邦題は“ミュンヘンにあるのは宮廷ビール醸造所”。 DIOの“STAND UP AND SHOUT”のGリフを借用して ハードコア/パンクばりに爆走したかと思えば、 ワルツのリズムでステップを踏んだり、 酔っ払い連中が声を合わせて大合唱を繰り広げたりと 酩酊状態を思わせる脈絡もとりとめもない曲展開が、実に楽しい1曲。
不幸の波状攻撃に翻弄されながらも立ち向かう、大映ドラマのヒロインばりに健気な姿(?)が日本のHR/HMファンの胸を打ったBIG IN JAPAN筆頭LION、'87年発表の1stフル。(国内盤は『宿命の砦』なる副題あり) とは言え、彼らが判官びいきのみで人気を集めたわけじゃないことは、タレント揃いのメンバーと、彼らによってクリエイトされる高品質な楽曲の数々からも明らか。元TYTANの英国人シンガー、カル・スワン(Vo)の情念迸るディープ・ボイスを活かしたサウンドは、基本的にはWHITESNAKE辺りからの影響を伺わせるヒンヤリとした哀感を身に纏うブリティッシュHMなのですが、そこにメタリックなエッジの鋭さや、ライブでの大合唱を誘うキャッチーなコーラス・ワーク、そして若きギター・ヒーロー、ダグ・アルドリッジのフラッシーなGプレイといった、LAメタル仕込みの華やかなエッセンスが加わることで、英米混合バンドたるLIONならではの個性が眩い輝きを放ちます。 特にアップテンポのHMナンバー④は必殺の名曲。今は亡き日曜洋画劇場で繰り返し放送されていたB級アクション映画『処刑ライダー』劇中歌で、LIONの存在なんぞまるで知らなかった時分から「イカス曲だなぁ!」と痺れまくっていただけに、これが彼らの手による楽曲だったと知った時は感激もひとしおでしたよ。他にも重厚な②、バンドの代表曲のリメイク⑥、ブリティッシュ・ボイスが冴え渡る⑦、本編ラストをアグレッシブに締め括る⑨と、収録曲はどれも逸品ぞろい。いや、もしかすると今日びの若いリスナーには地味に響くやもしれませんが、そこで手放なすのはぐっと堪えて、もう数年熟成させた後で改めて聴き直してみると、芳醇な味わいに気付いてガツンとやられることも案外あるのではないかと。
これまで数多のバンド/プロジェクトをマイク片手に渡り歩き、様式美HMからメロハーまで「何でもこざれ」で歌いこなしてきた実力派シンガー、ジェフ・スコット・ソートが'02年に発表した、ソロ名義では8年ぶりとなる2ndアルバム。 本作で聴けるのは、まさにアルバム・タイトルを地で行く「プリズム」の如き煌めきを放つ、美しく抒情的なメロディアスHRサウンド。JOURNEYの名曲“SEND HER MY ANGEL”のカヴァーも含め、まるで喉を傷めてバンドを脱退したスティーヴ・オウジェリーの後任として、数年後にジェフ自身がJOURNEYに参加することとなるのを予感させるような作風と言うべきか。そんなわけで、OPナンバーらしい躍動感溢れるエネルギッシュな曲調に、テクニカルなGプレイが華を添える①にて幕が上がる本編は、バラード~ミディアム・テンポのナンバーを中心にじっくりと「歌」を聴かせに掛かる構成で、RISING FORCE時代のような様式美HM路線を期待する向きにうっちゃりをカマしてきます。 しかしその一方、感動的な盛り上がりっぷりが胸を打つ②、黒っぽさ全開で、グレン・ヒューズにも匹敵するんじゃなかろうか?というファンキー且つソウルフルなフィールが痛快な⑤、打って変わって哀愁ダダ漏れのドラマティックな(イングヴェイ時代を思い起こさせる)⑥等々、収録楽曲の曲調は結構多彩。その上、それらを歌い上げるジェフの熱くエモーショナルな歌唱がサウンドに陰影とダイナミズムを付与してくれているため、右から左へまったりと流れて行ってしまうような緩さは皆無という。 ソングライターとしてもジェフ・スコット・ソートの才能が存分に発揮された1枚ですね。
ハーモニーが立体的に舞い、 曲展開は華麗にしてドラマティック、 尚且つメロディは北欧メタルらしい冷ややか哀感を宿しているという まさに北欧版NEW ENGLANDと評したくなる名曲であります。 後に続く“THE CURSE OF Mr. FUTURE”と“GOOD TIMES, BAD TIMES”の 2曲と併せて一つの組曲としてお楽しみください。
DEEP PURPLEからBEATLES、更にはEAGLES等のAOR/産業ロックまで、幅広いジャンルを愛するメンバー達の「破滅的な出会い」(FATAL ATTRACTION)により80年代末期にスウェーデンはストックホルムにて結成された、Key奏者を含む5人組。 幾つかのコンピレーションCDに参加した後、’96年に1st『END OF REGULATION TIME』でデビュー。同作はSOUND TREASUREを通じて日本盤もリリースされた。 '03年には2nd『SIMPLICITY RULES』を発表するも、’04年にバンドは解散してしまった模様。
カナダ出身の5人組で、ポール・マッカースランド(Vo)とマーヴィン・パート(G)が音頭を取って’81年に結成。バンド・コンテストへの参加や、EP『HAYWIRE』の自主制作等で腕を磨いた後、'86年に『BAD BOYS』でデビューを飾る。ここからは表題曲がヒット(最高第21位)、アルバム・セールスも最終的にプラチナムに到達している。ポップ・メタル色を強めた翌年発表の2nd『DON’T JUST STAND THERE』は更なる好セールスを記録し、特にシングル・カットされた“DANCE DESIRE”はカナダ国内においてTOP10チャートに食い込む大ヒットとなっただけでなく、日本でもヤマハ主催の世界歌謡祭(80年代末まで毎年日本武道館で開催)にエントリーされ金賞を受賞したという。 カナダ国内において確固たる支持基盤を築きつつも、音楽シーンの潮流の変化によりレコード会社から満足のいくサポートが得られなくなり、90年代に入って活動を停止。 00年代に入ってバンドは復活を遂げ、ニュー・アルバムのリリースもアナウンスされているが、まだ発表には至っていない模様。
21世紀を目前に突如蘇ったNEAT RECORDSから、これまた復活を遂げたHOLOCAUST(といってもそれ以前から離散集合を繰り返していた)が’96年に発表した4thアルバム…ではなくて。実際は’92年に自費出版された3rd『HYPNOSIS OF BIRDS』の曲順を入れ替えた上に改題し、そこに’93年リリースの4曲入りEPやらMETALLICAの“MASTER OF PUPPETS”のカヴァーやらの音源を突っ込んだコンピ盤的性格の1枚という。 NWOBHM復活組がこの時期の新生NEAT RECORDSに残した作品は、イマイチ開き直り切れていない微妙な代物が多かったと記憶していますが、それらに比べると本作は結構イイ線を行っているのではないかと。METALLICAがカヴァーしてくれたことにより再びHOLOCAUSTに注目が集まる切っ掛けとなった代表曲“THE SMALL HOURS”のリメイク②を聴けば分かる通り、元々BLACK SABBATHばりのヘヴィネスや妖しいメロディ使いが個性の内だったことも、90年代のHR/HMシーンの潮流とマッチ。Voの気の抜けたヘタウマ加減とか、「どこのブラック・メタル・バンドか?」っつーぐらい低劣なプロダクションとかも80年代初頭のまま。いや音質に関しちゃ進歩しとけよって話ですが。 国内盤の解説ではゴッドが「②の価値が全て」とぶっちゃけちゃってますし、日本人好みの泣きや哀愁といったキャッチーな要素に乏しい作品ではありますが、個人的にはエキゾチックな雰囲気漂わす①、フルートやチェロを取り入れた③④といった、乙な味わいのへヴィ且つプログレッシブな大作ナンバーが結構お気に入りだったり。少なくとも1st『NIGHT COMERS』が楽しめた人ならほっこりできるクオリティは備わっているのではないかと。
アレクサンドル・シトコヴェツキーは、'85年に開催されたLIVE AIDにソビエト連邦代表として参加したことで知られるプログレッシブ・ロック・バンド、AUTOGRAPHのギタリスト。当時のVoは後にARIAに加入するアルトゥル・ベルクトで、ポップ色を強めた3rd『TEAR DOWN THE BORDER』('91年)は日本盤も発売された筈。また世界デビューに併せてバンド表記がロシアっぽくAVTOGRAF(アフトーグラフ)に改められたのは、アメリカの同名バンドとの混同を避けるためか。 ‘90年にはオール・インストのソロ・アルバム『ZELLO』を発表している。 ちなみに「アレクサンドル・シトコヴェツキー」で検索を掛けると、最初に引っ掛かるのがロシア人の天才バイオリニストの名前なのだが、どうやらご子息の模様。シトコヴェツキー家はロシアじゃ有名な音楽一家らしい。