『METAL FOR MUTHAS』の売れ行きに気を良くしたEMI RECORDSが、逞しき商魂を発揮して、前作リリースから僅かなインターバルで発売まで漕ぎ着けたNWOBHMコンピレーション・アルバム第二弾。(但し日本未発売) 「鉄は熱いうちに打て」との戦略自体は間違っていなかったと思うものの、バンド集めに掛けられる時間が十分でなかったせいか、参加面子が第一弾に比べるとえらく地味。何せ前作でIRON MAIDENが果たしたアルバムのセンター役(OPナンバー担当、2曲提供等)を、今回担っているのがTRESPASSですからね…。 そんなわけでインパクト不足は如何ともし難いものがある本作なれど、しかし「山椒は小粒でもピリリと辛い」との格言通り、面子が地味だからってアルバム自体が退屈かというと、さに非ず。DARK STARの名曲にしてNWOBHMのアンセム“LADY OF MARS”や、TRESPASSの代表曲“ONE OF THESE DAYS”が1枚のアルバムで聴けてしまうお得感は魅力的ですし、あとKROKUS参加前のマーク・ストレイスが歌っているEASY MONEY、ブルース・ディッキンソンやビリー・リースギャングも関わっていたことで知られるXERO、WILDFIRE(IRON MAIDEN初代Vo、ポール・マリオ・デイが在籍したバンド)の前身RED ALERTといった、個人的に好奇心をそそられていたバンドの音源も非常に興味深く聴くことが出来ましたよ。WHITE SPIRIT、CHEVYといった中堅どころも、実に手堅くアルバムのクオリティを支えてくれていて頼もしい限り。 解説でゴッドが述べている通り、第一弾とセットで押さえておきたい1枚ではないかと。
必殺の名曲“THIS IS WAR"“WATING FOR THE NIGHT"を収録し、VANDENBERGの日本での人気を決定付けた '83年発表の傑作2ndアルバム。(邦題は『誘惑の炎』) 泣きメロ満載だが湿っぽくならない、適度なポップさを備えた楽曲を、綿密に構築されたエイドリアン・ヴァンデンバーグの Gプレイが華麗に彩るHRサウンドは、デビュー作の作風を順当に継承しているものの、本作ではブルーズ風味が薄れ、 よりポップでキャッチーなメロディが前面に押し出された内容に仕上がっている。 収録曲のクオリティにややバラつきが見られる(と言っても、並みのバンドなんぞ寄せ付けないレベルの高さなんだけど) のが難なれど、キャッチーなポップ・メタル・ソング①、哀メロが胸に染み渡る美しいバラード④、 そしてVANDENBERG史のみならず、HR/HM史に残る名曲といっても過言ではない、劇的極まりない⑤⑨といった 極上の楽曲の前には、些細な不満など欠片も残さずに吹き飛ばされてしまうというもの。 HR/HMファンを名乗るなら聴かずには済まされない名盤ゆえ、VANDENBERG未体験者の入門編としても最適な1枚。
オランダの至宝、エイドリアン・ヴァンデンバーグ率いる4人組HMバンドVANDENBERGが'82年に発表した1stアルバム。 VANDENBERGの最高傑作と言えば、やはり名曲中の名曲“THIS IS WAR"“WAITING FOR THE NIGHT"を収録した 2nd『HEADING FOR A STORM』で決まりだろうが、個人的に彼らの作品で一番好きなのは、このデビュー作だったりする。 上記2曲のような強力なキメ曲こそないものの、収録曲は非常に粒が揃っており、何より、ドラマティックな「泣き」を 満載したエイドリアンの華やかなGプレイに関しては、2ndアルバム以上の充実っぷりを誇っていると言っても良いのでは? アルバム前半(A面)にメロディをじっくり聴かせるタイプの楽曲が、後半(B面)にはハード・ロッキンな楽曲が並ぶ、 メリハリの効いた構成も素晴しい本作。美しいアコギが閃く③、スマッシュ・ヒットを飛ばした名バラード④を山場とした 前半の完成度も見事だが、やはり本編のクライマックスは、フックの効いたメロディがエネルギッシュに疾走する⑤、 劇的なイントロのみで一発K.O.される⑥、泣きを伴ったバート・ヒーリングのVoが映えるシャッフル・チューン⑦、 構築美に溢れたエイドリアンのGソロに悶絶させられる⑧、ヘヴィ・メタリックな疾走チューン⑨といった ハイクオリティな楽曲が連打される、アルバム後半にこそ有るんじゃないかな、と。 泣きメロ愛好家なら、聴かずには死ねない名盤の1つ。2ndアルバムと併せてどうぞ。
最新作発表が5年ぶりとか、作品のリリース間隔も既に大物の風格十分な(?)VEKTORの3rdアルバム。 しかも今回は「宇宙」がテーマの壮大なSFコンセプト作とのこと。宇宙と言われても「超広い」「超寒い」「超無重力」程度の知識しか持ち合わせない(バカ)身には、正直ついていけるかどうか不安だったのですが、喉から血を吐く勢いのシャウト、神経症気味に刻まれるGリフとブラストするリズム、脳細胞を引っ掻き回すようなメロディ、プログレばりのアレンジ・センスとが、スペーシーなスケール感を伴って縦横無尽に駆け巡るOPナンバー①だけで、「ああ、良かった。いつものVEKTORだ」と不安は完全に雲散霧消致しました。 曲作りに方程式を用いてそうな理数系楽曲構築術の綿密さ、豪快で前のめりな体育会系突進力に加えて、今回は抒情メロディも大胆に投入することで、これまで以上に収録各曲のドラマ性とダイナミズム演出に注力。特に振り切ったテンションの高さで畳み掛ける頭3曲の迫力は、それだけでアルバムの世界に一気に引き込まれてしまいます。そして、どこかANNIHILATORの名曲“SOUND GOOD TO ME”に通じるメロウネスが心地良い⑨を経て、13分以上に及ぶ長尺を、持てる全てのスキル、更には女性Voによるスキャットまでブッ込んでクライマックスへと雪崩れ込む⑩のカオスっぷりは、まさに本編のハイライト。 VOIVODやDESTRUCTION(③⑥辺りはSLAYER風味)のようでありながら、その実、いずれのバンドとも明確に異なっているという、VEKTORが志向する「Si-Fiスラッシュ・メタル」の現時点での最高到達地点を垣間見せてくれる、Si-Fi or DIEな1枚。
キャリアの低迷期として、今や殆んど顧みられる機会のないマンタス(G)リーダー時代、元ATOMKRAFTの巨漢フロントマン、トニー・ドーランことデモリションマン(Vo、B)を擁するラインナップのVENOMが'93年にひっそりと発表した8thアルバム。 全世界的に廃盤状態で入手困難な割に、たまに中古盤屋に並んでも別段プレミア価格が付けられるわけでもない(千円ぐらいで買えちゃう)という、不憫なほど扱いの悪い作品だが、内容の方はこれが非常にハイクオリティ。 プログレ・マインド漂うミステリアスでエキゾチックな①、様式美ヘヴィ・メタリックなインスト曲⑩といった異色曲が本編の最初と最後に配置されている事からも察しの付く通り、もはや初期の頃の面影は微塵もなく、荒々しさよりも整合性や構築美が前面に押し出された作風は、スラッシュ・メタルというよりも正統派ヘヴィ/パワー・メタル。 特に、如何にも英国的な翳りを帯びたメロディが疾走する②③、構築美を湛えたツインGをフィーチュアした本編屈指の名曲④、ダイナミックな起伏に富んだ⑤、アグレッシブに挑みかかって来る⑥⑨といった、スラッシーな攻撃性と、ヨーロピアンHMならではのドラマ性が組み合わされた楽曲の数々は聴き応え十分。 ダイハードなファンからは「何もVENOMがこれをやらんでも」という溜息の1つも聞こえて来そうな感じだが、彼らの好きなアルバムと言えば「『CALM BEFORE THE STORM』『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』がベスト3」という我が身としては、本作も初期作品以上に愛して止まない次第。 この頃のVENOMは絶対過小評価されてると思うんだがなぁ。
マーク・フリーの傑作『LONG WAY FROM LOVE』に“SOMEDAY YOU'LL COME RUNNING”等の秀曲を提供したことで、HR/HMファンにも一躍その名を知らしめた敏腕ソング・ライター、ロビン・ランダルが、シンガーのダイアナ・デウィントと共に結成したポップ・ロック・デュオの日本デビュー作となった'98年発表の2ndアルバム。 憂いを振り撒くダイアナの麗しい歌声と、ロビンのクリエイトする哀愁のメロディが、Keyの煌びやかな味付けのもとキャッチーに躍動する楽曲は、収録全曲が“SOMEDAY~”と同系統のハードポップ路線。 いくら1曲1曲の完成度が高くても流石にこの音楽性で14曲収録はダレるよとか、打ち込みを多用した角のない音作りがHR/HMリスナーには刺激不足とか、色々気になる点もあるっちゃ有りますが、それを差っ引いて尚、マーク・フリーの『LONG~』に収録されていても違和感のない①②や、実際に同作でカヴァーされていた⑤、そして絶品のバラード③といった強力なフックを有する名曲はぐぐっと胸に迫って来るものあります。 前作『GRAND TORINE』は国内盤が出なかった(よね?)こともあって買い逃してしまったのですが、コレ聴いたら「あ~、やはり買っとくべきだった・・・」と、あとで後悔に苛まれましたよ。
ジェイムズ・リヴェラに代わる新たなフロントマンに、無名の新人ブライアン・アレンを起用して再スタートを切ったVICIOUS RUMORSが、数年ぶりに発表した記念すべき10枚目のスタジオ・アルバム。 いやー、凄い。前作『WARBALL』も、バンドの長い迷走にケリをつけ「VR IS BACK!」を高らかに宣言した力作だったが、本作はそれすらも軽く凌駕する出来栄え。 故カール・アルバートに比肩するポテンシャルを発揮しつつ、そのカールよりも攻撃的な歌唱を轟かせる新Voの加入に伴い、『WARBALL』の弱点だった歌メロのフック不足が解消。また80年代ばりの密度で絡み合うドラマテックなツインGに、マッチョなBとドスの効いたDsからなる強靭なリズム・セクションに支えられ、パワーとメロディが絶妙な融合をみた楽曲の数々は、4th『WELCOME TO THE BALL』以来の充実っぷりを誇っている・・・と言っても間違いではないような? 中でも、初期作を彷彿とさせる光沢を帯びた音色のGリフが鋭角的に刻まれる、重量感たっぷりのOPナンバー①や、勇猛なアグレッションと豊かなメロディがスピーディに併走する②⑦、筋骨隆々なパワー・チューン④、それにジェフ・ソープが「Lead Vo」のクレジットに相応しい歌声を披露してくれる⑥といった楽曲は、理想的なVR節が堪能できる名曲揃い。 ファンなので勿論彼らにはアルバムには期待していたが、その期待の遥か上を行く完成度を提示してくれた1枚。畏れ入りました。
3rdアルバムのOPでガツンとカマされる、雄々しいサビメロと、 ドスの効いたコーラスの対比が最高な超名曲。 3rd収録バージョンも勿論良いが、個人的にイチオシなのは 『PLUG IN AND HANG ON』収録のライブ・バージョン。 ドラマチックな“MARCH OR DIE"のエンディングを ググ~ッと引っ張ってから、本曲のイントロ・リフが ドカンと炸裂する場面は、失禁モノのカッコ良さを誇る。必聴。
現在は敏腕プロデューサーとして名を馳せるトミー・ニュートンを中心に結成されたドイツの5人組が、家庭の事情により脱退したチャーリー・ハーンの後任に、オーディションの末フェルナンド・ガルシア(Vo)を迎え入れて’88年に発表した4thアルバム(邦題は『ネヴァー・サティスファイド』)。ちなみにそのオーディションには、元TYGERS OF PAN TANGのジョナサン・ディヴァリル、THUNDERHEADのテッド・ブレットらが参加していたことはよく知られた話(特にテッドは加入寸前まで行ったらしい) 本作は、エネルギッシュに歌うVoによってもたらされるアリーナ・ロック的スケール感や、合唱を誘う開放的コーラス・ワークに加え、ツインGが奏でる劇的にして湿ったメロディという、アメリカン・ロックと欧州HMの特色を併せ持ったVICTORY流HMサウンドの完成形が提示された名盤です。嘗てはそうした折衷スタイルが「美味しいトコ取り」というよりも「どっちつかず」「中途半端」に感じられ、聴くのを敬遠してしまっていたのですが、愁いを帯びつつキャッチーなVICTORY屈指の名曲⑥を始めとする優れた楽曲の数々を前にすれば、つまらない先入観に囚われていた己を恥じいるばかり。 何しろ、グルーヴィなアルバム表題曲②や、雄大なバラード③といったシングルが、アメリカのラジオ及びMTVで好リアクションを獲得し、アルバム自体も本国チャートで最高19位を記録。最終的には全世界で25万枚以上を売り上げる等、どこに出しても恥ずかしくない立派な成績を残しているのですから、その内容の充実っぷりたるや推して知るべし。 次作『TEMPLE OF GOLD』と併せて、VICTORY入門盤にお薦めする1枚です。
METAL MASSACREシリーズへの楽曲提供が縁で、METAL BLADEからデビューを飾ったLA出身の4人組、VIKINGが'88年に発表した1stアルバムで、LAと聞いて思い浮かべる、青い空、燦々と降り注ぐ太陽、モダンな都会に美男美女・・・なんてお洒落キーワードとはビタ一文無縁の、暗くて湿気ってて貧乏臭い、だが最高にバイオレントで血沸き肉踊るスラッシュ・メタル・サウンドが堪能できる逸品。 アンサンブルがバラける寸前まで前傾姿勢を取り、ハイテンションに畳み掛けるVoと、ガリガリと高速で刻み込まれるGリフ、猪突猛進を繰り返すリズム、それにヒステリックなGソロとが土砂崩れ式に押し寄せる作風は、初期SLAYERやDARK ANGELを彷彿。(彼らをもっとハードコア化した感じか) また直球勝負のバンド名に相応しく、好戦的且つ殺伐とした空気が全編に渡って充満しているのも本作の特徴だが、北欧を中心に盛り上がりを見せる昨今のヴァイキング・メタルに比べると、こっちのヴァイキング描写は物凄く浅い(笑)。闘争本能だだ漏れで暴れ回る野蛮人っぷりだが、それだけに殺気全開で突っ走る楽曲の数々は一種異様な迫力を発散。猛々しくも重厚に攻めて来る⑤や、ほんのりドラマティックなイントロがくっ付けられた⑧、そしてクールなGリフが炸裂する本編屈指の名曲(アルバム表題曲でもある)⑨のカッコ良さには、思わず血管がブチ切れそうになるってもんです。 ラジカセ録音レベルの不明瞭極まりない音質や走り気味の演奏等、ぶっちゃけマニア向け作品なのは否定のしようもないが、「やってやるぜ!」的初期衝動を発露に圧倒されてるうちに、あれよあれよと聴き通せる1枚。個人的には名盤です。 とは言え、もっとカッチリとした仕上がりのスラッシュ・メタルがお好みという方には、次作『MAN OF STRAW』がお薦めだが。