『OCTPUS』風のフロント・カバー/腕組ポーズの裏ジャケ、ドラムセットの再現具合から、本作の主役たるコージー村上のドラム・プレイに至るまで、どこを切っても「コージー・パウエル愛」が溢れ出すトリビュート・アルバム。 ツボを押さえた選曲も秀逸で、例えばRAINBOWでは定番曲を敢えて外し“LADY OF THE LAKE”や“DANGER ZONE”といった隠れた名曲をカヴァーしている辺りが、流石「マニア目線で作ったアルバム」と嬉しくなりますね。まぁ、どうせWHITESNAKEを演るなら“SLIDE IT IN”よりも“SLOW AN' EASY”とかが聴いてみたかった・・・とか思いますが。 リスペクトが長じて生み出された作品ゆえ、基本的に楽曲は完コピが大前提。そのためコージー御大に特に関心がない場合には「単なるカラオケ大会」に映りかねないのですが、逆にコージー及び参加ミュージシャン勢に思い入れがある人なら、コージー村上のドラミングを筆頭に、下山武徳のロニー、高谷学のデヴィカバ、井上貴史のトニー・マーティン、島紀史のリッチー、足立裕二のシェンカー、和嶋慎治のトニー・アイオミ、日下部正則のゲイリー・ムーアetc・・・と、参加各人の入魂のなりきりプレイに顔が綻ぶこと請け合いですよ。 作品の性格上、続編を出すのは難しいかもしれませんが、ならいっそのことHR/HMの名曲の数々をコージー風に叩いて『地上最強の渡り鳥/コージー・パウエルもし戦わば』的な企画盤を作ってみるってのは如何でしょう。だめか。
表向きの理由は「ギランの喉に出来たポリープの治療のため」、実際は「DEEP PURPLE再結成に向けての布石」からGILLANのラスト作となってしまった'82年発表の5thアルバム。 ヤニック・ガーズ(G)が曲作りに本格参戦したこともあって、てっきりヘヴィ・メタリックな作風で攻めて来るものと思ったら、意外や、キャッチーに弾む“LONG GONE”や、哀愁漂う伸びやかなメロハー・チューン“LIVING A LIE”といったこれまでになくポップな楽曲を収録。基本的に本作は、前のめりな豪快さよりも整合性を重視していた前作『DOUBLE TROUBLE』のスタイルをそのまま受け継いでいました。 尤も、「とにかく時間がないのでちゃっちゃと作りました」的な粗さも目立った(トーメのペンによる楽曲も収録されていた)『DOUBLE~』に比べると、しっかりと煮詰められている印象で、何よりOPを飾る疾走ナンバー“WHAT'S THE MATTER”、“蒼き海原”なる邦題もカッコイイ重厚な“BLUESY BLUE SEA”を手始めに、本編に「勢い」が戻ってきている点もポイント。 英国HR然としたドラマティックな曲展開の上に、浮遊感を湛えたギランのVoが乗っかることで摩訶不思議な味わいを生んでいる“DEMON DRIVER”は、このアルバムならではの名曲と言えるのではないでしょうか。 まだまだ多様な可能性を感じさせてくれるアルバムだけに、これが最終作とは残念至極。
イアン・ギランに対しては、長らく「リッチーを煩わせる厄介者」という(相当に偏った)悪印象を抱えていたのですが、そのような彼に対する過小評価はGILLAN時代のアルバムを体験することによって、遥か彼方へと吹っ飛ばされることになりました。 全英チャート№1の座に輝いた本作(3rd)は、GILLANとNWOBHMを語る上で欠かすことのできない重要作(ジャケットからは想像し難いですけどね/笑)。前2作に比べると破天荒さが幾分薄まりを見せてはいるものの、ワイルドに唸りを上げるバーニー・トーメのG、フラッシーなKeyワークでサウンドを華麗に彩るコリン・タウンズ、スピーディ且つラウドに疾走するジョン・マッコイ&ミック・アンダーウッドのリズム隊・・・と、プレイもアピアランスも個性的な一癖も二癖もある連中を、バンドとして堂々まとめ上げるギランのカリスマ性は、一層研ぎ澄まされて絶好調。 楽器陣が火花を散らしてスリリングに疾走する“BITE THE BULLET”で余裕の喉を響かせたかと思えば、憂いを帯びたドラマティックな“IF I SING SOFTLY”は伸びやかに歌い上げ、更に“NO LAUGHING IN HEAVEN”では字余り気味の歌詞をハイテンションに速射する早口Voを披露・・・といった具合に、その歌声は第二の黄金時代を迎えてもうオーラ全開ですよ。 デビュー以降、ホップ→ステップ→ジャンプの要領で遂に英国HR/HMシーンの頂点に立ったGILLANでしたが、これを最後にトメさんが脱退。後任ギタリストとして現IRON MAIDENのヤニック・ガーズが加入し、バンドは新たな局面を迎えることになります。
全英チャート・トップ10に食い込むヒットとなった『Mr. UNIVERSE』の好評を受けて、'80年に矢継ぎ早に発表された2ndアルバム。 バーニー・トーメ(G)やジョン・マッコイ(B)らも積極的に曲作りに関与するようになった結果、「バンドらしさ」が強化。要所に配された疾走ナンバーや、先行シングル“SLEEPING ON THE JOB”といったイキの良い楽曲が、70年代HRスタイルに別れを告げ、騒々しくハジける本編の「80年代型HMテイスト」を盛り上げます。 ヨーロッパ的な暗さや重さよりも、イアン・ギランのカラッと陽性な歌声を活かした、ワイルドで豪快なノリの良さを前面に押し出す一方、重厚且つドラマティックな“ON THE ROCKS”、B主導でヘヴィに沈み込んでいくような“NERVOUS”もあったりと、この「何でもあり」な感覚がGILLANの魅力でしょうか。アドリブ全開のギランのVoと、コリン・タウンズによるジャジーなピアノをフィーチュアしたブルーズ“IF YOU BELIEVE ME”も最高にクール。 タイトル通り「栄光への道」をひた走るバンド内部で上昇気流となって渦を巻くエネルギーが見事に封じ込められた、全英チャート最高3位をマークする大ヒットを飛ばしたというのも納得の力作です。
GILLANが'79年に発表した本1stフル・アルバムは、アートワークこそAORシンガーのソロ作品のようでHR/HM的な凄みはゼロですが、内容の方はと言えば、これがイアン・ギランのDEEP PURPLE脱退後の試行錯誤を断ち切り、開き直ったかの如くアグレッシブなサウンドがギュウ詰めで最高にエキサイティング。 NWOBHMの隆盛と歩調を併せるかのように突っ込み気味に疾走する“SECRET OF THE DANCE”や“ROLLER”“MESSAGE IN A BOTTOLE”といったスピード・ナンバーの数々は、「ヘヴィ・メタル」と表現しても全く差し支えのないハッちゃけぶりが魅力。 またKey奏者コリン・タウンズの存在が、ギランの強烈なシャウト、バーニー・トーメの豪快なGプレイとタメを張る程に目立ちまくっているのも個人的には嬉しいところです(作曲面でも大きく貢献)。“SHE TEARS ME DOWN”や“MR. UNIVERSE”は、彼の渋さと華麗さの同居した流麗なKeyワーク貢献度大の名曲。そしてラストを締める号泣モノのバラード“FIGHTING MAN”では、その三者の個性がエモーショナルに絡み合うという・・・。 イアン・ギランのVoが真価を発揮するのは次作以降に譲りますが、GILLAN史上最も攻めの姿勢が打ち出された本作は、HR/HMファン向け入門盤としてお薦め1枚です。
長く続く廃盤状態のせいで、近年、中古盤の価格が急騰しているというザ・デモリションマン在籍時代のVENOM作品群。この状況を鑑みたマンタス&トニー“ザ・デモリションマン”ドーランが、『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』『THE WASTE LANDS』の3枚から選りすぐった楽曲をリ・レコーディング、更に新曲2曲も加えて'13年にMPIRE OF EVILの名の下に発表したリメイク・ベスト盤(?)がコレ。 ライブ映えを念頭に置いたのか、リメイク作業はスピーディorアグレッシブな楽曲を中心に行われていて、我が愛聴盤『TEMPLE~』からはたった1曲の選出に留まっている点は「そりゃ殺生な」ってな感じですが、まぁ名曲を山ほど抱えているバンドゆえ、どう選んだって漏れは出ますわな。 轟然たる音作りのもと新たに蘇った荒くれナンバーの数々は、速い曲はより速く、ミドルの楽曲はより禍々しく・・・といった具合に一層のビルドアップを遂げていて、トニーの野太い咆哮とBプレイ、厄いリフ・ワークからメロディックなソロ・パートまで剛柔自在のマンタスのG、それにジャクソンのエクストリーミリーなドラミングとが三位一体となった冒頭3曲、取り分けOPナンバーの“TEMPLE OF ICE”はスラッシャー及びパワー・メタラー必聴の名曲かと。この中に並ぶと新曲2曲がやや弱く聴こえてしまうのは如何ともし難いですが、それらも比較論抜きで評価すれば、バイオレントなスラッシュ・ナンバーで十分にカッコイイ。 ザ・デモリションマン時代のVENOMの再評価を促すのみならず、来るべきMPIRE OF EVILの新作に対する期待感を煽るのにも十分な1枚。出来れば『TEMPLE OF ICE』や『THE WASTE LANDS』のリマスター再発もお願いしたいところですが・・・。
'12年発表の14thアルバム。再結成後のDEMON作品を聴くのは今回が初めてなのですが、湿ったドラマ性と適度なノリの良さを併せ持ったブリティッシュHMサウンドは、紛うことなきDEMON節。このクオリティならば、ファン以外の方から「わざわざ日本盤出すほどの作品か」と、後ろ指を指されてしまうこともありますまい。 中期の傑作『TAKING THE WORLD BY STORM』で開眼した作風を基本に、Keyをスパイス的に用いて、楽曲をよりコンパクトに、メロディアスにまとめ上げた本作の魅力は、“バビロンの城門”を思わせるエスニックなイントロ付きの雄々しいOPナンバー“PREY”と、憂いを帯びたアルバム表題曲“UNBROKEN”、歴戦のベテランが演るからこそ血が滾る説得力が滲み出すロック賛歌“FILL YOUR HEAD WITH ROCK”辺りに凝縮。 それにしても、すっかり本格派シンガーとしての貫禄を身に付けたデイヴ・ヒルの衰え知らずのVoは驚嘆に値します。代表作とされる1stや2ndの頃は「下町のオヤジ」風味全開でしたが、今やその歌声は英国紳士然とした威厳や深みを感じさせ、特に“WINGS OF STEEL”“I STILL BELIEVE”といったバラード系の楽曲におけるジェントリーな歌唱には脱帽ですよ。 ベテラン・バンドだからこそ醸し出せる、ブリティッシュHMの滋味に溢れた1枚。
元TOUCHのマーク・マンゴールド(Key)が、DRIVE, SHE SAIDでの活動を停止させた後、80年代から自身が、他のアーティストらと共作しつつ作り溜めていたマテリアルをレコーディングしてアルバムを作ることを思いつき、相棒に無名の新人トッド・ゴーギャン(vo)を起用して、'97年に立ち上げたメロディアスHRプロジェクト。 そのためバンドとしての実体はなく、ボブ&ブルースのキューリック兄弟や、ZEBRAのランディ・ジャクソンらの協力を仰いでレコーディングは行われている。
「世界中のどこよりも日本で一番で売れた作品。また、このアルバム・リリースに伴って行われた来日公演は、バンド史上最大のハイライトだった」とメンバーが述懐する、'90年発表の4thアルバム。 デビュー当時は「ポストEUROPE」と言われたTREATですが、この頃になるとGUNS N' ROSESやBON JOVI辺りからの影響も取り込み、音楽性の拡散が一層顕在化。 それはいかにも90年代の作品らしく、よりハードなGを前面に押し出しつつ、時にスリージーだったりブルージーだったりする冒頭3曲に特に顕著に表れていて、初めてこの流れを耳にした時は少々引いてしまいましたよ。正直な話。 ただ、本編を聴き進めれば4曲目以降は従来のTREATらしさが回復。また、例え新味を盛り込んだ楽曲であっても、哀愁を湛えたロバート・アーンルンドの歌声とKeyを効果的に用いることで、メロディから北欧のバンドらしい透明感を失わない曲作りの巧さには、流石!と唸らされるものあり。 中でも憂いを帯びた疾走ナンバー“CONSPIRACY”、そして1st収録曲にしてTREAT屈指の名曲のリメイク“GET YOU ON THE RUN”はアルバムのハイライト級の存在感を発揮。当サイトにおいても高い人気を博しているのも納得です。 これで序盤の曲順にもうちょい気を払ってくれれば尚良かったのですが・・・。