ドイツはバイエルン州ランツベルグにて'06年に活動を開始した時、中心メンバーは若干13歳だったという早熟なスラッシュ・メタル・バンド。 KREATOR、METALLICA、PANTERA、パンク/ハードコアをお手本に(特にベイエリア・スラッシュからは影響を受けまくったとのこと)、ライブ活動と曲作りに邁進し、'10年にはかのWACKEN METAL BATTLEで優勝を果たす等、ドイツ国内において確固たる支持基盤を築き上げる。 こうした評判を後ろ盾にNAPALM RECORDSとの契約を実現させたバンドは、'12年にデビュー作『VIOLENT DEMOLITION』を発表。更には'14年発表の2nd『AWAKE THE RIOT』で本邦初登場も果たした。
プロデューサーに産業ロック勢との仕事で知られるケヴィン・ビーミッシュを起用し、更に最終的なミックス・ダウンは売れっ子マイケル・ワグナーに依頼。「LEATHERWOLFが勝負に出た」と強く印象付けた'89年発表の2ndフル・アルバム。 湿度を抑え、カラッと抜けの良い音作りに併せて、曲展開も比較的ストレートに整理整頓。殊更にトリプルGの存在は強調せず、Voを中心にアメリカンHMならではのキャッチネスの底上げが図られているサウンドは、言うなれば重厚なパワー・メタルから、シャープな高機動型HRへと華麗なる転身を遂げた感じ。強化されたコーラス・ワークを伴い、よりシンプル且つメロディアスに押し出してくる③⑥等も収録した本編を聴いた時は、LOUDNESSの出世作『THUNDER IN THE EAST』のことを思い出したりも。 『THUNDER~』が、全米でブレイクを果たすべく、大きく音楽性を変化させながらも「らしさ」を見失っていなかったのと同様、本作もハードさやドラマ性を損なうことなく、新旧の持ち味をバランス良く配合することに成功しています。特に起承転結がバッチリ決まったOPナンバー①は、本作を代表する名曲中の名曲。切れ味鋭く疾走へと転じる中間部のカッコ良さにテンション上がらないHR/HMリスナーはおらんですよ!と断言したくなるぐらいのもんで。 もう数年早く発表されていれば状況も好転して、LEATHERWOLFがこれを最後に解散することもなかったのでは・・・とか夢想させられる1枚。(後に再結成しましたけどね)
'83年制作の5曲入りデビューEP。 後の1stフル『GO FOR THE THROAT』同様、『BRITISH STEEL』発表時のJUDAS PRIESTをお手本に、ダークでアグレッシブな味付けを加えたメタルを演っていますが、時節柄まだスラッシュ・メタル色はそれほどでもなく、またロン・ジャーゾンベク(G)加入前だからなのか、テクニカル・メタルっぽさも薄め。むしろGリフ主体でストレートに押してくる曲調は、NWOBHMからの影響が色濃く刻まれています。 それと、本作を聴いていて随所で感じるのがRIOTっぽさ。後にマーク・リアリと行動を共にするメンバーを擁する等、元々RIOTと関係の深いバンドってこともあるのでしょうが、例えば独特のエコーを伴ったVoが、疾走感溢れるGリフとリズムに乗っかった②なんて、もろ『FIRE DOWN UNDER』を発表した頃のRIOTを彷彿。 一方で、ゴリゴリ鳴りまくるドン・ヴァン・スタヴァンのBが、スピーディな曲調を牽引する④⑤といった、このバンドならではの個性を宿した楽曲のカッコ良さも相当なものですし、EPと言えども、結構な満足感を覚えさせてくれる1枚に仕上がっています。
RIOTファンならバンド名に聞き覚えがあるかもしれない、'82年にテキサス州サンアントニオで結成され、ロサンゼルスのSLAYERとの混同を避けるために、出身地名を付け足してS.A. SLAYERを名乗ったスピード/スラッシュ・メタル・バンド。 マーク・リアリとNARITA~RIOTで行動を共にしたドン・ヴァン・スタヴァン(B)、名ドラマー、ボビー・ジャーゾンベクが在籍していたJUGGERNAUT等での活動で知られるボブ・キャレトン(G)、後にWATCHTOWERに加入するロン・ジャーゾンベク(G)、それに現在はMACHINE HEADに籍を置くデイヴ・マクレイン(Ds)と、構成面子は腕利き揃いで、'83年にデビューEP『PREPARE TO DIE』を、'84年に1stフル『GO FOR THE THROAT』をそれぞれ発表。但し、所属レコード会社にリリースを拒否られた『GO~』が実際に陽の目を見たのは、バンド解散後の'88年になってからだった。
“METAL HEART”(ACCEPT)“WILD FRONTIER”(GARY MOORE)、“BACK TO BACK”(PRITTY MAIDS)等、メタル者なら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲の数々を、多数のゲスト・ミュージシャンを招きカヴァーするというコンセプトが、本作が(タイトルこそ異なれど)実質的に『STAND PROUD!ALL FOR HEAVY METAL』の続編であることを物語っている、'14年発表の屍忌蛇のカヴァー・アルバム。 日本で最もHR/HMが売れていた時期に、メジャー資本で制作され、お祭り騒ぎ的賑々しさに満ち溢れていた前作に比べると、名義のみならず、アレンジも雰囲気もグッと落ち着いて屍忌蛇のソロ作としての趣きを強めた今回は、ANGRAやBLIND GUARDIANといった比較的新しめのバンドの名曲もセレクト。 尤も、Gソロでは彼らしい繊細な泣きメロを注入して個性を主張するスタイルは流石の味。特にそれが上手くハマっているのがJUDAS PRIESTの⑨で、さりげないピアノの使い方や、TESTAMENTの“OVER THE WALL”のフレーズの導入も非常に効果的です。 オリジナルと比べても決して聴き劣りしない実力派ミュージシャン達のパフォーマンスも、前作同様「日本人にしては」等というエクスキューズが不必要なレベルですし、またRIOTの⑩でスピーディなBプレイを披露しているのが、先日急逝したUNITEDの横山明裕であることも謹んで付け加えさせて頂きます。 前作が気に入った方なら当然購入して損のない1枚。HR/HM入門盤代わりにもどうぞ。
歌舞伎メイクを施したメンバーの出で立ちや、日本の歴史/伝承を取り扱った歌詞を見ていると、一足先に日本デビューを飾ったイタリアのHOLY MATYRのことを思い出しますが、あちらが飽くまでベーシックなパワー・メタル・サウンドの上に立脚し、和風メロディはアクセント的な扱いだったのに比べ、こっちは琴や三味線、和音階をガンガン取り入れて、日本語の台詞でスタートするOPナンバーから、バンドのルーツを物語るアニメ『銀牙 -流れ星 銀-』の主題歌のカヴァーまで、もう全編和風メロディの雨アラレ。⑥なんてタイトルが“KAPPA”ですよ。これに失笑を漏らす人もいるでしょうが、(ホラー映画ばりの歌詞に反して)ジャジーなパートも組み込んだ曲調はどこかコミカルで、日本人が持つ河童のイメージとピタリ一致。こうした「色物」と受け止められかねないジャパネスクな題材とも真摯に向き合うバンドの姿勢には好感を持たずにはいられません。 特に「お祭りメタル」とでも評したくなる高揚感に満ち溢れた②や、シンフォニックなアレンジを纏って猛然と突進する③、雪女の物語を題材に取り上げ、激しくも悲哀に満ちたメロディが涙を誘う⑥といった楽曲は、「MELODIC DEATH METAL WITH JAPANESE FOLK ELEMENT」を標榜する彼らの真骨頂というべき名曲。 「初期陰陽座をもっと過剰にして、デス・メタルのエレメントとシンフォニックなKeyを加えた感じ」との説明(大掴みですが)にびびっと来たらお薦めの1枚。
90年代のジャーマン・メタルの盛り上がりを(主に底辺方面から)支えマニアに愛された、リッキー・ヴァン・ヘルデン大将率いるATTACKが、当時誰も欲しがらなかった・・じゃなくて入手困難だった初期作、並びに近作の楽曲をリミックス&リ・レコーディング、更にそこに新曲も加えて発表したベスト盤がこちら。 IRON MAIDENとHELLOWEENの中間ぐらいに位置する正統派HMサウンドを志向しながらも、リッキー自身のへなちょこボーカルと、調子っ外れなコーラス、不安定な演奏にしょっぱいプロダクションが足を引っ張って、彼らについて語る際には常に「ATTACK(笑)」と、名前の後に(笑)マークが付いて回っていたような気がするのですが、どっこい、キラリと光る大将の曲作りの才は決してバカにしたもんじゃありませんでした。 取り分け“WONDERLAND”と“DEATHRIDER”(共に『DESTINIES OF WAR』収録)のカッコ良さは出色で、特に10分に及ばんとする長尺を、勇壮且つ疾走感たっぷりに語り切った後者は、独産メタル・マニアなら一度は聴いておいて損のない出来栄え。その昔バイトしていた喫茶店でBGMとして流させて貰ったら、お客さんから「お、この曲良いねぇ」と好評を得たことでも思い出に残っている名曲であります。 今日び果たして需要があるのかどうかはともかく、ATTACK入門編には本作が打って付けですよ。
ジム・ジッドヘッド(Vo)を始めとするオリジナル・メンバーが、デビュー作以来、26年ぶりに顔を揃えて制作された6thアルバム。 こっちもALIENの作品を購入するのは4th『CRASH』以来、十数年ぶりという「お久し振り感」の半端ない復活作でしたが、ソロ・シンガーとしてキャリアを積み重ねて来たジムのエモーショナルな歌声、そしてALIENの看板を長らく守り続けたトニー・ボルグ(G)の、聴き手の泣きのツボを的確に突いて来る歌心とハードネスとを併せ持ったGプレイを耳にすれば分かる通り、本作にブランクや衰えを感じさせる要素は皆無。むしろ演奏にしろ楽曲にしろ、一層瑞々しく若返った印象さえ受けるぐらいのもので。 特に、今年のベスト・チューン候補“LOVE WILL LEAD ME HOME”をハイライトとする、秀逸な哀メロ・ナンバー大盤振る舞いのアルバム前半は、重厚なハーモニーとリリカルなKeyに包まれて、浮世の憂さが綺麗さっぱり洗い流されて行くかの如き感覚に陥るALIEN流ハードポップ・サウンドの真骨頂。 爽やかな“SUMMER OF LOVE”、ハードな“BURNING HEART”から鄙びた哀愁漂わすバラード“IN TRUTH”、更にジムの日本語による挨拶を挟んでボートラ“READY TO FLY”へと雪崩れ込む終盤の展開等、名曲で埋め尽くされた本編を聴くにつけ、オリジナル・メンバーが生み出す「マジック」の威力を思い知らされます。アートワークに燦然と輝く「永」の漢字(日本盤のみの模様)は伊達じゃない!な1枚。
カナダ出身で、女性メンバー2人(VoとB)を擁するスラッシュ・メタル・バンドが、地元のインディーズ、HORROR PAIN GORE PRODUCTIONから'11年に発表した1stアルバム。(現在はデモ音源3曲を追加収録して、NAPALM RECORDSからリリースされた再発盤が流通している模様) 先に2nd『ORIGIN OF EXTINCTION』を聴き、そのカッコ良さに感心して本作も購入してみたのですが、おお、こっちもナイス出来栄え!と。スケ番チックに威勢良く歌う女性Vo、派手に弾きまくるわけじゃないけど、メタル魂を鼓舞するメロディをストレートに投げ込んでくるツインGを両軸に、ロックンロールのノリの良さも飲み込んで炸裂するアッパーなスラッシュ・メタルという、彼らなりのサウンドも既に確認できます。 メタルコア調のシャウトを多用しているカーラのVoや、直線的に叩き付けられるリフ&リズム等、本作の方が若干ハードコアな感触が無きにしも非ずですが、どっちにせよスラッシュ・メタルとしてのカッコ良さに揺るぎはなし。中でもオーストリアで起きた「フリッツル事件」を題材に取り上げた④は、荒くれたZNOWHITEとでも言うべき聴き手を一発で虜にするアルバムのハイライト的名曲。 既に十二分に光るものを感じさせてくれる1枚ですよ。
カナダはアルバータ州エドモントン出身。アレックス・グティエレス(G)が中心となって'08年にバンド活動をスタート。'10年にカーラ・マカッチェン(Vo)を始めとするオリジナル・ラインナップが整い、同年、セルフ・タイトルの自主制作EPを発表してデビューを飾る。 翌年には、HORROR PAIN GORE PRODUCTIONとの契約を得て1stフル『MURDER DEATH KILL』を発表。同作の好評を背景に、新たにNAPALM RECORDSとのディールを成立させたバンドは、ボーナス・トラック3曲を追加収録して『MURDER~』を再発。 更には'13年に2nd『ORIGIN OF EXTINCTION』を発表。その名をより広くスラッシュ・シーンに知らしめることに成功した。
イタリアのフェラーラを拠点に、'08年に結成された新人スラッシュ・メタル・バンド。 '09年に4曲入りデモと、デビューEP『HEAVY DANCE』を制作。更に'12年に1stフル『FOR HUMANITY』を発表すると、アルバムをフォローするためイタリア中をツアー(小規模ながら国外も周った様子)。 そして'14年には、新たにSCARLET RECORDSと契約を交わしたバンドの2ndフル・アルバム『BURST INTO THE QUIET』のリリースが決まっている。
ブラジルはリオグランデ・ド・スル州の州都、ポルト・アレグレ出身で、結成は'90年まで遡る古株スラッシャー。(当初はデス・メタルをプレイしていたようだが) 90年代前半はメンバー・チェンジ、スプリットEPやデモテープ制作で腕を磨き、'98年に自主制作の1st『NERVOUS SYSTEM』でデビュー。 '01年に2nd『INFINITE ABYSSAL』、'04年に3rd『BEHIND THE VEIL』をコンスタントに発表。'07年にはWACKEN OPEN AIR METAL BATTLEに出場して第2位の成績を残す。 '08年、NWOTMの盛り上がりに乗って(?)4th『UNNATURAL DISPLAY OF ART』で日本デビュー。'12年には5th『THE HUMAN NEGLIGENCE IS REPUGNANT』を発表。同作は日本盤のリリースこそ叶わなかったものの、相変わらず強力なスラッシュ・メタル・アルバムに仕上がっていた。