ホルストの組曲『惑星』から“火星"と、 グリーグのペールギュント組曲から“山の魔王の宮殿にて"の メロディを引用した、クラシカルでドラマチックなインスト曲。 次曲“HALL OF THE MOUNTAIN KING"の序曲的存在だが、 これ単体でも十分に魅力的。 華麗に舞うクリス・オリヴァのGがナイス。
1st『SIRENS』の好評を受け、晴れてメジャー・レーベルATLANTICとディールを結んだまでは良かったものの、 契約上のトラブルに巻き込まれ、イギリスのインディ・レーベル大手MUSIC FOR NATIONSからも作品を発表する事を 余儀なくされたSAVATAGEが、メジャー・デビュー作『POWER OF THE NIGHT』と同時期('85年)に 契約消化のために発表したのが本作。 国内盤の帯には「2ndアルバム」と表記されているけれど、実際はSAVATAGEの前身であるAVATOR時代の楽曲や、 1st発表後、PAR RECORDSとの契約を巡るゴタゴタで身動きが取れなかった時期に書き溜められた楽曲等、 比較的古いマテリアルを中心に構成されているので、正確にはEPに分類すべき作品のように思う。 まぁ、それはさて置き内容の方だが、同年に発表された『POWER~』が、如何にもメジャー制作らしい、スッキリと垢抜けて 聴き易くコンパクトにまとめられていたのに対して、こちらは前作の延長線上にある、ヘヴィでダーク、 且つオドロオドロしい雰囲気を纏ったパワー/スラッシュ・メタル路線。 この方向性は、4th『HALL OF THE MOUNTAIN KING』で頂点を迎えるわけだが、現在でもライブでプレイされている 劇的な名曲①や、ドッシリとしたヘヴィネスの効いた②④といった楽曲を収録した本作の完成度も、決して侮れたものではない。 尚、国内盤にはロスト・サヴァタージ・トラック(要するに未発表曲)2曲を追加収録。
ここ数作のコンパクトにまとめられた楽曲重視路線から一転、久し振りに重厚長大なコンセプトを全面に押し出した、'07年発表の記念すべき10thアルバム。 コンセプト重視といえば、30分近くに及ぶ大作組曲“ACHILLES,AGONY AND ECSTASY"を収録した7th『THE TRIUMPH OF STEEL』を思い出すが、全体的にメロディの弱さが目立ったあのアルバムに比べて、今回は1曲1曲がきっちりと練り上げられていて、メロディの煽情度も高め。長尺曲で圧倒するのではなく、キャッチーなHMソングを、SEやナレーション、インスト曲で繋ぎ合わせ、映画のサウンド・トラックの如き壮大さを演出するという手法が取られていて、ジョーイ・ディマイオが『THE TRIUMPH~』から得た教訓をちゃんと本作に活かしている事が判る。例えるなら、6th『KINGS OF METAL』に収録されていた笑撃・・・もとい、衝撃的な組曲“THE WARRIORS PRAYER"~“BLOOD OF THE KINGS"の流れをアルバム全編で展開してみた作品? また、ここのところ「メタル応援歌」的な歌詞の比率がどんどん高まっていただけに、本腰を入れてジョーイが神話世界を題材に取ってスケールの大きな歌詞を書き上げてくれた点もファン的には嬉しい限り。 ただ、疾走曲が並ぶ前半に対して、(そのクオリティは兎も角)似通ったテンポのへヴィ・チューンが並ぶ後半はSEやナレーションの長さと相俟って明らかにダレる。ので、個人的には通して聴くのは遠慮させて貰って③⑤⑥⑦⑩⑫といった楽曲のみを摘み食いしていきたい1枚。
前作『LOUDER THAN HELL』から、実に6年のインターバルを置いて、'02年に発表された待望の9thアルバム。 間に2枚のライブ・アルバムを挟んだとは言え、幾らなんでも6年は待たせ過ぎでしょうが!とか、しかも漸くリリースされた国内盤の歌詞には日本語訳がないという、今時有り得ない手抜き仕様(これはバンドよりもレコード会社の怠慢だが)等、湧き上がる数々の不満を力ずくで捻じ伏せてみせる本作の凄まじいクオリティの高さは、流石MANOWAR。 基本は『LOUDER~』同様、コンパクトに練り上げられたキャッチーなHMチューンが次々に繰り出される、コンセプトよりもメロディに重きを置いた楽曲重視路線だが、個々の楽曲のクオリティは、傑作だった前作をも軽く上回る勢い。 ボーナス・トラックも含めて全11曲、熱きメタル魂を胸に思わず行進したくなる勇壮な①に始まり、エリック・アダムスの驚異的な歌唱力が堪能できるプッチーニの③、厳粛且つドラマチック極まりない⑤を経て、後半の小細工無用の剛球メタル・チューン4連発(⑧⑨⑩⑪)からオマケ収録の名曲“KILL WITH POWER”のライブ・バージョン⑫に至るまで、本編のテンションは一時も緩まる事無く、当然、捨て曲なし。 惜しむらくは曲順がイマイチな点で、似たり寄ったりのテンポの楽曲が並んでいるため緩急に乏しく、折角の楽曲のインパクトの強さを、十分に活かしきれていない印象なのが勿体無い。尤も、前半に壮大で劇的な楽曲を、後半にストロングなメタル・チューンを揃えて、「静」と「動」のコントラストが引き立つ構成を狙ったバンドの意図も理解できるので、この曲順も一概には否定できないんだけど・・・。 ともあれ、こうした些細な部分が気になるのも本作の完成度が半端ないからこそ。疑いの余地なく名盤だ。
来日公演を見てきました。「良くも悪くもスタジオ・ミュージシャンが集まったバンド」という イメージが強かったのですが、かなりしっかりとしたライブを見せてくれたので大満足。 特にミカエル・アンダーソンが、あそこまでしっかり歌えるシンガーだったとは嬉しい驚きでした。 てっきり、経験値の少なさからメロメロな歌唱を披露してしまうものとばかり・・・。 また、ファンによる“ROCK'N ROLL IS SAVING MY SOUL"のサビの合唱シーンは、 ミカエルでなくとも感動してしまう、ショウのハイライト的な場面として非常に印象に残りましたね。 唯一の不満は、アンコールなしで1時間弱と、公演時間がえらく短かった点でしょうか。
オリジナル・メンバーの1人であり、生粋のロックンローラーだったロス・ザ・ボス(G)が6th『KINGS OF METAL』を最後にバンドを去って以来、ジョーイ・ディマイオ(B)の妥協を許さぬ完璧主義者っぷりに歯止めを掛けられる存在がいなくなったのか、アルバムのリリース・ペースがオリンピック級の気の長さになってしまったMANOWAR、'96年発表の8thアルバム。 前作『THE TRIUMPH OF STEEL』から参加したデイヴィッド・シャンケル(G)とライノ(Ds)が早くも脱退し、新Gとしてカール・ローガンが加入。Dsの座には前任のスコット・コロンバスが出戻るという慌しい人事異動を経て完成をみた本作だが、大勢には全く影響なし。いや、寧ろやや力み過ぎの感があった『THE TRIUMPH~』を軽く凌駕する内容に仕上がっているような・・・。 前作は、30分に及ぼうかという組曲“ACHILLES,AGONY AND ECSTASY"を筆頭に、気合の入った大作がズラリと並んでいたものの、メロディの弱さがアルバムの印象を弱いものにしてしまっていたが、今回は初心に帰ったのか、贅肉を削ぎ落とされ、コンパクトに絞り込まれた楽曲の数々は、疾走チューンにしろ、ミドル・チューンにしろ、バラードにしろ、非常に明快でキャッチー。 また、前作から飛躍的に向上したエリック・アダムスの歌メロの充実振りも大きい。特に、活きの良いOPナンバー①、タイトル/歌詞/曲調と、どこを切っても100%MANOWAR印な②、中盤の劇的な曲展開がガッツポーズ物のカッコ良さを誇る⑥、壮大なインスト曲⑧~⑨を経て、ラストを猛スピードで締め括る勇壮な⑩といった楽曲は、その両者の最良の部分が上手い具合に組み合わさった名曲じゃないかと。その他の収録曲も何れも粒揃い。当然捨て曲なし。 個人的には、ロス・ザ・ボス脱退(7th)以降のアルバムでは、この作品が一番好きだな。
タイトルといい、アートワークといい、暑苦し・・・もとい、劇的な楽曲の数々といい、ファンは忠誠を誓い、興味の無い人間は失笑を漏らすMANOWARというバンドの一番「濃い」部分をグツグツと煮詰めたかのような、アクの強くてマッチョな作風を誇る'89年発表の6thアルバム。 個人的に初めて買ったMANOWARのアルバムであり、HELLOWEENの『守護神伝 第2章』やRIOTの『THUNDERSTEEL』と並んでメタルに本格的にハマる切っ掛けとなった1枚だけに思い入れも一入なんだけど、その辺の贔屓目を抜きにしても本作のクオリティは『HAIL TO ENGLAND』『SIGN OF THE HAMMER』等の傑作群に匹敵する高さ。(・・・じゃないかな、と) CD用ボーナス・トラック⑦がちと弱いが(ネタ曲としては満点)、それ以外は、スラッシーな疾走感とダイナミックなサビメロが圧倒的興奮を生む①に始まり、ラストを締める、余りに大袈裟で芝居がかった展開が笑いと感動を呼ぶ組曲⑨~⑩まで、全編これ捨て曲なし。中でもエリック・アダムスの熱唱が胸焦がす大ヒット・バラード③、100人からの男性コーラス隊が参加した荘厳且つ厳粛極まる⑤、そして劇的にしてキャッチーな(来日公演でも物騒な「HAIL&KILL」コールを巻き起こした)本編のハイライト・チューン⑧といった楽曲のカッコ良さは鳥肌モノ。 また今回特に注目すべきは、これを最後にバンドから脱退するロス・ザ・ボスのGプレイ。一般的に、ジョーイ・ディマイオの作る楽曲と、エリック・アダムスの超絶歌唱があれば、それでMANOWARサウンドは成立するというのがファンの共通認識なれど、このアルバム以前と以後とで、その作風が微妙に変質していく事を鑑みるに「やはりオリジナル・メンバーのロスの存在って重要だったんだな~」と、その豪快さと繊細さを併せ持つGプレイを聴きながらしみじみと実感させられます。 ロス・ザ・ボス在籍時代の集大成とも言える、気合の入った傑作。