調したエッジの効いた音作り(ゲストに配慮したのかな?)といい、ご本人のエネルギッシュな歌いっぷりといい、HR/HMリスナーもすんなり馴染める作風に仕上がっていますのでご安心を。特に哀愁に満ちたOPナンバーにしていきなりアルバムのハイライトを飾る名曲①を皮切りに、サックスのクールな音色に彩られたハード・チューン③、ヒットしなかったのが不思議で仕方ない美しいバラード④といった一騎当千の楽曲が並ぶ本編前半の充実度には瞠目させられるものがありますよ。それに比べると後半が若干弱く感じられてしまう点は痛し痒しながら、それでもドラマティックな⑧があったりと、決してクオリティは低くはありません。
再発に感謝感激雨霰な1枚。せっかくなので国内盤のリイシューもいかがでしょうか。


Stephen Crane - Kicks - Headed for a Heartbreak ★★★ (2023-09-25 23:44:00)

小気味良く切り込んでくるGに、リズムの力強さといい
HR/HMで括っても問題ないように思えるカッコ良さ。
(Keyもさりげなく良い仕事してますね)
クールな哀愁を帯びたメロディを歌い上げる
スティーヴン・クレインのVoも勿論◎


Stingray(JAPAN) - One Night Rose ★★★ (2022-01-11 23:54:47)

有望バンドが続々登場したジャパニーズ・メタルの最盛期と言うべき'85年にデビューを飾ったベテランなのに、インターネットをいくら掘っても彼らに関する情報が殆ど出てこないので困惑させられる、フロントマンの鈴木治(後年はプロデューサーとしても活躍)率いるSTINGRAYが'93年に発表した3rdアルバム。ちなみに結構なレア盤として取引される本作を、数年前旅行へ行った際に、たまたま立ち寄った小さなゲーム屋の中古CDコーナーでゲット出来たことはささやかな自慢です。
曲によっては女性と聴き紛う中性的な鈴木のハイトーンVoと、構築美を湛えてメロディアスに歌うGを生かした、例えるならEARTHSHAKERを様式美方向へ寄せたようなHRサウンドはデビュー時から変わることなく健在。むしろ健在過ぎて、歌詞については'93年という時代を鑑みても赤面を誘われるものがありますが、でもこの歌謡曲やポップスに通じる哀愁を帯びて、良い意味で予想通りに展開してくれる昭和感溢れる歌メロには実家のような心地良さを覚えてしまう次第。猫も杓子もJ-POP風味な昨今、改めて聴き直すといっそ新鮮さすら覚えることは…まぁないかもしれませんが、本編には劇的なイントロによる幕開け後、哀愁のメロディを纏って疾走を開始するOPナンバー①、歯切れ良くキャッチーな②、物騒なタイトルとは裏腹に繊細に組み上げられた⑤、アルバムの最後を疾走曲で締め括るバンドは信用できる!な⑩等、音質の弱さをモノともしない強力な楽曲が揃っています。
最近STINGRAYの1stが再発されたそうなので、であれば本作も是非。このまま埋もれさせとくのは惜しい力作ですよ。


Stingray(JAPAN) - One Night Rose - One Night Rose ★★★ (2022-01-13 00:12:56)

劇的なGリフと、歌謡曲に通じる哀愁を含んだ歌メロが、
GとKeyの掛け合いを伴いながら疾走する様が
「様式美HR化したEARTHSHAKER」的な後味を残すOPナンバー。
ドラマティックに構築されたGソロもそうした印象に拍車を掛けます。


Storm Force - Age of Fear ★★★ (2024-03-15 00:54:02)

中古盤屋で本作を初めて目にした時は、STORM FORCEなるバンド名の響きから何となく「北欧のパワー・メタル・バンドかな」とか思ったものですが、国内盤帯を読み込んでみれば北欧出身でもパワー・メタル・アクトでもなく、何と80年代に活躍したカナダが誇るメロディアスHRの雄BRIGHTON ROCKの中心メンバーだったグレッグ・フレイザー(G)により新たに結成されたバンドであることが判明。「そうなると話が変わってくるよ?」と慌ててレジまで持っていったことは言うまでもありません。
こちらは’20年発表の彼らの1stアルバムで、BRIGHTON ROCK時代を思わす華やかなハーモニーに彩られたキャッチーなメロディック・ロック・チューン①のみならず、カナダ産らしい雄大さを宿した感動的なバラード⑦やら、ヘヴィ・メタリックにアルバムを締め括る⑩やら、本編にはバラエティ豊かな楽曲が取り揃えられた仕上がり。それらを情熱的に歌い上げるVoの荒れ声は好き嫌いが分かれるかもですが、流石グレッグのお眼鏡に適うだけあって歌唱力は確かですし、主役たるグレッグも力強くリフを刻み、ソロではGをエモーショナルに歌わせる一方、曲作りにおいても収録各曲に強度の高いフックを仕込む等、衰え知らずのミュージシャン・シップでガッチリとアルバムの屋台骨を支えてくれています。特に愁いに満ちたメロディと重厚な曲調が抜群のマリアージュを披露する③は、個人的に本編のハイライトに推したい名曲ですよ。
インタビューを読むと再結成BRIGHTON ROCKに新作を期待するのは難しそうなので、ならばこのSTORM FORCEで是非アルバム・リリースを重ねて欲しいところであります。


Storm Force - Age of Fear - Breathe ★★★ (2024-03-19 01:00:04)

重厚でヘヴィ・メタリックな曲調ながら大味になることなく、
愁いを帯びたメロディにはグレッグ・フレイザーの作曲術がキラリと光ります。
ソロではギタリストとしてのセンスも垣間見せてくれますし、
Voの熱くパワフルな歌いっぷりもハマっていますよ。


Syu (2013-11-12 23:17:34)

GALNERYUSの大黒柱であるギタリスト。
(詳細についてはGALNERYUSの項目を参照)
かなり長いこと「SHU」だと思い込んでいたのですが
「SYU」なんですね。あー、いらん恥かいた。


Syu - CRYING STARS -STAND PROUD!- ★★★ (2013-11-12 23:21:57)

GALNERYUSのSYU(G)、'10年発表の初の(?)ソロ・アルバムにして、『STAND PROUD』シリーズ第4弾。
屍忌蛇(ANIMETAL~VOLCANO)が80年代をカヴァーした第1弾、柴田直人(ANTHEM)が70年代をカヴァーした第2弾と来て、今回は90年代に生み出されたHR/HMの名曲をメインにカヴァー。それに伴って参加ミュージシャンもより若い顔触れへと変化が見られますが、演奏を聴く限りではいずれ劣らぬ実力者揃いなので作品のクオリティは磐石です。
シリーズ第一、二弾が、どちらかと言えばプロデューサー的視点で作られていたのに対し、若きギター・ヒーローの華々しい演奏が映える楽曲を中心にセレクトされている本作は、ギタリスト目線で組み立てられた作品といった印象。HEARTの“ALONE”(アカネ・リヴ嬢が参加)のようなバラード系の楽曲も収録されているのですが、やはり、それ以上に強く印象に残るのはRACER Xの“STREET LEATHEL”やSTRATOVARIUSの“AGAINST THE WIND”、イングヴェイの“NEVER DIE”といった、GALNERYUSにも多大な影響を与えたと思しきスピーディ&テクニカルな楽曲の数々。特に“AGAINST~”は、小野正利の強力なハイトーンVoが乗ることによってオリジナル版をも凌駕するインパクトを獲得しています。
それにしても、とうとう90年代の楽曲もカヴァーの対象になる時代がやって来たかと思うと何やら感慨深いものがありますね・・・。


T'BELL - REPLAY ★★★ (2024-07-09 00:25:41)

スウェーデン出身のシンガー/ソングライター、パトリック・ティベル(Vo)が自らの名を冠して、GRAND ILLUSIONやP.A.L.等への関わりで知られるロジャー・リュングレン(B)らと共に立ち上げたT’BELL。本作は彼らがAOR HEAVENから’00年に発表した最初で最後のアルバムとなります。
タイトな演奏に支えられて奏でられるのは、繊細に歌い上げるVo、立体的に配置された美しいハーモニー、Keyを生かしてちょいプログレ・ハード風味の入ったアレンジまで、初期TOTOを彷彿とさせるメロハー・サウンド。とはいえシンプルにまとめられた音作りはHR寄りですし(あえてなのか、単に予算の問題だったのかは不明)、胸を締め付ける甘酸っぱいメロディの洪水も北欧のバンドらしい透明感を湛えており、安易なTOTOフォロワーとは一線を画する、このプロジェクトならではの個性がしかと刻まれた仕上がりとなっています。
80年代半ばから90年代にかけて作り溜められたマテリアルの中から厳選されているだけあって流石に収録曲の粒は揃っており、もろにTOTOっぽい曲調で聴き手を掴みにかかるOPナンバー①、思わず口ずさみたくなるキャッチーなサビメロが秀逸な②、AOR/産業ロック色が濃厚な③⑫、ミカエル・アーランドソン辺りにも通じる切ない哀メロが溢れ出す⑤⑧⑩、エッジの効いたGがハード・ロッキンに駆け抜ける⑬等々、「制作期間じつに13年」というのも伊達じゃないと思されるクオリティを有していますよ。
中古盤屋で捨て値で投げ売りされていたのも今は昔。近年はじわじわと評価を高めている(…ことを切に願う)隠れた名作です。


T'BELL - REPLAY - Take Me Tonite ★★★ (2024-07-10 00:25:11)

ポップに跳ねる親しみ易い曲調と、北欧のバンドらしい透明感と
哀感を宿したメロディの取り合わせが、ミカエル・アーランドソン辺りに
通じる魅力を発散する名曲。


T.T. QUICK - Metal of Honor ★★ (2010-10-04 23:31:21)

確かにウド・ダークシュナイダー・タイプのシンガーだったけど、まさか本当にACCEPTのニュー・シンガーに就任するとは思わなんだマーク・ト二ーロ(Vo)や、ザック・ワイルドのお師匠さん的存在として知られるデヴィッド・ディピエトロ(G)が在籍していたNY出身の4人組HMバンドが、'86年に発表したデビュー作。
プロデューサー/エンジニアとして、エディ・クレイマーにマイケル・ローゼン、RAVENのロブ“ワッコ”ハンターら錚々たる面子の名前がクレジットされている本作は、ヒステリックな金属的声質を活かして歌いまくるマークのパワフルなVo、ワイルドさと繊細さを兼ね備えたデヴィッドのG、そして骨太なビートを叩き出すリズム隊とが一丸となって、前へ前へと押し出してくるアメリカン・パワー・メタル・サウンドが全編に渡って炸裂。
アメリカのバンドらしい、シンプルでノリ易いロックンロール風味を強く漂わせつつも、それでいて決して能天気には堕とさない硬派な作風は、やはりNY出身バンドゆえか。
ド迫力のアルバム表題曲①や、アップテンポに駆け抜けていく⑧を筆頭とするアグレッシブな楽曲もカッコイイが、個人的にそれ以上に心惹かれるのが、劇的なヘヴィ・ナンバー④、T.T.QUICK流バラード⑦、そして熱くドラマティックに展開しアルバムを締め括る⑩といった、このバンドの優れたメロディ・センスが堪能できるメロウな楽曲の数々。ひとくちにメロウと言っても軟弱さは微塵もなく、「ガテン系親父の背負った哀愁」的なメロディの泣きっぷり、そして一音一音に熱いエモーションの叩き込まれた、デヴィッドのGプレイは胸に沁みるったらないやね。
THE RODS、デビュー直後のMANOWARやOVERKILLといったバンドがイケル口の方にお薦めする1枚。勿論、マーク・ト二ーロが歌うACCEPTの新作が気に入った人もどうぞ。


T.T. QUICK - Metal of Honor - Child of Sin ★★ (2010-10-10 01:06:45)

デヴィッド・ディピエトロが作曲を手掛けているため、
他の収録曲に比べるとグッとメロディアスな仕上がり。
憂いを帯びたメロディを纏って、タメを効かせながら
盛り上がっていく曲調が熱い。


T.T. QUICK - Metal of Honor - Siren Song ★★★ (2010-10-10 01:11:47)

“CHILD OF SIN”と共に、デヴィッド・ディピエトロが単独で書き上げた
メロディアスでドラマティックなアルバムのラスト・ナンバー。
パワフルなだけでなく、懐の深いところ見せてくれるマーク・ト二ーロの
Voも素晴しいが、何と言ってもこの曲の肝は、粘りを効かせて
猛烈に泣きまくるデヴィッドのGプレイ。
もうグイグイと涙腺を刺激してくれますよ。


T3NORS - Naked Soul ★★★ (2023-11-23 01:08:27)

アレン/ランデとかキスク/サマーヴィルとか、シンガー2人にコンビを組ませてプロジェクト立ち上げるのはFRONTIERS RECORDSのお家芸ですが、本作はそこに更にもう1枚看板を追加。ロビー・ラブランク(FIND ME、BLANC FACES)、トビー・ヒッチコック(PRIDE OF LIONS)、ケント・リッヒ(PERFECT PLAN、GIANT)という、同レーベルが誇る実力派シンガーの共演で贈るメロディアスHRプロジェクト、T3NORSが'22年に発表した1stアルバムとなります。
尤も、例えばメタル・オペラ作品のような各シンガーの異なる個性を強調するためのシアトリカルな大仕掛けが用意されていたりするわけじゃなく、ここで聴けるのは飽くまでAOR志向のシンプルなメロディアスHR。正直、FRONTIERS RECORDS発プロジェクトとしてはよくあるタイプのサウンドな上、3人のシンガーの歌唱スタイルが似通っていることもあって「トリプル・ボーカル体制の有難味はそこまで感じられないかなー?」との感想が頭をよぎったりもしますが、とはいえ名手アレッサンドロ・デル・ヴェッキオが仕切り役を担っているだけあって収録曲のクオリティは折り紙付き。腕っこきのソングライター勢が総力を挙げて書き上げた哀愁のHRナンバー⑤や、劇的なバラード⑦といった、三位一体の熱唱と美しいハーモニーが存分に堪能できる名曲の数々を聴き終える頃には、「上手い歌と優れた楽曲があれば大仕掛けなんていらなかったんや!」と前言撤回している己に気が付く次第で。
是非継続プロジェクト化を期待したくなる1枚。スケジュール的に厳しければ、テリー・ブロックとかトム・グリフィンとか、顔触れ替えての第2弾とかいかがでしょうかね。


T3NORS - Naked Soul - Silent Cries ★★★ (2023-11-23 23:58:05)

アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ、ピート・アルペンボルグ、
クリスティアン・フィール、フレドリック・バーグといった、
単独でも十分名曲を書き上げられるソングライター達が束になって仕上げた
哀愁のHRナンバー。そりゃあ素晴らしい楽曲にならんわけがない。
3人のハーモニーが映えるコーラスにグッときますね。


TAI PHONG - Last Flight ★★★ (2016-01-03 22:21:19)

タイトルが暗示するかの如く、TAI PHONGのラスト作となってしまった'79年発表の3rdアルバム。(現在はご他聞に漏れず再結成済み)
永の愛聴盤だった前2作に比べ、この3rdは「売れ線に走った」との事前情報と、なぜか若き日のマサ伊藤も映ってる(←人違い)気の抜けたジャケットに対する違和感から、長らく購入を躊躇し続けていました。しかし再発を期にトライしてみれば、これが実にTAI PHONGらしい充実作で、俺ぁ何でこれをもっと早く聴かなかったのだろうと。
確かに従来作に比べると泣きや哀愁は後退、その分ポップな味わいが増しています。ただ、元々の泣きっぷりが強烈だっただけに、これで漸く人並みレベルに落ち着いただけ…どころか、本作ですらそこいらのバンドより余程メロディが泣いているという。
プログレ・バンドらしい拘りを感じさせるアレンジや曲展開を損なわずに、カラッと明るいポップネスも強調された収録曲は、時にQUEEN等に通じる懐っこさも漂わすようになりました。特にウェスト・コーストの風がそよいで来そうな爽やかな歌メロに対し、インスト・パートからは哀愁が溢れ出す①や、ジャジー且つ優美なピアノ・ソロと、「ポジティブな“STARLESS”」といった趣きのサックス・ソロが炸裂する②は、アルバムのハイライトに推したい名曲。無論、TAI PHONGの真骨頂たる⑤みたいな泣きまくる曲も最高ですが。
同じように聴かず嫌いをしておられる方がいらっしゃましたら、是非ご一聴をお薦めする名盤。


TAI PHONG - Last Flight - Farewell Gig in Amsterdam ★★★ (2016-01-06 22:33:24)

9分に及ばんとする大作曲ですが、くるくると猫の眼のように
変わる曲展開のお陰で中弛みはなし。
大仰さよりも軽やかさが勝っている辺りが3rd収録曲らしいところなれど、
Voの声質からして既に泣いているバンドゆえ、能天気な印象もなし。
前半の山となる優美なピアノ・ソロ、そしてクライマックスで踊る
“STARLESS”風(但しテイストは正反対)のサックス・ソロが聴きモノです。


TAK MATSUMOTO - Thousand Wave ★★★ (2015-04-16 22:12:50)

その昔、中古盤が格安価格で投売りされてたのと、「ゲストでLOUDNESSの樋口宗孝がドラム叩いてるんなら、そう酷いことにはならんだろう」と、かなり後ろ向きな理由で購入を決めた、松本孝弘がB'zデビュー前の'88年に発表した1stソロ・アルバム。
でも実際に聴いてみると、これがゲスト云々は関係なしに非常に優れた出来栄え(ゲスト陣の仕事ぶりが作品の質を高めていることも間違いありませんが)。考えてみりゃ本作リリース時点で、既にソングライター/ギタリストとして数々の場数を踏んできた、実力折り紙付きのセッション・ミュージシャンだったわけですからね。
オール・インスト物ながら、スポーツニュースのテーマ曲みたいな②から、松本、樋口、小室哲哉(Key)が三つ巴の楽器バトル繰り広げる火花バチバチな⑦、ホラー/サスペンス映画の劇伴チックな⑩に至るまで、印象的に「歌う」メロディがフィーチュアされた楽曲の数々は、ギター・インスト物を余り得意としない自分のような人間ですら片時も退屈させない求心力を放っています。殊にチック・コリアの名曲を、ヘヴィ・メタリックな切れ味の鋭さと疾走感を加味してリアレンジした③はアルバムの白眉!
テクニックのひけらかしに拘泥せず、全編に亘って貫かれた楽曲優先主義に、実に心地良く身を委ねられる1枚でありました。


TAKARA - Taste of Heaven ★★★ (2014-02-20 22:21:20)

筆のノリまくったゼロ・コーポレーションの名調子「だからTAKARA」「おかえりTAKARA」といったCD帯の惹句も思い出深いTAKARA。その彼らが'97年に発表し、BURRN!!誌でも高得点を獲得する等、バンドの最高傑作と評価の高い2ndアルバムがこちら。
キレのあるメロディアスなGプレイに、北欧メタルに通じる透明感と哀愁を宿した楽曲作りに腕前を揮うニール・グロスキー(G)がリーダーの筈なのに、作中においてそれ以上の存在感を発揮しているのは、ジェフ・スコット・ソート(Vo)その人。プロデュース担当のジェフが本作で歌っているのは(当人の弁を借りるなら)「他に適当なシンガーがいなかったから」なのですが、国内盤ライナーに解説文を寄せるわ、肉声インタビューは提供してるわ、トドメに爽やかなハード・ポップ・チューンは伸びやかに、バラードは情熱的に、北欧メタル的様式美ナンバーはパワフルに・・・と、バラエティ豊かに取り揃えられた楽曲を余裕綽々で歌いこなし、尚且つ持ち前の灼熱ボイスで本編にビシッと一本芯を通すイイ仕事っぷりを披露。そら「TAKARAってジェフのバンドでしょ?」と勘違いする人が続出しますわな(俺のことなんですが)。そも、ニール・グロスキー自体が絶対ジェフが歌うことを前提に曲作りしてますよね、これ。
そんなわけで、パーマネントなシンガーを迎えた後のTAKARAが急に失速してしまったことも、今にして思えば無理からぬことであったような・・・。


TAKAYOSHI OHMURA - Eclipse from East ★★ (2008-09-12 00:19:00)

マーク・ボールズ、リッチー・コッツェン、ドゥギー・ホワイトら、豪華なゲストを迎えて制作された5曲入りEP
『NOWHERE TO GO』でデビューを飾ったハイテク・ギタリスト大村孝佳が、バンド名義(CROSS ROAD)で'06年に発表した1stアルバム。
参加メンバーの顔触れはかなり地味になったし、今回は全曲が日本語詞で歌われているせいか、若干、ジャパメタ風味が
増量されたとの印象を受けるが、メンバーの実力は確かな上に(余裕のないVoの歌唱は好き嫌いが分かれるかもしれないが)、
大村の劇的なGプレイと、彼自身が手掛ける楽曲のクオリティは変わらぬ高水準を保っており、トータルの完成度には全く揺らぎなし。
ゲーム『ファイナル・ファンタジー』のテーマ曲を思わせる華麗なインスト曲①で幕を開ける本作は、ドライヴする
HRチューンあり、グルーヴィなロックンロールロックあり、柔和なバラードあり・・・と、前作に比べ収録曲のバラエティは
グッと豊かになっていて、しかもその何れもが、フック満載の哀メロに彩られ、散漫さは皆無。
特に、エレアコが美しく爪弾かれるインスト曲④を経て、秀逸なKeyアレンジをまとって疾走する⑤と、ポジティブ且つ爽やかに
駆け抜けていく、トレンディ・ドラマ(死語)の主題歌が似合いそうな⑧は、本編のハイライト・ナンバー候補じゃないかと。
全9曲で30分弱と、ボリューム的にはやや食い足りなさが残るものの、詰め込み過ぎてダレるよりは全然マシ。
デビューEPが気に入った人なら間違いなく「買い」の1枚。


TAKAYOSHI OHMURA - Nowhere to Go ★★ (2008-09-07 02:21:00)

関西出身のテクニカル・ギタリスト大村孝佳が、'04年にリリースした5曲入りデビューEP。YAMAHAの全面バックアップを
受けた若き天才Gの門出を祝って、ご祝儀代わりにヴィタリ・クープリ(Key以外にもプロデュースを担当)、
スティーヴ・デジョルジオ(B)、ドゥギー・ホワイト(Vo)、マーク・ボールズ(Vo)、磯田良雄(Ds)、
リッチー・コッツェン(Voとしてのみ参加)ら、豪華なゲスト・ミュージシャン勢が客演。
勿論、いくらゲストが華やかでも、肝心の楽曲がショボくては虚しいだけだが、大村は精度の高いGプレイのみならず、
曲作りの上手さにおいてもその手腕を発揮。たった5曲収録にも関わらず、マーク・ボールズが伸びやかな歌声を披露する、
アップテンポのハード・チューン①、リッチー・コッツェンのエモーショナルな熱唱が映える②、ヴィタリ・クープリの
華麗なピアノ・プレイが楽曲に華を添える③、泣きまくるGとドゥギー・ホワイトのVoにグッと掴まれるバラード④、
『TORILOGY』時代のイングヴェイを彷彿とさせる(Voもマークだしね)、スリリングなラスト・ナンバー⑤・・・と、
収録曲は何れも確かなクオリティの高さを誇り、物足りなさを感じる場面は全くない。
単に派手に弾きまくるだけのギター・アルバムではなく、曲をより活かすために、しっかりと練り挙げられたGプレイが
全編に渡って繰り広げられる良作。個人的に、彼の作品では最も聴く機会の多い1枚かなと。


TALISMAN - 7 ★★★ (2021-06-01 00:54:27)

ジェフ・スコット・ソート(Vo)がJOURNEYに引き抜かれ、フレドリック・オーケソン(G)もARCH ENEMYへと去り、活動停止を余儀なくされたTALISMANが'06年に残した7thアルバム。でもまぁマルセル・ヤコブ(B)さえ健在なら、またメンバーの体が空いたタイミングでバンドを再始動してくれるでしょ?と軽く考えていたところに届いたマルセル自死の報。まさかこれが本当にTALISMANの最終作になってしまうとは…。
せめてもの慰めは、本作の内容が素晴らしかったこと。いわゆる「北欧メタル」と聞いてイメージする線の細さ/頼りなさとは一線を画す、図太く脈動するリズム、ジェフ由来の黒っぽいフィーリング携えたグルーヴ、そしてマルセルがクリエイトする冷ややかな憂いを帯びたメロディが一体となって畳み掛けるサウンドは、唯一無二のTALISMAN流HRの集大成と呼ぶに相応しい充実ぶりを誇っています。個人的には古き良き北欧メタルの様式美に忠実だった1stへの思い入れがひとしおなのですが、こと独自性という点においては本作に軍配が上がることに異論を差し挟む余地はありません。
特に跳ねるような疾走感溢れる曲調に冷ややかな哀メロが乗ったOPナンバー①は本作の魅力を凝縮したような名曲。以降も、グルーヴはダルだけどメロディは濃い口の哀愁を帯びた②③、コシの強いビートを刻むリズム隊とフレドリックのテクニカルなGプレイがギラリと光る④、フレッシュなハードポップ⑥…と、語ろうと思えば頭から1曲ずつ語れてしまうレベルのフックとヒネリの効いた楽曲が目白押し。これが最終作とは寂しい限りなれど、間違いなく有終の美を飾るに相応しい品質が備わった1枚です。


TALISMAN - 7 - End of the Line ★★★ (2021-06-02 01:22:17)

リズムはゴリゴリにファンキーながら、ジェフが熱唱するメロディは
哀愁を帯びていて、昔よく耳にした「下は大火事、上は大水、これ何だ?」
というなぞなぞを思い出してしまった逸品。テクニカルに華を添える
フレドリックのGも印象に残ります。


TALISMAN - 7 - Falling ★★★ (2021-06-02 01:16:52)

ジェフのホットなVoが歌い上げる冷ややかな哀メロが
躍動感溢れるリズムに乗ってハジけるOPナンバー。
TALISMANの個性と魅力がこれでもか!と表現された名曲です。


TALISMAN - Five Out of Five (live in Japan) ★★★ (2012-07-09 21:54:50)

TALISMANが'93年に川崎クラブチッタで行った初来日公演の模様を収めたライブ・アルバム。
作品を重ねる毎に(メロディアスでありつつも)リズミック且つグルーヴィなHRサウンドへと進化していった彼らですが、デビュー当初はキラキラなKeyをフィーチュアし、美旋律と透明感を前面に押し立てた北欧メタル然とした音楽性が持ち味でした。特に、2nd『GENESIS』リリース後に行われたライブの模様が捉えられている本作は、これ以降の路線変更を鑑みるに「初期TALISMANの総決算的内容」と言えるかもしれません。
太く熱い歌声を披露するジェフ・スコット・ソート(Vo)に、テクニカルなフレーズを難なくこなす現OPETHのフレドリック・オーケソン(G)、そして躍動感溢れるリズム・ワークでボトムを支える故マルセロ・ヤコブ(B)&ジェイミー・ボーガー(Ds)という巧者揃いのラインナップゆえ、骨太なパフォーマンスには北欧のバンドにありがちな不安定感や線の細さは皆無。
コール&レスポンスからコーラスまで大いに盛り上がる観客の歓声と、スタジオ・アルバム以上にハードで熱気溢れる演奏に乗せて、“COMIN' HOME”“I'LL BE WAITING”“BREAK YOUR CHAINS”といった名曲の数々が、次から次へと繰り出されるわけですから(確か当日はイングヴェイの“I AM A VIKING”もチラッと演奏されたと記憶しています)、本作の完成度の高さは約束されたようなもの。
ZEROコーポレーション謹製の「LIVE IN JAPAN」物の中では上位にランクインするクオリティを備えた1枚ではないかと思われます。


TALON - Neutralized ★★ (2014-12-08 23:00:28)

HEADHUNTERでシュミーアの相棒役を務めたシュムーデルことウヴェ・ホフマン(Vo、G)や、後にSINNERに参加するトミー・レッシュ(Ds)らが在籍してたドイツの4人組が、'85年にリリースした1stアルバム。
朗らかに弾むOPナンバー①が始まった時は「あちゃー」とか頭抱えたものですが、中盤以降は「NWOBHM調に料理されたJUDAS PRIESTの“THE REAPER”」的シリアスさで俄然盛り上がり始め(Voもほんのりロブ・ハルフォード風)、更にその後に続く疾走ナンバー②で、本編に対する期待値が大きく跳ね上がります。
思わず目を細めてしまうキメのフレーズをビシバシ叩き込みながら走り抜ける名曲⑥や、②⑧といった疾走ナンバーを手始めに、アルバムの随所でシャープに踊るツインGがこのバンド最大の武器。どこか透明感を漂わせながらメロディアスにハモり歌う様はPRAYING MANTIS等に通じるものがあります。但し泣きや哀愁よりもハードネスの方が勝っているあたりは、やっぱりドイツ出身だなと。勿論⑤のような叙情的な楽曲も良い出来ですけどね。
収録曲の完成度にばらつきがあり、アルバムを通して聴くとぼやけた印象が残ってしまうのがB級メタルの悲しさですが、でもまぁそこが愛嬌であるわけで。個人的には好きな1枚。


TALON - Neutralized - Overlords Supreme ★★★ (2014-12-09 22:09:33)

実直且つハードに疾走するスピード・ナンバーですが
機動力を活かして軽快に動き回るツインGや
ハイトーンVoがどことなく透明感を湛えているためか
後味はスッキリと爽やか。
間違いなくアルバムのハイライト・ナンバーです。


TANE CAIN (2017-11-20 23:17:52)

本名はトーニー(正確な発音は「ターニー」)マクルーア。芸能一家に生まれ、幼少時から女優業をスタートさせる傍ら、70年代にはラテン・ジャズ・バンドを始め、音楽活動も行っていたという。70年代終盤にBABYS時代のジョナサン・ケインと出会い、結婚。
モデル級の美貌に確かな歌唱力、そしてミュージシャン人脈を併せ持つ逸材としてRCA RECORDSの接触を受け、'82年にセルフ・タイトルのアルバムでソロ・シンガーとしてデビューを飾る。
2ndシングル『抱きしめて』がTOP40にランクインするヒットとなるも、アルバム自体はチャート100位圏内に入ることも叶わなかった。(最高第121位)
'84年にはターニー・ケイン&トライアングルズ名義で映画『ターミネーター』のサントラに楽曲提供も行っている。(サラ・コナーとターミネーターの初遭遇シーンのバックで流れている曲がそれ)


TANE CAIN - Tané Cain ★★★ (2017-11-20 23:20:06)

JOURNEYを支えるKey奏者にして、稀代のソングライターでもあるジョナサン・ケイン。その奥方だった(当時)トーニー・ケインが、旦那とキース・オルセンのプロデュースを受けてRCA RECORDSから'82年に発表したソロ・デビュー作。(邦題は『抱きしめて』)
JOURNEYに通じるポップでメロディアスなAOR/産業ロック・サウンドを聴かせてくれる作品で、一流のスタッフ・ワークと、ニール・ショーンら多彩なゲスト陣がそれをバックアップ。その上ジョナサンが全面的な楽曲提供を行っているとあれば、収録曲の粒の揃い具合は疑う余地なし。Mr. MISTERのリチャード・ペイジ(Vo)とのデュエット・バラード⑥には、後の売れっ子プロデューサー、ボー・ヒルの名前も見つけられたりして、そりゃあこんだけ4番バッターが揃っていれば凡打になるわけがありませんよ。
本作のヒロインたるトーニー・ケインも、ハイクオリティな本編に対して聴き劣りしない、素地のしっかりとした歌唱力を披露。哀愁に彩られたキャッチーなメロディを時に伸びやかに、時にしっとりと歌い上げています。特にシングル・カットもされた①⑤は流石の出来栄えで、アルバム表題曲でもある後者は、全米チャートTOP40に食い込むスマッシュ・ヒットを記録しています(最高位は第38位)。ちなみに'84年発表のJOURNEYの代表作『FRONTIERS』に収録されている、ジョナサン作曲の名バラード“時への誓い”は、この曲に対するアンサー・ソングになっているのだとか。ご馳走様。
残念ながらアルバム自体のセールスは振るいませんでしたが、「本業の片手間仕事」「女優の自己満足」と侮ることなかれ。メロディ愛好家から支持されているのも納得の名盤ですよ。


TANGIER - Four Winds ★★ (2017-07-21 00:19:31)

80年代後半、浮かれポンチなLAメタルに対するカウンター的に発生したブルーズ・ブーム。GREAT WHITEやCINDERELLAが人気を集める中、その盛り上がりにいっちょ噛みすべく米メジャーのATCOが送り込んで来た、《嵐を呼び起こす5つの風》ことフィラデルフィア出身のTANGIERが’89年に発表した1stアルバム。…と思ったら実はインディーズ時代に既にデビュー作は発表済みで、一度解散した後、GとVo中心のバンド再編を経てレコーディングされたのが本作だったという。つまりこれは2ndってことか。
サウンドの方は、WHITESNAKEからゴージャス感を差っ引いた代わりに、アメリカンな埃っぽさを増量したようなブルーズ・ロック。リリース当時は、いくらゴッドが激賞してようが音楽性的に全くのアウト・オブ・眼中で、最近になって中古盤が安く投げ売られているのを発見し、ようやく落穂拾い気分で購入してみたのですが…ああ、良いじゃんか!コレと。
一発で掴まれるような派手さは控えめながらも、適度なノリの良さや乾いた哀愁のメロディに彩られた収録楽曲は、メインストリーム・ロック然としたキャッチネスも備えていて、必要以上に地味に落ち着き過ぎることがありません。一度聴き始めるとスルスルと楽しめてしまいますよ。骨太なGプレイと、何より歌詞と歌詞の行間をエモーションで埋めていくタイプのシンガーの、デヴィカバやポール・ロジャースに連なる歌いっぷりが最高です。ハミングからスタートするヒット・シングル③や、哀愁を湛えて熱く盛り上がっていくバラッド⑤等は、このバンドならではの個性が渋い輝きを放つ名曲ではないでしょうか。
こんな逸材Voが、本作を最後にバンドを脱退してしまったのは返す返すも残念ですね。


TANGIER - Four Winds - Four Winds ★★★ (2017-07-23 02:19:14)

イントロからして砂塵吹き荒ぶ西部のゴーストタウンが
脳裏に浮かぶような渋さ。
骨太な哀愁漂わすGと、タメの効いたリズム、
(さりげなくKeyも有用されています)
そしてビル・マットソンのエモーショナルなVoが
徐々に熱を帯びながら盛り上がっていく曲展開に
くぅーっと唸らされますよ。


TANGIER - Four Winds - On the Line ★★★ (2017-07-23 02:27:57)

小粋なハミングに哀愁のGが被さる導入だけで
「渋っ!」となる、パワフルなブルーズ・ロック・ナンバー。
シングル・カットされ(最高第67位)、
PVも作られたTANGIERの代表曲でしょうか。


TANK - Filth Hounds of Hades ★★★ (2011-02-26 01:10:39)

パンク畑出身のアルジー・ワード(Vo、G)と、ピート(B)とマーク(Ds)のブラブス兄弟が出会った事により誕生したTANKが、MOTORHEADのメンバー(本作のプロデュースを手掛けているのは“ファスト”エディ・クラーク)と、そのマネージメントの援護を受けてレコーディングを行い、デビュー・シングル『DON'T WALK AWAY』('81年)に続いてKAMAFLAGE RECORDSから'82年に発表した1stフル・アルバムがこれ。(邦題は『激烈リフ軍団)
いかにも「MOTORHEADの舎弟」的なシンプルでソリッドで埃っぽいロックンロールを根っこに据えつつ、パンキーなノリの良さ、へヴィ・メタリックな切れ味の鋭さ、そしてアルジーの男気溢れる濁声Voが一丸となって疾走するハイエナジーなサウンドは、VENOM、RAVEN、ANGEL WITCHらと共に「元祖スラッシュ・メタル」としてリスペクトを受けるTANKならではの攻撃性と炸裂感を併せ持っており、特に、機動力に富んだキャッチーなGリフは有無を言わせぬカッコ良さ。
捨て曲ならぬ捨てリフ皆無の本編の充実っぷりは、流石「激烈リフ軍団」の面目躍如といったところで、中でも初期TANKの破天荒な魅力が凝縮されたスピード・ナンバー①②⑨、聴いてるだけでメートルが上がってしまう(タイトルからして最高に奮ってる)④、メロディアスに本編を締め括る⑩、そして激走するリズムの上に、男の哀愁を背負ったアルジーの濁声が乗っかったアルバムのハイライト・ソング⑥(後にSODOMもカヴァーしましたっけね)は特筆に値する名曲かと。
「ドラマ性と哀愁分を増量した4th『HOUNOR & BLOOD』こそTANKの最高傑作」と信じて疑わない我が身には、ややシンプル過ぎる作風なれど、それこそが本作の魅力である点もまた理解できる1枚。


TANK - Filth Hounds of Hades - Turn Your Head Around ★★★ (2011-02-26 01:13:41)

クールなGリフ、パンキッシュな疾走感、
そしてアルジー・ワードの男の哀愁背負った濁声Voと、
初期TANKの魅力が凝縮された、1stアルバムの中でも
1、2を争うスピード・ナンバーの名曲。


TANK - Honour & Blood ★★ (2007-03-15 22:09:00)

このタイトル、そしてアルバム・ジャケットを見てるだけで血沸き肉踊る、NWOBHMを代表する
荒くれ爆走軍団TANK、'84年発表の4thアルバム。
まさに「戦いの序曲」といった感じのシンセとGリフによるイントロに胸が高鳴り、全楽器が
一斉に突撃へと転じる瞬間の、余りのカッコ良さに小便チビリそうになる名曲①を聴けば明らかな通り、
本作は、3rd『THIS MEANS WAR』で開花したパワーメタル路線を更に推し進めた、大作主義・ドラマ性重視の作風に仕上がっている。
猛々しく刻まれるリフ、戦車の進撃の如き力強いリズム、男の哀愁を濃厚に漂わせたアルジー・ワードの濁声Vo、
叙情的と表現するには荒々しく、骨太な「泣き」を炸裂させるGソロといった要素に彩られた収録曲は、何れも聴き応え十分。
中でも前述の劇的なOPチューン①、威風堂々たるアルバム表題曲③、キャッチーとも言えるサビが印象的な⑥、
強烈に咽び泣くツイン・リード・ギターが悶絶モノの⑦は、勇ましさと哀しさを併せ持つ、
まさに「男達の挽歌」とでも呼ぶべき名曲。必聴。
これほどの名作をモノにしながらも、NWOBHMの終焉、所属レコード会社の倒産、メンバーの脱退といったトラブルに
次々に巻き込まれたTANKは活動が停滞。次作『TANK』を'86年に発表した後、長期間の沈黙を余儀なくされるのであった・・・。


TANK - Honour & Blood - The War Drags Ever On ★★★ (2007-03-15 22:35:04)

シンセサイザーとGリフのイントロの時点で既に胸が高鳴り、
全楽器が突進へと転じる瞬間のカッコ良さがガッツポーズモノの、
アルバムのOPチューンにしてハイライト・チューン。
アルジー・ワードの男の哀愁を背負った濁声で歌われる
まさに「男達の挽歌」。


TANK - Tank ★★★ (2011-02-28 22:43:48)

BRONZE RECORDSの倒産騒動に巻き込まれ身動きが取れなくなってしまったTANKが、所属マネージメントが主催するGWR RECORDSへと移籍して'86年に発表した5thアルバム。
彼らのカタログの中では頭抜けて地味な存在であり、大多数のファンからも「まぁ、悪くはないんだけどね・・・」レベルの消極的ジャッジを下されている本作。
サウンド・プロダクションは妙に小さくまとまってしいるし、歪みを抑えて以前よりもメロディアスに歌うことを心掛けているアルジーのVoや、破天荒な炸裂感が薄れてしまった作風に物足りなさを覚える向きも十分に理解は出来るのだが、とは言え、ガッツィーなGリフの刻みと、パワフルに前進するリズム・セクション、ドラマティックにハモるツインG、そして(カロリーは控えめになっても)相変わらず濃厚な哀愁背負ったアルジーのVoによって作り出される、グッと来る男泣きのドラマティシズムと侠気溢れるTANK流メタルは堂々健在。
特に『遊星からの物体X』風のイントロを打ち破って剛毅に突き進むOPナンバー①、日本軍の真珠湾攻撃について歌った②、力強くも憂いに満ちた③といった名曲が連打されるアルバム前半のカッコ良さには思わず血が滾ります。勿論、アグレッシブな疾走ナンバー⑤からスタートする、悲壮なバラード⑥を含む本編後半の完成度もお見事。というか本作に捨て曲はありませんよ。
戦車というより装甲車的な作風なれど、それはそれで十分に魅力的。


TANK - This Means War ★★ (2007-03-16 22:27:00)

シンセサイザーによるメロディアスなイントロと、それに続くドラマチックな疾走曲①が、
「TANK=小型MOTORHEAD」との先入観を粉々に打ち砕く、'83年発表の3rdアルバム。
コミック調のジャケットこそ初期ハードコア路線を思わせるが、新たにミック・タッカー(G)が加わり、
ツインG編成へと移行した事で、楽曲に宿るドラマ性が飛躍的に増大。疾走感はそのままに、
より正統派へヴィ・メタル・テイストが前面に押し出された内容に仕上がっている。
その代表格が、OPチューンにしてハイライト・チューンと言うべき①や、グッとくるGソロが炸裂する②、
①に匹敵する劇的さを誇るアルバム・タイトル・トラック③、メロウな味付けが効いてるスピード・チューン④、
そしてシングル・カットもされた⑦といった楽曲。いずれもアルジー・ワードの男臭い濁声Voが
醸し出す哀愁と、ツイン・リードGが紡ぐ、勇ましくも物悲しげなメロディに彩られた名曲揃い。
また、「TANK流パワー・メタル」としか表現のしようのない独自性を確立し、6~8分台の楽曲が並ぶ
大作主義を志向していた次作『HONOUR&BLOOD』に比べると、楽曲がコンパクトにまとめられ、
より普遍的なヘヴィ・メタル色が濃いので、本作の方がTANK入門書にはうって付けかもしれない。
(で、コレが気に入ったなら、当然『HONOUR~』も聴くべし)


TANK - War Machine ★★★ (2011-03-03 22:22:23)

アルジー・ワードが脱退?しかもその後任がドゥギー・ホワイト?ないわー(笑)
・・・ってな感じで、当初は購入する気は更々なかったのですが、こちらのご意見の数々を読んで前言撤回。
で実際に聴いてみて、闘争心を煽る猛々しいGリフに、パワフル且つ豪快なリズム、そして熱き血潮の通った泣きのソロから、思わず血が滾る劇的なユニゾンまでこなす2本のGが、男泣きの哀愁背負って突き進む「男たちの挽歌」たる、TANK流メタルが揺るぎなく継承された内容にガツンと一撃された次第。
便利屋シンガー的存在感の軽さゆえ、TANK節を歌うには重量感不足なイメージがあったドゥギーも、実に堂々たる歌唱を披露。北欧メロデス(初期IN FLAMES?)風のイントロから始まる勇壮なOPナンバー①や、新生TANKのアンセムと言うべき疾走ナンバー③の名曲っぷりは、彼の雄々しくメロディアスな歌声がその劇的さを最大限に引き出しているからこそ。
前任者に比べれば線の細さは隠しようもないし、アルジーが抜けた事で、埃と汗と油に塗れた男臭さが薄れてしまった点は大きな損失だが、個人的には、失ったモノ以上に得たモノも多いように感じられる1枚。
あと「メンバーの理想通りに仕上がった5th『TANK』」的な趣きも感じられたり。


TANK - War Machine - Phoenix Rising ★★★ (2011-03-03 22:24:32)

雄々しいサビメロは、拳振り上げながら一緒に
歌いたくなりますね。勇壮且つ劇的にハモる
ツインGも美味しい。
ライブ・バージョンが同時収録されている事からも
メンバーのこの曲に対する自信の程が伺えます。


TANK - War Nation ★★ (2012-10-20 00:04:35)

ドゥギー・ホワイト(Vo)が加入して、さてどうなることやらと心配していましたが、取り敢えず順調に新作を発表してくれたので、まずは一安心。
バンドの創設者たるアルジー・ワードが脱退し、彼の歌声が担っていた「傷つき、埃と油塗れになりながらも巨体を軋ませつつ突き進む」TANKのイメージが薄れてしまったことに対し、「こんなのTANKじゃない」との感想を抱く気持ちは分からなくもありません。
しかしながら、荒くれたGリフと男泣きのメロディをクリエイトするミック・タッカー&クリス・エヴァンスの鉄壁のGチームに加えて、ドゥギーという伸びやかに歌えるシンガーを得たことで、よりドラマ性が強化された楽曲の数々がブリティッシュHMとして高い完成度を提示していることは誰の耳にも明らか。
cri0841さんが指摘されている通り、前作収録の“PHOENIX RISING”級のキメ曲が不在の本編は少々小粒な仕上がりですが(だから国内盤にリリースが見送られた?)、戦う漢の哀愁と心意気を伝える①⑤⑧といった名曲を聴いたら、メタル魂を燃え上がらせずにはいられませんよ。
車長が交代し、装甲板やエンジンも取り替えられて、より小型でモダンなデザインになったとはいえ、戦車は戦車。外見が多少変わろうとも根本は揺るぎないTANKサウンドが貫かれています。


TANKARD - A Girl Called Cerveza ★★★ (2022-07-06 23:09:37)

既に解散済みのバンド、あるいはそこから復活を遂げたバンドを神格化する一方、一度も解散せず地道に活動を継続しているバンドに対しては「あ、まだやってたんだ」と雑な扱いをしがちで、我ながらこれはいかんと自戒する今日この頃。本稿の主役たるドイツのTANKARDもその筆頭バンドの一つですが、’12年発表のこの15thアルバムは、彼らが歩みを止めることなく着実に積み上げてきたベテランの凄味がガッツリ刻まれた仕上がり。
「ドイツの大酒飲み軍団」的な愉快なイメージで愛される彼らなれど、実のところ本編に託されているのは、緊迫感を伴って畳み掛けるシリアスなスピード/スラッシュ・メタル・サウンドであり、ザクザクと切っ先鋭く刻まれるリフ、性急に突っ走るリズム、適度にメロディもなぞって歌うシャウトVo、そして欧州風味のウェットな旋律を奏でるGからは、ファニーな(今だったらコンプラ的にアウトになりそうな)アートワークが醸し出す能天気な明るさは殆ど漂ってきません。
さりとて、堅苦しさ一辺倒に陥ってしまうこともなく、一緒に叫びたくなるキャッチーなコーラスが印象的な②、スラッシーなスピード感のみならず劇的に踊るGソロのカッコ良さも耳を捉える③、ドロ・ペッシュがゲストVoとして華を添える⑤、長年独スラッシュ・シーンを支え続けたバンドとしての自負が漲る⑥といった、キレキレな演奏、内に篭らない抜けの良さ、ロード生活で培ったであろう聴く者を無条件にノらせてしまう躍動感とを併せ持つ収録楽曲の数々には、TANKARDならではの親しみ易い個性が息衝いています。
「継続は力なり」という格言を体現するかのような力作ですよ。


TANKARD - A Girl Called Cerveza - Not One Day Dead (But One Day Mad) ★★★ (2022-07-08 01:04:52)

'82年の結成から、VORTEX→AVENGER→TANKARDへの改名、
90年代のメタル冬の時代すら踏破して、路線変更も解散もなく
現在に至るまで歩み続けるTANKARDの、スラッシュ・メタル・バンドとしての
プライドと覚悟の程が綴られた歌詞と、何より歯切れ良く劇的に疾走する
楽曲自体のカッコ良さに痺れずにはいられない名曲。


TANKARD - A Girl Called Cerveza - Witchhunt 2.0 ★★★ (2022-07-08 00:52:35)

飲めや騒げやの賑々しさよりも、硬質な切迫感とキレ味の
鋭さを伴って突っ走る、本編中最もスラッシュ・メタル色を
濃厚に漂わせたスピード・ナンバー。メロディックに駆け巡る
Gソロもカッコイイ。


TANKARD - Chemical Invasion ★★ (2007-05-21 21:32:00)

「ドイツ人=真面目」の図式を覆した(?)、大酒飲みの酔っ払い軍団ことTANKARD、'87年発表の2ndアルバム。
デビュー作『ZOMBIE ATTACK』は、パンキッシュで弾けるような快活さが気持ちの良いアルバムだったが、
それに比べると本作は、スピード感2割増、エッジの立ったリフの刻みは更なる細かさと鋭さを得て、歌メロも
より直線的でシャウト主体のアグレッシブなスタイルへ・・・と、前作から一層スラッシュ・メタル色を強めた作風。
特に、イントロのSEに続いて激烈に疾走を開始する①や、冒頭の流麗なGソロが印象的な②、個人的には本編中で
最も愛して止まない、攻撃性とノリの良さが同居する③という、冒頭からの高速スラッシュ・チューン3連発は、
このアルバムの作風を象徴するかのような名曲揃い。
相変わらず“PUKE"だの“ALCOHOL"(USハードコア・バンドGANG GREENのカヴァー)だの、
“FOR THE THOUSAND BEERS"だのと、実も蓋もないタイトル(と歌詞)の曲も多いし、⑤に至っては
アコギを交えてドラマチックに盛り上がっていく異色のインスト・ナンバーだったりするのだが、
後のアルコール濃度高めでメートル上がりっ放しの作品群に比べると、楽曲自体は遥かに
硬派でスラッシーな仕上がりなので、「TANKARDってアルバム数が多過ぎて、どれから聴いていいか分からない」
というスラッシャーにも、TANKARD入門編としてお薦めできる名作。


TANKARD - The Morning After ★★ (2007-10-02 23:55:00)

多くのファンが、TANKARDの名前を聞いて想起するスラッシュ・サウンドが遂に完成をみた、'88年発表の3rdアルバム。
初期作品からはそこはかとなく感じられた、ヨーロピアンな湿り気が綺麗サッパリに消え失せ、
カラッと乾いて明るく弾けるサウンドは、「メソメソ、ウジウジしてる暇はねぇ!」とばかりに、
ひたすらポジティブ&アグレッシブ。ライブで大盛り上がりする様が目に浮かぶようです。
正直、ここまで躁状態の続くアルバムを1枚聴き通すのはかなり辛いのだが、このバンドの長所は、
突き抜けて陽気であっても、決してユルくはならない点。安定したリズム隊が叩き出す、
タイト且つハイスピードな疾走感は痛快極まりないし、ジャキジャキと歯切れ良く刻まれるGリフが
カッコイイしで、個人的な好みは兎も角、この完成度の高さは流石だ。
何より、陽性よりも攻撃性が勝るアルバム・タイトル・トラック⑦や、その勢いを受け継ぐ⑧、浮かれ気分の中で
シリアスさが一際光る⑩、そしてジャーマン・ハードコアの大御所SPERMBIRDSのカヴァー⑥といった楽曲は十分に魅力的だしね。
TANKARDの作風は、確かに血中バカ濃度が高めなのだが、彼らが素晴しいのは、そのバカを言い訳にして
曲作りや演奏に手抜きをしないところ。そんじょそこらのバカとは違う、筋金入りのバカを舐めてはいけない(褒め言葉)。


TANKARD - Zombie Attack ★★ (2007-05-18 22:53:00)

ドイツはフランクフルト出身の5人組スラッシュ・メタル・バンド、'86年発表の1stアルバム。
ドイツ産スラッシャーと言えば、スラッシュ三羽鴉を筆頭にダークなイメージが強いが、こいつらは例外。
何しろバンド名からして「ビールジョッキ(蓋付き)」というだけあって、そのサウンドは陽気で健康的。
小細工なしでひたすらストレートに押しまくる疾走感抜群の楽曲の数々は、サビメロもシンプルな単語を
連呼するだけと、覚え易く単純にまとめられていて(キャッチーってのとはちょっと違うんだけど)、
ライブでの大盛り上がりが容易に想像できる仕上がり。「EXODUSのノリに近い」と言ってた方が居たが、
個人的にもそう思う。アレから湿り気を取っ払って、もっとパンキッシュにした感じ?
尤も、陽性ではあっても能天気ではない、というのが本作の良い所で、例えば②や④のGソロなんかには
かなりの練り込みが伺えるし、何よりこのバンドは演奏がメチャウマ。歯切れの良い演奏によって
もたらされる緊張感と爽快感がアルバム本編にビシッと一本筋を通しているので、個人的に
それほど好みの音楽性というわけでもないのに、本作に関しては繰り返し聴き込んでも飽きるという事がない。
「ドイツの酒飲み軍団」とのイメージに惑わされて聴かずにいると、大きな損をする良質のスラッシュ・メタル・アルバム。


TARGET ★★ (2009-12-15 21:43:00)

'85年、METALLICAやSLAYER、UFOといったバンドに触発されたメンバー達によって結成。メンバー・チェンジを
繰り返しながら制作したデモテープがラルフ・ヒューベルト(MEKONG DELTA)の耳に止まり、彼のプロデュースを
受けて2本目のデモテープを制作した後、そのラルフが主催するAAARRGH RECORDSと契約を交わし、
'86年に1stアルバム『MISSION EXECUTED』を発表する。
PARADOXやTANKARDとのドイツ・ツアー後、再度、プロデューサーにラルフを迎えて2ndアルバムのレコーディングを開始、
'87年に傑作と名高い『MASTER PROJECT GENESIS』を発表。スラッシーなスピード感を保持しつつ、
テクニカルでプログレッシブ且つアバンギャルドなスラッシュ・メタル・サウンドが注目を集める。
ダイナモ・オープン・エアーに出演する等ツアーも好評だったが、所属マネージメントとの軋轢が原因で
バンドは分裂、解散へと至っている。ちなみにGのレックスは、後にデス・メタル・バンドORPHANAGEを結成。
WITHIN TEMPTATIONのアルバムをプロデュースしたりも。


TARGET - Mission Executed ★★ (2009-12-15 21:45:00)

ACIDやCYCLONEと並ぶベルギー・スラッシュ・シーンの筆頭TARGETが、MEKONG DELTAのラルフ・ヒューベルトを
プロデューサーに迎えて制作、その彼が主宰するAAARRGH RECORDSから'87年に発表した1stアルバムが遂にリマスター再発。
一度聴いてみたいと思ってた作品なので、このCD化は嬉しいなぁ。(CD化は今回が初めてでは?)
「ベルギーのMEKONG DELTA」なんて言われた2nd『MASTER PROJECT GENESIS』に比べると、楽曲にしろ音作りにしろ
かなり荒削りだが、メロディ無視で喚き立てるVoや、突っ込み気味のDsがガンガンと走りまくるサウンドは、
欧州(というかジャーマン系)スラッシュ・メタルならではのカッコ良さに満ち溢れていて、これはこれで非常に魅力的。
寧ろ、アバンギャルドな部分もある『MASTER~』よりもこっちの方が好みだというスラッシャーも結構いるんじゃなかろうか?
ダークでミステリアスな雰囲気漂うドラマティックな⑦、RAGEのピーヴィー・ワグナーがゲスト参加してシャウトを
決めてくれる⑧といった、正統派へヴィ・メタリックな楽曲を収録する一方、慌しく動き回るGリフに、
激しくのたうつB、流麗に絡み合い劇的にハモるメロディックなツインG、そしてリフ/リズム・チェンジを
多用して畳み掛ける曲展開など、次作での大化けを予感させる楽曲もしっかりと収録(特に③は名曲)。
傑作と名高い2ndアルバムに、勝るとも劣らない内容に仕上がっていると思います。


TARGET - Mission Executed - Nuclear Waste ★★ (2009-12-16 19:09:11)

1stアルバム後半には比較的ストレートな
スラッシュ・ソングが並んでいるのだが、
ベースに導かれてスタートするこの曲は
その幕開け的存在。
「華麗」と表現したくなるツインGも印象的。


TARGET - Mission Executed - The Gathering ★★★ (2009-12-16 19:12:49)

1stアルバム中、最も正統派へヴィ・メタリックな1曲。
へなちょこシャウトが炸裂するイントロは
Voの力量不足が透けて見えて苦笑を誘うが
楽曲自体は神秘的且つドラマティックで素晴しい。


TARGET - Mission Executed - They Walk in Front ★★ (2009-12-16 19:24:46)

スラッシーな疾走感を保ちつつ、
イントロの一捻り、手数の多いGリフ、
ドラマティックなツインG、そして
慌しい曲展開・・・と、TARGETという
バンドの個性が判り易く表現された
名刺代わりの1曲。


TARGET - Mission Executed - Under Dominion (of Death) ★★ (2009-12-16 19:15:34)

RAGEのピーヴィ・ワグナーのシャウトから
スタートするスラッシュ・ナンバー。
テクニカル&プログレッシブな印象の強いバンドだけど
こうして聴くと楽曲は結構キャッチーですよね。


TARGET - Mission Executed / Master Project Genesis ★★ (2009-12-15 21:50:00)

70年代HRに通じるスケール感や楽曲構築術、プログレッシブ・ロックばりに変拍子、リフ/リズム・チェンジを駆使した
作風をもって、「スラッシュ・メタル版CAPTAIN BEYOND」(by伊藤政則)とも評されたツインGを擁する5人組が、
デビュー作に引き続いてラルフ・ヒューベルトのプロデューサーの下、AAARRGH RECORDSから'87年に発表した2ndアルバム。
TARGETの最高傑作として、既に廃盤のCDが中古盤市場で5桁のプレミア価格で取引されている本作だが、
実際、内容の方もそれに見合ったクオリティの高さを誇る。
「MEKONG DELTAの2nd『THE MUCIC OF ERICH ZANN』にインスピレーションを得て作った」とメンバーが明かす通り、
目まぐるしく展開していく複雑且つテクニカルな楽曲群からは、デビュー作以上にMEKONG DELTA臭が漂ってくるが、
と同時にこのバンドの場合、元ポップ・シンガーという出自を持つ新Voがしっかりとメロディ(かなりクセが強いが)を
歌い、ツインGが流麗に奏でる旋律は正統派HM由来のドラマ性を備え、存外キャッチー。何よりスラッシュ・メタル
ならではの畳み掛けるような疾走感が前面に押し出されているため、テクニカル・スラッシュ系にありがちな
難解さや取っ付き難さが殆ど感じられず、個人的にはMEKONG DELTAよりもずっと贔屓にしていたり。
LIVING DEATHの3rd(あ、これもラルフ絡みの作品か)辺りが好きな人にもお薦めできる逸品。この度めでたく
リマスター再発と相成ったものの、限定再発ゆえまた直ぐ廃盤になるやも知れず、未聴の方はお早めのご購入をどうぞ。


TARGET - Mission Executed / Master Project Genesis - Ultimate Unity ★★ (2009-12-20 02:27:03)

エキセントリックなメロディを歌うVo、
自己主張の強いB、起伏の激しいリズムを叩き出すDs、
個性的なGリフの刻みから、ドラマティックな
ハーモニー・プレイまで慌しくこなす2本のGが
スリリングに絡み合いながらスラッシーに疾走する
TARGET印のテクニカルな名曲。


TAROT - For the Glory of Nothing ★★★ (2020-01-09 01:10:44)

TAROTと言えばフィンランドHR/HMシーン黎明期を支えた重要バンド。昔はゼロ・コーポレーションから細々とアルバムを発表し、北欧メタル愛好家のみがひっそり愛するB級バンド…ってなイメージを勝手に抱いてましたが、それが今じゃリーダーのマルコ・ヒエタラ(Vo)は欧州でもトップクラスの人気を誇るNIGHTWISHのメンバーに迎えられ、復活後のアルバム『GRAVITY OF LIGHT』(’10年)が母国チャートにおいて№1ヒットを飛ばす程の人気者になっているというのですから、隔世の感を覚えずにはいられませんよ。
本作は'98年リリースのTAROTの5th。これを最後に(一旦)活動を停止している上、発表当時購入したかどうかも記憶があやふやな程度の思い入れしかなかった1枚なれど、改めて聴き直してみれば、これが「いや結構良い!」と評価を一気に上方修正させられた次第。
90年代後半という時代性を鑑みてか、全体的にG主導のヘヴィネスの増量が図られている点は事実ですが、硬質なリフ&リズム、神秘的に煌めくKeyと泣きのG、そして「荒くれロニー」といった趣きのマルコの歌声に冷ややかに彩られた、疾走ナンバー①、重厚な大作④、北欧民謡風味バラード⑧辺りが物語る通り、様式美HM時代のRAINBOWとBLACK SABBATHを足して2で割り、北欧メタルの調味料を振りかけたような従来のサウンドも、憂いと冷気を孕んだ哀メロの魅力も、本作ではきっちりと担保されています。
重々しい②、モダンなアレンジと劇的な曲展開を盛り込んだ③、力強く盛り上がる⑧…と、TAROTの新たな魅力が開花した意欲作だっただけに、所属レーベルのゼロ・コーポレーションの閉鎖等、発表時期が悪かったことが悔やまれる1枚であります。


TAROT - To Live Forever ★★ (2006-07-05 21:48:00)

'93年発表の3rd。丁度、北欧メタルが再び盛り上がりを見せていた日本でも国内盤がリリースされ、ファンから高い評価を得た作品。
この時期の北欧バンド群は「1作目は良かったのに次作で流行に擦り寄ってコケる」というパターンが非常に多かったのだが、TAROTの作品は
安定して高いクオリティを保持。中でも本作は特に楽曲が粒揃いで、全14曲捨て曲なし。バンドの最高傑作に推す声も多い。(俺の中で)
基本はトニー・マーティン在籍時のBLACK SABBATHを彷彿とさせる(実際、カヴァー曲⑬“CHILDREN OF THE GRAVE"を収録)、
ダークさと潤いの同居するドラマチックな様式美メタル・サウンドながら、どこかヒンヤリとした空気を伝える楽曲は
北欧のバンドならではの味。これは、氷塊のように硬質なリフと、透明感と哀感を演出するKey、
それに「憂いを帯びたロニー・J・ディオ」風のマルコ・ヒエタラのVoに依るところ大。
まぁ兎に角、アルバムのOPチューン①“DO YOU WANNA LIVE FOREVER"や、本編ラストを劇的に締めるバラード⑭“GUARADIAN ANGEL"
といった楽曲を聴いてみて欲しい。北欧メタル・ファンのみならず、メロディ重視派の方ならグッと掴まれること請け合いよ?


TAROT - To Live Forever - Do You Wanna Live Forever ★★★ (2006-07-05 21:51:58)

冷たい感触を宿した硬質なリフが疾走する、アルバムのOPチューン。
水晶のような音色で、北欧のバンドならではの透明感を演出するKeyの存在がポイントで、
特にインスト・パートにおけるクラシカル且つドラマチックなアレンジは堪らない。
マルコ・ヒエタラの熱唱も、劇的に曲を盛り上げている。


TED POLEY - Beyond the Fade ★★★ (2024-02-06 00:43:30)

本丸DANGER DANGERは開店休業状態が続き、THE DEFIANTSやTOKYO MOTOR FISTといったサイド・プロジェクトが活況を呈する最中、看板シンガーたるテッド・ポーリーがFRONTIERS RECORDSから’16年に発表した3枚目のソロ・アルバムがこちら。
同レーベルと初めて組んだ前作『SMILE』はアメリカン・メロハーの快作に仕上がっており、テッド的にもその仕事ぶりに満足がいったのか、本作では収録曲の大半をFRONTIERS RECORDS側が用意したソングライター勢に委ねています。プロデュース及びエンジニアリングはアレッサンドロ・デル・ヴェッキオ、曲作りをVEGAのマーティン兄弟らが手掛け、ゲストには歌姫イッサを招く(バラード④でデュエットを披露)等、万全の陣容でレコーディング作業が進められただけに、軽くアベレージ越えの完成度はまぁ当然といったところ。
前作で披露した、DANGER DANGER名義でリリースしても違和感なく受け入れられたであろう80年代風味満点のメロディアスHRサウンドを今回も順当に継承し、主役たるテッドも、決して抜群に上手いわけじゃないけど独特の味わいに満ち溢れた歌声で、その健在ぶりをアピールしてくれています。特に伸びやかで爽快感に溢れた⑤⑦の2連発や、ギターがよく歌う⑧、DANGER DANGERの名曲と比較しても遜色ないインパクトを放つ⑩、エモーショナルに本編の幕を引くバラード⑪等は、腕っこきの作曲陣が用意した「テッドが歌うに相応しい楽曲」と、その期待にきっちりと応えるテッドの熱唱とがガチっと噛み合った逸品に仕上がっていますよ。
テッド・ポーリーのソロ作にハズレはありませんね。


TED POLEY - Beyond the Fade - Sirens ★★★ (2024-02-08 00:20:50)

仄かに哀愁も塗された爽やかなメロディが駆け抜けていく
マーティン兄弟提供のハードポップ・チューン。
テッドのVoは多少加齢による枯れを感じなくもないですが
自身が歌うに相応しい楽曲を得て、魅力的な歌メロを
エモーショナルに歌い上げてくれています。


TED POLEY - Modern Art ★★★ (2024-02-27 00:38:23)

本家DANGER DANGERに音沙汰はなくとも、ソロ・ワークに、TRIXTERのスティーヴ・ブラウンと組んだTOKYO MOTOR FISTと、変わらず多忙なミュージシャン・ライフを送るテッド・ポーリー(Vo)が新たに立ち上げたプロジェクトMODERN ARTの1stアルバム。(’18年発表)
スウェーデンで開催されたロック・フェスに出演した際に親交を深めた同国出身の新鋭HRバンドDEGREEDの協力を得てレコーディングが行われており、「なるほど、これまでのソロ作とは趣きを変えて、こっちでは今流行りの音楽に全力で乗っかったサウンドを追求していくわけね」と、現代美術風のジャケット・アートワークを見ながら勝手に解釈していたのですが、実際に聴いてみると、Keyを生かした煌びやかなアレンジやダンサンブルなリズム・ワークは今風でありつつも、楽曲自体はテッドの甘く切ない歌声が映えるメロディアスHRが徹底されており、何のことはない「テッド4枚目のソロ・アルバム」と捉えて何ら問題のない仕上がりだったという。あるいは「テッドが歌うDEGREEDの新作アルバム」か。
曲作りに抜群のセンスを発揮するDEGREEDが、テッドが歌うに相応しい楽曲を手ずからこしらえてくれているだけに、哀愁とキャッチネスを併せ持つメロディに彩られた本編の充実度は当然文句なしの出来栄え。中でもポップに弾む曲調に胸キュンを誘う哀メロが乗せられた③や、イントロからして名曲の風格十分な(そしてその期待は裏切られない)④等は、このコラボの理想形が示された名曲じゃないでしょうか。
2作、3作とこの顔合わせが続いてくれることを願わずにはいられない力作です。


TED POLEY - Modern Art - Running For The Light ★★★ (2024-03-05 00:39:24)

劇的なイントロで掴みはOK。
メロディの切なさを増幅するテッドのVoと、
DEGREEDメンバーのフックを効かせた楽曲構築術が
ガッチリと噛み合った名曲です。