長く続く廃盤状態のせいで、近年、中古盤の価格が急騰しているというザ・デモリションマン在籍時代のVENOM作品群。この状況を鑑みたマンタス&トニー“ザ・デモリションマン”ドーランが、『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』『THE WASTE LANDS』の3枚から選りすぐった楽曲をリ・レコーディング、更に新曲2曲も加えて'13年にMPIRE OF EVILの名の下に発表したリメイク・ベスト盤(?)がコレ。 ライブ映えを念頭に置いたのか、リメイク作業はスピーディorアグレッシブな楽曲を中心に行われていて、我が愛聴盤『TEMPLE~』からはたった1曲の選出に留まっている点は「そりゃ殺生な」ってな感じですが、まぁ名曲を山ほど抱えているバンドゆえ、どう選んだって漏れは出ますわな。 轟然たる音作りのもと新たに蘇った荒くれナンバーの数々は、速い曲はより速く、ミドルの楽曲はより禍々しく・・・といった具合に一層のビルドアップを遂げていて、トニーの野太い咆哮とBプレイ、厄いリフ・ワークからメロディックなソロ・パートまで剛柔自在のマンタスのG、それにジャクソンのエクストリーミリーなドラミングとが三位一体となった冒頭3曲、取り分けOPナンバーの“TEMPLE OF ICE”はスラッシャー及びパワー・メタラー必聴の名曲かと。この中に並ぶと新曲2曲がやや弱く聴こえてしまうのは如何ともし難いですが、それらも比較論抜きで評価すれば、バイオレントなスラッシュ・ナンバーで十分にカッコイイ。 ザ・デモリションマン時代のVENOMの再評価を促すのみならず、来るべきMPIRE OF EVILの新作に対する期待感を煽るのにも十分な1枚。出来れば『TEMPLE OF ICE』や『THE WASTE LANDS』のリマスター再発もお願いしたいところですが・・・。
'12年発表の14thアルバム。再結成後のDEMON作品を聴くのは今回が初めてなのですが、湿ったドラマ性と適度なノリの良さを併せ持ったブリティッシュHMサウンドは、紛うことなきDEMON節。このクオリティならば、ファン以外の方から「わざわざ日本盤出すほどの作品か」と、後ろ指を指されてしまうこともありますまい。 中期の傑作『TAKING THE WORLD BY STORM』で開眼した作風を基本に、Keyをスパイス的に用いて、楽曲をよりコンパクトに、メロディアスにまとめ上げた本作の魅力は、“バビロンの城門”を思わせるエスニックなイントロ付きの雄々しいOPナンバー“PREY”と、憂いを帯びたアルバム表題曲“UNBROKEN”、歴戦のベテランが演るからこそ血が滾る説得力が滲み出すロック賛歌“FILL YOUR HEAD WITH ROCK”辺りに凝縮。 それにしても、すっかり本格派シンガーとしての貫禄を身に付けたデイヴ・ヒルの衰え知らずのVoは驚嘆に値します。代表作とされる1stや2ndの頃は「下町のオヤジ」風味全開でしたが、今やその歌声は英国紳士然とした威厳や深みを感じさせ、特に“WINGS OF STEEL”“I STILL BELIEVE”といったバラード系の楽曲におけるジェントリーな歌唱には脱帽ですよ。 ベテラン・バンドだからこそ醸し出せる、ブリティッシュHMの滋味に溢れた1枚。
元TOUCHのマーク・マンゴールド(Key)が、DRIVE, SHE SAIDでの活動を停止させた後、80年代から自身が、他のアーティストらと共作しつつ作り溜めていたマテリアルをレコーディングしてアルバムを作ることを思いつき、相棒に無名の新人トッド・ゴーギャン(vo)を起用して、'97年に立ち上げたメロディアスHRプロジェクト。 そのためバンドとしての実体はなく、ボブ&ブルースのキューリック兄弟や、ZEBRAのランディ・ジャクソンらの協力を仰いでレコーディングは行われている。
「世界中のどこよりも日本で一番で売れた作品。また、このアルバム・リリースに伴って行われた来日公演は、バンド史上最大のハイライトだった」とメンバーが述懐する、'90年発表の4thアルバム。 デビュー当時は「ポストEUROPE」と言われたTREATですが、この頃になるとGUNS N' ROSESやBON JOVI辺りからの影響も取り込み、音楽性の拡散が一層顕在化。 それはいかにも90年代の作品らしく、よりハードなGを前面に押し出しつつ、時にスリージーだったりブルージーだったりする冒頭3曲に特に顕著に表れていて、初めてこの流れを耳にした時は少々引いてしまいましたよ。正直な話。 ただ、本編を聴き進めれば4曲目以降は従来のTREATらしさが回復。また、例え新味を盛り込んだ楽曲であっても、哀愁を湛えたロバート・アーンルンドの歌声とKeyを効果的に用いることで、メロディから北欧のバンドらしい透明感を失わない曲作りの巧さには、流石!と唸らされるものあり。 中でも憂いを帯びた疾走ナンバー“CONSPIRACY”、そして1st収録曲にしてTREAT屈指の名曲のリメイク“GET YOU ON THE RUN”はアルバムのハイライト級の存在感を発揮。当サイトにおいても高い人気を博しているのも納得です。 これで序盤の曲順にもうちょい気を払ってくれれば尚良かったのですが・・・。
エレファンテ兄弟自らが主宰するPAKADEM RECORDSから'90年に発表された2ndアルバム。 複数のリード・シンガーの起用や、豪華なセッション・ミュージシャンの参加を仰いでいる点等は前作と同様ながら、今回は、アルバムの方向性が絞り切れていない印象もあったデビュー作の反省を生かして、Keyのフィーチュア度を高め、より優美なメロハー路線を徹底。併せて、楽曲を彩るメロディの哀愁やフック、それにハーモニーの強化も図られており、個人的にはキラキラのKeyを纏って軽やかに疾駆するOPナンバー“HOLIEST ONE”が始まった途端、「はいはい、俺の負け俺の負け」と両手を挙げて降参したくなりました。 ジョン・エレファンテ在籍時代のKANSASを思わせるプログレ・ハード調のアレンジや曲展開が端々で顔を覗かせているのも本作の特色で、ことにインスト“STAMPIDE”から次曲“LIVING FOR YOU”へと繋がっていく流れは、ドラマティックでありながら、仰々しさよりも華麗さ、親しみ易さといった要素が勝っている辺りが正しくKANSAS。 他にも、コマーシャルに疾走するハードポップ“WHEN ALL COMES DOWN”から、強い哀愁を発散してエンディングを締め括るバラード“IT IS DONE”まで優れた楽曲がズラリ取り揃えられ、MASTEDONの代表作としての評価も確立している(METALLION誌のメロディアスHR特集号にも選出されていました)本作ですが、現状、彼らのカタログの中では最も入手困難な作品というのが残念至極。
RAIBOWの『銀嶺の覇者』の廉価版みたいなジャケットはオーラゼロですが、しかしこれが、北欧メタル史を語る上で欠かすことの出来ない名盤の一つなのだから侮れない。 ヒット曲“ONLY ONE WOMAN”(勿論MABLESのカヴァー)を収録し、ALIENの代表作としても知られる本作において、声質自体が憂いを帯びているジム・ジッドヘッドのVo、ソロ・アルバムをリリースする程の実力派でありながら、出しゃばり過ぎることなく、クラシカルなフレーズを適切に紡ぐトニー・ボルグのGとが牽引役となって描き出すのは、しっとりとした潤いと、ヒンヤリと清涼な空気をその身に纏わせた、正しく理想的な北欧ハードポップのシルエット。 Keyが透明感とリリシズムを補強するOPナンバー“BRAVE NEW LOVE”を挨拶代わりに、涼しげ且つ爽やかに駆け抜けていく“GO EASY”、ドラマティックなインスト・パートが印象的な“JAIME REMEMBER”から、壮麗なバラード“MIRROR”にて幕が下ろされる本編は、様式美メタルの要素も入った名曲“DREAMER”を除けば、HRと表現するのにも少々躊躇いを覚えるポップな音像ではあるのですが、とまれ、このメロディの充実度、捨て曲なしのクオリティの高さは、一度体験しておいて損はありません。 といっても現状、入手困難なのが本作唯一にして最大の問題点なのですが・・・。
EXODUS離脱後は、趣味で演ってるAC/DCのカヴァー・バンドや、TENET、DUBLIN DEATH PATROLといったプロジェクトでプレイする以外は、ほぼセミ・リタイア状態にあったスティーヴ“ゼトロ”サウザ(Vo)が、ライブ会場で出会った若きギタリスト、コスタ・ヴァルヴァタキスの存在にモチベーションを刺激されて、'11年に結成したニュー・バンド。 同年、セルフ・タイトルの4曲入りデモテープを制作した後、ドイツのMASSACRE RECORDSと契約。'13年には、ゼトロの実子、コーディ(B)とニック(Ds)を含むラインナップで1st『HEROES OF ORIGIN』を発表している。