エレファンテ兄弟自らが主宰するPAKADEM RECORDSから'90年に発表された2ndアルバム。 複数のリード・シンガーの起用や、豪華なセッション・ミュージシャンの参加を仰いでいる点等は前作と同様ながら、今回は、アルバムの方向性が絞り切れていない印象もあったデビュー作の反省を生かして、Keyのフィーチュア度を高め、より優美なメロハー路線を徹底。併せて、楽曲を彩るメロディの哀愁やフック、それにハーモニーの強化も図られており、個人的にはキラキラのKeyを纏って軽やかに疾駆するOPナンバー“HOLIEST ONE”が始まった途端、「はいはい、俺の負け俺の負け」と両手を挙げて降参したくなりました。 ジョン・エレファンテ在籍時代のKANSASを思わせるプログレ・ハード調のアレンジや曲展開が端々で顔を覗かせているのも本作の特色で、ことにインスト“STAMPIDE”から次曲“LIVING FOR YOU”へと繋がっていく流れは、ドラマティックでありながら、仰々しさよりも華麗さ、親しみ易さといった要素が勝っている辺りが正しくKANSAS。 他にも、コマーシャルに疾走するハードポップ“WHEN ALL COMES DOWN”から、強い哀愁を発散してエンディングを締め括るバラード“IT IS DONE”まで優れた楽曲がズラリ取り揃えられ、MASTEDONの代表作としての評価も確立している(METALLION誌のメロディアスHR特集号にも選出されていました)本作ですが、現状、彼らのカタログの中では最も入手困難な作品というのが残念至極。
RAIBOWの『銀嶺の覇者』の廉価版みたいなジャケットはオーラゼロですが、しかしこれが、北欧メタル史を語る上で欠かすことの出来ない名盤の一つなのだから侮れない。 ヒット曲“ONLY ONE WOMAN”(勿論MABLESのカヴァー)を収録し、ALIENの代表作としても知られる本作において、声質自体が憂いを帯びているジム・ジッドヘッドのVo、ソロ・アルバムをリリースする程の実力派でありながら、出しゃばり過ぎることなく、クラシカルなフレーズを適切に紡ぐトニー・ボルグのGとが牽引役となって描き出すのは、しっとりとした潤いと、ヒンヤリと清涼な空気をその身に纏わせた、正しく理想的な北欧ハードポップのシルエット。 Keyが透明感とリリシズムを補強するOPナンバー“BRAVE NEW LOVE”を挨拶代わりに、涼しげ且つ爽やかに駆け抜けていく“GO EASY”、ドラマティックなインスト・パートが印象的な“JAIME REMEMBER”から、壮麗なバラード“MIRROR”にて幕が下ろされる本編は、様式美メタルの要素も入った名曲“DREAMER”を除けば、HRと表現するのにも少々躊躇いを覚えるポップな音像ではあるのですが、とまれ、このメロディの充実度、捨て曲なしのクオリティの高さは、一度体験しておいて損はありません。 といっても現状、入手困難なのが本作唯一にして最大の問題点なのですが・・・。
EXODUS離脱後は、趣味で演ってるAC/DCのカヴァー・バンドや、TENET、DUBLIN DEATH PATROLといったプロジェクトでプレイする以外は、ほぼセミ・リタイア状態にあったスティーヴ“ゼトロ”サウザ(Vo)が、ライブ会場で出会った若きギタリスト、コスタ・ヴァルヴァタキスの存在にモチベーションを刺激されて、'11年に結成したニュー・バンド。 同年、セルフ・タイトルの4曲入りデモテープを制作した後、ドイツのMASSACRE RECORDSと契約。'13年には、ゼトロの実子、コーディ(B)とニック(Ds)を含むラインナップで1st『HEROES OF ORIGIN』を発表している。
結局、国内盤はリリースされず終いだった2nd『EDGE OF THE EARTH』('11年)を間に挟んで、'12年に発表された3rdアルバム。 知らぬ間にシンガーが今風の怒号を響かせる新Vo(Gが兼任)にチェンジしていて、それに併せてってわけではないのでしょうが、サウンドからも直線的な攻撃性は減退傾向が見受けられます。 本編を重厚に覆うKey、そして一層エモーショナル&メロディアスに花開くツインGの絡みが増量されたことに加えて、クリーンVoをヴァースやブリッジに組み込み、従来の「サビメロのみをメロディアスに歌い上げる」というお約束パターンを廃した楽曲は、スラッシュ・メタル・サウンドを基調としつつも、これまで以上に緩急の落差が強調された、ある意味プログレ/テクニカル・メタル方面への踏み込みを感じさせる仕上がりに。 特に、シュレッド・リフが鬼のように吹き荒れる①、静動/美醜/モダンとオールドスクール風味を飲み込んで疾走する⑤⑦、キレキレなGリフをフィーチュアした⑩等は、精緻な演奏が生み出すスピード感とカタルシスに満ちた曲展開に否応なくテンションが上がる逸品。 1stの頃の前のめりな作風が恋しくないと言えば嘘になりますが、収録各曲それぞれのキャラ立ちが明確になったことでアルバム全体の質は間違いなく高まりまった1枚。(ちなみに最後に隠しトラックあり)
前作『HURRICANE EYES』がアメリカで不発に終わったことを受けて、テクニック志向を抑制し、LOUDNESS史上最もメロディアスな曲作りが試みられている、'89年発表の8thアルバム。 個人的に初めて購入したLOUDNESS作品ということで非常に思い入れのある1枚なのですが、こうした作風の変化や、個性の塊のようだったオリジナル・シンガー、二井原実の脱退を否定的に捉えて、雑誌では「アクが抜けてごく普通のHR/HMバンドになってしまった」と嘆くレビューも見られました。 勿論気持ちは分からなくもないのですが、しかし「ごく普通のHR/HMサウンド」のカッコ良さを舐めたらいかんぜよ、と。新Voマイク・ヴェセーラの熱唱、その彼のメタル声と化学反応を起こして、リフ/リード両面において更に切れ味の鋭さを増した高崎晃のG、そしてスピーディ且つタイトなリズム隊の存在が映える“SOLDIER OF FORTUNE”と“DEMON DESEASE”という、極上の名曲2つにサンドイッチされる形で並んだ中庸な魅力を備える楽曲群は、ほんのり和風テイストも取り入れたメロウな“25 DAYS FROM HOME”を筆頭に、ヘヴィ・メタリックなエッジは保ちつつ、胸を打つ哀愁とキャッチーなメロディに彩られた、いずれ劣らぬ逸品揃い。 つくづく、この編成が長続きしなかったことが惜しまれる名盤なのですが、90年代のLOUDNESSの混迷ぶり(と敢えて言いますが)を鑑みると、もし仮に同一編成であと何枚かアルバムを作ったとしても、これほど凄い作品が再び出来たかどうかは微妙なところではないでしょうか。短い出会いだったからこそ眩く輝いた、みたいな?
再びマックス・ノーマンと組んで、'86年に発表された6thアルバム。 前作『THUNDER IN THE EAST』は、二井原実時代のLOUDNESSの最高傑作に推したいぐらいのカッコ良さでしたが、一方で「売れるためにアメリカンなサウンドに日和った」「従来のらしさが薄れた」との声もあって、そうした批判に対して製作サイドも思うところがあったのか、今作ではより楽器陣のテクニック志向を強調。結果、本作は時に初期作を彷彿とさせる複雑な曲展開やアレンジが顔を覗かせる内容と相成りました。 サウンド・プロダクションの向上や、益々冴え渡る高崎晃のリフ・メイカーとしての才能、それにスケール感と洗練を併せ持った楽曲構築術等からは、脂の乗り切った当時のLOUDNESSの充実っぷりが手に取るように伝わって来きます。 その反面、ストレートな『THUNDER~』の聴き易さを支持していた身としては、Voを押し退けるようにして弾きまくるG、キャッチーさがぼやけ気味の楽曲、ついでに腹にもたれるプロダクションとが相俟って、聴いていると少々疲労感を覚えなくもない1枚かなぁ、と。 このバンドにしか作り得ぬ見事な完成度、それに美しい和風メロディで幕が開くアルバム表題曲①は文句なしの名曲だとも思うのですが。