テイチクから国内盤CDが再発された際「まぁNWOBHMを代表するバンドだし、勉強しておくかな」ぐらいの資料的価値重視で購入した作品でしたが、実際に聴いてみて、HMのエッジとパンキッシュなノリの良さを併せ持った(バンド曰く「ニューウェーブと呼ぶには重く、HMと呼ぶにはあまりにパンク」)なサウンドの問答無用のカッコ良さにノックアウトされてしまいましたよ。 案外キュートな(?)歌声とハスっぱなコーラス、豪快にかき鳴らされるGリフにタイトで埃っぽいリズムとがワイルドに押し出してくる、MOTORHEAD直系ロックンロール・サウンドで媚や虚飾を排除したスケ番チックな骨の太さを提示する一方、必要以上に男勝りたらんとする力みや気負いを感じさせない自然体なバランス感覚も上々で、何よりGUNの名曲“RACE WITH THE DEVIL”の見事な料理っぷりからも分かるように、メロディがいかにも英国的な陰りを湛えている点もナイス。クールなリフ・ワークのみならずブルージーなソロ・パートにも冴えをみせるケリー・ジョンソン('04年に脊柱癌で逝去)のGプレイは本作の聴き所の1つですよ。 「サイレン音が取り入れられた楽曲にハズレなし」の自説を補強してくれる硬派なOPナンバー“DEMOLITION BOYS”から、キャッチーな名曲“EMERGENCY”を含む本編後半に至るまで、頭を振らずにはいられない好戦的なエネルギーに満ち溢れた1枚。
90年代に一旦は国内盤がCD化されたものの、その後は長らく廃盤状態が続いていたSTARCASTLEのカタログが先日、漸くリマスター&紙ジャケ再発。しかし何故かそのラインナップから外されてしまっていた'78年発表の4thアルバム。 従来のイマジネーションを刺激するファンタジックなイラストから一転、シンプルなグループ・ショットが用いられたジャケット・アートワークへの変化が端的に示すように、プログレ・ハード路線の前3作がクオリティに見合うだけの成功を収められなかったことに失望したメンバーが自棄になったのか、はたまたレコード会社から「もっと売れるアルバム作れやコラ」とプレッシャーがかけられたのかは定かではないが、ともかく一気にAOR/産業ロック方面へと踏み込んだ内容に仕上がっている本作。 Keyサウンドが脇へと下がり、スケール感やドラマ性を大幅に減じた曲展開、壮麗さを薄れさせたコーラス・ワーク等、全体的にシンプルにまとめられた小粒な作風には物足りなさを覚えずにはいられませんが、メンバーの技量は確かな上に、繊細なアレンジの魅力やポップなメロディ・センスも相変わらず冴えているとくれば、多少の路線変更があろうともつまらない作品が出来上がるわけがありません。 取り分け、叙情味の効いたピアノ・バラード“SONG FOR ALAYA”と、本編中最もプログレ・ハード・テイストを色濃く残しているラスト・ナンバーにして、濃厚な泣きのGプレイが炸裂する“WHEN THE SUNSHINE AT MIDNIGHT”は、このアルバムならでは名曲。 しかし結局、本作もまたセールス的には全く振るわずバンドは解散の道を選択する事となるでありました。合掌。(で、後に再結成)
2nd『FOUNTAINS OF LIGHT』リリースから僅か1年足らずという短いインターバルで制作され、'77年に発表された3rdアルバム。(邦題は『星の要塞』) その『FOUNTAINS~』同様、ロイ・トーマス・ベイカーがプロデューサーとして再登板。SF系の映画や小説の仕事等で知られるティム&グレッグのヒルブラント兄弟が手掛けた芸術的なまでの美しさを誇るファンタジックなジャケット・アートワークも目を惹く本作は、壮大な音作りから、高度な演奏技術が活かされた技ありのアレンジ/曲展開と、ポップなメロディ・センスとが融合した楽曲に至るまで、YESフォロワーの座から脱し、STARCASTLEならではの個性的なサウンド・スタイルを確立した名盤としてファン人気が特に高い1枚として知られる。 前作ではやや冗長な部分も見受けられた大作主義(プログレ風味)を抑制。ポップな躍動感やボーカル・ハーモニーを増強し、コンパクトに圧縮された楽曲群はインスト・パートからテリー・ルトゥレルの「歌」へと明らかにその比重を移し、BOSTONやSTYXを思わせるメロディアスHRの側面がグッとクローズアップ。また、曲展開が整理されたことで、キャッチーに磨き上げられたサビメロもこれまで以上に素直に胸に響くようになった。 爽やかで抜けの良い“CAN'T THINK TWICE”は新たなSTARCASTLEの魅力を開拓する名曲ですし、従来のプログレ風味と新たなポップ風味とが巧みに溶け合わされた“EVENING WIND”や“WHY HAVE THEY GONE”辺りは、このアルバムならではの個性を備えたナンバーとして聴き応え十分。 STARCASTLE入門編にどうぞ。
プロデューサーにQUEENとの仕事で知られるロイ・トーマス・ベイカーを迎えてレコーディング作業が行われ、'77年に発表された2ndアルバム。(邦題は『神秘の妖精』) この人選の効果は覿面に本編に反映。繊細な表現力を増したVoの歌声(ジョン・アンダーソンっぷりに拍車がかかってます)を筆頭に、名工が手掛けたガラス細工のごときコーラス・ワークに彩られた、スペーシー且つ壮麗なる楽曲群が曲間を設けず流れるように展開していく構成、そして壮大にして奥行きを感じさせるサウンド・プロダクションetc・・・と、前作にそこはかとなく漂っていた疾走感やダイナミズムが薄まった代わりに、上品にソフティケイトされたポップなメロディと、細部まで丹念に練り上げられたアレンジの数々といったプログレ・ハード的な要素を一層強調した作風は、良くも悪くも「YES化」が更に進んだとの印象を受ける。 メロディの質や演奏など、パーツ毎に取り出せば耳惹かれるフックが備わっているのに、楽曲総体だと今ひとつ締りに欠ける・・・というウィークポイントが露呈してしまっていますが、それでも、美しくファンタジックな曲調に何やらフワフワとした心持ちになる“TRUE TO THE LIGHT”、物悲しいイントロからスタートする“PORTRAITS”、立体的に組み上げられたボーカル・ハーモニーにうっとりと聴き惚れる“DIAMOND SONG(DEEP IS THE NIGHT)”のような楽曲が連続する本編後半の魅力は、他にはない味わい。 本作もまた高いクオリティを有する1枚であることは間違いないです。
ジョン・アンダーソン似のVoの歌い回し、泣きや哀愁より上品なポップ・センスが強く出たメロディ、大作主義を志向しつつも、起承転結を有する構築感よりも感性の赴くままに膨らまされた「奔放さ」の方が支配的な曲展開等、さしてYESに詳しくない我が身ですら「あぁ、YESぽいなー」と感じられる要素がてんこ盛りに詰め込まれた、'76年発表のセルフ・タイトルのデビュー作。 個人的にYESは少々苦手としているのですが、にも関わらず本作を思いの外楽しむ事が出来たのは、リード楽器の役割を果たすB、よく歌うG、カラフルなKey、変拍子を絡めたリズム・ワークで長大な曲展開を支えるDsといった、高い演奏能力を有する楽器陣の存在のみならず、アメリカのバンドらしく全編を壮麗に彩る美しいボーカル・ハーモニーの存在と、プログレ・テイスト以上にポップな大衆性が重視された作風ゆえかな、と。(逆に本家YESファンやプログレ愛好家には物足りないか?) 特にOPナンバー“LADY OF THE LAKE”は、11分越えの大作曲ながらもどこか親しみ易い響きを湛えた、スペーシー且つドラマティックな曲展開が堪能できるバンドの代表曲の1つ。また、美しいアコギをフィーチュアしつつスリリングに展開していく“ELLIPTICAL SEASONS”、疾走感溢れる楽器陣のインタープレイが気持ち良い“FORCES”なんかも、このバンドが何者なのかを判り易く示してくれる逸品かと。 後の作品と比べると、70年代HR的なハードネスやダイナミズム(「若さの迸り」ともいう)も感じられ、漂って来る初々しい雰囲気が如何にもデビュー作らしくて好感が持てる1枚。
60年代末期、アメリカはイリノイ州シカゴにおいて誕生。 REO SPEEDWAGONのデビュー作で歌っていたテリー・ルトゥレル(Vo)が加わる等して陣容を整え、バンド名をPEGASUSからSTARCASTLEに改めると活動が一気に本格化。 ライブで腕を磨きつつ制作したデモテープに収められていた名曲“LADY OF THE LAKE”が評判となり、レコード契約を手に入れた彼らは'76年に1st『STARCASTLE』でデビュー。この時のラインナップはテリー以下、スティーヴ・ハグラー(G)、ハーブ・シルト(Key)、スティーヴ・タスラー(Ds)、ゲイリー・ストレイター(B)の5人で、この顔触れは2nd『FOUNTAINS OF LIGHT』(邦題『神秘の妖精』'77年)から3rd『CITADEL』(邦題『星の要塞』'77年)、そして最終作の4th『REAL TO REEL』('78年)に至るまで変わる事はなかった。 質の高い作品を作り続けたにも関わらず大きな成功とは縁のなかったバンドは'80年に一旦解散するが、その後も離散集合を繰り返し、'07年にはYESのリック・ウェイクマンらをゲストに迎えた5th『SONG FOR TIME』を発表している。
'01年にギリシャはアテネにおいて結成。 矢継ぎ早にに制作した2本のデモテープとEP『BLOODTHIRSTY HUMANITY』『ARMIES OF HELL』がヨーロッパ中のメタル雑誌で評判を呼び、これが切っ掛けとなってアメリカのOSM RECORDSとディールを締結。1stフル『ETERNAL DOMINATION』をもって'07年にアルバム・デビューを飾る。 オールドスクールなスラッシュ・メタル・サウンドが詰め込まれた作品自体のクオリティと精力的なライブ活動が実を結び、'09年にはオーストラリアで開催されたコンテスト「ROCK THE NATION AWARD 2009」にてSTEELWINGと共に優勝。 その後は、同年にNUCLEAR BLASTから2nd『SANCTIFY THE DARKNESS』、'10年にNOISE ART RECORDSから3rd『DEAD AGAIN』をリリースし、日本デビューも飾るなど順調に活動を継続。今年('12年)に入ると4枚目のスタジオ盤『BLOODBATH』をリリースしている。
嘗ての相棒マル・スプーナーは他界、オリジナル・メンバーのレス・ハントも既にバンドを去り、唯1人残されたデイヴ・ヒル(Vo)がDEMONの看板を背負って'89年に発表し、久々に国内盤リリースも実現した7thアルバム。 一時期はプログレ方面への思索を深め、別世界へと旅立ってしまった感もあったDEMONでしたが、その後は徐々に本分を取り戻し、本作では遂に多くのファンが「彼らのベスト作品と言えばコレ」とその名を挙げるレベルの傑作をモノにするに至った。 独特のノリの良さと、印象的なメロディを奏でるツイン・リードGを伴って疾走する楽曲が並ぶアルバム序盤は、往年のDEMONサウンドを更にヘヴィ・メタリックに仕上げたかのような感触ですが、4曲目以降は7分~11分台の長尺曲が連続する大作主義が打ち出されており、中でも、デイヴ・ヒルの新たな曲作りのパートナーでもあるKey奏者,スティーヴ・ワッツのセンス溢れる仕事っぷりがギラリと光る“REMEMBRANCE DAY”は、スコットランドの雄大な大地を想起させる哀感を帯びたメロディと、大英帝国の威厳に満ちた重厚且つドラマティックな曲調に男泣き必至の超名曲。良い具合に枯れたデイヴの親父声がまた、絶妙に曲の放つ哀愁を増幅してくれていますねぇ。 ベルリンの壁崩壊の喜びを高らかに歌い上げる“BLUE SKIES IN RED SQUARE”、ラストに鎮座まします11分越えのヘヴィ・バラード“TIME HAS COME”といった、見事な構築力を発揮して長尺をダレずに聴かせ切る大作曲の数々を聴くと、プログレ方面に傾倒していた時期(いわゆる迷走期)の作品群さえもきっちりと己の糧として消化していることが伺えます。
レコーディングの最中から既にバンドに対する情熱が感じられなかったというデイヴ・アリソン(G)が脱退。デビュー以来続いたオリジナル編成では最後のスタジオ作品となってしまった'88年発表の5thアルバム。 ANVIL史上、最もポップ方向に振れた内容だった前作『STRENGTH OF STEEL』(個人的には傑作だと思うんだけど・・・)の出来を省みて、一転、ヘヴィネスとアグレッション全開でレコーディングに挑んだという本作は、実際開巻早々から、メンバーが「パワー/スラッシュ・メタル版“666”」と語る名曲“BLOOD ON ICE”をもって強烈な先制パンチを浴びせかけてくる。 特に今回、主役級の存在感を発揮しているのがロブ・ライナー(Ds)その人で、硬質なサウンド・プロダクションの下、ありったけのオカズを詰め込んで荒れ狂う彼のドラミングは、前述の“BLOOD~”から、タイトル通りビシビシと銃弾を体に撃ち込まれているかのような感覚が味わえる“MACHINE GUN”、そして強面のへヴィ・チューン“FIRE IN THE NIGHT”に至るまで、全編に亘って冴えまくり轟きまくり。ロブの演奏を追っているだけで本作は楽しむ事が出来きますね。 反面、へヴィさに拘り過ぎるあまりメロディにフックが欠け、従来の彼らの持ち味だった「キャッチーさ」が発揮し切れていないという弱点も抱えているのですが・・・。 手持ちのANVILのカタログの中では印象の弱い1枚ではあるものの、例えばNASTY SAVAGEみたいなアメリカン・パワー/スラッシュ・メタルがイケル口の人なら問題なく楽しめる作品かな?と。
プロデューサーに、以降、数作に亘ってコンビを組む事となる売れっ子ロン・ネヴィソンを迎えてレコーディング、'82年に発表された3rdアルバム。 SHOOTING STARのカタログ中、最もハードな作風に仕上がっていた前作から一転、Keyサウンドを前面に打ち出して、プログレ色や南部的な泥臭いハードネスを払拭、代わりにポップな味わいが強調された本作は、例えばヴァイオリン大活躍のOPナンバー“ARE YOU READY”からさえもプログレ色や土の匂いが殆ど漂って来ないという徹底振りで、その洗練された作風はやはりロン・ネヴィソンの起用効果と言うべきか。 「ありがちなJOURNEYクローンになってしまった」「ロン・ネヴィソン許すまじ」と批判の声も少なからず上がった本作ですが、もともと彼らのメロウ・サイドに魅力を感じていた身としては、今回もまた良く出来たアルバムとして十分楽しませて貰った次第。 中でもしっとりとした哀メロに聴き惚れる“HEARTACHE”や、まるでNHKで放送されている海外ドラマの主題歌の如き爽やかさを誇る“WHERE YOU GONNA RUN”、アルバム収録曲の中では比較的ハードな仕上がりの“LET IT OUT”、分厚くスペーシーなKey主体で展開されるスケールの大きなバラード“WHOLE WORLD'S WATCHING”辺りは、メロディ愛好家ならグッとくること請け合いの名曲じゃないでしょうか。 尤も、これ!といった強力な決め手に欠くフラットな構成など、前2作と比較して弱さを感じる部分があるのも実際のところで、これはやはり本作がプログレ・ハード路線からAOR/産業ロック路線へと移行していく過渡期の産物であったからなのかな、と。