ANTHEM脱退以降は表舞台から姿を消していた中間英明(G)が、渡米時代に作り溜めていたマテリアルが正式音源化。 インストゥルメンタル作品ではなく、全曲英詞による歌入り。但し、元がデモテープなので音質はお世辞にも良好とは言えず。またシンガーの歌唱も、力みまくりのハイトーンが引っ繰り返りそうになる危なっかしさ。加えて、HURRY SCUARYの『BREAK IT UP』や名盤『POINT OF NO RETURN』と比べてしまうと収録曲は今ひとつ面白みに欠ける・・・と、あまり「アメリカ・レコーディング作品」というありがたみを感じさせてくれません。 しかし、そうしたモノトーンな本編中にあっても総天然色の華を終始撒き散らすのが、技術的にも感性的にも冴え渡る中間のGプレイ。例え地味な楽曲であろうとも、ひとたび彼の演奏が走り始めれば、一気に曲調が輝き出すのですから、御見事!としか言いようがありません。 長き不在を囲う内に、半ば伝説的存在と化していた「不世出のギター・ヒーロー」との評価が伊達じゃないことを再確認させてくれる1枚。ファン向け作品ですけどね。
デビュー作『ANTHEMS OF THE DAMNED』の高評価をバネに、プロデューサーにKILLSWITCH ENGAGE等との仕事で知られるクリス“ゼウス”ハリスを迎え、ジャケット・アートワークを名匠アンドレアス・マーシャルが手掛けるという万全の布陣を敷いてレコーディング、'14年に発表された2ndアルバム。 本編収録のカヴァー曲⑭⑮⑯の存在が端的に物語る通り、ACCEPTの重厚な突進力、RUNNING WILDのエピカルな構成力、そして聴き手を煽動するノリの良さをMOTORHEADから抽出した上で、それらを現代的にアップデート、更にデス/ブラック・メタル/パンク/ハードコアのブルータリティで攪拌したかのようなスラッシュ・サウンドは、勿論今回も健在。 エピック・メタリックな勇ましさと野蛮さを撒き散らしながら猛然と突進する②④⑦⑬や、聴いてるだけで思わず暴れ出したくなるバイオレントな③⑤⑥といった、リフ&リズムが硝煙弾雨の如く降り注ぐ情け無用のスラッシュ・ナンバーの数々には血を滾らせずにはおられんですよ。 洗練と引き換えに豪快さを薄れさせてしまった音作りは、個人的にはあまり好みとは言えないのですが、ともあれ完成度では確実にデビュー作を上回る充実作。
イスラエルはテルアビブから登場した、限りなくデス・メタル寄りのスラッシュ・サウンドを聴かせてくれる5人組。(CD屋ではデス・メタルのコーナーに陳列されてること多し) '11年に出場した「WACKEN BATTLE」で最優秀バンドに輝いたことから、元NOISE RECORDS創始者カール・ウォルターバックが新たに設立したSONIC ATTACK RECORDSとの契約をゲット。同年、EP『RISE OF THE HAMMER』を発表してデビューを飾る。 '12年には1stフル『ANTHEMS OF THE DAMMED』を、そして'14年には日本盤も発売された2nd『STEELCRUCHER』をリリースしている。
KANSASの中心メンバーだった、ケリー・リヴグレンが'80年に発表した初のソロ・アルバム。 BLACK SABBATH加入直前のロニー・J・ディオ(Vo)を筆頭に、多彩なゲストを迎えてレコーディングされた本作は、『暗黒の支配者』なる大仰な邦題が物語る通り、7~8分台の長尺曲も収録するなど、ドラマティックな大作主義が打ち出されていて、この時期にAOR/産業ロック路線への傾斜を深めていた、KANSASに対する(当人の思惑はどうあれ)カウンター的内容に仕上がっています。 そのKANSASのスティーヴ・ウォルシュ(Vo)が歌う流麗にしてポップな③や、アーシーで埃っぽい④のようなタイプの楽曲も収録されていますが、やはり本編の聴き所として機能しているのは、ロニーが歌うことを前提にアテ書きされたような、起伏と陰影に富む②や、タイトルからしてRAIBOW時代を彷彿とさせるバラード⑤、そしてフィル・イハート(Ds)やロビー・スタインハート(Vio)らも参加して、70年代KANSASの再現が試みられている(そして達成されている)8分越えの大作ナンバー⑦といったドラマティックな楽曲の数々。 アメリカン・プログレ・ハード時代のKANSASにおいてケリーが果たした役割の大きさを実感させられると共に、本作発表後間もなく、彼がKANSASから離脱することになるのも「さもありなん」と納得の1枚。
女性メンバーを擁するスラッシュ・メタル・バンドは珍しくない昨今ですが、メンバー全員が女性となるとちょっと前例が思いつかない、ブラジルはサンパウロ出身のトリオ・スラッシャー。(結成当初はツインG編成の4人組だったらしいが) '12年に制作したPVがYOUTUBEで話題となったことから、オーストリアのNAPALM RECORDSと契約を締結し、同年、1stデモを7インチ・シングル化した『TIME OF DEATH』でデビュー。 更に'14年には、プロデューサーにKORZUSのメンバーを起用してレコーディングが行われた1stフル『VICTIM OF YOURSELF』を発表。 アンドレイ・ボウジコフの手掛けたアートワークが目印の同作は、スピリチュアル・ビーストを通じて日本盤もリリースされている。
YESやPINK FLOYDに触発されたメンバーらにより、'76年にカナダはオンタリオ州において結成。 '79年に一旦解散するも、'89年に再編。翌年にはカセットテープのみでセルフ・タイトルのデビュー作を発表。 更に'92年に2nd『SO EXACTLY WHERE ARE WE?』をリリースすると、これが日本の輸入盤市場で評判となり、'94年にはゼロ・コーポレーションから国内盤の発売も実現している。 '95年に3rd『ON SECOND THOUGHT』を発表して以降はすっかり名前を見聞きしなくなってしまったが、その後はどうしたのだろう?1stをCDで発表し直す、なんて話もあったようだが、果たして実現したのかどうか。
デンマークはオールボーにおいて、平均年齢16歳という若いメンバー達によって結成。 '07年制作の自主制作EP『ART IN IMPERFECTION』で獲得した評判を梃子に、'11年には「制作日数僅か12日間」という実にスラッシュ・メタル・バンドらしい手法でレコーディングされた1stフル『LOST IN VIOLENCE』をULTIMATE RECORDSから発表。 更に'12年には、バンド・コンテスト「ROCK THE NATION AWARD 2012」に参加し、数千の応募バンドの中から見事最優秀バンドに輝き、その賞品としてワールドワイドなレコード契約を獲得。 プロデューサーにHYPOCRISYのピーター・テクレンを迎える等、より潤沢なレコーディング環境で制作された2nd『LAST NIGHT OF SOLACE』は'13年に発表され、同作はSPIRITUAL BEASTを介して日本盤もリリースされた。
ウリ川本率いる日本のインディー・レーベル・・・ではなくて、スウェーデンのヴェクショーにて'92年に結成された5人組HRバンド。 '93年リリースの自主制作5曲入りデビューEP『WAVES IN MOTION』に託された、DEEP PURPLE~RAINBOWをパク・・・じゃなくて強い影響を受けたHRサウンドが輸入盤市場で評判を呼び、翌'94年、1stフル『TALES OF THE SACRED』をゼロ・コーポレーションから発表して日本デビューを飾るも、それを最後に消息を絶つ。 尚、バンド末期にドラマーの座を担ったのは、DON DOKKENやJON NORUM、MIDNIGHT SUN等での活動で知られるヘンポ・ヒルデンだったという。
中島優貴(Key)率いるHEAVY METAL ARMYが、より幅広い音楽性を追求すべく、メンバー・チェンジ(ギターがシンキから多田勇に、ベースがチェピート竹田からデイヴ伊藤に交代)を契機にEARSTEN ORBITと改名。 ハードネスは維持しつつも、中島の操るKeyをこれまで以上に前面に押し出し、プログレ・テイストを増強した1st『FUTURE FORCE』を'82年に発表して出直しデビューを飾る。 アルバムのクオリティのみならず、横田基地で収録された『LIVE! JOURENEY TO UTOPIA』('83年)を聴けば明らかなようにライブ・アクトとしての実力も確かだったが、結局、その後間もなくバンドは自然消滅・・・。
沈滞する90年代の英国HR/HMシーンにおいて気を吐いたDEN OF THIEVES、'95年発表の2ndアルバムにして(残念ながら)ラスト作。 勢いよく切り込んでくるKeyリフが、どことなくVOW WOWの名曲“SHOT IN THE DARK”を思わす疾走ナンバー①によるOPだけで「よっしゃ、合格!」と膝を打つ本作は、英国声シンガーの熱唱とバックのタイトな演奏を活かして、憂いを帯びたメロディがキャッチーに駆け抜けていく、「華」はないけど聴けば聴くほどに旨味が染み出す燻し銀のブリティッシュHMサウンドが、今回も徹頭徹尾貫かれています。 ①③⑦⑩といった疾走曲のカッコ良さに一層の磨きを掛けると共に、ソロを取ったかと思えばリフも刻み、時にはGとバトルを繰り広げたりと、ゲスト参加とは思えぬ八面六臂の活躍を魅せるKeyのフィーチュア度が格段にUP。これにより潤いとドラマ性が増強された本編は、キャッチーな哀メロ・ナンバー④に、ドラマティックに盛り上がる⑤⑨、爪弾かれるスパニッシュ・ギターが絶品の⑧、ハードポップ風味の⑫etc・・・といった具合に、個々の楽曲のキャラ立ちがより明確になりました。 メリハリ不足やチープな音質といった前作の弱点もきっちりと改善、ポテンシャルの高さを遺憾なく発揮した力作・・・なんだけどこれも廃盤。無念。