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MANOWAR - Fighting the World ★★ (2007-06-07 21:39:00)

メジャー・レーベルのATCOに移籍して'86年に発表された、MANOWAR史上最大の問題作として知られる5thアルバム。
かつては「こんなポップなアルバムはらしくない」「ジャケットもKISSの『DESTROYER』のパクリじゃん」とボロクソに貶されていたが、現在ではどちらかと言えば「前半(①②③④)に明るめの曲が並ぶだけで、後半はいつも通りのMANOWAR節が堪能できる作品」との、冷静な評価がファンの間では大勢を占める。
個人的にも本作の作風は、ポップではなく「元気溌剌」と表現したいところだし、もしポップに聴こえるのなら、それは楽曲よりも、クリーンでカラッと垢抜けた、健康的(?)なサウンド・プロダクションに因るところが大きいと思われ。
まぁ、では(今じゃライブの重要なレパートリーとなった①は兎も角)問題の②③④といった楽曲は優れた出来なのか?と問われれば「それほどでもない」というのが正直な感想だし、再びオーソン・ウェルズの語りをフィーチュアした⑤も“DARK AVANGER"の完成度には及ばない。それゆえ、ポップか否か以前の問題で余り思い入れのないアルバムだったりするのだが、それでもダークで重厚な名曲“HOLY WAR"を含む組曲形式の⑥⑦⑧や、全楽器が一丸となって16分音符を刻む野蛮で勇壮なスピード・チューン⑨は聴かずには死ねない強力な仕上がり。何より、本作でメジャー・アーティストとして一皮剥けたからこそ、次作『KINGS OF METAL』の成功があったんじゃないのかな、と。
その他の作品に比べて「クドさ」が薄い作風ゆえ、もしかするとMANOWAR初体験者の入門書に最適かもしれない1枚。


MANOWAR - Sign of the Hammer ★★★ (2007-06-06 22:10:00)

ファン・・・いやさ、ブラザーの間でも「MANOWARの最高傑作」と評価の高い、'84年発表の4thアルバム。
結構「音がイマイチ」との意見が出ているようですが、音、そんなに悪いっすかね?個人的には、準メジャー・レーベルと契約して、初めてまともな環境で製作されたアルバムという事で、過去3作に比べてサウンド・プロダクションの質は飛躍的に向上したように思うのですが・・・。ただ、徹底的に作り込まれた最近作のゴージャスさと比べてしまうと、確かに物足りなさを覚えるのも無理ないかな。
ともあれ、内容に関しては他の方同様まったく文句なし。“狂気の掟”“野獣列伝”“死戦士宣言”etc・・・と、仰々しい邦題を眺めているだけでワクワクして来る楽曲の数々は非常に粒が揃っていて、当然の如く、捨て曲は皆無。
何より、従来のスケールの大きなドラマチック路線に、更に疾走感やキャッチーさといった要素が加味されて、これまで以上に幅広いリスナーにアピールし得る魅力を備えているのがポイント。一撃必殺の威力を誇る劇的な疾走チューン③なんかは、その好例ではなかろうか?
勿論、“偉大なる山々”の邦題通り、神々しい荘厳さすら漂う④、そしてMANOWARが単なるファンタジー馬鹿ではない事を証明する、シリアス且つ重厚な名曲中の名曲⑧といったMANOWAR節炸裂の大作群の素晴しさは、今更言うに及ばず。
それにしても驚くべきは、本作が3rd『HAIL TO ENGLAND』と同じ年にリリースされている事実だ。名作と名高い2作を、1年と間を空けずに続け様に発表するとは・・・恐るべしというか流石というか、とにかく凄いぜ、MANOWAR。


MANOWAR - Hail to England ★★★ (2007-06-05 22:07:00)

前作『INTO GLORY RIDE』が、NWOBHMに沸くイギリスで高く評価された事に感謝を捧げてこのアルバム・タイトルになった・・・という実にMANOWARらしいエピソードを持つ、'84年発表の3rdアルバム。
デビュー作『BATTLE HYMNS』のロックンロール路線から、ドラマ性重視のヘヴィ・メタル路線へと舵を切った『INTO~』は、重厚長大で劇的な楽曲がズラリと並んだ力作だったが、その反面、やや力み過ぎたのか、冗長な部分が無きにしも非ずだった。(飽くまでMANOWARにしてはの話で、有象無象のバンドに比べればそのクオリティの高さは驚異的)
その辺の反省点を踏まえて(?)製作された本作は、余分な贅肉が削ぎ落とされた楽曲はソリッドに研ぎ澄まされ、ランニング・タイムは何れも3~4分台と非常にタイト。それでいて大仰なドラマ性は減じるどころか、益々磨き上げられているのだから畏れ入る。
特に、雄々しく力強い①、ライブでは物騒な「DIE!DIE!」の合唱を誘うスラッシーな③、隠し味の女性コーラスが楽曲の持つ荘厳な雰囲気を引き立てる④、そして本編唯一の大作にして、これぞMANOWAR!たるドラマチックな名曲⑦といった楽曲の素晴しさは、本作の白眉。つーか、このアルバムに捨て曲はありません。
また、前2作の大きな弱点だった劣悪なサウンド・プロダクションが大幅に改善されているのもポイントで、未だ十分とまでは行かないまでも、これで漸くスケールの大きな楽曲の魅力が余すところなく伝わるようになった。目出度い。
僅か13日間でレコーディングされた代物とは俄かに信じ難い、初期の傑作の1つ。


MANOWAR - Into Glory Ride ★★★ (2007-06-05 21:53:00)

メンバーがヴァイキングのコスプレをしたアルバム・ジャケットを見ただけで、いよいよMANOWARが本領を発揮し始めたことがよく分かる、'83年発表の2ndアルバム。
前任者とは比較にならないダイナミックなドラミングを披露するスコット・コロンバスの加入により、ロックンロール調の軽いノリが目立ったデビュー作『BATTLE HYMNS』の作風から一転、アルバム全編をヨーロッパ的なダークネスとヘヴィネスが支配する本作は、頭からケツまで、重厚長大、厳粛且つドラマチックな楽曲が次々に繰り出される。
エリック・アダムスのVoも、実力を存分に発揮できるスケールの大きな楽曲を得た事でエネルギー全開。前作ではあまり出番のなかった「ヴィブラートかけまくりの雄々しい歌い上げ」と「豊かな表現力」をフル活用して、起伏に富んだメロディを見事に歌いこなすその歌唱は、まさに圧巻としか。特に、悲壮感を伴って大きくうねる②、メタル魂を鼓舞される高揚感に満ちた③、雄大で幻想的な④、劇的な疾走感に思わず背筋が伸びる⑥、アルバム随一のスケールの大きさを誇る⑦といった楽曲は、曲自体のクオリティの高さがエリックのシンガーとしての実力を120%引き出し、またその強力な歌声が曲の完成度を一層高めるという、理想的なコンビネーションが堪能できる名曲じゃないかな、と。
相変わらずサウンド・プロダクションは×だが、『地獄の復讐』という邦題がコケ脅しには聞こえない、大仰なドラマ性に満ちた1枚。


MANOWAR - Battle Hymns ★★★ (2007-06-05 21:36:00)

'82年発表の記念すべきデビュー作。レコード会社と契約を交わす時、自分達の血でサインとか、国内盤の邦題が『地獄の鎮魂歌』だったとか、語り継がれる仰々しいエピソードの数々に反して、内容は明るいメロディを持った、ノリの良い楽曲が大半を占める。
尤も、ロックンロール・テイストはMANOWARというバンドを構成する重要な一要素なので、本作をして「異色作」と呼ぶには当たらない。それにアルバム中盤以降には、俳優のオーソン・ウェルズの語りをフィーチュアした⑥、ファンにはライブのエンディング曲としてお馴染みの、劇的極まりない⑧といったドラマチックな名曲が並び、実際のところ、聴き終えた後の印象は2nd以降のアルバムと大差ない感じ。
バンドの2枚看板であるジョーイ・ディマイオ閣下のBと、エリック・アダムスの超絶Voは既にその存在感を存分に発揮していて、前者はクラシックの有名曲をベース1本でカヴァーした⑦が最大の聴き所。エリックのVoは、比較的ストレートな楽曲が多く収録されているアルバムゆえ才能全開とまではいかないものの、坂本英三も自らカヴァーするぐらい大好きな②、バンドのテーマ曲であり、ライブのOPナンバーでもある⑤といったノリノリの曲調を備えた楽曲を、彼がドラマチックな歌唱で歌い上げるミスマッチ感は非常にユニークで味わい深い。
お世辞にも良好とは言い難いサウンド・プロダクションと、ドニー・ヘムズィクの大人しめのDsの影響か、後の作品ほどのスケールの大きさは伝わって来ないが、明るい曲を演っても決して能天気にはならない、NY出身のバンドらしい硬派なサウンドが堪能できる名作。


EXCITER - Heavy Metal Maniac ★★ (2007-06-05 21:19:00)

ANVILと双璧を為す、カナダ出身の元祖スラッシュ・メタル・バンド、'83年発表の1stアルバム。
鋭く刻まれる剃刀リフに、力いっぱい疾走しまくるリズム隊、ギャンギャンと喧しいぐらいシャウトを繰り返すVo、
勢い重視だがやたらカッコイイGソロ・・・と、EXCITERの何たるかがギュッと凝縮された名曲“HEAVY METAL MANIAC"を
収録した本作は、とにかく全編スピーディ且つハイテンション。特にこのスラッシュ・メタル・バンドすら軽く吹き飛ばす
テンションの高さには凄まじいものがあって、②③⑥⑨といったスピード・チューンなんか、「元気が良い」とか
「エネルギッシュ」とかのレベルを遥かに飛び越えて(↑上の方の発言を引用させて貰うなら)
まさしく「ラウド」という表現がピッタリくるド迫力の作風。何かヤバイ薬でドーピングでもしてたんじゃなかろうか?なんて。
かと思えば、メロウな曲調でジックリと聴かせるバラード風の⑧を収録して、アルバムの流れが単調にならないように
気を配っていたりするから侮れない。まぁ最後の最後で「てやんでぇ、もう我慢できるかい!」とばかりに
猛スピードで突っ走り始めちゃう辺りは、非常にこのバンドらしいんだけど(笑)。
音質の悪さが唯一にして最大のネックの作品だったが、最近はボーナス・トラックを追加収録したリマスター盤が
出回っているので、そちらがお薦め。ちなみに、リマスタリングを手掛けたのはジェフ・ウォーターズ。
ANNIHILAORが最新作で“HEAVY METAL MANIAC"をカヴァーしたのは、この辺の縁が関係しているのかな。


ARTCH - For The Sake Of Mankind ★★ (2007-06-05 21:03:00)

デビュー作『ANOTHER RETURN』が、いきなりKERRANG!やMETAL FORCESといった欧州のメタル雑誌で満点の評価を
獲得した事で知られるノルウェー出身の5人組パワー・メタル・バンドが、'91年に発表した2ndアルバム。
パワー・メタルと言っても、メロスピやメロパワのような疾走するリフ&リズムの上に明快なメロディが乗っかるタイプではなく、
勇壮で重量感に満ち溢れた①や、パワフルなリフ&リズムが戦車の突撃を思わせる③、スラッシーな攻撃性を発散する
スピード・チューン⑨といった楽曲を聴けば分かる通り、その作風はもっとダークでアグレッシブ。重心の低いリフが
ザクザクと刻まれる力強い楽曲の数々を聴いていると、「METAL CHURCH+VICIOUS RUMORS÷北欧メタルならではの叙情性」
という図式が頭に思い浮かんだりも。
しかし、何より本作で特筆すべきは、やはり北欧メタル・シーンきっての名シンガー、エリック・ホークの存在。
「繊細になったブルース・ディッキンソン」といった趣きの歌声は、パワー/表現力ともに抜群で、
特に、緊張感漂う疾走曲⑤では噛み付くような攻めのシャウトを、ダイナミック且つドラマチックな⑥では、
リスナーの胸を鷲掴みにする熱唱を、そして寂寥感漂う泣きの名バラード⑦では繊細な歌い上げをと、
曲のタイプによって様々な表情を見せるその歌唱は、まさに絶品。IRON MAIDENからブルースが脱退した時は、
多くのファンが「後任はこの人で良いじゃん」と思ったものでした(?)。
これだけハイクオリティなアルバムを作り上げながらも、その後の活動がパッとしなかったのは、
まさに時代が悪かったとしか言いようが無い。


HEXENHAUS - The Edge of Eternity ★★ (2007-06-02 01:17:00)

KING DIAMONDやMERCYFUL FATEでの活動で知られるマイク・ウェッド(G)がリーダーを務めていた
スウェーデン出身の5人組技巧派スラッシャーが、'90年に発表した2ndアルバム。
技巧派といっても、スリリングな楽器同士のバトルや、そこから生まれるテンションの高さを売りにしたタイプではなく、
その確かな演奏技術でもって楽曲をカッチリとまとめ上げ、より「聴かせる」ことを重視するタイプ。
まぁ、Voはメロディ無視の吐き捨て型なんだけど、現在ではどうって事ないレベルのダーティさなので無問題。
何より、このバンドはメロディが非常に良い。技巧派バンドにありがちな独り善がりな難解さは皆無で、
2人のGが紡ぎ出す、北欧の凍てついた大地を想起させる寒々としたメロディや、無愛想で硬質なリフ・ワークを聴いていると、
何となくフィンランドのスラッシュ・メタル・バンドSTONEを思い出したり。(あれをもっとプログレ寄りにした感じか)
ベートーベンの“月光"をモチーフにした序曲①から小気味良く疾走を開始する②、緩急のコントラストも鮮やかな③、
劇的なインスト・パート(特にツインGのハモリ具合が堪らん)を備えた⑤、ドラマチックな序曲を経て、
そこはかとなくエキゾチックなメロディを纏って疾走する⑦、ちとダレるけどドラマ性の高さにかけては
本編随一の大作⑧といった楽曲は、スラッシャーなら一聴の価値ありかと。
全体的にはまだまだ垢抜けないし、イモっぽい雰囲気も無きにしも非ずだが、
この如何にも「北欧のスラッシュ」的なヒンヤリとした質感はかなりクセになる。


ALCATRAZZ ★★ (2007-06-01 23:01:00)

7年ぶりぐらいでグラハムの勇姿を拝見しましたが、やっぱり老けたなぁ(笑)
風貌は完全に「お爺ちゃん」といった感じで、パワーはともかく音程は相変わらず怪しく、
しかも堂々とカンペ見まくり。老眼なのか目を眇めてるし・・・(苦笑)と、
普通のシンガーにやられたら大ブーイング物のパフォーマンスも、
何故かこの人がやると「それでこそグラハム!」と妙に安心してしまうから不思議です。
ズボンを開けてチ○コに水をかけた出した時には、すわ伝説の再現か?!とヒヤヒヤさせられましたが・・・。
寝転がったり欽ちゃん走りしたり三転倒立したりと、入魂の熱演(?)に
終始ニコニコ笑いが止まらず、最初から最後まで非常に楽しませて頂きました。


DEICIDE ★★ (2007-05-31 22:37:00)

まぁラルフ・サントーラって、一ッ所にジッとしていられるタイプのミュージシャンじゃないですしね。
DEICIDEで素晴しいアルバムを残してくれただけでも御の字かな、と。
出来れば、グレン・ベントンとスティーヴ・アシェイムの2人には、
今後もこの路線を続けて欲しいところなのですが・・・。


DEICIDE - The Stench of Redemption - Crucified for the Innocence ★★★ (2007-05-31 21:53:23)

楽曲自体は直球勝負の高速デス・メタル・チューンなのだが、
ラルフ・サントーラのGが流麗に絡むサビは非常にキャッチーで
(ポップという意味ではない)ドラマチック。
ラルフ加入効果が端的に表された
アルバムの(個人的には)ハイライト・チューン。


DEICIDE - The Stench of Redemption ★★ (2007-05-31 21:44:00)

北欧ブラック・メタル勢も裸足で逃げ出す、筋金入りのアンチ・クライスト軍団DEICIDE、'06年発表の8thアルバム。
まるで地獄の底から響いて来るかのようなグレン・ベントンのデス声、無慈悲且つ高速で刻まれるリフに、
ブラスト・ビート炸裂させまくりのスティーヴ・アシェイムのDs・・・と、楽曲は何れも絵に描いたように邪悪極まりない
デス・メタル・チューンばかりなのだが、勢い任せで押し切るのではなく、リフやリズム、歌メロ(特にサビ部分)に
ベテランらしくきっちりと強力なフックが仕掛けられているので、単調さとか、どの曲も全部同じに聴こえて
途中で飽きるといった、この手のバンドにありがちな弱点の類は一切ない。
そして何より本作の白眉は、今回から新たにバンドに加わった名手ラルフ・サントーラのG。元々、DEATHやICED EARTHの
ツアーに同行したりと、フロリダのデス/スラッシュ系バンドと強い繋がりを持つ人物ゆえ、DEICIDEへの加入も
それ程の驚きではなかったものの、とにかく華麗にしてメロディック、時に東洋的なフィーリングを濃厚に発散する
Gプレイは十分に驚異的。⑧のGソロなんて殆ど演歌(もしくは“巨人の星"のテーマ)が入っているような・・・。
ブルータルな曲調と見事なまでに美醜の対比を描き出す①⑨、ジャック・オーウェン(この人も逸材Gだ)との
劇的なツイン・リードGが思わずガッツポーズ物の⑥、そして本作のハイライトたる、イーヴルにしてドラマチック、
それでいてキャッチーさまで備えた名曲④のカッコ良さと来たら、筆舌尽くし難い程。
DEICIDEファンのみならず、普段はデス・メタルに興味を持たないメタラー(俺です)をも唸らせる強力な完成度を誇る傑作。


DEATH - The Sound of Perseverance ★★ (2007-05-28 21:36:00)

基本的にDEATHのアルバムにハズレはないと考えているんだけれども、その中にあって参加メンバーの顔触れ、
作品の完成度共に最も地味と言わざるを得ないのが、チャック・シュルデナーの夭折により、
奇しくもDEATHのラスト作となってしまった、この'98年発表の7thアルバムだろうか。
ここ数作において、バンドの推進剤の役割を担って来ていたジーン・ホグラン(Ds)の離脱により、
一層の長尺化(6分を越える物が半数以上を占める)、変拍子の多用による複雑化の進んだ楽曲のテンションを
維持しきれていない等、その理由は幾つか考えられるが、やはり最大の原因は、ラストを締める
JUDAS PRIESTの代表曲のカヴァー⑨の存在ではなかろうか。ぶっちゃけ、このカヴァー曲の出来が余りに良過ぎるせいで、
本編の印象が完全に霞んでしまっているような・・・。上手過ぎるカヴァーってのも考えもんですなぁ。
とは言え、その辺を踏まえた上でジックリと聴き込んでみれば、ストップ&ゴーを繰り返しながら
ドラマチックに盛り上がっていく③や、チャックの表現力豊かなGプレイの妙技が堪能できるインスト曲⑥、
引っ掛かるようにして劇的に疾走するスラッシュ・チューン⑦等、如何にもDEATHらしい名曲も多数収録されていて、
並みのスラッシュ・バンドじゃ逆立ちしたって敵わないハイクオリティに本作を仕上げてみせる手腕は、
流石はDEATH(チャック)なのであった。


DEATH - Symbolic ★★ (2007-05-28 21:14:00)

前2作に比べると少々地味な面子で製作、'94年に発表された6thアルバム。
とはいえ、作品の完成度には微塵の揺るぎもなし。チャック・シュルデナーが賢明だったのは、
前作『INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS』が、豪腕プレイヤー達が好き勝手に暴れまくった結果、極上のスリルと
カタルシスが生み出されていたのに対し、面子が地味な本作では同じ方法論は選択せずに、アンサンブル重視の作風に
切り替えた点。そのため、スリルやテンションの高さでは『INDIVIDUAL~』に一歩譲るものの、かっちりと
まとめ上げられた楽曲自体の完成度の高さ、分けても明快さや即効性といった、キャッチーな魅力にかけては本作の方が上。
チャックのGプレイも過去最高とも思える冴えを見せ、ソロは基より劇的且つメロディアスな
リード・プレイの素晴しさにも瞠目させられること必至。
また、前作から引き続いて参加のジーン・ホグランの存在感が益々強まっているのも本作の特徴の1つで、
MORRI SOUNDスタジオのオーナー、ジム・モリスが手掛けたエッジの効いたサウンド・プロダクションのもと、
ジーンのDsが地響きを立てて突っ走った時の破壊力と爽快感ときたら、強烈極まりない。
特に、激烈な高速スラッシュ・チューン①、劇的に疾走する⑤、本編随一のドラマ性を誇る⑥、ブルータルな曲調の中で閃く
アコギにゾクゾクさせられる⑦等、静と動、緩急、美醜を併せ持った楽曲群のクオリティは圧巻だ。
個人的には、DEATHのアルバムでは本作が一番好きかな。


ICED EARTH - The Glorious Burden ★★★ (2007-05-26 23:30:00)

マイナー臭の発生源だった(そしてそれこそが最大の魅力だった)マシュー・バーロウ(Vo)が抜け、後任に元JUDAS PRIESTの肩書きを持つティム“リッパー”オーウェンズを迎えた事で、全体的にグッと垢抜けて、メジャー・アクトとしての貫禄が感じられるようになった'04年発表の7thアルバム。
「戦争」をテーマに掲げたコンセプト作、更に南北戦争の天王山、所謂「ゲティスバーグの戦い」を20分間に亘って壮絶に、ドラマティックに、エモーショナルに綴ったジョン・シェイファー渾身の大作組曲⑨~⑪を含む、パワー/メロディ/ドラマ性の三拍子揃った(傑作6th『HORROR SHOW』に勝るとも劣らない)ハイクオリティな内容を誇る本作については、既に多くの方が意見を述べていので、自分なんぞが今更付け加えることはもうなにもありません。
ただ1つ、本作にまつわる事で非常に残念だったのは、チケットを購入して楽しみに待っていた来日公演が直前で中止になってしまったこと。もし来日してくれれば、ジョン・シェイファーにティム・オーウェンズ、ラルフ・サントーラにボビー・ジャーゾンベクという、(個人的には)失禁モノの強力ラインナップでのライブが見られた筈だったのに・・・無念。


DEATH - Individual Thought Patterns ★★ (2007-05-26 22:10:00)

チャック・シュルデナー以下、アンディ・ラロック(G)、スティーブ・デジョルジオ(B)、
ジーン・ホグラン(Ds)という、名実共に過去最強の布陣で製作、'93年に発表された5thアルバム。
凶暴なデス/スラッシュ・メタルならではの攻撃性と、複雑な曲展開、そして美しいメロディの融合という、
3rd『SPIRITUAL HEALING』以降のプログレッシブなDEATH流メタルの最高到達地点とでも言うべき本作の
大きなセールス・ポイントは、ジーン・ホグラン&スティーブ・デジョルジオという、スラッシュ・メタル・シーン
屈指の豪腕リズム隊を得た事で、楽曲に初期の頃を彷彿とさせるスラッシーな疾走感が戻って来ている点。
また、美旋律メイカーの名にかけては、チャックに勝るとも劣らない実力者アンディのGプレイに刺激されたのか、
チャックのGソロも益々冴え渡り、アルバム全編に渡って激情を撒き散らしながら(メロディアスに)荒れ狂う。
一筋縄ではいかない複雑な曲展開を飲み込みつつも、全体を支配するのは激烈な疾走感という高速スラッシュ・チューン①、
イントロのツインGのハーモニー・パートからしてグイグイと惹き込まれる④、アルバムで最もメロディアスな仕上がりと言える、
静のアンディ/動のチャックという対比が見事な⑧といった楽曲は、そうした本作ならではの美点が最大級に発揮された名曲ではなかろうか。
ハッキリ言って「キャッチー」とは言い難い作風だし、取っ付き難さではDEATHのアルバム中でも1、2を争うが
だからこそハマッた時の快感は強力極まりない。本作をDEATHの最高傑作に挙げる人が多いのも納得の名盤だ。


PANTERA - Power Metal ★★ (2007-05-26 21:33:00)

今では無かった事になっている(?)、メジャー・デビュー以前の'88年に発表した4thアルバム。
フィル・アンセルモ(Vo)が加入して1発目の作品で、そのサウンドはHMシーンを一変させてしまった
5th『COWBOYS FROM HLL』以降とは大幅に異なっていて、実に正統派テイストの色濃い(まさにアルバム・タイトル通り)
JUDAS PRIEST直系のパワー・メタル。しかも、これがまた偉くカッコイイったらありゃしない。
フィルの歌唱は現在のような異様な迫力はないものの、微笑ましいぐらいロブ・ハルフォードへの憧れが滲み出た
メロディアスな歌声を聴かせてくれるし、ダイムバック・ダレル(この当時はダイヤモンド・ダレル/笑)のGも、
メロディを大切にした正統派スタイルだし、ヴィニー・ポールのドラミングはこの頃から既に
歯切れ良くタイト極まりないしで、メタル史における知名度とか重要性はさて置いて、
個人的好みのみで物を言うなら、PANTERAの全アルバム中、本作が間違いなくマイ・ベスト。
特に、力強く勇壮な①、スピーディなアルバム表題曲②、Keyを隠し味にしたメロウでキャッチーな③、
劇的なミドル・チューン⑧、ダレルがVoを取るスピード・チューン⑨といった楽曲は強力だ。
若気の至り感炸裂しまくりのメンバーのルックスとか、キラキラした楽曲のアレンジ(主に③)とか、
3rdアルバム以降のマッチョで強面なイメージとのギャップが強烈過ぎて、聴いてるとどうしても
「ぶふっ」と笑ってしまう場面もなくはないけど、ともあれ、本作が優れたヘヴィ・メタル・アルバムなのは疑いようが無い。


SAVAGE GRACE - After the Fall from Grace ★★ (2007-05-26 21:14:00)

フロリダ出身の4人組で、後にAGENT STEELに参加するマーク・マーシャル(G)が在籍していた事でも知られる
スピード・メタル・バンド、'86年発表の2ndアルバム。
ABATTOIRにEVILDEADにHOLY TERRORと、AGENT STEEL人脈に連なるパワー/スラッシュ系バンドには優れた存在が多いが、
このSAVAGE GRACEも間違いなくその1つ。音楽性は、ハイトーンVoとツインGを活かして劇的に疾走しまくる
JUDAS PRIESTタイプ・・・というかAGENT STEELタイプ。ただ、あちらよりも更にメロディが前面に押し出されているので、
時にジャーマン・メロディック・パワーメタル風に聴こえる場面も多々あり、Voの歌唱もハイトーン主体とは言え
ジョン・サイリース程クドくないので、かなり聴き易い印象。ただ、リーダーのマイケル・ローグ氏がGと兼任する
このVo、前任者に比べるとかなり音程が怪しい。つーか、ぶっちゃけ音痴だ。
それでも、スピード/メロディ/ドラマ性と三拍子揃った収録曲は非常に強力で、特に、序曲の①に導かれて疾走を開始する
②は、起承転結が完璧に決まった、これ1曲でアルバム1枚を聴き通したかのような満足感が得られる超名曲。
また、謎の東洋人メンバー、B.EAST(日章旗に「神風」ハチマキが目に眩しい)が手掛けた、
よりスラッシュ・メタル色が強く出た④⑥のような曲もカッコイイ。
とにかくアルバム全編疾走しまくりで、ラストをメロウに締める⑨まで捨て曲なし。
AGENT STEELやABATTOIRファンなら一聴の価値がある名盤だ。


DEATH - Spiritual Healing ★★ (2007-05-23 22:39:00)

MANTAS時代からの付き合いだったリック・ロッツ(G)が脱退、後任に凄腕Gギタリストとして知られる
ジェイムズ・マーフィを迎えて、'90年に発表した3rdアルバム。
プロデューサーにスコット・バーンズ、レコーディングにMORRI SOUNDスタジオというお馴染みの布陣で作り上げられた
本作は、その音作りといい、スピードよりも展開重視で畳み掛けてくる楽曲といい、大多数のファンが
DEATHの名前を聞いて想起するサウンドが、初めて聴かれるようになったアルバムでもある。
全体的にアングラ臭が薄まり、これまでになく垢抜けた雰囲気が漂っているのが特徴で
(あと、ヘヴィ・パートの引き摺るような重苦しさ)、これは新加入のジェイムズ・マーフィの弾く流麗なGソロが、
非常に正統派ヘヴィ・メタル・テイストが濃く、普遍的な魅力を備えているせいもあるのかな?
チャック・シュルデナーの美しくも壊れてる(狂ってる)Gソロと良い感じに対比を為しているだけでなく、
アルバム自体の取っ付き易さも高めてくれている印象。本作が日本デビュー作になったのも納得の仕上がりだ。
特に、疾走するGソロに耳奪われる②や、7分以上に及ぶアルバム・タイトル・トラック⑤、
チャックとジェイムズのハイテンションなGバトルが聴ける⑥辺りは、本作ならではの名曲じゃないかと。
尤も、次作『HUMAN』以降に比べるとリズム・パートはかなりシンプルなので、相変わらず
スラッシュ・メタル濃度は高め。スラッシャーも安心な、過渡期的な魅力も備えた1枚。


DEATH - Leprosy ★★ (2007-05-22 22:22:00)

DEATH、'88年発表の2ndアルバムにして、初期の名作。
同郷のデス・メタル・バンドMASSACREのメンバーが全面的に参加している事から察しの付く通り、
本作で聴く事ができるのは、デビュー作『SCREAM BLOODY GORE』の作風を順当に発展させた
ストレートなスラッシュ・サウンドなわけだが、但し、そのカッコ良さは『SCREAM~』の比ではない。
デス・メタルの聖地MORRI SOUNDスタジオでレコーディングされただけあって、サウンド・プロダクションが飛躍的に充実。
音にズッシリとしたヘヴィネスが宿った事で、リフ&リズムは禍々しさと重さを増し、Voは狂気に、
Gソロは美醜を兼ね備えた華麗さに一層の磨きを掛け、楽曲にも緩急が持ち込まれた事でアルバム全体のダイナミズムが向上。
後年のDEATH独自のスタイルへの萌芽が、確かに感じられる作風に仕上がっている。
特に①⑤⑥の3曲は、スラッシーな疾走パートを基本としつつも、ダイナミックな曲展開でテンションを高めて、
狂い咲くチャック・シュルデナーの劇的極まりないGソロでそれを解き放つという、まさにDEATHの必勝パターンが堪能できる名曲。
その他にも捨て曲は見当たらないし、何より、チャックの絶品のGプレイが楽曲のクオリティを力ずくで数段引き上げている。
初期スラッシュ・メタル路線の集大成的作品なので、DEATH未体験でスピード命!のスラッシャーは、まず本作から入るのが宜しいかと。


TANKARD - Chemical Invasion ★★ (2007-05-21 21:32:00)

「ドイツ人=真面目」の図式を覆した(?)、大酒飲みの酔っ払い軍団ことTANKARD、'87年発表の2ndアルバム。
デビュー作『ZOMBIE ATTACK』は、パンキッシュで弾けるような快活さが気持ちの良いアルバムだったが、
それに比べると本作は、スピード感2割増、エッジの立ったリフの刻みは更なる細かさと鋭さを得て、歌メロも
より直線的でシャウト主体のアグレッシブなスタイルへ・・・と、前作から一層スラッシュ・メタル色を強めた作風。
特に、イントロのSEに続いて激烈に疾走を開始する①や、冒頭の流麗なGソロが印象的な②、個人的には本編中で
最も愛して止まない、攻撃性とノリの良さが同居する③という、冒頭からの高速スラッシュ・チューン3連発は、
このアルバムの作風を象徴するかのような名曲揃い。
相変わらず“PUKE"だの“ALCOHOL"(USハードコア・バンドGANG GREENのカヴァー)だの、
“FOR THE THOUSAND BEERS"だのと、実も蓋もないタイトル(と歌詞)の曲も多いし、⑤に至っては
アコギを交えてドラマチックに盛り上がっていく異色のインスト・ナンバーだったりするのだが、
後のアルコール濃度高めでメートル上がりっ放しの作品群に比べると、楽曲自体は遥かに
硬派でスラッシーな仕上がりなので、「TANKARDってアルバム数が多過ぎて、どれから聴いていいか分からない」
というスラッシャーにも、TANKARD入門編としてお薦めできる名作。


BATHORY - Under the Sign of the Black Mark - Woman of Dark Desires ★★ (2007-05-18 23:42:35)

アルバム最速チューンの座は“MASSACRE"に譲るものの、
チープな音質の下、禍々しく疾走するリフ&リズムといい、
そこに絡みつくシンセのヒンヤリとした音色といい、
耳をつんざくヒステリックなGソロといい、
クォーソンの邪悪な絶叫Voといい、
まさに「元祖ブラック・メタル」な名曲。


MEGADETH - United Abominations - Washington Is Next! ★★★ (2007-05-18 23:23:32)

キャッチー且つ憂いを帯びたリフ&メロディ、
デイヴ・ムスティンが歌う絶品の歌メロと
正統派へヴィ・メタル色の強い楽曲ながら、
それでいてMEGADETHらしさも失っていないという
まさに文句の付けようのない名曲。
未だにこのレベルの楽曲を作り得るといは・・・
恐るべしムスティン。


MEGADETH - United Abominations ★★ (2007-05-18 23:14:00)

「デイヴ・ムスティン=MEGADETH」という図式を定着させた傑作『THE SYSTEM HAS FAILED』から3年ぶりに発表された
待望の11thアルバムで、緊迫感に満ちたアグレッシブな楽曲からメロディアスなナンバーまでズラリ揃った、
ファンの期待に見事に応えた内容に仕上がっているんじゃないかな、と。
特に、叙情的なイントロを経て、これぞMEGADETH!たる鋭角的なリフが刻まれるダイナミックな①は、このアルバムの作風を
象徴するかのような名曲だし、キャッチー且つ憂いを帯びたリフ&メロディが疾走する(ムスティンの歌メロが絶品!)
本編のハイライト・チューン②、静と動の対比がドラマチック極まりない③という、頭3曲の完成度の高さは特筆モノ。
この3連打が余りにも強烈過ぎるため、やや似通ったテンポの楽曲が続く中盤の印象が霞んでしまったのは痛し痒しだが、
その中盤も、華麗なるツインGが聴き応え十分の④(この曲に限らず、ムスティン&グレン・ドローヴァーのGコンビは
アルバム全編で煽情的なメロディを紡ぎ出している)、体が勝手に動き出すグルーヴを備えた⑦、元曲に女性Voを加え、
更に強力に作り直した⑧等、個々の楽曲の出来は決して悪くないし、また、終盤に配置された
スラッシーな疾走曲⑩⑪で後半大きく盛り返すので、聴き終えた後の満腹感はかなり大きい。
良くも悪くも地に足の着いた安定した作風であり、今のMEGADETHに往年のスラッシュ・メタル的なスリルは
求めるべくもないが、それにしてもこの完成度の高さは、流石ムスティン。


VENOM - Calm Before the Storm - Under the Spell ★★ (2007-05-18 22:56:25)

クロノスのダミ声吐き捨てVoは相変わらずながら、
シャープに疾走するリフといい、劇的なツインGといい、
コーラスの入れ方といい、正統派へヴィ・メタリックな
雰囲気を濃厚に漂わせていて、
やっぱりVENOMも英国のバンドだったんだな~と、
妙に納得してしまう高速スラッシュ・ナンバー。


BATHORY - Under the Sign of the Black Mark ★★ (2007-05-16 21:40:00)

クォーソン率いる(・・・って率いるも何も正式メンバーは彼1人きりなんだけど)
スウェーデンのカルト・スラッシャー、'86年発表の3rdアルバム。
BATHORYと言えば、北欧地下世界音楽の帝王、もしくは宅録引き篭もりメタルの元祖とか、
BURRN!!誌のレビューで1点を獲得したとか、呪縛霊も逃げ出す密教のBGM(笑)だとか、堅気のメタル・ファンを
ドン引きさせる評判ばかりが話題になりがちのバンドだが、少なくとも本作に関して言えば、
同じように「ブラック・メタルの始祖」として崇められる初期VENOMやCELTIC FROSTの作品群よりも
遥かに明快な作風で取っ付き易く、且つ内容的にも非常に優れモノの逸品。
低音が全く効いていない、ペラペラでスカスカなチープ極まりないサウンド・プロダクションは相変わらずながら、
このボヤ~と霧のように不明瞭な音像が、逆に「草木も枯れ果てた不毛の荒野」的雰囲気を演出している
(ような気がしなくもない)し、何より、シンセサイザーや緩急の導入で、一種、宗教的な荘厳さすら
感じさせるようになった楽曲の数々が非常に素晴しい。
特に、ヒンヤリとしたシンセの音色を纏って、クォーソンの邪悪な絶叫Voとササクレ立ったリフが激走する様が
まさにプリミティブなブラック・メタルそのものな③('86年の時点でこんな音楽を演っていたとは驚かされる)や、
葬送曲風の厳粛なインスト・パートと、クォーソンの「聴かせる」Gソロを備えたドラマチックな④、寒々としたリフ・ワークを
フィーチュアした、荘厳な空気漂うスロー・チューン⑥といった楽曲は、BATHORYがいよいよ「ブラック・メタルの元祖」と
謳われるに相応しい、本格派としての貫禄を身に付け始めた事を物語る名曲に仕上がっている。
スピード・チューンとミドル/スロー・チューンの配分も良く、4th『BLOOD, FIRE, DEATH』と並んで、BATHORY入門編に最適の1枚。


VENOM - Calm Before the Storm ★★ (2007-05-15 22:08:00)

マンタス(G)が脱退、その後任にマイク・ヒッキーとジム・クレアを迎え入れ、
新たに4人編成に生まれ変わったVENOMが、'87年に発表した5thアルバム。
ツインGを活かして楽曲のドラマ性/整合性を強化、ロックンロール色の一掃と、思い切った
サウンド・スタイルの刷新が奏功して、前作『POSSESSED』の煮詰まり感を吹き飛ばす快作に仕上がった本作は、
①のイントロ部分の分厚く鋭角的なGリフの刻みからしてもう「これがあのVENOM?」というぐらいカッコイイ。
続くアップテンポの②もドラマチックなツイン・リード・パートを備えているし、憂いを帯びたメロディアスな
リフが疾走する⑤、中期IRON MAIDENを彷彿とさせる⑧、JUDAS PRIESTばりの劇的なリフが炸裂する⑩に至っては、
クロノスのVoさえ普通なら、正統派ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルとして立派に通用するクオリティ。
ストレートな高速スラッシュ・チューン③⑥⑦⑨にしても、初期のダーティでクレイジーなノリは控えめで、
それよりも(良い意味で)型に嵌った疾走感が前面に押し出されて、非常にタイト。
そして何より、スラッシーなスピード感とヘヴィ・メタリックなドラマ性を併せ持つ④の素晴しさと来たら!
VENOMに興味のないメタル・ファンをも振り返らせる魅力を秘めた名曲ではなかろうか。
また、これらの曲ではGコンビの良い仕事っぷりが光り、特にマイク・ヒッキーは、再々結成VENOMが発表した
11thアルバム『METAL BLACK』にも参加して流麗なGプレイを披露しているわけだが、本作における
Gソロの煽情度の高さは、それをも軽く上回っている事を付け加えておきたい。
所謂「VENOMらしさ」は殆ど感じられない内容ながら、個人的にはクロノス在籍時代のVEMOMの最高傑作は本作である!
とコッソリと主張しておきます。


MACE - The Evil in Good ★★ (2007-05-14 22:10:00)

相変わらずハードコア/パンクからの影響を色濃く残した作風ながらも、アグレッシブなGリフの刻み具合や、
ゴリゴリと良く動き回るB、歌い回しに歯切れの良さが増した喚き型Vo、演奏能力の向上に伴い、
より緩急が取り入れられた楽曲etc・・・と、デビュー作『PROCESS OF ELIMINATION』に比べ、
更にスラッシュ・メタル色が強まった印象を受ける、'88年発表の2ndアルバム。
その最大の成果が、後半のドラマチックな盛り上がりっぷりが堪らない(タイトルからしてIRON MAIDENぽい?)③や、
叙情的な導入部から一転して激烈な疾走を開始する⑧、そして何より、泣きまくりのイントロを経て
スリリングなGソロをフィーチュアしながら荒れ狂うMACE屈指の名曲⑦といった、スラッシュ・ソングの数々。
また、自分が持ってるのは板起こしの再発盤なので、当然、レコードのノイズもそのまま収録されてしまっているのだが、
その辺を差し引いても、しっかりとサウンド・プロダクションの向上が確認出来るのも○。
ただ、妙に大人しめの音作りのせいか、前作の強烈に割れ歪んでノイジーなサウンドの迫力が薄れてしまった点は痛し痒し。
とは言え、MACE入門編に相応しいのは1stアルバムより本作なのは間違いない。


MACE - Process of Elimination ★★ (2007-05-14 21:58:00)

アメリカはワシントン出身の4人組スラッシュ・メタル・バンド、'85年発表の1stアルバム。
収録曲の大半が2~3分台、しかも「刻む」と言うよりは「掻き鳴らす」といった感じのノイジーなGリフ、
緩急もへったくれもない性急なリズム、メロディを一切無視して喚き倒すVoとが、一丸となって突撃を繰り返す様は、
スラッシュ・メタルと言うよりもハードコア/パンク風味が濃厚で、実際、OPチューンの①はもろそんなノリの1曲。
続く②も前半はそんな感じで、漫然と聴き流しながら「あー、こりゃ買って失敗したかなー」等と考えていたら、
この曲が中盤で突如転調。後半は湿り気を帯びたメロディとアグレッシブなGソロが疾走する
スラッシュ・チューンに早変わりしたもんだから驚いた。(前半と後半で殆ど別の曲のノリだ)
また、④もインスト・パートの前半と歌入りの後半に分かれた、そこはかとなくドラマ性を感じさせる仕上がりだし、
本編のハイライトと言うべき高速スラッシュ・チューンの名曲⑤、ノリはパンキッシュだが、
Gソロは非常にメロディックな⑥、ヘヴィ・メタリックなリフがハイテンションで疾走する⑦、
イントロにアコギを配したダイナミックな⑧、バンドのテーマ・ソングでもある本編最速の⑨・・・と、
聴き終えてみれば、本作は「パンクとメタル双方の良い所を上手く取り込んだスラッシュ・メタル・アルバムの力作」
との結論に落ち着く。少なくとも、ここのGが相当なメタル野郎なのは間違いない。
強烈に割れ歪んだノイズ混じりのサウンド・プロダクションはかなり劣悪だが、その一方で異様な迫力に満ち溢れていて、
少なくともこのバンドの音楽性には非常にマッチしているので、音質の悪さは然程気にならないかな。


VENOM - Temples of Ice - Even in Heaven ★★ (2007-05-14 21:25:46)

アコギのイントロをブチ破ってシャープなリフが疾走を開始。
中盤にはメロウなアコギ・パートを設けて、その後は再疾走。
印象的なオブリガートを聴かせるBも非常に良い仕事をしている
『TEMPLES OF ICE』のハイライト・チューン。


FORCED ENTRY - As Above, So Below ★★ (2007-05-12 00:54:00)

アメリカはシアトル出身で、BがVoも兼任する3人組スラッシュ・メタル・バンド、'91年発表の2ndアルバム。
トリオ編成とは思えない分厚いサウンド、高度な演奏技術に裏打ちされた、テクニカルでプログレッシブな曲展開・・・と、
デビュー作『UNCERTAIN FUTURE』の作風を順当に受け継いだ作風ながら(Gが1曲だけリードVoを取っているのも1stと同じ)
サウンド・プロダクションが向上して音が図太くなった分、疾走パートとミドル・パートのコントラストが
より明確になって、曲展開がかなり整理された事と併せ、随分と取っ付き易くなったとの印象を受ける。
それにしても、ここのBはやはり素晴しい。①を筆頭にスラッシーなスピード・チューンでは猛烈にのたうったかと思えば、
⑧や⑨のインスト・パートでは、曲の持つ叙情性を増幅させるメロウなBプレイを聴かせたり・・・と、非常に芸達者。
ジェイソン・ニューステッドが気に入るのも分かるなぁ。前作の弱点だった彼が兼任するVoも、
相変わらず音程無視のわめき型ながら、声に太さが出て来たので迫力は増している。
前作同様キャッチーさとは無縁の音楽性だが、この捉え所のなさは如何にもシアトルのバンド的とも言えなくもない。
“MORGULON"のようなドラマチック路線の楽曲が姿を消してしまったのは痛過ぎるけどね。


ACID - Maniac ★★ (2007-05-10 21:11:00)

'83年1月にセルフ・タイトル・アルバムでデビューを飾ったACIDが、同年の11月に早くも発表した2ndアルバム。
RAINBOWの名曲“SPOTLIGHT KIDS"を思わせる疾走チューン①で幕を開ける本作は、荒削りだったデビュー作に比べて
サウンド・プロダクションが格段に充実。リフやメロディも一層練り込まれた事で、全体的に
かなり洗練された、聴き易いヘヴィ・メタル・アルバムに仕上がっている。
黎明期のスラッシュ・メタル的な、破天荒な勢いが薄れてしまったのは残念だが、①④⑥⑧と
本編の半数を占めるスピード・チューンは健在だし、バラ付きなく良い曲が揃っている分、
トータルの完成度では前作を上回るんじゃなかろうか。そして何より、それらの楽曲を歌うバンドの
紅一点ケイト(Vo)の、メタル・クイーン時代の浜田麻里を彷彿とさせる歌唱が素晴しいったらありゃしない。
また、MAXIM METAL RECORDから発売されたリイシュー盤には、'83年12月発表のシングル音源3曲が
ボーナス・トラックとして追加収録されているのだが、本編に比べてこちらはかなりパワー/スラッシュ・メタル色が
濃厚なので、スラッシャーにはこちら(再発盤)がお薦め。特に、MANOWARばりの大仰な曲展開が魅力の⑪は、
とてもオマケ収録とは思えぬ存在感を放つドラマチックな名曲だ。
尚、バンドはこの後、更にポップ方向に舵を切った3rd『ENGINE BEAST』(未聴)を発表して解散してしまった。


SACRIFICE (CANADA) - Forward to Termination ★★ (2007-05-09 22:17:00)

カナダはトロント出身の4人組スラッシャー、'87年発表の2ndアルバム。
3rd『SOLDIERS OF MISFORTUNE』や、4th『APOCALYPSE INSIDE』では、スラッシーな疾走感はそのままに、
ドラマチックだったりメロディアスだったりキャッチーだったりと、意欲的に作風を広げに
掛かっていた彼らだが、ここで聴く事が出来るのは実にオーソドックスなスラッシュ・メタル。
全くヒネリのない直球勝負のサウンドだが、しかし本作はそこが何よりも素晴しい。ひたすら2ビートがスタスタと疾走し、
鋭利なリフがマシンガンの如く刻まれ、その上でメロディを一切無視したVoがシャウトしまくるという、
スラッシュ・メタルを構成する基本要素一つ一つを丁寧に磨き上げたかのような楽曲の数々は、問答無用のカッコ良さ。
中でも、楽曲のスピード感を倍増させるタイト極まりないDsは、このバンドの大きな武器で、
こいつが思いっきり突っ走った時の爽快感は、音質のイマイチさを補って遥かに余りある気持ち良さ。
特に、掴みにはもって来いのスピード・チューン②(①は短いイントロ)、ダイナミックな曲展開が楽しめる大作⑤、
流麗なGソロを伴ってハイテンションで疾走する⑩といった楽曲は、全スラッシャー必聴じゃないかと。
何も足さない、何も引かない、まるで某サントリー・ウィスキーのようなピュア・スラッシュ・メタルの力作。


VENOM - Temples of Ice ★★★ (2007-05-08 22:10:00)

VENOMと言えば、やっぱりトリオ時代よりもツインGの4人編成時代、それもクロノス脱退後の作品が最高っスよ!という軟弱スラッシャー(俺です)が愛して止まない、'91年発表の7thアルバム。
前作『PRIME EVIL』は、従来のスラッシュ・メタル路線にVENOMらしからぬ整合性やドラマ性といった要素を持ち込んだ意欲作だったが、今回もその作風を継承。全体的に更に英国パワー・メタル路線へと接近した内容に仕上がっている。
勿論、相変わらずデモリションマンのVoはダーティな吐き捨てスタイルだし、⑥⑦⑧のような荒々しいスラッシュ・チューンもしっかりと収録されているが、それ以上に強烈なインパクトを放つのが、曲調はノリノリでもインスト・パートは劇的な①、全編を貫く叙情メロディとVoの熱唱(熱シャウト?)が映える④、スラッシーな疾走感と、大仰な曲展開がガッチリと組み合わさった⑩、そして、切れ味鋭いリフ&リズムの上に雄々しいメロディが乗っかり、アコギやメロウなBソロまで導入してシャープに疾走する名曲②といった、ドラマチック路線の楽曲の数々。
昨今のVENOM再評価が、主にクロノスのカリスマ性の高さに集中している事もあって、すっかり影が薄い・・・というか完全に忘れ去られてしまっている本作だが(まるでトーマス・ローゼンメルケル在籍時代のDESTRUCTIONのよう)、決して質は低くない。というか、個人的には初期の数作より遥かに愛聴している作品です。
「お行儀の良いVENOM」という形容詞に拒否反応が出ないスラッシャー限定でお薦め。


EXHORDER - The Law ★★ (2007-05-08 06:17:00)

デビュー作『SLAUGHTER IN THE VATICAN』は、硬質且つスピーディなスラッシュ・メタル・アルバムの力作だったが、
この'92年発表の2ndは、スラッシーな疾走感よりも圧し掛かって来るかのようなヘヴィネスの演出に
重きを置いた内容に仕上がっている。
とにかく今回は、徹底的にドンシャリ感が強調されたサウンド・プロダクションが圧巻。生々しいドラム・サウンドは
バスドラの重さが半端じゃないし(ちょっと『...AND JUSTICE FOR ALL』風?)、何より、
グルーヴィなノリを飲み込んで、ジャリジャリと分厚く刻まれるヘヴィ・リフの迫力は圧倒的。
そうした音像に従来の激烈な疾走感が加味された、強力な「掴み」の役割を果たすOPチューン①、
冒頭のへヴィ・パートがその後のスピード感を倍化させる②、インスト曲ながら、本編随一の
ストレートなスラッシュ・チューン⑥といった楽曲はメチャ強力。また、⑦のようにアコギを
単なる装飾以上に活用してみたり、④ではラップ風にアジるVoを導入してみたりと、アレンジに
これまで以上の練り込み(実験色)が伺えるのも、本作の特徴の1つか。
収録曲の出来・不出来にバラつきが見られるのは気になるし、ストレートなスラッシュ・アルバムを
求める向きには評価の分かれそうな作風だが、クオリティが高いのは疑いようがない。


DEMOLITION HAMMER - Epidemic of Violence ★★ (2007-05-06 21:57:00)

MEATLOAFやSEPULTURAのアルバムを手掛けた事で知られる、マイケル・ウィーランのジャケット・アートワークが
目印の、アメリカはニューヨーク出身の4人組スラッシャー、'92年発表の2ndアルバム。
'92年と言えば、既に本格的にスラッシュ・メタル冬の時代へと突入し始めていた時期だが、
本作はそんなタイミングに発表された作品とはとても思えない、デス声の一歩手前で踏み止まって
力強いシャウトを響かせるVoといい、容赦なく刻まれるザクザクのGリフといい、なかなかに耳を惹くメロディを
紡ぎ出すツインGといい、緩急を飲み込みタイト且つダイナミックなリズムを叩き出すリズム隊といい、
痛快なまでに疾走しまくりの、ストロングで高純度なスラッシュ・メタル・アルバムに仕上がっている。
特に、硬派な疾走感がまさにNY風味のOPチューン①、後半に印象的なツイン・リード・パートを配した③、
個人的にはアルバムのハイライト・チューンに位置付けている、歯切れの良い⑦に始まり、
ラスト・ナンバー⑨まで一気に畳み掛ける、構成のカッコ良さは最高じゃないですか!と。
正統派のスラッシュ・メタルが時代遅れの遺物と見做され始め、かといって再評価の機運が高まるには
タイミングが早過ぎた、「'92年」という微妙な時期に発表されてしまった事が何よりも本作の不幸だった、
スラッシュ・メタル・アルバムの逸品。


THE GREAT KAT - Bloody Vivaldi ★★ (2007-05-06 15:24:00)

正常な神経の持ち主なら、レジへ持って行くことを躊躇せずにはいられない、負のオーラ撒き散らしまくりの
ゴアゴアなジャケット・アートワーク(血塗れで絶叫するTHE GREAT KAT様)が目印の、'98年発表の4曲入りEP。
女性Voと、ジュリアード卒の腕前を持つG、そしてバイオリンをフィーチュアして激烈に疾走しまくるスラッシュ・メタル・・・
と聞くと、さぞかし芝居がかった格調高いドラマチックなサウンドを想像されるかもしれないが、GREAT KAT様は
そんな常人の予想の遥か斜め上を行く、芝居は芝居でも下北沢の小劇場で公演されてる、チープでビザールな
アングラ芝居の如きイカレた・・・もとい、イカしたスラッシュ・サウンドで我々の度肝を抜いてくれます。
EPのタイトル通り、ヴィヴァルディの“四季"と“カルメン幻想曲"をスラッシュ・メタル風にアレンジした、
バイオリンの音色が良い感じのスパイスになっているインスト・ナンバー①④は兎も角、
歌入りの②③に於かれましては、ファン(奴隷)なら狂喜乱舞、そうでないならゴミ箱行確定と、
評価がハッキリと分かれる(圧倒的に後者が優勢)THE GREAT KAT節炸裂しまくりの1作に仕上がっております。


EXHORDER - Slaughter in the Vatican ★★ (2007-05-05 22:01:00)

アメリカはニューオリンズ出身の5人組突撃スラッシャー(但しBはヘルプ)、'90年発表の1stアルバム。
プロデューサーに名手スコット・バーンズ、レコーディング場所はデス・メタルの聖地MORRIサウンド・スタジオという
鉄壁の布陣からも明らかな通り、その作風は(メンバーの風貌同様)非常にバイオレント。
元々、デスラッシャーの元祖的存在として知られているバンドだけに、ドスの効いたハイテンションVo、
重厚且つパワフルなリフ&リズムが隙間なく音の壁を作り上げ、一丸となって押し込んでくる様は圧倒的迫力を誇る。
中でも、スリリングなGソロが疾走感を倍増させる①、その勢いを受け継いで、つんのめり気味に突進する②、
タモリ倶楽部ファンからは空耳ソングとしても親しまれている(?)ダイナミックな③、
バンドのテーマ・ソングと言うべき④という、頭4曲の猛烈な畳み掛けには「ぐぅ」の音も出ないほど叩きのめされる。
その要となるのが、硬質且つタイトなプレイでサウンドの中心を固めるDsの存在で、こいつが思いっきり
突っ走った時の爽快さは筆舌尽くし難い。謹んで「まるでジーン・ホグラン」の称号を贈りたい。
後半以降も、ラストを激烈に締めるアルバム表題曲⑧までテンションは全く下がることなく一気に走り抜け、
全8曲、人によってはこの強烈な音圧は疲労感を覚えかねないが、初期DARK ANGEL好き、
分けても2nd『DARKNESS DESCENDS』好きのスラッシャーなら、本作はマスト・バイ。


AGNOSTIC FRONT - One Voice ★★ (2007-05-04 23:37:00)

「BURRN!!のレビューで高い評価を受けてたから」という実に単純な理由から購入した、'92年発表の4thアルバム。
Voのロジャー・ミレットが麻薬密売の罪(所持じゃなくて密売という辺りが如何にもこのバンドらしい)で逮捕され、活動停止状態に陥っていたバンドの出直し/再出発作でもあった作品。AGONISTIC FRONTと言えば、NYハードコア・シーンの首領的存在として知られているが、ここで聴けるサウンドはメロディよりもリズム重視で歌うVoこそハードコアちっくながら、重厚なリフといい、ズッシリとしたヘヴィネスを備えたリズムといい、それよりずっとスラッシュ・メタル寄りの印象が強い。
特にインスト③から繋がる、メロディアスなGソロをフィーチュアした疾走曲④なんて、歌さえまともなら
正統派へヴィ・メタルと言って通用するのでは?と思わされる仕上がり。その他にも、①⑤⑩といった楽曲を頂点に、問答無用のカッコ良さを誇る高速スラッシュ・チューンを多数収録。
筋金入りのファンからは、このメタリックな作風は不評だったようだが、個人的には本作は、「スラッシュ・メタル冬の時代にリリースされた質の高いスラッシュ・メタル・アルバム」として、当時、非常に楽しませて頂きました。


ACID - Acid - Woman at Last ★★ (2007-05-04 20:45:16)

1stアルバムの(個人的に)ハイライト・チューン。
ヘヴィに幕を開け、徐々にスピードを上げながら
盛り上がっていくという、3分44秒の中に起承転結が
きっちり織り込まれた、ドラマチックな名曲。


ACID - Acid - Acid ★★ (2007-05-04 20:40:49)

1stアルバムのOPを飾る、バンドのテーマ・ソング。
ギャンギャンと刻まれる騒々しいリフに、
スピーディに疾走するリズムは、丁度、NWOBHMと
スラッシュ・メタルの中間に位置する感じ。
荒々しくも歌心を失わないケイトのVoが素晴しい。


ACID - Acid ★★ (2007-05-04 20:31:00)

ベルギアン・メタルの草分け的存在、女性Voを擁する5人組HMバンド、ACIDの'83年発表の1stアルバム。
モコモコと不明瞭なサウンド・プロダクションは要改善だが、「VENOMやMERCYFUL FATEに対するベルギーからの返答」
と評されたそのダークでアグレッシブなサウンドは、前記2バンドの名前から想像されるほどの
オドロオドロしさは感じられないものの、アルバムOPを飾るバンドのテーマソング①、
その勢いを受け継ぐパワフルな②、起承転結の組み込まれたドラマチックな⑥、ラストを締める
本編最速ナンバー⑩といった楽曲を筆頭に、ギャンギャンと騒々しく刻まれるリフにスピーディに疾走するズムと、
まさにスラッシュ・メタル誕生前夜的なエネルギーに満ち溢れていて、非常にカッコイイ。
そして何より、このバンドを特別な存在にしているのが、女性Voケイトの存在。HMバンドの女性シンガーに
ありがちなドスを効かせまくった歌声ではなく、メロディを大切にして歌い上げるその歌唱は、
荒々しい楽曲と絶妙なミスマッチ感を演出していてナイス。あと、ルックスもイケてます。(ここ重要)
NWOBHMファンだけでなく、スラッシュ・メタル・ファンにも自信を持ってお薦め出来る1枚。


SHELL SHOCK - FIEL LARM ★★ (2007-05-03 18:46:00)

前作『PROTEST AND RESISTANCE』から目立ち始めたハードコア・テイストを更に大胆に導入、
より実験色を強めて'92年に発表された3rdアルバム。
全24曲の収録曲中、単なるSEから、ノイズ、カントリー、ジャズ、インダストリアルまで、
多彩な要素を飲み込んだインスト・ナンバーの数々が本編の大半を占める実験的な作風と、
楽曲の輪郭がハッキリしない轟然とした音作りが好きになれず、購入当時は2、3回聴いたきりで
売り払ってしまった覚えがあるのだが、数年後、改めて買い直して聴いてみたら、これが案外悪くなかった。
インスト・ナンバーへの印象の悪さは当時と大差ないのだけれども、それを抜きにして
②⑤⑦⑩⑰⑳(22)(23)といった硬質でアグレッシブなスピード・チューンのみを摘み食いしてみれば、
最早単純なスラッシュ・メタルを演っているわけではないにしろ、これまでのSHELL SHOCKの
作品同様、十分に質は高く楽しませてくれる。
特に、ドスの効いたVoとわめき型のVoが左右のチャンネルに振り分けられ、波状攻撃を仕掛けてくる
ツイン・ボーカル(時にトリプル・ボーカル)のカッコ良さは特筆モノ。
全体的にアバンギャルドな仕上がりなれど、メンバーのスキルの高さゆえ、付け焼刃な印象が全くないのも良い。


TURBO - Last Warrrior ★★ (2007-05-02 23:35:00)

ポーランドを代表する(今ではその座はVADERに取って代わられた感があるけど)ポズナニ出身の5人組HMバンド、
'88年発表の6thアルバム・・・というか、5thアルバム「OSTATNI WOJOWNIK」の英語リメイク版。
デビュー当時は、NWOBHMからの影響を感じさせる硬派なヘヴィ・メタルをプレイしていた彼らだが、作品を重ねる毎に
攻撃性を増大させるという通常とは逆のパターンを辿って、プロデューサーに名手ハリス・ジョーンズを
起用した本作では、遂に本格的にスラッシュ・メタルの領域へと足を踏み入れている。
ヒステリックなシャウトを多用するVoの歌唱は好き嫌いが分かれるところだが、チリチリと歪んだ音色で刻まれる
重厚なリフと、メロディックなツインGをフィーチュアして疾走する男臭くストロングな楽曲群は、
まさに「戦士の歌」といった趣きのアルバム表題曲①、叙情的なインスト・パートを経て
ドラマチックに盛り上がっていく本編のハイライト・チューン②、中盤にツインGの聴かせ所を設けつつ、
スラッシーに疾走する⑥等を筆頭に、これがなかなかにカッコイイ。
全体的にメロディにもう少しフックが欲しいとか、Dsにキレが足りないとか、気になる点も幾つかあるものの、
当時、ドイツ最大手のインディー・レーベル、NOISEから配給されたというのも納得のクオリティを備えた力作。


AGGRESSION - The Full Treatment - Rotten by Torture ★★ (2007-04-30 21:09:57)

2nd『THE FULL TREATMENT』の中にあっては、
比較的まともな(笑)スラッシュ・メタル・チューン。
ハードコア・スタイルのVoが歌う、キャッチーというのとは
ちょっと違うが、印象的なサビが非常にカッコイイ。


AGGRESSION - The Full Treatment ★★ (2007-04-30 19:58:00)

カナダはケベック出身の4人組スラッシャーが、'87年に発表した2ndアルバム。
かつては、あのNew Renaissance Recordsのコンピレーション・アルバムに楽曲を提供したりしていたらしいが、
チープなアルバム・ジャケットにチープなサウンド・プロダクション、終始がなり立てまくるハードコアなVo、
強引極まりない演奏&曲展開等、それも大いに納得の(笑)非常にダーティでノイジーなスラッシュ・メタルを聴かせてくれる。
兎に角、全パートがグシャグシャに絡まり合って、土砂崩れでも起こしたかのように突撃してくるサウンドは
圧倒的迫力を誇り、各楽器がてんでバラバラに自己主張しまくる④なんか、最早曲の輪郭すら定かじゃなくて空中分解寸前。
にも関わらずギリギリのラインで踏み止まって崩壊を免れているのは、彼らの演奏は例え強引ではあっても、
ヘタクソではないからか。特に、このアルバムの作風を象徴するかのような土砂崩れスラッシュ・メタルが堪能出来る①、
気合一発、印象的なリフが走り出す②、疾走パートが殆どノイズの様相を呈している③という、アルバム冒頭の3連発。
そしてブラスト・ビートが炸裂する本編最速の⑥や、ハイテンションなVoの歌メロが非常にカッコイイ⑦といった、
力ずくでがむしゃらに押し込んで来る高速スラッシュ・チューンの数々の迫力は圧巻。
完成度とか、メロディアスとか、キャッチーといった言葉とは無縁の内容ながらも、高い中毒性を有した
不思議な魅力に満ちた1枚。普通のスラッシュ・メタルじゃ物足りないぜ!という重症スラッシャーの貴方に。


RAZOR - Violent Restitution - Edge of the Razor ★★★ (2007-04-29 01:27:33)

緩急の効いた高速スラッシュ・チューン。
冒頭のインスト・パートにおけるGリフの刻みが強烈極まりなく、
まさに「カミソリの刃」の如し。耳から血が出るかと思った。


RAZOR - Violent Restitution ★★ (2007-04-29 01:22:00)

なぜかチャールズ・ブロンソンに捧げられた(笑・・・って、ブロンソンてあのブロンソン?)、'88年発表の4thアルバム。
確か当時、HOBBS' ANGEL OF DEATHのデビュー作とのスプリット仕様で、テイチクから国内盤も発売された・・・筈。
初期のRAZORのアルバムは、ムチャクチャな勢いは買うけれど、どの曲も似たり寄ったりなので直ぐに飽きてしまうという
問題点を抱えていたように思うが、それが3rd『MALICIOUS INTENT』辺りから個々の楽曲のキャラ立ちが良くなり始め、
遂に本作では、ドイツのインディ・レーベルSTEAMHAMMER/SPVと契約を交わした効果か(?)、その楽曲の良さを活かすだけの
良質なサウンド・プロダクションをも手に入れ、過去4作を大きく上回る高い完成度を提示してきた。
また、これまでに比べてスラッシュ・メタル度が大幅に上がって来ているのも本作の特徴の1つで、
それはOPナンバー①(タイトルから察するに、冒頭の絶叫は怪鳥音のつもりなのだろうか?)における、
アグレッシブなリフ&リズムの刻みを聴けば明らか。他にも、タイトル通り「ハイテンション」で突っ走る②、
緩急の効いたアルバム・タイトル・トラック⑦等、高速スラッシュ・チューンの名曲は多いが、
本編のハイライトは間違いなく⑨。まさに“EDGE OF THE RAZOR"のタイトルを地で行く、聴いてるだけで耳から
血が出るんじゃないか?と思わせる、カミソリの刃の如き鋭利なGリフの刻みが強烈極まりない、RAZOR屈指の超名曲だ。
バンドの格をワンランク上へと押し上げた名盤。


AVERSION - Fall From Grace - Make It Go Away ★★ (2007-04-28 23:58:57)

切羽詰ったように疾走する高速スラッシュ・チューン。
タイト極まりない楽器陣も良い仕事をしているが、
リーダーのBが兼任するVoの硬質な歌声が非常に魅力的なのも
このバンドの大きな武器だと再認識させてくれる名曲。


AVERSION - Fall From Grace - Dignity ★★ (2007-04-28 23:48:54)

3rdアルバム最速ナンバー。
タイトなリフ&リズムが一丸となって突進する様がド迫力。


AVERSION - Fall From Grace ★★ (2007-04-28 21:25:00)

ルカ・シニョレッリの壁画「罪されし者を地獄へ追いやる天使」をアルバム・ジャケットに用いた、
カリフォルニア出身のトリオ・スラッシャー、'95年発表の3rdアルバム。
前作『FIT TO BE TIDE』は、ハードコアがかったスピード・ナンバーが次々に繰り出される
爽快極まりないスラッシュ・メタル・アルバムだったが、本作もスタイル的には全く変化なし。実際に聴くまでは
時節柄、モダン・へヴィネス症候群でも患ってるんじゃないかと不安に思っていたのだが、
OPナンバーの①が勢いよく疾走を開始した瞬間、その心配は吹き飛んだ。
ただ、今回は締まりに欠けるサウンド・プロダクションがイマイチで、前作の大きな魅力だった、
硬質さと柔軟性を兼ね備えたリフ&リズムが、一丸となって突進して来るかのような迫力が
やや薄まってしまっているのが残念。代わりにラフでパンキッシュなノリを持った楽曲が目立つような・・・。
それでも、尻上がりにテンションが上がっていくアルバム中盤以降は聴き応え十分。特に、本編最速とも
言える爆発的な疾走感が爽快な⑧、そして硬派な声質のVoの魅力が如何なく発揮された高速スラッシュ・チューン⑫は、
前作収録の“FALLING FULL CIRCLE"に匹敵する名曲。スラッシャーなら必聴ではないでしょうか。
中古屋では3桁の値段で投売りされてる事の多い作品なので、見かけたら(俺も)即買いをお薦めさせて頂きます。


S.O.D.(STORMTROOPERS OF DEATH) - Speak English or Die ★★ (2007-04-26 22:51:00)

個人的に文句なしの名盤について感想を書こうとすると、「とにかく最高!黙って聴け!」
ぐらいの文章しか思い付かない場合が多いのだけど、このスラッシュ・メタル史に燦然と輝く名作、
SOD'85年発表の1stアルバムはまさにそれ。とにかく最高!黙って聴け!
特に、ヘヴィなイントロ①を経て突撃を開始する②、キャッチーにして凶暴な③、マーチのリズムで突き進む④、
一際ダイナミックな曲展開が楽しめる⑤、Gソロも組み込まれた⑥といった具合に、高速スラッシュ・チューンが
息つく暇なく次々に繰り出される、アルバム前半の血沸き肉踊る隙のない構成や、スローなイントロから一転、
ブラスト・ビートが炸裂する名曲⑫なんて最高ですがな。


JAGUAR - Power Games ★★ (2007-04-25 21:40:00)

我が事ながら一体いつ購入したのかさっぱり思い出せない、イギリスはブリストル出身の
4人組HMバンドが'84年に発表した1stアルバム。
NEAT RECORDS、イマサンな音質、リフ主体で突っ走るシンプルな楽曲、如何にも英国的な
ドンヨリとした湿り気を帯びたメロディ、篭り気味の声質のVoが歌う煮え切らない歌メロetc・・・と、
アルバム全体から「これでもか!」というぐらいNWOBHM臭を発散している本作だが、
ここに収められている楽曲には、へヴィ・メタルがどんどん先鋭化していって、
やがてスラッシュ・メタル誕生へと行き着く過渡期的な荒々しさが満ち満ちている。
特に、冒頭から矢継ぎ早に繰り出されるスピード・チューン3連発は強力で、なるほど、本作が発表当時、
「MOTORHEADの“ACE OF SPADES"やEXCITERの“HEAVY METAL MANIAC"級のインパクトを与えた」という話も
あながちホラじゃないのかな、と納得するに十分なカッコ良さを誇る(知名度じゃ全然勝負にならないけどね)
また彼らの場合、スピードのみで押し切るのではなく、へヴィ・バラードの④や、ドラマチックな曲展開が
魅力の⑥、よく動き回るBラインがIRON MAIDENを思わせる⑧といった、メロディを前面に押し出した
「聴かせる」タイプの楽曲で足元をしっかりと固めている点もナイス。
ヘヴィ・メタルと呼ぶには荒々しく、スラッシュ・メタルと呼ぶにはメロディアス。これぞスピード・メタルの力作。


ONSLAUGHT - Killing Peace ★★ (2007-04-24 21:58:00)

サイ・キーラーをVoの座に迎え入れて再結成。THRASH DOMINATION 06で日本のスラッシャーにも健在振りをアピールした
ONSLAUGHTが、前作『IN SERCH OF SANITY』以来、8年振りに発表した待望のニュー・アルバム。(通算4枚目)
『IN SERCH~』では、名Voスティーヴ・グリメットの歌唱を活かした、如何にも英国然とした劇的なパワー・メタルを
演っていた彼らだが、復活第1弾となる本作で聴けるのは、2nd『THE FORCE』の頃を彷彿とさせる混じりっ気なしの
ピュア・スラッシュ・サウンド。(まぁ3rdの作風にはレコード会社の意向が強く働いていたらしいので当然の帰結なんだけど)
しかも単なる過去の焼き直しに留まらず、よりスピーディに、よりへヴィに、よりアグレッシブにと、
解散前よりも遥かにパワーアップを遂げているのだから嬉しくなる。
特に、猛然と疾走するOPチューン①、それ以上のアグレッションを撒き散らす②、ノリの良さも併せ持った③という、
冒頭の高速スラッシュ・チューン3連打、そして1st『POWER FROM HELL』収録の名曲のタイト且つパワフルな
リメイク⑩といった楽曲は、その辺りを端的に示した本作最大の聴き所。
彼らは、このアルバムを2ndの後に来るべき作品と位置付けているようだが、大作主義が影を潜めシンプルに
まとめられた楽曲や、更に凶暴さを増したサイのダミ声Vo、例えば“METAL FORCES"や“DEMONIAC"で聴けたような
ドラマ性が減少したツインGを聴いていると、個人的には1stと2ndの間に置いた方がしっくり来る作風との印象を受けた。
3rdをONSLAUGHTの最高傑作に推す身にはメロディ分の大幅な後退が惜しまれるし、そのせいか中弛みを感じなくもないけれど、
後半3曲で再び一気に盛り返すので、聴き終えた後の満腹感は大きい。ファンの期待に見事に応えた力作だ。


BISCAYA ★★ (2007-04-21 01:14:00)

最近、リマスターが施された国内盤が再々発されたようなのですが、
音質の向上はどんな具合か、もし購入された方がいらっしゃいましたら
お聞かせ願いないでしょうか?
'96年にCD化された時は、それだけで万歳三唱モノで文句を言う気も起きなかったわけですが、
音質的にはマスターテープの痛みがもろに反映されていて、かなり厳しかったですよね?


RIOT V ★★ (2007-04-20 23:47:00)

「やはり名曲を沢山持ってるバンドは強い」と実感させられたライブでした。
特に、中盤の“ROAD RACIN'"以降の名曲連打による怒涛の盛り上がりは圧巻!
トニー・ムーア時代、マイク・ディメオ時代の楽曲をバランス良く歌いこなしていた
マイク・ティレリの歌唱の素晴しさは言うに及ばず、“BURN"のカヴァーを止めたのは正しい判断だと思いますし、
その代わりに“DANCE OF DEATH"のような、埋もれてしまった過去の名曲を掘り起こしてくれたのもナイスでした。
これで会場がクラブチッタ、Dsがボビー・ジャーゾンベクだったら最高だったのにな・・・というのは欲張り過ぎですね。


MEGADETH - Countdown to Extinction ★★ (2007-04-20 23:31:00)

大胆なサウンド・チェンジが奏功して、MEGADETH史上最大のヒット作となった'92年発表の5thアルバム。
スラッシーな疾走感をグッと控えめにして(ミドル~ミドル・ハイ/テンポが中心)、リフにしろ、曲展開にしろ、
Gソロにしろ、かなりの簡素化が図られた楽曲は、良く言えばソリッドで無駄がない、悪く言えば地味めな仕上がり。
実際、本作を初めて耳にした時は、ドラマ性が大幅に後退してしまった内容に肩透かしを覚えたが、
よくよく聴き込んでみれば、リフの切れ味に鈍りはないし、シンプルにまとめられた収録曲は
いずれも非常にキャッチーで、大ヒットも納得だ。
小気味良く疾走する①、冷酷に刻まれるリフにゾクゾクさせられる②、メランコリックなBラインが印象的な⑦、
ボーナストラックとは思えない一際アグレッシブな⑫・・・。そして何より、これらの楽曲を説得力十分に歌いこなす
デイヴ・ムスティンのVoが大変素晴しい。ぶっちゃけ、本作の魅力の半分くらいは、特異な個性を保ったまま
天井知らずの成長を続ける彼の歌唱(歌メロ)が占めているんじゃなかろうか?
これまで外側へ向けられていた攻撃性が内側へ向けられ、グツグツと煮詰められて爆発寸前のテンションを孕んだ作風は
如何にも90年代的だが、ここまでクオリティが高ければ文句も出ない。(曲の出来・不出来にバラつきが見られる点は気になるけど)
MEGADETH版『BLACK ALBUM』の評価も納得の1枚。


VICIOUS RUMORS ★★ (2007-04-20 23:17:00)

19日に参戦。VICIOS RUMORSとRIOTのカップリング公演なのに、
会場がクラブクアトロというのが引っ掛かりましたが
(どちらも空白期間がネックになったか・・・)、
いざ始まってみればそんな事は忘却の彼方。
やはり名曲を沢山持ってるバンドは強い。(これはRIOTも同様)
一番楽しみにしていた“DON'T WAIT FOR ME"を序盤で早々に繰り出しても、
後半、ネタ切れになることなく最後まで突っ走れるのですから。
そして何より、今回はジェイムズ・リヴェラの存在に尽きました。
歌声もルックスもゴツイのに、背が意外なほど小さいのには驚かされましたが。
本人も「ロニー・ジェイムズ・ディオ」と自ら笑いを取っていましたっけ。


RIOT V - Army of One ★★ (2007-04-18 22:13:00)

'06年発表の13thアルバム。来日公演に備えて改めて聴き直してみたけれど、やっぱり素晴しい作品ですよ、これは。
名曲“THUNDERSTEEL"の遺伝子を受け継いだ、スリリング且つ劇的なツインGが炸裂するスピード・チューン
①⑦⑩で要所を締めつつも、飽くまで本作のメインとなるのは、マイク・ディメオのブルージーでエモーショナルな
歌唱を活かした哀愁のメロディに彩られたミドル・チューンの数々。落ち着いた声質の持ち主ゆえ、
疾走曲を歌うとバックの演奏に埋もれてしまう事もあるディメオだが、やはりこの手の楽曲を歌わせると絶品だ。
特に、ポップ・フィーリングを取り込んだ②や、濃厚な哀愁漂う⑤、広がりの感じられるサビメロが
秀逸なブルーズ・ナンバー⑥は、その彼氏の熱唱と相俟ってリスナーの胸をギュウギュウと締め付けてくれる逸品。
マーク・リアリはWESTWORLDでの課外活動を経て『THUNDERSTEEL』の呪縛から解放されたのか、ここ数作は無理めの
ヘヴィ・メタル路線に拘ることなく、シンガーの資質に合ったオーソドックスなロック・チューンを量産していて、
これが相変わらず強烈な「泣き」を発散しまくるGプレイと併せて非常に良い感じ。
(今回もインスト・バラード⑪でファンの涙を搾り取ってくれます)
明快なメタル分は後退しているので、「地味になってしまった」と感じるファンもいるかもしれないが、
個人的には、より「味わい深くなった」この路線を断固として支持したい。


XENTRIX ★★ (2007-04-17 21:50:00)

↑ご指摘を受けた部分を訂正しておきました。
自分でも全然気付いてなかった上に、何で間違えたのかも不明なんですが(笑)
別にワム!のファンってわけでもないのに。


ANTHRAX - Spreading the Disease ★★ (2007-04-17 21:36:00)

Voが二ール・タービンからジョーイ・べラドナに交代。陣容を整えて戦闘体勢に入った感のある'85年発表の2ndアルバム。
ANTHRAXの初期3作品はいずれも甲乙付け難いハイクオリティな内容を誇るが、中でも本作は
3rd『AMONG THE LIVING』と並んでバンドの最高傑作の呼び声も高い逸品。
とにかく、未だ欧州へヴィ・メタリックな雰囲気を色濃く残しつつも、デビュー作『FISTFUL OF METAL』から
格段にスピーディ且つエネルギッシュに研ぎ澄まされた収録曲のカッコ良さが半端じゃない。
何しろ、ビデオクリップも作られたバンドの代表曲③が、この中に並ぶと平凡に聴こえてしまうのだから、
本作のレベルの高さが分かろうというもの。勿論、捨て曲なし。
歌メロがIRON MAIDENを思わせる②、重々しくもメロディックな⑤、バラード調に始まりドラマチックに盛り上がっていく
⑦といった一際ヨーロピアンHMの香りが薫る楽曲や、思わずガッツポーズ物の高速スラッシュ・チューン⑨、
そして、欧州風味の湿り気とスラッシュ・メタルならではの疾走感が巧い具合に融合を果たした
④といった楽曲も素晴しいが、個人的には本作のハイライト・チューンは①で決まり。
クールなリフ、エネルギッシュにハジけるリズム、メロディアスに歌えるVoとが一丸となってキャッチーに疾走する
この縦ノリの名曲こそ、次作以降で花開くANTHRAX流スラッシュ・メタルの出発点だったんじゃないかな、と。


REALM - Suiciety ★★ (2007-04-16 22:36:00)

'90年発表。「自滅の縁にある人間社会」をテーマにしたコンセプト作でもある2ndアルバム。
(ちなみに、タイトルはSUICIDE(自殺)とSOCIETY(社会)をくっ付けた造語らしい)
最近発売されたリイシュー盤に、KING CRIMSONの“ONE MORE RED NIGHTMARE"のカヴァーが収録されている事からも
察しの付く通り、1st『ENDLESS WAR』から更に、テクニカルでプログレッシブなスラッシュ・メタル路線へと
踏み込んだ内容に仕上がっていて、個性的なリフの嵐、変拍子バリバリのリズム、複雑な曲展開、ハイテンションで
歌いまくるハイトーンVoといった要素が一丸となって押し寄せてくる様は、最早、プログレ風味の
スラッシュ・メタルと言うよりも、スラッシュ風味も含んだプログレ・メタルといった趣き。
特に、スリリング且つダイナミックな③、本編のハイライト・チューンと言うべきドラマチックな⑦、力強いBラインが印象的な
アルバム・タイトル・トラックの⑪を聴いていると、「歌えるVoが加入したATHEIST」なんて形容詞が思い浮かぶ。
個人的には、より明快な作風の前作の方が好みだが、プログレ・メタル好きなら試しに聴いてみる価値は大いにある作品。
付け加えるなら、高速スラッシュ・チューン⑤を筆頭に、スラッシーな疾走感は本作においてもちゃんと健在だ。


REALM ★★ (2007-04-15 21:54:00)

'85年にマサチューセッツ州で結成。
同年に2本のデモ・テープ『PERCEPTIVE INOCENTIVE』と『FINAL SOLUTION』を制作。
このデモ・テープの好評を受けてROADRUNNERレコードと契約を交わし、'88年に1st『ENDLESS WAR』でデビュー。
'90年には2nd『SUICIETY』を発表。そのテクニカルでプログレッシブな
スラッシュ・サウンドをもって、(それなりに)人気を博した。
特に、1stアルバムに収録されたBEATLESの名バラード“ELEANOR RIGBY"の
スラッシュ・メタル・バージョンのカヴァーは、未だにファンの間では語り草となっている程。


REALM - Endless War - Eleanor Rigby ★★★ (2007-04-15 21:35:03)

繊細で叙情的なBEATLESの名バラードを、
スピーディでアグレッシブなスラッシュ・ナンバーに
見事に改造してみせた、名カヴァー・バージョン。
バンドの代表曲でもある。
この曲を聴くためだけにでも、1stアルバムを買う価値あり。


REALM - Endless War ★★ (2007-04-15 21:27:00)

アメリカはマサチューセッツ州出身の5人組スラッシュ・メタル・バンドが、'88年に発表した1stアルバム。
その本作、まず一聴して耳を奪われるのが、強烈な「揺れ」を伴った超音波の如きハイトーンを発するVoの歌唱。
SAVATAGEのジョン・オリヴァと比較されたりしていたようだが、それよりも個人的には、PAVLOV'S DOGの
デヴィッド・サーカンプ(Vo)に近い印象を受けた。あれを更にビルドアップしてマッチョにした感じ?
そんなVoによって歌われるのは、ハイテクニックに裏打ちされた、テクニカルでプログレッシブなスラッシュ・メタル。
勿論、①や⑦、⑪といった比較的ストレートに疾走する高速スラッシュ・ナンバーも多数収録されてはいるものの、
そういった楽曲よりも、このバンドの本質が表れているのは、仰々しく幕を開け、徐々にスピードを上げながら劇的に
盛り上がっていく③や、鬼のようにリフ/リズム・チェンジを繰り返す、複雑且つドラマチックな⑧といった楽曲ではないかと思う。
そして、本作を語る上では勿論の事、REALMを語る上でも避けて通れない重要な存在が、BEATLESの名曲のカヴァー⑥。
繊細で物悲しげなメロディに彩られた叙情的な小曲を、スピーディでアグレッシブなスラッシュ・バージョンとして
見事に再生させたこの名カヴァーの存在は、未だにスラッシャーの間では語り草であり、今でもREALMの話題になると
「あー、あの“ELEANOR RIGBY"のカヴァーを演ってた連中ね」となるぐらいのインパクトを備えていたのであった(?)。
但し、この曲のインパクトが余りに強烈過ぎた為、オリジナル曲の印象が完全に吹っ飛んでしまったのは、バンド的には良し悪し・・・。


LAAZ ROCKIT - Taste of Rebellion: Live in Citta ★★ (2007-04-15 17:16:00)

'92年に実現した日本ツアーにおける、川崎クラブチッタ公演の模様を収録した、LAAZ ROCKIT初のライブ・アルバム。
力み過ぎたのか、全体的にイマイチ地味な仕上がりだった5th『NOTHING SACRED』に伴うツアーのため、
ベストとは言い難い選曲に、ドラム・サウンドばかり目立ってしまっているバランスの悪い音作り、
そしてアルバムでは兎も角、ライブでは単調さが気になるマイケル・クーンズのVoと、とてもじゃいないが
「ライブ・アルバムの傑作!」と絶賛できる内容ではないものの、それでも俺もこの作品は大好き。
演奏自体が非常にタイトで聴いていて気持ち良いし、何より、世界規模でのヘヴィ・メタル人気の低下、
オリジナル・ラインナップの崩壊、所属レコード会社の倒産と不運が相次ぎ、どん底の状況化にあって
遂に実現した待望の日本ツアーという事で、バンド・観客共にテンションの高さが尋常じゃない。
この怒涛の盛り上がりの前には、多少の不満なんぞ吹き飛んで、グイグイと引き込まれてしまいます。
(あと、黄色い歓声の多さも日本収録のライブ・アルバムならではの味か?)
特に、サビの「FIRE IN THE HOLE!」の大合唱が鳥肌を誘う名曲③や、アルバム・バージョン以上の疾走感と、
バンドと観客のコール&レスポンスに血圧上がりまくりの⑪辺りの盛り上がりは圧巻。
また、『悪魔のいけにえ4』のサントラに提供していた音源⑤が、ここで聴けるのも嬉しい。
・・・とまぁ、本作ならではの名演も多数収録されているので、スラッシャーなら1度はトライして頂きたいこのアルバム、
今ではCD屋の中古盤コーナーにて手頃な値段で転がっているのを見かけるので、機会がありましたら、皆さん是非。


TOXIK ★★ (2007-04-14 21:56:00)

TOXIKと改名前は「TOKYO」というバンド名だったとか。
(同名のバンドが存在したため、改名を余儀なくされたらしい)


LAAZ ROCKIT - Annihilation Principle - Fire in the Hole ★★★ (2007-04-14 21:48:52)

4thアルバムをOPを飾る必殺の名曲。
でも、個人的には『TASTE OF REBELLION』バージョンがイチオシ。
選曲に難のあるライブ・アルバムですが、
この曲における観客の「FIRE IN THE HOLE!」大合唱は
聴いてると血圧が上がるぐらい燃えます。


GALACTIC COWBOYS - Galactic Cowboys - I'm Not Amused ★★★ (2007-04-14 21:39:32)

1stのOPナンバー。スラッシーなリフ&リズムの上に乗っかる
歌メロとVoハーモニーは非常にポップでキャッチーという
このミスマッチ感。スパニッシュ風味にブルーズ風味に
カントリー風味にプログレ風味と、
様々な要素をごった煮してドラマチックに仕上げた
これぞGALACTIC COWBOYS!な名曲。


KREATOR - Terrible Certainty - Blind Faith ★★★ (2007-04-14 21:30:43)

初めて聴いた時はあまりの速さにブっ飛んだ。
後半の「えぇ、まだ速くなるの?!」という加速感が圧巻。


ANNIHILATOR - Metal - Haunted ★★★ (2007-04-13 23:48:56)

スラッシュ・メタルならではの疾走感、
ダイナミックな曲展開、劇的なインスト・パートと、
ANNIHILATORの魅力の粋を結集して作り上げられたかのような
8分以上に及ぶIRON MAIDENばりの名曲。


ANNIHILATOR - Set the World on Fire - Sounds Good to Me ★★★ (2007-04-13 23:43:58)

ANNIHILATORが誇る異色の名曲。
都会的な哀愁をまとって、軽やかに疾走する
ポップでキャッチーなメロディが非常に素晴しい。
ただ、この曲のインパクトが余りに強過ぎたため、
その後のバンドのアグレッシブ路線への方向転換に対する
拒否反応が大きくなってしまったような気がしなくもない。


ANNIHILATOR - Metal ★★ (2007-04-13 23:32:00)

傑作です(断言)。直球勝負のタイトルも頼もしいこの12thアルバムは、名作と名高い3rd『SET THE WORLD ON FIRE』以来、
久々にポップ・フィールドにまで曲作りの幅を広げたバラエティ豊かな作風ながら、「らしさ」もしっかりと維持した
ANNIHILATORのここ数作のアルバムの中でも、ズバ抜けてハイクオリティな内容に仕上がっている。
マイケル・アモット、アレキシ・ライホ、イェスパー・ストロムブラッドら、キラ星の如く参加している
ゲスト・ミュージシャン勢に何かと話題が集まりがちな作品なれど(全員、非常に良い仕事をしてくれていますが)、
それ以上に印象に残るは、メロディの素晴しさ。特に叙情的でキャッチーな歌メロが抜群に良い。その好例が、
憂いを帯びたメロディが軽快に疾走する、名曲“SOUND GOOD TO ME"を彷彿とさせる②や、バックの演奏はアグレッシブなのに
その上に乗る歌メロはフックに富みキャッチーというミスマッチ感が楽しい⑤だろうか。
勿論、OPとEDを〆る高速スラッシュ・チューン①⑩を始め、ANNIHILATOR節が炸裂するダイナミックな④⑥⑧、
そして本編の白眉たる、スラッシーな疾走感/キャッチーなメロディ/ドラマチックな曲展開と、全てを兼ね備えた名曲⑦の
カッコ良さは言うに及ばず。(ボーナス・トラックがEXCITERの名曲“HEAVY METAL MANIAC"ってのもナイスです)
3rd『SET~』以来、ANNIHILATORをお見限りだったメタル・ファンをも振り向かせる説得力を持った1枚ではなかろうか。
・・・と絶賛しておいて最後に不満点を1つ。それは相変わらず芯の(熱さの)感じられないデイヴ・パッデンの薄味なVo。
アルバム3枚連続登板はこのバンドのフロントマン史上初の快挙だが、ダンコ・ジョーンズにアンジェラ・ゴソウ、
ダン・ビーラーにジェフ・ウォーターズという強烈な個性を備えたシンガー達に比べると、その存在感はかなり薄い。
このアルバム、例えばジョー・コミュー辺りが歌ってくれればもっと凄いアルバムになったような気がするのは俺だけか。


VICIOUS RUMORS - Plug in and Hang On: Live in Tokyo ★★ (2007-04-12 21:40:00)

4th『WELCOME TO THE BALL』に伴う日本ツアーの中から、川崎クラブチッタ公演の模様を捉えた'92年発表のライブ・ミニ・アルバム。
数多くの名曲を生み出してきたバンドだけに、たった8曲のみの収録では「あれもない、これもない」という物足りなさは残るし、
ミドル・テンポの楽曲中心の選曲なので今ひとつ全体の流れに緩急が乏しい等、聴いていて気になる点も幾つかあれど、
VICIOUS RUMORSから日本のファンへのちょっとしたプレゼントである本作に対し、あーだこーだ言うのは野暮というものだろう。
過去4作から漏れなく選曲された楽曲は(そのテンポに多少の偏りはあれど)ツボは外していないし、
何より、重量感溢れるサウンドに乗っかって、パワフルなメタル・ソングの数々を見事に歌いこなす
カール・アルバート(Vo)の確かな実力がタップリと堪能出来るのが嬉しい。
また、本編の大半がミドル・チューンで固められているだけに、1stアルバムのハイライト・ナンバーの1つだった⑦のエンディングから、
一気に名曲中の名曲、スピード・チューンの⑧へと雪崩れ込む構成の鳥肌モノのカッコ良さが、一層引き立って聴こえるのも事実。
この一連の流れを聴くためだけにでも、ファンなら「買い」の1枚。


WARHEAD - The Day After - Evil Night ★★★ (2007-04-11 22:28:42)

猛々しく刻まれるリフ、スラッシーに疾走するリズム、
ヴィブラートかかりまくりの男臭いVoが熱唱する
勇壮な歌メロ(サビも印象的で◎)、そして炸裂する劇的なGソロ・・・
個人的に、2ndアルバムのハイライト・チューンに推したい名曲。


WARHEAD - The Day After ★★ (2007-04-11 22:21:00)

長いイントロ部分で焦らしに焦らしてから、雄叫び一発、スラッシーなリフが疾走を開始する様が最高にカッコイイ
①を聴いただけで、バンドが1st『SPEEDWAY』から飛躍的な成長を遂げた事が伝わってくる、'86年発表の2ndアルバム。
デビュー作の好評を受けてレコーディング環境が改善されたのか、サウンド・プロダクションが(それなりに)向上。
リフやリズムの刻みに鋭さが宿り、全体的に引き締まったサウンドからはMORTORHEADやTANK的なロックンロール風味が
一掃されて、よりスピード/スラッシュ・メタル色を強めた印象を受ける。
前作でも大きな存在感を発揮していたVoが、クドイくらいヴィブラートかけまくりの歌唱スタイルはそのままに、
更に逞しさと表現力を増した歌声でこれまで以上に起伏に富んだメロディを歌いこなせば、Gも劇的且つメロディックな
ソロを次々に紡ぎ出してと、前作の大きな弱点だったメロディの弱さをしっかりとカバー。
冒頭3曲のスピード・チューンの畳み掛けに始まり、緩急を効かせた④、正統派メタリックなリフを持つ⑤、
Voの熱唱が映えるバラード・パートから、ドラマチックに盛り上がっていく⑥、〆のインスト曲⑦と、個々の楽曲の
キャラ立ちも良くなり、全編これ捨て曲なしのクオリティ。中でも特筆すべきは②で、スラッシーな疾走感、
名リフに劇的なGソロ、勇壮なVoとが見事に揃ったWARHEAD屈指の名曲だ。これぞ、隠れたスピード/スラッシュ・メタルの名盤。
尚、現在本作は1st『SPEEDWAY』とのカップリング仕様で売られているので、非常にお買い得です。


WARHEAD - Speedway ★★ (2007-04-11 22:17:00)

ベルギー出身の4人組へヴィ・メタル・バンドが、'84年に発表した1stアルバム。
次作『THE DAY AFTER』では、更に攻撃性を高めてスラッシュ・メタル化する彼らだが、
このデビュー作の時点で聴けるのは、NWOBHMの空気をタップリと吸い込んだ、時にMORTORHEADや
4人編成時代のTANKを彷彿とさせる、男気のギュウと詰まったストロングなヘヴィ・メタル・サウンド。
バイクのエンジン音のSEに続き、チープな音質のもと、猛々しく刻まれるリフが疾駆する①が始まった瞬間、
B級メタル・マニアのハートは熱くなること間違いなしだ。(・・・かどうかよう分からんけど)
無性に頭を振りたくなるヘッドバンギング・チューン②や、緩急を活かしたダイナミックな⑤もなかなかの出来で、
何より、こうした楽曲を歌うVoがレミーやアルジー・ワード以上に歌心に溢れていて、
そのヴィブラートをビンビンにかけまくった雄々しい歌唱スタイルは、人によっては鬱陶しく
感じられるかもしれないが、この手の直球メタル・ソングを歌うにはドンピシャの人材。
劣悪なサウンド・プロダクションゆえ、全体的にモッサリと垢抜けない雰囲気が漂い、メロディにも
今ひとつ深みが足りていないので、個々の楽曲の良さに反してイマイチ強い印象が残せていない等の弱点もあるが、
ともあれ、メンバーのステージ・ネームだけでなく(笑)、内容の方にも燃え盛るメタル魂が感じられる力作だ。


EXODUS - Force of Habit ★★ (2007-04-10 22:15:00)

トム・ハンティング(Ds)に続きロブ・マッキロップ(B)まで脱退。その後任にマイク・バトラーを迎え入れて
'92年に発表された5thアルバムにしてラスト作(その後、再結成したわけだけど)。
うーん、ごく普通のへヴィ・メタル・アルバムですな、こりゃ。この時期、進むべき音楽的方向性を巡って
所属レーベルのキャピトルとかなり揉めたらしいが、その結果、メンバーのモチベーションの著しい低下が
はっきりとレコードに刻み込まれてしまっていて、全体的に、やや緊張感に欠ける散漫な仕上がり。
中でも、スティーブ・ゼトロ・サウザ(Vo)のテンションの低さはどうした事か。また、楽曲が無駄に長いのも
緩い雰囲気に拍車を掛けていて、特に、年寄りの小便の如くダラダラとキレのないアルバム後半の構成には、
もっと工夫が必要だったのではなかろうか?カヴァー2曲も思いっきり浮きまくってるし・・・。
と、前4作と比較するとどうしても文句が先行してしまう本作なれど、じゃあ救いようのない駄作なのかと言えば
決してそんなことはない。相変わらずリフのアイデアは秀逸だし、H-TEAMによるメロディックなツイン・リードも聴き応え十分。
本編屈指の名リフとツイン・リードが炸裂する②、高速スラッシュ・ナンバー⑤、スラッシーに始まり、山あり谷ありの展開を経て、
アコギで締め括られるドラマチックな⑦といった楽曲は、過去の名曲群と比べても全く遜色ないカッコ良さを誇る。
王道スラッシュ・アルバムを期待するとスカされるが、ヘヴィ・メタル・アルバムとしては良く出来た1枚のように思う。
まぁ、何も彼らがこういう作品を作らんでも・・・と思わなくもないけどね。


EVILDEAD - The Underworld ★★ (2007-04-10 21:49:00)

AGENT STEELのフォアン・ガルシア(G)と、ABATTOIRのメル・サンチェス(B)が中心となって、
LAで結成された5人組スラッシャー、'91年発表の2ndアルバム。
爽快に飛ばしまくっていたデビュー作『ANNIHILATION OF CIVILIZATION』に比べ、ググッと重心を低く落として、
スピードよりもヘヴィネス演出に主眼を置いた作風は如何にも90年代の作品ぽいが、別にスピード・チューンが
なくなったわけでも、シアトル勢やグランジ・サウンドから悪影響を受けていたりするわけではないので安心されたし。
強いて例えるなら、SACRED REICHの1stから2ndへかけての変化に近い感じ?
重厚さを倍増させ、ジャキジャキと刻まれるクランチーなリフや、重々しく疾走するリズム、
そして歯切れの良い硬派なVoが隙間なく攻め立ててくる楽曲は、とにかく圧倒的迫力を誇り、
中でも、DARK ANGELのジーン・ホグラン(Ds)がゲスト参加している④は、個人的にイチオシのスラッシュ・ナンバー。
前作収録の“HOLY TRAILS"のようなドラマチック路線の楽曲が姿を消してしまったのは残念だが、
高いドラマ性を感じさせる流麗なツインGは相変わらず健在なので、まぁ良いかな、と。
その代わりと言うわけじゃなかろうが、SCORPIONSの名曲のカヴァー⑧が収録されていて、
ここでVoのフィル・フォロワーズが披露するメロディアスな歌唱がなかなかに上手い。また、バックアップVoとして参加している
METAL CHURCH~REVERENDのデヴィッド・ウェインもパワフルなシャウトを響かせてくれています。


PARIAH - Blaze of Obscurity ★★ (2007-04-09 21:40:00)

SATAN、BLIND FURY、SKYCLAD等の活動で知られる、スティーヴ・ラムゼイ(G)率いるイギリスは
ニューカッスル出身の5人組へヴィ・メタル・バンドが、'89年に発表した2ndアルバム。
チリチリとささくれ立ったリフといい、煮え切らないメロディを歌うVoといい、如何にもブリティッシュな
暗い湿り気を帯びた楽曲といい、NWOBHMの薫りが濃厚に匂い立つサウンドは、このバンドの前身である
SATANやBLIND FURYと同様ながら、本作はそこに更にスラッシュ・メタルのエッセンスを取り入れ、
よりスピーディに、よりへヴィにと、一層アグレッシブ面の強化が図られた仕上がり。
尤も、リフの刻みや疾走感にはスラッシーな雰囲気が強く漂うとはいえ、そこはキャリアの長いベテラン・バンド。
力押しのみに終始するなんて野暮な真似はせずに、押しと引きを心得たサウンドの要は飽くまでも豊潤なメロディ。
特に、場面転換を重ねてドラマチックに盛り上がっていく①に始まり、シニカルな歌詞とは対照的に
華麗に舞うツインGに耳奪われる②、起承転結がカッチリと決まる③を経て、ハイライト・チューンとでも言うべき
ヘヴィ・バラードの④へと繋がっていく頭4曲の流れは本編の白眉(勿論、後半も充実していて捨て曲なし)。
また、そうした楽曲で聴かれるスティーヴ・ラムゼイと盟友ラス・ティピングによる、息の合った劇的なツイン・リードも絶品だ。
個人的に、(かつては本作の国内盤がMETAL MANIAレーベルから発売されている事もあって)
完全にスラッシュ・メタル・アルバムとして楽しませて貰った1枚。


VICIOUS RUMORS - Warball ★★ (2007-04-08 20:27:00)

アルバム・タイトルといい、ジャケット・デザインといい、そして何より楽曲といい、長い回り道を終えたVICIOUS RUMORSが
新Voとして元HELSTAR~DESTINY'S ENDのジェイムズ・リヴェラを迎え入れ、'06年に発表した会心の9thアルバム。
カール・アルバート亡き後に発表された作品は、どれも今ひとつパッとしない内容で、ジェフ・ソープへのお布施代わりに
購入はしても、殆どまともに聴く機会もないまま放置プレイの刑に処してしまっていたのだけど、この復活作は似合わない
現代ラウド・ミュージックからの影響をスッパリと削ぎ落として、ホント、お世辞抜きに最高の内容に仕上がっている。
パワフルに疾走するリフ&リズムの上に、ロブ・ハルフォードばりの耳をつんざくハイトーンVoが乗っかる
「これで掴みはOK」なスピード・チューン①に始まり、力強く勇壮なミドル・チューン④や、
全盛期に勝るとも劣らぬ強力なリフが炸裂する⑨といった楽曲を筆頭に、収録曲は何れも
1nd~5thアルバムの頃を思い起こさせる作風で、また、上記3曲にはゲストGとしてブラッド・ギルスが参加。
如何にも彼らしい派手なソロを披露して、楽曲に華を添えているの素晴しい。
カール・アルバート在籍時代と比べてしまうと、ジェイムズ・リヴェラが歌うメロディ(特にサビメロ)の弱さが
やや気になる点ながら、歌唱能力的には前任者と比較しても全く聴き劣りはないし、何より、
リーダーのジェフ・ソープが自覚的に原点回帰を志してくれた事が、俺にはもう嬉しくて嬉しくて。
再起動を果たしたVICIOUS RUMORSの、今後の活躍に大いに期待が高まる1枚。


ASSASSIN ★★ (2007-04-08 19:58:00)

2ndも、DISK UNIONとかではもう売ってるのを見かけますよ。
ただ購入した人の話だと、ボーナス・トラックなし、リマスターなし、
歌詞カードも解説もなしと、ないない尽くしの仕様らしくて、
イマイチ買い直す気がおきないんですよね。


VICIOUS RUMORS - Word of Mouth ★★ (2007-04-07 00:16:00)

ジェフ・ソープが両腕に毛根管症候群を発症して7ヵ月間もGを弾けなくなるわ、ATLANTICレコードから契約を切られるわで、
踏んだり蹴ったり状態のVICIOUS RUMORSが、再起を賭けて'94年に発表した5thアルバム。
妙にシンプルなジャケットを見た時から予想はしてたけど、実際、気だるげな①のイントロを耳にした瞬間、予想は確信へと変わった。
全体的にドロンと澱んだ空気に覆われた、シアトル・サウンドからの影響が色濃く伺える1枚で、
ザクザクとした歯切れの良さが薄れてしまったリフには、これまでの聴き手を一発で虜にする即効性のインパクトはないが、
そのマイナス分を補うかのような踏ん張りみせるのが、Voのカール・アルバート。
パワーと表現力を兼ね備えた彼のメロディアスな歌唱は、ともすれば地味に落ち着きがちな楽曲の魅力を
力ずくでワンランク上へと引き上げている。
また、従来のVICIOUS RUMORS節が冴え渡るドスの効いたOPチューン①や、哀愁を帯びたメロディが
刻まれる⑪といった楽曲もちゃんと収録されているし、何より、事故死したSAVATAGEのG.クリス・オリヴァに捧げられた
組曲⑤⑥の素晴しさが半端じゃない。物憂げなバラード・パートを経て哀メロがキャッチーに疾走する
彼らにしては異色の仕上がりの楽曲ながら、漂う悲壮感が胸締め付ける、何となくANNIHILATORの
名曲“SOUND GOOD TO ME"に通じる雰囲気を備えた名曲だ。


VICIOUS RUMORS - Welcome to the Ball ★★ (2007-04-05 22:40:00)

ヘヴィ・メタルの空洞化現象が取り沙汰されていた'91年に、時代の逆風を突いて発表された実にヘヴィ・メタルらしい
ヘヴィ・メタルを聴かせてくれる作品として、特に日本のファンから高い評価を得た4thアルバム。
ベテラン・バンドならではのどっしりとした貫禄を身に付け、一皮剥けた印象の前作『VICIOUS RUMORS』で開眼した
アメリカン・パワー・メタル路線を更に強力に推し進めた本作は、速い曲は更に速く、へヴィな曲は更に重くと、
よりアグレッシブな姿勢が前面に打ち出された作風で、例えばマイケル・ローゼン印の分厚い
サウンド・プロダクションのもと、パワフルなリフ&リズムが前へ前へと押し出してくる①からして既に圧巻。
それでいて大味になる事なく、疾走するキラー・チューン②や、中庸な魅力を放つ⑤、欧州風味の湿り気を
帯びたリフが炸裂する⑥、VC初のヘヴィ・バラード⑩といった楽曲で見せる叙情面への拘りにも抜かりはない。
前作に比べるとミドル・テンポの楽曲の質がやや落ちる点と、後半、少々ダレる点が惜しまれるが、
ラストを飾るスピード・チューン⑪がこれまた素晴しい出来なので、聴後感はすこぶる快調。
本作発表後、バンドは初来日を果たし、その模様はミニ・ライブ・アルバム『PLUG IN AND HANG ON』として発表された。


VICIOUS RUMORS - Vicious Rumors ★★ (2007-04-04 21:57:00)

前作『DIGITAL DICTATOR』のような名盤を作り上げながらも、SHRAPNELレコードからドロップアウトして
2年以上もの沈黙を余儀なくされたVICIOUS RUMORSが、一発逆転、メジャー・レーベルのATLANTICと契約を交わし、
満を持して'90年に発表した3rdアルバム。
タイトルにバンド名を冠している事からも、彼らがこの作品に賭ける意気込みの大きさが伝わってくるが、
実際、勇壮且つパワフルなVR史上屈指の名曲①で幕を開ける本作は、音作りがグッと洗練され、
スッキリと垢抜けたメジャー感漂うメタル・チューンがギュウと詰まった、ハイクオリティな内容を誇る。
メジャー・レーベルへの移籍効果でサウンド・プロダクションが格段に向上。音に厚みと重量感が生まれた事により、
①③⑦といったスピード・チューンの突進力、②④⑥といったドスの効いたミッド・チューンのヘヴィネス、共に半端ではない。
中でも、本編随一の劇的なメロディが炸裂する④と、欧州へヴィ・メタリックなリフが疾走する⑦は、
前述の①に匹敵する、本作のハイライト・チューンの1つ。
ポップとさえ言えるサビメロが印象的な⑩のような楽曲が収録されている事からも分かる通り、
ヨーロッパ的な湿り気は幾らか減少してしまったが、その分、JUDAS PRIESTからの影響をきっちり消化して、
VICIOUS RUMORS独自のアメリカン・パワー・メタルを創出してみせたジェフ・ソープの曲作りの才は、
やはり並外れたモノがある。個人的に、彼らのアルバムでは本作が一番のお気に入り。


MEGADETH - Peace Sells... But Who's Buying? ★★ (2007-04-04 21:40:00)

デビュー作『KILLING IS MY BUSINESS...AND BUSINESS IS GOOD!』の成功を受け、インディのCOMBATから
メジャー・レーベルのCAPITOLへと移籍して、'86年に発表された2ndアルバム。
異様なまでのテンションの高さや、触れれば切れそうな尖がり具合は相変わらずなれど、
上昇気流に乗った精神的余裕からか、追い詰められた野生動物の如き殺気立った雰囲気が薄れ、
シンプルながら印象に残るリフ&メロディが次々に繰り出される名曲③に代表されるように、
その作風は良い意味でキャッチー。全体的に結構聴き易くなった感じを受ける。
これは、サウンド・プロダクションの飛躍的な向上や、更にメロディアスなフレーズを奏でるようになったツインG、
そして、ぎこちなさや強引さが後退し、より練り込まれて流麗さを増した曲展開に拠るところが大で、
アルバム後半に並ぶ、劇的な盛り上がりを聴かせる二部構成の組曲⑤、後半へ進むに連れて
加速度的にスピードを上げていく⑥、叙情的なイントロからデイヴィッド・エレフソンのリードBに導かれて疾走する
ラスト・ナンバー⑨といった楽曲に至っては、「ドラマチック」という形容詞しか思いつかないほど。
尤も、聴き易くなったとは言ってもそれは飽くまで前作と比較しての話で、カミソリの如き
殺傷力を伴ったリフや疾走感、先読みできない曲展開の複雑さも、相変わらず他の追随を許さない凶暴さ。
特に、「これぞインテレクチュアル・スラッシュ!」と唸らされる、頭3曲の猛烈な畳み掛けは
グゥの音も出ないぐらい圧巻。本作もまた、捨て曲なしの名盤だ。


VICIOUS RUMORS - Digital Dictator ★★ (2007-04-03 21:24:00)

JUDAS PRIESTの名曲“THE HELLION"を彷彿とさせる①の劇的極まるイントロを聴いた瞬間、
その完成度の高さを確信する、'88年発表の2ndアルバム。
前作『SOLDIERS OF THE NIGHT』発表後にヴィニー・ムーアとゲイリー・セント・ピアーが脱退。
後任としてマーク・マクギー(G)と、不世出のシンガー、カール・アルバートを迎え入れ、よりバンドの基盤を
強固なものとして作り上げられた本作は、多くのファンが「初期の傑作」と認める強力な内容を誇る。
光沢を感じさせるシャープなGリフと、益々華麗さを増したツインG(ヴィニーがいなくなった事で、
2本のGの絡みが一層濃密になった印象)をフィーチュアした楽曲の数々は、アルバム・タイトル・トラックの②、
地を這うヘヴィネスとドラマティシズムを兼ね備えた⑤、ラストを締めるスピード・チューン⑩を筆頭に、捨て曲なし。
特に、ヨーロピアンな翳りと劇的なドラマ性を湛えたリフのカッコ良さは、(後の音楽性の変化を考えるに)、
彼らの全作品中、最高レベルと言っても過言ではないような。
そして、その完成度の高さに拍車を掛けているのが、何と言ってもカール・アルバートの驚異的な歌唱。
パワー/表現力/声域の広さが揃った、まさにパワー・メタルを歌う為にあるかのようなその歌声は、
楽曲の完成度だけでなく、バンドの格をも数段引き上げている。全メタル・ファン必聴の名盤。


MEGADETH - Killing Is My Business... and Business Is Good! ★★ (2007-04-02 22:11:00)

音、悪っ(苦笑)。レコーディング費用をドラッグ代として使い込んでしまったせいで、
こんな劣悪な音質になってしまったという、'85年発表の1stアルバム。
意表を突くユーロ・プログレ風のピアノの調べで幕を開ける本作は、その後、一転して激烈に走り出す
アルバム・タイトル・トラック①に代表されるように、尖がったリフ、尖がったリズム、尖がったGソロ、尖がった曲展開、
尖がったVoが歌う尖がった歌詞、そして薄っぺらで割れ歪んだ尖がったサウンド・プロダクションと、
当時のデイヴ・ムスティンの「寄らば斬る!」という心境をダイレクトに反映してか、
MEGADETHの全作品中、最も殺気立ち、尖がりまくったアグレッシブな内容に仕上がっている。
異様なテンションの高さと、複雑且つ強引なリフ/リズム・チェンジを飲み込んだ作風は、
これ1枚で「インテレクチュアル・スラッシュ」というジャンルを確立してしまった程のインパクトに満ちているが、
知的とか、複雑といったキーワードから連想されるような難解さや退屈とは無縁。ひたすら憑かれたように突っ走り、
頭ではなく身体に直接訴えかけて来るエネルギーの塊のような楽曲の数々は、素晴しい事この上なし。
特に④は、もう何度聴いたか分からない程だが、未だに色褪せる事の無い超名曲だ。
音の悪さが唯一にして最大のネックだった本作だが、'02年の再発に際して施されたリマスター作業によって、音質が劇的に向上。
最早隙のなくなったこの作品を、MEGADETHの最高傑作に推すファンも多いと聞く(俺の脳内で)。いやぁ、良い時代になったもんだ。


VICIOUS RUMORS - Soldiers of the Night ★★ (2007-04-02 21:54:00)

北カリフォルニアで結成され、ヘヴィ・メタルの空洞化現象が危惧されていた80年代のアメリカで、
METAL CHURCHやSAVATAGEと並んで気を吐き、紆余曲折を経た現在もしぶとく活動を続ける
ジェフ・ソープ率いるベテラン・パワー・メタル・バンドが、'85年に発表した1stアルバム。
JUDAS PRIESTを始めとする欧州HM勢からの多大な影響を受けた、勇壮且つドラマチックなパワー・メタル・サウンドという
このバンドならではの個性は既にガッチリと確立済みで、アルバム・タイトル・トラックの④や、
劇的な名曲⑥を筆頭に、収録曲のクオリティも押し並べて高い。
しかし、それよりも何よりも本作で特筆すべきトピックは、やはり「早弾き四天王」ことヴィニー・ムーア(G)の存在。
ソロ活動でのステップUPを図る為にVICIOUS RUMORSを踏み台にした男として、ファンからの評判は芳しくない彼氏なれど、
そのGプレイの素晴しさは↑の方々が認める通り。スピード・チューンの②や、前述の④⑥等、彼が紡ぐGソロが
楽曲の完成度を高め、同時に曲中のハイライトを飾っていることは、疑いようの無い事実だ。
あと、バンドの初代Vo.ゲイリー・セント・ピアーも、なかなか頑張って歌っている事も付け加えておきたい。
そりゃ後任のカール・アルバートに比べると、ややヒステリックで聴き苦しい場面も散見されるが、
能力的には全く問題なし。ただ、エコーかけまくりのVoプロダクションは、今聴くとちょっとダサイ。


HALLOWS EVE - Evil Never Dies ★★ (2007-04-01 17:39:00)

'88年発表の3rd『MONUMENT』以降、さっぱり音沙汰の無かったHALLOWS EVEが、
突如'05年に発表した、実に17年ぶりとなる復活のニュー・アルバム。(通算4作目)
ローランDEATHさんの仰る通り、初期のオカルトちっくなオドロオドロしい雰囲気が復活を遂げていて、デス声を多用するVoや、
ブラック・メタルにも通じる禍々しいリフを刻むG、時にブラスト・ビートまで炸裂させるリズム隊などの存在もあって、
全体的に、これまで以上にヘヴィネスとダークネスを強調した仕上がりのように感じられる。(特にデス・メタルからの影響は大)
重心の低いヘヴィ・リフがザクザクと刻まれ、Voがパワフルに歌いまくり、後半の疾走パートでは
ツインGが劇的なメロディを紡ぎ出す①の出来は文句なしで、聴いた瞬間に「おお、あのHALLOWS EVEが帰って来た」
と実感させてくれる名曲なのだが、如何せん②以降、メロディの質が下降線を描いてしまう点と、
どんなにヘヴィだろうと、これまでの作品では必ず感じられた「キャッチーさ」が大きく後退してしまっている点が惜しまれる。
そのため、どうにも地味な印象は拭いきれない作品なれど、でもやっぱりファンなら名曲①のために本作も聴きましょう。


HALLOWS EVE - Death & Insanity ★★ (2007-04-01 17:23:00)

音質、楽曲、全体の構成と、デビュー作『TALES OF TERROR』から格段のクオリティUPを遂げた、'86年発表の2ndアルバム。
多分にIRON MAIDEN的というか、正統派へヴィ・メタリックな要素を残していた前作に比べ、
サウンド・プロダクションの著しい向上に伴い、音の輪郭がハッキリして、切れ味の鋭さと重量感を得た本作は、
いよいよスラッシュ・メタルらしい硬質な歯応えの感じられる、よりビルドアップされた内容に仕上がっている。
(ちなみに、バンドと共同でプロデュースを手掛けたのは、METAL BLADE社長のブライアン・スラゲルだ)
鋼の如き強靭なリフが刻まれるパワフルな②、アコギ・イントロから勇壮に疾走する⑤、問答無用の高速スラッシュ・ナンバー⑥、
腰の据わったヘヴィ・チューン⑦、ドラマチックなインスト曲を経て、まるで土砂崩れのように押し寄せる⑨といった楽曲は、
何れもこれまでとは比較にならない程の攻撃性とダイナミズムを誇り、それでいて、メロディアスに斬り込んで来るGや
一層逞しさを増したVoの歌メロには劇的なドラマ性が宿っているため、ヘヴィさ一辺倒で無味乾燥になる事もない。
HALLOWS EVE未体験のスラッシャーが先ず最初に聴くのなら、本作がお薦めではないだろうか。


HALLOWS EVE - Tales of Terror ★★ (2007-03-28 21:15:00)

末期ラインナップには、必殺仕事人ことジェイムズ・マーフィ(G)がその名を連ねていた事で知られる、
ジョージア州はアトランタ出身の4人組スラッシャー、'85年発表の1stアルバム。
日本デビュー作となった3rd『MONUMENT』では、スカッと爽快で歯切れの良いアメリカン・パワー・メタルを披露していた彼らだが、
この1stの時点では、IRON MAIDENを始めとする欧州へヴィ・メタル勢からの影響も濃厚な、暗く湿ったスラッシュ・サウンドを実践。
音質がイマイチで全体的に垢抜けない印象は拭えないが、それがまた、ダークな楽曲の味わいを増す結果になっていて、
特に、スピーディな③から間髪入れずに繋がる④、バンドの代表曲でもある勇ましい⑥、そして序曲⑦を経て、
ドラマチックに盛り上がる大作⑧といった楽曲はメチャ強力。ドスを効かせた低音や金切シャウトだけでなく、
しっかりと歌う事も出来るパワフルなVoと、ツボを突いたメロディを紡ぎ出すGの存在も頼もしい。
スラッシュ・メタルそのものと言うよりも、その誕生前夜の「ハードコア化したヘヴィ・メタル」的エネルギーが漲る1枚。


METALLICA - Metallica ★★ (2007-03-27 22:26:00)

スピード重視からグルーヴ/重さの追求へと、スラッシュ・メタル・シーンの流れを完全に変えてしまった
非常に罪作りな'91年発表の5th。通称『BLACK ALBUM』
ただ、それはそれとして、本作の完成度の高さは認めざるを得ない。複雑な曲展開を備えた
大作曲が並んでいた『...AND JUSTICE FOR ALL』の反動か、コンパクトにまとめられたシンプル且つストレートな
楽曲からは、劇的なドラマ性やスラッシーな疾走感といった要素は大幅に失われてしまったものの、
大ヒット・シングル①を筆頭に、いずれの楽曲もリフにしろリズムにしろジックリと練り込まれていて、すこぶるキャッチー。
また、ジェイムズ・ヘッドフィールドがシンガーとして著しい成長を遂げている事と併せて、
速い曲やドラマチックな曲展開がなくとも、物足りなさを覚える事はない。
特に、その両者の歯車がガッチリと噛み合った叙情バラードの名曲④⑧の素晴しさは筆舌尽くし難い。
ジェイムズのVoやカーク・ハメットのGの繊細な表現力は、こちらの涙腺をビシバシと刺激しまくってくれる。
Bの音が全く聴こえなかったりと、何かと評判の悪かった前作の音作りの反省点を踏まえて作り上げられた、
重厚にして深遠な響きを感じさせるサウンド・プロダクションも絶品と、まさにメタル・シーンの
エポック・メイキング足るに相応しい作品。これで(バラードを除く)楽曲のメロディに、
もう少し魅力があれば文句なしだったんだけど・・・。


INTRUDER(THRASH) - Live to Die... Relived - Kiss of Death ★★ (2007-03-26 21:34:49)

1stアルバムのハイライト・チューン。
何処となく東欧を思わせる、物悲しげなアコギのイントロに
始まり、スピーディ且つ劇的に盛り上がっていく曲展開が
素晴しい。


INTRUDER(THRASH) - Live to Die... Relived ★★★ (2007-03-26 21:26:00)

今から十数年ほど前に、BURRN!!誌のスラッシュ・メタル特集でこのアルバムが取り上げられていたのを読んで早速買いに走った記憶がある、テネシー州は、ナッシュビルならぬスラッシュビル(笑)出身の4人組、’87年発表の1stアルバム。
ツインG編成となった次作以降は、明快なベイエリア・スラッシュ路線へと徐々にシフトしていくこととなる彼らですが、シングルG編成のこの時期は、所属先がJAG PANZERやLIEDGE LORDを擁したB級メタルの登竜門(?)IRON WORKSだったこともあってか、NWOBHMからの影響も伺わすダークで湿気ったスピード・メタルを演っています。個人的には、初めてOPナンバー①を耳にした時は、HEATHENの『BREAKING SILENCE』のことを思い出しました…と書くと、どんな感じの音か伝わるでしょうか?
音質はイマサンなれど(メタル・バンドの中では最も早くフル・デジタルでレコーディングされた作品の一つらしいですが、その恩恵は全くと言っていいぐらい感じられない)、歌えるVoを活かした、静と動の対比が見事な③、メロウなBソロも印象的な④、そして本編のハイライトと呼ぶべき、東欧調の寂しげなメロディを爪弾くアコギに始まり、ドラマティックに疾走していく⑤といった強力な楽曲を擁した本編中盤の盛り上がりが圧巻。INTRUDERのカタログのベストな1枚としてファン人気が高いのも然もありなん。
惜しむらくは、CDの再発に際して最低で最高だったオリジナルの首吊りジャケットが、無難なデザインのモノに変更されてしまったことぐらいですよ。


ASSASSIN - Interstellar Experience - A Message to Survive ★★ (2007-03-24 21:45:00)

デビュー作よりも更に爆走感を増し、
アグレッシブな楽曲で固められている2ndアルバムの中にあって
この高速スラッシュ・チューンのドラマチックな
インスト・パートは、一際耳を捉えます。


ASSASSIN - Interstellar Experience - Baka ★★ (2007-03-24 21:37:42)

BAKAにしちゃいけません。
良く出来たスラッシュ・チューンですよ、これは。


S.D.I. - Mistreated - Night of Tears ★★ (2007-03-24 21:29:39)

他の3rdアルバム収録曲同様、メロディアスな歌メロは
スラッシュと言うよりメロディック・パワー・メタル的。
スピーディな前半から、中盤のアコギ・パートでスッと引いて、
そこから再びアクセル全開で突っ走る曲展開や、
勇壮なGソロは非常にカッコイイ。
ただ、Voが起伏に富んだメロディを歌いきれていないのが惜しい。


S.D.I. - Sign of the Wicked - Comin' Again / Sign of the Wicked ★★★ (2007-03-24 21:24:55)

2ndアルバムのOPを飾る、SDI屈指の名曲。
初期HELLOWEENを倍速化したかのような、
カミソリの如き高速スラッシュ・ナンバーだが、
中盤にきっちりと「溜め」パートを作っていたりと、
力押しに頼らない曲作りの巧さも光る。


SDI - Mistreated ★★ (2007-03-23 23:35:00)

Gをフランク・ティーシングからライナー・レイジに代えて、'89年に発表された3rdアルバムにしてラスト・アルバム。
一聴して、かなりメロディ重視の姿勢を取っている事が明らかな内容で、別にそれで疾走感が失われてしまった
ワケではないのだけれども、前作『SIGN OF THE WICKED』に比べ、長尺・複雑化(と言うほど大袈裟なモノじゃないが)が
進んだ楽曲の数々は、スラッシュ/スピード・メタルと言うよりは、当時、ドイツで大流行の兆しを見せていた
「メロディック・パワー・メタル」と表現した方がしっくり来る印象。
勿論、それが悪いなんて事もなく、ダイナミックな曲展開が魅力のOPチューン①、疾走する正統派へヴィ・メタリックなリフと
Gソロがカッコイイ②、スラッシーな③、全収録曲中、最もジャーマン・メロディック・パワーメタル風味が強い⑦
といった楽曲は、疾走感をしっかりと保ちつつ、尚且つドラマチックで聴き応え十分。
新たに加入したGも、前任者に勝るとも劣らぬ煽情度のGソロを披露していて文句なし。
ただ、ここまで楽曲のメロディアス化が進むと、リーダーのレイナード・クルーゼがBと兼任するVoの弱さが
ハッキリと露呈してしまっていて、スラッシュ・ソングを歌うには何ら問題ない彼氏だが、
今回のような起伏に富んだ歌メロを歌うには、明らかに実力不足。また、ここに来て「陽性」のメロディが
チラホラと顔を覗かせるようになったのも、本作の印象を弱めてしまっている原因の1つのように感じられる。