21世紀を目前に突如蘇ったNEAT RECORDSから、これまた復活を遂げたHOLOCAUST(といってもそれ以前から離散集合を繰り返していた)が’96年に発表した4thアルバム…ではなくて。実際は’92年に自費出版された3rd『HYPNOSIS OF BIRDS』の曲順を入れ替えた上に改題し、そこに’93年リリースの4曲入りEPやらMETALLICAの“MASTER OF PUPPETS”のカヴァーやらの音源を突っ込んだコンピ盤的性格の1枚という。 NWOBHM復活組がこの時期の新生NEAT RECORDSに残した作品は、イマイチ開き直り切れていない微妙な代物が多かったと記憶していますが、それらに比べると本作は結構イイ線を行っているのではないかと。METALLICAがカヴァーしてくれたことにより再びHOLOCAUSTに注目が集まる切っ掛けとなった代表曲“THE SMALL HOURS”のリメイク②を聴けば分かる通り、元々BLACK SABBATHばりのヘヴィネスや妖しいメロディ使いが個性の内だったことも、90年代のHR/HMシーンの潮流とマッチ。Voの気の抜けたヘタウマ加減とか、「どこのブラック・メタル・バンドか?」っつーぐらい低劣なプロダクションとかも80年代初頭のまま。いや音質に関しちゃ進歩しとけよって話ですが。 国内盤の解説ではゴッドが「②の価値が全て」とぶっちゃけちゃってますし、日本人好みの泣きや哀愁といったキャッチーな要素に乏しい作品ではありますが、個人的にはエキゾチックな雰囲気漂わす①、フルートやチェロを取り入れた③④といった、乙な味わいのへヴィ且つプログレッシブな大作ナンバーが結構お気に入りだったり。少なくとも1st『NIGHT COMERS』が楽しめた人ならほっこりできるクオリティは備わっているのではないかと。
アレクサンドル・シトコヴェツキーは、'85年に開催されたLIVE AIDにソビエト連邦代表として参加したことで知られるプログレッシブ・ロック・バンド、AUTOGRAPHのギタリスト。当時のVoは後にARIAに加入するアルトゥル・ベルクトで、ポップ色を強めた3rd『TEAR DOWN THE BORDER』('91年)は日本盤も発売された筈。また世界デビューに併せてバンド表記がロシアっぽくAVTOGRAF(アフトーグラフ)に改められたのは、アメリカの同名バンドとの混同を避けるためか。 ‘90年にはオール・インストのソロ・アルバム『ZELLO』を発表している。 ちなみに「アレクサンドル・シトコヴェツキー」で検索を掛けると、最初に引っ掛かるのがロシア人の天才バイオリニストの名前なのだが、どうやらご子息の模様。シトコヴェツキー家はロシアじゃ有名な音楽一家らしい。
曲調的には“STREET OF DREAMS”に触発されて書かれたであろうことは 明かなのですが、そこにスペイン語によるバリラーリの情熱的な歌い回しと 本家より3割増しで哀愁が増強されたメロディが乗っかることで RATA BLANCAならではの魅力が付与されているではないでしょうか。 歌心を感じさせるリッチー・テイスト溢れるGソロも実に胸に沁みます。
マニア筋から高い評価を得るスウェーデン出身の5人組が、デビューEPに続き’85年に発表した、ジャケットに鎮座ましますガスマスク女子が目印の1stフル・アルバム。 音楽性はいかにもヨーロピアンな翳りを湛えた正統派HM。但し、煌めく美旋律や透明感といった北欧ハードポップ的要素にはまるで頓着せず、それよりもアグレッシブなGリフと、スピーディなリズムの運用により正面突破を図るストロング・スタイルは、EUROPEブレイク前夜の北欧メタル・バンドらしく、NWOBHMからの影響が大。平板なプロダクションと、微妙に音程の甘い(ちょっとデビュー当時のジョーイ・テンペストを思わせる)ヘタウマVoとが、ジャンル・ファン的には良い意味で、一般リスナーには悪い意味で、青臭く垢抜けないマイナー・メタル臭を運んで来ますが、当然前者に与する我が身としては「そこが良いんじゃない!」と力強くサムズアップした次第。 愁いを帯びてシャープに疾走する曲調の上に乗っかる、いっぱいいっぱいなハイトーンVoが色んな意味でスリリング極まりない名曲①にメタル・ハートを鷲掴まれてしまえば、あとは鋭角的に動き回り印象的にハモってみせるツインGを活かした④や、劇的な導入部を経て猛然と走り始めるお約束の展開が熱い⑦のようなスピード・ナンバーから、重厚なリズム・パターンが“HEAVEN AND HELL”風の③、歯切れ良く突き進む⑥、バラードリーにラストを締め括る⑨といったメロディックなミドル~スロー・ナンバーまで、本編は多少のイモ臭さをモノともしない逸品がズラリ揃っています。 『RED, HOT & HEAVY』期のPRETTY MAIDSを愛聴する方ならマストな1枚かと。
JOHNNY KIDD & THE PIRATESのデビュー・ヒット曲のカヴァーにして、 MOTORHEADとGIRLSCHOOLが合同で発表した3曲入りEP(全英チャート最高第4位) 『St. Valentines Day Massacre』のリーダー・トラック。 メインVoはレミーとケリー・ジョンソンが分け合い、 ドラムは首の骨折って入院中だったフィルシー・テイラーの代わりに GIRLSCHOOLのデニス・デュフォードが叩いている。 3分弱のランニング・タイムをヤサグレ気味に突っ走る無頼な名曲。
2ndフル『MENACE OF SOCIETY』を以て、ここ日本で一躍評価を高めたLIZZY BORDENが、リジー曰く「新作が出るまでズーっとLIZZY漬けなって欲しい」との目的の下、次のアルバムまでの繋ぎとして'87年に発表したミニ・アルバム。 日本盤とUS盤とでは内容が異なっており、JEFFARSON STARSHIPの代表曲“WHITE RABIT”や、BITCHのベッツィ・ウェイスとリジーの「美女と野獣」デュエットが楽しいTUBESの“DON’T TOUCH ME THERE”といったカヴァー曲①②、及び新曲③④に関しては両盤共通な一方、日本盤はB面サイドに国内未発売だったデビューEP『GIVE ‘EM THE AXE』を丸ごと収録。個人的に本作の購入動機はこれ目当てだったぐらいでしてね。 キャッチーな表題曲⑤、リジーの個性的なハイトーン(歌の巧くなったオジー風)が勇ましい曲調に花を添える⑥、切れ味鋭く切り込み、劇的にハモるツインGの威力がガッツポーズ物のスピード・ナンバーの名曲⑦、バンドの名を一躍HR/HMシーンに広めるのに大きく貢献したRAINBOWの代表曲“LONG LIVE ROCK’ N ROLL”のカヴァー⑧等、『MENACE~』以降の作品よりも明確に欧州風味の正統派HM路線が志向されている楽曲の数々がカッコイイの何のって。勿論、バラード風に始まり、印象的に歌う2本のGを伴ってノリ良く駆け抜ける③のような新曲の出来栄えもお見事ではありますが。 本編全体に占めるカヴァー曲の割合の高さや、3分未満の楽曲がテンポ良く繰り出されていく構成といい、全体的に肩の力を抜き、バンド側も楽しんでレコーディングを行ったであろうことが伝わって来る1枚ですね。