キャリアの低迷期として、今や殆んど顧みられる機会のないマンタス(G)リーダー時代、元ATOMKRAFTの巨漢フロントマン、トニー・ドーランことデモリションマン(Vo、B)を擁するラインナップのVENOMが'93年にひっそりと発表した8thアルバム。 全世界的に廃盤状態で入手困難な割に、たまに中古盤屋に並んでも別段プレミア価格が付けられるわけでもない(千円ぐらいで買えちゃう)という、不憫なほど扱いの悪い作品だが、内容の方はこれが非常にハイクオリティ。 プログレ・マインド漂うミステリアスでエキゾチックな①、様式美ヘヴィ・メタリックなインスト曲⑩といった異色曲が本編の最初と最後に配置されている事からも察しの付く通り、もはや初期の頃の面影は微塵もなく、荒々しさよりも整合性や構築美が前面に押し出された作風は、スラッシュ・メタルというよりも正統派ヘヴィ/パワー・メタル。 特に、如何にも英国的な翳りを帯びたメロディが疾走する②③、構築美を湛えたツインGをフィーチュアした本編屈指の名曲④、ダイナミックな起伏に富んだ⑤、アグレッシブに挑みかかって来る⑥⑨といった、スラッシーな攻撃性と、ヨーロピアンHMならではのドラマ性が組み合わされた楽曲の数々は聴き応え十分。 ダイハードなファンからは「何もVENOMがこれをやらんでも」という溜息の1つも聞こえて来そうな感じだが、彼らの好きなアルバムと言えば「『CALM BEFORE THE STORM』『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』がベスト3」という我が身としては、本作も初期作品以上に愛して止まない次第。 この頃のVENOMは絶対過小評価されてると思うんだがなぁ。
全体的にPANTERAっぽさを強めた作風の2ndアルバムの中にあって、 最もデビュー作の頃の面影を留めた高速スラッシュ・ナンバー。 ヨーロッパのバンドとは一味違う、独特の硬質感を湛えて 疾走する憂いを帯びたメロディが素晴しい。 EP『BUILDING ERRORS IN THE MACHINE』にも収録されているので 聞き比べてみるのも一興かと。
スイスはジェネーブにて結成された、ツインGを擁する5人組スラッシュ・メタル・バンド。 情報が少なく、調べても詳しい活動履歴が分からんのだけれど、ともかく'88年にスイスのインディーズOUT OF TIME RECORDSからセルフ・タイトルの1stアルバム『APOCALYPSE』を発表、デビューを飾っている。 後にこのアルバムはUNDER ONE FLAG RECORDSを通じて海外へと配給される事になるが、この時(多分)アートワークがトゥルー・メタル調のモノからスラッシャーにお馴染みの「ツノ付き蝙蝠」イラストに差し替えられ、また本編もSWEET SILENCE STUDIOにおいてフレミング・ラスムッセンの手によるミックスが施されている。 '93年にはシンガーを代えて2nd『THE FAITHLESS』をリリース。この時加入したニック・ラボーなるシンガーは、後にGOTTHARDに加入することとなるニック・メーダーその人。但し、その彼もアルバム・リリース後すぐに脱退してしまい、主要メンバーの興味が他に移ったこともあってバンドは解散。 Bのペーター・トールスロンドはその後ARTILLERYへ加入。(※↓下の方のご指摘の通り、別バンドでしたね。デンマークの方のARTILLERYの4thアルバムの解説にもハッキリとその旨書かれていました。謹んで訂正します)