'93年に発表されるや「凄い新人バンドが現れた!」と輸入盤市場で話題となり、すぐさま国内盤のリリースも実現したデビュー作。 今では北欧メタル・マニアに留まらぬ幅広い層からの支持されるROYAL HUNTなれど、この頃のサウンドからは現在の彼ら程のスケール感やドラマ性は感じられず、スピーディな様式美HMナンバーにしろ、軽快に弾むシャッフル・チューンにしろ、ストレートに「北欧メタル」している印象の方が強い。スリリング且つ劇的なインスト・パートの充実度に比べ、ヘンリック・ブロックマンの生硬い歌声が弱く感じられる辺りも、いかにも北欧メタル的だ。 尤も、この朴訥としたVoが歌う寒々としたメロディはこれはこれで案外魅力的。また時にクラシカルに、時にシンフォニックに、冷やかな旋律を奏でて楽曲をドラマティックに彩るアンドレ・アンダーセンのKeyワークや荘厳さ漂う美しいコーラス等、後々までこのバンドの重要な個性となる要素も既に確認する事ができる。 中でも一押しは、GとKeyがバトルを繰り広げながら疾走する“HEART OF THE CITY”。この手の様式美HMナンバーは本作以降姿を消してしまう上、2コーラス目で一瞬閃くピアノ・サウンドが印象的でカッコイイったらないですよ。 ROYAL HUNTと言えばやはりD.C.クーパー加入以降のアルバムこそが必聴作でしょうが、衝撃度で言えば個人的にはこのデビュー作がやはり一番大きかった気がします。
本邦初登場作となった'82年リリースの2ndアルバム(邦題は『招かれざる客』)。 不気味なアートワークに仰々しい邦題、オカルト趣味を前面に打ち出した歌詞、それでいてダークさやオドロオドロしさは控えめに、ブリティッシュな哀愁を湛えて時にポップな表情さえ見せる楽曲の数々・・・と、デビュー作の作風を忠実に受け継いだHRサウンドは健在。 寧ろ、Keyをアクセントに用いて、よりキャッチーに、よりメロディアスに洗練された収録楽曲のクオリティには確かな向上の跡が見て取れ、中でもその筆頭に上げられるのがOPナンバー“DON'T BREAK THE CIRCLE”。和風メロディを取り入れた怪しげな序曲から繋がる劇的な曲展開、味のあるオヤジ声を駆使して憂いを帯びた歌メロをエネルギッシュに歌い上げるデイヴ・ヒルのVo、エモーショナルな泣きメロ携えて切り込んで来るツインG、そして思わず一緒に歌いたくなる強力なキャッチネスと、この名曲には初期DEMONの魅力の全てが詰め込まれていると言っても過言ではありません。 他にも、濃厚に咽び泣くバラードの名曲“HAVE WE BEEN HERE BEFORE?”もあったりして、個人的にはDEMONの代表作と言われるデビュー作より愛聴している1枚だったりします。
'81年発表の1stフル・アルバム。(邦題は『魔夜』) BLIND GUARDIANが“DON'T BRAKE THE CIRCLE”をカヴァーした事でこのバンドに興味を持ち、当時折り良くCD化された本作を購入したのですが、BGのカヴァーがバキバキにビルドアップされたスピード・メタル・バージョンであったこと、NWOBHMに属するバンドだし、この名前で、ホラー映画調のジャケット・アートワーク、そしてハッタリの効いた邦題の数々もあって、さぞかしオカルティックでオドロオドロしい(それこそKING DIAMONDみたいな)サウンドが聴けるものとワクワクしながら再生ボタンを押してみたら、始まったのはキャッチーで、時にポップとさえ表現出来そうな展開もみせるハードロック・・・。「期待してたのと違うじゃねぇか!」と勝手に憤慨し、長らく放置プレイの刑に処していたのですが、その後、改めて聴き直してみたら「あれ?これってこんなに良いアルバムだったの?」と目と耳から鱗がボロボロ落ちまくりましたよ。 確かに軽快なノリの楽曲が本編の大半を占めているものの、デイヴ・ヒル(Vo)の暑苦しいオヤジ声と、マル・スプーナー&レス・ハントのツインGコンビが泣きの入ったメロディを随所に差し込んで来るため、明るくハジけ切れない雰囲気が纏わり付く辺りはいかにもブリティッシュ。 特にA面サイドの楽曲の充実っぷりには目を瞠るものがあり、「RISE・・・RISE・・・」という不気味な呪文詠唱に導かれてスタートするアルバム表題曲“NIGHT OF THE DEMON”は、キャッチー且つ泣きを伴ったメロディとGプレイが強く印象に残る、DEMON屈指の名曲ですね。
HEAVENS GATEの日本での人気が頂点に達した瞬間の記録であると同時に、その凋落の始まりの証ともなってしまった、何とも皮肉なライブ・アルバム。 当サイトにおける獲得ポイント数の少なさからも察しが付く通り、バンドの経験不足をもろに露呈してしまった垢抜けないパフォーマンスに対し、手厳しい意見が続出した初来日公演の模様が克明に捉えられていることから余り評判の芳しくない本作ですが、どっこい個人的には「仰る通り。ご尤も」とそれらの意見に全面同意しつつも、どうしても嫌いになれず、今でも機会があれば聴き返している作品であります。 まず第一に楽曲が良い。“LIVIN' IN HYSTERIA”“GATE OF HEAVEN”“IN CONTROL”といった代表曲を筆頭に、ベスト盤状態で次々に繰り出される楽曲はいずれもジャーマン・メタル好きなら一聴の価値がある名曲ばかり。そして第二に挙げられるのがファンの熱烈な盛り上がりっぷりで、コーラス部分を客に任せきりにするシンガーのパフォーマンスには苛々させられるものの、一方でそれに見事な反応を返す観衆の一体感溢れる大合唱には「お見事!」と素直に賛辞を贈りたくなります。 例え残念なクオリティでも、こうしたバンドとファンの熱いエネルギーの交歓がしっかりとフィーチュアされているライブ・アルバムには点数が甘くなるというもの。「良い曲と熱心なファンを沢山抱えているバンドは強いなぁ」と思わせてくれる1枚ですよ。
ドラッグで身を持ち崩して過去の人になりつつあったグレン・ヒューズ、起死回生の一撃となった力作『FROM NOW ON・・・』リリースに伴う日本公演(前座はスウェーデンのFORTUNEでしたっけね)の模様を捉えたライブ・アルバム。 「THE VOICE OF ROCK」コールに導かれ、いきなりド級の名曲“BURN”によって幕が開き「掴みはOK!」となるショウは、当時の最新作『FROM~』からのナンバーを中心に据えつつ、DEEP PURPLE、TRAPEZE、HUGHES/THRALLの名曲も要所に配置される等、その豪勢なセットリストはまさしく「ヒストリー・オブ・グレン・ヒューズ」といった趣き。その上でクスリ断ちに成功し、心身ともに絶好調なグレンが熱の篭ったパフォーマンスを繰り広げてくれるのだから、これで盛り上がらない訳がない。 バックを固める北欧ミュージシャン勢も、テクニカル&ヘヴィ・メタリックな演奏で彼を的確にサポート。のみならず、彼の地独特の透明感をもってグレンの「黒っぽさ」や「ファンキーなノリ」を中和する役割も果たしており、特に、メロウな叙情HRナンバー“FROM NOW ON・・・”と、TRAPEZE時代の名バラード“COAST TO COAST”におけるパフォーマンスは、両者の持ち味の最良の部分が見事に引き出されていて圧巻の一言。ソウルフルに炸裂するグレンのハイトーン・シャウトには魂が震えるってもんですよ。 それまで知識としてしか知らなかったグレン・ヒューズというシンガーの凄味を、実感を伴って理解させてくれる1枚。ゼロ・コーポレーションが残した数々の遺産の中でも一際眩い輝きを放つ「LIVE IN JAPAN」物の傑作だと思います。(あからさまに手が加えられている歓声の処理は評価が割れるところかもしれませんが、個人的にはこれは「有り」)
JUDAS PRIESTが憑依したかの如き、LAのバンドらしからぬ劇的なブリティッシュHMサウンドを詰め込んだ1st『IN THE BEGINING』でデビューを飾ったMALICEなれど、プロデューサーをマイケル・ワグナーからマックス・ノーマンに代えた本2ndアルバムにおいては、逞しさを増し「ロブ・ハルフォードのそっくりさん」から「ロブ・ハルフォード型ハイトーン・シンガー」へとクラス・チェンジを果たしたジェイムズ・ニールの歌唱、ミッドテンポのヘヴィ・チューンが中核を成す本編の構成等、全体的にソリッドなアメリカンHM(LAメタル)テイストが強化されている印象を受ける。 このJUDAS PREIST成分の減量をプラス/マイナスどちらに評価するかは人それぞれだが、個人的には、身も心もJUDAS PRIESTになりきった“HELLRIDER”や“GODS OF THUNDER”のような強力なキメ曲が見当たらなくなってしまった点は明らかに減点要素。 それでも、挑みかかるようなOPナンバー“SINISTER DOUBLE”を手始めに本作で聴くことが出来るのは紛れもない正統派HMサウンドであり、光沢を帯びた音色で構築美を備えたメロディを奏でるツインGも相変わらずの存在感を発揮。ダークで重厚な“VIGILANTE”、MEGADETHのWデイヴがゲスト参加しているアグレッシブな“CHAIN GANG WOMEN”(ギタリストのジェイ・レイノルズは一時MEGADETH入りが取り沙汰されたりしてましたね)、そして本編中最も濃厚なJP風味を発散する“MURDER”といった、前作を気に入った人を失望させることのない楽曲の数々を収録したアルバムのクオリティは実に堂の入ったもの。 近年、再結成を果たして活動中とも聞くが、だったら新作を作って欲しいなぁ。
「2枚組&ベスト選曲で贈るPRAYING MANTIS初のライブ・アルバム!」と聞いて「おおっ」と身を乗り出した人達が、「但しシンガーはゲイリー・バーデン」と付け加えられた途端、ざざーっと引き潮の如く醒めていく様が目に浮かぶような実況録音盤。 そのゲイリーは本作に於いても、OPナンバーの時点で早くも歌声がヨレヨレというミラクルなパフォーマンスを披露。にも拘らず、不思議と腹立ちよりも「流石ゲイリー」「それでこそゲイリー」的な安心感や微笑ましさが先立ってしまうという、愛すべきキャラクター性をアピールしており、ある意味、何者にも変え難い人材ですよ、この人は。 幕開けから既にアップアップの様相を呈している彼の歌唱ですが、その後は大崩れすることなく持ち堪えますし(=ずっとヨレヨレ)、またそのガラッパチなオヤジ声が、ライブでも霞む事のない美しさを誇るPRAYING MANTIS必殺の三声ボーカル・ハーモニーの華麗さを際立ててくれてもいます。え?美醜の対比?いやいやいや・・・。 そして何よりこのライブ盤を語る上で外せないのが、観客の盛り上がりっぷり。天下のRAINBOW公演を蹴ってまで駆けつけた熱心なファンが揃っているだけに、例えば“RISE UP AGAIN”のサビメロ部分なんて「そんな長いパートを客に歌わせるなんざ無茶だよ、ゲイリー!」とのこちらの不安を観客が一蹴し、息の合った見事な合唱を澱みなく展開してくれる場面は、本編のハイライトと言っても過言ではないカッコ良さ。そりゃメンバーだって「君ら、バンドに入ってよ!」と感動を露わにしますよって。 一方でメンバーの演奏は終始緩いし危なっかしく、とても「傑作」と絶賛できる内容ではないのですが、個人的には聴く度にほっこりした気持ちになれる味わい深い逸品として、90年代に連発された「LIVE IN JAPAN」物の中では、BLIND GUARDIANの『TOKYO TALES』、グレン・ヒューズの『BURNIG JAPAN LIVE』と並んで愛聴しているライブ盤です。ビデオ版もお薦め。
デビュー作『TIME TELLS NO LIES』リリース後、荒波に浮かんだ木の葉の如くマネージメントとレコード会社に翻弄され続けていた時期にレコーディングが行われ、発表する機会のないまま長らく埋もれてしまっていた未発表曲の数々を取りまとめた発掘音源集。ちなみにタイトルは「DEMO」と「MEMORABILIA(記録)」を組み合わせた造語なのだとか。 目玉となるのは、現URIAH HEEPのバーニー・ショウ(Vo)を迎えたラインナップでレコーディングされた幻の2ndアルバム(一部被っている楽曲もあるけど基本的には『PREDATOR IN DISGUISE』とは別物)用楽曲群と、PRAYING MANTISとしての活動が行き詰まった後、元IRON MAIDENのクライヴ・バー(Ds)らと結成したESCAPE時代に制作されたデモテープに収められていた楽曲の数々。 特に後者は、日本のレコード会社と契約を結ぶ決め手となったクオリティを有しながら、全く異なるバンド名(STRATUS)と異なる楽曲を用いたアルバムでデビューを飾った後は行方不明になっていたという、PRAYING MANTIS史上屈指のレア音源として度々取り沙汰されていただけに今回のリリースはまさしく快挙。しかもこれが、PVも作られた“TOP OF THE WORLD”を筆頭に、キャッチネス/ハードネスのバランスも良好な叙情HRの名曲揃いときたもんだ。(PRAYING MANTISと同一路線を期待すると少々ポップ過ぎるかもしれませんが) 元がデモテープゆえ音質の悪さは相当なものですが、評価は当然「素晴らしい!!」。PRAYING MANTISファンなら一度はチェックしておいて損のない作品だと思いますよ。
'10年秋に行われたURIAH HEEPの来日公演は、個人的にその年のベスト・ライブに推したくなるほどの素晴しさでしたが、あの時の感動を鮮烈に蘇らせてくれるのが、10月24日(日)に川崎クラブチッタで繰り広げられたコンサートの模様をほぼフルセットで収録している、この2枚組実況録音盤。 タイトルこそ「BOOTLEG」となっているものの、クリアな音質は正規のライブ・アルバムと比較しても何ら遜色のないクオリティ(流石「公式」)で、顔の前で手をヒラヒラさせるあの奇妙なアクションが思い出されるミック・ボックスの楽しげなGプレイを筆頭に、メンバー(&ステージに出たり入ったり忙しかったミッキー“戦場カメラマン”ムーディ)の熱気溢れるパフォーマンスと、華麗なるボーカル・ハーモニーまでしっかりと再現された名曲の数々が余すところなく収められた本編を聴くと、気分はもうすっかりあの夜にタイム・スリップ。生で見た際は“CIRCLE OF HANDS”に甚く感動した覚えがありますが、こうして改まってCDで聴くと“LOVE IN SILENCE”のドラマティックな盛り上がりっぷりにも心打たれるものがありますね。 観客の歓声があまりフィーチュアされていない点には物足りなさを覚えますし、何より「なぜ(俺が行った)23日を音源化してくれなかったんだ!」と地団駄を踏みたくもなりますが、ともあれ現在のURAIH HEEPがライブ・アクトとして高い実力を誇っている事が良く分かる作品である事は間違いなし。「買い」の1枚ですよ。
選曲が初期作に偏っているので、入門者向けベスト盤としての機能を果たすかどうかは微妙な線ですが、繊細な泣きと叙情メロディを満載にしたツインG&ボーカル・ハーモニーが伸びやかに駆け抜けていく楽曲の数々を聴いていると、つくづく「名曲を山ほど抱えたバンドだなぁ」と実感させてくれる1枚であることは確か。 特に、普段は“CHILDREN OF THE EARTH”と“LOVER TO THE GRAVE”という2大名曲の陰に隠れがちなデビュー作収録楽曲が意外なほど魅力的に蘇っており、「ああ、そういえばこの曲ってこんなにカッコ良かったんだ」と再認識させられましたね。 近年のライブに倣ったのか、テンポを落とし気味に楽曲が再構築されているため、何やらマッタリとした空気にアルバム全体が包み込まれてしまっている点は頂けませんが、逆に“LOVER~”のようにテンポが落とされたことでメロディの魅力が際立った楽曲もあるにはありますよ!と、一応はファンとして擁護しておきたい。 何より、個人的に一度聴いてみたいと願っていた幻のバンドのテーマ曲(?)“PLAYING MANTIS”が遂に聴けた事が嬉しいったら。解説等でその存在は知っていても、長らく公式音源は耳にした事がなかっただけに喜びも一入ですよ。(例えその結果、大した曲でなかった事が判明したとしても・・・/苦笑)
アメリカはニューヨークにおいて、アンソニー(B)とカルロ(G)のフラグニート兄弟によって結成され、女性Voのマリアンを迎えて制作したデモテープ『ON THE ATTACK』を切っ掛けにMAUSOLEUM RECORDSとディールを結んだ4人組が、MANOWARのロス・ザ・ボスの手を借りてレコーディング作業を行い'84年に発表した1stアルバム。 イギリスが主戦場だったバンドだけに、テクニカルに弾きまくるGと、「日本の浜田麻里も凄いけど、アメリカのマリちゃんも負けてないなぁ」と思わされるマリアン嬢のタフなVoとが主役を張った攻撃的なサウンドからは、勇壮にしてメロディアスな名曲“RUNNER IN THE NIGHT”を筆頭にヨーロピアン・メタル勢&NWOBHMからの影響が色濃く滲む。(続く“DEVIL IN DISGUISE”はなぜかジャパメタ風に聴こえる?) さりとて叙情性や湿気っぽさは然程でもなく、それよりも寧ろ強く感じられるのは、NY出身バンドならではの硬質なストリート感覚で、特に、インスト序曲“MARCH OF THE BLACK WITCH”を切り裂いてスタートするOPナンバー“CALL OF THE WILD”は、THE RODS辺りに通じる爆発的な疾走感と、IRON MAIDENばりのドラマティックな曲展開とが組み合わされた、NY出身メタル・バンドの面目躍如!といった趣きの名曲。
KEN HENSLEY & LIVE FIRE名義で'11年に発表された最新ソロ・アルバム。 ARTCHのフロントマンとして知られ、世のマニア諸氏からは「北欧のブルース・ディッキンソン」との異名を取ったエリック・ホークが、シンガーとして参加している点に興味をそそられて購入した作品でしたが、ここでケン・ヘンズレーが披露しているのは70年代HR・・・というよりもURIAH HEEPのエレメントがあちこちに散りばめられた、僅かに触れただけで英国風味が鼻腔一杯に広がるかのようなヴィンテージ・ワインばりのコクと深み、そして格調の高さを湛えたブリティッシュ・ロック・サウンド。 エリックもそれに併せてリラックスした歌唱スタイルに終始しており、ARTCH時代を思い起こさせる雄々しい歌い上げは残念ながら封印されているのだが、その歌唱力は相変わらずスペシャル。 重厚にしてマジカルな①や、ヒネリの効いたシャッフル・チューン②という、いやが上にもURIAH HEEPを思い起こさせるケン・ヘンズレーの真骨頂と言うべき名曲2連発も難なくこなして一気にリスナーを作品世界に引き込んで以降は、泣きのGが心地良いバラード③、スケール感と包容力を併せ持った⑧、ハード・ロッキンな曲調に哀愁を帯びたメロディとドラマティックな曲展開が絡む⑪、そして生オケを加えてより優雅に蘇ったURIAH HEEPの“CIRCLE OF HANDS”のカヴァー⑫にて幕が降りるエンディングまで、あれよあれよの60分。 繰り返しの傾聴に耐え得る味わい深い魅力に、どっぷりと浸り切ることが出来る1枚です。
HR/HM時代の区切りとなった'86年発表の6thアルバム。これ以降はレコーディング拠点を海外へと移し、脱HR/HMに拍車が掛かっていくので、個人的には(楽曲単位ではなく)アルバム単位で楽しめる浜田麻里作品はここら辺までかなぁ、と。 ギンギンのHRナンバー“COME AND GO”から壮大なバラード“PROMISE IN THE HYSTORY”まで、バラエティ豊かな楽曲が取り揃えられた本編は、前作においてハイレベルな領域にまで高められた「哀愁に満ちた歌モノHR路線」を継承しつつも、リバープが深めに掛けられた音作りやファッショナブルなKey等、サウンド全体は益々モダンにソフティケイト。 過密なレコーディング・スケジュールが祟って弾不足に陥っていたのか、ボリュームは30分台とコンパクトなのにカヴァー曲が多数収録されていたここ数作に対し、今回は全編がオリジナル曲で固められており、特にBLAZEの増田隆宣(Key)が作曲を手掛けているシャープな疾走ナンバー“TIME AGAIN”と、プログレ・ハード風味も感じられるドラマティックな“EARTH-BORN”というアルバム終盤の2連発は強力な存在感を放っています。
ジャケットを飾る生瀬範義画伯の手による浜田麻里嬢のイラストが妙に怖い、'85年発表の4thアルバム。 ゲイリー・ムーアの“LOVE CAN MAKE A FOOL OF YOU”のリメイク曲“LOVE,LOVE,LOVE”と、SURVIVORの“MOMENT OF THE TRUTH”のカヴァーが収録されているので、舶来志向のHR/HMファン的にも取っ掛かり易い(?)本作。前者でゲイリーを彷彿とさせる濃厚な泣きのGを炸裂させリスナーから涙を搾り取るのは現B'zの松本孝弘で、彼氏はこの曲のみならず本編に全面参加し若さ溢れるGプレイを披露。また映画『ベストキッド』の主題歌としても知られる後者に関しては、恐らく日本でも大ヒットした同作の知名度を当て込んでの選曲なんでしょうね。個人的には好きな曲なので楽しませて頂きましたが。 オリジナル曲に関して言えばHM色は徐々に薄れ始めており、前作に比べると若干小粒な印象も否めないものの、浜田麻里嬢の曲作りの手腕は益々洗練されて来ているし、何より稀代のメロディ・メイカー、MAKE UPの松澤浩明が彼女と共に大半の楽曲を手掛けているのだから、低クオリティの作品が出来上がるわけがありません。特に、松本のGと河野陽吾のKeyが火花を散らすスリリングな疾走ナンバー“LOVE MAGIC”や、ローからハイへと一気に駆け上げる歌声が気持ちいい“FREE WAY"は名曲。 『MISTY LADY』と『BLUE REVOLUSION』という名盤2枚の間に挟まれてイマイチ影の薄い作品ですが、この質の高さは流石です。