赤尾和重、アン・ボレイン、レザー・レオーネらと共に80年代のHR/HMシーンを彩った、「女ロ二ー四天王」ことドロ・ペッシュ(Vo)を擁するWARLOCKが'87年に発表し、彼らの最終作ともなった4thアルバム。 GとBをU.D.O.に引き抜かれたりと、櫛の歯が抜けるようにメンバー・チェンジが相次ぎ、ドラマー不在の穴を埋めるべく御大コージー・パウエルがノー・クレジットでタイコ叩いてる事でも知られる本作は、ドロ単独のイラストや写真があしらわれたジャケット/ブックレットから「ドロ・ペッシュとそのバックバンド」的な構図が透けて見える通り、後のソロ活動へのターニング・ポイントともなった作品で、現在も彼女のライブでは欠かす事の出来ないアンセム“ALL WE ARE”を収録。 この名曲が示すように、重厚なミドル・テンポの楽曲を中心に固められた本編は、ドメスティックな色合いやマイナー臭が一掃され、アメリカ出身の正統派HMバンドと言っても通用しそうな洗練された薫りが匂い立つが(レコーディング自体、ドロが渡米してNYにて行われている)、どっこい、メロディが能天気になってしまったなんてことはなく、ドラマティックな構築美が光る③、物悲しげなピアノの旋律をフィーチュアした⑤、“METAL TANGO”というタイトルからして最高な⑧、そしてドロ・ペッシュ嬢を語る上で避けて通れない名バラード⑩といった楽曲は、“ALL WE ARE”等の代表曲にも引けを取らないクオリティを備えているんじゃないかと。 元マネージャーとのトラブルが原因で結果的にこれがラスト作とはなったものの、有終の美を飾るに相応しい完成度の高さを誇る1枚。
90年代のイングヴェイの最高傑作と言えば、ジャケットで欧陽菲菲みたいな彼が睨みを利かせるこの9thアルバムで決まり。 理由は勿論、敬愛して止まないコージー・パウエルの遺作だから・・・というのも勿論大きいが、それと同等に収録楽曲の飛び抜けたクオリティの高さ。分けても(別に嫌いではないが無くとも全然構わなかった)ブルーズ系の楽曲が姿を消し、ダークで緊迫感を伴ったHMナンバーで本編の統一が図られている点が評価ポイント。判り易いスピード・ナンバーが見当たらない代わりに、適度な歪みと熱さを備えたマッツ・レヴィンの歌声と、一撃一撃に魂の篭ったコージーのパワフルなドラミングが映える楽曲がズラリ揃えられています。唯我独尊っぷりを色々揶揄される機会の多いイングヴェイなれど、この辺の「参加メンバーの長所を活かす曲作りの上手さ/器用さ」は他の追随を許さないレベル。流石マエストロ。また、今回は彼自身のGプレイが冴えまくっているのも特筆すべきセールス・ポイントですかね。 力強くドラマティックなOPナンバー“BRAVEHEART”、『ODYSSEY』の頃を思い起こさせる“FACING THE ANIMAL”、重厚且つ緊迫感に満ちた“ENEMY”・・・といった具合に、語ろうと思えば頭から順に全曲について語れてしまうぐらい逸曲揃いの本作ですが、取り分け、エモーショナルなGソロにキュンキュン来るバラード“LIKE AN ANGEL”、コージーの重たいドラミングが映える“MY RESURRECTION”、巧みにまぶされたポップ・センスに唸る“ANOTHER TIME”といった、劇的極まりないメロディ展開に耳奪われる名曲が連続する本編中盤の盛り上がりっぷりは圧巻。 聴き終える度に、大いなる満足感と共に一抹の寂寥感を覚えずにはいられない1枚です。合掌。
3代目Key奏者としてジム・ギルモアが加入。これにてマイケル・サドラー(Vo)、ジム(B)とイアン(G)のクリットン兄弟にスティーヴ・二ーガス(Ds)という、いわゆる黄金期のメンバーが揃ったSAGAが'80年に発表した3rdアルバム。 場面によってトリプル・キーボード編成にまで変化する、このバンド独自のスタイルを更に発展させ、時に華やかに、時にドラマティックに楽曲を彩る分厚いKeyサウンドの存在が益々強調された本作は、例えば“MOUSE IN THE MAZE”のようなハードな名曲こそ見当たらないものの、まろやかな味わいを増し、丹念なアレンジを施された収録楽曲はいずれもキャッチーなメロディ、ポップなノリの良さ、そしてドラマティックな曲展開とが無理なく同居。SAGAならではのプログレ・ハード・サウンドは、本作において遂に完成の域へと至ったように思う。 アメリカ・デビュー作ともなった次作『WORLD APART』以降は、ニューウェーブ風味やAOR/産業ロック色が増量され一気にサウンドが垢抜けて行くが、本作辺りまではメロディにヨーロッパ的な暗さや湿り気が横溢。取り分け、勇ましく本編の幕開けを飾る躍動感に満ちた①、優雅な曲調に思わずステップを踏みたくなる③、宇宙的で壮大なイントロがたまらなくドラマティックな⑤、よく歌いよく泣くGに胸を締め付けられる⑧といった名曲の素晴しさは、アメリカとヨーロッパの文化が入り混じるカナダ出身のSAGAというバンドならでは。 前作『IMAGES AT TWILIGHT』と並んで、個人的にはSAGA入門編としてお薦めしたい捨て曲なしの名作。
新世代スラッシャーの有望株として高い評価を受け、音楽雑誌にレビューやインタビューまで載ったのに、直前になって1st『FEED THE BEAST』の国内盤リリースがお流れとなってしまったBONDED BY BLOODが、2ndアルバムにて遅まきながら日本デビューを飾った。 EXODUSを筆頭に、DEATH ANGEL、VIOLENCEといった80年代のベイエリア・スラッシュ、並びに一頃のSLAYER、OVERKILL辺りに通じるオールドスクールなスラッシュ・メタルを、切れ味と柔軟性を併せ持った、達者な演奏に乗せて聴かせてくれる作風に大きな変化はないが、今回はコンセプト・アルバムということもありシリアス度が上昇。(尤も「エイリアンに侵略された600年後の地球を描く」という漫画チックなコンセプトがシリアスかどうかは意見が分かれるところかもしれないが/笑) デビュー作に顕著だった、EXODUSばりのファニーなロケンロール感覚は薄れてしまったものの、その分、テクニカルなツインGの存在が益々クローズアップ。リフ/リード・プレイは元より、前作では派手に弾きまくってた割に引っ掛かりの少なかったソロ・パートにおいても、本作ではかなり練り込みの跡の伺える劇的なメロディを随所で炸裂させてくれており、日本盤ボーナス・トラックの⑪なんて、SHRAPNEL系ギタリストのソロ作に収録されてそうなテクニカルでファストなインスト・ナンバーだし、何より、押さえ気味に始まり、SLAYER風の禍々しい爆走パートを経て、ドラマティックなGソロ・パートへと雪崩れ込む名曲⑨は、現時点でこのバンドに望み得る最高峰の楽曲と言って良いような?(フェードアウトで終わっちゃう詰めの甘さが惜しまれます) 強靭さとドラマ性の底上げが図られた、デビュー作に勝るとも劣らぬ1枚。力作ですよ。
個人的に、BOSTONの全楽曲の中で最も愛して止まない名バラード“A MAN I'LL NEVER BE”を収録している、'78年発表の2ndアルバム。(邦題は『新惑星着陸』) 乾いた哀愁に軽快なノリの良さ、スペーシーな透明感と雄大なスケール感を兼ね備えたメロディアス・ロック・サウンドはそのままに、前作において要所で見せ場をさらっていたハモンド・オルガンの存在(=プログレ・ハード色)が後方へと下がり、よりノーマルなアメリカンHR路線へと歩みを進めているが、質の高さは相変わらず。 「ノー・シンセサイザー」「ノー・コンピューター」と誇らしげにクレジットされている通り、トム・ショルツ拘りのサウンド・メイキングが全編に渡って炸裂しまくった本作は、Gの歪ませ方から重ね方、ボーカル・ハーモニーの配置、アコギやKeyの使用タイミング等、細部の細部に至るまで徹底的な作り込みがなされており、これ聴いてると「メンバーは曲作る時に設計図を用意してたんじゃね?」と思わされるほど。流石、HR/HMシーンきっての理系ロック・バンド。 ロックならではの熱量の迸りが殆ど感じられない作風は評価が分かれるところかもしれないが、さりとて本作に機械的な冷たさや無機質さは皆無。心打つエモーションと人肌の暖かみを備えたメロディの素晴しさは唯一無二であり、特にその代表格と言えるのが前述の名バラード④。この曲のクライマックスにおいて「ここぞ!」というタイミングでハモンド・オルガンが切り込んでくる場面は、何度聴いても胸を締め付けられる程の感動を味わえます。その④をハイライトに、優れた楽曲が敷き詰められたアルバム前半の構成は完璧と評しても過言ではないような? デビュー作と共に、これまた必聴のBOSTONの名盤。
X-JAPANやMALICE MIZERといった日本のビジュアル系メタル・バンドからの影響も公言する、スティーヴ・ジュリアーノ(Vo)率いるアメリカはカリフォルニア州出身の5人組が、'08年に発表した2ndアルバム。 前作『LOVERS REQUIEM』は、MY CHEMICAL ROMANCE辺りに通じるスクリーモ・サウンドに乗せて、日本人好みの憂いを帯びたメロディが駆け抜けていく好盤だったが、今作では鍵盤奏者と、サイドVo兼ヴァイオリニストの女性メンバーの脱退に伴い、シアトリカルな雰囲気やゴス色が大きく後退。代わって、喉から血が出るようなスクリームや、ヘヴィ・メタリックなリフ&リズムの存在が強調され、前作に比べストレートさを増した作風は、随分とアグレッシブ。 尤も、全編を彩るお耽美なメロディの魅力に鈍りは全くないし、何より、スティーヴが作り出す哀しくもキャッチーな歌メロのフックと来たら相変わらず強力無比。メランコリックに疾走する名曲④をハイライトに、優れた楽曲が連打されるアルバム前半(①~⑥)の盛り上がりっぷりなんて辛抱堪らんものがありますよ。 ダーク&へヴィ化が進んだとの前評判に「大味になってたらどうしよう・・・」と一抹の不安を隠せなかった本作だが、実際には、単にHM指数が上がってただけの話で(泣きのGソロのフィーチュア度も高まっている)、例えばBULLET FOR MY VALENTINEの新作なんかが気に入った人にもお薦めできる1枚かと。但し、ジャケット・アートワークは最悪だが。
マーク・ト二ーロの熱いVo、立ち塞がるもの全てを薙ぎ倒す勢いで疾駆する リフ&リズム、そして力強いコーラスと、いずれの要素も 「これぞメタル、これぞACCEPT!」と主張しまくっているが 何より心奪われるのはウルフ・ホフマンのGソロ。 『BLOOD OF THE NATIONS』では構築美を備えたGソロを連発してくれている 彼氏なれど、特にこの曲におけるGソロは強力無比。 初めて聴いた時は余りの素晴しさに膝から崩れ落ちそうになりましたよ。
刻みの細かいGリフに、光沢を湛えた音色でJUDAS PRIESTばりに劇的にハモるツインG、そして天を突くようなジョン・サイリースのハイトーンVoとが、忙しないビートに乗って疾走する、AGENT STEEL屈指の名曲“UNSTOPPABLE FORCE”を収録した'86年発表の2ndアルバム。 「元祖スピード・メタル・アルバム」とも評されたデビュー作『SKEPTIC APOCALYPSE』に比べると疾走感が抑え気味にされた分、これまで以上に起伏に富んだメロディを歌い上げるジョンのVoと、一層濃密に絡み合うドラマティックなツイン・リードGの存在が前面に押し出され、正統派HMテイストが増強。スピード・メタリックな走りっぷりが薄まった事を残念に思う向きもあろうが、個人的には、ミドル・テンポの重厚な名曲⑤を収録する等、より緩急が意識されドラマ性を高めた本編の流れは、パワフル&スピーディな反面、やや単調な部分も見受けられた前作以上に魅力的に響く。(特にVoの歌メロの魅力向上は大きい) 先頃実現した初来日公演では、オーラ皆無の冴えないルックスは兎も角、高音域が相当苦しげな上にカンペをガン見したままドラムセットの前から動こうとしないシンガーのメロメロなパフォーマンスと、代表曲“AGETNT OF STEEL”を欠いたセットリストがファンの落胆を誘った彼らだが、インストの名曲“THE DAY AT GUYANA”をイントロ代わりに、本作タイトル曲でライブがスタートした瞬間だけは全身の血液が沸騰するかのような興奮を味合わせて頂きました。 知名度では1stアルバムに劣るものの、個人的にはAGENT STEELの最高傑作と信じて疑わない1枚。