限りなく木下昭仁(G)のソロ作に近い、SABER TIGER、4枚目のフル・アルバム。 元KEELのロン・キールがフロントマンとして迎えられた事でも話題となった本作だが、これまで久保田陽子の艶とパワーを併せ持った歌声に慣れ親しんでいた身にしてみりゃ、その後任Voがワイルドで野太いロン・キールってのはギャップがデカ過ぎた。 実際、テクニックより勢いと個性勝負!な彼氏の歌声と、綿密に構築されたSABER TIGERサウンドの相性はあまり良好とは言えず、無理めな高音域を苦しげに歌っているのを耳にすると、そもそも木下御大はもっと広いレンジを備えたシンガーを想定して曲作りを進めていたんじゃねぇかなぁ?と思ったりも。 それでもそこはベテラン、合わないなりに起伏の激しいメロディを何とか歌いこなしているし、他方、余裕綽々でボトムを支える柴田直人&本間大嗣のヘヴィで躍動感溢れる演奏もアルバムの質向上に大きく貢献。 そして何より本作は楽曲が素晴しい。ここに収められたマテリアルを聴く限り、交通事故に端を発するSABER TIGER活動休止騒動が、木下の創作意欲にも、Gプレイの冴えにも何ら影を落していない事がハッキリと分かる。特に“RECKLESS AND YOUNG”と“GIVE ME ALL YOUR LOVE TONIGHT”は本作を代表する名曲!それと“HARD WIRE”も、後の下山が歌い直した『狂獣伝説』よりこっちの軽快なバージョンの方が好きだな。
このバンド名に、サムライが描かれたジャケット、それに“HEART OF TOKYO”なる楽曲を収録する等、日本のHR/HMファンとして無条件に応援せずにはいられない、スウェーデン出身の5人組正統派HMバンドのデビュー作。(プロデュースはアンディ・ラ・ロックが手掛けている) IRON MAIDENからの多大なる影響をベースに組み立てられ、そこに独産メロパワ・メタルのエッセンスと、新人らしい溌剌としたノリの良さを加えて仕上げられたサウンドは「まさにNWOTHM」といった感じだが、↑上の方も仰られている通り、彼らの場合はVoが歌うキャッチーなメロディが前面に押し出されているのが大きな特徴で、このシンガー、ポップ風味も取り込んだ躍動感溢れる歌メロの構築センスが抜群に冴えており、IRON MAIDENを思わす2本のGが威勢良く駆け回るOPナンバー①に始まり、日本愛を湛えて(?)小気味良く疾走する⑤へと至る本編前半の充実っぷり、そして山あり谷ありの曲展開とエキゾチックなメロディをもって本編をドラマティックに締め括る大作曲⑨の素晴しさは、彼氏が歌う魅力的な歌メロがあったればこそ。 バンド名や曲名に失笑を漏らす真面目なHR/HMファンもいるかもしれないが、侮れない実力を有する新人バンドであることは確か。ライブが見てみたいな。
初の女性Vo、久保田陽子(FASTDRAW~PROVIDENCE)の加入のみならず、コンポーザーとしての才も発揮するサイドGの田中康治を迎え、SABER TIGER史上初めてとなるツインG編成への移行。更には十数年の活動歴において初のフル・アルバムのレコーディング・・・と、初物尽くしで'92年に発表された1stフル・アルバム。 赤尾和重の系譜に連なる、男性シンガー顔負けの力強さでメタル魂を鼓舞してくれる久保田のハスキー・ボイス、劇的な構築美を湛えてスリリングに絡み合うツインG、それにリフ/リズム・チェンジや変拍子の多用、ドラマティックな曲展開といったプログレ・メタル的要素がふんだんにフィーチュアされた楽曲の数々は、80年代のストレートなジャパニーズHM路線とは大きく異なり、また一方で、次作以降に確立されるSABER TIGER流HMサウンドともやや味わいを異する、本作でしか聴くことの出来ない過渡期的なユニークさを秘めており、特にOPナンバー“STORM IN THE SAND”は久保田時代を代表する名曲の一つじゃないかと。 その“STORM~”と、ラストに置かれたツインGによるドラマティックなイントロの時点でガッシと掴まれてしまう逸品“MISERY”のインパクトがデカ過ぎるせいで、中盤の楽曲の存在が完全に霞んでしまっているきらいはあるものの、じっくり聴いてみれば個々の楽曲の完成度も決して低くはない(特に本編前半)。満を持して作り上げられただけの事はあるデビュー作だ
'87年に結成された北海道は札幌出身の古豪HMバンド。 '92年制作の8曲入り(アルバム・レベルのボリュームですよね)デモ『DIVINE CAPRICE』を筆頭に、数本のデモテープを発表して活動を軌道に乗せると、'94年に1stアルバム『UNCULTIVATED LAND』を自主制作。 '96年にはSABER TIGERの木下昭仁(G)をプロデューサーの座に迎えてレコーディングされた2nd『NATIVE』をリリース。(こっちも自主制作だったかな) RDX等へのゲスト参加で知られる伊熊誠(Vo)の脱退という事件が勃発するも、バンドは後任メンバーを入れることなくトリオ編成で活動を継続。 '04年には8年振りとなる新作アルバム『A THOUGHT ON LIFE DURATION OF SPECIES AND HUMAN BEHAVIORS』を発表している。
スウェーデンにも同名のバンドがいたような気がするが、こちらは日本の三重県四日市市出身。 前身バンドのLSD時代はどうやらOUTRAGE風のスラッシュ・メタルを演っていたらしいが、改名に伴い、スラッシュ色を残しつつも、ACCEPTやTANKといったバンドを彷彿とさせる男気溢れるパワー・メタル・バンドへと劇的ビフォーアフター。'92年にWASTED RECORDS(№001という品番から察するに多分自主レーベル?)から4曲入りEP『ESCAPE』をリリースしてレコード・デビューを飾る。 優れた内容にも関わらず高評価を得る事は叶わず、バンドは本作のみを残して解散。(ちなみにBURRN!!誌のレビューは69点。Voが弱いとダメ出しをされていたが、この時期のジャパメタ・バンドは総じて同様の批判をされていたような印象がある) Gの萩智洋は後に同郷のメタル・バンドMANUPILATED SLAVESに4代目Gとして加入。4th『OATH IN BLACK TEARS』では本作からタイトル・トラックをカヴァーしていた。