カール・アルバートにも匹敵する実力派シンガー、ジェリー・デレオンを獲得して復活を遂げたVILLAINが、'95年、 そのカールの死去とほぼ同時期に発表した再結成アルバム。(内パケに載せられた、在りし日のカールの姿を捉えた写真が泣かせます) '86年に自主制作されたEP『ONLY TIME WILL TELL』が、1st~2ndの頃のVICIOUS RUMORSを思わせる、劇的なパワー・メタルの 名盤だったのに対し、今回は、4th『WELCOME TO THE BALL』以降のVICIOUS RUMORSを思わせるアメリカン・パワー・メタル路線。 当時、アメリカで猛威を振るっていたモダン・へヴィネス症候群に目もくれない硬派な姿勢は非常に好ましいものの、 復活作と言う事でやや力み過ぎたのか、メロディにフックが不足気味で(これは『WELCOME~』以降のVICIOUS RUMORSにも 当てはまる話なんだが)、また、明るいロックンロール・タイプの楽曲を収録したり、アリス・クーパーのカヴァーを 演ってみたりと、音楽性も拡散の方向へと進んでいるため、一聴してのインパクトはデビューEPに比べると少々弱い。 これぞパワー・メタル!な③、メランコリックな④、ヘヴィ・バラード⑩等、ジェリー・デレオンの卓越した 歌唱能力の活かされた名曲・佳曲もしっかりと収録されている辺りは流石なのだけど・・・。 聴き終えた後の満足感は決して小さくはないのだが、個人的にデビューEPへの思い入れが強すぎるため、 どうしても「このVoで『ONLY TIME WILL TELL』路線の音楽を演ってくれたら・・・と思ってしまうわけで。
NWOBHMを代表する名盤『SEE YOU IN HELL』と、GRIM REAPERの最高傑作として名高い 3rd『ROCK YOU TO HELL』の間に挟まれて、イマイチ影の薄い'85年発表の2ndアルバム。 最近、リマスター再発されたのを期に初めて購入したのだけれど、パワーと湿り気を備えた作風は、 「これぞブリティッシュHM!」といった魅力に満ち溢れ、上記2作と比べても決して聴き劣りするレベルの作品ではない。 叙情バラードやドラマティカルなナンバーを排し、力押しに終始する本編の流れはやや単調だし、 たった9日間でレコーディングされたというサウンド・プロダクションも(相変わらず)貧相だが、 ヴァイキング風のPVも作られたアルバム表題曲①、フックの効いた歌メロが強力な②、勇壮な⑧といった楽曲を筆頭に、 シャープに疾走するリフ&リズムの上に、心の内なるメタル魂にポッと火を点される、スティーヴ・グリメットの 雄々しく伸びやかな歌唱が乗っかった楽曲の数々は、前作のスマッシュ・ヒットで波に乗るバンドの勢いが 如実に反映された仕上がりで、問答無用のカッコ良さを誇る。 『SEE YOU~』や『ROCK YOU~』が気に入った人なら、当然のように本作もマスト・バイ。
元VANDENBERGのクルーで(同バンドが'84年に行った来日公演にも帯同した)ギタリストのハリー・ヴェイリングが 中心となり、オランダはオーファーアイセル州ロッシャルにおいて結成された5人組パワー・メタル・バンドが、 '91年に発表した自主制作による6曲入りデビューEP。(後に日本のみで、TYTAN、IRON MAIDEN、TYGERS OF PAN TANG、 MSG、DEEP PURPLE等のカヴァー曲を追加収録したスペシャル・エディション盤がリリースされている) そのサウンドは、ザクザクと力強く刻まれるGリフと重厚なリズム・セクションの上に、ヘタウマなVoとメロディックな ツインGが乗っかった、NWOBHMにも通じる垢抜けない雰囲気を漂わせたパワー・メタル。よりコアな方向へと歩みを 進める後の作品に比べると、本作はグッとオーセンティックなHM寄りのスタイルが取られており、こと「取っ付き易さ」に かけてはHARROWの作品の中でも随一。取り分け、雄々しくパワフルに疾走するメロディック・パワー・メタル・チューン③は、 このバンドの代表曲として今でも時々聴きたくなる名曲の1つ。(ドラマティックに盛り上がる⑤⑥も良い曲) HARROWの最高傑作と言えば、個人的には2nd『CALL OF THE UNBORN』を推すが、パワーとメロディが丁度良い按配で 組み合わされた本作の魅力もまた捨て難い。国内盤のみに収録されたカヴァー曲の数々も美味しいしね。
必殺の名曲“THIS IS WAR"“WATING FOR THE NIGHT"を収録し、VANDENBERGの日本での人気を決定付けた '83年発表の傑作2ndアルバム。(邦題は『誘惑の炎』) 泣きメロ満載だが湿っぽくならない、適度なポップさを備えた楽曲を、綿密に構築されたエイドリアン・ヴァンデンバーグの Gプレイが華麗に彩るHRサウンドは、デビュー作の作風を順当に継承しているものの、本作ではブルーズ風味が薄れ、 よりポップでキャッチーなメロディが前面に押し出された内容に仕上がっている。 収録曲のクオリティにややバラつきが見られる(と言っても、並みのバンドなんぞ寄せ付けないレベルの高さなんだけど) のが難なれど、キャッチーなポップ・メタル・ソング①、哀メロが胸に染み渡る美しいバラード④、 そしてVANDENBERG史のみならず、HR/HM史に残る名曲といっても過言ではない、劇的極まりない⑤⑨といった 極上の楽曲の前には、些細な不満など欠片も残さずに吹き飛ばされてしまうというもの。 HR/HMファンを名乗るなら聴かずには済まされない名盤ゆえ、VANDENBERG未体験者の入門編としても最適な1枚。
オランダの至宝、エイドリアン・ヴァンデンバーグ率いる4人組HMバンドVANDENBERGが'82年に発表した1stアルバム。 VANDENBERGの最高傑作と言えば、やはり名曲中の名曲“THIS IS WAR"“WAITING FOR THE NIGHT"を収録した 2nd『HEADING FOR A STORM』で決まりだろうが、個人的に彼らの作品で一番好きなのは、このデビュー作だったりする。 上記2曲のような強力なキメ曲こそないものの、収録曲は非常に粒が揃っており、何より、ドラマティックな「泣き」を 満載したエイドリアンの華やかなGプレイに関しては、2ndアルバム以上の充実っぷりを誇っていると言っても良いのでは? アルバム前半(A面)にメロディをじっくり聴かせるタイプの楽曲が、後半(B面)にはハード・ロッキンな楽曲が並ぶ、 メリハリの効いた構成も素晴しい本作。美しいアコギが閃く③、スマッシュ・ヒットを飛ばした名バラード④を山場とした 前半の完成度も見事だが、やはり本編のクライマックスは、フックの効いたメロディがエネルギッシュに疾走する⑤、 劇的なイントロのみで一発K.O.される⑥、泣きを伴ったバート・ヒーリングのVoが映えるシャッフル・チューン⑦、 構築美に溢れたエイドリアンのGソロに悶絶させられる⑧、ヘヴィ・メタリックな疾走チューン⑨といった ハイクオリティな楽曲が連打される、アルバム後半にこそ有るんじゃないかな、と。 泣きメロ愛好家なら、聴かずには死ねない名盤の1つ。2ndアルバムと併せてどうぞ。
30名以上に及ぶジャーマン・メタル・シーンのミュージシャン達が、「ヘヴィ・メタルは暴力的と決めつけ、 スポイルしていく傾向にあるTVメディアに対して抗議する」目的で集結した、ジャーマン・メタル版USA FOR AMERICA・・・ というかHEAR'N AIDなプロジェクト、GERMAN ROCK PROJECT。 本作は'91年に発表されたシングルで、トム・ハーゲンとグドラン・ラオスが作詞/作曲を手掛けたバラード “LET LOVE CONQUER THE WORLD"のバージョン違い3曲を収録。このうち「METALバージョン」では、 14人のシンガーと共に、総勢18人のギタリスト達がリレー方式でGソロの熱演を繰り広げている。 かの名曲“STARS"と比べてしまうと、参加人数の割りにギタリストのキャラ立ちがイマイチとか(まぁ無理もない)、 大らかさが売りの和み系バラードゆえ、Gソロが10分以上も続くといい加減ダレるとか、色々と気になる点はあるものの、 一種、お祭り騒ぎのようなこの手の企画に、細かい突っ込みは野暮というものでしょう。豪華ミュージシャン達の共演を、 素直に楽しむのが吉かと。1つでも気になるバンドが参加しているのなら、とりあえずご一聴をお薦めさせて頂きます。 ちなみに、本作の売り上げの10%は「熱帯雨林保護基金」に寄付されたのだとか。