カリフォルニアにて、ONSLAUGHTとZOMBIEという2つのスラッシュ・メタル・バンドが 合流する形で誕生し、'06年に自主制作した5曲入りEP『ONE BY ONE, THE WICKED FALL』でデビュー。 幾つかのコンピ盤に参加して知名度を高めた後、CENTURY MEDIA RECORDSと契約を交わすと、 '08年に『WAR WITHOUT END』を、'09年には2ndフル『WAKING INTO NIGHTMARE』を発表。 荒々しく尖がった楽曲にイマイチな音質、それにドタバタした演奏がどこか郷愁を誘う、オールドスクールな スラッシュ・サウンドが詰め込まれた1st、メンバー・チェンジと過酷なツアー生活の成果が そのクオリティに見事に反映された、よりビルドアップされた内容の2nd、 どちらも聴き応え十分の作品に仕上がっており、近年デビューを飾った 若手スラッシャーの中では頭一つ抜きん出た存在感を放つバンドかな、と。
赤尾和重、アン・ボレイン、レザー・レオーネらと共に80年代のHR/HMシーンを彩った、「女ロ二ー四天王」ことドロ・ペッシュ(Vo)を擁するWARLOCKが'87年に発表し、彼らの最終作ともなった4thアルバム。 GとBをU.D.O.に引き抜かれたりと、櫛の歯が抜けるようにメンバー・チェンジが相次ぎ、ドラマー不在の穴を埋めるべく御大コージー・パウエルがノー・クレジットでタイコ叩いてる事でも知られる本作は、ドロ単独のイラストや写真があしらわれたジャケット/ブックレットから「ドロ・ペッシュとそのバックバンド」的な構図が透けて見える通り、後のソロ活動へのターニング・ポイントともなった作品で、現在も彼女のライブでは欠かす事の出来ないアンセム“ALL WE ARE”を収録。 この名曲が示すように、重厚なミドル・テンポの楽曲を中心に固められた本編は、ドメスティックな色合いやマイナー臭が一掃され、アメリカ出身の正統派HMバンドと言っても通用しそうな洗練された薫りが匂い立つが(レコーディング自体、ドロが渡米してNYにて行われている)、どっこい、メロディが能天気になってしまったなんてことはなく、ドラマティックな構築美が光る③、物悲しげなピアノの旋律をフィーチュアした⑤、“METAL TANGO”というタイトルからして最高な⑧、そしてドロ・ペッシュ嬢を語る上で避けて通れない名バラード⑩といった楽曲は、“ALL WE ARE”等の代表曲にも引けを取らないクオリティを備えているんじゃないかと。 元マネージャーとのトラブルが原因で結果的にこれがラスト作とはなったものの、有終の美を飾るに相応しい完成度の高さを誇る1枚。
LAメタル・シーンが活況を呈する’85年に1st『未来戦士』でデビューを飾り、どこかヨーロッパの薫りのする正統派HMサウンドと、日系人ギタリストのトミー・アサカワを擁する編成、それにドラマティックな名曲“FIGHTING FOR THE EARTH”のインパクトを以てHR/HMファンの間で話題を呼んだWARRIORが復活。IRON MAIDEN脱退後、迷走していたブルース・ディッキンソンを再起へと導き、当時「メタル再生請負人」としての評判を高めていたロイ・Z(G)のバックアップを受けて、'98年にこの再結成第1弾アルバム(通算2作目)を発表しました。 個人的に本作の目玉は、嘗て幻に終わった2ndアルバム用に書かれた楽曲④⑤⑨、そしてWARRIORの名を一躍シーンに知らしめる切っ掛けとなった伝説の3曲入りデモテープに収録されていた⑪の4曲。抒情的なバラード④や、いかにも80年代という軽快な疾走ナンバー⑨等、それらはどれも素晴らしい出来栄えを誇っていますが、特にドラマティックに盛り上がっていく曲展開と、パラモア・マッカーティ(Vo)の艶やかなハイトーンが『運命の翼』の頃のJUDAS PRIESTを彷彿とさせる⑪の名曲ぶりは抜きん出ています。これが聴けただけで本作を買った価値はあった!と。 上記楽曲に比べると、90年代の流行の要素が多少なりとも取り入れられている新曲はやや地味な印象で分が悪い。それでも、力強いハイトーンVoとロイ・Zの色気迸るGプレイがフックを作り出す収録曲の数々は、②を筆頭に聴き応え十分に仕上げる手腕は流石。 発表されたことすら忘れられてしまっている感すらありますが、個人的には結構お気に入りの1枚です。
WARRIORの1stデモに収められていた3曲の名曲のうちの一つ。 “FIGHTING FOR THE EARTH”と“DAY OF THE EVIL”は デビュー・アルバムで聴けましたが、この曲だけはスルーされていたので ここに収録されているのはありがたい。(但し日本盤のみの収録) 良く伸びるハイトーンVoや、ツインGによる劇的な盛り上げっぷりが 『運命の翼』を発表した頃のJUDAS PRIESTを彷彿とさせる逸品です。
現WHITESNAKEのミケーレ・ルッピに師事した実力派シンガー、ダヴィデ・バービエリ率いるイタリア出身の5人組HRバンドWHEELS OF FIREが'19年に発表した3rdアルバム。昨年末に帯・解説付の輸入盤がBICKEE MUSICから発売されていたので「年が明けたら買おう」と呑気に構えていたら、それから1~2か月足らずであっという間に廃盤になってしまい慌てましたよ。どう考えても早過ぎるのですが一体どうしたことか。 80年代風味満点の溌剌としたポップ・メタル・アルバムだった1st、より成熟しメロディアスになった2ndときて、本作で披露されているのはちょうど両作の中間ぐらいに位置するメロディック・ロック・サウンド。ポップな中にも哀愁がまぶされたメロディと、この手の音にお似合いの、ちょっと鼻にかかったハイトーンでエネルギッシュに歌いまくるVo、それにコンパクトにまとまった良ソロをテクニカルに繰り出すGにより華やかに彩られた本編は、ボーナストラック含めて捨て曲なし。前作から7年という長期間のブランクをものともしない、相変わらず卓越した曲作りのセンスが光るハイクオリティな仕上がりです。まぁダヴィデは活動休止期間中も多数のプロジェクトを掛け持ちしていたようなので、それも当然っちゃ当然なのですが…。中でもピアノのイントロからスタートするドラマティックなバラード⑤や、フックを満載にして疾走する⑨等は、今が80年代ならヒット・チャートを賑わしたっておかしくない本編のハイライト・ナンバーですよ。 過去2作の美味しい所取りとも言える充実作なので、WHEELS OF FIRE入門盤代わりに強くお薦めする1枚…って、もう廃盤か。願・再発。
確かにイングヴェイっぽさを感じます。 (同年に発表されてるので単なる偶然でしょうが) WHITE LION版“DISCIPLES OF HELL”みたいな。違うか。 ヴァースにうっすらと被さる「アーアーアー🎵」コーラスが 勇壮さを煽る、メタル色の強い1stの中にあって 1、2を争う名曲ではないでしょうか。 “エルサルバドルの悲劇”なる邦題も良い。
“WAIT”(8位)と“WHEN THE CHILDREN CRY”(3位)という2曲のヒット・シングルを生み出し、アメリカだけで200万枚以上を売り上げたWHITE LIONの自他共に認める最高傑作、'87年発表の2ndアルバム。(プロデュースはマイケル・ワグナー) 当初は先入観から「どうせLAメタルだから能天気なんだろ?いいよ、俺は」と及び腰だったのですが、実際に聴いてみれば、本作はそうした思い込みをまるっと覆される見事な出来栄え。(我ながらこのパターンが多い) ザラついたハスキーな声質のマイク・トランプが歌うメロディや、エディ・ヴァン・ヘイレンばりのフラッシーさ&エモーショナルな表現力を併せ持ったヴィト・ブラッタのGプレイが発散するウェットなヨーロピアン風味と、思わず合唱を誘われるキャッチーなサビメロに、美しいハーモニーといったアメリカンな味わいとがバランス良く配合されたサウンドは、能天気どころか、6対4ぐらいの割合でヨーロピアン風味の方が勝っていますよね、これ。 特に、ヴィトの劇的な構築美を湛えたGプレイが映える冒頭3曲の流れ、そしてハードにして繊細、且つドラマティックな5曲目“LADY OF THE VALLEY”は、イントロからして猛烈な求心力を発揮するWHITE LION屈指の名曲ではないかと。 幅広い層のHR/HMファンにアピールし得る魅力を備えた名盤です。
「トランプったらドナルドじゃなくてマイクだろ」…というファンの期待に応え(?)、マイクトランプを中心に再編されたWHITE LIONが’08年に発表した復活の5thアルバム。 名手ヴィト・ブラッタ(G)の不参加は残念極まりないですが、そうは言ってもアルバム・タイトルは『RETURN TO THE PRIDE』ですからね。こりゃ彼らの代表作たる2nd『PRIDE』(’87年)に通じるサウンドが託されているに違いない…と胸ワクで聴き始めてみれば、荘厳なイントロに続いて流れ出して来るのは、Gがハードにうなり、ヘヴィ且つドラマティックに押し出して来る大作ナンバー①。思わず同名異バンドのアルバムを買ってしまったかとジャケットを二度見してしまいましたよ。 この曲に限らず、アルバム全体がかつてない程にヘヴィ・メタリックにストレッチ。無論ポップなノリの良さが感じられる楽曲も散見はされるもものの、ソリッド(というか素っ気ないというか)なプロダクションと、マイクの荒れた歌声――加齢による衰えのせいなのか、敢えてそうしているのかは判然としませんが――もそうした印象を後押ししてます。 かようにキャッチーなポップ・メタルを期待していた層にうっちゃりを食らわす内容ではあるのですが、じゃあ本作に失望したかといえば、さにあらず。メロディの憂いといい、曲展開のドラマ性といい、1st『華麗なる反逆』を更にHM寄りにしたようなサウンドは「いやこれ十分にありでしょ!」と思わされるカッコ良さ。特に①⑥のエピック・メタルとすら評したくなる重厚な魅力には痺れまくった次第でして。 本作以降、バンドの動きが全く伝わって来なくなってしまったのが残念で仕方ないったら。