ノルウェーのDA VINCIが’87年にPOLYDOR RECORDSから発表し、本国ではグラミー賞を受賞するほどの大ヒット作となった1stアルバム。日本盤は遅れて’93年にゼロ・コーポレーションを通じ、2nd『BACK IN BUSINESS』と同時リリースされました。 自分は先に『BACK~』を聴き、その完成度の高さに感心したことから本作も購入したのですが、涼しげなKeyを取り入れた中期EUROPE辺りに通じるハードポップ・サウンドが、既にこの時点で満開。北欧メタルと聞くと、どうしても「ヘタウマなVo」「貧相な音質」といった垢抜けないイメージが付き纏いますが、本作に関してはメジャー資本のバックアップを受けているだけあって音質は良好ですし、フックを盛り込んだメロディ構築術に抜かりがない上に、アレンジもハイセンスときたもんだ。 特にグラミー賞会場でも演奏したというポップに弾む①や、ドラマ性と大衆性を高いレベルで両立させた大ヒット・バラード③、Keyを有用した中間部の鮮烈なアレンジが技ありな⑥、メロディの甘さとコーラス・ワークの美しさに聴き惚れる⑨といった楽曲は、如何にも新人バンド的な「脇の甘さ」がまるで感じられない見事な出来栄えを誇ります。 少々軽過ぎる&甘過ぎる音に思える向きもありましょうが、メロディ愛好家にとっちゃこれからの季節、寝苦しい熱帯夜を快適に過ごすためのお供に打ってつけの、実に爽やかな1枚。ちょいと前まで中古盤にアホみたいに高値が付けられていましたが、輸入盤も再発された近年は価格も落ち着いて来たようなので、買うには丁度いいタイミングではないでしょうか。その際は2nd『BACK IN BUSINESS』も併せて是非どうぞ。
幼馴染のメンバーらによって結成され、LAベースに活動していたツインG編成の4人組。’86年にSCOTTI Bros. RECORDSからセルフ・タイトルの1stアルバムを発表してデビュー(プロデューサーは売れっ子ジェフ・ワーマン)。WILD CHERRYのカヴァーでもあるシングル“PLAY THAT FUNKY MUSIC”は米ビルボード・チャート63位にランクインを果たした。 日・香合作映画『孔雀王』に楽曲提供が決まったことから、“NOT THE SAME”と“PLAY THAT FUNKY MUSIC”の2曲を本編からカットした代わりに、映画主題歌“BURNING THRUGH THE NIGHT”と、サントラ曲“MY WAY”を新たに収録、アルバム・タイトルも『BURNING THROUH THE NIGHT』に変更した特別仕様で'88年に日本デビューを飾る。ちなみに“BURNING~”と“MY WAY”の楽曲権利は日本側にあるようで、’07年にオリジナル盤がリマスター再発された際にも、この2曲は収録されていない。 バンドは日本デビューからまもなく、全くサポートのない所属レーベルに失望し解散を選択した。
スラッシュ・シーンとハードコア/パンク・シーンのクロスオーバー推進に一役買ったパイオニア・バンドの一つ、マイク・ミューア(Vo)率いるカリフォルニア出身の5人組が’87年に発表した、アメリカ軍の徴兵ポスターのデザインをパロった表題とアートワークが目印の2ndアルバム。(邦題は『軍団宣言』) スケーターズ・ロックならではの疾走感は既に十分なれど、いかせんメタル側からすると音の軽さが気になったセルフ・タイトルのデビュー作。正統派HM色を強め(泣きのGソロまで聴ける)BUURN!!誌レビューじゃゴッドが高得点を献上したものの、疾走感の低下には物足りなさを覚えざるを得なかった3rd『HOW WILL I LAUGH TOMMORW WHEN I CAN’T EVEN SMILE TODAY』。この2枚の間に挟まれた本作は、ハードコア/パンク由来の爆発的スピード感と、へヴィ・メタリックなエッジの鋭さを美味しいトコ取りした、まさにクロスオーバー・スラッシュの名盤と評するに相応しい出来栄えを提示しています。 スラッシュ・メタルとしてジャッジした場合、マイク・ミューアの声の「軽さ」「線の細さ」には相変わらず迫力不足の感が否めぬまでも、緩急を取り込んでテンション高く突っ走るアルバム表題曲②や、本作から加入したバンド随一のメタル・ガイ、ロッキー・ジョージ(G)によって高速で切り刻まれるGリフが「これぞスラッシュ!」なカッコ良さを叩き付けて来る⑦といった名曲を前にすれば、そんなこたぁ些細な問題かと。 SUICIDAL TENDENCIES入門盤として、またクロスオーバー・スラッシュのジャンル入門盤としてもお薦め出来る1枚です。
現在は敏腕プロデューサーとして名を馳せるトミー・ニュートンを中心に結成されたドイツの5人組が、家庭の事情により脱退したチャーリー・ハーンの後任に、オーディションの末フェルナンド・ガルシア(Vo)を迎え入れて’88年に発表した4thアルバム(邦題は『ネヴァー・サティスファイド』)。ちなみにそのオーディションには、元TYGERS OF PAN TANGのジョナサン・ディヴァリル、THUNDERHEADのテッド・ブレットらが参加していたことはよく知られた話(特にテッドは加入寸前まで行ったらしい) 本作は、エネルギッシュに歌うVoによってもたらされるアリーナ・ロック的スケール感や、合唱を誘う開放的コーラス・ワークに加え、ツインGが奏でる劇的にして湿ったメロディという、アメリカン・ロックと欧州HMの特色を併せ持ったVICTORY流HMサウンドの完成形が提示された名盤です。嘗てはそうした折衷スタイルが「美味しいトコ取り」というよりも「どっちつかず」「中途半端」に感じられ、聴くのを敬遠してしまっていたのですが、愁いを帯びつつキャッチーなVICTORY屈指の名曲⑥を始めとする優れた楽曲の数々を前にすれば、つまらない先入観に囚われていた己を恥じいるばかり。 何しろ、グルーヴィなアルバム表題曲②や、雄大なバラード③といったシングルが、アメリカのラジオ及びMTVで好リアクションを獲得し、アルバム自体も本国チャートで最高19位を記録。最終的には全世界で25万枚以上を売り上げる等、どこに出しても恥ずかしくない立派な成績を残しているのですから、その内容の充実っぷりたるや推して知るべし。 次作『TEMPLE OF GOLD』と併せて、VICTORY入門盤にお薦めする1枚です。
SAVAGEの『LOOSE ‘N LETHAL』を筆頭に、EBONY RECORDS作品のアートワークを数多く手掛けて来たゲイリー・シャープによるSFタッチのイラストが目印の2nd。(’84年) 前作『CHAINED AND DESPERATE』発表後にメンバー・チェンジが発生し、Bのクリス・メイソンがVoを兼ねるトリオ編成へと移行していますが、「小細工?無用!」とばかりにソリッドに突き進む、HM以外の何者でもないサウンドにパワーダウンの兆候は見られません(音の悪さが相変わらずなのは流石EBONY)。どうもCHATEAUXというとスティーヴ・グリメットが参加したデビュー作にばかり注目が集まりがちのような気がしますが、単純な完成度で言えば本作の方が上ではないかと。 レンジの広さは前任者に及ばずとも、熱量の高さじゃ一歩も引けを取らないクリスの歌唱を活かすべく、重厚なタイプの楽曲の出来栄えが目立っていた前作から、今回はより直線的でアグレッシブな方向へとサウンドを軌道修正。その好例と言うべきパワー漲るOPナンバー①と、『マッドマックス』感迸る(V8を崇めよ!)ラスト・ナンバー⑧は、荒々しい音色で破壊的に刻まれるGリフといい、土煙蹴立てて爆走するリズムといい、その上に乗っかる火傷しそうに熱いVoのシャウトといい、これ聴いてメタル魂に点火されない男が居ようか?な名曲っぷり。この2曲に挟まれたその他の収録曲も、重厚なミッド・チューン③⑤、畳み掛ける疾走ナンバー④、歌に負けじとティム・ブロウトンが熱く歌わせるGにもグッとくる⑥等、「いやぁ、HMって本当に良いものですね」とマイク水野ばりに微笑みたくなる逸品揃い。 何だったら本作をCHATEAUXの入門盤にしてみてはいかがでしょうか?
メジャーのMCAから発表され、NWOBHMの波に乗って全英チャート第24位に飛び込むヒット作となった2nd(邦題は『偽りの時』)。DIAMOND HEADといえば、ロドニー・マシューズが手掛けた本作の美麗なアートワークが思い浮かぶ人も多いのではないかと。 特異なGリフの数々と攻撃性/疾走感を以て、スラッシュ・メタル誕生に大きく寄与した名盤『LIGHTING TO THE NATION』をこのバンドの最高傑作に推す気満々の我が身ですが、実は初めて彼らの音に触れた時は本作の方がビビッと来ました。というのも、こっちの方が単純にメロディアスで分かり易い内容だったから。あと邦題もカッコ良かったですし。 心底楽しむためにはMETALLICAによる手引きと、NWOBHMやスラッシュ・メタルに対するある程度のリテラシーを要した『LIGHTING~』に比べ、衝動性より完成度の高さが追求された本作は、自分のような「天下のMETALLICAがお手本にしたバンドらしいから聴いてみっか」というお勉強気分丸出しの初心者リスナーにも、すんなりその素晴らしさが染み渡る懐の深さが魅力だったという。ロバート・プラントを比較対象に挙げられるのも納得の上手いVoと、個性的なリフ・ワークだけでなく「聴かせる」ソロも冴え渡るGを基軸に展開されていく楽曲は、一聴しただけで駆け出し時代のMETALLICAが如何に多くのアイデアを頂戴したか理解できる名曲⑦を筆頭に、のっけから重厚&メロディアスな①、“世界人民に明かりを”なる邦題もイカしていた前作表題曲④、中世的な雰囲気も漂わせたアルバムのタイトル・トラック⑤等、捨て曲なしの充実っぷり。 もしかするとこのバンドの入門盤には、デビュー作よりも相応しい1枚かもしれません。