アメリカはニューヨークにおいて、アンソニー(B)とカルロ(G)のフラグニート兄弟によって結成され、女性Voのマリアンを迎えて制作したデモテープ『ON THE ATTACK』を切っ掛けにMAUSOLEUM RECORDSとディールを結んだ4人組が、MANOWARのロス・ザ・ボスの手を借りてレコーディング作業を行い'84年に発表した1stアルバム。 イギリスが主戦場だったバンドだけに、テクニカルに弾きまくるGと、「日本の浜田麻里も凄いけど、アメリカのマリちゃんも負けてないなぁ」と思わされるマリアン嬢のタフなVoとが主役を張った攻撃的なサウンドからは、勇壮にしてメロディアスな名曲“RUNNER IN THE NIGHT”を筆頭にヨーロピアン・メタル勢&NWOBHMからの影響が色濃く滲む。(続く“DEVIL IN DISGUISE”はなぜかジャパメタ風に聴こえる?) さりとて叙情性や湿気っぽさは然程でもなく、それよりも寧ろ強く感じられるのは、NY出身バンドならではの硬質なストリート感覚で、特に、インスト序曲“MARCH OF THE BLACK WITCH”を切り裂いてスタートするOPナンバー“CALL OF THE WILD”は、THE RODS辺りに通じる爆発的な疾走感と、IRON MAIDENばりのドラマティックな曲展開とが組み合わされた、NY出身メタル・バンドの面目躍如!といった趣きの名曲。
KEN HENSLEY & LIVE FIRE名義で'11年に発表された最新ソロ・アルバム。 ARTCHのフロントマンとして知られ、世のマニア諸氏からは「北欧のブルース・ディッキンソン」との異名を取ったエリック・ホークが、シンガーとして参加している点に興味をそそられて購入した作品でしたが、ここでケン・ヘンズレーが披露しているのは70年代HR・・・というよりもURIAH HEEPのエレメントがあちこちに散りばめられた、僅かに触れただけで英国風味が鼻腔一杯に広がるかのようなヴィンテージ・ワインばりのコクと深み、そして格調の高さを湛えたブリティッシュ・ロック・サウンド。 エリックもそれに併せてリラックスした歌唱スタイルに終始しており、ARTCH時代を思い起こさせる雄々しい歌い上げは残念ながら封印されているのだが、その歌唱力は相変わらずスペシャル。 重厚にしてマジカルな①や、ヒネリの効いたシャッフル・チューン②という、いやが上にもURIAH HEEPを思い起こさせるケン・ヘンズレーの真骨頂と言うべき名曲2連発も難なくこなして一気にリスナーを作品世界に引き込んで以降は、泣きのGが心地良いバラード③、スケール感と包容力を併せ持った⑧、ハード・ロッキンな曲調に哀愁を帯びたメロディとドラマティックな曲展開が絡む⑪、そして生オケを加えてより優雅に蘇ったURIAH HEEPの“CIRCLE OF HANDS”のカヴァー⑫にて幕が降りるエンディングまで、あれよあれよの60分。 繰り返しの傾聴に耐え得る味わい深い魅力に、どっぷりと浸り切ることが出来る1枚です。
HR/HM時代の区切りとなった'86年発表の6thアルバム。これ以降はレコーディング拠点を海外へと移し、脱HR/HMに拍車が掛かっていくので、個人的には(楽曲単位ではなく)アルバム単位で楽しめる浜田麻里作品はここら辺までかなぁ、と。 ギンギンのHRナンバー“COME AND GO”から壮大なバラード“PROMISE IN THE HYSTORY”まで、バラエティ豊かな楽曲が取り揃えられた本編は、前作においてハイレベルな領域にまで高められた「哀愁に満ちた歌モノHR路線」を継承しつつも、リバープが深めに掛けられた音作りやファッショナブルなKey等、サウンド全体は益々モダンにソフティケイト。 過密なレコーディング・スケジュールが祟って弾不足に陥っていたのか、ボリュームは30分台とコンパクトなのにカヴァー曲が多数収録されていたここ数作に対し、今回は全編がオリジナル曲で固められており、特にBLAZEの増田隆宣(Key)が作曲を手掛けているシャープな疾走ナンバー“TIME AGAIN”と、プログレ・ハード風味も感じられるドラマティックな“EARTH-BORN”というアルバム終盤の2連発は強力な存在感を放っています。
ジャケットを飾る生瀬範義画伯の手による浜田麻里嬢のイラストが妙に怖い、'85年発表の4thアルバム。 ゲイリー・ムーアの“LOVE CAN MAKE A FOOL OF YOU”のリメイク曲“LOVE,LOVE,LOVE”と、SURVIVORの“MOMENT OF THE TRUTH”のカヴァーが収録されているので、舶来志向のHR/HMファン的にも取っ掛かり易い(?)本作。前者でゲイリーを彷彿とさせる濃厚な泣きのGを炸裂させリスナーから涙を搾り取るのは現B'zの松本孝弘で、彼氏はこの曲のみならず本編に全面参加し若さ溢れるGプレイを披露。また映画『ベストキッド』の主題歌としても知られる後者に関しては、恐らく日本でも大ヒットした同作の知名度を当て込んでの選曲なんでしょうね。個人的には好きな曲なので楽しませて頂きましたが。 オリジナル曲に関して言えばHM色は徐々に薄れ始めており、前作に比べると若干小粒な印象も否めないものの、浜田麻里嬢の曲作りの手腕は益々洗練されて来ているし、何より稀代のメロディ・メイカー、MAKE UPの松澤浩明が彼女と共に大半の楽曲を手掛けているのだから、低クオリティの作品が出来上がるわけがありません。特に、松本のGと河野陽吾のKeyが火花を散らすスリリングな疾走ナンバー“LOVE MAGIC”や、ローからハイへと一気に駆け上げる歌声が気持ちいい“FREE WAY"は名曲。 『MISTY LADY』と『BLUE REVOLUSION』という名盤2枚の間に挟まれてイマイチ影の薄い作品ですが、この質の高さは流石です。
FORTUNEやJACKAL、MASQUERADE、TAROTらと共に第2次北欧メタル・ブームの中核を成した、ツインGとKey奏者を擁するスウェーデン出身の6人組HRバンドが'93年にリリースした1stアルバム。 本編開巻を宣言するOPナンバー“HOLD ON THE NIGHT”が、「優美で繊細な北欧神話を華麗に伝承する北欧メタルの魅力の全てが凝縮された名曲」(日本盤帯より)と高く評価された本作だが、全曲がその路線かと言えばさに非ず。アメリカンなノリが打ち出されたグルーヴィなHRナンバーもちらほら見受けられ、また全14曲も収録されているせいで中弛みを感じる場面もあったりと、ドラマティックで叙情美に満ちた北欧メタル然とした作風を期待すると間違いなく肩透かしを食うことになるので要注意。 それでも、メンバー全員がバックVoを担当することによって作り出されるボーカル・ハーモニーの鮮やかさや、メロディアスに絡み合う2本のGとKeyが演出する透明感は北欧のバンドならではの味だし、本編終盤には優れた楽曲が並んでいるので聴後感はなかなかに快調。そして、やはり何と言っても本作は前述の“HOLD~”の存在がトドメを刺します。 流行に色目を使った次作以降、アイデンティティーを見失い自滅してしまったバンドだが、メロディ愛好家を自認する方なら、上記の名曲を聴くためだけにでも是非ご購入ください。(今なら中古盤も安いですよ)