スペーシーな雰囲気漂うイントロを聴いていると RAINBOWの名曲“EYE OF THE WORLD"を思い出したりも。 勿論、発表はこちらの楽曲の方が先なわけだが。 全体的にロックンロール風味が強い8thアルバムの中にあって 数少ない初期テイストの感じられる楽曲の一つ。 鮮やかなシャウトを繰り出すデヴィッド・バイロンの 歌いっぷりが素晴しいったら。
『METAL FOR MUTHAS』の売れ行きに気を良くしたEMI RECORDSが、逞しき商魂を発揮して、前作リリースから僅かなインターバルで発売まで漕ぎ着けたNWOBHMコンピレーション・アルバム第二弾。(但し日本未発売) 「鉄は熱いうちに打て」との戦略自体は間違っていなかったと思うものの、バンド集めに掛けられる時間が十分でなかったせいか、参加面子が第一弾に比べるとえらく地味。何せ前作でIRON MAIDENが果たしたアルバムのセンター役(OPナンバー担当、2曲提供等)を、今回担っているのがTRESPASSですからね…。 そんなわけでインパクト不足は如何ともし難いものがある本作なれど、しかし「山椒は小粒でもピリリと辛い」との格言通り、面子が地味だからってアルバム自体が退屈かというと、さに非ず。DARK STARの名曲にしてNWOBHMのアンセム“LADY OF MARS”や、TRESPASSの代表曲“ONE OF THESE DAYS”が1枚のアルバムで聴けてしまうお得感は魅力的ですし、あとKROKUS参加前のマーク・ストレイスが歌っているEASY MONEY、ブルース・ディッキンソンやビリー・リースギャングも関わっていたことで知られるXERO、WILDFIRE(IRON MAIDEN初代Vo、ポール・マリオ・デイが在籍したバンド)の前身RED ALERTといった、個人的に好奇心をそそられていたバンドの音源も非常に興味深く聴くことが出来ましたよ。WHITE SPIRIT、CHEVYといった中堅どころも、実に手堅くアルバムのクオリティを支えてくれていて頼もしい限り。 解説でゴッドが述べている通り、第一弾とセットで押さえておきたい1枚ではないかと。
必殺の名曲“THIS IS WAR"“WATING FOR THE NIGHT"を収録し、VANDENBERGの日本での人気を決定付けた '83年発表の傑作2ndアルバム。(邦題は『誘惑の炎』) 泣きメロ満載だが湿っぽくならない、適度なポップさを備えた楽曲を、綿密に構築されたエイドリアン・ヴァンデンバーグの Gプレイが華麗に彩るHRサウンドは、デビュー作の作風を順当に継承しているものの、本作ではブルーズ風味が薄れ、 よりポップでキャッチーなメロディが前面に押し出された内容に仕上がっている。 収録曲のクオリティにややバラつきが見られる(と言っても、並みのバンドなんぞ寄せ付けないレベルの高さなんだけど) のが難なれど、キャッチーなポップ・メタル・ソング①、哀メロが胸に染み渡る美しいバラード④、 そしてVANDENBERG史のみならず、HR/HM史に残る名曲といっても過言ではない、劇的極まりない⑤⑨といった 極上の楽曲の前には、些細な不満など欠片も残さずに吹き飛ばされてしまうというもの。 HR/HMファンを名乗るなら聴かずには済まされない名盤ゆえ、VANDENBERG未体験者の入門編としても最適な1枚。
オランダの至宝、エイドリアン・ヴァンデンバーグ率いる4人組HMバンドVANDENBERGが'82年に発表した1stアルバム。 VANDENBERGの最高傑作と言えば、やはり名曲中の名曲“THIS IS WAR"“WAITING FOR THE NIGHT"を収録した 2nd『HEADING FOR A STORM』で決まりだろうが、個人的に彼らの作品で一番好きなのは、このデビュー作だったりする。 上記2曲のような強力なキメ曲こそないものの、収録曲は非常に粒が揃っており、何より、ドラマティックな「泣き」を 満載したエイドリアンの華やかなGプレイに関しては、2ndアルバム以上の充実っぷりを誇っていると言っても良いのでは? アルバム前半(A面)にメロディをじっくり聴かせるタイプの楽曲が、後半(B面)にはハード・ロッキンな楽曲が並ぶ、 メリハリの効いた構成も素晴しい本作。美しいアコギが閃く③、スマッシュ・ヒットを飛ばした名バラード④を山場とした 前半の完成度も見事だが、やはり本編のクライマックスは、フックの効いたメロディがエネルギッシュに疾走する⑤、 劇的なイントロのみで一発K.O.される⑥、泣きを伴ったバート・ヒーリングのVoが映えるシャッフル・チューン⑦、 構築美に溢れたエイドリアンのGソロに悶絶させられる⑧、ヘヴィ・メタリックな疾走チューン⑨といった ハイクオリティな楽曲が連打される、アルバム後半にこそ有るんじゃないかな、と。 泣きメロ愛好家なら、聴かずには死ねない名盤の1つ。2ndアルバムと併せてどうぞ。
最新作発表が5年ぶりとか、作品のリリース間隔も既に大物の風格十分な(?)VEKTORの3rdアルバム。 しかも今回は「宇宙」がテーマの壮大なSFコンセプト作とのこと。宇宙と言われても「超広い」「超寒い」「超無重力」程度の知識しか持ち合わせない(バカ)身には、正直ついていけるかどうか不安だったのですが、喉から血を吐く勢いのシャウト、神経症気味に刻まれるGリフとブラストするリズム、脳細胞を引っ掻き回すようなメロディ、プログレばりのアレンジ・センスとが、スペーシーなスケール感を伴って縦横無尽に駆け巡るOPナンバー①だけで、「ああ、良かった。いつものVEKTORだ」と不安は完全に雲散霧消致しました。 曲作りに方程式を用いてそうな理数系楽曲構築術の綿密さ、豪快で前のめりな体育会系突進力に加えて、今回は抒情メロディも大胆に投入することで、これまで以上に収録各曲のドラマ性とダイナミズム演出に注力。特に振り切ったテンションの高さで畳み掛ける頭3曲の迫力は、それだけでアルバムの世界に一気に引き込まれてしまいます。そして、どこかANNIHILATORの名曲“SOUND GOOD TO ME”に通じるメロウネスが心地良い⑨を経て、13分以上に及ぶ長尺を、持てる全てのスキル、更には女性Voによるスキャットまでブッ込んでクライマックスへと雪崩れ込む⑩のカオスっぷりは、まさに本編のハイライト。 VOIVODやDESTRUCTION(③⑥辺りはSLAYER風味)のようでありながら、その実、いずれのバンドとも明確に異なっているという、VEKTORが志向する「Si-Fiスラッシュ・メタル」の現時点での最高到達地点を垣間見せてくれる、Si-Fi or DIEな1枚。