「間違いなくCRYASTAL VIPERの音楽だが、これまでとは異なるサウンドを目指した」というマルタ・ガブリエル(Vo)のコメントが、判り易く本作の方向性を表している'12年発表の4thアルバム。 「中世の魔女狩りと宗教裁判」をテーマに据えたコンセプト・アルバムということで、従来前面に出ていたヒロイックなメロディや明快な疾走感が抑制された代わりに、これまで以上に表現力をフル活用してダークなストーリーを歌い綴っていくマルタ姐さんのVo、起伏の激しい曲展開や、楽曲間をSEで繋いだプログレ・メタル的手法等、本編はヨーロッパの暗黒面を暴き出すコンセプト作に相応しい、ミステリアスでシアトリカルな空気が充満している。(解説でも触れられていますが、確かにところどころでKING DIAMONDを思い起こさせます) バンド史上初の試みということでやや力み過ぎたのか、全体的にキャッチーさに欠ける傾向が見て取れ、特に地味めなOPナンバー①で掴みに失敗している点は痛い。それでも、劇的に絡み合う2本のG主導で展開していく③以降は、オルガンの導入が効果的な疾走ナンバー⑤、HELLのシンガー、デイヴィッド・ボウアーが客演して大仰な曲調に更に華を添える⑦、スラッシーなスピード・ナンバー⑪、怒りと悲しみに満ちたドラマで物語のエンディングを締め括る⑮・・・といった具合に、優れたHMソングの畳み掛けで聴き手の集中力を途切れさせない作りは流石なのですが。今回のテーマとも見事に符合するDEMONの名曲“NIGHT OF THE DEMON”のハマリっぷりも素晴しい。 それとMETALUCIFERの“WARRIORS RIDE ON THE CHARIOTS”をカヴァーしていることにも驚きましたね。日本のHR/HMファンだって「俺、METALUCIFER聴いた事あるぜ」って人は、そうそういないような気がするのですが・・・。
「KISSのようなライブを演り、JUDAS PRIESTばりのシャープなエッジと、MOTORHEADに匹敵するラウドさを併せ持ったサウンドを追求する」というVENOM時代の身上に基づき(?)、2曲のオリジナル・ナンバーと共に、JUDAS PRIESTの“EXCITER”、MOTORHEADの“MOTORHEAD”、KISSの“GOD OF THUNDER”、それとAC/DCの“HELL AIN'T A BAD PLACE TO BE”等、彼らのルーツというべきバンドのカヴァー4曲も収録されている'10年発表のデビューEP。 カヴァーのチョイスはハッキリ言ってベタもいいところですが、とにかく個性の強い人たちが集まりゆえ、アレンジは比較的オリジナル・バージョンに忠実にも関わらず、より禍々しく、よりオドロオドロしい色合いが強く感じられる辺りは流石というか何と言うか。 また、カヴァー曲の強烈な存在感に押されて霞がちなオリジナル・ナンバーの方も、単体で聴けばVENOM時代の流儀を受け継いだ、厄いオーラを発散する剛直なメタル・ナンバーであり十分にカッコイイ。(特に4曲目の“REPTILE”は○) フル・アルバムに対する期待感を煽るには申し分ないクオリティを有した1枚。今なら1stフル『HELL TO THE HOLY』の国内盤を購入すれば漏れなく本作も付いてきますので、おつまみ感覚(?)でどうぞ。
「VENOMつったらクロノス脱退以降こそが最高ッスよ!」という自分のような人間にとっては、現行VENOMよりもテンションが上がる存在、マンタス(G)、トニー“ザ・デモリションマン”ドーラン(B、Vo)、アントン(Ds)ら、旧VENOM構成員らによって結成されたMPIRE OF EVILが'12年に発表した1stフル・アルバム。 80年代アングラ・メタル的な轟然たる音作りの下、スラッシーなリフ捌きから構築美を宿したGソロまでシャープにこなすマンタス、Bプレイも歌声も容貌同様の厳つさを誇るザ・デモリションマン、燃費の悪いアメ車が排ガス撒き散らしながらかっ飛ばしてるようなアントンの豪快なドラミングによって作り出されるサウンドは、トリオ編成とは思えぬヘヴィネスと禍々しい邪気をプンプンと発散しており、イーヴル且つ剛直な①や、ダーティで埃っぽいロックンロール・テイストも塗された⑤⑧といった疾走ナンバーは、VENOMが最もVENOMらしかった時期の音像に忠実に寄り添った作りで、彼らのファンも大満足間違いなし。か? 個人的には、この面子にはもっと後期VENOM寄りのスタイルを期待していたのですが、とは言え、スピード・メタリックなGリフとマンタス会心のGソロが駆け抜ける③や、そこはかとなくメロディアスで荘厳な⑥といった名曲もちゃんと収録されているので、総合的には十分満足行く内容なのは確か。 ちなみに初回盤は、デビューEP『CREATURES OF THE BLACK』も同梱された限定2枚組使用なので、売り切れる前にレコード屋さんへGO!・・・と書こうと思いましたが、間違っても飛ぶように売れるタイプの作品じゃないので、まぁボチボチ聴いてみて下さい。
クロノスと共にVENOMの中心的存在であったマンタス(G)、クロノスの実弟でもあるアントン(Ds)、クロノス脱退後のVENOMでフロントマンを務めた巨漢シンガー、ザ・デモリションマンことトニー・ドーランにより'10年結成されたトリオ・メタル・バンド。 元々はVENOMのアルバム・タイトルに因んでPRIME EVILを名乗っていたが、同名バンドがいたことからMPIRE OF EVILに改名し、'11年に、6曲入りEP『CREATURES OF THE BLACK』でデビューを飾り、更に'12年には1stフル『HELL TO THE HOLY』を発表している。('12年にアントンは脱退) ところで、トニー・ドーランはATOMKRAFTを再結成している筈なのだが、そっちの活動は一体どうなっているのでしょうか。
'87年発表の6thアルバム。DEMONのカタログの中では比較的影の薄い存在ですが(全部影が薄いじゃん?とか言わないように!)、実はこれがなかなかの力作。 勇ましいファンファーレ調のKeyを伴った重厚な①、“HURRICANE”のタイトルに恥じぬ勢いを感じさせてくれる②・・・という開始早々のハードな展開に象徴されるように、今回は近作に顕著だったプログレ風味が後退し、代わって1st~2ndアルバムの頃を思わせるハード・ロッキン/へヴィ・メタリックなエッジとエネルギッシュな躍動感が戻って来ており、特に、子供達による賛美歌調のイントロに導かれて疾走を開始する⑤は、“ENGLAND’S GLORY”というタイトルが物語る通り、大英帝国の輝かしい歴史を高らかに謳い上げる逸品。(本国のライブではさぞかし盛り上がったに違いない) また、ただ勢い任せなだけでなく、軽快なタッチで奏でられるピアノがポップな高揚感を運んでくる⑥や、デイヴ・ヒルが自身の「ヘタウマ系シンガー」とのイメージを粉砕し感動的な歌声を披露するバラード⑨等、本編にはタイプの異なる名曲が配置。それ以外にも――ドラマ性が薄れてしまった点に若干の物足りなさを覚えなくもないのですが――聴けば聴くほど味が染み出してくる楽曲が顔を揃えている。 名盤として名高い次作『TAKING THE WORLD BY STORM』誕生の重要な布石となった1枚として、再評価を望みたい隠れた力作です。
優れたソングライターとして、そして腕利きミュージシャンとして、デイヴ・ヒル(Vo)と共にDEMONを支えてきたKey奏者、スティーヴ・ワッツの参加最終作となった'91年発表の8thアルバム。とは言え別に両者の関係が険悪化したとか、そういうマイナス要素が脱退の理由ではなかったようで、それはデイヴが本作をDEMONの重要作品の1つに挙げ、スティーヴのバンドに対する貢献の大きさに謝辞を捧げている再発盤CDの解説からも読み取れます。 んで、そのスティーヴ・ワッツの手によるドラマティックなKeyのイントロに導かれ、溌剌として勇ましいOPナンバー①で幕が上がる本作は、大枠としてはブリティッシュHM路線の名盤だった前作の流れを汲みながらも、全体的にドラマ性とヘヴィ・メタリックな荒々しさは薄らいでいる。起承転結がバッチリ決まった雄々しく力強い③はアルバム屈指の名曲と言えますし、続くこれまた劇的な④、どこかノスタルジックな雰囲気を喚起するバラード⑤、アイリッシュ風味漂う⑧辺りもグッと聴き手を惹き込むパワーとクオリティを有してはいるのですが、アルバム全体を見渡すと強く印象に残る曲とそうでない曲がハッキリと分かれてしまっているため、やや盛り上がりには欠けるかな、と。 尤も、これは前作『TAKING THE WORLD BY STORM』が素晴し過ぎたがゆえにそう感じるのであって、本作単体で評価すれば決してつまらない作品というわけではないのですが。
3枚の名作を残して活動休止状態にあったマイク・ウォルシュ(G)率いる産業/メロディアスHRバンドDEPATUREが、10年ぶりに発表した4thアルバム。 デビュー以来、作品を作る度にフロントマンを変えてきた彼らゆえ、本作でもその伝統に倣って(?)スウェーデン出身のニューシンガー、アンディ・クラヴィヤカが加入しているのですが、DEPATUREファンならマイクのお眼鏡に適った彼が確かな実力を有する逸材であることは今更疑わないでしょう。またオリジナル・メンバーのジョン・オコーネル(Key)や、2nd制作時に加入したデューイ・リベステロ(Ds)もバンドに残留しており、意外なところでその結束の高さをアピール。(ちなみにBはマイクのご子息ライアン・ウォルシュが担当) そうした面々の的確なパフォーマンスもあって、本作はファンの誰もが「おお、DEPATUREだ」と納得するに十分の作風と完成度を提示。過去作以上に生々しい音作りや、新Voの歌声が前任者達に比べHM寄りのスタイルであることもあり、一聴かなりハードな作風との印象を受けますが、OPを飾る“NO WHERE TO GO”は、哀愁を帯びたメロディに美しいハーモニー、そしてマイクのよく歌うGプレイがフィーチュアされたメロディ愛好家必聴の名曲に仕上がっているし、故ディーン・ファザーノに捧げられている②、躍動感溢れる③と続く冒頭の畳み掛けは、アルバムへの没入度を高めるのに最適な流れとなっている。 キメ曲に乏しいアルバム後半、ややメロディの質が下降線を描いてしまう点が残念ですが、10年のブランクを埋めるリハビリ作ということでは然程不満のない1枚ではないかと。 次作はあんまり待たせないで欲しいなぁ。
スラッシュ・メタル・バンドACID STORMでキャリアをスタートし、ブラジル人ドラマーのエレノ・ヴァーリ企画のメタル・オペラ・プロジェクト、SOULSPELLに参加した事で知名度を高めた実力派シンガー、マリオ・パストーレが、「自分の得意とする方向性を追求する」ことを基本コンセプトに、ACID STORM時代の同僚ファビオ・ブィットヴィダス(Ds)、マリオのボーカル教室の生徒だったラファエル・ガザル(G)らと共に'07年に立ち上げたバンド。 '10年に発表したデビュー作『THE PRICE FOR THE HUMAN SINS』はブラジルで大ヒットとなり、これを追風に、正式メンバーとしてアレックス・ガルッチ(B)を加えてライブ活動を活発化させる等、バンドとしての基盤を整えた彼らは'12年には2nd『THE END OF OUR FLAMES』をリリース。デビュー作の作風を受け継ぐストロングな正統派HMサウンドが詰め込まれたこのアルバムもHR/HMシーンにおいて好意的な評価を受けている。
セルフ・タイトルのデビュー作が好評を博した事を受け、再びプロデューサーにハワード・ベンソンを起用してレコーディング、'12年に発表された2ndアルバム。 リジー・ヘイル(Vo)のエネルギッシュな歌声をメインに据え、哀愁とフックの効いたキャッチーなメロディで勝負するメロディックHRサウンドは勿論今回も健在。と言うか、リジー嬢の歌声に関しては前作より更なるパワーアップを遂げていて、アグレッシブなメタル・チューンにおけるガッツ溢れるシャウトから、バラードで聴かせる入魂の歌い込みに至るまで、溢れ出すようにエネルギーが迸る歌唱は唯一無二の個性として昇華され、アルバム最大の聴き所となっています。 また、ヘヴィ・メタリックに疾走するOPナンバー①で幕が開く事に象徴されるように、収録楽曲についても全体的に攻撃性の底上げが図れている印象が強く、それでいてメロディの質に大味化が見られない点にこのバンドのセンスの良さが見て取れる。 “BET U WISH U HAD ME BACK”級の名曲が見当たらないため一聴してのインパクトは前作に及ばないものの、それでも並のバンドじゃ束になっても敵わないほど楽曲のクオリティは充実。特に⑤⑥⑦⑧といったバラード~メロディアスHRナンバーが連続する中盤は強力な求心力をもって耳を捉えて離さない。ちなみに個人的な一押しは、優れたメロディ・センスとモダンなセンスが光る⑧(ライブの楽しさについて歌った歌詞も○)でしょうかね。 1stアルバムの成功がフロックでなかったことを見事に証明する充実作。
リジー(Vo)とジョン(Ds)のへイル姉弟が中心となって活動を開始。当初は姉弟以外のメンバーは流動的だったらしいが、'00年発表の6曲入りEP『DON'T MESS WITH THE TIME MAN』の制作を境にラインナップが固まり、更に積極的なライブ活動が実を結んで、'05年には米メジャーのATLANTICとディールが成立。 まずは挨拶代わりにライブEP『ONE AND DONE』('06年)をリリースし、そして'09年には本命の1stフル・アルバム『HALESTORM』を発表。(プロデュースはハワード・ベンソンが担当) 同作は80年代HR/HMからの影響が色濃く打ち出された作風にも関わらず、全米総合チャートの40位にランクインを果たし、シングル“I GET OFF”とIT'S NOT YOU”もメインストリーム・チャートのトップ10に入るという好リアクションを獲得している。 '10年にはLOUD PARK 10に出演するため初来日を果たす等、アルバム・リリース後は積極的にツアーに勤しみ、'12年には再びプロデューサーにハワード・ベンソンを招いて2ndアルバム『THE STRANGE CASE OF・・・』を発表した。