日本の紫、アルゼンチンのRATA BLANCA、イタリアのVANADIUM、フィンランドのZERO NINE、イギリスのWHITE SPIRIT等々…。世にDEEP PURPLEの魂を継承するバンドは数多く存在しますが、SIX FEET UNDER(アメリカのデス・メタル・バンドにあらず)は「スウェーデンのDEEP PURPLE」と評されたボルレンゲ出身の4人組で、本作はその彼らが’86年に発表した1stアルバムに当たる作品です。 主役は「北欧のロバート・プラント」なんて呼ばれてたらしいビョルン・ローディン(Vo)の歌声と、その彼とBALTIMOORE等でも行動を共にするトーマス・ラーソン(G)の押しと引きを心得たGプレイ。時にスリリングに、時に軽快に駆け抜けて行くこの二人のパフォーマンスを基軸に、そこに濃厚なDEEP PURPLE風味を演出するピーター・オストリング(Key)の操るハモンド・オルガンが切り込んで来る本編は、もろパープル路線の①(Gリフも“SMOKE ON THE WATER風)にて幕が上がります。但し後に続くのはSURVIVORの“EYE OF THE TIGER”にインスパイアされたような③だったり、OZZY OSBOURNEが演りそうな(?)⑧だったりと、収録曲は結構バラエティ豊か。総合的な仕上がり具合は「良心的北欧メタル・アルバム」と呼べるものではないかと。それでも本作のハイライトが、バッキングがメロディアスに歌っているアップテンポの⑥、静と動のコントラストが劇的極まりない疾走ナンバー⑦という紫色が濃いめの2曲であることは疑いようがありませんけどね。 2nd『ERUPTION』と共に'94年にゼロ・コーポレーションがCD化してくれた国内盤が、現在でも中古屋に行けば比較的容易に入手可能ですので、是非ともご一聴下さいませ。
TESTAMENTが、'87年に第2回DYNAMO OPEN AIRに参戦した時の模様を収めたライブEP。長らくCD化されずにほかされていましたが、'09年に漸くリマスター再発が実現。その際には当日演奏されたけどEPには未収録だった5曲(内1曲はアレックス・スコルニックのGソロ)も追加された全10曲の完全版仕様でのリイシューと相成りました。 デビュー間もない時期のライブゆえ、選曲に物足りなさを覚える向きもあるやもしれませんが、逆にスラッシュ・メタル・バンドとしてのTESTAMENTのエッセンスが凝縮された名盤『THE LEGACY』収録曲、それも現在ではライブのクライマックスで演奏されるような名曲の数々が、のっけから出し惜しみなく連打される様が猛烈にカッコイイんですよ。チャック・ビリーのVoやMCにしろ楽器隊にしろ、現在の重厚な佇まいとは異なる、若さに任せた前のめり具合も非常に新鮮です。そして全体が荒々しくササクレ立っているからこそ、“APOCALYPTIC CITY”や“OVER THE WALL”といった名曲において噴出するアレックスの美麗なGソロが一層際立ち、ハッと胸を突かれるというね。 轟然とした音質すら迫力を倍加させるプラス要素に変えて、会場を埋め尽くすデニム&レザー軍団の野太い声援をバックに炸裂する収録曲は、スタジオ盤を大きく上回る攻撃性を獲得。中でも初期の代表曲“REIGN OF TERROR”は、今では様々なバージョンを聴くことが出来ますけど、最高なのは間違いなく本作収録バージョンだよなぁと。 純然たるスラッシュ・メタル時代のTESTAMENTの魅力が詰まった1枚。キングから国内盤もリリースされていますのでお薦めですよ…って、もう廃盤?マジでか。
黒地に、バンドロゴ/エンブレム/タイトルをあしらっただけの飾り気無用のアートワークが、質実剛健なSAXONサウンドの魅力を表しているかのようで逆にカッコイイ、’82年発表の傑作ライブ・アルバム。 お馴染みの「SAXON!」(チャチャチャ)「SAXON!」(チャチャチャ)というチャントと、バイクの爆音SEに導かれて、ショウは疾走ナンバー“MOTORCYCLE MAN”で豪快にスタート。憂いに満ちたメロディアスな“747(STRANGER IN THE NIGHT)”がその後に続き、間髪入れずハードネスとメロディのギアがガッチリ噛み合った初期SAXON屈指の名曲“PRINCESS OF THE NIGHT”でアクセルを再び踏み込むという、この劇的極まりない冒頭の流れだけでこっちはメタル・ハートを完全に掌握されてしまった気分ですよ。本作のハイライトを担う“WHEELS OF STEEL”での、革ジャン軍団で埋め尽くされていると思しき客席との一体感溢れるコール&レスポンスなんて「胸のエンジンに火を点けろ!」(by串田アキラ)とシャウトしたくなるアガりっぷりで、もう最高としか。 バイカーズ・ロック時代の名曲が連打されるセットリスト、それらを熱気溢れる演奏で叩き付けて来るメンバーに、観客の野太い声援まで、SAXON(最初の)全盛期を代表する名盤として、またNWOBHMの熱い盛り上がりを伝えてくれるドキュメント作品として高評価を受けるのも当然の1枚。つか、これのみで十分な満足感を得てしまって、なかなかSAXONの初期作をコンプリートしようとしない困ったちゃん(俺のことですが)をも生み出してしまう罪作りな名盤です。
「リッチー・ブラックモアRAINBOWを再始動」「シンガーは無名の新人ロニー・ロメロに決定」との報に触れても、ロニーもコージーも亡き今「もう遅かりし由良之助」と今一つテンションが上がらず。ところがLOUD PARK でそのロメロが所属するLORDS OF BLACKのパフォーマンスを目撃し、リッチーのお眼鏡に適ったのも当然の彼の歌唱力と、何より楽曲の素晴らしさに感銘を受け、慌てて日本デビュー作たる本2ndを買いに走った次第で。 劇的な序曲①が、コーラス部分でテンポアップする曲展開が胸熱な②へと繋がって行くOP構成が物語る通り、本作に託されているのはRAINBOW直系の様式美パワー・メタル。これに限らず本編には、コブシを効かせた歌い回しと声質が確かにロニーっぽいロメロの歌唱が映えるタイプの楽曲がズラリ揃っていて、バンドの中核を担うトニー・ヘルナンド(G)の作曲センスの高さが伺えます。GITで学んだというテクニカルなGの腕前のみならず、パワフルな④、憂いを湛えた⑧、更には10分に迫るドラマティックな大作ナンバー⑨のような重厚な楽曲においては、叙情的なKeyを奏でてコッテリ感緩和に努める等、八面六臂の大活躍をみせるこの人こそ本作のMVP。 そうした彼の曲作りの手腕と、ロメロの力強い歌唱とが理想的融合をみたのが怒涛の疾走ナンバー⑫。LOUD PARKでもライブの締めに演奏され、個人的にアルバム購入を決心する切っ掛けともなった問答無用の名曲っぷりで、年間ベスト・チューン候補ですよ。 全体的に硬さの感じられるロメロのVoに、もうちょい余裕というか表情が出て来ると、尚良くなるように思えますが、ともあれ、伸びしろ十分な充実作であることは確かです。
'99年に来日したFIREHOUSEが、大阪の梅田HEAT BEATで行った公演の模様を収録。意外にもこれが彼らの初ライブ・アルバムだとか。 セットリストは、この時点でリリース済みだった4枚のスタジオ・アルバムからヒット曲、代表曲を中心に網羅。比率はやはり1st『FIREHOUSE』と2nd『HOLD YOUR FIRE』に偏り気味ですが、このことに異議を唱えるファンは恐らく少ないですよね。C.J.スネアの伸びやかな歌声を始め、美しいコーラス・ワークから楽器隊の安定したパフォーマンス、更にはOPで必殺の名曲“OVERNIGHT SENSATION”をブチかまし、後に続くのは“ALL SHE WROTE”。このFIREHOUSEが誇る代表曲2連打でいきなり会場を興奮の坩堝に叩き込むステージ進行に至るまで、場数を踏んで鍛えられたライブ・バンドとしての実力が如何なく発揮された出来栄え。 それを受けての観客の盛り上がりも半端なく、特にハイライトはヒット・バラード“I LIVE MY LIFE FOR YOU”にて訪れます。伴奏なしでバンドからサビを託された観客が、(ワンフレーズどころか)ワンコーラス丸々を見事な大合唱で歌いきる様は、メンバーは勿論、聴いてるこっちも感動しますよ。 正直、購入前までは「90年代前半にライブ盤を出しときゃ、クラブなんかじゃなくてホールクラスで収録できたろうに」とか舐めたこと思っていたのですが、本作を聴いてしまったら、そんな風に考えた我が身の不明を恥じ入るばかり。会場の大小に関係なく、これほど熱いお客さんに恵まれたら、そりゃ記録として残しておきたくなるってもんです。
インスト序曲“WITHOUT WARNING”を経て、鋭利に疾走するキメの名曲“TOOTH AND NAIL”のカッコ良さだけで本編の出来の良さを確信させられてしまう(そしてそれは間違っていない)、’84年発表の2ndアルバムにして本邦初登場作。 このOPのドラマティックな流れからも明らかなように、独特のトーンで鋭く切り込んで来るジョージ・リンチのフラッシーなG、よりワイルドでメタリックなビートを刻むようになったジェフ・ピルソン&ミック・ブラウンのリズム隊…といった具合に、前作では「歌」の引き立て役に徹していた楽器陣が、今回は生き生きとその存在感を主張。勿論、益々表現力に磨きを掛けたドン・ドッケンのVoも冴え渡り、4つの個性が対等に(ポジティブな意味で)ぶつかり合って火花を散らすことで、緊張感だけでなくバンドとしての一体感、それにいかにもLAメタル的な華やかな雰囲気がアルバム全体から溢れ出して来ます。 収録曲の粒の揃い具合という点では次作『UNDER LOCK AND KEY』に軍配が上がりますが、それでもDOKKEN入門盤としてお薦めするならば、メロディとハードネスが理想的バランスをとる本作を猛プッシュ。収録曲にしても、冒頭で述べた彼らのHMサイドを象徴する名曲“TOOTH~”を始め、美しく劇的なバラード“ALONE AGAIN”から、メンバー全員が歌える強みを活かした美麗なハーモニーが堪能できる“INTO THE FIRE”まで、DOKKENというバンドの魅力的な側面が的確に切り取られています。 日本でのDOKKEN人気を決定付けた名盤にして、LAメタルの盛り上がりを語る上でも欠かすことの出来ない1枚ですね。
DOKKENがクラシック・ラインナップで復活して来日公演を行うという。喜びと共に、これが最後かもしれないな…との寂寥感が湧き上がりましたが、そういや90年代に再結成した時も、数年前にLOUD PARKでドンとジョージの共演が実現した時も「これで見納めかも」としんみりしてたことを思い出して、出掛かっていた涙がヒュッと引っ込みました(大袈裟)。 ともあれ、目出度いことに変わりはないので久々に彼らの作品聴き直したりしているのですが、やはりこの1stは後のアルバム群と比較するとやや趣きが異なりますね。地味なアートワークとか、ベース弾いてるのがピーター・バルテス(ACCEPT)だったりホアン・クルーシェ(RATT)だったりする基礎的な部分に加えて、そもそもドンのソロ・アルバムとして制作された経緯があるだけに、疾走曲とかも収録はされていても、飽くまで主役は「歌」。引き立て役に徹している風情のギターもそうした印象に拍車を掛けます。 でも、ドンの甘口なハイトーンがメロディの哀愁を際立たせる文句なしの名曲“BREAKING THE CHAINS”を始め、ノリノリの“LIVE TO ROCK”や、Gソロがダイヤの原石的輝きを放つ“YOUNG GIRLS”等、収録曲はこれはこれで十分に魅力的。またそうした本編中にあって、アグレッシブなHMナンバー“PARIS IS BURNING”だけは他と比べて毛色が若干異なるのですが、それもその筈。この曲はジョージ・リンチとミック・ブラウンがその昔在籍していたXCITER時代に書かれたものなのだとか。しかしDOKKENがレコード契約をゲットする決め手になった楽曲の一つというだけあって、これまたアルバムのハイライトを飾る名曲っぷり。影は薄めなれど、やっぱ良い作品ですよ、これ。
BRIGHTON ROCKは'91年に解散の後、'02年に再結成を遂げて現在も活動中なのですが、スタジオ・アルバムとしては、’90年発表のこの3rdアルバムが一応(現時点での)最終作。…ということでいいのかな。 2nd『TAKE A DEEP BREATH』までの流れから、てっきり更にポップになってるかと思ったら、全くそんなことはなく。Key奏者が抜けた代わりにサイドGが加わった編成と、1曲目から小気味よく疾走するHMチューンをガツンとぶつけてくる構成が物語る通り、本編は寧ろ、よりタフでワイルドな方向へと突き進んでいましたよ。 J.J.ケイルの代表曲…というよりもエリック・クラプトンが大ヒットさせたことで有名な“COCAINE”のカヴァーにもチャレンジする等、仄かに土の匂い漂わす新機軸を打ち出した作風は、90年代以降の音楽シーンの潮流の変化を踏まえていますが、シンガーのしゃがれ声がこの手の音にマッチしている上(場面によってはトム・キーファー風?)、相変わらずフックを盛り込んだ曲作りの巧さやメロディ・センスの冴えに鈍りがないので、単に上っ面だけ流行をなぞったような退屈な作品にはなっていません。 本編はメタリックに突っ走る①にて幕が上がり、溌剌とハジける③、重厚な雰囲気を纏った⑥といった優れた楽曲を経て、感動的なバラード⑪にて大団円を迎えます。前2作に比べると、そのクオリティにややムラを感じなくもありませんが、最後まで基本軸をブレさせることなく活動を全うしたバンドの、有終の美を飾るに相応しい1枚でありました。
今では売れっ子プロデューサーとして腕を振るうサシャ・ピート(G)が在籍し、90年代には、HELLOWEEN、GAMMA RAY、BLIND GUARDIANらと共に、ここ日本でジャーマン・メタル人気を牽引したHEAVENS GATEの記念すべきデビュー作(’89年)。 JUDAS PRIEST型正統派HMに、ジャーマン・メタルならではのメロディとパワーがトッピングされた名盤『LIVIN’ IN HYSTERIA』(’91年)の出来栄えに衝撃を受けた当時、慌てて遡って本作も買いに走ったのですが、勿体ぶったインスト序曲①による導入を経て、うじうじと蠢くGリフが印象的なアルバム表題曲“IN CONTROL”のカッコ良さだけで速攻ノックアウトされてしまいましたよ。流石、来日公演のトリを飾っただけあって、“GATE OF HEAVEN”や“LIVIN’ IN HYSTERIA”にも負けない名曲ぶり。 他にもキャッチーな疾走チューン“TYRANTS”あり、トリロジー第一作目となる重厚なエピック・メタル調の“PATH OF GLORY”あり…といった具合に、メタル者が拳を振り上げるに足る逸品の数々を収録し、国内盤は'90年発表の6曲入りEP『OPEN THE GATE AND WATCH!』とのカップリング仕様、全15曲、1時間オーバーの超過ボリュームにも拘わらず、ダレを殆ど感じることなく全編を聴き通させてしまうのですから、「こいつらは本物だ!」と、バンドの才能を確信するには十分です。 クセの強いVoにベタッとしてキレに欠けるドラミングとか、全体的にまだまだ垢抜けない雰囲気を漂わせつつも、デビュー作でこのクオリティは立派。『LIVIN’~』が気に入った方ならこっちも押さえておいて損はありません。格安価格でお買い求め頂けますしね。
初めて目にした時は「ギーガー謹製か?」と思ってしまった強烈なアートワーク(機械に犯されそうになっている全裸の女性)が物議を醸した'90年発表の2ndアルバム。シーンの潮目の変化を察知し、よりアグレッシブな方向へ進むために、ポップ志向の持ち主だったロバート・サーゾと袂を分かち――実際はマネージメント主導の解雇劇だったとのキャプテン和田情報あり――その後任ギタリストに、元LIONのダグ・アルドリッチを加えたラインナップでレコーディングされています。 いかにもアメリカンなノリの良さで攻めて来る豪快なロックンロールと、ドラマティック且つメロディアスなプログレ・ハードというの二路線構成が取られた好盤に仕上がっていた前作『OVER THE EDGE』(’88年)に比べると、吹けよ風、呼べよ嵐状態(まさしくハリケーン)なSEから幕が上がる今回は、明らかに前者に比重が偏っていて「あいやー、そっちへ進んじゃいましたか」と。 無論、ダグ・アルドリッチのフラッシーなGプレイ、ケリー・ハンセンのエモーショナルな歌唱(流石、現FOREINER)をフィーチュアした楽曲の質は低くありません。しかしながら、“失われた愛の夢”なる邦題を冠されたバラード⑤、哀愁のHRナンバー⑥、ブルージーな味わいを有する⑦といった、本編中盤に並ぶメロディアスな楽曲が魅力的なだけに、HURRICANEには是非ともこっち方面へ進んで欲しかったなぁ…と、今更詮無いことを考えてしまうわけです。