日本人離れした実力を誇る5人組として、舶来志向のメタル・ファンからも高い評価を得る、東京/神奈川をベースに活動を続けるメロディック・パワー・メタル・バンドAZRAELが、'97年に2000枚限定でリリースした自主制作の1stアルバム。 中古屋にてバカ高いプレミア価格が付けられていたので、はて、それほど優れた内容だったっけ?と、 久し振りに棚から引っ張り出して聴き直してみたのだけれど・・・。うん、良く出来ています。BURRN!!誌で高得点を獲得した3rd『SUNRISE IN THE DREAMLAND』に比べると、貧弱なサウンド・プロダクションといい、ハイトーンで歌うと声が引っ繰り返りそうになる、線の細いVoの不安定さといい、全体的にまだまだ青臭い印象は否めないものの、曲作りの上手さに関してはこの頃から既に光るモノを感じさせてくれる。 特に、Keyのアレンジが秀逸な哀愁のHRチューン④や、ポップで爽やかなノリの⑪を筆頭に、適度な軽快さを持ち合わせた楽曲で本編のコテコテ度を緩和して、腹にもたれる事なく、全13曲という長丁場を一気に聴かせる手腕はなかなかのもの。(とは言え、もっと曲数は絞った方が良かったと思うが) 勿論、ドラマティックな序曲を経て走り出す②、アルバム・タイトル・トラックの⑤、クライマックスを締める⑫等、要所に配置された、お約束のスピード・チューンのカッコ良さも素晴しい。 磨かれる前の原石的な魅力を感じさせる1枚、か?
マーク・エイドリアン(G)とロビー・ムーア(Key)、それにジェフ・パリスと活動を共にしていたというロジャー・フィーツ(B)が中心となり、ロサンゼルスで結成。 ラインナップを整え、デモテープの制作、また地元で開催されたバンド・コンテストで1位に輝く等の実績を上げた結果、アルバム・レコーディングのチャンスを掴み、'95年、セルフ・プロデュースでデビュー作『AS IT SHOULD BE』を発表。同作はジャケット・デザインを変更して、日本でもゼロ・コーポレーションからリリースされた。 ちなみに『AS IT~』は日本でしかCD化されなかったため暫くレア・アイテム化していたものの、'05年にめでたくリイシュー。しかもお色直しされた再発盤のジャケットが美麗で良いんだな、これが。
北欧メタル・シーン指折りのメロディ・メイカー、ハル・マラベル(Key)により結成されたBAD HABBIT、’89年発表の1stフル・アルバム。リリースはメジャーのVIRGIN RECORDSからで(ちょうど同時期にALIENをヒットさせ、同系統のバンドを物色していたレーベル側の目に留まったのだとか)、日本盤はそれから少々遅れ、’95年に2nd『REVOLUSION』発売に合わせてゼロ・コーポレーションから再発されています。 メンバー・ショットを用いたアートワークはお世辞にもイケてるとは言い難いものの、透明感と哀感を併せ持ったポップなメロディとキャッチーなコーラス・ワーク、そしてキラキラのKeyとに彩られた北欧ハードポップ然とした瑞々しさを湛えるサウンドは、捨て曲なしの高品質っぷりを提示。何せBOSTONの名曲“MORE THAN A FEELING”のカヴァー⑩が全く浮いて聴こえないのですから大したものですよ。BAD HABBITの最高傑作と言えばまずは3rd『ADULT ORIENTATION』(’98年)の名前が真っ先に思い浮かぶ身なれど、メロウでロマンティックなAOR/産業ロック方向にフルスイングされていたあちらに対し、キャッチーに煌めくOPナンバー①、結婚式で流せそうな神聖さ漂わすバラード⑤、アルバムのハイライトを飾る感動的なハードポップ⑥、からの爽やかに駆け抜けていくロック・チューン⑦等々、新人バンドらしい溌剌とした躍動感とロックのエッジが備わった本作にも抗い難い魅力を感じる次第。 長らくオフィシャルなCDは日本盤しか存在せずプレミア化していましたが、近年リマスター再発されましたので、この機会に一人でも多くの人の耳に触れることを念願します。
‘84年初頭にリズム隊が音頭を取って結成。NEW RENAISSANCE RECORDSのオムニバス盤『SPEED METAL HELL』(’87年)に楽曲提供する等して名を上げた後、U.S. METAL RECORDSと契約を交わし、'88年にセルフ・プロデュースで1stフル・アルバム『BATTLE BRATT』を発表してデビューを果たす。ちなみに同作のCDはメルダックがリリースした日本盤しか存在していなかった為、中古盤がかなりの高額で取引されていたという。(現在は正式に再発が叶ったため安価での入手が可能) その後まもなくバンドは音信不通となるも、'05年に結成20周年を記念して復活を遂げ、過去音源を取りまとめたアンソロジー盤や、フル・アルバムも発表している模様。
ニューヨーク出身の4人組が'89年にU.S. METAL RECORDSから発表した1stアルバム(エンジニアとしてVIRGIN STEELEのデヴィッド・ディフェイの名前がクレジット)。ちなみに国内盤はメルダックから「MELDAC METAL MOVEMENT SIRIES」と銘打って、TITAN FORCE、PAGAN、JACK STARR’S BURNING STARR、MERZYという渋い面子の作品と一緒に'91年にリリースされています。 それにしてもジャケットが酷い。漫画家志望の女子中学生に頼み込んで描いて貰ったようなイラストは、本作を愛する身としてもちょっと擁護し難いレベルで、いっそメンバーに、お前らこのイラストのどこにイケる!という勝算を感じたのか、一体これでどんな人達にアピールしようと思ったのか問い詰めたくなるという。しかしジャケのチープさに反して、内容は全然悪くない。どころか非常に良いのだから物事は見た目じゃ分かりませんよ。 マッシヴなリフ&リズムに乗って、線は細いが魅力的な歌メロを拾うハイトーンVoや、テクニカルなGがパワフルに押し出して来る硬派なサウンドは、哀愁を帯びているがベタつかず、ドラマティックだがクサくない。雄々しいリズムに先導されてアルバムの開巻を勇壮に宣言する①、VICIOUS RUMORSを彷彿とさせる②、愁いを帯びたメロディが華麗に舞う⑥、拳を振り上げながら合唱したくなる重厚な⑨等、例えばCITIES辺りに通じる「これぞNY産」というコンクリート・メタルっぷりには思わず血が騒ぎます。またこれらの楽曲を華麗に彩るボーカル・ハーモニーの美しさも、バンドの強力な武器として機能しているという。 ジャケットに躊躇せず、是非とも手に取って頂きたいB級メタルの傑作。
NWOBHM期に活躍。後にSATAN~PARIAHに参加するイアン・マコーマック(Ds)が在籍していた英国サンダーランド出身のBATTLEAXEが復活。ジョン・サイクスの後釜としてTYGERS OF PAN TANGに加わったことで知られるギタリスト、フレッド・パーサーをプロデューサーに迎え、'14年に発表した通算3枚目となるアルバムがこちら。 再結成の話を耳にしても「需要あったんだ?(笑)」と半笑いを浮かべたままの我が身でしたが、大仰な導入を経てOPナンバー①のGリフがスピーディに走り始めた途端、そのカッコ良さに、舐めくさった態度に正拳突きをかまされたような衝撃を受けましたよ。 「何も足さない」「何も引かない」サントリーウィスキーが如き超超オーソドックスなHMサウンド(バイカーズ・ロック時代のSAXONとかに近しい)は、デビュー当時からまんじりとも変化してませんが、元来、尖がった楽曲や超絶技巧が売りのバンドではなかったがゆえに経年劣化とも無縁。…どころか寧ろ、重厚な音作りから格段に逞しさを増したVoの歌唱力、ツインGの煽情力に至るまで、30年の時を重ねた本作の方が遥かにパワーUPを遂げているのだから度肝を抜かれます。JUDAS PRIESTの“FREEWHEEL BURNING”を思わす(?)⑥、デイヴ・キングのパワフルな歌唱が炸裂する⑦、英国然とした湿ったメロディにグッとくる⑪等、聴いているだけで自然と拳を振り上げ、頭を振りたくなる疾走感とノリの良さを伴う楽曲がズラリ揃った本編は捨て曲なしの充実っぷり。中でも勇ましいVo、シャープなリフ、劇的なツインGが切れ味鋭く疾駆する③は万歳三唱モノの名曲です。 油断している輩のドタマに「戦斧」ぶち込まんとする力作。BATTLEAXEの最高傑作ではないでしょうか?
80年代はオジー・オズボーンのバンドで活躍し、名曲“SHOT IN THE DARK”の共作者としてもその名を刻むフィル・スーサン。この人に関してはベーシストとしての印象はまるで残っておらず、それよりも後年、雑誌インタビューでオジーから「ホームラン級のバカ」と評されていたことばかりが思い出されてしまうのですが、彼が結成したBEGGERS & THIVESが、'90年に米メジャーのATLANTIC RECORDSから発表したこのデビュー作は聴き応え十分の内容。オジーの発言で我が身に刷り込まれた「フィル・スーサン=激烈バカ」というマイナス・イメージが上書きされるインパクトを持った力作に仕上がっていますよ。まぁ作曲クレジット見るとこの人全然曲作りに関与してないんですけどね…。 90年代の作品ながら、当時流行りのブルーズ色は然程強くなく(だからセールス的に失敗したのか?とか思ったりも)、基本となるのは溌剌とエネルギッシュな80年代型アメリカンHRサウンド。さりとて能天気になり過ぎることもなく、スケールの大きなOPナンバー①に始まり、緊迫感を湛えて駆け抜けるハード・ナンバー②、爽やかな哀愁薫る⑤、デズモンド・チャイルドのペンによるノリ良くキャッチーな⑧、ラストを雄大に締め括るバンドのテーマ曲でもある⑪…と、本編にはメロディにもアレンジにもきっちりとフックの効いた逸品がズラリ。バンド・メンバーはフィル以外ほぼほぼ無名の面子ばかりながら、熱唱型のVoを筆頭に、安定感溢れるパフォーマンスを繰り出してサウンドの土台を手堅く支えてくれています。 隠れた佳作として、ふと思い出して聴き直したくなる1枚。フィル・スーザンが抜けた後もバンドは存続し、アルバム数枚をリリースしているようなので、機会があればそちらも聴いてみたいなぁ。