RISING FORCE時代のイングヴェイを彷彿とさせる様式美HMサウンドをバリバリ追求し続ける(た?)スウェーデン出身の5人組、'03年発表の6thアルバム。 彼らの作品は何枚か所持していますが、最も聴き返す頻度が高いのが本作です。壮大にして激しくドラマティックな①②(文字通り“雷鳴のシンフォニー”状態)の流れに始まって、初期の名曲のセルフカバー⑩にて幕が下りる本編は、収録楽曲のクオリティから無駄なく締まった構成まで、STORMWINDのカタログの中でも頭一つ飛び抜けた出来栄え。「スウェーデンの極新カラテ王者」なる異色の経歴を誇るギタリスト、トーマス・ウルフがここでクリエイトする音世界には、「鶴の構え」を取ったダニエルさん(古い)ばりに付け入る隙が全く見当たりませんよ。 そんなコブラ会ですらお手上げの本作を更なる高みへと押し上げるのが、元TALK OF THE TOWN他の実力派シンガー、トーマス・ヴィクストロムその人。広い声域/豊かな声量/抜群の表現力を併せ持つこんな強力無比な歌聴かされたら、そりゃNHKでなくとも「昼はオペラ、夜はメタルの二足の草鞋を履くボーカル・マスター」として音楽番組で特集を組みたくなるってもんですわなと。 その彼氏の堂々たる歌声と、トーマス・ウルフ謹製の荘厳!クラシカル!スピーディ!な楽曲とがガップリ四つに組んだ④は、北欧様式美HMファンを感涙に咽ばせる名曲っぷり。 STORMWINDのアルバムはどれから手をつけて良いか分からないという方は、まずはこちらかどうぞ。入手が容易だし、中古盤も安いっすよー。
メンバー5人中3人が脱退するという、バンドによっては致命傷にもなりかねない大幅な編成替えを経て、'15年に発表された3rdアルバム。それでいて音楽性は拡散することなく、寧ろその切っ先を益々鋭く研ぎ澄ませて健在です。 ジタバタと焦燥感を伴い喧しく炸裂する①、硬質に畳み掛けて来る④、アグレッシブな中にもキャッチーさを宿らせた⑩等、従来の「80年代型スラッシュ・メタル」のフォーマットをブレずに受け継ぎつつ、本作はプロダクションの強度が増したことで、リフ&リズムの切れ味、野郎コーラスの迫力、そしてメロディックに閃くGソロの鮮烈さetc・・・が、一層ダイレクトに伝わって来るようになりました。また「元メタル雑誌のライター」というユニークな出自の新Voが、前任者ほどのクレイジーネスを感じさせない代わりに、よりコントロールされたハイピッチ・シャウトを提供。 結果として、熱に浮かされたような破天荒さは薄れてしまったかもしれませんが、その分、サウンドの方には(若干ながらも)整合性が出て来て、取っ付き易さが増したかなと。中でもリードBに導かれて突っ走るパートの勇ましさが際立つ⑧は、彼らの今後の進むべき方向性を示唆するかのような名曲です。 バンドのLIVE FOR THRASH, DIE FOR THRASHな心意気が全編に漲る充実作。
ちょい前、渋谷に「ガンズ・アンド・ストレンジャー」 (原題は同じく“EL GRINGO”)なるアクション映画を 見に行ったら、この曲がエンドロールで流れてきましね。 これがもう映画のつまらなさを帳消しにするカッコ良さで。 アルバム『THE LORD OF STEEL』においても間違いなく ハイライト・ナンバーの一つですよ。
近年は、打つ手打つ手が悉く空回ってる印象が否めないMANOWAR。新作がそのモヤモヤ感を吹き飛ばしてくれることを期待したのですが・・・。 神話を綴るに相応しい壮大な作り込みが為されていた前作『GODS OF WAR』の反動か、今回は楽曲にしろプロダクションにしろ、非常にシンプルでコンパクト・・・っつーか、地味じゃね?と。パンチに欠ける音作りから、起伏に乏しい本編の構成、キャッチネスが不足がちの楽曲、そしてクドさ控えめのメンバーのパフォーマンス(特にエリックのVo)に至るまで、従来作が、聴いてるだけで筋肉が勝手にパンプアップするメタル・プロテインとするならば、今回はまるでOL向けダイエット食品の如き淡白さで、これは一体どうしたことかと。 いや勿論優れた楽曲もあるんですよ。剛毅に疾走するOPナンバー“THE LORD OF STEEL”とか、好戦的に煮え立つ“EL GRINGO”、過去の名作/名曲のタイトルが歌詞に散りばめられた“HAIL, KILL AND DIE”、そして大仰過ぎる程に大仰な“THE KINGDOM OF STEEL”とか。その他のバンドがこのレベルの楽曲や作品引っ提げてやって来たならば、激賞は間違いないところですよ。「メタル蘇民祭」の様相を呈しているジャケットも最高ですし。 ただ、やはりMANOWAR作品としては「食い足りねぇ」と。これまでどんな賛否両論分かれる問題作だろうとも、背筋を伸ばして堂々提示してきた彼らなのに、本作に関しては「背中を丸めて置きに来た」との印象が拭いきれず。まぁ当方の勝手なイメージの押し付けなんですが。 思わず、他のMANOWARマニアの方の意見を伺いたくなる1枚。
マイク・スラマー(G)の立ち上げたメロハー・プロジェクト、STEELHOUSE LANEがデビュー作『METALIC BLUE』の高評価を受けて正式バンド化。『METALIC~』ではバックアップ役に留まっていたマイクもメンバーとしてラインナップにその名前を連ね、これが真のデビュー作とも言われる2nd『SLAVES OF THE NEW WORLD』は'99年に発表されました。(つってもこれが最終作?) サウンドの方は、重厚なプロダクションの下、カラッとポップに弾けるメロディック・ロック路線を継承しつつも、「バンドらしさ」を強調するためか、前作よりもグッとハードネスを前面展開。確かにバンドとしてのまとまりの良さはガッツリ伝わって来ますが、反面、メロディのフックはやや弱まったかな?とも。 マイク・スラマーというミュージシャンの「音楽半生ベスト盤」的様相を呈していた前作に比べてしまうと多少の聴き劣りは止むなしか・・・等と舐めて掛かったら、どっこい。キース・スラック(Vo)のソウルフルな歌声が映えるブルージーな④、爽快な躍動感に満ち溢れた⑤⑫、STREETS時代の楽曲のリメイク⑧⑪、そしてマサ伊藤もイチオシのバラード⑥etc・・・と、聴き進める内に収録楽曲の魅力はグングンUP。その決定打とも言うべきポップな名曲⑩にトドメを刺される頃には、本作の評価は「前作に勝るとも劣らぬ力作」というものに落ち着いておりました。
スティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)が結成したSTREETSをキャリアの出発点に、その後もメロディック・ロック街道一筋に歩んで来た職人、マイク・スラマーが新たに立ち上げたバンドの'98年発表のデビュー作。 尤も、マイク自身は正式メンバーとして名は連ねておらず、彼が担当しているのは、バンド・メンバーの選抜からアルバムのプロデュース、そして楽曲提供といった、つんくとか秋元康的な裏で全てを牛耳るビッグボスの役回り(違うか)。 ちなみに、その収録楽曲は半分が新曲、もう半分が、これまでマイクがHOUSE OF LORDS、HARDLINE、TOWERCITY、WALL OF SILENCE・・・等々の他アーティストに提供して来た楽曲のリメイクで構成されていて、いずれもアメリカン・メロディアスHRの模範的なシルエットを描き出す秀曲揃い。特にスカッとハジけるOPナンバー①は、雲一つない抜けるような青空の下でオープンカーをかっ飛ばす爽快感に満ち溢れ、アルバムに対する期待感を開巻早々にMAXまで引き上げてくれる名曲です(どこか聴き覚えがある⑩もお薦め)。 全体的に泣きや哀愁成分は薄めなれども、キャッチーに洗練された大陸産ハードポップ・サウンドは、これはこれで十分に胸躍るサムシング有り。巧いVoに巧いGを得て、全編に亘ってマイク・スラマーのメロディ職人としての匠の技が冴える1枚。
'79年に活動を開始し、当初はPOWER FAITHと名乗っていた模様。 SAINTと改名の後、'84年にデビューEP『WARRIORS OF THE SON』、'86年に1stフル『TIME'S END』、そして'88年には代表作とされる2nd『TOO LATE FOR LIVING』を発表し、いずれもクリスチャン・ミュージック・シーンを中心に好評を博するも、間もなく解散。 自分が聴いたことがあるのはこの時期の作品だけなのですが、実際のところバンドは、21世紀を目前に再結成を遂げてからの方が、より積極的に活動している印象あり。 なお、バンド名や歌詞カードに聖書の一節を引用したりすることからも分かる通り、クリスチャン・メタル・バンドである。
北欧ハードポップ路線のアルバムの中においては 比較的重厚且つ大スケールに盛り上がっていく 曲調が異彩(ってほどでもないけど)を放つナンバー。 中盤には“Ich bin ein Berliner”の文句で知られる ケネディ大統領のベルリン演説(だよね?)の音源が引用され ドラマティックな曲展開に華を添えます。
ROYAL HUNTの母体になったことでも知られるデンマークのWITCH CROSS。そこのシンガーだったアレックス・サヴェージが、新たに(つっても80年代の話ですが)立ち上げたバンドの唯一作。 WITCH CROSS時代は、肩イカらせてNWOBHM風味の荒くれパワー・メタル・ソングを歌っていた彼氏ですが、ここでは打って変わって小洒落た衣装に身を包み、“So Much For Happy Ending~♪”と明るく伸びやかな歌声を披露していて、加藤みどりも「なんということでしょう」と度肝抜かれるレベルの劇的改造ビフォーアフター。 見た目だけに留まらず歌唱力の方も、表現力から何から見(聴)違えるような成長を遂げていますし、何よりも本作に託されている、煌びやかなボーカル・ハーモニーとKeyを惜しみなく注ぎ込んだ、80年代ど真ん中のメロディック・ロック・サウンドは、WITCH CROSSの幻影を追い求めるファンをも力ずくで納得させてしまうクオリティの高さ。 特にポップなサビメロがキャッチーな②はアルバムを代表する名曲。それだけでなく、例えばケネディ大統領のベルリン演説を引用した④ではドラマティックな空気を醸成する等、本編はちゃんとハード・ロッキンなエッジと、北欧のバンドらしい哀感/透明感の保全も図られているのだから隙がない。 月並みな表現ですが、アルバム1枚きりで終わってしまったことが惜しまれるバンドでしたね。