生オケをフィーチュアした“A SHORT PIECE FOR A GUITER AND STRINGS"を 序曲代わりに、アルバムのラストをドラマティックに締め括る名曲。 イングヴェイからの影響が露骨に感じられるが、 起承転結がバッチリと決まった曲展開の素晴しさの前には些細な事。 Gとガップリと四つに組む、名手・小川文明のKeyも良い仕事をしています。
日本人離れした実力を誇る5人組として、舶来志向のメタル・ファンからも高い評価を得る、東京/神奈川をベースに活動を続けるメロディック・パワー・メタル・バンドAZRAELが、'97年に2000枚限定でリリースした自主制作の1stアルバム。 中古屋にてバカ高いプレミア価格が付けられていたので、はて、それほど優れた内容だったっけ?と、 久し振りに棚から引っ張り出して聴き直してみたのだけれど・・・。うん、良く出来ています。BURRN!!誌で高得点を獲得した3rd『SUNRISE IN THE DREAMLAND』に比べると、貧弱なサウンド・プロダクションといい、ハイトーンで歌うと声が引っ繰り返りそうになる、線の細いVoの不安定さといい、全体的にまだまだ青臭い印象は否めないものの、曲作りの上手さに関してはこの頃から既に光るモノを感じさせてくれる。 特に、Keyのアレンジが秀逸な哀愁のHRチューン④や、ポップで爽やかなノリの⑪を筆頭に、適度な軽快さを持ち合わせた楽曲で本編のコテコテ度を緩和して、腹にもたれる事なく、全13曲という長丁場を一気に聴かせる手腕はなかなかのもの。(とは言え、もっと曲数は絞った方が良かったと思うが) 勿論、ドラマティックな序曲を経て走り出す②、アルバム・タイトル・トラックの⑤、クライマックスを締める⑫等、要所に配置された、お約束のスピード・チューンのカッコ良さも素晴しい。 磨かれる前の原石的な魅力を感じさせる1枚、か?
華麗なツインG、美しく分厚いボーカル・ハーモニー、そして繊細な泣きメロをフィーチュアした、ドラマティックで 叙情的なHRサウンドを聴かせる英国の4人組が、'81年に発表した1stアルバム。(邦題は『戦慄のマンティス』) 必殺の名曲“CHILDREN OF THE EARTH"と“LOVER TO THE GRAVE"を収録し、NWOBHMムーブメントの中でも屈指の 完成度を誇る1枚と高く評価されながらも、権利関係の複雑さから、長年再発される事なく「幻の名盤」扱いされていた本作。 それゆえ、'95年に念願叶って復刻が果たされた時には、多くのファンが感涙に咽んだというが、実際のところその作風は、 爽やかな曲調のOPナンバー①が象徴するように、結構ポップ路線寄りのサウンドなので、メロメロに泣きまくる (例えば3rd『A CRY FOR THE NEW WORLD』のような)内容を期待していた後追いリスナーの中には、 ちょっぴり拍子抜けした人も少なからずいたのではなかろうか? とは言え、仄かな哀愁を含んだ曲調、キャッチーなサビ、ポップなメロディを歌っても決して明るくなりきれないヘタウマVo といった要素も、間違いなく初期マンティスの魅力であり、③④⑦⑧等の楽曲は聴き応え十分の佳曲に仕上がっている。 そして何と言っても本作は、このバンドの「静」の魅力が詰め込まれた美しくもドラマティックな⑤と、 スリル/ドラマ性/泣きメロと、三拍子揃った完全無欠の⑨の存在がトドメを刺す。どちらもPRAYING MANTISのみならず、 NWOBHMをも代表する名曲中の名曲。また、この2曲の陰に隠れがちながらも、シャープに疾走するアグレッシブな⑥も、 同様の路線を行く存在として、キラリと光を放っている事も付け加えておきたい。 メロディ愛好派なら、死ぬ前に1度は聴いておきたい名盤。
'76年、英国はウェスト・ミッドランド地区ストーブリッジにて結成。同じ学校に通っていたシーン・ハリス(Vo)、ブライアン・タトラー(G)、ダンカン・スコット(Ds)、コリン・キンバリー(B)というラインナップで活動を開始したDIAMOND HEADが、『SHOT OUT THE LIGHTS』と『SWEET & INNOCENCE』の2枚のシングル発表後、'79年に自主制作した1stフル・アルバム。 METALLICAが、本作収録の“HELPLESS"“AM I EVIL?"“THE PRINCE"“IT'S ELECTRIC"をカヴァーしたことで、一躍メタル・ファンの間で知名度を高め、他にもMEGADETHやSLAYERを筆頭とする、スラッシュ・メタル群に大きな影響を与えたことでも知られる彼らだが、同様に「元祖スラッシュ・メタル」と呼ばれるVENOM、MOTORHEAD、TANK、RAVENといったバンドと比べると、攻撃性や疾走感はそれ程でもなく、寧ろ、シーンの朗々と歌い上げるヘタウマVoと、タトラーの構築美溢れるGプレイの活かされた、6~9分台の長尺曲を含む大作主義の作風は、70年代ハードロックの面影を色濃く残している。特に、10分近くに及ぶドラマティックな③を聴くと、SOUNDS誌が「NEW LED ZEPPELIN」と評したのも、良く分かる・・・かな? 但し、彼らは飽くまでHMバンドであり、その最大の魅力は回転の速い、シャープなGリフの数々。幾多の名リフを生み出したNWOBHMムーブメントの中にあっても、本作は特異且つクールな名リフの宝庫で、全編通して駄リフは1つもない。取り分け燦然と光り輝くのが、①②③④⑤⑥⑦・・・って、これじゃ全部か。へヴィ・メタリックなエネルギーと疾走感、そして劇的な曲展開を兼ね備えた②は、本作の白眉であるだけでなく、NWOBHM史に残る名曲の1つ。 このリフ・ワークが、後のスラッシュ・メタルのインスピレーション源になったというのも、大いに納得がいく。名盤。
クリスチャン・ローグ(G)を中心に、LAで80年代初頭に結成。 当初はMARQUIS DE SADE(サディズムの語源となった、フランスに実在した公爵)を名乗っていたが、 かの『METAL MASSACRE』シリーズへの参加を期に、バンド名をSAVAGE GRACEと改める。 '85年にEP『THE DOMINATRESS』でレコード・デビューを飾り、'85年には1stフル『MASTER OF DISGUISE』を '86年には日本デビュー作となる2nd『AFTER THE FALL FROM GRACE』を発表。 そのアグレッシブでスピーディ、且つドラマティックなHMサウンドがメタル・ファンの間で好評を博す。 (日本では、日章旗ハチマキを巻いた東洋人メンバー、B.EASTの存在も話題になったとかならなかったとか) しかし、リーダーのクリスチャン・ローグ氏に、ミュージシャンとしての才能は兎も角、 人望が足りなかったようで、作品を重ねる毎に有能なメンバーが去っていき、それに伴い作品の質も低下。 結果、活動も尻すぼみ状態となってしまう。因みにそのクリスだが、 '06年に医薬品絡みの詐欺事件で逮捕され、刑務所へと収監されてしまったらしい。
「OBITUARYの新作『XECUTIONER'S RETURN』に、ラルフ・サントーラ(G)参加!」のニュースを聞いた時は、喜び勇んで輸入盤ショップに走ったものだが、実際のところ、あの作品におけるラルフのGプレイは、フラッシーではあるものの、こっちが(勝手に)期待していたような濃厚なメロディは控えめで、バンドに遠慮したのか、それともOBITUARYの強烈な個性に飲み込まれたのか。兎も角、DIECIDEの『THE STENCH OF REDEMPTION』程の化学反応は起きなかった・・・というのが正直な印象。(とは言え『XECUTIONER'S~』自体はとても良く出来たアルバムです) そんなわけで、自分の中のOBITUARYの最高傑作は、未だにこの'90年リリースの2nd『CURSE OF DEATH』のまま。「渡り鳥」の異名を取る名手ジェイムズ・マーフィが、唯一参加したアルバムとしても知られている本作だが、その効果の程は、①のドラマティックなイントロ部分から早くも炸裂。彼の正統派HMテイストを濃厚に漂わせた流麗なGは全編を通して暴れ回り、ドブ川でうがいしてるかの如きジョン・ターディのデス声Vo、重く、ズルズルと引き摺るような粘着質リフ、ダイナミックにウネリまくるリズムといった、従来のOBITUARYスタイルと見事なまでの美醜の対比を描き出す。 特に、バイオレントな曲調と、疾走するドラマティックなGソロの対比が光る⑤や、本編随一のドラマ性の高さを誇るラスト・ナンバー⑨といった楽曲は一聴の価値ありかと。 数あるOBITUARYのアルバムの中でも、特異な存在感を放つ1枚。
YOUNG GUITER誌が主宰する新人開発オーディションで、高い評価を得た高田明(G)と、 名古屋出身で、スラッシュがかったパワー・メタルを聴かせるHELLGENOMの松田大二郎(Vo、B)が イベント「HARD ROCK SUMMIT」を切っ掛けに知り合い意気投合、結成へと至ったパワー/スラッシュ・メタル・バンド。 最後にドラマーとして、OUTRAGEの丹下真也が合流してラインナップが完成。韓国で行われた日韓交流ライブに 参加する傍ら、ソウルでレコーディングした5曲入りEP『CERBERUS』を'05年に発表。 当初は助っ人としてドラムを叩いていた筈の丹下も(居心地が良かったのか)正式メンバーとして参加を表明、 '07年には、オーストラリアでレコーディングされた1stフル・アルバム『FEAR NO DECAY』もリリースされている。 サウンドの方は、初期OUTRAGEの突進力に、TANKの男気と哀愁を注入したかのようなパワー/スラッシュ・メタルで、 怒涛の如く押しまくりつつも、力強く歌うVoと、劇的なソロを連発するGがメロディもしっかりとフォロー。 スラッシャーのみならず、一般のメタル・ファンにもアピールし得る音楽性を備えている。