強烈な横ノリ感を生み出すGリフからインプロヴァイズされたGソロまで、トニー・アイオミばりのスモーキーなGワークで「黒いアイオミ」の異名を取る黒人ギタリスト、アルフレッド・モーリス三世率いるドゥーム・メタル・バンドが、'13年に発表した5th(4th?)アルバム。 BLACK SABBATHの名曲をバンド名に戴くだけあって(そもそもサバスのトリビュート・バンドとして活動をスタート)、志向する音楽性も、自分のようなこの手のジャンルに疎い人間でも「おぉ、ドゥームだ」と一聴瞭然なぐらい、コッテコテのドゥーム・メタルをプレイ。 低音から高音までシアトリカルに行き来する様が、さながら「邪教の司祭」といった趣きのVoと、ドライヴしまくるBに、振り下ろされるハンマーの如きDsとが、収録曲1つ1つのキャラ立ちを明確にすると共に、アップテンポの⑥や緩急を飲み込んだ⑧等を本編に織り交ぜることで、かったるいドゥームにありがちな冗長感を排除。サウンドを重厚且つダイナミックに引き締めます。 ピアノをアクセント的に用いて、アルバムをドラマティックに締め括る名曲⑨の荘厳な存在感が、本編のクオリティの高さを雄弁に物語る1枚でした。
女声の珍妙な日本語イントロからスタートする迷・・・名曲“NIGHTFLIGHT TO TOKYO”の衝撃が未だマニアの間で語り継がれる、デンマーク出身の5人組が'84年に残した唯一のフル・アルバム。(邦題は『新世紀への挑戦』) 活動末期にはアンドレ・アンダーセン(Key)が加入し、後にROYAL HUNTへと発展していく母体となったことでも知られるバンドですが、本作で聴かれるサウンドに「華麗さ」「哀愁」といった北欧メタル的エッセンスは薄め。むしろ前述の名曲①や、本編をアグレッシブに締め括る⑧といったスピード・ナンバーに強く表れている通り、霞がかった音像の下、武骨なGリフと、疾走感溢れるリズム主体に荒々しく押し出してくるダークな作風は、NWOBHMムーブメントの空気を胸一杯に呼吸している感バリバリ。 それでも、アレックス・サヴェージ(Vo)の甘い響きを宿したハイトーンや、時折噴出するヒンヤリと冷気を帯びたメロディからは、隠しようのない彼らの出自が垣間見え、例えばツインGが奏でる劇的なメロディで畳み掛ける⑤や、火花散るスリリングなインスト曲⑥等はその代表格かなと。 小学生の悪夢を顕在化させたかの如きアートワークは頭抱えたくなる酷さですが、でも本作は“NIGHTFLIGHT TO TOKYO”一発に頼らずとも十分戦えるクオリティを備えたB級メタルの名盤ですよ!
ふらっとCD屋に立ち寄ったら、発売されているのが目に入った筋肉少女帯の最新アルバム。「江戸川乱歩全集」等の仕事で知られる柳瀬茂画伯のイラストをジャケットに使用しているのが、如何にもこのバンドらしいチョイスですね。 攻めまくりのピアノ・プレイが、「5人目の正式メンバー」的存在感を放つ三柴理の援護射撃のもと繰り出される、橘高文彦(G)謹製の様式美HMナンバー3曲・・・テクニカルなGリフが印象的な“ゾロ目”、心霊主義をネタに取ったおもろくも切ない“霊媒少女キャリー”、HM版“みつばち”とでも言うべき“恋の蜜蜂飛行”の素晴らしさは今更ここで主張するには及ばず。 今回はそれ以外にも、コミカルに始まったかと思えば、中盤では“FAST AS A SHARK”ばりのゴツいGリフが刻まれる“オーディエンス・イズ・ゴッド”や、ヤケクソ気味に突進する“みんなの歌”、エンディングを賑々しく締め括る“ニルヴァナ”等、本城聡章(G)もアグレッシブな楽曲を提供。全体的にメタル度が高めなのは、ポップな方向に振れてた前作の反動でしょうかね? ここに更に、中年ロッカーは身につまされるバラード“月に一度の天使(前/後編)”から、大槻ケンヂが特徴的なヘタウマVoで朗々歌い上げるエディット・ピアフの名曲“愛の賛歌”カヴァーまで、バラエティ豊かにしてユニークな楽曲が顔を揃えることで、本編は最後まで集中力を途切れさせません。 HR/HMリスナーにも、かなり取っ付き易く感じられる1枚ではないかと。
嘗てはバリバリの森川之雄派として鳴らした我が身ですが、ANTHEM再結成以降は坂本英三の素晴らしい仕事振りにシビれまくっていたので、今回のフロントマンの交代劇には、喜びよりもまず不安が先立ちました。 でもそれも、実際に本作を聴くまでのお話。高浜祐輔のKeyをお供に、疾走ナンバー固め打ちの本編前半で早くも炸裂する、森川のリキの入った「オゥイェー!!」のシャウトを耳にした途端、そうした不安は完璧に雲散霧消しましたね。 メンバーの屈強且つタイトなパフォーマンスと、グッと胸に染み入る哀愁のメロディとが熱く脈動するANTHEM流HMサウンドの本分はそのままに、激しく燃え盛る坂本のVo→沸々と煮え滾るような森川のVoへとバンドの「声」がバトンタッチしたことで、個々の楽曲が放つ印象も少なからず変化。具体的に言うなら、タメの効いた歌唱を得てよりウェット且つメロディアスな味わいが強まったかな?と。 アルバムは全編捨て曲なしですが、トドメはなんつっても名曲“DON'T LET IT DIE”。攻撃的なGリフ、小気味良く疾走するリズム、噛み付くようなヴァースから一転、メロディアスに展開されるサビメロの素晴らしさは特筆モノで、未だにこんな年間ベスト・チューン・クラスの名曲を生み出してしまう柴田直人(B)の才能には、黙って平身低頭するのみです。
前作『IN ROCK WE TRUST』のジャケットの酷さは相当なもんでしたが、'85年発表のこの5thアルバムのジャケットも脱力さ加減じゃ負けてませんよ! そこは素直に負けとけよって話ですが。 加えて、我が世の春を絶賛謳歌中のLAメタル勢に感化されたカラフル&ヒラヒラ衣装を身に纏い(ことにレオナード・ヘイズの「着せられてる感」が半端ない)、外部ライターのペンによるポップな②を“オール・アメリカン・ボ~イ♪”と楽しげにパフォームするメンバーのお姿にハラハラと落涙を禁じえなかった初期Y&Tファンも多いことかと存じます。 しかしながら気楽な後追いファンとしては、本作も十分「有り」ですよ。前述の②は――Y&Tがこれを演らんでも・・・との思いを別とすれば――単純に優れた楽曲ですし、また、華やかに躍動する③、濃い口のブルーズ風味とは異なるアッサリめの哀愁漂わす⑤等は、前作で端緒を開いたポップ・メタル路線に更に大胆に踏み込んだ逸品ではないかと。 売れ線を装いつつも、デイヴ・メニケッティの歌と演奏からは相変わらず隠し切れないオーラが立ち上っていて、特にその真価は、Y&Tのお好みテープを制作する際には欠かすことの出来なかったドラマティックな泣きの名曲⑩において遺憾なく発揮されております。 これまでの作品に比べると若干パワーダウンした感は否めませんが、むしろパワーダウンしたにも関わらずこれだけのクオリティを保っている事実が、Y&Tの底知れぬポテンシャルを物語っていると思うわけで。
TYRAN' PACEの名を一躍マニアの間に知らしめた出世作ながら、ラルフ・シーパース(Vo)は後に振り返って「あらゆる点で未熟な作品」と辛口ジャッジを下している'85年発表の2ndアルバム。 まぁ確かにトミー・ニュートンと組んだことでグッと洗練された3rd『WATCHING YOU』に比べたら多少イモ臭い感は否めません。しかしその分、JUDAS PRIEST直系の正統派HMをドイツ人らしい質実剛健さでもって調理したサウンドは、HELLOWEENブレイク前の独産パワー・メタルの無骨で実直な魅力が成分無調整状態でパッケージング。 既に実力の片鱗を伺わせるラルフのロブ・ハルフォード型ハイトーンVoを乗せ、シャープに刻まれるGリフとスピーディなリズム、それに勇壮なドラマとフックを構築するツインGとがパワフルに駆け抜けて行く①②⑤⑧⑨や、ミドル・テンポの“STAND UP AND SHOUT”風④といった、表題『メタルよ永遠なれ』を地で行く収録楽曲の波状攻撃で畳み掛ける本編は、次作よりも遥かにメタル魂を揺さぶられまくり。あとドイツ出身で英語が不得手ゆえ、簡易にまとめられたサビメロも、覚え易くキャッチー・・・というか一緒に歌いたくなるシンプルさで、この手のサウンドにはプラスの好結果に繋がっていると言えなくもないような? お得な国内盤は廃盤になって久しいですが、今でも中古屋じゃ格安価格で購入が可能という、メタラーのお財布にも非常に優しい1枚です。
デビー・ガン(Vo)を中心に、'84年頃からカリフォルニア州サクラメントを中心に活動を開始。当初はNWOBHMの影響を全面に打ち出した(ベルギーのACID辺りに通じる)ダークなHMをプレイしていたが、同時期にベイエリアを中心に盛り上がり始めていたスラッシュ・シーンと交流を持ち、強く影響を受けたことで音楽性が先鋭化。デモテープ制作とメンバー・チェンジを繰り返す内に次第にスラッシュ色を強めていった彼らの音楽的変遷は、'10年リリースのコンピ盤『UP FROM THE ASHES』で窺い知ることができる。 '86年、ビル・メトイヤーのプロデュースの下、METAL BLADE RECORDSから1st『DEPTHS OF DEATH』をリリースしてデビュー。攻撃的なパワー/スラッシュ・サウンドがマニアから高く評価されたにも関わらず、バンドはこれ1枚でアッサリ解散。デビー嬢はZNOWHITEに加入(がアルバム制作には至らず)、テクニカルなBプレイでバンドの屋台骨を支えたマーク・スペンサーは、ジェイソン・ニューステッドの後任として、短期間ながらFLOTSAM & JETSAMに籍を置いた。 尚、近年バンドは再結成を果たしているが、ニュー・アルバムがリリースされる気配はない。