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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 301-400

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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 301-400

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FAR CORPORATION - Division One - Johnny Don't Got the Distance ★★★ (2023-01-06 01:00:55)

憂いを帯びたエレピに導かれてスタートするアルバム屈指の名曲。
サックスを効果的に用いたドラマティックな曲展開からは
プログレ・ハード風味も感じられたり。透明度の高い曲調に
ロビン・マッコーリーのエモーショナルな歌声がマッチしています。


FAR CORPORATION - Division One ★★★ (2023-01-05 00:40:53)

ドイツ人プロデューサーのフランク・ファリアンが音頭を取って結成、LED ZEPPELINの代表曲“天国への階段”をカヴァーしてスマッシュ・ヒットさせ全英チャート最高第8位に送り込んだことや、ボビー・キンボール、スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ペイチらTOTO組を始め、ロビン・マッコーリー、サイモン・フィリップス、メル・コリンズといった参加メンバーの豪華さでも注目を集めたプロジェクト、FAR CORPRATION(FARはプロデューサーの名前に由来)が'86年に発表した1stアルバム。これが唯一作だと思っていたら'94年に2ndアルバムもリリースしていたんですね。
その“天国への階段”だけでなく、FREEの名曲“FIRE AND WATER”もカヴァーしている…と書くとプロジェクトの目指す方向性がさっぱり分からなくなりそうですが、基本的には初期TOTO辺りに通じる洗練されたメロディアスHRに、ニューウェーブ風味を追加投入した感じのサウンドを志向。上記カヴァーもダンサンブルなアレンジが施されており、そのカヴァー曲のインパクトの大きさに本編の他の楽曲の存在感が食われてしまっていたり、今聴くと80年代全開なアレンジにむず痒さを覚える部分なんかもありつつ(そこが魅力でもあるわけですが)、それでも流石に実力派ミュージシャン達が集っているだけあってクオリティは高め安定をキープ。特にロビン・マッコーリーが歌い、TOTOのメンバーがバックを支える叙情的かつドラマティックな⑤は、この1曲を聴けただけでも本作購入価値はあった!と納得できる名曲ぶりですよ。いや強がりでなくて。
廃盤のままほったらかしは惜しい、と再発の願掛けを正月にしたくなる1枚。


ANGELICA - Angelica - Shine On Me ★★★ (2022-12-30 01:02:32)

爽やかで開放的なサビメロが実にキャッチーな
ハードポップの名曲。ロブ・ロックの鮮烈な
ハイトーンVoと、デニス・キャメロンの華やかな
Gプレイがこれまた楽曲の魅力を際立たせてくれています。


ANGELICA - Angelica ★★★ (2022-12-29 00:23:19)

デニス・キャメロン(G)率いるクリスチャン・メタル・バンドANGELICAが、INTENSE RECORDSから’89年にセルフ・プロデュース/セルフ・タイトルで発表した1stアルバム。
バンドと言いつつ、正式メンバーはデニスとロバート・バレン(B)の二人のみ。他パートもクレジットこそあるものの、この時点ではバンドとしての実態は殆どなかったようで、その穴を埋めるべく助っ人シンガーに起用されているのが誰あろう、IMPELLITTERI等での活躍で知られるロブ・ロック。彼の客演が、プロデューサー兼ゲストVoとして本作制作に関わるレーベルメイトのケン・タンプリン(ロブとはJOSHUAで一緒に仕事をした仲)の紹介によるものだったのかどうか定かじゃありませんが、ともあれ既に一発で彼と分かるパワフルな歌声をもって、サウンドの「格」を数段レベルアップさせてくれていますよ。
時にポップで柔和な味わいも醸し出すキャッチーなメロディと、デニスの構築美を湛えたメタリックなギターの組み合わせによって形成されるANGELICA独特のメロディアスHRサウンドは、デビュー作にしてほぼ確立の域に達しており、特に爽快感と高揚感を併せ持った⑤はこのバンド屈指の名曲の一つ。
通して聴くと強烈なインパクトに乏しいという、これ以降も彼らのカタログについて回ることになる弱点が早くも健在化してしまってはいるのですが(でもどのアルバムも出来は良い)、ロブのシャープなハイトーンVoが楽曲のメタル度数を底上げしてくれている本作は、ANGELICA入門盤としても取っ付き易い仕上がりとなっているのではないかと。
でも国内盤は廃盤か。


Jerome Mazza - Outlaw Son - Neverland ★★★ (2022-12-28 00:08:51)

アップテンポの曲調に、ジェロームの伸びやかなVoによって
謳われる爽快感溢れるメロディと、アルバムの
オープニング・ナンバーとして100点満点の働きぶりを
聴かせてくれる逸品です。


Jerome Mazza - Outlaw Son ★★★ (2022-12-27 00:08:32)

ジェローム・マッツァをご存知でしょうか?名前を聞いて「デニス・キャメロン率いるクリスチャン・メタル・バンドANGELICAの2ndで歌ってた人でしょ」とスラスラ出て来た貴方はかなり年季の入ったHR/HMリスナーとお見受け致します。本作はその彼がESCAPE MUSICから'18年に発表した2枚目のソロ・アルバムに当たる作品。ロック色皆無の1stソロは日本盤リリースなしでしたが、今回はキャッチーなメロディから躍動感溢れる曲調まで、ANGELICA時代にも通じるハイクオリティなメロディアスHRサウンドが詰まっており、めでたくRUBICON MUSICから国内盤の発売も実現しています。
本作においてブレーン役を担うのは、ジェロームとはスティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)のソロ・アルバム『BLACK BUTTERFLY』(’17年)制作時に縁を結んだ「北欧のメロハー請負人」ことトミー・デナンダーで、流石にこの手のスタイルを手掛けさせたら天下一品の腕前を発揮(作詞ではFMのスティーヴ・オーヴァーランドも全面関与)。溌剌と本編開巻を告げるOPナンバー①、哀愁を帯びたメロディが胸に沁みる⑤、解放感溢れるサビメロが絶品の⑧、エネルギッシュなHRナンバー⑪…と、80年代から全く衰えを感じさせないジェロームの伸びやかな歌声が映える、ポップで爽快なメロディアスHRチューンを次々に繰り出してきます。まぁ「この1曲!」という決定打に乏しい点はちょっと惜しいのですが、そういえばANGELICAもそんなバンドだったなぁと思い出して逆に微笑ましくもなるってもんですよ(ならない?)。
今後の継続的なソロ活動に期待せざるを得ない1枚です。


樋口宗孝 - 破戒凱旋録(DESTRUCTION) ★★★ (2022-12-22 06:38:10)

LOUDNESSのドラマー、故樋口宗孝が'82年に発表した1stソロ・アルバム。
まず邦題が良いんですよ。『破戒凱旋録』。非常に中二マインドをくすぐられます。この時期のLOUDNESS関連の作品は他にも『撃剣霊化』とか『魔界章典』とか『ジャガーの牙』とか、声に出して読みたくなる日本語タイトルばかりで最高でしたね。
本作の存在を初めて知った当時(LOUDNESSについてもよく知らなかった)は、ソロ・アルバムってのは「バンドの花形であるシンガーかギタリストしか作らない」というかなり誤った先入観があったもんで、縁の下の力持ち的存在の筈のドラマーが、山本恭司、CHAR、北島健二、中島優貴、鳴瀬喜弘、山田信夫、松澤浩明といった錚々たる面子をゲストに迎え、リーダーシップを発揮してソロ作を作り上げていたことにかなりの衝撃を受けましたよ。
過剰な自己主張は抑制しつつも、パワフルなドラミングで楽曲をリードする樋口が、(ソロ・アルバム制作にあたってお手本にしたであろう)コージー・パウエル同様に楽曲優先の姿勢を貫いた結果、スピーディに炸裂する①、スリリングな②、山本が関与しているせいか初期BOW WOW風味漂う③、哀愁を帯びてキャッチーな⑥…と、強力な楽曲が揃った本編はLOUDNESSのオリジナル・アルバムと比較しても何ら遜色のないハイクオリティっぷりを提示。とりわけ山田の熱唱が胸を打つドラマティックな慟哭の名バラード⑤と、樋口、CHAR、北島、中島、鳴瀬ら楽器陣が白熱したバトルを繰り広げるアルバム表題曲⑩は、アルバムの静/動サイドそれぞれの魅力を代表する名曲となっています。
樋口宗孝が不世出のドラマーであったことを証明する、ジャパメタ史に残る名盤。


PAUL DI'ANNO - The Worlds First Iron Man - Show Some Emotion ★★★ (2022-12-21 00:40:54)

神秘的なピアノのイントロだけで名曲の気配が漂ってきますが
ドラマティックな曲調はその期待を裏切りません。
ディアノの熱唱もベテラン・シンガーの凄味をしっかりと伝えてくれますよ。


PAUL DI'ANNO - The Worlds First Iron Man ★★ (2022-12-20 01:54:40)

IRON MAIDENフロントマンとして過ごした日々は遠くへと去り、’12年には保険金や補助金の不正受給がバレ逮捕されてしまい9ヵ月間臭い飯を食う等、『ザ・ノンフィクション』の登場人物ばりに塩辛い人生を送る男、ポール・ディアノ。そんなメタル界隈随一、中孝介の“サンサーラ”が似合う男が'96年に個人名義で発表したソロ・アルバムがこちら。
アルバム・タイトルが『~IRON MAN』だったり、今回もIRON MAIDENの楽曲(ライブ音源)が収録されていたりして「擦るなぁ」と苦笑を誘われますが、意外にも本編にメイデン色は希薄。いや希薄というか1曲目がいきなりジェームズ・ブラウンの“LIVING IN AMERICA”、更にWILDCHERRYの“PLAY THAT FUNKY MUSIC”とドファンクなカヴァー2曲が頭から続いた時は、買うCD間違ったかとジャケを二度見してしまいましたよ。
序盤3曲を聴いた時点じゃ「ポール殿ご乱心」を疑いたくなる本作でしたが、キャッチーなコーラス・ワークと、ギターが奏でる憂いを帯びたメロディの取り合わせが印象的な④以降は徐々に欧州風味も強まっていき、洗練すら感じさせるメロハー⑤、軽快に疾駆する⑨、そして最後には、これは掛け値なしの名曲!と太鼓判を押せるドラマティックな⑩も登場しますんでご安心を。また落ち着いてから序盤を聴き直すと、ロックンロール系の楽曲もポールのラフな声質には合っていて「これはこれであり」と案外違和感なく聴けてしまうんですよ。
色々と藻掻いていた90年代のポールの試行錯誤がガッツリ刻まれていますが、メイデン時代の遺産を擦り倒すよりはずっと好感度が高い1枚。メイデン・サイドの援助もあって長年の懸案だった膝の手術も受けられたそうで、今後の御大の人生に幸多からんことを。


CHEZ KANE - Powerzone - Powerzone ★★★ (2022-12-15 23:13:11)

パワフルに疾走するアルバム表題曲。
曲調はスピーディながら、勢い任せになることなく
メロディにもしっかりとフックが効いていて
気持ち良く伸びていくシェイ・ケインのVoのみならず
楽器陣にも見せ場が用意されていたりと、
配慮の行き届きっぷりが心憎いほど。


BATON ROUGE - Baton Rouge ★★ (2022-12-14 23:38:46)

フロントマンのケリー・キーリングがBLUE MURDERに参加するため脱退したのを引き金に、アルバム2枚を残して解散してしまったLA出身の4人組BATON ROUGEが、'97年に突如発表した3rdアルバム。
じゃあ再結成したのか?というと、そういうわけでもないそうで、5人目のメンバーとしてバンドを支え続けたプロデューサー/ソングライターのジャック・ポンティが、手元に未発表のデモ音源が残っていることに気が付き、ケリーをシンガーに起用して改めてレコーディングを行いリリースに漕ぎ着けたというのが真相の模様。ケリーも「再結成とは思っていない」との発言を残しているらしく、なので本作については3rdアルバムというよりは蔵出し音源集という表現の方が的確なのかも。
まぁ体裁は何であれ、ジャック・ポンティが惜しんだだけあって本作には良い曲が揃っています。プロダクションが簡素なのと、バンドとしてアレンジを煮詰めることが出来なかったのか、通して聴くと妙に淡々と流れていってしまうのが気にならなくもないのですが(ドラムは打ち込みか?)、例えば、憂いを帯びたハードポップ・ナンバー①や、アリス・クーパーの『HEY STUPID』(’91年)にも収録されていたドラマティックなバラード⑤というスタン・ブッシュが作曲に絡んでいる2曲、あるいはタメの効かせて盛り上がっていく曲調を、ケリーのエモーショナルな熱唱がさらに沸騰させる⑥辺りの楽曲なんて、1st、2ndアルバム収録の名曲と比較しても聴き劣りはしないですよ。
前言撤回。「3rdアルバム」と表して何ら問題もない、立派なクオリティを有する1枚です。


PAUL LAINE - Stick It In Your Ear - Dorianna ★★★ (2022-12-13 23:49:24)

キャッチーなメロディと美しいハーモニーにくるまれて
爽やかな哀愁を発散するハードポップの名曲。
ポール・レインの力感溢れる歌声もさることながら
後にPOKERFACEやTHE DISTANCEで活躍する
ケニー・ケイオスのよく歌うギターも楽曲の
魅力を底上げしてくれています。


PAUL LAINE - Stick It In Your Ear ★★★ (2022-12-13 01:38:53)

カナダ出身の才能豊かなシンガー/ソングライター、ポール・レインが、ブルース・フェアバーン・プロデュースのもと’89年に発表した1stソロ・アルバム。
それにしても国内盤のジャケットはちょっと酷過ぎやしませんかね。インディーズのパンク・バンドならまだしも、ポールのハスキー・ボイスを軸に、フックの効いたメロディと分厚いハーモニーがモリモリに盛られた「カナダのBON JOVI」的サウンドが託された本作に対して「よっしゃ、このジャケデザインで勝負だ!」と思えた担当者は一体どういう了見の持ち主だったのか?と。
あとOPナンバー①が7分以上ある大作の割にフックに乏しく、のっけでカマしてやろうとした挙句滑っている感があるのですが、一方で素直にBON JOVI路線を演ってくれている2曲目以降は一騎当千の逸品が揃っております。様々なアイデアを盛り込んでキャッチーにまとめ上げた②、パワー・バラードのお手本のようなメロディ展開が感動を呼ぶ④、80年代にありがちな曲名からして心浮き立つ⑤、乾いた哀愁を湛えてワイルドにロックする⑨…。中でも特筆すべきは、Gのケニー・ケイオス(POKERFACEやTHE DISTANCEも良かったですね)が奏でるイントロだけで一気に惹き込まれてしまう名曲③でして、心洗われるこの美しいサビメロはメロハー愛好家なら一度はお聴き頂きたい素晴らしさですよ。
そして、ポール・レインは今もBON JOVI路線の楽曲で才能を存分に振るって活躍してくれているので、良かった良かった。DANGER DANGER、THE DEFIANTSの諸作が気に入った方なら必ずや本作もツボにハマる筈なので是非チェックを。つか国内盤の再発が先か。


SARAYA - When the Blackbird Sings... - Into the Shade of the Sun ★★★ (2022-12-08 23:35:18)

じっくりと盛り上がっていく憂いを帯びた曲調に、
ハスキーボイスを振り絞るように歌うサライヤ嬢のVoがマッチした
アルバムのハイライト・ナンバー。


SARAYA - When the Blackbird Sings... ★★ (2022-12-08 00:53:25)

TESLAのギタリスト、ブライアン・ホイートの嫁さんでもあるという(国内盤CDの解説書情報)サンディ・サライヤ率いるSARAYAが、新メンバーとして日本ではイングヴェイとの仕事で知られるバリー・ダナウェイ(B)を加入させる等して態勢を整えた上でレコーディングを行い、'91年にPOLYGRAM RECORDSから発表した2ndアルバム。先頃、長らく入手困難な状態が続いていた1st『SARAYA』(’89年)の国内盤がようやく再発されたので、当然一緒にラインナップされるものかと思いきや、本作の方はスルーされてしまっていて「なにゆえ?」と首を捻った次第。
いやまぁ前作に比べると、Keyのフィーチュア度を下げた代わりにギターの存在を前面に押し出しヘヴィさを強調、更にブルーズ色の増強も図るという、90年代にリリースされたロック・バンドの2ndアルバムとしては(良くも悪くも)非常にありがちなスタイルが踏襲されていて、正直、印象としては地味めな仕上がりであることは否定できないのですが…。
今一つフックに欠ける楽曲が連続する序盤を聴きながら「ハズレ引いたか?」と不安になるお客さんもいらっしゃるかもしれませんが、その判断は早計というもの。力強さと爽快さを併せ持った④辺りから徐々に雰囲気が変わり始め、とりわけサライヤ嬢のパワフルなハスキーボイスを駆使した熱唱が胸を締め付ける哀愁のHRナンバー⑨、トニー・ブルーノの泣きを含んだGが楽曲をエモーショナルに盛り上げる⑩という終盤2曲は、これ聴くためだけにでも本作を購入する価値はあったと言い切りたくなる名曲に仕上がっていますよ。
なので、こちらの国内盤再発も是非ご一考をお願い致します。


CHEZ KANE - Powerzone ★★★ (2022-12-06 01:26:55)

80年代に活躍した女性ロック・シンガーへのリスペクトを満載にした会心のデビュー作『CHEZ KANE』(’21年)が、母国イギリスのロック・チャートで最高第8位を記録するという好成績を残したシェイ・ケイン(Vo)が、「鉄は熱いうちに打て」とばかりに矢継ぎ早に発表した2ndアルバム。’22年発表。
前作から僅か1年足らずのブランクでのリリースと相成りましたが、プロデュースから作詞作曲、ほぼ全ての楽器演奏、更には拘りを感じさせるジャケット撮影まで八面六臂の大車輪でこなすダニー・レクソン(CRAZY LIXX)の並々ならぬ入れ込みっぷりが物語る通り、ここには〆切に終われて慌ててでっち上げたような粗雑さは皆無。CRAZY LIXXの方が心配になってしまうぐらい、惜しげもなく投入された収録楽曲はいずれもメロディにフック効きまくりで、(月並みな表現で恐縮ですが)全曲シングルカット可能なクオリティ。声を張ると切ないフィーリングも醸し出すシェイ嬢の溌剌とした歌声を乗せ、今回も王道アリーナ・ロック路線を堂々突き進んでいます。
本作の魅力を集約したような高いヒット・ポテンシャルを感じさせる①②⑩、80年代だったらジム・スタインマン・プロデュースでボニー・タイラー辺りが歌っていそうな大仰なスケール感を有するバラード⑤、アルバム表題曲に相応しい高揚感を湛えてパワフルに駆け抜ける⑥といった逸品の数々には、単に「80年代風味満点だから素晴らしい」的な安易さとは一線を画する質の高さと説得力が備わっていますよ。収録全曲が“CRYN’”級の出来栄えを誇るVIXENのアルバム…という例えにピクリと食指が反応した諸兄にお薦めする1枚です。


THRESHOLD - Extinct Instinct - Part of the Chaos / Segue ★★★ (2022-12-01 22:30:03)

8分越えの大作ナンバーですが、重厚且つドラマティックな曲展開といい、
妖しくも叙情的なメロディを朗々歌い上げるVoといい、
プログレというよりは様式美ヘヴィ・メタリックな魅力を放っています。


THRESHOLD - Extinct Instinct ★★★ (2022-12-01 01:20:44)

遅まきながらイギリスのベテラン・プログレッシブHMバンドTHRESHOLDに対する興味が再燃し、00年代以前に発表された彼らの初期のカタログを中古屋で見かける毎にコツコツと買い集めて早数年。彼らの作品は日本盤が出たり出なかったなのですが、’97年発表の早口言葉みたいなタイトルも印象的なこの3rdアルバムは、ファンダンゴから日本盤がちゃんとリリースされています。
前作1枚のみで脱退した2代目Voグリン・モーガンの後任として、初代フロントマン――これ以降も出たり入ったりすることとなる――ダミアン・ウィルソンの復帰という人事異動を経た本作なれど、内容の方は、重々しく刻まれるリフ&リズム、山あり谷ありの険しい道のりを越えた末に美しい絶景が目の前に広がっていくような、複雑にしてダイナミックに編まれた曲展開、その上で潤いに満ちた歌メロを拾っていくダミアンのVoと、デビュー作で提示した音楽性を順調にブラッシュアップさせた仕上がり。
小曲ながら胸を打つバラード④⑧⑪に垣間見えるメロディ・センスの冴えと、難解さや実験性よりもヘヴィ・メタリックなドラマ性、構築感を前面に押し出した楽曲構成を両軸に繰り広げられるTHRESHOLD流プログレ・メタル・サウンドの魅力は、緊張と緩和の波状攻撃で畳み掛ける⑥、そしてアルバムのクライマックスを妖しくもドラマティックに盛り上げる8分越えの大作ナンバー⑩に集約されているのではないでしょうか。
プロダクションのクオリティも向上していて、確かに初期の名作との評価に恥じぬ1枚です。


BRIAN MCDONALD - Wind It Up - Amnesty ★★★ (2022-11-30 00:26:58)

比較的ハード寄りの曲調でアルバム終盤を引き締めるロック・チューン。
だからといって勢い任せにしたりせず、哀愁を帯びたキャッチーな
コーラス・ワークといい、メロディにはしっかりとフックが
効かされている辺りは、流石職人の仕事です。


BRIAN MCDONALD - Wind It Up ★★★ (2022-11-29 01:23:16)

80年代半ばにソロ・シンガーとしてデビューを飾るも、その後は職業ソングライターとして、しばし雌伏の時を過ごさざるを得なかったブライアン・マクドナルドが、'00年にMTM MUSICから発表したカムバック・アルバム。通算2作目。
ギタリストとして、80年代から付き合いのある旧友で、WINGERやDOKKENのメンバーとしての活躍でも知られるレブ・ビーチが全面参加している以外、歌や作詞作曲は勿論、楽器パートも自ら手掛ける等、文字通りの「ソロ・アルバム」としてレコーディングされています。10年以上も年齢を重ねたことで、しっとりと落ち着いたAOR/産業ロック寄りの音楽性でも志向していそうなものですが、本作に託されているのはゴージャスな音作り、ブライアンのちょっと鼻にかかった甘い歌声、キャッチーに磨き上げられたメロディ、それを華麗に彩る分厚いボーカル・ハーモニー&レブのテクニカルなGプレイといい、往年のDEF LEPPARDを思わす溌剌としたポップ・メタル・サウンド。あまりのそっくりさんぶりに「ひとりLEPS」と評されたりもしたようですが、それは悪口というよりは、真似るにしても手間暇と才能を要するDEF LEPPARDサウンドをハイクオリティに再現しうるブライアンの手腕に対する最上級の誉め言葉と受け止めるべきではないかと。
特に、哀愁に満ちた曲調をレブのメロディアスなGが盛り上げる⑩、フックの効いたメロディを伴ってハードに駆け抜けていく⑪、ドラマティックかつエモーショナルなバラード⑫といった逸品が連続する、本編のラスト・スパートぶりは圧巻です。
この人のソロ作はいずれ劣らぬ力作揃いですので、これにピンときたらば1stや3rdも是非。


PLACE VENDOME - Thunder in the Distance - Never Too Late ★★★ (2022-11-24 23:36:09)

軽快な疾走感に、キスクの伸びやかな歌声と涼し気な哀メロが
載ってキャッチーに躍動するアルバムでも1、2を争う名曲。
アレッサンドロ・デル・ヴェッキオの曲作りのセンスが
キラリと光っています。


PLACE VENDOME - Thunder in the Distance ★★★ (2022-11-24 00:41:54)

HELLOWEEN脱退以降は第一線から退いていたマイケル・キスクの才能を惜しみ、何とか彼を表舞台に引き留めるべくFRONTIERS RECORDSの全面バックアップのもと始動したプロジェクトPLACE VENDOME。その後キスクがHRナンバーを歌うことに前向きになり、盟友カイ・ハンセンと共にUNISONICを結成したこともあって、「もうPLACE VENDOMEはお役御免か?勿体ないなぁ」と思っていたタイミングで、'13年に発表された3rdアルバム。
前作『STREETS OF FIRE』もなかなかの名盤でしたが、今回も負けてはいません。レーベルはマイケルにリラックスして歌って貰うべく、プロデューサーには引き続き気心の知れたデニス・ワードを起用し、ソングライターとして必殺請負人アレッサンドロ・デル・ヴェッキオを筆頭に、メロハー作りのツボを知り尽くした匠達を大集結させるという万全の援護体制を敷いており、こうなると最早「本作のメロディック・ロック・アルバムとしての完成度の高さは推して知るべし」(←FRONTIERS関連作品の感想では毎度これと似たようなフレーズを使い回していて、我ながら語彙の少なさが嫌になるのですが)といったところ。
ともあれ、完全にブランクから回復したキスクの喉はOPナンバー①から絶好調で、泣きのGが楽曲を劇的に盛り上げる③、清涼な雰囲気漂わす⑥、舞い上がっていくような爽快感溢れる⑦、そしてアレッサンドロの作曲センスがキャッチーに唸りを上げる名曲⑧といった楽曲は、キスクの堂々たる歌唱とメロの素晴らしさが相俟ってグッと惹き込まれる仕上がり。
PLACE VENDOMEのアルバムにハズレなし!を実証する一作です。


BEGGARS & THIEVES - Beggars & Thieves - Beggars & Thieves ★★★ (2022-11-23 00:14:11)

アルバムの締め括り役を担う哀愁のバラードにしてバンドのテーマ曲。
熱く歌い込むタイプのVoとアコギを生かしたエモーショナルな
盛り上がりっぷりに惹き込まれてしまう名曲です。


BEGGARS & THIEVES - Beggars & Thieves ★★★ (2022-11-21 22:51:58)

80年代はオジー・オズボーンのバンドで活躍し、名曲“SHOT IN THE DARK”の共作者としてもその名を刻むフィル・スーサン。この人に関してはベーシストとしての印象はまるで残っておらず、それよりも後年、雑誌インタビューでオジーから「ホームラン級のバカ」と評されていたことばかりが思い出されてしまうのですが、彼が結成したBEGGERS & THIVESが、'90年に米メジャーのATLANTIC RECORDSから発表したこのデビュー作は聴き応え十分の内容。オジーの発言で我が身に刷り込まれた「フィル・スーサン=激烈バカ」というマイナス・イメージが上書きされるインパクトを持った力作に仕上がっていますよ。まぁ作曲クレジット見るとこの人全然曲作りに関与してないんですけどね…。
90年代の作品ながら、当時流行りのブルーズ色は然程強くなく(だからセールス的に失敗したのか?とか思ったりも)、基本となるのは溌剌とエネルギッシュな80年代型アメリカンHRサウンド。さりとて能天気になり過ぎることもなく、スケールの大きなOPナンバー①に始まり、緊迫感を湛えて駆け抜けるハード・ナンバー②、爽やかな哀愁薫る⑤、デズモンド・チャイルドのペンによるノリ良くキャッチーな⑧、ラストを雄大に締め括るバンドのテーマ曲でもある⑪…と、本編にはメロディにもアレンジにもきっちりとフックの効いた逸品がズラリ。バンド・メンバーはフィル以外ほぼほぼ無名の面子ばかりながら、熱唱型のVoを筆頭に、安定感溢れるパフォーマンスを繰り出してサウンドの土台を手堅く支えてくれています。
隠れた佳作として、ふと思い出して聴き直したくなる1枚。フィル・スーザンが抜けた後もバンドは存続し、アルバム数枚をリリースしているようなので、機会があればそちらも聴いてみたいなぁ。


IQ - Are You Sitting Comfortably? - Falling Apart at the Seams ★★★ (2022-11-18 00:02:44)

柔和な声質のVoによって歌われるメロディはポップな響きも湛えていますが
変化に富む曲展開に支えられた7分以上に及ぶ長尺といい
スペーシーなアレンジといい、プログレッシブ・ロックならではの
魅力もきっちり兼ね備えた名曲に仕上げられています。


IQ - Are You Sitting Comfortably? ★★★ (2022-11-17 00:27:40)

80年代初頭に英国で盛り上がりをみせたネオ・プログレッシブ・ロック・ムーブメントの渦中にて、ブームの旗手たるMARILLIONに続く存在と目されたロンドンの5人組が、'89年にSQUAWK RECORDSから発表した4thアルバム。
発売当時は「けっ、気取ったバンド名を名乗りやがってよぉ」と、いらぬ僻み根性を発動させ購入はスルーしてしまったアルバムですが、後追いでチェックしてみたところ、その内容の素晴らしさに感銘受けまくり。正直舐めててスマンかった、と。
メジャー・レーベルからのリリースということで、プログレ・メタル的な大仰さや緊張感の演出よりも、キャッチーなメロディをしっかりと聴かせることに重きを置いた、ポップ寄りの路線に仕上げられてはいるのですが、一見耳馴染みが良く分かり易いサウンドようでありつつ、実は曲間をシームレスに繋いで全編を流れるように構築し、変拍子や技ありの曲展開をさりげなく随所に差し込む等、聴くほどに新たな発見がある作り込みっぷりと、高いインテリジェンスを感じさせる作曲センスには、かつての己のバンド名に関する毒づきはサクッと棚上げして「流石、I.Q.なんて名乗るだけのことはありますなぁ」と華麗に手のひら返し。特に映画のサントラを思わせるスペーシーな③をイントロとしてスタートする④や、9分越えの山あり谷ありの大作⑦は、長尺をまるで苦に感じさせないバンドのポテンシャルがフルに発揮されたアルバムのハイライト・ナンバーではないかと。
今となってはあまり顧みられることのないバンドですが、MARILLIONや初期DREAM THEATERを愛する向きはこちらもチェックしておいて損はないよ!な1枚です。


CHRIS LANEY - Only Come Out at Night - B4 It’s 2 Late ★★★ (2022-11-16 00:40:12)

叙情性を増幅するKeyのアシストも得て
クリスのハスキー声を駆使した熱唱と
猛烈な悲哀を発散するメロディの魅力とが
ガッチリ噛み合ったアルバムのハイライト・ナンバー


CHRIS LANEY - Only Come Out at Night ★★★ (2022-11-15 00:55:55)

ロニー・アトキンスからの信頼篤いPRETTY MAIDSのG兼Key奏者にして、グラミー賞ノミネート経験も持つ売れっ子プロデューサー、最近だと80年代の大ヒット映画主題歌をHR/HMアレンジでカヴァーするプロジェクト『AT THE MOVIES』シリーズ2作を手掛けたことでも知られるスウェーデン出身のマルチ・アーティスト、クリス・レイニーが’10年に発表した2枚目のソロ・アルバム。
ブライアン・ロバートソン、コニー・ブルーム、イアン・ホーグランドらをゲストに迎えて制作されている本作は、序盤はダークで重厚なHMナンバーが連続するためそっち路線の作品なのかと早合点しそうになってしまいますが、あいやしばらく。クリスの本領が発揮されるのは、悲哀に満ちたメロディを自らハスキー声を振り絞るように熱唱する哀愁メロハーの名曲④からであり、以降は溌剌と躍動感溢れる曲調に、思わず一緒に歌いたくなるキャッチーなコーラス、フックの効いたメロディとに彩られた80年代風味満点のポップ・メタル・ナンバーが立て続けに繰り出されますのでご安心を。
収録楽曲の中ではやはり④の素晴らしさが際立っているものの、それ以外にも世が世ならビルボード・チャートを賑わしたって全然不思議ではないキャッチーな⑥、スタジアムで大合唱が巻き起こる光景を幻視してしまう⑧、エッジを効かせてエネルギッシュに疾走するHRナンバー⑦⑨等々、逸曲がズラリ。
80年代のポップ・メタルの名盤群、あるいはクリスがプロデュースを担当したCRAZY LIXX辺りを愛する向きには猛烈にプッシュする1枚に仕上がっています。


JOHN WEST - Long Time...No Sing - Highway To Roppongi ★★★ (2022-11-11 01:27:34)

タメと情感を効かせてブルージーに盛り上がる
スロー・ナンバー。この手の楽曲を歌うジョン・ウェストの
Voもまた魅力的ですし、その感情移入ぶりに
「六本木で一体何が?」と思わずにはいられませんよ。


JOHN WEST - Long Time...No Sing - Set Me Free ★★★ (2022-11-11 01:23:19)

哀愁のメロディと抒情的なKeyを纏って
軽快に跳ねるハードポップ・ナンバー。
この手のタイプの楽曲を
押しつけがましくなることなく、
リラックスして伸びやかに歌い上げる
ジョン・ウェストのVoが非常に魅力的です。


JOHN WEST - Long Time...No Sing ★★★ (2022-11-10 06:30:54)

ARTENSIONやROYAL HUNT等での活動で知られるシンガー、ジョン・ウェストが'11年に発表したソロ・アルバム。シンガーとしての実力は知っていてもソロ・キャリアまでは追いかけていなかったので、すでに3枚(本作が4枚目)もソロ・アルバムをリリース済みとは結構驚きました。
なので過去作と比較してどうこう語ることは出来ないのですが、ここで披露されているのは重厚なHMナンバーに、哀愁のメロハー、タメを効かせてじっくりと盛り上がるブルージーなバラード等々バラエティに富むサウンドであり、下手すれば取っ散らかった仕上がりになりそうなところを、広いレンジと確かな表現力を誇るジョンのVoがビシッと一本筋を通して引き締めるという塩梅。ガンの後遺症で歌唱力の衰えが指摘されていた時期もありましたけど、本作を聴けばそれが完全に杞憂に終わったことをご納得頂けるのではないかと。
HMナンバー②における「らしさ」全開のパワフルな歌いっぷり、逆にキャッチーな哀メロが踊る③や、ピアノを生かした⑨、ハートウォーミングな⑪といったバラード系の楽曲で披露する肩の力を抜いた歌唱も味わい深く、中でも個人的に強く一押ししておきたいのが“HIGHWAY TO ROPPONGI”なるタイトルが冠された⑤。珍曲好きとしては本作購入動機の大半がこの曲の存在にあったといっても過言ではなくらいなのですが、ブルージーな曲調にジョンのエモーショナルな熱唱が映える楽曲自体非常に胸に沁みる出来栄えで、決して単なる珍名のネタ曲には終わっていない点も評価ポイントです。
これ以前のソロ作もチェックしてみたくなる一作でありました。


WHITE SPIRIT - Right or Wrong - Don't Say No ★★★ (2022-11-09 00:20:59)

Voはリー・スモールが担当。雄々しくドライブする曲調に憂いを帯びた
メロディが乗っかったブリティッシュHMの旨みに満ちた名曲です。
曲展開をドラマティックに盛り上げるメル・ピアソンのKeyが良い仕事してます。


WHITE SPIRIT - Right or Wrong ★★★ (2022-11-08 01:10:51)

ヤニック・ガーズ(IRON MAIDEN)や、後にBAD COMPANYに加入する故ブライアン・ハウ(Vo)、現TANKのミック・タッカー(G)も在籍していたWHITE SPIRITが残した幻の2ndアルバムを、ジェフ・スコット・ソート、スティーヴ・オーヴァーランド、リー・スモールといった仕事人シンガー達のサポートを得てリ・レコーディングした作品。ブライアンとミック在籍時期の楽曲はコンピ盤『60 MINUTES PLUS』で1曲だけ聴いたことがありましたけど、まさかアルバム丸ごと聴ける日が来ようとは…。音源発掘に尽力してくれたメル・ピアソン(Key)とミックには足を向けて寝られませんね。
当時メジャー・レーベルとの契約を企図して制作されているだけあって、ここには例えば“CEETAH”みたいなNWOBHM然とした疾走ナンバーは見当たりませんが、元々ゴリゴリにメタリックな音楽性のバンドではなかったので落胆には当たらず。むしろプログレ・ハード的感触も漂わすKeyを活かしつつ、現代テクノロジーを駆使して可能な限り修復されたブライアン在りし日の熱唱が映える収録楽曲の数々は、ブリティッシュHMらしい重厚感を宿した①(Voを取っているのはジェフ)、ブライアンのエモーショナルな歌唱が哀メロの魅力を引き立てる⑤、リーのパワフルなVo、メル・ピアソンのKeyとミック・タッカーのGの掛け合いが劇的な盛り上がりを演出する本編のハイライト⑦、スティーヴのVoが流石のハマりっぷりを呈するブライアン在籍時代のBAD COMPANYのカヴァー⑨…と、時の試練に余裕で打ち勝つだけのクオリティを誇る逸品が並んでいます。
本作を聴くと、現在制作中だという完全新作への期待も俄然高まるというものですよ。


VYPERA - Eat Your Heart out - Rock N' Roll ★★★ (2022-11-04 01:36:58)

こんなタイトルですが、緩いノリは皆無。
北欧らしい冷ややかさを纏ってタイトに疾走します。
要所要所でギターが差し込んでくるメロディが
また楽曲を美味しく盛り上げてくれます。


VYPERA - Eat Your Heart out ★★★ (2022-11-03 01:52:14)

スウェーデンから登場した若き5人組、VYPERAがFRONTIERS RECORDSと契約を交わして’22年に発表したデビュー作。
メンバー曰く、本作に託されているのは「W.A.S.P.とTRIUMPHとDIOから受けた影響を独自のセンスでまとめたサウンド」とのこと。なるほどな…って、その例えだと一体どんな音楽性なのかさっぱり分からんのですが、流れ出すのはメタリックなエッジをしっかりと効かせつつ、透明感を帯びた哀メロが印象的に踊る古き良き北欧メタル・スタイルを踏襲するサウンドだったのでホッと一安心。
ただ、音楽雑誌のレビューでは90点台の高得点を獲得していましたが、それを全面的に信じてしまうと肩透かしを食らう可能性もある内容ではないかなと。それよりも個人的には、やや甘さの残る歌とテクニカルなギターの「G高Vo低」(低というほど下手じゃないか)な取り合わせとか、粗削りなプロダクションに未洗練な曲展開とか、もしこれが90年代に発表されていたなら日本盤は確実にゼロ・コーポレーションから発売されていたに違いない!ってな仕上がりっぷりの方にグッとそそられた次第で。
印象的なギター・フレーズを散りばめて疾走する⑤や、一転してエモーショナルに聴かせるバラード⑥、威勢の良い曲調と哀愁のメロディのメリハリの効いた取り合わせが秀逸な⑦等、とりわけ耳を捉える楽曲が連続する中盤の盛り上がりが白眉。曲によっては同郷の先輩バンドPROUDのことを思い出したり思い出さなかったりという。
次作以降にも大いに期待の持てる1枚です。


AGNES - Hegemony Shift - Hegemony Shift ★★★ (2022-11-02 00:51:17)

力強さと技巧を併せ持つ曲展開、スピーディに駆け抜ける
サビメロの高揚感に惹き込まれずにはいられないアルバム表題曲。
ハイトーンの連続する難易度の高いメロディを見事に歌いきる
キム・サンホンの堂々たる歌唱力に痺れますよ。


AGNES - Hegemony Shift ★★★ (2022-10-31 23:33:40)

「韓国のCONCERTO MOON」ことZIHARDのアルバムでも見事な歌声を披露していたMEVIN KIM(ZIHARD時代はキム・サンホン名義)が中心となり、バンドメイトであるRACHEL MOTHER GOOSEのメンバーや、EDWINE DARE、COSMOSQUAD等での活動で注目を集めたバカテク・ギタリスト、ジェフ・コールマンらをゲストに迎えて立ち上げた日韓米の多国籍プロジェクトAGNESのデビュー作(’21年発表)。
ZIHARD同様、テクニカルなGとKeyがスリリングに絡み合いながら突っ走る様式美HMサウンドを劇的に炸裂させる作品で、プログレ・メタルばりの曲展開も難なくこなすメンバーの演奏力の達者さもさることながら、個人的に最も感銘を受けたのは痒い所に手の届くメロディの充実っぷり。シンフォニックな序曲①から間髪入れずにスタートする②のイントロを数秒聴いただけで、こちとら長年抱え続けている「韓国のバンドはクサメロ作りに秀でている」との持論を益々強化されてしまいましたよ。
とりわけ、雄々しくドラマティックに疾走するアルバム表題曲③、そこはかとなくX JAPAN風のバラード⑥、火花散るスピード・ナンバー⑩、ZIHARDの名バラード“WITHOUT YOU”を思い出す物悲しい⑫といった楽曲は、起伏の激しいメロディを堂々歌い上げるキムの卓越した歌唱力と、いちいちこっちの泣きのツボを突いてくるメロディに彩られた楽曲自体の素晴らしさとが相俟って、聴いていると思わず眉毛が八の字になってしまうという。
ZIHARDの活動状況が日本まで伝わって来ない現在、是非ともこのAGNESは継続プロジェクトになって欲しいと思わずにはいられない力作です。


Lance Powers - Lance Powers - Heavens on Our Side ★★★ (2022-10-28 01:15:43)

一昔前ならロビー・ヴァレンタイン、
現在ならロブ・モラッティを思い起こさせるランス・パワーズの
ハイトーンVoによって歌われる哀愁のメロディも良いですが、
合間合間で泣きのメロディを差し込んでくるギターの
ナイス・アシストぶりも聞き逃せない名曲です。


Lance Powers - Lance Powers ★★★ (2022-10-27 00:53:39)

クリスチャン・ミュージック・シーンを主戦場に活動するアメリカ人シンガー、ランス・パワーズが90年代に発表した2枚のソロ・アルバムから、日本市場向けにベスト・テイクを選曲して収録する特別編集企画盤。(’99年リリース)
スイスのHMバンドSTORMBRINGERの元フロントマンというキャリアや、「パワーズ」なんて力強いお名前の響きといい、ジャケットにフィーチュアされたX JAPANのTOSHI似のグラサンで決めたご本人の勇姿(実際格闘技やパワー・リフティングを嗜むマッチョ系らしい)から、ゴリっとメタル寄りの音楽性を期待してしまうかもですが、いきなりピアノをバックに切々と歌い上げる抒情バラード①にて幕が上がる本作で披露されているのは、結構AOR寄りのメロハー・サウンド。GIANTやプロデューサー業での活躍で知られるダン・ハフ、売れっ子セッション・マンのマイケル・ランドゥといったゲスト・ミュージシャンの顔触れもそうした作風を裏付けているのではないかと。
但し、上記ギタリスト達は単なるBGMに留まらぬGプレイで楽曲にエッジを加えてくれていますし、欧州風味の憂いを湛えた②やクリスチャンらしい神聖な雰囲気を身に纏うバラード⑤等、ランスの繊細なハイトーンVo(ちょいロブ・モラッティっぽい)が歌い上げる哀愁のメロディの魅力は、控えめなハードネスを補って余りあるフックを有してくれていますので舐めたらアカン。特にガツンとロックする曲調に、ダン・ハフの泣きのGがエモーショナルな彩りを加える④ なんて何度聴いてもグッとくる名曲ですよ。
近年は日本までは活動状況が伝わってきませんが、お元気でお過ごしなのでしょうか?


ROBERT TEPPER - No Easy Way Out - Angel of the City ★★★ (2022-10-26 01:17:12)

脂っこい出演陣に大味な演出と、80年代丸出しな作風が今となっては
愛おしいポリス・アクション「コブラ」の主題歌としても知られるバラード。
タレサン、指ぬきグローブ、ヤティマティックという昭和の小学生憧れの
三種の神器を身に着けたスタさんのゲップが出そうなクドい勇姿とは裏腹に
女性Voとデュエットで聴かせる哀愁の曲調はオシャレで洗練されています。


ROBERT TEPPER - No Easy Way Out ★★★ (2022-10-24 23:38:09)

シルヴェスタ・スタローンに見い出されたアメリカ人ソロ・シンガー、ロバート・テッパーが'86年に発表した1stアルバム。邦題は『逃れえぬ闘い』。
本作は昔からAOR/産業ロックのレア・アイテムとして人気が高く、先日も帯付の国内盤CDがオークション・サイトにて5桁の値を付けられて落札されていましたが、内容に関しても値段負けしない、プレミアム価格に相応しいだけの質の高さを誇っていますよ。
どうにも「一発屋」なイメージがついて回る御仁ながら、ギンギンに効かされたシンセサイザーが嬉し恥ずかし懐かしい濃厚な80年代臭を運んでくるAOR/産業ロック・サウンドは、パワフルなハスキー・ボイスを生かした歌唱力から、フックに富んだメロディを巧みに盛り込むソングライティング・センス(パット・ベネターやベニー・マドーンズといったアーティストのヒット曲の作曲に関与)に至るまで、デビュー前の長い下積み時代に獲得した経験値がしっかりとクオリティに反映された、付け焼刃ではない深みが伝わってくる仕上がり。
本作においては、先頃再編集版が劇場公開され話題を呼んだ映画『ロッキー4 炎の友情』の挿入歌に起用されたOPナンバー①が特に人気曲として名高いですが、それ以外にも個人的に小学生の時分から愛して止まないスタさん主演のアクション映画『コブラ』主題歌である②、女性Voとのデュエットで贈るソウルフルなバラード④、ゲスト参加のダン・ハフのGも熱い本編随一のロック・チューン⑦等、聴き応え十分の楽曲が並んでいます。いかにも80年代な音作りは今聴き直すと多少イラっとさせられるかもですが…。
何はともあれボチボチ国内盤の再発をご検討頂きたい1枚であります。


LOS ANGELS - Los Angels - I Will Carry You ★★★ (2022-10-21 00:35:00)

原曲はアメリカン・アイドル出身のシンガー、クレイ・エイケン。
哀愁に満ちた曲調にミケーレ・ルッピの伸びやか且つダイナミックな
歌声が映える、まさにアルバムの掴みに相応しい逸品です。


LOS ANGELS - Los Angels ★★★ (2022-10-19 23:20:36)

今ではWHITESNAKEのKey奏者としても知られるイタリア出身の実力派シンガー、ミケーレ・ルッピ。それまで「メロパワ・フィールドの人」との印象が強かった彼氏に対するイメージを大きく覆す切っ掛けとなった(これ以前にもMICHELE LUPPI'S HEAVENとかもありましたけども)プロジェクトLOS ANGELSのデビュー作。'08年発表。
FRONTIERS RECORDSバックアップの下、トミー・デナンダー、ファブリッツォ・V・グロッシ、グレッグ・ジェフリア、デニス・ワードといった同レーベルお馴染みの仕事人勢の協力を得て制作されている本作は、ほぼ全曲がオリジナルで固められていた次作『NEVERLAND』(’10年)に対し、リチャード・マークスをメインに、クレイ・エイケン、BRIDGE 2 FAR、エドウィン・コリンズといったポピュラー・ミュージック・シーンのアーティスト達の楽曲に挑んだカヴァー曲集の体裁が取られています。(中にはゲイリー・ムーン在籍時代のNIGHT RANGERなんつーマニアックなチョイスもあったりも)
ルッピの音楽的ルーツを開陳するようなAOR/産業ロック・アルバムゆえ、メロパワ路線を期待するとスカされてしまいますが、収録曲はフックの効いた端正な逸品揃いの上、オリジナルに比べるとHR色を増したアレンジが施されていますし、何よりVISION DIVINE時代から定評のある、彼の伸びやかなハイトーンVoはやはり惚れ惚れする素晴らしさ。パワーはセーブ気味に、よりまろやかで繊細な表現力にフォーカスした歌唱が映えるOPナンバー①は名曲ですよ。
次作ともども、ミケーレ・ルッピのシンガーとしての才が存分に発揮された力作です。


BOB CATLEY - Immortal - The Searcher ★★★ (2022-10-18 23:41:37)

タメの効いた重厚且つドラマティックな曲調は
MAGNUM味強めで、そこに威厳と人間的暖かみを
併せ持ったボブ・カトレイの歌声が当然の如く
バッチリとハマっています。


BOB CATLEY - Immortal ★★★ (2022-10-18 00:03:45)

英国の至宝MAGNUMのフロントマンであるボブ・カトレイが、'08年にFRONTIERS RECORDSから発表した個人名義では6枚目となるアルバム。このあと再結成MAGNUMでの活動が軌道に乗って忙しくなってしまったせいか、今のところこれが最後のソロ・アルバムとなっています。
発売当時、音楽雑誌のレビューで「可もなく不可もなく」な点数を食らって売り上げが伸び悩み(?)、ちゃんとキングから日本盤が発売されたにも関わらず、ショップにいっても中古盤すら殆ど見かけることがないという不憫かつ影の薄い本作ですが、アートワークはMAGNUM作品でもお馴染みのロドニー・マシューズが担当。制作に当たってはプロデュースをデニス・ワード、作曲はマグナス・カールソンが一手に担うという隙のない布陣によるバックアップ体制を敷いているのですから、そりゃクオリティが低い物が出来上がるわきゃないでしょう?と。
Gを前面に押し出しヘヴィ・メタリックなアグレッションの増強が図られていた前作『SPIRIT OF MAN』(あれはあれで良き)に比べると、今作は開幕早々から明らかな通りKeyやシンフォニックなアレンジによる優美な味付けが回復傾向を示していて、華麗かつキャッチーに駆け抜けていく④や⑥、重厚で憂いに満ちた曲調にボブの威厳と暖かみを併せ持った説得力溢れる歌声が絡む②⑤⑪、ポップ・センスも活かされた⑧といった劇的な楽曲群は、思わず「よっ、待ってました!」と声を掛けたくなる名曲に仕上がっています。
是非とも再評価をお願いしたい一作。中古盤を見かけたら要レスキューですよ。


GRIMMSTINE - Grimmstine - Straight as an Arrow ★★★ (2022-10-13 23:50:59)

モダンなシュレッド・ギターと、スティーヴ・グリメットの
力強くオールドスクールなVoをフィーチュアして
ドラマティックな盛り上がりを呈するアルバム後半のハイライト・ナンバー。
冷ややかな抒情性を楽曲に付与するKeyも良い仕事しています。


GRIMMSTINE - Grimmstine ★★★ (2022-10-13 00:34:02)

スティーヴ・グリメットが急死してしまったのは今年8月のこと。折しも彼が過去に関わったバンドのカタログが一斉にリマスター再発され、コツコツと買い直していたタイミングだったので驚きもひとしおでしたよ。そんなわけで(?)今回紹介させて頂きたいのが、彼が一時期アメリカに住んでいた頃に縁を結んだスティーヴ・スタインなるギタリストと結成したバンド、GRIMSTAINが'09年に残した唯一のアルバムであるこちら。
グリメット+スタインだからグリムスタイン…あんまし購買意欲をそそられるバンド名じゃありませんが、今時のギタリストらしい切れ味鋭いシュレッド・ギターと、オールドスクールなハイトーンVoを組み合わせた正統派HMサウンドのカッコ良さはなかなかのもの。モダンな味付けが目立つ序盤こそ「悪くはない」ぐらいの感想ですが、アグレッシブな疾走ナンバー⑤を境に空気が一変。以降は7分越えのヘヴィ・バラード⑥、印象的なGリフを伴って突っ走る⑦⑫、重厚にしてドラマティックな⑧、暗から明へのメロディ展開が絶妙な⑨、ピアノによるイントロだけで掴みはOKとなる⑩、爽やかで抜けの良い⑪、ブルージーな哀愁漂わす⑭…といった具合に、キャラの立ちまくった楽曲が大集合しています。ボートラの⑯まで素晴らしいのですから何をか況やですよ。
まぁ流石に収録時間70分オーバーってのは明らかに詰め込みが過ぎますけども、スティーヴ・ステインの作曲者/ギタリストとしての才能の煌めき、張り/艶/伸びのいずれの面においても衰え皆無のグリメットの歌声が存分に堪能できる力作であること疑う余地がありません。このまま埋もれさすのは余りに勿体なさ過ぎるので再評価を是非。中古盤も安いですしね。


JEFF PARIS - Lucky This Time - After the Tears Are Gone ★★★ (2022-10-12 00:48:56)

故ブレット・ウォーカーとジェフ・パリスの共作曲。
才人同士の組み合わせですから素晴らしい楽曲に
仕上がらない筈はなく。
フックの効いた哀愁のメロディ、情感豊かな歌と
潤いを増幅させるKeyの共演が胸を打つ逸品です。


JEFF PARIS - Lucky This Time ★★★ (2022-10-11 00:08:18)

ソロ・アーティストとしてアルバム・リリースやツアーを行う傍ら、リタ・フォード、VIXEN、MR. BIGといったバンドに楽曲提供を行う等、80年代からシンガー/ソングライターとしても活躍してきたジェフ・パリスが、'93年に乞われてイギリスのNOW AND THEN RECRODSから発表した3rdソロ・アルバム。
プロデュースからエンジニアリング、果ては全パートの楽器演奏まで一人でこなすマルチ・プレイヤーぶりを発揮してレコーディング作業を敢行。それに関してはご本人が「エナジーとアイデアがあればどんな状況でもアルバム制作は可能。大金は必要はない」との男前な発言を残してくれています。カッコイイじゃないのさ。
収録曲は、共作者としてMR. BIG、売れっ子セッション・マンのマイケル・トンプソン、KISSのポール・スタンレー、BAD ENGLISHのリッキー・フィリップスら豪華な面子がクレジットされていて、気の利いたアレンジから、痒い所に手の届くメロディ展開に至るまで、長年かけて培われたソングライターとしての腕前が存分に振るわれた仕上がり(歌の上手さに関しては言うまでもありません)。MR. BIGの1st『LIVE AND LEARN』にも収録されたゴージャスなOPナンバー①や、80年代ならヒット・チャートを賑わしていても不思議ではないバラード⑩辺りも素晴らしいのですが、個人的に特に一押ししたいのが⑧。知る人ぞ知る才人ブレット・ウォーカーとの共作で、胸打つ哀愁の名曲っぷりには「この顔合わせによるの楽曲がもっと聴いてみたかった…」と、つくづくブレットの早逝が惜しまれます。
もう長いこと日本盤リリースと縁がありませんが、ご健在でいらっしゃるのでしょうか?


GIANT - Shifting Time - I Walk Alone ★★★ (2022-10-06 23:38:26)

アルバムのラストに置かれた、ケント・ヒッリの熱唱が
感動を際立たせる泣きの名バラード。
このメロディの哀愁っぷりはGIANTというより
完全にアレッサンドロ・デル・ヴェッキオの世界ですが
良い曲は良い曲。個人的には今年度のベスト・チューン候補ですよ。


GIANT - Shifting Time ★★★ (2022-10-05 23:14:57)

名バラード“I’LL SEE YOU IN MY DREAMS”をスマッシュ・ヒットさせ、2枚のアルバムを残して解散したメロディアスHRバンドGIANT。90年代以降は復活と休眠を繰り返していた彼らがFRONTIERS RECORDSの仕切りで3度目の帰還を果たして'22年にリリースした、通算では5枚目となるアルバムがこちら。
オリメンのデヴィッド・ハフ(G)とマイク・ブリグナーディ(B)は健在ながら、売れっ子プロデューサーとして多忙な日々を送るダン・ハフは今回も不参加で、その穴を埋めるのはFRONTIERS RECORDSの必殺仕事人アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ。シンガーはテリー・ブロックに代わって同レーベル一押しの逸材ケント・ヒッリ(PERFECT PLAN)が担当しています。正直なところ、顔触れ的にもサウンド的にも「GIANTの新作」っつーよりは「良くプロデュースされたFRONTIERS RECORDS発のプロジェクト・アルバムを聴いている」ってな感覚に陥ることもしばしばな本作ですが、かと言って、じゃあそれはマイナス要素なのか?と問われれば、さに非ず。抜群のソングライティング・センスとエモーショナルな歌声に下支えされた本編は、高いヒット・ポテンシャルを感じさせるバラード⑥など、フックの効きまくった捨て曲の見当たらない充実度を誇っていて、中でも本編ラストに置かれた⑪は一際インパクトを放つ名曲。果たしてこれがGIANTらしい楽曲なのかどうかはよう分かりませんが、ともかく自分の中で’22年のベスト・チューン候補に燦然と輝くメロディのヨロシク哀愁ぶりにゃ悶絶せざるを得ませんでしたよ。
次回作はもう少し早いスパンでのリリースを、とお願いしたくなる充実作。


JOHN ELEFANTE - The Amazing Grace - Won't Fade Away ★★★ (2022-10-05 00:53:19)

ドラマティックだけど大仰にはならない曲展開から、
軽快に踊るヴァイオリンにピアノ、
叙情的かつキャッチーな歌メロに至るまで
確信的にKANSASサウンドの再現が試みられているのですが、
なおかつそれを「名曲」レベルで成し遂げていることに
拍手喝采せずにはいられませんよ


JOHN ELEFANTE - The Amazing Grace ★★★ (2022-10-04 00:38:41)

クリスチャン・ミュージック・シーンの名プロデューサーにしてKANSASの二代目フロントマン、あと個人的にはMASTEDON名義でリリースした3枚のアルバムの素晴らしさも印象に残っているジョン・エレファンテ(Vo)が、’22年にESCAPE MUSICから10年ぶりに発表したソロとしては5作目となるアルバム。
KANSASやMASTEDONの諸作は愛聴していても、この人のソロ・ワークまではフォローしきれていませんでした。ので久々に日本盤の発売が実現したのを機にチェックしてみれば、これがファンの期待にきっちりと応える、衰え知らずの伸びやかな歌声、しっとりと心潤わす哀愁のメロディ、それにクリスチャン・ミュージックならではの美麗なボーカル・ハーモニーに心癒されるAOR/産業ロック・サウンドに仕上げられていて、思わず虎眼先生ばりに「できておる喃、ジョン・エレファンテは…」と呟いてしまった次第で。
80年代からコンビ芸を披露してきた兄ディノ・エレファンテは今回残念ながら不参加。曲作りは主に新加入のフランク・ボックスバーガーと共に行われているのですが、このギタリストが楽器の腕前のみならず作曲者としてもなかなかの逸材ぶりを発揮。本編の幕開けを劇的に飾る①、アルバム表題曲に相応しい哀メロの洪水に押し流される③、ヴァイオリンの存在のみならず、軽快さとドラマ性を併せ持った曲展開でもKANSASらしさを振りまく⑤、Gの泣きっぷりにグッとくるバラード⑤や重厚な⑧等々、KANSAS、MASTEDON時代に勝るとも劣らぬ収録楽曲は、ディノの不在をまるで意識させない充実っぷりを誇っていますよ。
名前聞いたことあるけど音は知らないという方は、本作を入門盤にいかがでしょうか。


THE LADDER - Future Miracles - Closer to Your Heart ★★★ (2022-09-30 00:24:29)

軽快な疾走感、その上で爽やかに弾む哀愁のメロディと
スティーヴの伸びやかでエモい歌声、歌心に溢れたGソロが
絶妙に胸を打つハードポップ・チューンの名曲。
お蔵入り状態から引っ張り出して来てくれたことに感謝ですよ。


THE LADDER - Future Miracles ★★★ (2022-09-28 23:51:28)

6th『DEADMAN’S SHOES』を最後に解散状態にあったFMの再結成を企図して、スティーヴ・オーヴァーランド(Vo)とピート・ジャップ(Ds)がお蔵入りしていたFMの未発表音源のレコーディングを行うも、バンド名を巡る権利関係の壁がクリアできず、結局THE LADDERという名義を用いて'04年にリリースした作品。ちなみにギタリストとして起用されているのは、当時TENを脱退して浪人中の身だったヴィニー・バーンズです。
制作の経緯が経緯だけに、本作に託されているサウンドは完全にFMのそれと一致。のみならず1st『INDISCREET』や2nd『TOUGH IT OUT』といった初期作と同時期に書かれたマテリアル(中には作曲時期が前身バンドのWILDFIRE時代まで遡る楽曲もある模様)がメインのため、ブルージーな色合いよりもハードポップ・テイストが勝っている辺りも個人的には嬉しい限りです。
勿論、ブランクを全く感じさせない、ますます円熟味を増したスティーヴぼソウルフルなVo、雇われ仕事ながらツボを押さえたGプレイを提供してくれるヴィニーを始め、各メンバーのパフォーマンスに関しても文句なし。とりわけ歌とギターの魅力が遺憾なく発揮された、アルバムのOPを軽快に飾るハードポップ①、避暑地に吹く一陣の涼風の如き哀メロ・チューン②、哀愁のメロディとキャッチネスが程好く同居している④辺りなんて、「このクオリティで何故お蔵入りに?」と首を捻らざるを得ない名曲っぷりですよ。
FMファンなら必聴ですし、逆に「ブルージーなのはあんまし…」というメロハー愛好家にもお薦めできる1枚。


HYDRA(SWEDEN) - Point Break - Never Be the Same ★★★ (2022-09-27 23:35:04)

アップテンポの曲調の上でヒンヤリとした哀感を
湛えたメロディと美しいハーモニーが舞う
このバンドとこのアルバムの魅力を
端的に伝えてくれる本編のハイライト・ナンバー。
こういうキメ曲があるとアルバムが引き締まりますね。


HYDRA(SWEDEN) - Point Break ★★★ (2022-09-27 00:28:02)

FRONTIERS RECORDS関連で名前を見聞きしない日はないんじゃなかろうか?なダニエル・フローレス(Key)と、その15年来の友人で、主にポップ・ミュージック・シーンを主戦場にソングライターとして活動していたというヘンリック・ヘッドストロム(G)、それにSEVENTH WONDERの1st『BECOME』で歌っていた初代フロントマンのアンディ・クラヴルヤカ(Vo)らによって立ち上げられたプロジェクトHYDRAが’22年にリリースした1stアルバム。
仕事帰りに立ち寄ったCDショップでディスプレイされている本作を一目見て、アートワークのイラストのタッチといい、バンドロゴの色味(テカり具合)といい、「これは拾い物の予感」とメタル・レーダーに感あり。久々に予備知識もなんもなしにジャケ買いを敢行した作品でしたが、透明感を湛えた哀愁のメロディがキャッチーな曲調に載るOPナンバー①が流れ始めた途端、「賭けに勝った!」と握り拳を突き上げずにはいられない、期待通りの北欧メロハー・サウンドが堪能できる好盤でありました。
ダニエル・フローレスの曲作りの腕前に関してはこれまで散々目の当たりにして来たことなので不安は皆無でしたし、SEVENTH WONDER時代から歌唱力には定評があったアンディ・クラヴルヤカも、潤いと張りのある歌声で楽曲のクオリティUPに貢献してくれています。美しいハーモニーを伴ってポップに弾む②や、北欧のバンドらしい哀感を纏い涼しげに駆け抜けていく⑦はアルバムの旨みを凝縮したような名曲ですよ。
これ1枚で終わらせず、是非とも今後も作品リリースをお願いしたくなる力作ではないかと。


MICHAEL BOLTON - Michael Bolton - Paradise ★★★ (2022-09-23 01:20:25)

ドライヴする曲調に骨太なギター、
フックの効いたメロディをデイヴ・メニケッティばりに
熱唱するマイケル・ボルトンのVoといい、
キャッチコピーに「ひとりメタル」なんて冠されたという
HRシンガー時代の彼氏の魅力が詰まった名曲です。


MICHAEL BOLTON - Michael Bolton ★★★ (2022-09-22 00:09:34)

70年代後半にリリースした2枚のソロ・アルバムも、元KISSのブルース・キューリックと結成したBLACKJACKも不発に終わってしまいキャリアの岐路に立たされていたマイケル・ボロティンが、名前をマイケル・ボルトンと改めて’84年に発表した仕切り直しのソロ・デビュー作。邦題は『大いなる挑戦』。
どっぷりメタル・ライフに浸かりきっていた身には「バラードの帝王」の作品なんて興味の範疇外もいいところでしたが、《燃えよボルトン》という香港功夫スターばりに威勢の良い帯惹句と、「実はこの時期のボルトンはHRシンガーだったらしい」との情報に釣られて本作を手に取ってみれば、Keyが印象的に跳ねるOPナンバー①は何とTOUCHのマイク・マンゴールドが手掛けているじゃありませんか。この幕開けだけでガッチリとハートを掴まれてしまいましたね。
ボロティン時代のソロ作とは異なり、渋めのブルース/ソウル色は控えめ。ゲストに迎えたボブとブルースのキューリック兄弟が奏でる骨太なGや、楽曲をキャッチーに色付けるKeyを生かしたメロディアスHRサウンドは、『FRONTIERS』を発表した時期のJOURNEY辺りに通じるハードネスとメロウネスが絶妙にブレンドされています(チャック・バーギやアルド・ノヴァもゲスト参加)。特に躍動感溢れる曲調にフックの効いたメロディが絡む⑥や、都会的な哀感とクールさ漂わす⑧は、本作の(というかこの頃のマイケル・ボルトンの)魅力を凝縮した名曲と言えるのではないかと。
スルーされがちな1枚ですが、個人的には愛して止まない名盤です。


CRY OF DAWN - Cry of Dawn - Light a Light ★★★ (2022-09-20 23:36:10)

青空に向かって昇り詰めていくような
爽やかさと高揚感を併せ持ったハードポップ・チューンで
ヨランのクセのない歌声もこの曲調に見事にハマっています。


CRY OF DAWN - Cry of Dawn ★★★ (2022-09-19 23:12:58)

ネオクラシカルな疾走ナンバーで威力を発揮するクリアなハイトーンと、バラード系の楽曲の魅力を引き立てるソウルフルな歌い回しを武器に、ここ日本では「Mr.北欧ボイス」の称号を欲しいままにするシンガー、ヨラン・エドマンを主役に起用したFRONTIERS RECORDS発のプロジェクト、CRY OF DOWNが’16年に発表した1stアルバム。
プロデュースはダニエル・フローレスが担当、曲作りにはFIND ME、ONE DESIRE他のソレン・クロンクヴィスト、PALACEのマイケル・パレスら、ハリー・ヘス(HALEM SCAREM)主演のプロジェクトFIRST SIGNALに関わっていた面子が再結集していて(NEWMANのスティーヴ・ニューマンもゲスト参加)、これまでのFIRST SIGNAL作品の打率の高さを思えば本作に対する期待値も跳ね上がろうというもので、実際その期待を裏切らない見事なクオリティを誇っているのですから大したもの。
まぁホームラン級の出来栄えというよりは、ヒットで出塁→バントで進塁→犠牲フライで1点を取りに行くような手堅さの方が印象に残る仕上がりではありますが、この安定感さこそFRONTIERS RECORDSのプロジェクトに求められているものであることは間違いありませんし、ヨランの美声が映えるよう設計された北欧ハードポップ・チューンの数々だって、冷ややかに疾走する②、印象的なKeyのイントロからスタートする③、キャッチーに躍動する④等々、耳を確実に捉える秀曲がズラリ勢揃い。中でも涼し気な哀感とポップな高揚感を併せ持って駆け抜ける⑤は、本編のハイライトとして一際眩い輝きを放っていますよ。
ぼちぼち2枚目を聴いてみたいのですが、作らないんでしょうかね?


CHINA - Sign in the Sky ★★★ (2022-09-15 00:06:32)

80年代のスイスHR/HMシーンを代表するバンドの一つであるCHINAが、プロデューサーにEZOやSTRYPER等との仕事で知られるステファン・ギャルファスを起用してレコーディングを行い(当初はブルース・フェアバーンとの仕事を希望していたもののスケジュールが合わず断念)、’89年に発表した2ndアルバム。長らく廃盤のままほったらかしにされていたところ、昨年ようやく国内盤のリイシューが実現。しかもこれがたった千円(税抜)というお手頃価格なのだから嬉しいじゃありませんか。まぁ廃盤期間中に大枚叩いて中古盤をゲットした身としては泣き笑い顔にならざるを得ませんけどもね…。
なんて愚痴はともかく、内容に関しては「素晴らしい」の一言に尽きます。Keyの存在が脇へと下がり、ギター・オリエンテッドな音作りが施されている辺りは90年代の足音が聞こえ始めていますが、だからといって大味になってしまうようなことはなく、本作から加入した二代目フロントマン、パトリック・メイソンの表現力豊かに歌い上げるタイプのVo、ツボを心得たメロディをコンパクトに奏でるG、重厚なコーラス・ワークとに彩られた楽曲のクオリティやフックの精度には益々磨きが掛かっていますよ。
欧風のメロディをベタ付かせずに(大陸的なポップ・センスで)料理してみせるバンドの曲作りの上手さが光る収録曲は、哀愁のメロハー④⑥、爽快に駆け抜けていくHRナンバー⑦、インストの小曲⑧から繋がり、メロディアスに歌うGが胸を打つ⑨、本編を大団円で締め括るバラード⑬等、確かなヒット・ポテンシャルを感じさせる逸品揃い。
母国チャートで最高第2位をマークしたのも当然といえる名盤。CHINA入門盤にどうぞ。


PAUL SHORTINO - Chasing My Dream - Chasing My Dream ★★★ (2022-09-14 00:39:12)

Keyも効果的に交え、タメを効かせて重厚に盛り上がる
アルバム表題曲にして本編のハイライト・ナンバー。
歌が下手だとサマにならないこと夥しい高難易度の曲調を
パワフルかつエモーショナルに熱唱するポール・ショーティノの
実力派シンガーぶりに痺れます。


PAUL SHORTINO - Chasing My Dream ★★★ (2022-09-13 00:07:21)

ROUGH CUTTのフロントマンとして人気を博した男、ポール・ショーティノ。ROUGH CUTTのことは好きでも彼のソロ・キャリアまではフォローしていなかったのですが、若井望と組んで制作した新作が好評を呼んでると聞き及び、「そういえばポールのソロ、1枚だけ持ってたな」とCD棚を漁って引っ張り出してきたのが本作。'09年に、日本盤は今は亡きサウンドホリックからリリースされた――多分3枚目ぐらい?のソロ・アルバムです。
ポール・ショーティノといえば、その歌ウマぶりと共に「ブルージー」というキーワードが付いて回る印象で、彼を語る上で欠かせない要素でありつつも「渋めなのか、じゃあパスで」と若干リスナーの敷居を高くしている印象が無きにしも非ず。
しかし本作に関しては、プロデューサー業や、MAD MAX、CASANOVA等での活動で知られるマイケル・ヴォスを曲作りのパートナーに起用して制作されていることもあってか(レコーディングにはMAD MAX、JADED HEARTのメンバーも参加)、重厚に立ち上がるOPナンバー①を手始めに、アコギ/ピアノを活かした抒情バラード④⑫、大陸的な解放感を漂わす⑦、ヘヴィ・メタリックな疾走パートも組み込んだ⑨、爽やかな⑪等々…本編にはバラエティ豊かな楽曲が集い、モダンなアレンジも施されたサウンドは、全体的に哀愁は漂えどもブルージーな色合いは控えめな仕上がり。つっても当然皆無な筈はなく、特にポールのソウルフルな熱唱を得て熱くダイナミックに盛り上がる⑧なんて、アルバムのハイライトというべき強烈な気を放っているわけですが。
今となっては忘れられている感もある一作ですが、クオリティは高いですよ。


PLAYER - Too Many Reasons - Life in Color ★★★ (2022-09-09 00:31:29)

仄かな哀愁を帯びたメロディが心地良く弾む、
瑞々しい魅力を湛えたハードポップ・チューン。
ピーター・ベケットのブランクを感じさせない
曲作りの手腕が冴えるアルバムのハイライトです。


PLAYER - Too Many Reasons ★★★ (2022-09-07 22:55:44)

映画『メジャーリーグ』へ挿入歌“HOW CAN THE GIRL REFUSE”の提供といった、ソロ・アーティストとしての活動でも知られる英国人シンガー/ソングライター、ピーター・ベケットの在籍していたLA出身の4人組PLAYERが、オリジナル・メンバーであるピーター・ベケット(Vo、G)とロン・モス(B、Vo)のユニット形態でカムバックを果たし、23年ぶりにFRONTIERS RECORDSを通じて発表した新作アルバム(’13年)。
失礼ながらPLAYERに対しては、シングル“BABY COME BACK”(本作にもリメイク・バージョンが収録)こそ全米№1ヒットを飛ばすも、その後はほぼ鳴かず飛ばずの「一発屋」的なイメージを抱いていたのですが、類稀なるソング・ライティングのセンスが十全に発揮された、アコースティック・ギターと美しいハーモニーを生かした、暖かみに溢れる収録曲の数々を聴けば、そうした浅はかな先入観は雲散霧消していきますよ。
無理にハードさを強調しているような1曲目はあまりピンと来ず、多少不安を覚えたことは正直に告白しておきますが、透明感と哀愁を演出するKeyが効果的な②以降は、AUTOGRAPHのスティーヴ・リンチが、ドラマーとしてのみならず作曲家としても腕を振るうバラード③、重厚な憂いに満ちた⑫(GENTLE GIANTの前身であるSIMON DUPREE & THE BIG SOUNDのカヴァー)等、ブランクをまるで感じさせない「らしい」秀曲揃い。中でも躍動する曲調にキャッチーなメロディが絡むハードポップ⑩は、本編においても一際強いインパクトを放つ名曲です。
折角の充実作だけに、これ以降新しい音源の発表がないのが残念でなりませんね。


George Murasaki and Mariner - Mariner Two ★★★ (2022-09-05 23:51:43)

‘80年のリリース以来、正式にCD化されることなく長らく幻の逸品と化していた、ジョージ紫&MRINERの2ndアルバムがようやくリイシュー。しかも1st『MARINER ONE』(’79年)との2枚組仕様での再発という太っ腹ぶり。まぁ数年後には紙ジャケット化され、別々に再リリースされたものを改めて買い直す羽目になっている自分の姿が、別に占い師でなくともありありと想像できますが、それはともかくまずはこの快挙を心の底から寿ぐべきでしょう。感謝。
前作と同じ布陣でロサンゼルスにてレコーディングされていることもあり、基本的にはこれまでの作風を踏襲しつつ、プログレ・ハード色は若干の薄まりをみせていて、その分⑤のような明るく開放的なノリの楽曲を収録する等、曲作りのバラエティは更なる広がりを感じさせる仕上がり。
そのため初聴時のインパクトに関してはデビュー作に一歩譲る印象は否めないものの、アルバムの幕開けをタイトに飾るHRナンバー①、そこはかとなく沖縄っぽさ薫るバラード④、哀愁のメロディをフィーチュアしてパワフルに盛り上がる⑦、そして「やっぱ最後はこんな感じで〆ないと!」とばかりにドラマティックに展開していく大作⑧…といった具合に、収録楽曲の個々のクオリティでは決して引けを取るものではありません。
メンバーのビザの問題により活動が軌道に乗らず、本作を最後にあっさり解散してしまったことが残念至極。紫にあまりピンと来なかったという方も、諦める前にジョージ紫&MARINERを是非お試し頂ければ幸いです。


小野正利 - Vs - Livin’ On A Prayer ★★★ (2022-09-02 00:12:37)

飽きるほど聴いてきたBON JOVIの代表曲を、ピアノ主体のバラード風にアレンジ。
透明感と叙情性を増した曲調に小野のクリスタルな美声がマッチして
アルバムのハイライト級の輝きを放つ逸品に仕上がっています。


小野正利 - Vs ★★★ (2022-09-01 00:01:46)

《カヴァー・アルバムじゃない。VSアルバムだ。》との帯惹句を目にして「言葉の意味はよう分からんがとにかく凄い自信だ」と呟いた、現GALNERYUSのフロント・パーソン小野正利が、デビュー25周年を記念して洋楽カヴァーを中心にレコーディングを行い(GALNERYUSのメンバーも参加)、'16年に発表した2枚組ソロ・アルバム。
前作『THE VOICE -STAND PROUD-』(’11年)の感想を書いた際に「次は産業ロックに特化したカヴァー・アルバムをお願いしたい」と記したのですが、本作でその願いが概ね叶う形に。DISC-1には主に90年代以降のヒット曲を、DISC-2にはBON JOVI、JOURNEY、VAN HALEN、ケニー・ロギンスといった80年代の音楽シーンを象徴するようなアーティストのヒット曲をメインに配して、それを小野が衰え知らずの美声を生かして伸びやかに歌い上げるという構成。マライア・キャリーやセリーヌ・ディオンの楽曲を、ここまで違和感なくハイトーンVoで歌いこなせる男性シンガーは、他にそうはいませんて。
個人的には、やはり思い入れのある楽曲が並ぶDISC-2の方を聴き直す頻度が高く、特にピアノ・バラード風にアレンジすることで抒情性がいや増したBON JOVIの“LIVIN’ ON A PREYER”は、秀逸なカヴァー…もといVSアレンジになっているのではないかと。あと小野の名を一躍知らしめたデビュー・シングル“YOU’RE THE ONLY”もセルフ・カヴァーしていて、随分と久々に聴き直しましたけどやはり胸打つ名バラードだなぁとつくづく実感させられた次第で。
質・量ともに大満足な一作。次は邦楽の名曲に挑戦か?


George Murasaki and Mariner - Mariner One - When the Morning Comes ★★★ (2022-08-31 00:56:44)

邦題は“朝が来るとき”
バラード風の導入を経て、泣きとエモーションを昂らせながら
テンポアップする中盤の盛り上がりに実にグッとくる
アルバム屈指の名曲です。


George Murasaki and Mariner - Mariner One ★★★ (2022-08-29 23:32:37)

姉さん、事件です(古い)。遂に、遂にジョージ紫&MARINERのカタログ2枚が再発ですよ。SABBRABELLS、DOOM、SACRIFICEといったバンドの1stアルバムが次々CD化された昨今、もしかしたら彼らも…と一縷の希望は抱き続けていましたけど、嘗てオムニバス盤『OKINAWAN HARD ROCK LEGENDRY』に提供されていた2曲を繰り返し聴いて満足していた時期を想うと「まさかこの日が来ようとは」と感慨に浸らずにはいられませんて。
音楽的方向性の違いから紫がアルバム2枚を残して解散した後、ジョージ紫が新たなメンバー(全員アメリカ人)と共に結成したバンドで、本作はニューヨークにてレコーディングが行われ’79年に発表された1stアルバム。多彩に楽曲を色付けるKeyを中心に据えた音楽性は紫時代を継承しつつ、インプロヴィゼーションは控えめに、曲展開からコーラス・ワークまでアレンジをしっかりと作り込み、歌を主役によりメロディアスで整合性を高めた仕上がりとなっているのが特色です。
勿論⑤みたいなGとKeyがスリリングに絡み合いながら疾走するDEEP PURPLEスタイルのHMナンバーも収録されていますが、個人的にそれ以上に印象に残るのは、スペーシーなイントロに導かれてスタートする①であり、ピアノの美旋律をアクセントに、泣きを湛えてエモーショナルに盛り上がっていく④や、哀愁のバラードの小曲⑦から繋がり本編を壮大且つドラマティックに締め括る⑧といった、プログレ・ハード風味が薫る楽曲の方。
長き入手困難な時期を通じて高まりまくっていたこちらの期待を裏切らないどころか、想定していたハードルを軽々と飛び越えていく名盤。再発に心からの感謝を。


J・A・シーザー - 国境巡礼歌 ★★★ (2022-08-25 23:27:10)

故・寺山修司が率いた、演劇実験室こと天井桟敷の音楽担当として世に出たJ.A.シーザーが’73年に発表したオリジナル・アルバムであり、彼のバンド「悪魔の家」や天井桟敷所属の俳優たちの協力(演出・構成は寺山修司が担当)を得て、日本青年館で行われたソロ・リサイタルの模様を収録したライブ・アルバムでもある一作。
前衛!アングラ!アバンギャルド!なイメージから尻込みしてしまい、長いことスルーし続けてきたのですが、実はアニメ作品のスコアを手掛けていたり、海外で高く評価されているとの記事を目にして(CATHEDRALのリー・ドリアンも絶賛してましたね)徐々に興味が高まり本作を手に取ってみれば、その唯一無二な音世界――無理くり例えるなら人間椅子と芸能山城組が悪魔合体したような感じとでも申しましょうか――に圧倒されまくったという。
暗く情念に満ちたメロディ、呪術的に繰り返されるドゥーム・メタリックなリズム、その上で妖しく交錯する男女コーラスとが、荒々しい演奏や音質すらも迫力に変えて叩きつけられるサウンドは、一口に「和風」といっても雅さとか格式高い伝統といった華やかさよりも、土俗的な因習や民間伝承の方に親しむドロリとどす黒いエッセンスが横溢。特に琵琶の音に導かれる陰鬱なイントロから疾走へと転じる①、ヘヴィでサイケデリックな曲調とわらべ歌のメロディが融合した⑥、延々続く寺山のアジ演説に絡みつくGが徐々に泣きの湿度を上げていく⑦辺りを初めて聴いた時の衝撃は相当なものがありましたよ。
70年代ロックでもプログレッシブ・ロックでも括りきれない異端の名盤。相当に聴き手を選ぶ作品であることは間違いないですが、ハマれば底なしかと。


TULIP - 日本 - 甲子園 ★★★ (2022-08-24 02:06:09)

メンバー全員が作曲に関与、更に(コーラスも含めれば)全メンバーがVoも担当して、
組曲形式で次々に移り変わっていく曲展開を盛り立てる10分越えのラスト・ナンバー。
甲子園初出場を決めた高校球児の心情に寄り添った希望と高揚感に満ちた曲調が、
やがて重々しい“君が代”のメロディと共に苦い後味を残して締め括られるという
甲子園の光と陰であえて「陰」の部分にスポットを当てた名曲です。


TULIP - 日本 ★★★ (2022-08-22 21:52:50)

その昔、学校のキャンプファイヤーで歌った“心の旅”の印象から、長らくフォーク・グループと認識していたチューリップに対する印象を改める切っ掛けとなった、’75年リリースの6thアルバム。
日の丸を想起させる示唆に富むアートワークが象徴する通り、当時の日本の様々な情景や日本人の国民性をテーマに据えたコンセプト・アルバムの体裁が取られている本作は、THE BEATLESからの影響を基調に、70年代ロックの歯応えや実験性、それにメンバー全員が歌える強みを生かした美しいボーカル・ハーモニーとに彩られ、単純にフォークというジャンルでは括りきれない多様性に溢れたサウンドが展開されています。メロディはフォーク由来の暖かみや親しみ易さを感じさせるのに、綴られている歌詞は敗者たちの物語で、案外皮肉げだったり辛辣だったりするコントラストはいかにも70年代の作品だなぁと。
重たげなリズム・セクションに哀愁のメロディが乗るOPナンバー“せめて最終電車まで”や、財津和夫の情感溢れる歌声が憂いを湛えた曲調を引き立てる“都会”等にもグッときますが、やはり本編のハイライトはメンバーが総力を挙げてレコーディングを行ったという10分以上に及ぶ組曲“甲子園”の存在。甲子園初出場を決めたある高校球児を主人公に、高揚感に満ちた序盤から、重苦しい“君が代”のメロディと共に苦い後味を残して締め括られる結末に至るまで、様々な場面転換が盛り込まれたプログレッシブ・ロック的味わいも感じられる名曲に仕上がっていますよ。
ちょうど甲子園大会が盛り上がっているこの時期に聴くのもオツな1枚ではないでしょうか。


RONDINELLI - War Dance - Fly Paper (live) ★★★ (2022-08-19 00:34:36)

巧みな押し引きで曲展開を先導するボブ・ロンディネリのドラム、
レイ・ギランの情感迸る歌声、泣きを湛えたテディ・ロンディネリの
ギターが13分以上の長尺を全くダレさせることなく聴かせきる大作ナンバー。
ライブ録音であることも忘れてしまうアルバムのハイライトです。


RONDINELLI - War Dance ★★ (2022-08-18 00:13:37)

RAINBOW、BLACK SABBATH、MSG、BLUE OYSTER CULTといった錚々たるバンドで腕を振るってきたボブ・ロンディネリ(Ds)が、兄弟のテディ・ロンディネリ(G)と共に結成。'02年発表の1st『OUR CROSS, OUR SINS』(この時のVoはトニー・マーティン)で日本デビューも飾っているRONDINELLIが、’85年に残したお蔵入り音源がこちら。ちなみに参加メンバーはロンディネリ兄弟に加え、現MEGADETHのジェイムズ・ロメンゾ(B)、そして故レイ・ギラン(Vo)という、今となってはかなり豪華な面子が揃っています。
本編はスタジオ音源4曲、ライブ音源4曲の計8曲で構成。コージー・パウエルも認めたボブ兄ィのタイトなドラミングと、知名度では兄に一歩譲るものの腕前は確かなテディのGを軸とした正統派HMを演っていて、フックに乏しい前半を聴き終えた時点では『OUR CROSS~』同様、悪くはないけど決め手に欠ける内容なのかなぁと思ったものですが、本作の真価はむしろオマケと捉えていた後半のライブ音源にこそあり。特にここで存在感を発揮するのがレイ・ギランのVoで、スタジオ音源と比較しても何ら遜色のない、どころか、それを遥かに上回るパワーとエモーションを漲らせた熱唱は、後にBLACK SABBATHやBADLANDS等での活躍を予感させるに十分な仕上がりっぷり。彼のVo、ボブ兄ィのシュアなドラミング、テディの泣きのGが10分以上に及ぶ長尺を濃厚に盛り上げる⑤⑥辺りにおけるパフォーマンスは圧巻の一言に尽きますよ。
現在では1stアルバムも本作も入手困難になってしまったようですが(というか需要がないだけか?)、もし見かけたら手に取って頂けましたら幸いです。


Z-SECT - N.O.V - INORI ★★★ (2022-08-17 00:45:09)

EPのラストを激烈に締め括るスピード・ナンバー。
既に個性全開のNOVの硬質なスクリーム、
鼓膜に突き刺さるようなアグレッションと
泣きのメロディのコントラストも鮮やかな仕上がり。
VOLCANOファンならこの曲も必聴ではないでしょうか。


SUICIDAL TENDENCIES - Controlled by Hatred / Feel Like Shit...deja-vu - Just Another Love Song ★★★ (2022-08-04 08:12:58)

切れ味鋭い(と同時にリズミカルでもある)リフの刻みっぷり、
鬼のように弾き倒すGソロと、畳み掛ける疾走感にアガりまくる
本編屈指のスラッシュ・ナンバー。
線の細いマイク・ミューアのVoが完全にバックの演奏に
埋もれてしまっている点は評価が分かれるかもしれませんが。


SUICIDAL TENDENCIES - Controlled by Hatred / Feel Like Shit...deja-vu ★★★ (2022-08-02 00:20:28)

80年代、スラッシュ・メタルとハードコア/パンクのクロスオーバー現象の旗振り役を担ったマイク・ミューア率いるSUICIDAL TENDENCIESが、3rd『HOW WILL LAUGH TOMORROW WHEN I CAN’T EVEN SMILE TODAY』から僅か半年のインターバルを経て'89年に発表した8曲入りEP。これまたタイトルがやたらに長いですが、邦題はシンプルに『檄』と冠されています。
その邦題通り、ここに託されているサウンドはスピーディかつアグレッシブ。スラッシュ由来の疾走感は若干抑え気味にして、その分、重厚さや整合性といったヘヴィ・メタリックなエッセンスの拡充が図られていた『HOW WILL~』に対し、ほぼ一週間でレコーディングを終了させたという突貫作業ぶりが物語る通り、ラフなプロダクションから勢い重視の楽曲まで、本作は生々しいエネルギーの迸りが封入された仕上がりとなっています。
前作を踏まえ起伏に富んだ曲展開を盛り込みつつも、本編は鼓膜に突き立つエッジーなGリフの刻みや、カタルシスに満ちた爆発的な疾走感といったスラッシュ・メタルのエッセンスを大幅回復。特に切迫感を煽り倒す③や7分に迫る長尺をダイナミックに畳み掛ける④は、リフ/リード両面においてキレキレなロッキー・ジョージのGがスラッシャーの血を騒がす逸品。と同時にウリ・ロートをリスペクトする彼氏らしく、②では泣きのメロディをエモーショナルに奏でて懐の深さを披露してくれています。
SUICIDAL TENDENCIESのカタログの中ではスルーされがちな作品ですが、個人的には愛して止まない一作。EPながらアルバム・サイズの満足感が味わえますよ。


TORCH - Fireraiser - Pain ★★★ (2022-07-28 00:09:53)

気持ちブルース・ディッキンソン似の声質のVoと
泣きのメロディを奏でるGを活かしてジックリ
ドラマティックに盛り上がっていくアルバム屈指の名曲。
ラストで激走に転じるパートにはメタル魂が燃え上がりますよ。


TORCH - Fireraiser ★★★ (2022-07-26 23:41:38)

北欧メタル・シーンの第一波に属するスウェーデンの5人組TORCHが'84年に発表した5曲入りデビューEP。彼らが80年代に残したカタログは、いずれ甲乙つけ難いダメジャケによって彩られていましたが、本作のイラストもまた実に味わい深い出来栄え(ビルの谷間からひょっこり顔を覗かせる謎生物という脱力感を誘う構図の破壊力よ)。TORCHなんてありふれたバンド名にも関わらず、一目見た瞬間「ああ、スウェーデンのTORCHだ」と確信できるので、ここまで徹底されればもはや立派な個性と言えるのではあるまいか。
それはともかく。内容の方は後の1st『暗黒への脱出』と作風を同じくする(EUROPEブレイク以前の北欧の多くのHMバンドがそうであったように)、NWOBHMの流れを汲む無骨なパワー・メタルをプレイ。北欧メタルと聞いて想起される美旋律や透明感、繊細さとは清々しいくらい無縁なれど、凡百のバンドとは明らかに一線を画すだけのクオリティが、男臭い声質で歌いまくるVo、楽器陣のタイトなパフォーマンス、そして楽曲のカッコ良さには確かに宿っていて、流石METAL BLADE RECORDSを通じてアメリカ盤が発売されたのは伊達じゃないと感心させられますよ。
まぁイモっぽさが漂ってくるのは疑いようのない事実ながら、これだけ美味いイモならそれとて悪口には当たらず。特にストレートに飛ばしまくる疾走ナンバー②から、憂いを帯びてハードかつドラマティックに盛り上がっていく③へと繋がる流れなんて、TORCHの魅力がしかと刻み込まれた本作のハイライト。
『暗黒~』にピンとた方なら、押さえておいて損はない一作じゃないでしょうか。


DESTRUCTION - Sentence of Death - Total Desaster ★★★ (2022-07-22 00:42:19)

イントロで焦らしてから自棄っぱちな爆走へと転じる
DESTRUCTION初期の名曲。正直音は悪いし、ドラミングは
グチャグチャですが、アバタもエクボで、ずっと聴いてると
段々このドラムが楽曲が放つカオスな雰囲気を盛り上げているように
感じられてくるという。鋭利なリフに弾きまくりのソロまで
マイクのGは既に頭抜けたセンスが迸っています。


DESTRUCTION - Sentence of Death ★★★ (2022-07-20 23:21:13)

以前、誰のインタビューだったか記憶が定かじゃないのですが(ニッケ・アンダーソンだったかな)、「今聴き直すと音質や技術面にチープな部分も目立つ80年代スラッシュ・メタル作品をそれでも愛さずにはいられないのは、バンドの爪先立ちの姿が生々しく記録されているからだ」的な受け答えをしているのを読んで、なるほどなぁと物凄く納得した覚えがありまして。要するに予算とか、テクニックとか、センスとか、高く掲げられた理想の自分達に少しでも近付こうと懸命に背伸びする姿が、危なっかしくも目が離せない魅力を放つのだと。
その言に則れば、DESTRUCTIONが’84年に発表したこのデビューEPがマニアから熱烈に愛されるのもさもありなん。個人的に彼らの最高傑作といえば『RELEASE FROM AGONY』が真っ先に思い浮かぶんですが、あちらが王者としての風格漂わす作風だったのに対し、初期衝動に突き動かされて荒々しく前のめりにはっちゃけるこちらは、ラフな音質や、さほど複雑なことを要求されてるわけじゃないのに息も絶え絶えというか、「必至に食らいついてる」感溢れるトミーのドラムの危なっかしさを筆頭に、まさしくプルップルに爪先立ち全開。
とはいえ、前述した通りそうしたスリリングさも今となってはグッとくる魅力の一つ。何より鼓膜を引っ掻く鋭角的かつトリッキーなリフを刻み、流麗なメロディを要所で流し込むマイクのGプレイは、既に他の誰でもないDESTRUCTIONならではの個性確立を大きく後押ししてくれていますよ。(勿論シュミーアの狂気に満ちたシャウトVoも)
まかり間違ってもDESTRUCITON入門盤に薦めようとは思いませんが、でも名曲②④を始め、ダイヤの原石としてのポテンシャルは十二分に提示されている1枚かと。


HAWAII - The Natives Are Restless - Beg for Mercy ★★★ (2022-07-20 00:13:14)

歯切れ良く刻まれるGリフに哀愁を帯びたメロディ等、
尖った部分はないけど中庸な魅力を放つミッド・チューン。
ドラマティックに構築されたGソロは、東洋的なメロディも
顔を覗かせたりと、マーティのセンス(とテクニック)が
存分に発揮された素晴らしい仕上がりとなっています。


HAWAII - The Natives Are Restless ★★★ (2022-07-18 22:45:45)

元MEGADETHのマーティン・フリードマンや、VICIOUS RUMORSの初代Voとして知られるゲイリー・セント・ピアーが在籍する等、ハワイ出身のHMバンドとしてはトップクラスの認知度を誇っている(んじゃないかと思う)、その名もまんまなHAWAIIが’84年に発表した2ndフル・アルバム。ちなみに今作で歌っているのはゲイリーではなく、エドワード・ポール・デイなる御仁です。
自らの出自をアピールするかの如く、本編は地元民謡“ALOHA OE”の長閑なメロディからスタート。そんな「気分は常磐ハワイアンセンター」なぼんやりとした空気を破壊的なGリフがバリバリと引き裂いてパワーメタル・ソング①が猛然と走り始める冒頭で掴みはOK。尤も、ゴリゴリのハード・ナンバーはこれぐらいで、あくまで本作の基調となるのは、NWOBHMからの影響を伺わせるヘヴィ・メタリックなエッジと、わめき型のVoが歌うキャッチーなコーラス、厚めに敷かれたボーカル・ハーモニー、抜けの良い躍動感といったアメリカのバンドらしさを併せ持つ初期型LAメタル・スタイルなのですが。
かように、いっそ典型的とも言えそうなサウンドにHAWAII独自の味わいをもたらしてくれているのが、マーティのテクニカルかつメロディアスなGプレイであり、また既に健在な彼のオリエンタルなメロディに対する拘りぶり。特に哀愁を帯びたメロディと、ドラマティックに構築されたGソロが絶品の彩りを加える④や、“さくらさくら”を“OMICCHAN NO UTA”と題してカヴァーしている⑧は聴き応え十分の名曲に仕上がっていますよ。
気合漲るパワー・サウンドに満腹になれる1枚。ま、ちょっと胃にもたれるかもですが(笑)


EXUMER - Fire & Damnation - I Dare You ★★★ (2022-07-15 00:30:07)

猛烈なリフの刻みとダークな雰囲気が初期作を彷彿とさせる
・・・と思ったら、2nd『RISING FROM THE SEA』収録曲の
リメイクだったという。でもカッコイイですよ。


EXUMER - Fire & Damnation ★★★ (2022-07-13 23:54:07)

『北斗の拳』と『マッドマックス』と『13日の金曜日』をゴタ混ぜにしたようなマスコット・キャラと、オフロードを力尽くで踏破するモンスタートラックの如きスラッシュ・サウンドが強烈なインパクトを放った1st『POSSESSED BY FIRE』(’86年)が、今もマニア筋から熱狂的に支持されるドイツのEXUMERが'12年に発表した復活作。通算3作目。
アルバム・デビューから間もなくバンドを去った中心メンバー、メム・フォン・シュタイン(B、Vo)がラインナップに復帰していることもあって、怪作『POSSESSED~』の再来に期待が高まりましたが、キャリアを重ね安定感を獲得した演奏といい、「キ」印成分控えめのシャウトVoといい、強引な展開が整理されストレートに疾走する楽曲といい、本作で披露されているのは、まぁビックリするぐらいに普通のスラッシュ・メタル。丸大ハンバーグばりに《ポンコツでもいい。ワンパクに育って欲しい》と念願していたスラッシャー諸兄がこれ聴いて嘆息する気持ちも分からんではないのですが、でも80年代のあの時期のEXUMERだからこそ生み出し得た『POSSESSED~』を狙ってもう一度作るのなんてほぼ無理…つか不可能な所業ですわな。(翌年リリースの2ndですら既に作風が変化していたわけで)
なので、アレはアレ/コレはコレと切り分けて接しさえすれば、スピード・ナンバーの連打で畳み掛ける本作だって決して退屈な内容ではなく、むしろ良質なスラッシュ・アルバムとして楽しめるのではないかと。猛烈なリフの刻みと欧州風味のダークネスを纏って突っ走る⑨のカッコ良さなんてなかなかにグッときます。
まだEXUMERを未聴の方は、何なら本作を入門盤にするのだって有りだと思いますよ。(で遡って1stを聴くと)


CRISIX - Full HD - Beast ★★★ (2022-07-13 00:03:46)

切迫感を煽るGリフ、機動力に富むリズムが
合唱を誘うコーラスを伴って小気味良く駆け巡る
CRISIXというバンドの強みが最大限に発揮されたスラッシュ・ナンバー。


CRISIX - Full HD ★★★ (2022-07-12 00:39:08)

順調にアルバム・リリースを重ね、'19年には来日公演の初ステージを踏む等、着実に経験値を積み上げているCRISIXが、コロナ禍を乗り越えて'22年に発表した5thアルバム。
4th『AGAINST THE ODDS』は、彼らのカタログの中で初めて明確に試行錯誤を伺わせる内容でしたが、その後EXODUS、VIO-LENCE、FORBIDDEN、EVILDEAD、DEMOLITION HAMMER等々、80年代の米スラッシュ・シーンを語る上で欠かすことのできない諸先輩方への熱いリスペクトを込めたカヴァー・アルバム『AMERICAN THRASH』を制作して自分達のルーツを見つめ直す機会を得たことで、本作においては再びギアをトップに入れ直し、切れ味鋭い強襲型スラッシュ・メタル路線へと軌道修正を図っています。
刻んで刻んで刻みまくるGリフ、歯切れ良くハキハキと突っ走るリズム、キャッチーなギャング・コーラスとが一体となって駆け巡る④⑦⑪辺りにはCRISIXの魅力が分かり易く詰め込まれていますし、「かめはめ波ー!」のシャウトと共に激走を開始する⑧なんかも、“SHONEN FIST”なる曲名共々、変わることなく迸り続けるバンドの漫画愛が確認できて嬉しい限りですよ。
中にはクリーンVoを組み込む等、モダンなアレンジが施された楽曲もあったりしますが、それらに関しても基調となっているのは飽くまでストレートなスラッシュ・メタル。息せき切って目まぐるしく畳み込む⑥は、新たな試みと従来の持ち味とが違和感なく溶け合った本作のハイライトたる名曲に仕上がっているんじゃないかと。
スペイン産スラッシャー筆頭の地位はまだまだ揺るぎないことが確認できる充実作です。


TANKARD - A Girl Called Cerveza - Not One Day Dead (But One Day Mad) ★★★ (2022-07-08 01:04:52)

'82年の結成から、VORTEX→AVENGER→TANKARDへの改名、
90年代のメタル冬の時代すら踏破して、路線変更も解散もなく
現在に至るまで歩み続けるTANKARDの、スラッシュ・メタル・バンドとしての
プライドと覚悟の程が綴られた歌詞と、何より歯切れ良く劇的に疾走する
楽曲自体のカッコ良さに痺れずにはいられない名曲。


TANKARD - A Girl Called Cerveza - Witchhunt 2.0 ★★★ (2022-07-08 00:52:35)

飲めや騒げやの賑々しさよりも、硬質な切迫感とキレ味の
鋭さを伴って突っ走る、本編中最もスラッシュ・メタル色を
濃厚に漂わせたスピード・ナンバー。メロディックに駆け巡る
Gソロもカッコイイ。


TANKARD - A Girl Called Cerveza ★★★ (2022-07-06 23:09:37)

既に解散済みのバンド、あるいはそこから復活を遂げたバンドを神格化する一方、一度も解散せず地道に活動を継続しているバンドに対しては「あ、まだやってたんだ」と雑な扱いをしがちで、我ながらこれはいかんと自戒する今日この頃。本稿の主役たるドイツのTANKARDもその筆頭バンドの一つですが、’12年発表のこの15thアルバムは、彼らが歩みを止めることなく着実に積み上げてきたベテランの凄味がガッツリ刻まれた仕上がり。
「ドイツの大酒飲み軍団」的な愉快なイメージで愛される彼らなれど、実のところ本編に託されているのは、緊迫感を伴って畳み掛けるシリアスなスピード/スラッシュ・メタル・サウンドであり、ザクザクと切っ先鋭く刻まれるリフ、性急に突っ走るリズム、適度にメロディもなぞって歌うシャウトVo、そして欧州風味のウェットな旋律を奏でるGからは、ファニーな(今だったらコンプラ的にアウトになりそうな)アートワークが醸し出す能天気な明るさは殆ど漂ってきません。
さりとて、堅苦しさ一辺倒に陥ってしまうこともなく、一緒に叫びたくなるキャッチーなコーラスが印象的な②、スラッシーなスピード感のみならず劇的に踊るGソロのカッコ良さも耳を捉える③、ドロ・ペッシュがゲストVoとして華を添える⑤、長年独スラッシュ・シーンを支え続けたバンドとしての自負が漲る⑥といった、キレキレな演奏、内に篭らない抜けの良さ、ロード生活で培ったであろう聴く者を無条件にノらせてしまう躍動感とを併せ持つ収録楽曲の数々には、TANKARDならではの親しみ易い個性が息衝いています。
「継続は力なり」という格言を体現するかのような力作ですよ。


VIO-LENCE - Let the World Burn - Screaming Always ★★★ (2022-07-06 00:30:01)

鋭くエッジの切り立ったGリフ、独特の切迫感で畳み掛けるリズム、
そして何よりショーン・キリアンがシャウトするサビ部分が
猛烈に「ああ、VIO-LENCEっぺー」となるスラッシュ・ナンバー。


WATCHTOWER - Control and Resistance ★★ (2022-07-05 01:19:58)

ボビー・ジャーゾンベクの弟で、超絶テクニカル・ギタリストのロン・ジャーゾンベクを中心に腕に覚えのある面子によって結成。後続のインテレクチュアル・スラッシュ・メタル勢に多大な影響を与え、DANGEROUS TOYSに加入するジェイソン・マクマスター、DON DOKKENへの参加で注目を集めたビリー・ホワイト等も在籍していたテキサス出身の4人組WATCHTOWERが'90年にNOISE RECORDSから発表した2ndアルバム。
当時「プログレッシブなスラッシュ・メタル」と聞いて、展開を積み重ねてドラマを醸成していくQUEENSRYCHE的なメロディアスで劇的な音を期待していたのですが、飛び出してきたのはジャズ/フュージョンをブーストさせたような、変拍子と複雑なリズム・パターンとトリッキーなフレーズがマシンガンの如く叩き込まれる奇天烈なサウンド。ロンのGプレイは流麗極まりないものの、哀愁や泣きの成分はほぼ皆無で、唯一、元HADESのアラン・テッチオ(Vo)のハイトーンは猛烈なHMテイストを発散していますが、全体としては一般受けする要素はほぼゼロ。というかそもそも一般受けなんて眼中にないスタイル。
当初は「複雑にするための複雑さ」にイマイチ乗れず、というかそれに関しては今も大差ないのですが、G、B、Ds、Voの各パートが「俺が」「いや俺が」とばかりに主役の座を巡って映画『アウトレイジ』ばりに仁義なきバトルを繰り広げる様は緊迫感に満ち溢れ、楽曲よりも、むしろ演者に集中するとより楽しめる類の作品であると最近になって気が付いた次第。キャッチコピーつけるなら《全員達人。》といったところか。
メタル者的には1stの方が取っ付き易いかな?尋常じゃないくらい音が悪いのですが。


SODOM - Genesis XIX - Genesis XIX ★★★ (2022-07-01 00:21:02)

ガリガリと刻まれるリフ、ゴリゴリと押し出して来るリズムとが
殺気を撒き散らしながら突っ走るスラッシュ・ナンバー。
不穏且つ大仰なイントロを経てスタートする前半は若干抑え気味で
中盤のひと展開を経てからのエンジン全開ぶりがまたカッコ良い。


SODOM - Genesis XIX ★★★ (2022-06-29 23:36:19)

首魁トム・エンジェルリッパー(Vo、B)以外のメンバーが脱退し、約30年ぶりに旧友フランク・ブラックファイア(G)がバンドに復帰。更に新メンバー2名も補充して、SODOM史上初めて4人編成でレコーディングされたスタジオ・アルバム。('20年発表、16作目)
プロデューサーのヴァルデマー・ゾリヒタと共に制作されたここ数作では、アグレッションは十分に担保しつつも、エピカルなメロディを増量する方向性を打ち出していましたので、今回のメンバー・チェンジはそのスタイルの一層の拡充を図るためのものと思っていましたが、実際のところはそうした意図でなかったことは、ツインG体制の初お披露目となったEP『OUT OF THE FLONTLINE TRENCH』(’19年)を聴けば明らかな通り。2本のGはメロディの充実よりもむしろサウンドの「圧」「突破力」の強化に用いられており、鬼軍曹たるトムの怒号Voによる指令下、ガリガリと刻み込む殺傷力抜群のリフ、重量感溢れるゴリゴリのリズムとが波状攻撃を仕掛けて来る本作は、MOTORHED由来のロックンロール・ソングも見当たらない、SODOM流スラッシュ・メタルの原点に立ち返ったような殺伐としたアグレッションを放つ仕上がりとなっています。
とはいえ、音作りからパフォーマンスまで貫禄がオーラの如く立ち昇るサウンドに、初期作につきまとったチープさや不安定さは欠片もなく、また近作で培ったエピックなメロディも実は要所で息衝いていたり。特に不穏なイントロから激走へと転じるアルバム表題曲④は、現行SODOMの魅力が凝縮されたようなカッコ良さに痺れずにはいられませんよ。
例え編成が変わろうと、トムが健在であれば今後に不安は何もないと納得するに十分な1枚。


CONTROL DENIED - The Fragile Art of Existence ★★★ (2022-06-27 23:22:44)

故チャック・シュルデナー(G)が「もっとオールドスクールなHMを追求したい」という己の欲求を解消するべく、DEATHとは別に立ち上げたバンドのデビュー作。’98年発表。
国内盤が出るものと思っていたのに、なぜか当時日本発売は見送られてしまい(チャック没後にボーナス・ディスクを加えた2枚組デラックス盤のリリースが実現)、もしや酷い内容なのか?メロパワ・メタルでも演っていたらどうしよう?いやでもそれはそれでスゲェ聴いてみたいか?等とグルグル考え込みつつ買い求めてみれば、スラッシーな猛進から、シートベルトが体にめり込むような急ハンドルに急制動、穏やかなクルーズ・モードから一転して再びアクセルを床まで踏み抜いての急加速…と、これがもし路上だったら一発アウトを食らうであろう危険運転っぷりで聴き手を振り回す、例えるならDEATHの最終作『THE SOUND OF PERSEVERANCE』を歌えるシンガーで録り直したようなスタイルのインテレクチュアルなHMアルバムに仕上がっていて、「流石!」と胸を撫で下ろした次第。
そもそも参加面子からして後期DEATHのメンバーがほぼそのままスライドし、そこに専任シンガーが加わっているだけなので、当然ちゃあ当然の成り行き。まぁ、なればこそチャックの狂えるシャウト不在が物足りなく感じられる場面もあるわけですが、彼のGは全編でテクニカルに狂い咲いてくれていますし、新Voだって金属質なハイピッチ・スクリームを駆使して歌いまくる実力者。
大きな可能性を感じさせてくれる1枚だっただけに、チャックの急逝により、これきりでその可能性が断ち切られてしまったことが残念でなりませんよ。


VIO-LENCE - Let the World Burn ★★★ (2022-06-23 23:34:19)

現MACHINE HEADのロブ・フリンらを輩出したことでも知られるVIO-LENCE。00年代に入って復活を遂げるも、散発的にライブを行う程度に留まっていた彼らが、フィル・ディメルがMACHINE HEADを脱退してVIO-LENCEに本腰を入れたことで活動が加速。’22年、遂に待望の新作リリースと相成りました。しかもギターの片割れが元OVERKILLのボビー・ガスタフソンというサプライズ人事まで引っ提げてのご帰還ですよ。
多少なりとも時流に影響された仕上がりだったVIO-LENCEの最終作『NOTHING TO GAIN』や、フィルのMACHINE HEADでのお仕事を踏まえると、出来栄えに関しては多少懐疑的にならざるを得なかったのが正直なところでしたが、聴いて吃驚、ショーン・キリアン(Vo)の切迫感を煽るシャウトといい、鼓膜を切り裂かんばかりにジャキジャキと刻まれるGリフの質感に、突っ込み気味に疾走するリズムといい、これが20年以上の不在期間を一瞬で飛び越えてしまう、紛うかたなきVIO-LENCE流スラッシュ・サウンドが全編に亘って炸裂しているじゃありませんか。例えば②なんて「1stや2ndアルバム収録曲を現編成でリメイクしました」と言われたら信じてしまいそうなぐらいの仕上がりですよ。
無論、現代的にアップデートされた音作りや、衝動性よりも重厚さの勝る楽器陣等、経年によってもたらされる変化も本編にはくっきりと刻まれていますが、全5曲というEPサイズのボリュームも奏功して、細かいこと考え込む前にスカッと走りきっているという塩梅。
来日公演のドタキャン騒動でミソが着いてしまった彼らですが、ここは是非ボビーを含む編成で来日して頂き、汚名を返上して欲しいところであります。


Evil Invaders - Shattering Reflection - Forgotten Memories ★★★ (2022-06-21 23:52:16)

EVIL INVADERSにとって初(?)のバラード。
といっても悲壮感を湛えて劇的な盛り上がりを呈する曲調に
甘さの類は皆無。Voもムーディに歌い上げたりはせず、
喉から血を吐くような激情シャウトで聴き手のハートを鷲掴んでくれます。


Evil Invaders - Shattering Reflection ★★★ (2022-06-20 23:15:27)

これまでに3度の来日公演を敢行する等、今やベルギーを代表するHMバンドへと成長を遂げた感のあるEVIL INVADERSが、プロデューサーにFLESHGOD APOCALYPSEのメンバーであるフランチェスコ・パオリとフランチェスコ・フェリーニを招聘してレコーディングを行い、'22年に発表した3rdフル・アルバム。
積極的なツアー攻勢と、折からの新型コロナウィルス感染症蔓延による世界中の混乱が重なって、前作リリースから5年ものブランクが空いてしまいましたが、ジョーのハイピッチ・スクリーム、カミソリGリフとタイトなリズムとが、一糸乱れぬ統制のもとで突っ走るテクニカルなスピード・メタル・サウンドは健在。その一方で、よりメロディックに歌うようになったVoといい、スピードは抑え気味にして、ダイナミズム演出にこれまで以上に気の払われた構成といい、前作あたりから顕著になった正統派HMスタイルへの接近も更に押し進められています。これについて「曲調の幅が広がった分、Voの力量不足が気になる」との指摘もあるようですが、確かに決してテクニカルなタイプではないものの、持てる力全てを振り絞るような熱唱ぶりには個人的には心動かされずにはいられませんし、特にバラード⑤における劇的な盛り上がりは彼の絶唱あったればこそじゃないかと。
インストの小曲と重厚なミッド・チューンが連続するため、やや尻すぼみな印象を受けてしまう本編ラストの流れに若干の疑問を感じつつも、切れ味鋭いスピード・ナンバーを要所に配して小気味よく畳み込む本編尺は、スッキリとタイトに40分台。新味とらしさがバランス良くブレンドされた、ブランクの影響を全く感じさせない快作です。