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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 201-300

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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 201-300

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TULIP - 日本 - 甲子園 ★★★ (2022-08-24 02:06:09)

メンバー全員が作曲に関与、更に(コーラスも含めれば)全メンバーがVoも担当して、
組曲形式で次々に移り変わっていく曲展開を盛り立てる10分越えのラスト・ナンバー。
甲子園初出場を決めた高校球児の心情に寄り添った希望と高揚感に満ちた曲調が、
やがて重々しい“君が代”のメロディと共に苦い後味を残して締め括られるという
甲子園の光と陰であえて「陰」の部分にスポットを当てた名曲です。


TULIP - 日本 ★★★ (2022-08-22 21:52:50)

その昔、学校のキャンプファイヤーで歌った“心の旅”の印象から、長らくフォーク・グループと認識していたチューリップに対する印象を改める切っ掛けとなった、’75年リリースの6thアルバム。
日の丸を想起させる示唆に富むアートワークが象徴する通り、当時の日本の様々な情景や日本人の国民性をテーマに据えたコンセプト・アルバムの体裁が取られている本作は、THE BEATLESからの影響を基調に、70年代ロックの歯応えや実験性、それにメンバー全員が歌える強みを生かした美しいボーカル・ハーモニーとに彩られ、単純にフォークというジャンルでは括りきれない多様性に溢れたサウンドが展開されています。メロディはフォーク由来の暖かみや親しみ易さを感じさせるのに、綴られている歌詞は敗者たちの物語で、案外皮肉げだったり辛辣だったりするコントラストはいかにも70年代の作品だなぁと。
重たげなリズム・セクションに哀愁のメロディが乗るOPナンバー“せめて最終電車まで”や、財津和夫の情感溢れる歌声が憂いを湛えた曲調を引き立てる“都会”等にもグッときますが、やはり本編のハイライトはメンバーが総力を挙げてレコーディングを行ったという10分以上に及ぶ組曲“甲子園”の存在。甲子園初出場を決めたある高校球児を主人公に、高揚感に満ちた序盤から、重苦しい“君が代”のメロディと共に苦い後味を残して締め括られる結末に至るまで、様々な場面転換が盛り込まれたプログレッシブ・ロック的味わいも感じられる名曲に仕上がっていますよ。
ちょうど甲子園大会が盛り上がっているこの時期に聴くのもオツな1枚ではないでしょうか。


RONDINELLI - War Dance - Fly Paper (live) ★★★ (2022-08-19 00:34:36)

巧みな押し引きで曲展開を先導するボブ・ロンディネリのドラム、
レイ・ギランの情感迸る歌声、泣きを湛えたテディ・ロンディネリの
ギターが13分以上の長尺を全くダレさせることなく聴かせきる大作ナンバー。
ライブ録音であることも忘れてしまうアルバムのハイライトです。


RONDINELLI - War Dance ★★ (2022-08-18 00:13:37)

RAINBOW、BLACK SABBATH、MSG、BLUE OYSTER CULTといった錚々たるバンドで腕を振るってきたボブ・ロンディネリ(Ds)が、兄弟のテディ・ロンディネリ(G)と共に結成。'02年発表の1st『OUR CROSS, OUR SINS』(この時のVoはトニー・マーティン)で日本デビューも飾っているRONDINELLIが、’85年に残したお蔵入り音源がこちら。ちなみに参加メンバーはロンディネリ兄弟に加え、現MEGADETHのジェイムズ・ロメンゾ(B)、そして故レイ・ギラン(Vo)という、今となってはかなり豪華な面子が揃っています。
本編はスタジオ音源4曲、ライブ音源4曲の計8曲で構成。コージー・パウエルも認めたボブ兄ィのタイトなドラミングと、知名度では兄に一歩譲るものの腕前は確かなテディのGを軸とした正統派HMを演っていて、フックに乏しい前半を聴き終えた時点では『OUR CROSS~』同様、悪くはないけど決め手に欠ける内容なのかなぁと思ったものですが、本作の真価はむしろオマケと捉えていた後半のライブ音源にこそあり。特にここで存在感を発揮するのがレイ・ギランのVoで、スタジオ音源と比較しても何ら遜色のない、どころか、それを遥かに上回るパワーとエモーションを漲らせた熱唱は、後にBLACK SABBATHやBADLANDS等での活躍を予感させるに十分な仕上がりっぷり。彼のVo、ボブ兄ィのシュアなドラミング、テディの泣きのGが10分以上に及ぶ長尺を濃厚に盛り上げる⑤⑥辺りにおけるパフォーマンスは圧巻の一言に尽きますよ。
現在では1stアルバムも本作も入手困難になってしまったようですが(というか需要がないだけか?)、もし見かけたら手に取って頂けましたら幸いです。


Z-SECT - N.O.V - INORI ★★★ (2022-08-17 00:45:09)

EPのラストを激烈に締め括るスピード・ナンバー。
既に個性全開のNOVの硬質なスクリーム、
鼓膜に突き刺さるようなアグレッションと
泣きのメロディのコントラストも鮮やかな仕上がり。
VOLCANOファンならこの曲も必聴ではないでしょうか。


MUNICIPAL WASTE - Electrified Brain ★★★ (2022-08-15 23:40:05)

NWOTM第一波としてシーンに登場し、現在に至るもその先頭を走り続けるMUNICIPAL WASTEが’22年に発表した7thアルバム。
かつて多くのクロスオーバー系スラッシャーが、アルバム・リリースを重ねるうちに音楽的成熟と引き換えにサウンドのエキサイトメントを低下させていったのに対し(アルバム7枚といえば『KILL ‘EM ALL』でデビューしたバンドが『RELOAD』をリリースするような長い期間なわけですが)、本作を一聴しての感想は「何も変わってねえ」と。ハイピッチでアジり倒すVo、熟練の刃物職人の如き手捌きで刻まれるGリフ、せかせかと切迫感を煽りまくるリズム隊等々、ここで披露されているのはメタルの切れ味とハードコア/パンクの爆発力を推進剤に、洗練や深化といったキーワードに後ろ足で砂かけながら爆走するような速戦即決のクロスオーバー・スラッシュ・サウンド。ジタバタと終始落ち着きなく突っ走る作風は、ベテランの風格とか重厚な佇まいとは無縁。いつまで経っても(良い意味で)小僧感を失わない彼らには「スラッシュ・メタル界の勝俣州和」の称号を進呈したくなりましたよ。
勿論進化に興味は示さずとも成長の痕跡はしっかり刻まれており、キャッチーなギャング・コーラス、メリハリを効かせた曲展開のダイナミズム、ツインGのヘヴィ・メタリックなハモリを随所に散りばめて、押せ押せの本編の中にもフックを作り出す抜かりない手腕にはベテランの業前がキラリ。個人的には特にメタル色が色濃い仕上がりの⑥⑭辺りが一押し。
MUNICIPAL WASTEには是非ともこのまま突っ走り続けて欲しい、と願わずにはいられない1枚です。


SUICIDAL TENDENCIES - Controlled by Hatred / Feel Like Shit...deja-vu - Just Another Love Song ★★★ (2022-08-04 08:12:58)

切れ味鋭い(と同時にリズミカルでもある)リフの刻みっぷり、
鬼のように弾き倒すGソロと、畳み掛ける疾走感にアガりまくる
本編屈指のスラッシュ・ナンバー。
線の細いマイク・ミューアのVoが完全にバックの演奏に
埋もれてしまっている点は評価が分かれるかもしれませんが。


SUICIDAL TENDENCIES - Controlled by Hatred / Feel Like Shit...deja-vu ★★★ (2022-08-02 00:20:28)

80年代、スラッシュ・メタルとハードコア/パンクのクロスオーバー現象の旗振り役を担ったマイク・ミューア率いるSUICIDAL TENDENCIESが、3rd『HOW WILL LAUGH TOMORROW WHEN I CAN’T EVEN SMILE TODAY』から僅か半年のインターバルを経て'89年に発表した8曲入りEP。これまたタイトルがやたらに長いですが、邦題はシンプルに『檄』と冠されています。
その邦題通り、ここに託されているサウンドはスピーディかつアグレッシブ。スラッシュ由来の疾走感は若干抑え気味にして、その分、重厚さや整合性といったヘヴィ・メタリックなエッセンスの拡充が図られていた『HOW WILL~』に対し、ほぼ一週間でレコーディングを終了させたという突貫作業ぶりが物語る通り、ラフなプロダクションから勢い重視の楽曲まで、本作は生々しいエネルギーの迸りが封入された仕上がりとなっています。
前作を踏まえ起伏に富んだ曲展開を盛り込みつつも、本編は鼓膜に突き立つエッジーなGリフの刻みや、カタルシスに満ちた爆発的な疾走感といったスラッシュ・メタルのエッセンスを大幅回復。特に切迫感を煽り倒す③や7分に迫る長尺をダイナミックに畳み掛ける④は、リフ/リード両面においてキレキレなロッキー・ジョージのGがスラッシャーの血を騒がす逸品。と同時にウリ・ロートをリスペクトする彼氏らしく、②では泣きのメロディをエモーショナルに奏でて懐の深さを披露してくれています。
SUICIDAL TENDENCIESのカタログの中ではスルーされがちな作品ですが、個人的には愛して止まない一作。EPながらアルバム・サイズの満足感が味わえますよ。


TORCH - Fireraiser - Pain ★★★ (2022-07-28 00:09:53)

気持ちブルース・ディッキンソン似の声質のVoと
泣きのメロディを奏でるGを活かしてジックリ
ドラマティックに盛り上がっていくアルバム屈指の名曲。
ラストで激走に転じるパートにはメタル魂が燃え上がりますよ。


TORCH - Fireraiser ★★★ (2022-07-26 23:41:38)

北欧メタル・シーンの第一波に属するスウェーデンの5人組TORCHが'84年に発表した5曲入りデビューEP。彼らが80年代に残したカタログは、いずれ甲乙つけ難いダメジャケによって彩られていましたが、本作のイラストもまた実に味わい深い出来栄え(ビルの谷間からひょっこり顔を覗かせる謎生物という脱力感を誘う構図の破壊力よ)。TORCHなんてありふれたバンド名にも関わらず、一目見た瞬間「ああ、スウェーデンのTORCHだ」と確信できるので、ここまで徹底されればもはや立派な個性と言えるのではあるまいか。
それはともかく。内容の方は後の1st『暗黒への脱出』と作風を同じくする(EUROPEブレイク以前の北欧の多くのHMバンドがそうであったように)、NWOBHMの流れを汲む無骨なパワー・メタルをプレイ。北欧メタルと聞いて想起される美旋律や透明感、繊細さとは清々しいくらい無縁なれど、凡百のバンドとは明らかに一線を画すだけのクオリティが、男臭い声質で歌いまくるVo、楽器陣のタイトなパフォーマンス、そして楽曲のカッコ良さには確かに宿っていて、流石METAL BLADE RECORDSを通じてアメリカ盤が発売されたのは伊達じゃないと感心させられますよ。
まぁイモっぽさが漂ってくるのは疑いようのない事実ながら、これだけ美味いイモならそれとて悪口には当たらず。特にストレートに飛ばしまくる疾走ナンバー②から、憂いを帯びてハードかつドラマティックに盛り上がっていく③へと繋がる流れなんて、TORCHの魅力がしかと刻み込まれた本作のハイライト。
『暗黒~』にピンとた方なら、押さえておいて損はない一作じゃないでしょうか。


DESTRUCTION - Sentence of Death - Total Desaster ★★★ (2022-07-22 00:42:19)

イントロで焦らしてから自棄っぱちな爆走へと転じる
DESTRUCTION初期の名曲。正直音は悪いし、ドラミングは
グチャグチャですが、アバタもエクボで、ずっと聴いてると
段々このドラムが楽曲が放つカオスな雰囲気を盛り上げているように
感じられてくるという。鋭利なリフに弾きまくりのソロまで
マイクのGは既に頭抜けたセンスが迸っています。


DESTRUCTION - Sentence of Death ★★★ (2022-07-20 23:21:13)

以前、誰のインタビューだったか記憶が定かじゃないのですが(ニッケ・アンダーソンだったかな)、「今聴き直すと音質や技術面にチープな部分も目立つ80年代スラッシュ・メタル作品をそれでも愛さずにはいられないのは、バンドの爪先立ちの姿が生々しく記録されているからだ」的な受け答えをしているのを読んで、なるほどなぁと物凄く納得した覚えがありまして。要するに予算とか、テクニックとか、センスとか、高く掲げられた理想の自分達に少しでも近付こうと懸命に背伸びする姿が、危なっかしくも目が離せない魅力を放つのだと。
その言に則れば、DESTRUCTIONが’84年に発表したこのデビューEPがマニアから熱烈に愛されるのもさもありなん。個人的に彼らの最高傑作といえば『RELEASE FROM AGONY』が真っ先に思い浮かぶんですが、あちらが王者としての風格漂わす作風だったのに対し、初期衝動に突き動かされて荒々しく前のめりにはっちゃけるこちらは、ラフな音質や、さほど複雑なことを要求されてるわけじゃないのに息も絶え絶えというか、「必至に食らいついてる」感溢れるトミーのドラムの危なっかしさを筆頭に、まさしくプルップルに爪先立ち全開。
とはいえ、前述した通りそうしたスリリングさも今となってはグッとくる魅力の一つ。何より鼓膜を引っ掻く鋭角的かつトリッキーなリフを刻み、流麗なメロディを要所で流し込むマイクのGプレイは、既に他の誰でもないDESTRUCTIONならではの個性確立を大きく後押ししてくれていますよ。(勿論シュミーアの狂気に満ちたシャウトVoも)
まかり間違ってもDESTRUCITON入門盤に薦めようとは思いませんが、でも名曲②④を始め、ダイヤの原石としてのポテンシャルは十二分に提示されている1枚かと。


HAWAII - The Natives Are Restless - Beg for Mercy ★★★ (2022-07-20 00:13:14)

歯切れ良く刻まれるGリフに哀愁を帯びたメロディ等、
尖った部分はないけど中庸な魅力を放つミッド・チューン。
ドラマティックに構築されたGソロは、東洋的なメロディも
顔を覗かせたりと、マーティのセンス(とテクニック)が
存分に発揮された素晴らしい仕上がりとなっています。


HAWAII - The Natives Are Restless ★★★ (2022-07-18 22:45:45)

元MEGADETHのマーティン・フリードマンや、VICIOUS RUMORSの初代Voとして知られるゲイリー・セント・ピアーが在籍する等、ハワイ出身のHMバンドとしてはトップクラスの認知度を誇っている(んじゃないかと思う)、その名もまんまなHAWAIIが’84年に発表した2ndフル・アルバム。ちなみに今作で歌っているのはゲイリーではなく、エドワード・ポール・デイなる御仁です。
自らの出自をアピールするかの如く、本編は地元民謡“ALOHA OE”の長閑なメロディからスタート。そんな「気分は常磐ハワイアンセンター」なぼんやりとした空気を破壊的なGリフがバリバリと引き裂いてパワーメタル・ソング①が猛然と走り始める冒頭で掴みはOK。尤も、ゴリゴリのハード・ナンバーはこれぐらいで、あくまで本作の基調となるのは、NWOBHMからの影響を伺わせるヘヴィ・メタリックなエッジと、わめき型のVoが歌うキャッチーなコーラス、厚めに敷かれたボーカル・ハーモニー、抜けの良い躍動感といったアメリカのバンドらしさを併せ持つ初期型LAメタル・スタイルなのですが。
かように、いっそ典型的とも言えそうなサウンドにHAWAII独自の味わいをもたらしてくれているのが、マーティのテクニカルかつメロディアスなGプレイであり、また既に健在な彼のオリエンタルなメロディに対する拘りぶり。特に哀愁を帯びたメロディと、ドラマティックに構築されたGソロが絶品の彩りを加える④や、“さくらさくら”を“OMICCHAN NO UTA”と題してカヴァーしている⑧は聴き応え十分の名曲に仕上がっていますよ。
気合漲るパワー・サウンドに満腹になれる1枚。ま、ちょっと胃にもたれるかもですが(笑)


EXUMER - Fire & Damnation - I Dare You ★★★ (2022-07-15 00:30:07)

猛烈なリフの刻みとダークな雰囲気が初期作を彷彿とさせる
・・・と思ったら、2nd『RISING FROM THE SEA』収録曲の
リメイクだったという。でもカッコイイですよ。


EXUMER - Fire & Damnation ★★★ (2022-07-13 23:54:07)

『北斗の拳』と『マッドマックス』と『13日の金曜日』をゴタ混ぜにしたようなマスコット・キャラと、オフロードを力尽くで踏破するモンスタートラックの如きスラッシュ・サウンドが強烈なインパクトを放った1st『POSSESSED BY FIRE』(’86年)が、今もマニア筋から熱狂的に支持されるドイツのEXUMERが'12年に発表した復活作。通算3作目。
アルバム・デビューから間もなくバンドを去った中心メンバー、メム・フォン・シュタイン(B、Vo)がラインナップに復帰していることもあって、怪作『POSSESSED~』の再来に期待が高まりましたが、キャリアを重ね安定感を獲得した演奏といい、「キ」印成分控えめのシャウトVoといい、強引な展開が整理されストレートに疾走する楽曲といい、本作で披露されているのは、まぁビックリするぐらいに普通のスラッシュ・メタル。丸大ハンバーグばりに《ポンコツでもいい。ワンパクに育って欲しい》と念願していたスラッシャー諸兄がこれ聴いて嘆息する気持ちも分からんではないのですが、でも80年代のあの時期のEXUMERだからこそ生み出し得た『POSSESSED~』を狙ってもう一度作るのなんてほぼ無理…つか不可能な所業ですわな。(翌年リリースの2ndですら既に作風が変化していたわけで)
なので、アレはアレ/コレはコレと切り分けて接しさえすれば、スピード・ナンバーの連打で畳み掛ける本作だって決して退屈な内容ではなく、むしろ良質なスラッシュ・アルバムとして楽しめるのではないかと。猛烈なリフの刻みと欧州風味のダークネスを纏って突っ走る⑨のカッコ良さなんてなかなかにグッときます。
まだEXUMERを未聴の方は、何なら本作を入門盤にするのだって有りだと思いますよ。(で遡って1stを聴くと)


CRISIX - Full HD - Beast ★★★ (2022-07-13 00:03:46)

切迫感を煽るGリフ、機動力に富むリズムが
合唱を誘うコーラスを伴って小気味良く駆け巡る
CRISIXというバンドの強みが最大限に発揮されたスラッシュ・ナンバー。


CRISIX - Full HD ★★★ (2022-07-12 00:39:08)

順調にアルバム・リリースを重ね、'19年には来日公演の初ステージを踏む等、着実に経験値を積み上げているCRISIXが、コロナ禍を乗り越えて'22年に発表した5thアルバム。
4th『AGAINST THE ODDS』は、彼らのカタログの中で初めて明確に試行錯誤を伺わせる内容でしたが、その後EXODUS、VIO-LENCE、FORBIDDEN、EVILDEAD、DEMOLITION HAMMER等々、80年代の米スラッシュ・シーンを語る上で欠かすことのできない諸先輩方への熱いリスペクトを込めたカヴァー・アルバム『AMERICAN THRASH』を制作して自分達のルーツを見つめ直す機会を得たことで、本作においては再びギアをトップに入れ直し、切れ味鋭い強襲型スラッシュ・メタル路線へと軌道修正を図っています。
刻んで刻んで刻みまくるGリフ、歯切れ良くハキハキと突っ走るリズム、キャッチーなギャング・コーラスとが一体となって駆け巡る④⑦⑪辺りにはCRISIXの魅力が分かり易く詰め込まれていますし、「かめはめ波ー!」のシャウトと共に激走を開始する⑧なんかも、“SHONEN FIST”なる曲名共々、変わることなく迸り続けるバンドの漫画愛が確認できて嬉しい限りですよ。
中にはクリーンVoを組み込む等、モダンなアレンジが施された楽曲もあったりしますが、それらに関しても基調となっているのは飽くまでストレートなスラッシュ・メタル。息せき切って目まぐるしく畳み込む⑥は、新たな試みと従来の持ち味とが違和感なく溶け合った本作のハイライトたる名曲に仕上がっているんじゃないかと。
スペイン産スラッシャー筆頭の地位はまだまだ揺るぎないことが確認できる充実作です。


TANKARD - A Girl Called Cerveza - Not One Day Dead (But One Day Mad) ★★★ (2022-07-08 01:04:52)

'82年の結成から、VORTEX→AVENGER→TANKARDへの改名、
90年代のメタル冬の時代すら踏破して、路線変更も解散もなく
現在に至るまで歩み続けるTANKARDの、スラッシュ・メタル・バンドとしての
プライドと覚悟の程が綴られた歌詞と、何より歯切れ良く劇的に疾走する
楽曲自体のカッコ良さに痺れずにはいられない名曲。


TANKARD - A Girl Called Cerveza - Witchhunt 2.0 ★★★ (2022-07-08 00:52:35)

飲めや騒げやの賑々しさよりも、硬質な切迫感とキレ味の
鋭さを伴って突っ走る、本編中最もスラッシュ・メタル色を
濃厚に漂わせたスピード・ナンバー。メロディックに駆け巡る
Gソロもカッコイイ。


TANKARD - A Girl Called Cerveza ★★★ (2022-07-06 23:09:37)

既に解散済みのバンド、あるいはそこから復活を遂げたバンドを神格化する一方、一度も解散せず地道に活動を継続しているバンドに対しては「あ、まだやってたんだ」と雑な扱いをしがちで、我ながらこれはいかんと自戒する今日この頃。本稿の主役たるドイツのTANKARDもその筆頭バンドの一つですが、’12年発表のこの15thアルバムは、彼らが歩みを止めることなく着実に積み上げてきたベテランの凄味がガッツリ刻まれた仕上がり。
「ドイツの大酒飲み軍団」的な愉快なイメージで愛される彼らなれど、実のところ本編に託されているのは、緊迫感を伴って畳み掛けるシリアスなスピード/スラッシュ・メタル・サウンドであり、ザクザクと切っ先鋭く刻まれるリフ、性急に突っ走るリズム、適度にメロディもなぞって歌うシャウトVo、そして欧州風味のウェットな旋律を奏でるGからは、ファニーな(今だったらコンプラ的にアウトになりそうな)アートワークが醸し出す能天気な明るさは殆ど漂ってきません。
さりとて、堅苦しさ一辺倒に陥ってしまうこともなく、一緒に叫びたくなるキャッチーなコーラスが印象的な②、スラッシーなスピード感のみならず劇的に踊るGソロのカッコ良さも耳を捉える③、ドロ・ペッシュがゲストVoとして華を添える⑤、長年独スラッシュ・シーンを支え続けたバンドとしての自負が漲る⑥といった、キレキレな演奏、内に篭らない抜けの良さ、ロード生活で培ったであろう聴く者を無条件にノらせてしまう躍動感とを併せ持つ収録楽曲の数々には、TANKARDならではの親しみ易い個性が息衝いています。
「継続は力なり」という格言を体現するかのような力作ですよ。


VIO-LENCE - Let the World Burn - Screaming Always ★★★ (2022-07-06 00:30:01)

鋭くエッジの切り立ったGリフ、独特の切迫感で畳み掛けるリズム、
そして何よりショーン・キリアンがシャウトするサビ部分が
猛烈に「ああ、VIO-LENCEっぺー」となるスラッシュ・ナンバー。


WATCHTOWER - Control and Resistance ★★ (2022-07-05 01:19:58)

ボビー・ジャーゾンベクの弟で、超絶テクニカル・ギタリストのロン・ジャーゾンベクを中心に腕に覚えのある面子によって結成。後続のインテレクチュアル・スラッシュ・メタル勢に多大な影響を与え、DANGEROUS TOYSに加入するジェイソン・マクマスター、DON DOKKENへの参加で注目を集めたビリー・ホワイト等も在籍していたテキサス出身の4人組WATCHTOWERが'90年にNOISE RECORDSから発表した2ndアルバム。
当時「プログレッシブなスラッシュ・メタル」と聞いて、展開を積み重ねてドラマを醸成していくQUEENSRYCHE的なメロディアスで劇的な音を期待していたのですが、飛び出してきたのはジャズ/フュージョンをブーストさせたような、変拍子と複雑なリズム・パターンとトリッキーなフレーズがマシンガンの如く叩き込まれる奇天烈なサウンド。ロンのGプレイは流麗極まりないものの、哀愁や泣きの成分はほぼ皆無で、唯一、元HADESのアラン・テッチオ(Vo)のハイトーンは猛烈なHMテイストを発散していますが、全体としては一般受けする要素はほぼゼロ。というかそもそも一般受けなんて眼中にないスタイル。
当初は「複雑にするための複雑さ」にイマイチ乗れず、というかそれに関しては今も大差ないのですが、G、B、Ds、Voの各パートが「俺が」「いや俺が」とばかりに主役の座を巡って映画『アウトレイジ』ばりに仁義なきバトルを繰り広げる様は緊迫感に満ち溢れ、楽曲よりも、むしろ演者に集中するとより楽しめる類の作品であると最近になって気が付いた次第。キャッチコピーつけるなら《全員達人。》といったところか。
メタル者的には1stの方が取っ付き易いかな?尋常じゃないくらい音が悪いのですが。


SODOM - Genesis XIX - Genesis XIX ★★★ (2022-07-01 00:21:02)

ガリガリと刻まれるリフ、ゴリゴリと押し出して来るリズムとが
殺気を撒き散らしながら突っ走るスラッシュ・ナンバー。
不穏且つ大仰なイントロを経てスタートする前半は若干抑え気味で
中盤のひと展開を経てからのエンジン全開ぶりがまたカッコ良い。


CONTROL DENIED - The Fragile Art of Existence ★★★ (2022-06-27 23:22:44)

故チャック・シュルデナー(G)が「もっとオールドスクールなHMを追求したい」という己の欲求を解消するべく、DEATHとは別に立ち上げたバンドのデビュー作。’98年発表。
国内盤が出るものと思っていたのに、なぜか当時日本発売は見送られてしまい(チャック没後にボーナス・ディスクを加えた2枚組デラックス盤のリリースが実現)、もしや酷い内容なのか?メロパワ・メタルでも演っていたらどうしよう?いやでもそれはそれでスゲェ聴いてみたいか?等とグルグル考え込みつつ買い求めてみれば、スラッシーな猛進から、シートベルトが体にめり込むような急ハンドルに急制動、穏やかなクルーズ・モードから一転して再びアクセルを床まで踏み抜いての急加速…と、これがもし路上だったら一発アウトを食らうであろう危険運転っぷりで聴き手を振り回す、例えるならDEATHの最終作『THE SOUND OF PERSEVERANCE』を歌えるシンガーで録り直したようなスタイルのインテレクチュアルなHMアルバムに仕上がっていて、「流石!」と胸を撫で下ろした次第。
そもそも参加面子からして後期DEATHのメンバーがほぼそのままスライドし、そこに専任シンガーが加わっているだけなので、当然ちゃあ当然の成り行き。まぁ、なればこそチャックの狂えるシャウト不在が物足りなく感じられる場面もあるわけですが、彼のGは全編でテクニカルに狂い咲いてくれていますし、新Voだって金属質なハイピッチ・スクリームを駆使して歌いまくる実力者。
大きな可能性を感じさせてくれる1枚だっただけに、チャックの急逝により、これきりでその可能性が断ち切られてしまったことが残念でなりませんよ。


VIO-LENCE - Let the World Burn ★★★ (2022-06-23 23:34:19)

現MACHINE HEADのロブ・フリンらを輩出したことでも知られるVIO-LENCE。00年代に入って復活を遂げるも、散発的にライブを行う程度に留まっていた彼らが、フィル・ディメルがMACHINE HEADを脱退してVIO-LENCEに本腰を入れたことで活動が加速。’22年、遂に待望の新作リリースと相成りました。しかもギターの片割れが元OVERKILLのボビー・ガスタフソンというサプライズ人事まで引っ提げてのご帰還ですよ。
多少なりとも時流に影響された仕上がりだったVIO-LENCEの最終作『NOTHING TO GAIN』や、フィルのMACHINE HEADでのお仕事を踏まえると、出来栄えに関しては多少懐疑的にならざるを得なかったのが正直なところでしたが、聴いて吃驚、ショーン・キリアン(Vo)の切迫感を煽るシャウトといい、鼓膜を切り裂かんばかりにジャキジャキと刻まれるGリフの質感に、突っ込み気味に疾走するリズムといい、これが20年以上の不在期間を一瞬で飛び越えてしまう、紛うかたなきVIO-LENCE流スラッシュ・サウンドが全編に亘って炸裂しているじゃありませんか。例えば②なんて「1stや2ndアルバム収録曲を現編成でリメイクしました」と言われたら信じてしまいそうなぐらいの仕上がりですよ。
無論、現代的にアップデートされた音作りや、衝動性よりも重厚さの勝る楽器陣等、経年によってもたらされる変化も本編にはくっきりと刻まれていますが、全5曲というEPサイズのボリュームも奏功して、細かいこと考え込む前にスカッと走りきっているという塩梅。
来日公演のドタキャン騒動でミソが着いてしまった彼らですが、ここは是非ボビーを含む編成で来日して頂き、汚名を返上して欲しいところであります。


Evil Invaders - Shattering Reflection - Forgotten Memories ★★★ (2022-06-21 23:52:16)

EVIL INVADERSにとって初(?)のバラード。
といっても悲壮感を湛えて劇的な盛り上がりを呈する曲調に
甘さの類は皆無。Voもムーディに歌い上げたりはせず、
喉から血を吐くような激情シャウトで聴き手のハートを鷲掴んでくれます。


Evil Invaders - Shattering Reflection ★★★ (2022-06-20 23:15:27)

これまでに3度の来日公演を敢行する等、今やベルギーを代表するHMバンドへと成長を遂げた感のあるEVIL INVADERSが、プロデューサーにFLESHGOD APOCALYPSEのメンバーであるフランチェスコ・パオリとフランチェスコ・フェリーニを招聘してレコーディングを行い、'22年に発表した3rdフル・アルバム。
積極的なツアー攻勢と、折からの新型コロナウィルス感染症蔓延による世界中の混乱が重なって、前作リリースから5年ものブランクが空いてしまいましたが、ジョーのハイピッチ・スクリーム、カミソリGリフとタイトなリズムとが、一糸乱れぬ統制のもとで突っ走るテクニカルなスピード・メタル・サウンドは健在。その一方で、よりメロディックに歌うようになったVoといい、スピードは抑え気味にして、ダイナミズム演出にこれまで以上に気の払われた構成といい、前作あたりから顕著になった正統派HMスタイルへの接近も更に押し進められています。これについて「曲調の幅が広がった分、Voの力量不足が気になる」との指摘もあるようですが、確かに決してテクニカルなタイプではないものの、持てる力全てを振り絞るような熱唱ぶりには個人的には心動かされずにはいられませんし、特にバラード⑤における劇的な盛り上がりは彼の絶唱あったればこそじゃないかと。
インストの小曲と重厚なミッド・チューンが連続するため、やや尻すぼみな印象を受けてしまう本編ラストの流れに若干の疑問を感じつつも、切れ味鋭いスピード・ナンバーを要所に配して小気味よく畳み込む本編尺は、スッキリとタイトに40分台。新味とらしさがバランス良くブレンドされた、ブランクの影響を全く感じさせない快作です。


Exarsis - Sentenced to Life - ...Against My Fears ★★★ (2022-06-17 00:45:07)

ムーディなインスト・ナンバー“THE DRUG”をイントロ代わりに
スタート。メロディアスな前半はミドル・テンポで抑え気味ながら、
中盤からは血管切れそうな勢いでシャウトをひり出すVo及び全楽器が
アクセルべた踏みで猛加速。スラッシュ魂にボッと炎を点火してくれます。


Exarsis - Sentenced to Life ★★★ (2022-06-16 00:30:24)

作を重ねても落ち着く気配が全然ない、メタル馬鹿っぽさを漲らせながら全力疾走を続けるギリシャのEXARSISが、こっちが知らぬ間にリリースしていた5thアルバム(’20年発表)。いやマジでいつの間に出てた?
このCD不況の折、無事国内盤が発売されただけでも寿ぐべきこととはいえ、解説もついてないソリッド過ぎる仕様はそりゃないぜと。なので、かつてSUICIDAL ANGELSへと去った筈のクリス・T(G)がしれっとバンドに出戻った理由については不明のままなれど(脱退以降も両者は良好な関係を保っていたようですが)、一聴してすぐに分かるのは、鼓膜をつんざくハイピッチVo、手数多めに押し込んでくるリフ&リズムを軸としたサウンドのけたたましさには微塵の変化もないこと。
キャリアを積んだスラッシュ・メタル・バンドにとってスピード・ダウンは避け難い宿命みたいなものとはいえ、彼らの場合、アッパーなテンションとドタバタ忙しない疾走感はそのままに、Voが歌うメロディと、楽曲を彩る劇的なツインGハーモニーをこれまで以上に増量することで、ストレートなスラッシュ・メタルから、EXCITER辺りに通じるスピード・メタル・スタイルへと自然にシフト・チェンジを果たしています。
挨拶代わりにOPからブッ飛ばす①②に始まり、ムーディなインスト・ナンバー⑥から破れかぶれな激走へと転じる⑦を経て、メロディックなツインGに先導される形で突っ走ってアルバムを締め括る⑪に至るまで、ほぼスピード・ナンバー一色に塗り固めれた本編を聴くにつけ「上手いこと年齢を重ねてるなぁ」(老成という意味ではなく)と感心させられる1枚。


SATAN - Earth Infernal - Luciferic ★★★ (2022-06-14 23:21:25)

スピード・ナンバーだって当然素晴らしいのですが、
煮え切らない憂いがモヤ~っと霧のようにまとわりつく
このメロディアスなミドル・チューンが醸し出す
SATANらしさにも大いにグッとくるものあり。


SATAN - Earth Infernal ★★★ (2022-06-13 23:40:29)

イギリス全土のロックダウン、新型コロナウィルスに感染したサウンド・エンジニアが危篤状態に陥ったり(後に無事回復)、メンバーの負傷やレコーディング・システムのクラッシュ等々、山盛りに重なった災難を乗り越えてSATANが'22年に発表した8thアルバム。
結果的に前作から4年のブランクが空いてしまったものの、不動のラインナップは健在。お馴染みエリラン・カールトンの手による死神ジャケットをフィーチュアし、ブライアン・ロスのニヒルなVoと、切れ味鋭く斬り込むスティーヴ・ラムゼイ&ラス・ティッピンズ鉄壁のツイン・リードを乗せて、グレアム・イングリッシュ、ショーン・テイラーのリズム隊が突っ込み気味に駆け巡るSATAN流HMサウンドには今回も微塵の変化も見受けられません。
「変化なし」というとネガティブなイメージを抱く場合もありますが、SATANに関しては完全なる誉め言葉。ミュージシャンたるもの経年による嗜好/技量の変化と無縁ではいられませんが、復活前と復活後のサウンドにギャップを感じさせず、改名や解散期間を挟んで尚、ここまで80年代から地続きの音を出し続けるバンドは寧ろ尊敬に値するというもの。あと本作を聴いていて実感したのは、アナログなラフさを残したプロダクションがSATANらしさの創出に大きく貢献している点で、コロナに倒れたエンジニアの回復を待つために、バンドがわざわざレコーディング作業を遅らせたのも納得できるというものですよ。
頭とケツを〆るスピード・ナンバー①⑨から、いかにも英国産な憂いを帯びた⑥、重厚に本編を盛り上げる⑩に至るまで、SATANの帰還を力強く宣言する力作に仕上がっています。コロナが収束し、一日も早く来日公演が実現することを願って止みません。


OSANNA - Milano Calibro 9 ★★★ (2022-06-08 23:57:21)

普段プログレッシブ・ロックはそんなに興味を持ってチェックしているジャンルではないのですが、NEW TROLLSの『CONCERTO GROSSO 』に感激して以来、イタリア産のバンドに関してはついつい食指をそそられてしまい、特に「哀愁」「メロトロン」といったキーワードを売り文句にされてしまうと、パブロフの犬状態でヨダレが溢れ出してしまいます。
イタリア・プログレ・シーンの大御所OSANNAが'74年に映画『ミラノ・カリブロ9』のサントラ盤として制作した本作には、前述の『CONCERTO GROSS』レコーディングに多大な貢献を果たした音楽監督ルイス・エンリケス・バカロフが参加しており「それもう絶対に最高のヤツじゃん」と、アルバムの存在を知った瞬間に慌てて買いに走りましたよ。そして実際に最高だったという。
「静」の魅力で聴き手の涙を搾り取った『CONCERTO~』(厳密にいえば違うのですが、そこを説明しようとすると長くなるので割愛)に対し、本作はKING CRIMSONからの影響を伺わせるヘヴィかつアグレッシブなバンド・セクションと、バカロフが手掛けた濃厚な哀愁を纏って奏でられるオーケストラ・セクションとが、時に真っ向ぶつかり合い、時にドラマティックに融合し、全10楽章で構成された40分以上に及ぶ大作を緊張感を途切れさせることなく語りきる「動」の魅力が肝。特に“テーマ”と題された②では本編の魅力を凝縮させた泣きのメロディが炸裂していて辛抱たまらん!と。
映画のサントラという変則的な作りですし、OSANNAの代表作なら『PALEPOLI』の名前が真っ先に思い浮かびますが、本作も見かけたら是非チェックして頂きたい1枚であります。


SANTANA - Marathon - Stay (Beside Me) ★★★ (2022-06-08 00:25:05)

ラテンロックらしい躍動感溢れる曲調といい、張りのあるハイトーンVoが
歌い上げるキャッチーなメロディといい、梅雨のジメジメを吹っ飛ばしてくれる
ザ・夏!な雰囲気漂う爽快なポップ・チューン。


SANTANA - Marathon ★★★ (2022-06-07 00:18:36)

HR/HMファンからは、JOURNEYのニール・ショーンがかつて在籍していたバンドとして認知を得る、カルロス・サンタナ(G)率いるSANTANAが'79年に発表した12thアルバム。
新たにGIANT等での活動で知られるアラン・パスカ(Key)が加入。またプロデューサーにはFOREIGNERとの仕事で名を上げたキース・オルセン&デヴィッド・デボーのコンビを起用する人事からも明らかな通り、ここではSANTANAならではのラテン・ロックを基軸としつつ、そこにAOR/産業ロック・テイストも大量投下した売れ線(当時)サウンドを志向。何も彼らがこれを演らんでも…と思う向きもありましょうが、キャッチーなメロディが軽快に弾む曲調がBOSTON辺りを彷彿とさせる④や、思わずステップを踏みたくなるポップかつリズミカルな⑩等は、従来の持ち味と新味が上手いこと折り合いをつけた秀逸な出来栄えを誇っていますし、新Voアレックス・リジャーウッドの伸びやかな歌声もこの路線にぴったりとマッチしています。何より、いくらポップさを強調しようとも強烈な「気」は隠しようがないサンタナのGが存在感を放つ以上、ありがちな内容になんざ仕上がりっこないわけで。勿論、巧者揃いの面子が実力を遺憾なく発揮したスリリングな②、本編の幕引き役を担う随一のハード・ナンバー⑪といった楽曲のカッコ良さも格別です。
メンバー自ら「経済的に潤いたくて作った」と発言する等、いわゆる低迷期の作品としてあまり顧みられる機会に恵まれず、まかり間違ってもSANTANA入門盤にお薦めしようとは思わないものの、でも個人的にはついつい聴き直してしまうお気に入りの1枚。代表作を一通り聴き終えた後、もしまだお財布に余裕があるようだったら本作もいかがでしょうか?


KELLY KEELING - Mind Radio - No Man's Land ★★★ (2022-06-03 00:55:40)

エッジの効いた曲調と、哀愁のメロディが絶妙なハーモニーを奏でる
「流石アレッサンドロ・デル・ヴェッキオの仕事!」
と膝を打たずにはいられないメロディック・ロック・チューン。
バラード“LOVE WILL TEAR US APART”からこの曲へと繋がる流れは
間違いなくアルバムのハイライトですよ。


KELLY KEELING - Mind Radio - Love Will Tear Us Apart ★★★ (2022-06-03 00:51:16)

楽曲自体の素晴らしさはもとより、
哀愁のメロディを情感たっぷり込めて熱唱する
ケリー・キーリングの歌ウマさんぶりに
何よりも瞠目させられるバラード。


KELLY KEELING - Mind Radio ★★★ (2022-06-02 00:21:54)

ケリー・ケイギー(NIGHT RANGER)とかケリー・ハンセン(FOREIGNER)とか、似たような名前のミュージシャンがいて時々混乱するのですが、本作はこれまでマイケル・シェンカー、ジョン・サイクス、ジョン・ノーラム、ヴィニー・ムーアといった錚々たるギタリスト達とコラボって来た実績の持ち主である、ケリー・キーリング(Vo)が'08年にFRONTIERS RECORDSから発表した2枚目のソロ・アルバム。
…の割にイマイチこの人の名前が覚えられないのは(己の記憶力の拙さはひとまず棚上げ)、やはり「ケリー・キーリングといえばこのバンド/この仕事」的な決定打に欠けているせいじゃないかと思うわけですが、にも関わらずあちこちから声が掛かるのは実力が認められているからこそ。本作で聴ける見事な歌声は「そりゃソロ・アルバム作るよね」と納得するレベルであり、しかも楽曲提供をアレッサンドロ・デル・ヴェッキオ、ロバート・サール、BATON ROUGE時代の盟友ジャック・ポンティらが行っているとくれば、質の高さは約束されたも同然という。
正直、ブルージーでソウルフルなタイプのこの人の声質は、本作で披露されているようなメロディアスHRサウンドにはやや重く、本来醸し出されるべきサウンドの爽やかさを若干スポイルしている感が無きにしも非ずなれど、ジックリ盛り上がっていくバラード⑦や、ハードな曲調に哀愁のメロディが載る⑧といった逸品は、曲自体の素晴らしさと、それを更に盛り立てるケリーの熱唱とが相俟って、本編のハイライトたるに相応しい輝きを放っています。
残念ながら近年はソロ・アルバムは発表してくれていないようですが、同じ座組で2枚でも3枚でも聴いてみたいと思わされる力作ですよ。


FIND ME - Lightning in a Bottle - Far from Over (feat. Vince DiCola) ★★★ (2022-05-31 01:33:14)

オリジナルはロッキーの弟ことフランク・スタローンが歌った
映画『ステイン・アライヴ』の主題歌で、それを本家から作曲担当の
ヴィンス・デコーラ(Key)を招いてカヴァー。この名曲に目を付けただけで
星3つは確定ですが、スピーディな曲調に派手なKeyをフィーチュアした
HR調のアレンジがばっちり決まった秀逸なカヴァー・バージョンに仕上がっています。
他のオリジナル収録曲を完全に霞ませちゃってる点は痛し痒しか。


FIND ME - Lightning in a Bottle ★★★ (2022-05-27 01:38:29)

早いもので企画立ち上げから既に10年を数える、ロビー・ラ・ブランク(Vo)を中心とするメロディアスHRプロジェクトFIND MEが、メモリアル・イヤーたる'22年に発表した4thアルバム。(ちなみに今回もアートワークや表題には「天使」を絡めて来るものと思いきや、蓋を開けてみればほぼ無関係なネタで「あら?」と肩透かしを食いましたよ)
スタート当初から寸分たがわぬ…どころか、初めてのソロ・アルバムのリリース等の経験を経ることで、張り/艶/伸びと年齢を重ねて益々パワーアップしている感すら漂うロビーのグンバツな歌声から、プロデュースを担うダニエル・フローレスを筆頭に、FROINTIERS RECORDSお抱えの腕利きソングライター/ミュージシャン勢が作曲と演奏の両面を漏れなくバックアップする体制に至るまで、これまでの勝利の方程式を手堅く踏襲した作りゆえ、ぶっちゃけ取り立てて目新しさはなく、感想を書いても過去3枚と同じような感じになってしまうのですが、その安定感こそ(自分含め)FIND MEファンは求めているわけで、別に悪いこっちゃないですわな。
特筆すべき点としては、映画『ステイン・アライヴ』のテーマ曲②を本家からヴィンス・デコーラをゲストに招いてカヴァーしており、これがまたHR調のアレンジがばっちり決まった実に秀逸な出来栄え。というか秀逸過ぎて本編の他の楽曲の存在を霞ませてしまっている気がしなくもないのですが、ともあれ素晴らしい仕上がりなので是非一聴をお薦め致します。
FIND MEが今後10年も戦えることを確信するに十分な1枚。できればロビー・ラ・ブランクにはBLANC FACESの再始動もお願いしたいところではありますが…。


Robbie La Blanc - Double Trouble - Only Human ★★★ (2022-05-25 01:25:27)

躍動感溢れる曲調にキャッチーなメロディ、
それをパワフルに歌い上げる張りのある
ロビー・ラ・ブランクのVo、的確に曲を盛り立てるGソロ…と、
本編に対する期待感を煽る「掴み役」として
申し分のない働きをこなすハードポップ・ナンバー。


Robbie La Blanc - Double Trouble ★★★ (2022-05-24 01:01:59)

「最近音沙汰ないけど、どうしてんのかなぁ」と思っていたロビー・ラ・ブランクが、’21年に初めてのソロ・アルバムを発表してくれました。どころか今年はFIND MEでも新作をリリースしてくれて、しかもこれがまたなかなかの出来栄えだったりと、ここ数年の不在を埋め合わせるようなアクティブな活動ぶりが頼もしいじゃありませんか。まぁ個人的にはBLANC FACESの帰還が一番嬉しいのですが、そっちは気長に待ちましょうや。
プロデューサーとして、お馴染みトミー・デナンダー、FMのスティーヴ・オーヴァーランド、それにESCAPE MUSICのカリ・タラクが名を連ね、トミーとスティーヴに関しては作曲とパフォーマンスの両面でロビーをバックアップ。なので本作で披露されているのは当然の様にFIND MEやBLANC FACESを彷彿とさせるメロディアスHR。というかあれらを更にAOR/産業ロック方向へ寄せたようなポップさゆえ、HR/HMを期待するとチャカポコしたアレンジに肩透かしを食らうかもですが、ロビーの歌を堪能する分には何の不足もない…どころか、もろ手を挙げて歓迎したくなる充実作ですよ。
OPナンバーに相応しいキャッチーさでメロハー愛好家のハートをガッチリ掴む①から、TOTO的なアレンジが飛び出すスリリングさと洗練を感じさせる⑥のような楽曲における張りのあるハイトーンVoから、エモーショナルな歌い回しでリスナーを酔わせる⑨のようなタイプの楽曲に至るまで、衰え知らずの熱唱に惹き込まれていくうちに、あれよあれよと本編を聴き終えてしまえる1枚。
このクオリティで日本盤リリースなしってのはいかがなもんでしょう。


ROOM EXPERIENCE - Room Experience - Queen of Every Heart ★★★ (2022-05-19 23:54:58)

心地良く躍動する曲調を、上手い歌と哀愁のメロディ、
それに泣きのギターが彩るアルバム前半のハイライト。
本作の魅力を分かり易く体現してくれている名曲です。


ROOM EXPERIENCE - Room Experience ★★★ (2022-05-19 01:40:33)

80年代のBON JOVI(とEUROPE)をこよなく愛するイタリア人Key奏者ジャンルカ・フィルモが、地元でBON JOVIファンクラブの会合に参加した際に知己を得たWHEELS OF FIREのダヴィデ・バルビエリと共に立ち上げたメロディアスHRプロジェクトROOM EXPERIENCEのデビュー作。(’16年発表)
エクスペリエンスなんて名前だけ聞くと難解なプログレ・メタルでも演っていそうな感じですが、発売元がFRONTIERS RECORDSで、ミキシング&マスタリングはアレッサンドロ・デル・ヴェッキオが担当。そして彼の伝手でシンガーにはデヴィッド・リードマン(PINK CREAM 69)を起用し、更にゲストとしてスヴェン・ラーソン(STREET TALK)やイヴァン・ゴンザレス(91 SUITE)らが華を添える…という鉄壁の布陣からもお分かり頂ける通り、本作に託されているのは華やかなKeyを適宜取り入れ、キャッチーなメロディをマイルドに歌い上げる上手いVoと、美しいハーモニーとに彩られた哀愁のメロハー・サウンド。サビメロの絶妙な展開やサックスの効果的な導入が喝采ものの②、80年代なら大ヒットしていてもおかしくないフック盛り盛りのバラード③、泣きに満ち溢れたアルバムのハイライト④といった名曲の数々からは、これがデビュー作とは思えぬ堂々たる貫禄を感じずにはいられませんよ。(というか実際確固たるキャリアを積み上げてきた人たちが集まっているんですけどね)
国内盤が未発売となってしまったため、未だに聴けていない2nd『ANOTHER TIME AND PLACE』(’20年)も早くチェックせんといかんよなぁ。


SATIN - It's About Time - I'll Never Let You Down ★★★ (2022-05-18 01:30:54)

トム・サティン本人も認める通り、スタジアムで大合唱が
巻き起こる様が目に浮かぶようなコーラス・ワークが
デズモンド・チャイルドを彷彿とさせるハードポップ・チューン。
モノマネ云々以前に、似たタッチを狙ってこれだけフックの効いた
楽曲を書けてしまう手腕に感心させられます。


SATIN - It's About Time ★★★ (2022-05-17 00:05:28)

本名トミー・ニルセン名義で、兄弟のロニー・ニルセンと組んだポップ・ロック・デュオPEGASUSとしても活動しているというノルウェー出身のシンガー/ソングライター、トム・サティン。本作は彼が自らの名を冠して立ち上げたソロ・プロジェクトSATINの2ndアルバムにあたる作品。
プロデュース、作詞作曲から、Vo含む全ての楽器パートも自らこなすマルチ・アーティストの面目躍如なレコーディング・スタイルがメロディ愛好家の間で評判を呼んだ1st『SATIN』(’14年)同様なら、暖かみを感じさせるVoによって歌われる、ポップかつ抒情味に溢れたメロハー・サウンドに関しても前作のスタイルを基本的には踏襲。無論何から何まで全く同じってことはなく、OPナンバー①のイントロで歯切れ良く刻まれるリフ&リズムが主張する通り、「ギターとドラムの存在を強調した(本人談)」音作りの下、本編はよりハードにロックしている仕上がりで、曲によってはダンサブルなビートも取り入れる等、曲作りの幅も意欲的に広げにかかっていることが伺えます。
とはいえ、核となるキャッチーなメロディの魅力は依然として健在ゆえ、散漫な印象はまるでなし。掴みとして抜群の威力を発揮する哀愁のハードポップ①、80年代風味満点のコーラスに顔が綻ぶ②、清涼感を振りまきながら爽やかに弾む⑧といった秀逸な名曲群のみならず、これらの楽曲におけるトム・サティンのギタリストとしての仕事ぶりも賞賛に値しますよ。
未だに新作リリースを待ち続けているのですが、日本での所属レーベル閉鎖に伴い、活動の足取りが途切れてしまったことが惜しまれてならないメロハーの逸品です。


MR. BIG(UK) - Sweet Silence - Throne Second Amendment ★★★ (2022-05-13 00:49:17)

邦題は“永遠の光”。
QUEEN風のポップかつカラフルな楽曲から
ツイン・ドラムが暴れ倒すHRナンバーまで
多彩な楽曲が並ぶ本作ですが、この曲は
エピック・メタルばりの重厚感でアルバムを
ドラマティックに締め括ってくれます。
前曲“輝ける王座”とセットでお楽しみください。


MR. BIG(UK) - Sweet Silence ★★★ (2022-05-12 00:06:28)

Vo兼Gのディッケンを中心に結成され、ヨーロッパ地下ポルノの帝王からバンド名の着想を得て、アメリカの4人組よりも一足お先にMR. BIGを名乗ったイギリス出身4人組が、レコード会社やマスコミの猛プッシュを受けて'75年に発表した1stアルバム。
邦題『甘美のハード・ロッカー』に相応しい、甘くポップなメロディ/キャッチーなコーラス/美麗なハーモニー/ストーリー性を感じさせる曲展開等々…聴いた誰もがQUEENやSWEETからの影響を確信するであろうメロディアス・ロックを基本に、そこに濁声とクリーンというタイプの異なるツインVo、それに2人のドラマーを擁する珍しい編成を生かしたアグレッシブなHRのエキサイトメントから、プログレ、グラム・ロック、カントリー、ワルツ、唐突な中華風メロディ、果てはエピック・メタルばりのドラマ性に至るまで、様々なエッセンスをぶち込んだサウンドは多彩にしてカラフルな仕上がり。次に何が飛び出してくるのかとワクワクさせられますよ。またいずれの楽曲も親しみ易いポップ性を兼ね備えているのに、笑顔の裏でこっそり舌を出しているような、どこか人を食ったシニカルさが漂ってくる辺りがイギリスのバンドっぽいなぁと。
胸躍るダイナミックな曲展開でアルバムのOPを飾る①、しんみりと美しい哀愁のバラード⑤、一転してツイン・ドラムスが暴れ出すハードネス全開なアルバム表題曲⑥、そして本編を荘厳に締め括る⑪⑫のメドレーといった、QUEENフォロワーの枠に収まりきらぬ才気迸る楽曲の魅力は、むしろ現在の方が正当な評価が得られるのではないかと。
90年代の初CD化以来ほったらかしなので、ぼちぼちリイシューしてくれないものか。


SWEET - Off the Record - She Gimme Lovin' ★★★ (2022-05-11 00:41:27)

コーラス・ワークの華麗さはそのままに、
“SET ME FREE”を上回るアグレッションで畳み掛ける
「プレHMナンバー」といった趣きの疾走ナンバー。
'77年でこの勢いには目を瞠るものがありますよ。


SATIN - Satin ★★★ (2022-05-09 23:03:28)

ノルウェー出身のマルチ・アーティスト、トム・サティンが作詞/作曲/プロデュースのみならず、Voを含む全てのパートを自らこなす形でレコーディングを行い'14年に発表した、自身の名を冠する――文字通りの――ソロ・プロジェクトのデビュー作。
アルコ&ピースの平子祐希似のヒゲ面のあんちゃん(トム・サティンご本人)のご尊顔をデカデカと戴くアートワークは、こちらの購買意欲を刺激する仕上がりとは言い難いものがありますが、そこを乗り越えて再生ボタンを押しさえすれば、1曲目のイントロからフック効きまくりの美メロ/哀メロとキャッチーなハーモニーが溢れ出し、時に爽やかに、時に憂いを湛えて紡がれるハイクオリティなハードポップ・サウンドによって忘我の境地へと誘われること請け合い。何せ、ほぼ趣味に近い形で制作されたため当初は配信限定だったところ、評判が評判を呼び正式にCDでのリリースが実現、更には日本盤の発売にまで漕ぎ着けてしてしまったのですから、その一連の流れからも本作のクオリティの確かさが分かろうというものですよ。
当然アルバムに捨て曲は見当たりませんが、生まれたばかりの息子に捧げられている心温まるバラード②、非凡なアレンジ・センスがメロディの魅力をより一層引き立てる④、歌だけでなくGの腕前にもグッとくるアップテンポのロック・チューン⑨といった楽曲は、本作の主人公たるトム・サティンの才能の豊かさを特に強く印象付けてくれる名曲ではないかと。
次作『IT’S ABOUT TIME』(’17年)と併せて、メロディ愛好家ならチェックして損はない1枚ですよ。


NEW TROLLS - Concerto Grosso N 3 ★★★ (2022-05-05 00:13:28)

名盤『CONCERTO GROSS』が未だ愛され続けるイタリア・プログレ界のベテランNEW TROLLS。60年代からキャリアを重ね、時代毎に音楽性が変化している上、しかも途中でバンドが二つに分裂してそれぞれアルバムを発表したかと思えば、再びメンバーが合流して新作を作ったりといった複雑な活動経緯を辿ってきたバンドだけに、美味しい部分だけつまみ食いしてるような我が身にはとても全容など把握しようもないのですが、とはいえ彼らが映画音楽に腕を振るうルイス・エンリケス・バカロフとタッグを組んで、正式に『CONCERTO GROSS 3』を発表したとあっては、そりゃチェックしないわけにゃいきますまい!と。
強烈な泣きやプログレ・テイストが薄まり、ポップな歌モノ風味が強まっている点に不満を表明する向きもあるようですが、そもそも『~2』だってかなりポップ方向に振られた仕上がりでしたし、名盤『~1』にしても、よりユーロ・プログレ風味が強まる4曲目以降はあまり聴き直した覚えがないプログレ弱者としては、本作の親しみ易さはむしろ「買い」。勿論少々薄味の味付けに物足りなさを感じる場面も無きにしも非ずとはいえ、イタリアのバンドらしい泣きのメロディは要所で息衝いていて、壮大なOPナンバー①に始まり、アコギが映える②、HRとクラシックが劇的な融合を果たした③、甘美なストリングスの調べに目が細まる④、クラシカルな小曲⑤からファンファーレを配した⑥へ…と流麗に展開していく本編には忘我の境地で聴き惚れてしまいますよ。特に憂いを帯びたメロディとオペラVoの組み合わせにグッとくる⑪は個人的にアルバムのハイライトとして一聴をお薦めしたい名曲。
『CONCERTO GROSS』の名を冠するに相応しい品質を備えた1枚ですよ。


DOWNES BRAIDE ASSOCIATION - Skyscraper Souls ★★★ (2022-05-03 01:25:15)

現在はASIAとYESで二足の草鞋を履くジェフ・ダウンズ(Key)と、ポップ・ミュージック・シーンで数々の音楽賞を受賞してきた売れっ子プロデューサー/マルチ・インストゥルメンタリストのクリス・ブレイド(Vo)。この二人によって立ち上げられたプロジェクトDBA(DOWNES BRAIDE ASSOCIATIONの略)が、XTCのアンディ・パートリッジ、元SOFT CELLのマーク・アーモンドを始めとする多彩なゲストを迎えてレコーディングを行い、'17年に発表した3rdアルバム。
前2作では打ち込みやプログラミングで補っていた楽器パートに専任ミュージシャンを配し、よりバンド感とプログレッシブ・ロック志向を強調した仕上がりが目指されたという本作は、序曲①に続いていきなり18分越えの大作ナンバー②で幕が上がるという大胆な構成が取られていますが、主役は飽くまでポップかつキャッチーなメロディであり、例え長尺であろうとも曲展開やアレンジに難解さやまどろっこしさは皆無。
特に、ロジャー・ディーン先生が手掛けた美麗なアートワークをそのまま音に移し替えたような、水彩画の如き淡い抒情メロディに包まれた④や、憂いを帯びた旋律と美しいハーモニーが心地良く駆け抜けていく⑥、暖かみに溢れた歌声とサックスの音色がストレスで荒れた心をしっとりと潤してくれるバラード⑦辺りは、このユニットの真骨頂というべき楽曲。
ジェフ・ダウンズ主導期のASIAが楽しめる方であれば、間違いなく心の友になり得るクオリティが備わった力作ですよ。


MACALPINE - Eyes of the World ★★★ (2022-04-29 01:31:29)

速弾きギタリストへのバッシングの強まりや、HR/HMシーン全体の潮流の変化等を受けて、ある者はブルーズ・ブームに乗っかり、またある者はバンド組閣に動き…といった具合に多くのソロ・ギタリスト達が路線変更を模索していた90年代初頭。「速弾き四天王」の一人として勇名を馳せたトニー・マカパインも例外ではなく、新たにパーマネントなメンバーを集めてバンド形態でレコーディングを行うと、名義もMACAPINEとよりバンドっぽく変更して、’90年に本作を発表しました。
それに合わせ音楽性の方も、テクニカルな楽器陣がバチバチ火花を散らすネオクラシカルHMから、伸びやかなVoを主役に据え、Keyがポップな彩りを加えるメロハー・サウンドへと大胆に刷新(恒例のピアノ・ソロ曲もなし)。端っこに位置取りするトニーが控えめに映り込むアー写のイメージそのままに、彼のGも歌の引き立て役に徹している印象です。
当サイトにおける獲得ポイント数が如実に物語る通り、お世辞にも高評価を得ているとは言い難い本作ですが、聴き込むほどに、いやこれが案外楽しめる出来栄えであることに気付かされるという。ポップ&キャッチーな曲調で今作における変身ぶりを聴き手に印象付けるOPナンバー①、シンガーの伸びやかな歌の上手さも光る哀愁のバラード⑥、夏の終わりをメロウに告げる⑨、ツボを押さえたギターが、(比較的)ハードな曲調の中でスパークする⑦⑪等、彼のメロディ・センスも作曲センスも、そして勿論ギター・テクニックも、くすむことなくしっかり健在であることが伝わってくる内容であることは間違いありません。
真っ先にチェックすべき代表作とは言えないまでも、顧みられることなく放置されたままになっているのは勿体なさ過ぎる1枚ですよ。


Zaneta - Tales from the Sun ★★★ (2022-04-26 00:11:37)

FRONTIERS RECRODSの隆盛により、00年代に入ってからはメロハー・バンドの一大産地に成長を遂げたイタリア(それとも元々メロハーが盛り上がっていたタイミングでFRONTIERS RECRODSが設立されたのか?どっちだろ)から新たに登場した4人組、ZANETAが'16年に発表した1stアルバム。
SHRAPNEL RECORDSからソロ・デビューも飾っているというテクニカル・ギタリスト、ファブリツィオ・レオをメンバーに擁していることでもマニアから注目を集めた彼らですが、本作で実践しているのはSHRAPNELメタル路線ではなく、あくまでメロディを最優先するAOR/産業ロック・サウンド。ファブリツィオも随所でセンスの良さを感じさせるフレーズを閃かせつつ、決して目立ち過ぎることなく「歌」を引き立てる立場に自らを置き続けています。(そこに物足りなさを感じる向きもありましょうが)
Voに関しては、時折線の細さを頼りなく感じる場面もあれど、そこはキャッチーなメロディ・センスでしっかりとカバー。特に解放感を持つサビメロが秀逸なOPナンバー①を手始めに、先行シングルとして披露された③、抒情的なピアノ・アレンジにグッとくる⑥や、ヴァイオリンをフィーチュアしてポップに躍動する⑦、仄かに土の香りを漂わすヴァースから爽やかなコーラスへの転調が効果的な⑪といった楽曲からは、新人バンドとは思えぬ安定感すら感じられますよ。(実際メンバーは結構キャリアのある人たちだったりするのですが…)
輸入盤市場で好セールスを記録した結果、国内盤リリースが実現したのも納得のクオリティを誇る1枚。所属レーベルの店終いで早々に廃盤となってしまったことが惜しまれますね。


SWEET - A ★★★ (2022-04-21 00:50:23)

80年代半ばに盛り上がった再評価の機運に乗じ復活を果たしたSWEETでしたが、その後まもなく四分五裂。一時はメンバー各自がリーダーを務める4つのSWEETが乱立するというカオスな状況を招くも(それぞれの活動時期には多少のズレあり)、アルバム・リリースまで漕ぎ着けたのは、このアンディ・スコット(G)が率いたSWEETのみでした。
本作はANDY SCOTT’S SWEET名義で’93年に発表された1stアルバムで、レコーディング・メンバーには元LIONHEART~MSGのスティーヴ・マン(B)らが名を連ねています。分裂劇の悪印象が相俟って「コレジャナイ感」を背負わされたのか、発売当時、雑誌レビューでは30点台を食らうなど評価はケチョンケチョン。でも時間を置いて冷静になってから聴き直せば、親しみ易いポップなメロディといい、ライブ映えする躍動感に満ちた曲調やコーラス・ワークといい、いやこれ全然悪い出来じゃないっすよ。
爽快感と高揚感を伴うSWEETらしさ満点のOPナンバー①を皮切りに、カヴァー曲とは思えぬハマリっぷりで疾走する②、憂いを帯びたドラマティックなバラード⑩辺りを聴けば、アンディがファンが期待する70年代SWEET像への回帰を強く意識していることは明らかであり、特に哀愁のメロディに彩られたキャッチーな⑪なんて絶品じゃありませんか。
かつて「悪魔のハーモニー」と評された空中戦の如く飛び交うボーカル・ハーモニーが控えめな点や、収録曲の出来栄えに若干ムラがあることも本作の小粒感に拍車を掛けますが、とはいえ、過小評価に晒され廃盤状態のまま放置しておくのは勿体なさ過ぎるクオリティを有した1枚であることは、断固として主張しておきたいところであります。


SWEET - Off the Record ★★★ (2022-04-19 01:22:28)

キャッチーなメロディ・ライン、ブライアン・コノリーの個性的なハスキー・ボイス、それらを重厚かつ立体的に包み込む高音ボーカル・ハーモニーといった、SWEETをSWEETたらしめる要素はそのままに、お仕着せのアイドル・ロック・グループというイメージを払拭するべく、アルバム・リリースを重ねる毎に自作曲の増強とハードネスの底上げに努めてきた彼らが行き着いた、SWEETのカタログの中で最もHRテイストが色濃く打ち出されていると言われる’75年発表の5thアルバム。邦題は『明日なき青春』。
メンバー自らの手によるプロデュースという点からも、バンドが演りたいことを全て本作に詰め込んだことが伝わってきます。シングル・カットされ欧州圏でスマッシュ・ヒットを飛ばしたOPナンバー①、後にGAMMA RAYがカヴァーしたことで知られる②のような、QUEENの「天使のハーモニー」に対して当時「悪魔のハーモニー」と評されたという、単に華美なだけでなく、目まぐるしく飛び交う圧の強さがいっそ攻撃的にすら感じられるボーカル・ハーモニーが活かされたアンセミックな楽曲、一緒に叫びたくなるリフレインを有してキャッチーに駆け抜ける⑦なんかも大変素晴らしいですが、個人的にガツンとヤられたのはスピード・ナンバーの⑨。70年代半ばにしてこのエネルギー、この切れ味。アレンジは洗練されていますが、それこそJUDAS PRIESTの“EXCITER”にだって匹敵する名曲…ってのは見当違いの誉め方過でしょうかね?いやでもカッコイイですよ。
こうしたHR路線は、しかしセールス的にはイマイチな結果に終わり、SWEETは次作以降、新たにメロハー路線へと舵を切っていくこととなります。


FM - Metropolis - Still the Fight Goes On ★★★ (2022-04-15 00:18:56)

アルバムを締め括る7分越えの大作ナンバー。
ラス曲に相応しい重厚感と、視界が開けていくような
爽やかさが同居した感動的な名曲。
スティーヴ・オーヴァーランド絶品の歌声が
五臓六腑に染み渡るでぇ。


FM - Metropolis - Over You ★★★ (2022-04-15 00:11:53)

ライブ映えする軽快なノリの良さと、スティーヴ・オーヴァーランドの
美声が映える哀愁のメロディ、そしてFMのトレードマークたる美しい
ボーカル・ハーモニーに彩られた(印象的なツインGのハモリも◎)
アルバム中盤のハイライト・ナンバー。
表題曲でもあるインストの小曲“METROPOLIS”とセットでお楽しみください。


FM - Metropolis ★★★ (2022-04-14 01:12:29)

5th『PARPHERANALIA』(’96年)を最後に活動停止状態に陥るも、復活を遂げた00年代以降は良作を連発して現在まで好調な活動を継続する英国のFM。『バットマン』のパロディ的なアートワークが目印の本作は、再始動の狼煙となった’10年発表の6thアルバムです。
FMの熱心なファンとは言い難い身ゆえ、当時は「あれ?いつの間にか復活してたんだ」ぐらいの認識であり、本作も発売から数年後に中古で購入したぐらいだったのですが、いやこれが本当に素晴らしい出来栄え。FMと言ったらブルージーな味わいが個性と思っておりましたが、当然そうしたエッセンスを端々に散りばめつつも、本編においてそれ以上に印象に残るのはメロディの泣きや哀愁といった部分。
シンプルな音作りのもと、やたら無骨に刻まれる1曲目のGリフが聴こえて来た時は一瞬「げっ」と嫌な予感を覚えたものの、聴き進めるに従ってそれが杞憂であったことがハッキリします。1、2曲目と様子見モードだった聴き手を一気に惹き込む哀切に満ちた③、ライブ映えするキャッチネスと美しいハーモニーを併せ持った⑥、ピート・ジャップの泣きを湛えたGが胸を打つ⑫、アルバムを雄大かつ感動的に締め括る⑬といった強力なキメ曲が要所を引き締め、全14曲収録という長尺もダレさせませんし、それらをエモーショナルに彩るスティーヴ・オーヴァーランドの絶品の歌声も健在。FM解散以降も絶えず様々なバンド/プロジェクトに参加して自慢の歌声を披露してきた御仁ゆえ、当然と言えば当然の話ですが。
「FMって地味なブルーズ・ロック・バンドでしょ?」との先入観を持っている方に是非聴いて頂きたい1枚。復活作として文句なしの出来栄えですよ。


SKAGARACK - Skagarack ★★★ (2022-04-12 00:57:28)

トーベン・シュミット(Vo、G)を中心に結成され、実在する海峡からバンド名をとってSKAGARACK(スカガラックと読む)を名乗ったデンマーク出身の5人組が'86年に発表した、「地球平面説」を題材にしたような美麗なアートワークも印象に残っている1stアルバム。帯付の国内盤CDは中古市場では5桁で取引されている超レア盤だったので、'22年に再発が実現したと聞いた時は小躍りしながらCD屋へ走ってしまいましたよ。しかも価格はたった1,100円(税込)と来たもんだ。こりゃあ快挙ですよ。
北欧出身とはいえ、彼らが聴かせてくれるのはアメリカナイズされたハードポップ。キラキラのKeyとキャッチーなメロディに彩られたサウンドを聴いて思い出すのは、同時代のBON JOVIやEUROPE、あるいはTREATといったところでしょうか。雑誌レビューでは「砂糖のロック」と評され辛めの点数を頂戴していた彼らのサウンドですが、甘党からしてみりゃ別にそんなの悪口にも当らず、むしろPVも作られたリーダー・トラック②のポップさに「甘ーい!」と舌鼓をうつぐらいのもの。一方でBON JOVIならまず演らないであろう、重厚なムードを纏った④⑦のようなヒンヤリとした耳触りのメロディをフィーチュアしたハード・ナンバー(飽くまで彼らにしてはですが)もあったりと、収録曲のバラエティは存外に豊か。キャッチーな高揚感と躍動感、北欧のバンドならではのメロディ・センスが見事な合致を見た⑤なんて、アルバムのハイライトに相応しい名曲じゃないかと。
折角なのでこの機会に多くの人に触れて頂きたい1枚。こうなったら2nd『HUNGRY FOR HEAVEN』や、トーベン・シュミットのソロの再発も是非お願いしたいところ。


BRIAN MCDONALD - Voyage ★★★ (2022-04-07 00:29:18)

80年代から活動するミネソタ州出身のシンガー/ソングライター、ブライアン・マクドナルドが、旧知の間柄である盟友レブ・ビーチ(G)をパートナーに迎えてレコーディングを行い、'03年にリリースした3rdソロ・アルバム。
一作目がBRIAN MACDONALD GROUP、二作目がBRIAN MACDONALD、そして本作はBRIAN MACDONALD PROJECTと、アルバム毎に発表名義が若干異なっており、それに伴って音楽性の方も微妙に変化。重厚なボーカル・ハーモニーからキャッチーでポップなメロディに至るまで、好事家から「ひとりLEPS」と評されるほどDEF LEPPARD風味満点のメロディック・ロックを演っていた前作に対し、今回は基本路線はそのままに、爽快な曲調を煌びやかなKeyが彩る①、人懐っこいメロディがELOを彷彿とさせる②、バイオリンの調べが軽やかに踊る③といった楽曲(あと美麗なアートワーク)が物語る通り、瑞々しいKeyのフィーチュア度を上げ、アレンジをより繊細に作り込む等、全体的にプログレ/ハード・テイスト――例えるなら『暗黒への曳航』を発表した頃のKANSASに通じる―—の増量が図られた仕上がり。中でも、ブライアンが映画音楽から影響を告白するアルバム表題曲⑥や、アーサー王伝説を下敷きにした⑪、哀愁のメロディを纏ってドライヴするロックチューン⑪等、ポップ・センスとドラマ性が絶妙なバランスで共存する楽曲は、特に印象に残る出来栄えを誇っています。
流石に全15曲は詰め込みが過ぎるものの、それでも決してダレを感じさせない優れた作曲センスに舌を巻かずにはいられませんて。個人的に、この人のソロでは本作が一番好きかな。


BABYLON A.D. - Revelation Highway ★★★ (2022-03-31 00:28:45)

80年代後期にデビューを飾り、映画『ロボコップ2』のサントラへの参加等が話題にのぼるも、時代の逆風には抗いきれず3枚のアルバムを残して解散したベイエリア出身のHRバンド、BABYLONE A.D.。本作は彼らがオリジナル・ラインナップで復活を果たして、'17年に発表した再結成第一弾アルバム(通算4作目)です。
昔から中古盤屋の常連アルバムとして彼らの過去作はしょっちゅう目にしていたものの実際に音を聴いたことはなく、「再結成キタコレ」と大喜びするような思い入れは皆無。いやしかし本作は、バンド名の響きからして「どうせスリージーなロックンロールでも演ってるんでしょ?」というこちらの舐めくさった先入観を、元巨人軍・山倉和博ばりの意外性で引っ繰り返してくれるかなりの力作じゃありませんか。
OPナンバー①こそ、当初のイメージ通りのワイルドなHRナンバーながら、間奏パートのメロディアスなGソロはしっかりと耳を捉えますし、後に続く楽曲も、デレク・デイヴィス(Vo)のブランクをまるで感じさせない熱いシャウトと、楽器陣の骨太な演奏、そしていかにも大陸的な乾いた哀愁に彩られたメロディとが心地良くマッチ。中でもボーナストラックとしてアコースティック・バージョンが収録されていることからも、バンド側が本作のリーダー・トラックに位置付けていることが伺える④は泣きに満ちた名曲ですよ。
実は前身時代にレコーディングされた楽曲のセルフ・リメイクが混在している等、純粋な意味での新作とは言い難いかもしれませんが、BABYLONE A.D.の過去のカタログを改めてチェックしたくなるのには十分な1枚かと。


ROBERT BERRY - The Dividing Line ★★★ (2022-03-29 01:14:38)

EL&Pの再結成にしくじったキース・エマーソンとカール・パーマーが新たに立ち上げたバンド3(THREE)、フロントマンのマックス・ベーコンと衝突し、折角レコーディングに参加した2ndアルバムがお蔵入りの憂き目に遭ったGTR、あるいはサミー・ヘイガー人脈に連なるミュージシャン達により結成されたALLIANCE等々…。関わったバンドが今ひとつパッとした実績を残せず、敗戦処理投手的な役回りを担うことが多いせいか、長いキャリアに見合うだけの十分な評価を得られていないように感じられるシンガー/ソングライター、ロバート・ベリーが、ALLIANCEのメンバーとFRONTIERS RECORDSのバックアップを得て制作、’08年に発表したソロ名義では3枚目となるアルバム。
音楽性の方は、これまでの彼の活動遍歴をバランス良く総括するような、ポップでメロディアス、曲によっては仄かにプログレ・ハード風のアレンジも織り交ぜたメロハー・サウンド。派手さはないものの、年齢を重ねても衰えを感じさせない(どころか益々深みを増している)歌声と相俟って、聴くほどにジワジワと沁み込んでくる仕上がりとなっています。特に、エッジの効いた躍動感溢れる曲調にロバートの張りのある歌唱が載った③、アルバムのハイライトに推したい高揚感を醸し出す⑧、エモーショナルな哀愁を湛えたバラード⑨、変拍子も取り入れてアルバム中最も高いプログレ指数をマークする壮大なラスト・ナンバー⑩辺りは、本作の魅力を分かり易く伝えてくれる逸品ですよ。
一見地味でも繰り返し聴き込むと徐々にその魅力に惹き込まれるという、ロバート・ベリーというミュージシャンのキャラクターを体現するかのような1枚。(それはそれで失礼か)


JAG WIRE - Made in Heaven - Takin' the City ★★★ (2022-03-23 00:10:03)

鋭角的に刻まれるGリフ、単なる彩りの域を超えてGとバトルを
繰り広げるKey、Voがアグレッシブに歌う憂いを帯びたメロディといい
名曲と名高い“ON THE RUN”にも匹敵するカッコ良さを誇る疾走ナンバー。
むしろこっちの方が良いという人がいても不思議じゃないぐらいですよ。


JAG WIRE - Made in Heaven - On the Run ★★★ (2022-03-23 00:05:44)

歯切れ良く刻まれるリフ&リズムに乗せて、憂いを帯びたメロディが
駆け抜ける様は、この曲が「LAメタルの隠れた名曲」扱いされているのも
納得のカッコ良さ。オルガンをフィーチュアしてより欧州HMからの
影響が色濃く薫るSINバージョンも乙な味わいなので、
聴き比べてみるのも一興かと。


JAG WIRE - Made in Heaven ★★★ (2022-03-22 00:57:11)

W.A.S.P.やSTEELER、更にはWARLORD、HELLIONといったバンドを渡り歩いた、LAメタル・シーンの旅ガラス(?)リック・フォックスにより結成されたSINでしたが、バンド運営を巡る対立が火種となってクーデターが発生。リーダーのリックを放逐して主導権を奪取したその他のメンバーが、バンド名をJAG WIREと改めて'86年に発表した1stアルバムがこちらとなります。尤も、名実ともにバンドの支柱だったリックを欠いた活動は長続きせず、これが最初で最後の作品になってしまったわけですが…。
そうしたゴタゴタの末に生み落とされた本作なれど、内容はメチャ強力。歯切れ良く刻まれるGリフ、躍動感溢れるリズム、フラッシーなGプレイに、コーラスが厚く盛られたサビメロではVoが曲名をシャウトする等、サウンドは典型的な初期型LAメタル・スタイルを標榜しつつも、本編に「レッツ・パーティ!」的な能天気さは薄め。むしろKeyをアクセントに用い、程好く翳りを帯びたメロディが散りばめられた楽曲は欧州HM勢からの影響を伺わせる場面もしばしばで、その筆頭がSIN時代にもシングルとして発表されている、LAメタルの隠れた名曲と評判の疾走ナンバー“ON THE RUN”ではないかと。この必殺の名曲を皮切りに、泣きを湛えたドラマティックなバラード“MADE IN HEAVEN”、KeyとGが火花を散らしながらスリリングに駆け抜ける“TAKEIN’ THE CITY”といった逸品が次々に畳み掛けてくるアルバム後半のカッコ良さは只事じゃありませんよ。(ちなみにオリジナル盤と再発盤とでは曲順が異なっている)
「幻の名盤」扱いが決して過大評価ではなかったと心底納得できる1枚。再発に感謝です。


SHOK PARIS - Concrete Killers - The Heat and the Fire ★★★ (2022-03-19 02:01:49)

ツインGがハモリ倒すイントロだけで名曲の風格は十分。
顔も声もクドめのVoですが、この曲のような憂いを帯びて
ドラマティックなメロディを歌わせれば、それも全て長所へと転化。
曲調はJUDAS PRIESTからの影響を伺わせる硬派さな一方、
コーラスは厚めに盛ってキャッチーな魅力も漂わせる辺りは
アメリカのバンドならでは。


SHOK PARIS - Concrete Killers ★★★ (2022-03-16 22:04:07)

ヘタウマなメンバーの似顔絵がB級感を醸し出すジャケットだけ見ると「本当にメジャー作品?」と首を捻りたくなりますが、前作で目出度くメジャー・レーベルとの契約をゲットしたSHOK PARISが'89年に発表し、日本デビュー作となった(そして残念ながら最終作ともなった)3rdアルバム。
二井原実とグラハム・ボネットを足して、ロニー・J・ディオで割ったような特濃な声質の持ち主であるシンガーは今回もパワフルに歌いまくっていますが、劇的なメロディを歌えばその魅力を十二分に引き立ててくれるこの声、逆にフック不足だと暑苦しい声質が聴き手の疲労感を倍増させる諸刃の剣でもあり、特に曲調はスピーディながら、アメリカン・ドリームを高らかに歌い上げる歌詞とメロディ・ラインは結構大味で捉えどころがないOPナンバー①などは、そうした彼氏の弱点がもろに露呈してしまっています。
そんなわけで立ち上がり早々猛烈な不安感に襲われる本作でしたが、2曲目以降は泣きのGが映えるヘヴィ・バラード③から、ドスの効いたカッコ良さに「こっちをOPナンバーにすれば良かったのに」と思わされる⑪に至るまで、熱血VoとツインGを存分に活かした、アメリカのバンドらしからぬ硬派な正統派HMサウンドを追及。メジャー・リリースと言えども一切日和ることのない姿勢が頼もしいったらありゃしません。勇壮かつ劇的な②はSHOK PARIS屈指の名曲の一つではないでしょうか。
以前はメジャー流通ということで一番入手が容易だったのですが、1stと2ndが再発された現在では、逆に最も手に入れにくいアルバムになってしまったことが惜しまれる1枚です。


SAM ALEX - Pieces - Chance to Win ★★★ (2022-03-15 02:09:17)

ドイツ産らしい重厚な演奏と、
キャッチーで伸びやかなサビメロがもたらす
爽快感のコントラストも鮮やかな
ボビー・アルトヴェイターの曲作り(とGの)の
手腕が冴える名曲です。


SAM ALEX - Pieces ★★★ (2022-03-11 00:44:35)

詳細は不明ながら、80年代からキャリアを積んでいたというドイツ人シンガー、サム・アレックスの日本デビュー作となった'04年発表のソロ・アルバム。
日本盤帯の惹句《ヴァレンシアを想起させる美しい容貌》に関しては、ジャケ写を見る限り議論の余地がありそうですが、内容の素晴らしさに関しては満場一致をみるところではないかと。それもそのはず、本作の制作を全面バックアップしているのはボビー・アルトヴェイターその人。マニアからはCROSSFIRE~OSTROGOTHのピーター・デ・ウィント(Vo)と組んだAFFIAR等の活動を通じて高評価を得るミュージシャンです。
ただ個人的に本作を購入する大きな動機となったのはROBBY VALENTINEの名曲“THE MAGIC BLEEZE”や、ノルウェーのメロハー・バンドRETURNの楽曲のカヴァーが収録されていることに興味を惹かれたからでした。サム・アレックスご本人による選曲なのかプロデューサー・チョイスなのかはわかりませんが、どちらにせよこのセンスは買いですよ。(他にもALPHAVILLEやULTRAVOXのカヴァーも収録)
エッジの効いたギター、抒情性を増幅するKey、そして主役たるサム・アレックスのパワフルな歌声に彩られたオリジナル楽曲のツボを押さえた完成度も「流石はボビー・アルトヴェイター」な安定ぶりで、特にピアノの隠し味も効いている爽快なメロディック・ロック・チューン③は、本作の旨みが凝縮されているかのような名曲。
これ以降お名前を見聞きしませんが、お元気であれば是非アルバム・リリースをお願いしたいところであります。


GROUNDBREAKER - Groundbreaker - The Days of Our Lives ★★★ (2022-03-09 00:51:37)

FMじゃまず演りそうもないアップテンポで爽快なHRナンバー。
こういうスポーティな楽曲を伸び伸びと歌い上げる
スティーヴ・オーヴァーランドのVoもかなり魅力的です。


GROUNDBREAKER - Groundbreaker ★★★ (2022-03-08 01:05:57)

ベテラン・シンガーと、お抱えの気鋭ミュージシャン/ソングライター達を組ませニュー・プロジェクトとして次々デビューさせるのがFRONTIERS RECORDSの得意技。今回白羽の矢が立ったのは、FMのスティーヴ・オーヴァーランド(Vo)、WORK OF ARTやW.E.Tでの活動で知られるロバート・サール(G)、そしてFRONTIERS RECORDS作品には欠かせないマルチプレイヤー、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ(Key)という顔触れ。
プロジェクト名はGROUNDBREAKER。名前だけ聞くとゴリゴリのパワーメタルでも演っていそうな感じですが、この座組であれば当然そんな筈もなく、’18年にリリースされた本デビュー作で披露されているのは、ポップで華やかなメロディアスHRサウンド。
面子が面子だけに完成度の高さは約束されたも同然で、その鉄壁の仕上がりに驚きや新鮮さは殆ど感じられないものの(むしろこの安定感こそが本作の魅力なわけで)、ただ一点だけ意外だったのは、スティーヴの持ち味であるブルージーなエッセンスがほぼほぼ排除されていること。本人も作曲には積極的に関与しているので、こうした作風はレーベルの意向を汲んだものと思われますが、透明感を湛えたAOR/産業ロック寄りの楽曲の数々を、流石の上手さで伸びやかに歌い上げるスティーヴのVoも乙なもの。特に躍動感溢れる曲調に爽やかなメロディが映えるアップテンポのロック・ナンバー③や⑩は、FMでは聴くことの出来ないタイプなので非常に新鮮で印象に残ります。
単発プロジェクトで終わるかと思いきや、'21年には2ndアルバムのリリースに漕ぎ着けており、そのことからも本作の評価の高さがお分かり頂けるのではないでしょうか。


KANE ROBERTS - Kane Roberts - Women on the Edge of Love ★★★ (2022-03-03 23:55:32)

共作者としてロビー・デュプリーの名前もクレジット。
キャッチーなコーラスが耳を捉える
洗練された哀愁のハードポップ・ナンバー。
肉体はオイルでテッカテカですが、手掛ける楽曲は
脂っこさとは無縁。耳にスッと沁み込んでくる
消化の良い名曲に仕上がっています。


KANE ROBERTS - Kane Roberts - Too Much (For Anyone to Touch) ★★★ (2022-03-03 23:45:28)

ゴリゴリにマッチョな外見とは裏腹に
哀愁を帯びたメロディから、キャッチーなコーラス、
美麗なボーカル・ハーモニー、練られたGソロに至るまで
各パーツが実に繊細に組み上げられている名曲。


KANE ROBERTS - Kane Roberts ★★★ (2022-03-03 01:31:42)

嘘か誠か、出演したライブハウスで客と乱闘を繰り広げていたら、偶然その場に居合わせたアリス・クーパーに気に入られ、そのまま彼のバンドの一員としてデビューを飾ることとなったという80年代感溢れるシンデレラ(にしてはゴツ過ぎますが)エピソードの持ち主、ROCK’N ROLL RAMBOことケイン・ロバーツが'86年に発表した1stソロ・アルバム。
「アサルト・ライフル魔改造ギターをドヤ顔で掲げる筋骨隆々な長髪マッチョ(ケイン本人)」というバカ負けするインパクト抜群のジャケットだけ見ると、「俺の武器はギター」とか言いながら物理的にギターで相手をブン殴っていそうな感じですが、実際にここで聴けるのは繊細な手つきでカッチリ組み立てられたメロディックHRサウンド。キャッチーなメロディに美しいボーカル・ハーモニー、そして構築感すら漂わすGプレイといい、見た目と託された音のギャップのデカさに二度ビックリですよ。
背中に鬼の顔を浮かび上がらせながらGを弾きまくる光景が思い浮かぶようなインスト・ナンバー④、ドスの効いたコーラスをフィーチュアして突撃する⑦といった、イメージ通りのパワーメタル・ナンバーを配しつつも、しかし本編のハイライトを飾るのは、ロビー・デュプリーとの共作曲②や、キメキメなコーラス・ワークがライブ映えする③、キャッチーな哀愁のメロハー⑨、クレジットにはキップ・ウィンガーの名前も見えるバラード⑩といった、ゴテゴテとした筋肉の鎧よりも、洗練されたスマートさの方が印象に残る楽曲の数々という。
長らく廃盤で入手困難な状態が続いていましたが、2nd『SAINTS AND SINNERS』(こちらも◎)と一緒に再発されましたので、是非とも一度はお手に取って頂きたい名盤です。


BITCH - The Bitch Is Back - Hot & Heavy ★★★ (2022-03-01 23:51:32)

勇ましくギャロップする曲調はIRON MAIDENからの影響も感じられたり。
ベッツィ姐さんの力強いVoを始め、群がるザコをワイルドに
蹴散らかすような気迫に満ちたパワー・チューン。


BITCH - The Bitch Is Back ★★★ (2022-02-28 23:54:35)

LAメタル・シーンが大きな盛り上がりをみせる最中、フロント・パーソンのベッツィ・ビッチ(Vo)のぎりぎりアウトなライブ・パフォーマンス(チンコに見立てたキャンディをペロペロ舐める等)の過激さで一部マニアから注目を集めた4人組、その名も直球勝負のBITCHが、しばしの沈黙期間を挟んで’87年に発表した2ndアルバム。
鞭とボンデージの女王様ルックで武装、「私の奴隷におなり!(BE MY SLAVE)」と迫り来るデビュー作に対し、今回のジャケットにはベッツィ姐さんの女性っぽさを強調した艶姿をフィーチュア。よりメタルバブル感強めの仕上がりが時代の変化を感じさせます。
このジャケット見て「ああ、キワモノね」と半目になる硬派なHR/HMリスナーもおられるかもしれませんが、ちょっと待った。彼女らが叩きつけて来るのは飽くまで芯の通った正統派HMサウンドであり、そこに媚や甘えは皆無。MOTORHEADばりの爆走感覚溢れるOPナンバー①や、IRON MAIDENからの影響をアメリカンな解釈で消化吸収したような勇壮かつパワフルな②、あるいはタイトルの元ネタであるエルトン・ジョンの“BITCH IS BACK”の狂騒的なカヴァー⑤といった楽曲を聴けば、伝説のコンピ盤『METAL MASSACRE』シリーズ第1弾に、METALLICAやARMORED SAINTらと肩を並べて参加してたのは伊達じゃないということがお分かり頂ける筈。特にアルバムのトリを飾るスピード・ナンバーにして、BITCHの代表曲として名高い⑨はスラッシュ・メタル・バンド顔負けのアグレッションを放つ名曲ですよ。
ベッツィ姐さんの「舐めたらいかんぜよ!」という啖呵が聞こえてきそうな1枚。


ONE DESIRE - Midnight Empire - Heroes ★★★ (2022-02-25 00:56:52)

煌めくような躍動感溢れる曲調と、
哀メロが溢れ出すサビメロのコントラストも絶妙で
アルバムで最も聴き直す頻度の高い名曲に仕上がっています。


ONE DESIRE - Midnight Empire ★★★ (2022-02-23 22:39:20)

若干15歳という、殆ど「少年」なメンバー達によって結成されたフィンランドのSTRUM AND DRANK。そのシンガーだったアンドレ・リンマンが同バンド解散後、新たにフロントマンとして参加したことで注目を集めた5人組ONE DESIREが、’20年に発表した2ndアルバム。
既に廃盤の1stアルバム(中古盤市場じゃ、キングから発売された日本盤に5桁のプレミアが付いていてビックリ)も大変素晴らしい内容でしたが、本作とてクオリティでは一歩も引けをとりません。元々プロデューサー業にも勤しむメンバーを中心に活動しているバンドだけあって、外部ライターの招聘に全く躊躇がなく、本作にはFIRST SIGNALやFIND ME等への関与で知られるソーレン・クロンクヴィストや、KAT-TUN、少女時代にも楽曲提供を行うトム・ジークマイヤー、CODE REDのウルリク・レンクヴィストら、手練れのソングライター勢が収録曲を持ち寄ってくれています。そりゃ逆立ちしたって出来の悪い作品にはなりようがありませんわな。憂いが溢れ出すサビメロが胸を打つOPナンバー①、キャッチーな曲調に哀メロが絡む⑥、ライブ映えしそうな高揚感に満ちた⑧なんて、アルバム・ハイライト級の名曲ですよ。
勿論、外部ライターに何から何までおんぶに抱っこということはなく、特にアンドレはシンガーとしてのみならず、秀逸な作曲センスをも如何なく発揮。彼が手掛けた④は職業ライター陣のペンによる楽曲と比べても聴き劣りしないクオリティを誇っています。
一作目の出来栄えがフロックでなかったことをしっかりと証明してくれた力作です。


VINCE DICOLA - Only Time Will Tell - Suffer the Children ★★★ (2022-02-23 01:22:17)

アルバムを締め括る8分以上に及ぶ大作ナンバー。
ヴィンス・ディコーラがプログレッシブ・ロックに捧げる
愛情の程が伺えますが、難関さよりも映画のサントラ的な
壮大さを前面に押し出し、メロディも叙情的でキャッチー。
あくまで親しみ易い仕上がりな辺りにも
この人の曲作りの拘りが見て取れます。


VINCE DICOLA - Only Time Will Tell - Miracles ★★★ (2022-02-23 01:11:01)

80年代に世に出ていたならば、映画やドラマの主題歌、あるいはCMソングに
起用されてきってヒットを飛ばしていたろうに・・・と思わずにはいられない
フックの効きまくったバラード。歌っているのはCHICAGOのジェイソン・シェフ。


VINCE DICOLA - Only Time Will Tell ★★★ (2022-02-21 22:23:39)

映画『ステイン・アライヴ』や『ロッキー4』のサントラに参加したことで、音楽シーンでの知名度を一気に上げたマルチ・アーティストのヴィンス・ディコーラが、長年にわたり様々なミュージシャンとコラボして作り溜めて来たマテリアルを取りまとめ、'21年にソロ名義で発表した作品。
ゲストVoとして招かれているスティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)、ボビー・キンボール(TOTO)、ジェイソン・シェフ(CHICAGO)、スタン・ブッシュetc…といった顔触れから、てっきり歌モノのロック・アルバムに仕上がっているものと思いきや、開幕を告げるOPナンバー①はなんとゴリゴリのプログレ・メタル・ナンバー。いきなり意表を突かれましたが、聞けば元々はプログレ畑でミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた方のようで、脇役に埋没せず、アレンジの要となって曲展開を引っ張るKeyのリード楽器ぶりや、アルバムを壮大に締め括る大作⑬のようなドラマティックな楽曲からは、彼がルーツ・ミュージックに寄せるリスペクトを窺い知ることが出来るのではないかと。
とはいえ本編の軸となるのはやはりメロハー路線の楽曲であり、特にバラード系の楽曲はどれも秀逸の出来栄え。世が世なら大ヒットは確実なハート・ウォーミングな③(Voはジェイソン・シェフ)、ボビー・キンボールがエモーショナルに歌い上げる⑦、幻に終わってしまったスティーヴ・ウォルシュとのプロジェクト用に書き上げられたという⑨なんか取り分け印象に残る仕上がり。
ベテラン・ミュージシャンの技前がしっかりと発揮された、次回作も期待したくなる充実作です。


MICHAEL BOLTON - The Hunger - You're All That I Need ★★★ (2022-02-17 22:37:18)

邦題は“君がすべて”。
プロデュースはジョナサン・ケインで、作曲はケイン、ニール・ショーンと
マイケル・ボルトンの共作。演奏もケイン、ショーン、ランディ・ジャクソン
というJOURNEY組が担当していることもあり、Keyによるイントロから
フラッシーなGソロ、華やかなコーラスに至るまで完全に
「マイケル・ボルトンが歌うJOURNEY」状態の名曲に仕上がっています。


MICHAEL BOLTON - The Hunger - Gina ★★★ (2022-02-17 22:31:48)

歯切れの良いギター、躍動感溢れるリズム、
その上で思わず一緒に歌いたくなるキャッチーな
メロディが踊る、本アルバムのハイライトに推したい
ハードポップの名曲です。


MICHAEL BOLTON - The Hunger ★★★ (2022-02-17 22:17:42)

マイケル・ボルトンといえば「バラードの帝王」としてポピュラー・ミュージック・シーンで高い評価と人気を誇るシンガー/ソングライターですが、ソロ・デビュー当時はBATHORYのクォーソンに先んじて《ひとりメタル》なるキャッチコピーを頂戴する等、比較的HR/HM寄りのスタイルを模索していました。
'87年発表のこの3rdソロ・アルバム(邦題『いざないの夜』)は、そうしたキャリアの一区切りとなった作品で、大ヒットを飛ばした次作以降は一気にAOR方面に踏み込んだ作風を追求していくこととなるのに対し、本作は盟友ブルース・キューリック、ジョー・リン・ターナー、エリック・マーティンといったゲストの顔触れからも明らかな通り、ぎりぎりロック・フィールドに留まったサウンドを披露してくれています。
オーティス・レディングのカヴァー②のようなソウル志向も既に垣間見せつつ、ボブ・ハリガンJr.との共作によるキャッチーで快活なハードポップ④はこの時期の彼ならではの名曲と言えますし、またニール・ショーンやランディ・ジャクソン、プロデューサーも兼任しているジョナサン・ケインといったJOURNEYのメンバーが、演奏/作曲の両面で関わった楽曲は、ほぼほぼ「マイケルの歌うJOURNEY」状態。エレピによるイントロからニールのフラッシーなGソロまで、どこをきってもまるでJOURNEYな⑦、ダイアン・ウォーレン印のドラマティックなバラード⑩辺りを聴くと、スティーヴ・ペリーの後任はこの人でも良かったんじゃね?と思わずにはいられないという。
ポップ・シンガーにゃ興味ねえとスルーするのはあまりに勿体ないメロハーの名盤ですよ。


CROWLEY - Evil Bride - Gate of Golden Dawn ★★★ (2022-02-16 00:37:31)

憂いを帯びたメロディがまとわりつくように妖しく舞い、
曲調のテンポアップに合わせて走り始めるケリ・ケリーの
Gソロが劇的に華を添える、アルバムのハイライト・ナンバーの一つ。


CROWLEY - Evil Bride ★★★ (2022-02-15 23:48:38)

名古屋が生んだ和製サタニック・メタルのレジェンド、CLOWLEY。再結成を実現し、今度こそ活動を軌道に乗せつつある彼らが'20年に発表した待望の1stフル・アルバム。
復活後のCROWLEYがこれまでにリリースしてきたのは、幻の名盤と化していたデビューEP『WHISPER OF THE EVIL』のリマスター再発だったり、過去の名曲の数々を現編成でリメイクしたセルフ・カヴァー曲集『NOCTURN』だったりと、ある程度クオリティが担保されている作品だったので購入に躊躇はなかったのですが、純然たる新作ともなると「伝説のバンドだけにもし退屈な出来栄えだったら目も当てられない…」と、購入に若干の尻込みを覚えてしまったのが正直なところ。ただ実際にトライしてみれば、うだうだ悩んでないでもっと早く聴けばよかったと、ホッと胸を撫で下ろす見事な力作に仕上がっていましたよ。
収録曲はどれもダークでシアトリカルな雰囲気を濃厚に漂わせつつ、「サタニック」の看板に囚われ過ぎることなく、ヘヴィ・メタリックなエッジと疾走感、憂いを帯びたメロディ、そして耳に残るキャッチネスも適度に兼備。アルバム表題曲に相応しいインパクトを放つ③、ゲスト参加のケリ・ケリーのGプレイが劇的な曲調に華を添える⑤、坂本英三時代のANTHEMが演っていても違和感なさそうな⑨(初期デモ収録曲のリメイク)等は、芝居がかったVoの歌唱と相俟って、縁日のカーニバルや見世物小屋の暗がりから、こちらに向かって笑顔で手招きしているような(?)妖しげな魅力を振りまいています。
楽曲のクオリティの高さに比べると、音作りに関しては若干の物足りなさを感じなくもないのですが、レジェンドの1stフル・アルバムとして文句のない出来栄えを誇る1枚。


ALIEN - Alien(3rd) - Song of a Renegade ★★★ (2022-02-11 01:37:01)

アコーディオンとマンドリン(なのか?)の奏でる
寂しげな抒情メロディが、STYXの名曲“BOAT ON THE RIVER”に
通じる詩情を漂わす名バラード。


ALIEN - Alien(3rd) - A World Full of Dreams ★★★ (2022-02-11 01:26:06)

透明感と憂いを湛えたメロディが心地良く駆け抜けていく
アルバム中最も北欧メタル・テイストが色濃く感じられる名曲。
こういうキメの1曲があると、アルバム全体に対する印象も良くなりますね。


ALIEN - Alien(3rd) ★★★ (2022-02-10 07:24:54)

アルバム2枚を残して活動を停止したトニー・ボルグ(G)率いるスウェーデンのALIENが、元MADISONのコニー・ペイン(B)らを新メンバーに加えて復活、’93年にセルフ・タイトルを冠して発表したカムバック作がこちら。通算3作目。
今回シンガーとして起用されたのは、オリジナル・メンバーのジム・ジッドヘッドでも、2nd『SIFTIN’ GEAR』で歌っていたピート・サンドベリでもなく、ダニエル・ザンゲル・ボルフなる日本ではほぼ無名の人物(結構キャリアはある模様)。それでも流石トニーのお眼鏡に適うだけあって歌唱力は上々で、ハイトーン系ではなく中音域をメインにじっくり歌い込むタイプゆえ、それに合わせて音楽性の方も、従来の北欧ハードポップならではのキラキラ感が後退し、曲によってはブルージーなテイストも盛り込む等、より洗練されたAOR/メロハー路線へと若干の軌道修正が図られています。(逆に今回の音楽性の変化にマッチするシンガーを選んだのかもしれませんが)
しっとりとスタートするOPナンバー①から早くも明らかな通り、トニーのフックを盛り込んだ作曲センスにもGプレイにもブランクは全く影を落としておらず、特に透明感を湛えた哀メロと、ライブ映えしそうな躍動感を併せ持って駆け抜けていく④や、美しいエレピが奏でるKeyリフも印象的なメロハー⑦、STYXの名曲“BOAT ON THE RIVER”に通じる詩情漂わすバラード⑧等は、「これぞALIEN」と膝を打たずにはいられない名曲に仕上がっています。
帰還の挨拶としてはまずは上々のクオリティを有する1枚ではないでしょうか。


Geff - Land of the Free - Land of the Free ★★★ (2022-02-09 07:18:58)

アルバム表題曲。歌うはヨラン・エドマン、迎えうつはイェンスとアンダースの
ヨハンソン兄弟という北欧メタル・ファンにとっては鉄壁の布陣。
冷気と憂いを孕んだ歌メロはまさにヨランのためにあつらえたような仕上がりで
イェンスの華麗な鍵盤捌きともども、グッとくるものあり。
ギタリスト、ラルフ・イェデスデットの確かな才能を伺わせる名曲です。


Geff - Land of the Free ★★★ (2022-02-08 01:21:16)

スウェーデン発の5人組プロジェクト、GEFF(ジェフ)が'06年にリリースした今のところ唯一のアルバム。
まず北欧メタル・ファン的には参加面子が食指をそそります。Voがヨラン・エドマン、Bにパー・スタディン、Dsはアンダース・ヨハンソンで、Keyにマッツ・オラウソン、そしてゲストはイェンス・ヨハンソンときたもんだ。元SILVER MOUNTAINのパーを除けばまるでイングヴェイのバンド被害者の会…もとい同窓会状態という。プロジェクト発起人である、肝心のラルフ・イェデステッド(G)のみ日本では全く無名のミュージシャンで、「いや君、名前ジェフじゃないんかい」ぐらいの感想しか思い浮かばないとはいえ、地道にキャリアを積み上げてきた御仁らしく、確かな曲作りのセンスをもってしてこの顔触れにマニアが寄せる期待にバッチリと応える、DEEP PURPLE~RAINBOWの流れを汲む北欧様式美HMサウンドをクリエイトしてくれています。
掴みに相応しい勇ましさとキャッチネスを併せ持って疾走するOPナンバー①、ハードな曲調に絡む流麗なピアノの調べが美しいアクセントとなっている⑧、そして何と言ってもイェンスが参戦してギターとバチバチバトルを繰り広げ、ヨランが自慢のハイトーンVoを駆使して冷ややかな哀メロを伸びやかに歌い上げる名曲④は、北欧メタル・ファンなら握り拳を固めずにはいられないカッコ良さを誇っています。
例えばヨハンソン兄弟が立ち上げたJOHANSSONの3rd『THE LAST VIKING』辺りにグッとくる諸兄なら押さえておいて損はない1枚かと。


Jordan Jordanov - Angel's Touch - Angel's Touch ★★★ (2022-02-04 00:15:04)

儚げに奏でられるピアノ、哀切なストリングスの調べ、
ひんやりと憂いを湛えたメロディを切々と歌い上げる
ヨラン・エドマンの美声がお互いを引き立て合う逸品です。


Jordan Jordanov - Angel's Touch ★★★ (2022-02-02 23:38:35)

最近自分の中でヨラン・エドマン再評価の波が来ていまして、リアル・タイムでは買い逃していたアルバムを色々とチェックし直したりしているのですが、その流れの中で入手したのが、ブルガリア出身のギタリスト、ヨルダン・ヨルダノフなる御仁が'21年に発表したこのソロ・アルバム。邦題は『天使のてざわり』。
CDショップの推薦コメントに書かれていた「アコースティック・ギター」「ピアノ」「東欧出身」というポイントに惹かれ、何の予備知識もなしにジャケ買いを敢行してしまったのですが、いやこれが買って大正解。ピアノとアコギを主楽器とする、しっとりサウンドにヘヴィ・メタリックなアグレッションや疾走感は皆無なれど、その分東欧のアーティストならではのどこか物悲しさを帯びたメロディ・センスと、そしてゲストVoとして本編に全面参加しているヨラン・エドマンのソウルフルな歌声がじっくりと堪能できるという塩梅。様式美ナンバーを歌わせても最高ですが、やはりこの人の真価はバラード系の楽曲を歌っている時にこそ発揮されるのだなぁと改めて実感させられました。
特に美麗なハーモニーと優雅なストリングスを配し抒情的に綴られるアルバム表題曲②は珠玉の逸品。この間の大雪の日、帰る道すがら流していたら、夜の雪景色と雰囲気がばっちりマッチしてえらく感動してしまいましたよ。
かつてゼロ・コーポレーションから日本デビューを飾ったミシャ・カルヴィン(覚えてます?)のアルバム等にグッと来た方なら間違いなく楽しめる1枚ではないでしょうか。是非今後もコラボを続けて行って欲しいなぁと。


DUKES OF THE ORIENT - Dukes of the Orient - Brother in Arms ★★★ (2022-02-02 01:28:48)

アルバムのOPナンバーに相応しい力強さと高揚感を伴い、
聴き手を沸々と勇気づけるような曲調は
近年のMAGNUMに通じる魅力あり。
そのMAGNUMのボブ・カトレイにも通じる
ジョン・ペインのジェントルメンな歌声にも聞き惚れます


DUKES OF THE ORIENT - Dukes of the Orient ★★★ (2022-02-01 00:13:54)

‘06年にオリジナルASIAの復活が実現。長年の相棒だったジェフ・ダウンズがそちらへ参加してしまったため微妙な立場に置かれることとなった「もう一つのASIA」のシンガー、ジョン・ペイン。本作は彼がプログレ・フィールドでの活躍で知られるエリク・ノーランダー(Key)を曲作りのパートナーに、ブルース・ブイエ(G)、ガスリー・ゴーヴァン(G)、ジェフ・コールマン(G)、ジェイ・シェレン(Ds)ら豪華アーティストをゲストに迎えて――といえば聞こえは良いけど実際は制作期間が長期に及んだせいでメンバーが入れ替わっただけ――レコ―ディングを行い、DUKES OF THE ORIENT名義で’18年に発表したアルバム。
例によってBURRN!!誌では酷評され60点台を食らっていましたが、「ペインが歌いノーランダーが曲作りに噛んでいるのだから、そんな酷い内容なわけなかろう」と購入してみれば、これが元々はASIA FEATURING JOHN PAYNE名義でのリリースが予定されていただけあって、オリジナルASIAの向こうを張るような抒情的でドラマティックなプログレ・ハード・サウンドが全編に亘って展開される力作に仕上がっていましたよ。
特に英国シンガー然とした威厳と包容力溢れるペインの歌声に導かれて、力強くアルバムのOPを飾る①、美麗なハーモニーに彩られた重厚にして劇的な⑤、侘しげに爪弾かれるアコギの導入が効果的な大作⑨といった楽曲は、「ASIAらしさ」の底上げに注力するノーランダーのナイス・アシストも相俟って、まさしくこのタッグに期待する要素が凝縮されています。
ダウンズ/ペイン期のASIAは勿論のこと、MAGNUM辺りの正調ブリティッシュHRサウンドを愛する向きにも強くお勧めできる力作。


ASIA - Silent Nation - Gone Too Far ★★★ (2022-01-29 02:00:49)

重厚なコーラスをフィーチュアして
ドラマティックな盛り上がりを呈するバラード。
ガスリー・ゴーヴァンのGが泣きまくる
終盤のソロ・パートに惹き込まれます。


ASIA - Silent Nation ★★★ (2022-01-27 00:24:53)

'06年にオリジナルASIAの再集結が実現したため、ジェフ・ダウンズ/ジョン・ペイン体制によるASIAの最終作となってしまった’04年発表の11thアルバム。メンバーはダウンズ、ペインに加え、後にASIAハブられ組が結成したGPSにも参加するガスリー・コーヴァン(G)、それにAC/DCのクリス・スレイド(Ds)という面子。
まずビックリさせられるのは、ASIAのアルバムのお約束だった「Aに始まりAに終わる」タイトルが冠されていないこと。更にこれまでロジャー・ディーン、ロドニー・マシューズといった名匠たちが手掛けてきたアートワークも、ファンタジー色薄めの写実的なデザインに変更されていて、時節柄、これはもしかして流行りのモダン・メタル路線にでも手を出したのでは…?と嫌な予感を覚えたりしつつ聴き始めてみれば、別にそんなことはなく。いつも通りのASIA節が堪能できる仕上がりでホッと胸を撫で下ろしたという。
シンフォニックな味付けや、プログレッシブ・ロック然としたドラマティックな曲展開は抑え気味で、全体的に物憂げな雰囲気が漂ってくるのは00年代初頭作品っぽいと言えそうですが、それがむしろメロディの抒情味を増強してくれている面もあり、人肌の温もりを伝えるジョン・ペインのジェントリーな歌声も、リード楽器として楽曲を彩るダウンズの鍵盤捌きもしっかりと健在。特にグッとくる憂いに満ちたアルバム表題曲④は本作ならではの名曲と言えるのではないでしょうか。また③や⑨といったAISAの変わらぬポップ・センスが発揮された楽曲、ゴーヴァンの泣きのGが迫り来るバラード⑧等の冴えも特筆ものです。
この出来栄えでレビューの点数が50点台ってのは、そりゃ納得いかんわなぁ。


ASIA - Aqua - A Far Cry ★★★ (2022-01-26 01:05:22)

AORバンド化しただの何だのと批判された
ダウンズ/ペイン体制のASIAですが、
AORバンドはこういう楽曲は書かないでしょう…
という壮大でドラマティックな名曲。
泣きを伴った終盤の盛り上がりっぷりには
胸締め付けられる思いですよ。


ASIA - Aqua ★★★ (2022-01-25 01:12:08)

大人の事情が複雑に絡まり合ってASIAの復活が頓挫しまくる中、オリジナル・メンバーの中で唯一再結成に意欲的だったジェフ・ダウンズ(Key)が主導権を握る形で再編されたASIAが’92年に発表した復活作(通算4作目)。ちなみにジャケット担当はロドニー・マシューズ先生。ラッセンじゃないよ。
レコーディング・メンバーとして、以後長らくジェフと共にASIAの看板を背負うこととなるジョン・ペイン(Vo)以下、アル・ピトレリ(G)、スティーヴ・ハウ(G)、カール・パーマー(Ds)らの名前がクレジットされていますが、バンドとしての実態はほぼなかったそうで、実質的にはジェフ/ジョンのプロジェクト体制での再始動。そうした経緯ゆえ一部熱心なファンから「ASIA復活は待望してたけど、これじゃない」と反発を買い、厳しい評価に晒され続けてきたわけですが、本作を冷静にジャッジすればそんなに悪い作品ではない…どころか水準を軽く超えて来る内容に仕上がっていることがお分かり頂けるのではないかと。
英国シンガーならではの気品と暖かみを感じさせるペインの歌声を生かした楽曲は、プログレ・ハード然とした重厚な雰囲気を纏った“SOMEDAY”、民族音楽的な侘しい詩情漂わす“THE VOICE OF REASON”、高揚感を伴うポップ・チューン“LAY DOWN YOUR ARMS”等々、AOR/産業ロック方向への接近をつまびらかにしつつも、しっかりとASIAらしさもキープ。特にワビサビの効いた曲展開とアレンジ、美しくも切ない泣きのメロディが胸を打つ“FAR CRY”は、初期作の名曲群にも引けを取らないクオリティを有していますよ。
過小評価に泣かされているように思えて仕方がないので、是非お試し頂きたい1枚です。