新たにサイド・ギタリストを迎え入れて、ツインGを擁する6人編成の大所帯となったSUGARCREEKが、'84年に発表した3rdアルバムにしてラスト作。 威勢の良い「カモン!」の掛け声と共にスタートするエネルギッシュなOPナンバー①を手始めに、プログレ・ハード色を薄れさせたサウンドは、その代わりに2本のGの存在を前面に押し出して、ザックリ感をいや増したGリフや、よりダイナミックに駆け抜ける曲調等、時節柄、LAメタルへの接近を感じさせる内容に仕上がっています。 とはいえ、このバンド独特のフッキーなメロディ・ラインはその威力を全く鈍らせることなく健在。前作の作風を受け継いだポップ&キャッチーに弾む②⑥⑦があったかと思えば、甘く切ないバラード③⑧あり、そしてメロディの魅力はそのままにシャープさの磨かれたハード・ロッキンな名曲⑤⑪あり・・・といった具合に、本編は非常にバラエティ豊か。 前作収録の“CONQUEST FOR THE COMMONER”のようなプログレ・ハード調の逸品が見当たらないのは残念ですが、この完成度の高さはそれを差し引いてもお釣りが来る素晴しさ。 尚、バンドはこれを最後に活動を停止してしまいますが、後にTHE CREEKと名を改めて復活。80年代後半には2枚のアルバムをリリースしています。
元々はTHE MILES BROTHERS名義でブルーアイド・ソウルを演っていたジョージア州アトランタ出身の5人組が、音楽シーンの潮目の変化を受けて、よりHR色を強めたサウンドを実践するべく、バンド名をMPG(MILES PER GALLON)に改めて、'80年にA&M RECORDSからセルフ・タイトルのデビュー・アルバムを発表。この時のラインナップはオリジナル・メンバーのトニー・カレイ(Vo、Key)以下、デヴィッド・ミカエル(G)、キム・スミス(G)、マイケル・ボルト(Ds)、スティーヴ・ロックリン(B)。 アルバムは非常に高品質だったがセールスには繋がらず、バンドはこの作品のみを残して解散。後にデヴィッド・ミカエルはDAVID名義で数枚ソロ・アルバムを発表。本作のCD化に伴うリマスタリング作業も担当しています。
国内盤もリリースされている2ndや3rdに対し、長らく入手困難な状態にあった'89年発表の1stアルバムが、CENTURY MEDIA RECORDS創立25周年を記念して待望のリマスター再発。いやー目出度い。 同レーベルの創立者でもあらせられる初代シンガー、ロベルト・カンプフのメロディ無視の吐き捨てVo、時にブラスト・ビート寸前までヒートアップするリズム、むくつけき野郎コーラス(RISKのロム・ケイマーらが参加)、それにハリス・ジョンズが手掛けたササクレた音作りと、DESPAIRのカタログの中でも水際立った「ジャーマン・スラッシュ度」の高さを提示している本作ですが、勿論、既にこの時点で唯一無二の個性はドドンと確立済み。 まだまだ荒削りとは言え、クラシカルなメロディを紡ぐツインG、Key/アコギの効果的な導入、そして対位法を用いた、ドラマティック且つ静と動の落差の大きな曲展開が仕込まれた収録楽曲の数々からは、首魁ヴァルデマー・ゾリヒタ(G)の溢れんばかりの才気が迸りまくり。DESTRUCTIONの『RELEASE FROM AGONY』を彷彿とさせるカッコ良さ、と言えばその魅力の一端が伝わるでしょうか? 特にアルバムの幕開け役を担う①は、嘗てここまでテンションの上がるスラッシュ・メタルの序曲があっただろうか!?と、握り拳振り上げて力説したくなる名曲っぷり。・・・いやまぁ、冷静に考えれば他にも山ほどあるような気もしますが、ここは勢いに任せて「ない!」と無責任に言っておきたい。 正月明け早々、CENTURY MEDIA RECORDSからナイスなお年玉を貰った気分になれる1枚です。
TYGERS OF PAN TANGが『THE CAGE』で カヴァーしてメロディアスなポップ・チューン。 重厚なOPナンバー“A LEGEND NEVER DIES”に始まり、 ノリの良い“2+2”、切なさの滲むバラード “I DON'T FEEL THE SAME”を経て、 この曲へと繋がる構成は、 ぐうの音も出ないほど隙がありませんよ。
現在はプロデューサーとして活躍するロバート・ホワイト・ジョンソン(Vo)と、HR/HMファン的には「MEGADETHの『THE SYSTEM HAS FAILED』でベースを弾いていた人」として知られるジミー・リー・スロースを中心に結成された、アメリカの4人組が’82年にEMI RECORDSから発表した1stアルバム。 KeyをフィーチュアするAOR/産業ロック・サウンドに基本的な軸足を置きつつ、メタル者の耳にも十分訴えかけて来るハードネスと重量感(ジミー・リーの骨太なBプレイの貢献大)をも兼ね備えた隙のない1枚で、後に、劇的なOPナンバー①をBLACKFOOTが、ノリ良くキャッチーな②をVAN ZANTが、ポップでメロディアスな④をTYGERS OF PAN TANGが、そして爽快ハードポップ⑥をマーク・ファーナー(GRAND FUNK)がそれぞれカヴァーしている事実からも、本作の比類なき完成度の一端を窺い知ることが出来るのではないでしょうか。 「色々なバンドがカヴァーしてる元ネタの宝庫」的な印象を持っていた本作ですが、実際に聴いてみると、上記以外の楽曲も素晴しいのなんのって。とにかく、思わず一緒に歌いたくなるアンセム調の楽曲から、キャッチーなメロディが胸を打つハードポップ・チューンまで、粒揃いの逸曲がズラリ並んだ名盤。当然のように捨て曲もなし。 現在ではMTM CLASSICシリーズの1枚としてCD化されていますので、機会がありましたら一度是非。
ロバート・ホワイト・ジョンソン(Vo)と、ジミー・リー・スロース(B)が70年代末期に出会ったことを切っ掛けに誕生。 程なくマーク・ゲンデル(G)、トミー・ウェルズ(Ds)らが加入してラインナップが完成すると、EMI RECORDSと契約を結び、'82年にセルフ・タイトルの1stアルバムを発表してデビューを飾る。 BLACKFOOTもカヴァーした名曲“LEGEND OF NEVER DIES”が好評を博すも、EMIとの関係悪化に伴いバンドはWARNER BROS.へと移籍。 '84年には2nd『PHONOGENIC』を発表するが、不運にもこの時期は同レーベル所属の大物アーティスト達の新作リリースが相次いでいたため、彼らのアルバムは十分なプロモーションを受けられないまま埋もれてしまうことに。 バンドはデモ作りのために再びスタジオ入りするが、結局、その後間もなく解散の道を選択している。(その時録音された音源は、後にCDにボーナス・トラックとして収録された)
当時、ヒットチャートを賑わせていたLAの名うてのミュージシャン達が集結した豪勢なレコーディング環境、そして何より卓越した作曲家としての才能が注目を集めた、カナダ出身のシンガー・ソングライター、デヴィッド・ロバーツ、'82年発表の1stアルバム。 自分は'08年リリースの2nd『BETTER LATE THAN NEVER』を先に聴いてから、遡って本作を購入したのですが(何しろ1stは長らく入手困難な状態が続いていたので)、やっぱりこの頃は若い。いや四半世紀ぶりの2ndでも瑞々しさは失っていませんでしたが、この頃は更に輪をかけてピチピチしている印象で、歌声にしろ楽曲にしろアレンジにしろ、溌剌として、明日への夢と希望でパンパンに膨らんでいる感じ(?)。 フレッシュにハジける①⑤、ジェフ・ポーカロの豪快なドラミングからスタートする③なんてその最たる例に挙げられる名曲ですし、サビのメロディ展開が印象に残る②、甘くロマンティックなバラード⑦、ポップに弾むキャッチーな⑧なんかも、後にダイアナ・ロスら、著名なアーティスト達がカヴァーしたのも納得の魅力的な仕上がり。 よくぞ再発してくれました。感謝。