1st『VICTIM OF A SONG』がゴールドを、続く2nd『LOVE CRIMES』がプラチナムをそれぞれ獲得・・・と、本国カナダにおいては確固たる地位を確立するに至ったHARLEQUINが'82年に発表し、日本デビュー作ともなった3rdアルバム。 『愛は危険な夢遊歩行』なる、言葉の意味はよう分からんがインパクトは十分な邦題を付けられた本作は、再びタッグを組んだ売れっ子プロデューサー、ジャック・ダグラスとの共同作業も一層磐石なものとなり、もはや勝ち組バンドとしての風格さえ漂ってくるようです。キャッチーなメロディと心地良い疾走感とがブレンドされたOPナンバー①の素晴らしさなんて、余裕はあっても慢心のないバンドの充実っぷりを伝えてくれる名曲。 サビのリフレインが印象的な躍動感溢れる④⑦や、ハスキーなVoと哀愁振り撒くG、Keyが叙情性を増幅する⑩等、ハーモニーとメロディを増量することによりサウンドの洗練に磨きを掛ける一方で、インスト・パートが主役を張るプログレ/70年代HR的な構築美と重さを併せ持つ⑤のような楽曲も収録するなど、相変わらず、そのサウンドはポップでありながらしっかりとした背骨も通されています。硬軟のバランスが取れた曲作りの上手さには、「流石、カナディアン・メロディスHRの雄」と感心させられることしきり。 アメリカでの成功を果たせなかったことから、メンバー的にはイマイチ不満足な作品らしいですが、いえいえ。これの国内盤も是非再発して欲しかったなぁ。
'83年にリリースされるや、全米アルバム・チャート最高23位にランクインしてプラチナムを獲得。自他/名実共に認めるDIOの代表作たる2ndアルバム。 スピーディな“WE ROCK”で幕が上がり、続くのは重厚なアルバム表題曲“THE LAST IN LINE、後半にはポップ風味を効かせたメロディアスな“MYSTERY”を配して、最後はドラマティックなへヴィ・ナンバー“EGYPT”で締め括る・・・という構成は、まるでデビュー作の曲順と鏡写しのよう。 強力無比なロニーのVo、ヴィヴィアンのフラッシーなGワーク、ヴィニーのソリッドで疾走感溢れるドラミングから生み出されるハードネスやドラマ性を損なうことなく、正式メンバーに昇格したクロード・シュネルが奏でるKeyのフィーチュア度も高められた楽曲は、それと共に一層キャッチネスが強化。雄々しくノリ良く勇ましく、全世界津々浦々のHR/HMファンの合唱を誘発しながら駆け抜ける“WE ROCK”は、DIOの追求する音楽の一つの完成型を提示した永遠のロック・アンセムと言えましょう。 その他にも、邦題“闇夜の暴走”に相応しい飛ばしっぷりが痛快な“I SPEED AT NIGHT”、ロニー独特の絡み付くような歌唱がエキサイティングな“ONE NIGHT IN THE CITY”、キャッチーな“EVIL EYES”等、DIO入門編にこれ以上ないぐらい相応しい、名曲揃いの名盤。 個人的にDIOのアルバムで一番好きなのはデビュー作なんですが、最高傑作ってんなら間違いなくコレかな、と。
BLACK SABBATHを去ったロニー・J・ディオが、誰憚ることなく自身の演りたい音楽を追及すべく、RAINBOW時代に同じ釜の飯を食ったジミー・ベイン(B)、盟友ヴィニー・アピス(Ds)、そして気鋭の新人ヴィヴィアン・キャンベル(G)らと共に結成したバンドのデビュー作。('82年発表) RAIBOW時代から一貫してロニーが拘り続ける「虹」「魔法」といったファンタジック/ドラマティックなモチーフを取り扱いつつも、よりソリッドに、よりスピーディに研ぎ澄まされたサウンドからは、世のHMムーブメントの盛り上がりに呼応したかのようなアグレッシブなエネルギーが迸り出ています。 特に、いつ如何なる時に聴いても全身の血液が沸騰する鋭角的なGリフ、畳み掛けるリズムの上にロニーの鬼気迫るシャウトが乗っかった“STAND UP AND SHOUT”は、DIO屈指の・・・いやさHR/HM史に残る名曲中の名曲。 アルバム全体の完成度では次作『THE LAST IN LINE』に一歩譲りますが、重厚な“HOLY DIVER”、劇的な“DON'T TALK TO STRANGERS”、Keyを取り入れたメロディアスな“RAINBOW IN THE DARK”といった必聴の代表曲が放つインパクトのデカさでは一歩も引けを取らず。多少地味な楽曲にしても、ロニーがその神々しい歌唱力をもって力ずくで佳曲レベルに引き上げていますしね。 デビュー作にして、早くも風格十分な名盤。
復活作『GOLD OF THE FUTURE』の高評価を追風に、今度は間を空けることなく'13年にリリースされた3rdアルバム。 哀感と涼感を宿したOPナンバー①が宣誓する通り、中心メンバー、トニー・ニヴァの伸びやかなハイトーンVoをメインに据えて、楽曲をフレッシュに彩るGとKey、それに涼しげなボーカル・ハーモニーとが如何にも北欧的な透明感を演出するメロディアスHRサウンドは、評判を呼んだ前作の作風を遵守。その一方で、続く爽やかに弾む②に明らかなようにハードポップ色も増量されていて、溌剌と駆け抜ける⑦なんてその象徴と言うべきキャッチーな逸品かと。 前作収録“GOLD OF THE FUTURE”の如きハードな名曲が見当たらないのは残念ですが、その分メロディの煌きには一層の磨きが掛けられています。絶品のフックラインを描き出すサビメロがNIVAの面目躍如たる①⑩をハイライトに、トニー・ニヴァの卓越した歌唱力が元々素晴らしい楽曲のポテンシャルを更に一段上のグレードへと引き上げている③⑤等、アルバム全編がメロディ愛好家の泣き所を突く至高のメロハー・ソングの大盤振る舞い。 「世が世ならヒットチャートを賑わしていても不思議ではないのに・・・」と思わせてくれる充実作。
スラッシュ・メタル・バンドの3枚目のアルバムともなると、ぼちぼち「クリーン・ボイスで歌い上げてみようかな」とか「モダンな要素を取り込もうかな」とか「バラードでも演ってみっかな」といった、音楽的変化に対する欲求が鎌首をもたげ始める頃ですが、このカリフォルニア出身の5人組はそうしたことには一切頓着せず、メロディ無視で激情を吐き出すVo、鑢のように刻み目の粗いGリフと性急なリズムとが、脇目も振らず突進する、極めてオールドスクールなスラッシュ・メタル道を、全身全霊をこめて邁進しております。別に変化に興味がないのではなく、サウンドの幅を広げることよりも、自身のスタイルを一層深く掘り下げることにのみ集中していると言うべきか。 プロデューサーにエリック・ルータンを迎えた成果も、図太さを増したGサウンド、時に禍々しくトグロを巻くへヴィネス演出、そしてアグレッシブな曲調と対比を為すかのように劇的に噴出するメロディックなツインGといった要素に覿面に反映(ちなみにエリックも③でGソロを披露)。特にスラッシャーの血を沸騰させる①⑤⑥は、本編の魅力を結集したかのような好ナンバーですよ。 演奏の精度を高め、更にマッシヴに「スラッシュ・メタルらしさ」が鍛え上げられた逸品で、FUELED BY FIRE入門盤としてお薦めする1枚。
前作『IN WAR AND PEACES』に引き続き、プロデューサーにヴァルデマー・ゾリヒタを起用してレコーディング、'13年に発表されたニュー・アルバム。 21世紀のSODOMの土台を支え続けたドラマー、ボビーが脱退し、その後任として元DESPAIRのマッカことマーカス・フライヴァルドが加入。この編成替えは確実に本編に影響を与えていますが、だからといって微塵もクオリティ低下を許さないのがSODOMたる所以です。 心持ちメロディをなぞる場面の増えたトム・エンジェルリッパーの激情シャウト、ヨーロッパ的ダークネスとドラマ性を湛えたバーネマンのGプレイ、そして前任者ほどの破壊力は持ち合わせていない代わりに、タイト且つ疾走感溢れる演奏で楽曲の「キャッチーさ」増強に貢献するマッカのDsと、今回の作風は(良い意味で)メロディアスな方向へと振られており、例えるなら、ここ数作のKREATORに通じるスラッシュ・サウンド・・・と言えば、どんな感じの音か伝わるでしょうか? SODOM以外の何者でもない凶暴さで蹂躙する②④⑥のカッコ良さも格別ですが、それにも増して魅力的なのは、猛々しくも劇的なOPナンバー①や、本編最高速度で畳み掛ける⑦、ロシア民謡“カチューシャ”のメロディがイントロにくっ付けられた⑧、一緒に叫びたくなる秀逸なサビメロを持つ⑨といった、攻撃性とメロディが絶妙なバランスで並び立つ楽曲群。 CDの帯には「賛否両論を呼ぶ作風」とありますが、いやいや。初心者にもSODOM入門編としてお薦め出来る、取っ付き易い魅力に溢れた1枚ではないかと思う次第。(なのに帯付き輸入盤のみのリリースってのは勿体無さ過ぎる)
SLAYERとSEPULTURAのカヴァーも収録したEP『POINT OF NO RETURN』でワンクッション置いた後、'13年に発表された3rdフル・アルバム。 ミックスをテリー・デイト、マスタリングをジェイムズ・マーフィが手掛けるという必勝オーダーが組まれ、歯切れ良いVo、ザックザクのGリフ、機動力に富むリズム、フラッシーに花咲くツインGとが威勢良く突っ走る、HAVOK流スラッシュ・メタルの旨味成分がパンパンに詰まった名曲①で幕が上がる本作ですが、聴き進めていくと何やら違和感が。 全体的に音圧が低く、かっちりとした整合性が感じられた前作に比べ、よりメロディアスに「歌っている」Vo、弾むような軽快感を伴って疾走するリズム等、どちらかといえば、カラッと乾いたノリの良さが重視されていることが原因かと。例えるなら、TESTAMENTのアルバムだと思って聴きてみたら、始まったのがEXODUSのアルバムだった・・・みたいな? これはこれで間違いなく痛快なスラッシュ・アルバムですし、キレのある演奏が映える楽曲の数々、例えば運動中枢を直撃する③や、キャッチーな曲調に無性に頭を振りたくなる④みたいな名曲は、アルコール類のお供に最適。ただこの音をHAVOKに求めていたかと言えば・・・うーむ。 尤も、他にも①②⑦⑩といったクールなスラッシュ・ソングが並ぶ本作に、三ツ星の評価を与えることに何ら躊躇はありませんけどね。
ドラマーとして現MR.BIGのパット・トーピーが参加。更に、後にHOUSE OF LORDSがカヴァーしてスマッシュ・ヒットさせた名バラード“LOVE DON'T LIE”や、アニメ『トランスフォーマー THE MOVIE』のテーマ曲“THE TOUCH”、映画『処刑ライダー』劇中歌として日本でもシングル・カットされた“HEART VS HEART”を収録する等、スタン・ブッシュのカタログの中でも一際多くのトピックを抱え、「代表作」と言ってもあながち的外れではない存在感を放っている、'86年発表の作品。 アメリカン・メロディアスHRという基本的な音楽性を素直に発展させる一方で、よりエネルギッシュなノリの良さが増量されているのは、名義を「STAN BUSH & BARREGE」に変えて、バンドっぽさをアピールしていることと無縁ではありますまい。 それでいて、無理に頑張ってハードにしてる感じというか、付け焼刃感はまるでないのだから、スタン・ブッシュというミュージシャンの曲作りの才には畏れ入りますね。フックが連続するメロディと、インスト・パートの聴かせ所も盛り込んだハードな曲調とが違和感なく同居する③⑤⑦辺りはその真骨頂。勿論、前作のAOR/産業ロック路線を受け継ぐ⑥、バラード②⑩なんかも素晴しい出来栄えです。 チャートを賑わすような成功こそ収められなかったものの、長らく再発が待ち望まれていた作品だけあって、捨て曲なしの完成度の高さは実に立派。欲を言えば国内盤の再発が叶えば尚良かったのですが・・・。