カール・アルバートにも匹敵する実力派シンガー、ジェリー・デレオンを獲得して復活を遂げたVILLAINが、'95年、 そのカールの死去とほぼ同時期に発表した再結成アルバム。(内パケに載せられた、在りし日のカールの姿を捉えた写真が泣かせます) '86年に自主制作されたEP『ONLY TIME WILL TELL』が、1st~2ndの頃のVICIOUS RUMORSを思わせる、劇的なパワー・メタルの 名盤だったのに対し、今回は、4th『WELCOME TO THE BALL』以降のVICIOUS RUMORSを思わせるアメリカン・パワー・メタル路線。 当時、アメリカで猛威を振るっていたモダン・へヴィネス症候群に目もくれない硬派な姿勢は非常に好ましいものの、 復活作と言う事でやや力み過ぎたのか、メロディにフックが不足気味で(これは『WELCOME~』以降のVICIOUS RUMORSにも 当てはまる話なんだが)、また、明るいロックンロール・タイプの楽曲を収録したり、アリス・クーパーのカヴァーを 演ってみたりと、音楽性も拡散の方向へと進んでいるため、一聴してのインパクトはデビューEPに比べると少々弱い。 これぞパワー・メタル!な③、メランコリックな④、ヘヴィ・バラード⑩等、ジェリー・デレオンの卓越した 歌唱能力の活かされた名曲・佳曲もしっかりと収録されている辺りは流石なのだけど・・・。 聴き終えた後の満足感は決して小さくはないのだが、個人的にデビューEPへの思い入れが強すぎるため、 どうしても「このVoで『ONLY TIME WILL TELL』路線の音楽を演ってくれたら・・・と思ってしまうわけで。
ブラジルのVIPERが、'93年に川崎クラブチッタで行った初来日公演の模様を捉えた実況録音盤。 メロディック・パワー・メタルの名盤と評判の『THEATER OF FATE』(’89年)で一躍注目を集めるも、間もなくアンドレ・マトスが脱退。その後発表された3rd『EVOLUTION』(’92年)における大胆な音楽性の刷新がファンの間で賛否両論(つか圧倒的に「否」の意見が優勢だった)を巻き起こす中敢行された来日公演ということで、タイミング的には最悪もいいところ。動員もあまり良くなかったと記憶しておりますが、にも拘らずここに収められたライブが熱狂的な盛り上がりを聴かせてくれるのは、当日会場に集結したのが(批評に左右されない)筋金入りのVIPER MANIACSだったこと。そして、メタルというよりはロックンロール/パンキッシュな疾走感に貫かれたサウンド(QUEENの“WE WILL ROCK YOU”の倍速カヴァーもパンク・バンドが演りそうなアイデアですよね)が、スタジオ盤よりもライブで聴く方が遥かにカッコ良く響いたことがその要因でしょうか。 ハッキリ言ってシンガーの歌唱にしろ、楽器陣の演奏にしろ、初来日の喜びと緊張がない交ぜになって先走っているようなパフォーマンスは相当に危なっかしいのですが、このサウンドには不思議とそうした《気合一発!轟音で押しまくる、若さ溢れるライブ》(帯より)なノリがマッチしていて、文句を付ける気が起きません。⑩におけるバンドと会場が一体となった盛り上がりっぷりなんて何度聴いてもアガるものがありますよ。 「胸が熱くなる」と言うよりは、「気分がほっこりする」タイプのライブ盤なれど、大好きな作品です。VIPER再評価の切っ掛けの一つにどうぞ。
NWOBHM華やかなりし'81年、チューダー(Vo)とマット(G)のシェルトン兄弟がイギリス・オックスフォードにおいて結成。 '85年にOTHER RECORDSから発表された7インチEP『WE STAND TO FIGHT』は世界中のマニアを熱狂させたが、インターネット登場以前、そうした評判はメンバーの耳までは届かず、また'87年制作の3曲入りデモ『FOOL'S GOLD』をEPとしてリリースする話もレーベル倒産で立ち消えになる不運、そして何よりNWOBHM自体が終焉を迎えていた時期の悪さが重なって、バンドはアルバム・デビューを果たすことなく解散してしまった。 NWOBHM熱の再燃に伴って、昨今、欧州方面で注目が集まっているバンドですが、チューダー・シェルドンがミュージシャン業から足を洗ってることもあって再結成は難しい様子。 弟のマットは、THE SHOCK(90年代には日本デビューも果たしている)をリユニオンして活動中。
80年代半ば、《THE BEST UNSIGNED BAND FROM NWOBHM》と噂されたオックスフォード出身の5人組が、'85年に発表した7インチEP『WE STAND TO FIGHT』と、'87年に制作した3曲入りデモテープ『FOOL'S GOLD』という2つの音源を合体収録するアンソロジー盤。 「幻の~」とか「伝説の~」なんて冠言葉がつく作品は、入手困難期間中に消費期限切れを起こしてる場合も少なくないのですが、コレは間違いなくその例外作品の一つ。一応リマスターされているとは言え、音質の悪さはある程度覚悟せねばなりませんが、しかし本作はそれを押しても楽曲が良い! 疾走するリズムの上で、劇的且つシャープに刻まれるGリフと、青い炎が揺らめくような英国声による熱唱、そして思わず泣きながら握り拳突き上げたくなるフレーズを次々に奏でるツイン・リードGが伸びやかに舞う収録曲は、これぞブリティッシュ!これぞメタル!と万歳三唱モノな名曲①③を頂点に、全5曲、いずれもNWOBHMが残した至高の遺産というべき逸品揃い。 MARSHALL LAWのデビュー作にも匹敵するインパクトに「今までこれほどの名曲を知らずにいたのか・・・」と慄然とさせられると共に、つくづく彼らがアルバム・デビュー出来なかった現実を惜しみたくなる1枚。 またぞろ入手困難になる前に、是非のご一聴をお薦め致します。
メジャー・レーベルが満を持して送り込んで来た、女性メンバーのみで構成される本格派HRバンドとして人気と評判を集めたVIXEN、'88年発表の1stアルバム。 ゴリゴリのメタル・ゴッデス路線でも、過剰なお色気路線でも、ましてやTHE GREAT KAT様のような色物路線でもない、洗練された見目麗しいルックス、ミュージシャンとしての確かな実力、それに親しみ易いキャッチーな楽曲と、万人にアピールする華やかな雰囲気を身に纏っているのが流石はメジャー仕様。 尤も、あまりに優等生的というか、お膳立てが整い過ぎている点に逆に引っかかってしまい、当初はイマイチ乗りきれなかったんだよな…と。しかし、ラジオだったかテレビだったかで耳目に触れたスマッシュ・ヒット・ナンバー①(全米シングル・チャート最高26位)に惹かれてアルバムを購入してみれば、パンチの弱さはやはり感じつつも、哀愁漂わす③、80年代トレンディドラマの主題歌みたいな⑧、ハードにロックしているドライヴ感溢れる⑪等、己のつまらん偏見がどーでも良くなるぐらい収録楽曲の出来が良かったという。そんなわけで、その後はすっかりファンになってしまい、メタル好きの同級生と「ロキシー・ペトルーシ(Ds)を《美人メンバー》の枠内に含めるか否か」で熾烈な論戦を戦わせたっけなぁ(アホ)、と懐かしく思い出した次第。 昔は漫然と聴き流してしまいましたが、実はデビュー作以上に収録曲の質が高いと評判の2nd『REV IT UP』も、改めて聴き直してみよう。
BOW WOW改めVOW WOWが'84年に発表したデビュー作。 曲作りにおいてイニシアチブを握るの山本恭司(G)で、バンドの屋台骨をソリッドに支えるのは佐野賢二(B)と新見俊宏(Ds)のリズム隊、ついでに一部楽曲は日本語詞で歌われている等、音楽的な方向性自体はBOW WOW時代(名盤『ASIAN VOLCANO』辺り)とほぼ同一なのに、にも関わらずサウンドのスケール感が以前より一回りも二回りも大きく感じられるのは、新メンバーの人見元基(Vo)と厚見玲衣(Key)の存在がモノを言っているからに他ならない。(・・・多分) 殊にBOW WOWとVOW WOWの差別化という点において、プログレ・ハード・バンドMOONDANCER出身という、厚見の壮麗にしてドラマティックなKeyプレイが果たした貢献は大きく、その加入効果は名曲揃いの頭3曲から早くも覿面に表れている。 そして勿論、本作(というかこのバンド自体)を語る上で欠かす事の出来ない、人見元基のパワーと表現力兼備の日本人離れした歌声も強力だ。特に、彼のVoと山本のGが猛烈に咽び泣く“SLEEPING IN A DREAMHOUSE”は、これ以降完璧に脱臭されていく歌謡曲の残り香も感じられる劇的なバラードの逸品で、この名曲をクライマックスに据え、OPナンバー“BREAK DOWN”からラス曲“BEAT OF METAL EMOTION”まで捨て曲一切なしの本作こそ、個人的にはVOW WOWのカタログの中でも最も愛して止まない1枚だったり。
個人的に、この2ndアルバム('85年)に今ひとつ地味な印象が付き纏うのは、我が愛するデビュー作『BEAT OF METAL EMOTION』と、ファン人気が特に高い名盤『Ⅲ』との間に挟まれている時期的な問題以外にも、例えばバラードの小曲“NEED YOUR LOVE”とインスト曲“ECLIPSE”からメドレー形式で繋がって行く“SIREN SONG”が、ストレートなロックンロール・ナンバーで肩透かしを食わせられる事に象徴されるよう、VOW WOWのカタログの中にあってドラマ性や叙情性が控え気味な、どちらかと言えばアメリカンな色合いが強く打ち出された作風も影響しているのかな?と。 尤も、歌詞が全曲英詞で統一され、前作に僅かに残っていたドメスティック臭が一掃された本作は「事前の耳打ちなしで聴いたらまず日本のバンドとは思わない」、VOW WOW独特のバタ臭い個性がしっかと確立された重要な1枚であり、決して退屈な内容と言うわけではない。 インストの小曲を経てスタートする、アグレッシブで切れ味の鋭いバンドの代表曲“HURRICANE”や、人見元基のソウルフルな熱唱が映える“LOVE WALKS”、重厚にして豪快な“ROCK YOUR CRADLE”、大陸的な乾いた哀愁漂わすバラード“YOU KNOW WHAT I MEAN”は、このバンドならではの魅力が如何なく発揮された名曲ですね。
印象的なKeyリフを纏ってシャープに疾走する“SHOT IN THE DARK”と、国産HR/HM系バラードの最高峰と評すべき逸品“SHOCK WAVES”という二つの名曲を収録し、ファンからも「HMバンド」VOW WOWの代表作として高い人気を誇る'86年発表の3rdアルバム。 アメリカンな色合いが強く打ち出されていた前作『CYCLONE』に比べ、メロディの湿り気やドラマ性といったブリティッシュ・テイスト(日本のバンドですが・・・)の大幅回復が図られた本作には、曲名通りのアーバンで洗練された雰囲気が心地良い“NIGHTLESS CITY”や、哀愁のHRナンバー“SIGN OF THE TIMES”、劇的にラストを締め括るバラード“PAINS OF LOVE”といった優れた楽曲が顔を揃えているわけですが、やはり何と言ってもトドメとなるのは、“SHOT IN THE DARK”と“SHOCK WAVES”という超ド級の名曲の存在。 特に、壮絶に泣きまくるG、魂を燃焼させるような絶唱を振り絞るVo、全編を壮麗且つ悲壮に彩るKey、そして熱く激しく脈動するリズム隊とが一体となって、呼吸困難を催さんばかりの息苦しい盛り上がりを演出する“SHOCK~”は、何度聴いても涙ちょちょ切れる至高の逸品。 未だこの名曲を聴いた事がないHR/HMリスナーは、確実にミュージックライフで大損ぶっこいてますよ!
'87年発表の4th『V』の中から4曲に、ゲイリー・ムーアやCHEAP TRICKとの仕事で知られるエンジニア、イアン・テイラーの手によるミックスを施し同年クリスマスに発表されたミニ・アルバム。ちなみにリーダー・トラックであるジョン・ウェット提供の名曲“DON’T LEAVE ME NOW”はロング・バージョンとリミックス・バージョンの2種を、“DON’T TELL ME LIE”はロング・バージョンを、“CRY NO MORE”と“BREAK OUT”はリミックス・バージョンをそれぞれ収録する全5曲構成。 楽曲の素晴らしさに関してはアルバム『V』の項目をご参照頂くとして、本作と『V』を熱心に聴き比べたことがないため、イントロからして明らかに変わっている“DON’T LEAVE~”以外は、アルバム・バージョンとの差異は正直「分かったような分からないような」レベルの不届き者なのですが、とりあえず全体的に厚見玲衣のKeyサウンドが前面に出て、よりゴージャス感を強調した音作りが目指されていることは流石に伝わりました。逆に今聴くと80年代然としたプロダクションに時代を感じてしまう気も…いやいや。この辺は聴く人の趣味嗜好の問題でしょう。 いわゆる「ファン・アイテム」であり、既に『V』を持ってる人がわざわざ購入する必要がある作品かどうかは微妙なところですが、優れた楽曲を超人揃いのメンバーが全力でパフォームしているのですから、質の高さは保証できる1枚なのは間違いありません。
'86年リリースのライブ盤『HARD ROCK NIGHT』を一区切りとして、レディング・フェスティバル参戦を含む本格的な英国進出、オリジナル・メンバー佐野賢二(B)の脱退とニール・マーレイの加入等、激動の時代を迎えていたVOW WOWが'87年に発表した4thフル・アルバム。 “SHOT IN THE DARK”の如きヘヴィ・メタリックな疾走ナンバーや“SHOCK WAVES”級の超名曲が見当たらない代わりに、収録各曲のメロディやアレンジはこれまで以上に丹念に練り込まれ、粒が揃った本編は前作『Ⅲ』を大きく凌駕するクオリティの高さ。 スリリングに切り込んで来る“SOMEWHERE IN THE NIGHT”や、哀愁に満ちた“THE GIRL IN RED”、猛烈に泣かせに掛かる劇的なバラード“CRY NO MORE”といった「これぞメガロック!」な楽曲で堪能出来る、各メンバーの硬軟自在のパフォーマンスは相変わらずの見事さですが、今回、特にその良い仕事っぷりが光るのは厚見玲衣のKeyワークで、彼の流麗にして華やかな演奏は楽曲の叙情性とドラマ性底上げに大きく貢献。中でもUKチャートにおいても好リアクションを得たという先行シングル曲“DON'T LEAVE ME NOW”はその筆頭に挙げられる名曲。ジョン・ウェットンが作詞とプロデュースを手掛けているだけあって、どこかASIA的な響きを持つキャッチーな哀メロが心地良いったら。アルバムのハイライト・ナンバーじゃないでしょうか。 個人的には、デビュー作『BEAT OF METAL EMOTION』と並んでVOW WOWの最高傑作に推したい1枚ですね。
'88年リリースの5thアルバム。 判り易い疾走ナンバーが姿を消し、ミッド・テンポの楽曲主体でまとめられた本編を初めて聴いた時は「随分マッタリとしちゃったなぁ」と思ったものですが、よくよく聴き込めば、多少地味な楽曲にも必ず耳を捉えるフックが仕掛けられており、総合的な完成度の高さでは傑作だった前作『Ⅴ』にも全く引けを取らない出来栄え。 特に、魂揺さぶる人見元基の熱唱と、山本恭司の濃厚なエモーション背負ったG、厚見玲衣の壮麗なるKeyワークが、新見俊宏&ニール・マーレイが叩き出す山あり谷ありの劇的なリズムに乗ってドラマティックに展開していく“FADE AWAY”は、かの“SHOCK WAVES”と同種の感動を味わわせてくれるVOW WOW屈指の名曲です。 また、哀愁を湛えて歌う山本のGが涙腺に沁みる“I FEEL THE POWER”、タメの効いた泣きの叙情バラード“THE BOY”、キャッチーなポップ・メタル・ソング“ROCK ME NOW”、思わず踊りたくなるスウィンギンな“TALKIN'BOUT YOU”辺りは、楽曲の完成度の高さと、益々円熟味を増したメンバーのパフォーマンスとが相俟って、実に胸に残る逸品に仕上がっている。 個人的には、VOW WOWのカタログの中では本作と前作『V』、それに1st『BEAT OF METAL EMOTION』がアルバム・ベスト3かな。
NWOBHM華やかなりし'81年、チューダー(Vo)とマット(G)のシェルトン兄弟がイギリス・オックスフォードにおいて結成。 '85年にOTHER RECORDSから発表された7インチEP『WE STAND TO FIGHT』は世界中のマニアを熱狂させたが、インターネット登場以前、そうした評判はメンバーの耳までは届かず、また'87年制作の3曲入りデモ『FOOL'S GOLD』をEPとしてリリースする話もレーベル倒産で立ち消えになる不運、そして何よりNWOBHM自体が終焉を迎えていた時期の悪さが重なって、バンドはアルバム・デビューを果たすことなく解散してしまった。 NWOBHM熱の再燃に伴って、昨今、欧州方面で注目が集まっているバンドですが、チューダー・シェルドンがミュージシャン業から足を洗ってることもあって再結成は難しい様子。 弟のマットは、THE SHOCK(90年代には日本デビューも果たしている)をリユニオンして活動中。
80年代半ば、《THE BEST UNSIGNED BAND FROM NWOBHM》と噂されたオックスフォード出身の5人組が、'85年に発表した7インチEP『WE STAND TO FIGHT』と、'87年に制作した3曲入りデモテープ『FOOL'S GOLD』という2つの音源を合体収録するアンソロジー盤。 「幻の~」とか「伝説の~」なんて冠言葉がつく作品は、入手困難期間中に消費期限切れを起こしてる場合も少なくないのですが、コレは間違いなくその例外作品の一つ。一応リマスターされているとは言え、音質の悪さはある程度覚悟せねばなりませんが、しかし本作はそれを押しても楽曲が良い! 疾走するリズムの上で、劇的且つシャープに刻まれるGリフと、青い炎が揺らめくような英国声による熱唱、そして思わず泣きながら握り拳突き上げたくなるフレーズを次々に奏でるツイン・リードGが伸びやかに舞う収録曲は、これぞブリティッシュ!これぞメタル!と万歳三唱モノな名曲①③を頂点に、全5曲、いずれもNWOBHMが残した至高の遺産というべき逸品揃い。 MARSHALL LAWのデビュー作にも匹敵するインパクトに「今までこれほどの名曲を知らずにいたのか・・・」と慄然とさせられると共に、つくづく彼らがアルバム・デビュー出来なかった現実を惜しみたくなる1枚。 またぞろ入手困難になる前に、是非のご一聴をお薦め致します。