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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 6801-6900

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RISK - Dirty Surfaces ★★ (2007-01-15 22:04:00)

これは'90年発表の3rdアルバムですね。METAL MANIAから出てた国内盤は、その前年('89年)に
発表されたEP『RATMAN』とのカップリング仕様でしたっけ。
さて、その本作。SE①を経て疾走曲②が始まった途端に「おや?」となる。以前に比べて音圧が
下がったというか、リフからスラッシュ・メタル的な重厚感が薄れ、随分と聴き易くなった印象を受ける。
代わりアコギやKey等の導入でメロディが強調された収録曲の数々は、Voの歌メロ(特にサビ部分)にしろ、
リフにしろソロにしろ、前2作に比べて全体的にかなりメロディアスな仕上がりで、
より正統派へヴィ・メタルへの接近が感じられる作風。
尤も、前述の②を筆頭に、相変わらずスラッシーな疾走感は健在だし、何より、ACCEPTを思わせる重厚な④、
RISK流のヘヴィ・バラード⑧、そして勇壮なリフと、ドラマチックな曲展開が素晴しい⑨といった、
新たな魅力を宿した楽曲群は非常に強力。
但し、ここまでメロディ重視の姿勢が進むと、ハイミィ・ミークスの声域の狭いVoに
不満を覚えてしまうのも、また事実なのだけど。


RISK - The Daily Horror News - Roadwar ★★ (2007-01-11 21:49:23)

Voこそ直線的なスラッシュ・スタイルだが、
シャープなリフや、疾走するツイン・リード・ギターは
JUDAS PRIESTばりのカッコ良さを誇る
1stアルバムのハイライト・チューン。


RISK - Hell's Animals ★★ (2007-01-11 21:42:00)

アルバム・デビュー前にバンドから離脱していたオリジナル・メンバーのシロ・ハーマン(G)が復帰、
新たに5人編成へと生まれ変わって、'89年に発表された2ndアルバム。
デビュー作の延長線上にある「勇壮なパワー/スラッシュ・メタル」路線に変更はないが、
正式にツインG編成へと移行した成果か(1stではハイミィ・ミークスがVoとサイドGを兼任していた)、
サウンドに宿る重量感がこれまでとは桁違い。ゆえに今回は、重厚なリフやリズムを活かした
ミドル・チューンの出来が秀逸で、中でも、Keyの使い方が効果的な⑥、劇的なインスト・パートを持つ
一際ヘヴィな⑧、雄々しくも物悲しい雰囲気漂う⑨といった楽曲は、本作を代表する名曲/佳曲。
正直、“ROAD WAR"のようなキラー・チューンがない分、疾走曲のインパクトは前作に1歩譲るものの、
ヘヴィなパートはよりへヴィに、走るべきパートでは思いっきり突っ走るというメリハリの効いた構成は、
バンドの「格」を確実に向上させている。一層メロディックに練り込まれたGソロも○。
同じドイツ産のPARADOX辺りがイケる口の方には、是非とも1度聴いてみて頂きたい力作。


YOUTHQUAKE - YOUTH...MINE AND THE TRUTH ★★ (2007-01-10 21:29:00)

ジャケットのグループショットや、発売元がEXTASYレコーズである事からも明らかな通り、
一応は「ビジュアル系」に分類されるバンドなのだろうが、本作('94年発表の2nd)に漲る
強靭なスラッシュ・サウンドに、ルックスから想起される軟弱さは皆無。そもそもヤワな連中が
'94年というスラッシュ・メタル冬の時代に、これほど気合の入った作品を作れる筈もないわけで。
スロー・スタート気味だったデビュー作に対し、今回はのっけの②(①は短いSE)からアクセル全開。
アグレッシブなスピード・チューンがアルバムの大半を占め、しかもその何れもが
リフにしろGソロにしろ、勢いで誤魔化すことなく丹念に練り上げられている。
ヘヴィに歪んではいてもしっかり歌う事の出来るVoも、肩の力がイイ具合に抜けて表現力の幅が広がっているし、
何より、Gソロを始めとするメロディ面の強化が図られた事で、楽曲のキャッチーさも大幅に増している点が大きい。
イントロに“君が代"を配した高速スラッシュ・チューン⑤や、アコギを用いて一際メロディアスに
聴かせる⑨といった楽曲は、その成果であり本作のハイライト。立派に世界水準のスラッシュ・メタル・アルバムだ。


RISK - The Daily Horror News ★★ (2007-01-10 08:34:00)

RISKと言えば、曲者揃いのジャーマン・スラッシュ勢に比べると毒が弱く、HELLOWEENを初めとする
メロディック・パワー・メタル勢に比べるとメロディに愛想がない。ついでにルックス的にもイケてない・・・と、
その地味さゆえ、結局日本ではブレイク出来ないまま消えていった印象が強いが、
この'88年発表のデビュー作で聴ける、飾り気のない勇壮なパワー・メタル・サウンドは、実に魅力的。
本作は彼らの全アルバム中、最もスラッシュ色が強く出た1枚で、OPチューン①を筆頭に、
重厚なリフ、力強く疾走するリズム、それに直線的なVo(きっちり歌う事も出来る)を駆使して、
ひたすらラッシュするスタイルは単純にカッコイイ。また、「押し」の一手で寄り切るのではなく、
アコギや叙情メロディを効果的に用いて、アルバムの流れに起伏を生み出しリスナーを飽きさせない辺り、
流石、メンバーのキャリアの長さは伊達じゃない、といった感じ。
特に、JUDAS PRIESTばりのリフ・ワークとツインGがガッツポーズものの②や、Gリフとアコギの絡みが
スリリングな⑥に始まり、ドラマチックな曲展開が魅力のインスト曲⑦を経て、
②と双璧を為す本編のハイライト・チューン⑧へと雪崩れ込む、アルバム後半の構成は白眉。
個人的には、RISKの作品ではコレがベストかな。


DESTRUCTION - Them Not Me ★★ (2007-01-08 10:37:00)

熱心なファン以外は、もう誰もその存在を覚えていないであろう(アンドレ・グリーダー以上の影の薄さを誇る)
トーマス・ローゼンメルケルをDESTRUCTION三代目シンガーの座に迎え、'95年に発表された6曲入りEP。
その彼氏のハードコア・テイスト漂う歌唱(勿論、メロディアスにも歌える)と、モダンな
サウンド・プロダクションとが相俟って、一聴、かなりヘヴィな印象を受けるかもしれないが、
実際のところ、相変わらず一筋縄では行かない、テクニカルなリフ・ワークをフィーチュアした楽曲に、
モダン・へヴィネス勢からの影響は殆ど感じられない。特に、スラッシーな勢いに満ちた①②⑥といった楽曲は十分に魅力的。
ただ、あの構築美溢れるクラシカルなツイン・リード・ギターの旨みは大きく後退していて、最後の⑥まで来て、
漸く華麗なツインGを聴くことが出来るものの、全体的にGソロはかなりラフな設計。これはかなり厳しい。
その代わりと言ってはなんだけど、アグレッシブなDsの踏ん張りが作品の完成度を支えている感じが強く、
これは、オリーが最古参メンバーとしての意地を発揮した結果なのだろうか?


SACRIFICE (CANADA) - Apocalypse Inside ★★ (2007-01-06 23:55:00)

嘗て、BURRN!!の輸入盤レビューで本作が取り上げられていて、興味をそそられ買いに走った記憶がある'93年発表の4thアルバム。
初期の頃はSLAYER型のストレートなスラッシュ・メタルを演っていたらしいが(恥ずかしながら聴いたことがない)、
流石に4枚目のアルバムともなると、そのサウンドにも色々と変化が生じていて、特に顕著なのが、聴かせる姿勢の重視っぷり。
リフにしろメロディにしろ、ヨーロッパ的なダークな湿り気が多分に含まれ、アコギの効果的な導入などと相俟って、
「キャッチー」なんて単語もチラホラと脳裏に浮かぶ。それでいてスラッシーな疾走感が損なわれていなければ、
本作発表当時、メタル界で猛威を振るっていたモダン・へヴィネス勢からの影響も皆無と、
かなり理想的なスラッシュ・メタル・アルバムに仕上がっている。
バックの演奏に負けてしまっている力量不足のVoと、迫力に欠けるサウンド・プロダクションが
惜しまれるが、ここまで楽曲の完成度が高ければ、それぐらいは許容範囲内。


CRO-MAGS - Alpha-Omega ★★ (2007-01-06 20:14:00)

NYHCシーンの顔役的存在、ハーレー・フラナガン率いるクロスオーバー・スラッシャー、'92年発表の3rdアルバム。
前作『BEST WISHES』は、疾走感と重量感を兼ね備えたスラッシュ・メタルの名盤だったが、
それに比べると本作は、かなり実験的というか、如何にも「92年」という時代を感じさせる仕上がり。
まず、直線的な疾走感が大きく後退(速い曲がなくなったわけではないものの、スラッシュ・スピードにまで
達する曲は少ない)、代わりに飛び跳ねるように躍動するリズムが強調されていて、楽曲の速度が緩まった分、
これまで以上にVoの歌うメロディにスポットライトが当たっている印象。実際、その男の哀愁を感じさせる
歌メロはなかなかに魅力的で、特に、男泣きを誘う熱唱が映えるラスト・ナンバー⑧は、
静かなアコギに始まり、メロディアスなツインGをフィーチュアしつつ、激しくアップダウンを繰り返しながら
盛り上がっていく劇的な(CRO-MAGSとしては)異色の名曲。また、ラップを導入した高速スラッシュ・チューン②も、
従来のスラッシュ・サウンドと実験精神が上手く噛み合った佳曲だ。
2ndアルバムのような硬派なスラッシュ・アルバムを期待すると落胆しかねないが、個人的には、
これはこれで「有り」の1枚。でも、やっぱり最初に聴くべきは前作だよな、と。


SACRED REICH - Surf Nicaragua ★★ (2007-01-06 01:26:00)

2ndアルバムまでの繋ぎとして(?)'89年に発表された6曲入りEP。新録4曲にライブ・テイク2曲という構成で、
疾走感とヘヴィさのバランス的にも、丁度1stと2ndの中間点に位置する感じ。
新曲はいずれも強力な仕上がりで、特にイラン・コントラ事件を題材に取ったと思しき表題曲①は、
シリアスに疾走しつつ、インスト・パートでは陽気なサーフ・ミュージックの有名曲を引用するなど、
このバンドならではの捩れたユーモア・センスが堪能できる、「らしさ」炸裂の名曲。
また、BLACK SABBATHのカヴァー③における、ドゥーミーな原曲を躍動感溢れるエネルギッシュな曲調に
作り変えてしまう(しかも原曲の良さを損なっていない)アクロバティックなアレンジ・センスには脱帽モノ。
ライブ・テイクの方も、手数の多いDsを中心にガッチリとまとまった楽器陣が、アルバム・バージョン以上の
スピードで激烈に突進するド迫力のパフォーマンスが確認できるし、しかもその2曲が、
どちらも1stアルバムの中でも1、2を争う名曲なんだから嬉しいじゃないの。
場繋ぎ的性格の強い作品とはいえ、聴き応え十分の全6曲。やっつけ仕事感はまったくない。


ROSENFELD - Pigs of the Empire ★★ (2007-01-06 01:10:00)

日本のビジュアル系スラッシュ・メタル・バンド、'91年発表の1stアルバム。
硬派なスラッシャーが、うっかり裏ジャケのメンバー・フォトを見た日ひゃドン引きは必至のハデハデなルックスを
誇る5人組なれど、そのルックスだけを理由に聴かずに捨て置くには、本作のこの完成度の高さはあまりに惜しい。
OPチューンの①こそ地味な印象で掴みとしては弱いものの、ヨーロピアン・へヴィ・メタルからの影響が
色濃く薫るアグレッシブな②以降は、シャープなリフ、タイトなリズム、湿り気を帯びたメロディーとが
一丸となって畳み掛けてくる、まさに捨て曲なしのクオリティ。
特筆すべきは「押し」と「引き」を駆使して、煽情度の高いソロを連発するGコンビの存在で、各楽曲の
最大の聴き所を飾る一方、ドラマチックな⑤⑧では、アコギを用いて楽曲に静と動の落差(ドラマ)を生み出すだけでなく、
アルバム全体の流れにも緩急を演出してみせる隙のなさ。そのツインGが絡み合いながらテンションを
上げていく様が悶絶モノの高速スラッシュ・チューン⑨は、劇的な⑤と並ぶ本作のハイライト・チューン。
・・・と、楽曲のクオリティにはケチの付けようがないだけに、イマサンな音質とVoの鬱陶しいエフェクト処理が
惜しまれる。特にVoは、へヴィ・バラードの大作④で披露する生声が十分に魅力的なだけに、
こうした加工処理が本当に必要だったのか強く疑問が残るところ。(まぁ慣れの問題かもしれんけどね)


KINGS-EVIL - Deletion of Humanoise ★★ (2006-12-29 15:49:00)

全く予備知識なしに購入した、日本の逆輸入スラッシュ・メタル・バンド、'01年発表の1stアルバム。
メロディ無視の高音わめき型Voやチリチリと歪んだGリフは、なるほど、KREATORやDESTRUCTIONといった
80年代のジャーマン・スラッシュ・メタル勢を彷彿とさせる(それを現代的にアップデートした感じ?)が、
あそこまでの毒々しさはなく、寧ろ良い意味で非常に聴き易いサウンドに仕上がっている。
小気味良く疾走するリズムに乗って刻まれる、ヨーロピアンな湿り気を含んだリフはかなりキャッチーだし、
何より、2人のギタリスト(兄弟?)によって紡がれる、劇的且つメロディックなGソロが最高に素晴しい。
痒い所に手の届く、ツボを突いたメロディ展開が魅力のこのツイン・リードは、始まった途端に
曲のテンションを大きく跳ね上げる、アルバム最大の聴き所にして、このバンドの強力な武器。
あとは、本編に「ここ!」という山場が乏しいためか、クオリティの高さの割りに一聴しての
インパクトがそれほど強くない・・・という弱点さえ改善されれば、次はとんでもない傑作を作ってくれそうな予感。


VENOM - Prime Evil ★★ (2006-12-29 00:46:00)

カリスマVo.クロノスの脱退に伴い一度は解散を余儀なくされたものの、新たに2人のメンバーを迎え入れ、
4人体制で復活を遂げた新生VENOMが、'89年に発表した6thアルバム。
迫力のサウンド・プロダクション、キレのある演奏、そして何よりツインG編成への移行により、
如何にもブリティッシュなドラマ性を増大させた楽曲とが揃った本作は、クロノス不在のダメージを
殆ど感じさせないばかりか、寧ろ、以前よりも数段パワーアップした印象すら漂う。
これまで通り②④⑤⑦⑨といった荒々しいスラッシュ・チューンを多数収録する一方で、プログレ風の
インスト・パートを持つ①、邪悪な③、VENOM流正統派HMといった趣きの疾走チューン⑧等、
新要素を積極的に取り入れた楽曲も違和感なく本編に馴染んでいて、特に従来型の高速スラッシュ・チューンに、
劇的なツイン・リード・パートをぶち込んだ⑪は、アルバムを代表する名曲ではなかろうか?
確かにクロノスがいなくなってしまったのは痛いが、『WELCOME TO HELL』『BLACK METAL』といった
初期の代表作に(歴史的価値を認めつつも)思い入れは然程ない我が身には、このアルバムこそが
VENOM入門編に最適の1枚のように思えて仕方がない次第。因みに、⑥はBLACK SABBATHのカヴァー曲。


DARK ANGEL - Darkness Descends ★★★ (2006-12-29 00:20:00)

バカテクDs.ジーン・ホグランが加入、いよいよ戦闘態勢を整えたDARK ANGELが'86年に発表した2ndアルバム。
個人的に、彼らの最高傑作と言えば4th『TIME DOES NOT HEAL』が思い浮かぶのだが、(無愛想ながら)歌えるVoを擁し、重厚なサウンド・プロダクションのもと、「聴かせる姿勢」が顕著に表れていた『TIME~』に比べると、本作は殆ど正反対といっていい程にバイオレントな作風を誇る。
勢い重視のラフな音質、僅か7曲収録で30分強というタイトなランニング・タイム、マシンガンの如く情容赦なく刻まれるリフ&リズム、直線的でアグレッシブな(声質が非常にカッコイイ)Vo、迫力に満ちたツインG・・・何より、ひたすら前のめりに突っ走る「スピード命!」な収録曲の数々は、潔く痛快極まりない。
その原動力になっているのは間違いなくジーン・ホグランの超絶Dsで、一体、どういう手足の構造をしているのか、ダイナミックなリズムを鬼のように叩き出しながら、全く破綻しないそのドラミングは圧巻。人間、本当に凄いモノに出くわすと笑うしかないと言うが、まさにこれがそう。
また、スピード一辺倒で本編が単調になるのを防ぐため、しっかりと緩急が設けられている点も◎(④のイントロのBソロとか)
・・・といっても、このバンドの場合は「ムチャクチャ速い」と「普通に速い」レベルの緩急なんだけど(笑)


MORDRED - In This Life ★★ (2006-12-22 22:57:00)

「上は大水、下は大火事、な~んだ?」 答えはお風呂・・・ではなくて、MORDEDが'91年に発表した2ndアルバム。
熱く、へヴィに弾けるリズムはファンキーなのに、その上に乗るメロディは欧州的な湿り気を帯び、時にマイケル・シェンカーや
ウリ・ロートばりに泣きまくる・・・という、このバンド独特のスラッシュ・サウンドは、遂に本作で完成をみた。
飽くまでスラッシュ・メタルとファンクの要素が別々に存在していたデビュー作に比べ、
今回は完全に両者が1つの楽曲の中で融合。陽のリズムと陰のメロディという組み合わせから生まれる
ミスマッチの妙は、①のイントロから早くも炸裂しているので、お聴き逃しのないよう。
また、本作から黒人DJが正式メンバーとして加入して、随所でスクラッチングの腕前を披露
(それに呼応するかのようにVoもラップ調の歌い回しを多用)しているのだが、そうした新味をも
積極的に取り込み、叙情的なアコギ、躍動感溢れるリズム、勇壮且つクランチーなリフ、グッと来る泣きメロとを
一纏めにしてドラマチックに仕上げた組曲形式の⑥~⑦は、間違いなく本作のハイライト・チューン。
全体的に見てスラッシュ・メタルっぽさは若干後退したものの(とは言え、ストレートに疾走する⑩は名曲だ)、
唯一無二の個性的なサウンドが封じ込められた本作こそが、MORDREDの代表作なのは間違いないだろう。


FLOTSAM AND JETSAM - No Place for Disgrace ★★ (2006-12-21 22:04:00)

ジェイソン・ニューステッドをMETALLICAに引き抜かれる(しかも、その後METALLICAが作ったのは
Bの音の聴こえない『・・・AND JUSTISE FOR ALL』・・・)という大事件を乗り越えて、'88年に発表された2ndアルバム。
中心メンバーのジェイソンが抜けた事で、当然サウンドの方にも変化が生じていて、まず大きいのはBの存在感が
後退した事。代わりにツインGが曲作りの中心に据えられ、そのせいか全体的にかなりメロディアスに、
聴き易くなった印象を受ける。疾走感はそのままに、以前よりもドラマチックな曲展開を聴かせるようになった楽曲は、
スラッシュ・メタルというよりは、メロディックなパワー・メタルといった趣き。特に緩急自在のツインGは、
思いっきり弾きまくった時も良いが、じっくりと泣かせに掛かった時のメロディの煽情度が半端じゃない。
必殺の名曲①を始め、ジェイソンの置き土産的楽曲も散見されるが(いずれもスラッシーな雰囲気が強い)、
その①に匹敵する名曲④は、残ったメンバーが総力を上げて作り上げたアルバムのハイライト・チューン。
その他の楽曲も総じてクオリティが高く、当然、捨て曲もなし。本作はFLOTSAM&JETSAMの地力の高さを
見事に証明して見せた、傑作のデビュー作をも更に上回る、彼らの(現時点での)最高傑作だろう。


OMEN - The Curse ★★★ (2006-12-19 21:19:00)

後にANNIHILATORの2ndアルバムに参加する実力派Voコバーン・ファーが、それ以前に在籍していた事で知られる、アメリカン・パワー/スラッシュ・メタル・バンド、'86年発表の3rdアルバム。
「IRON MAIDEN命!」との熱い思いは痛いほど伝わって来たものの、やりたい事に実力が追い付いていなかった1st、格段の成長を遂げた秀作2ndを経て、遂に本作では「メイデンから強い影響を受けた本格派メタル・バンド」と評価するに足る、ハイクオリティな内容を聴かせるまでに至った。
リフにリードにと、スティーヴ・ハリスばりに動き回るBを筆頭に、相変わらずIRON MAIDENからの影響は絶大だが、勇壮な疾走チューン①、起承転結の効いたインスト曲⑤、力強く劇的な⑥といった楽曲のカッコ良さは、時に本家に肉薄する勢い。J.D.キンボール(’03年に病没。合掌)のパワフルなVoもクオリティUPに大きく貢献していて、雄々しい③にて中音域を駆使したメロディアスな歌い上げを披露したかと思えば、スラッシーな⑨ではアグレッシブなシャウトを決めるなど、次作EP『NIGHTMARE』を最後にバンドを去ったことが惜しまれてならない、高い能力を有していた事が良く分かる。
本家に比べるとメロディに今ひとつ深みが足りていないような気もしますが、この剛直さこそがアメリカン・パワー/スラッシュ・メタル・バンドの魅力なのも、また事実。


REVEREND - Play God ★★★ (2006-12-18 22:06:00)

元METAL CHURCHのVoデヴィッド・ウェイン率いるパワー/スラッシュ・メタル・バンド、'91年発表の2ndアルバム。
メンバーの約半数が日系人という点もユニークなバンドでしたが、本作発表の時点で既に彼らの姿はありません。残念。ただ(喜ぶべきか悲しむべきか)作品の完成度には全く影響なく、今回も前作に勝るとも劣らぬハイクオリティ。
全体的にMETAL CHURCHっぽさはかなり後退していて、その作風はスラッシュ・メタルというより、モダンなアメリカン・パワー・メタルといった趣き。マイケル・ローゼンが手掛けた肉厚なサウンド・プロダクションもそう感じさせる一因で、例えば①⑦といったスピード・チューンは、何処となく第3期LOUDNESSに通じる雰囲気も。(といってもリリースは本作の方が先ですが)
またアコギやKeyの導入等、メロディ重視の姿勢も押し進められていて、ウェインのVoも以前に比べてメロディアスに歌い上げる場面が増えているし、バラード④⑪(後者は名曲)は基より、Keyを隠し味にジックリと盛り上がる⑥のような新しいタイプの楽曲も収録。多少メロディアスになったからといって、ウェインの強力なVoを筆頭に、バンドの攻撃性が失われていない事は、前述のスピード・チューンや、CCRの名曲のアグレッシブ過ぎるナイス・カヴァー③を聴けば明らか。
METAL CHURCH的な要素は減少しても、中期VICIOUS RUMORSを彷彿とさせる音楽性は、これはこれで十分に魅力的。


METAL CHURCH - Blessing in Disguise ★★ (2006-12-17 17:55:00)

中心メンバーのカート・ヴァンダフーフ&看板Voデヴィッド・ウェインの脱退。後任として、
元METALLICA(臨時メンバーだけど)のジョン・マーシャル(G)と、元HERETICのVoマイク・ハウの
加入という、ドラスティックなメンバー・チェンジを経て、'89年に発表された3rdアルバム。
脱退したものの、カートが引き続きコンポーザーとしてバンドに関わっているので、作品の方向性自体は
1st~2ndの頃と大差ない。「これぞMETAL CHURCH!」とゾクゾクさせられるヘヴィ・チューン①なんて、
今にもウェインのシャウトが聴こえてきそうな、初期路線を踏襲したドラマチックな名曲。
その一方で、憂いを帯びて疾走するメロディと、Gアルペジオが美しい⑤のような新味の楽曲も収録されていて、
やはりメイン・メンバーが2人も入れ替われば、サウンドに変化が生じるのは当然(必然)。
特に、前任者を「剛/暗」とするなら、こちらは「柔/明」といった感じのマイク・ハウのVoの存在は大きく、
これまでのダークな雰囲気を払拭する彼の伸びやかな歌唱は、マイナー調の楽曲に(良い意味で)万人受けしそうな
メジャー感をもたらしている。あと、新メンバーがイケ面なので、ビジュアル面でも強化されてる点も見逃せない(笑)
ファンならご存知の通り、デヴィッド・ウェインとマイク・ハウの在籍時代では、そのサウンド・スタイルに
かなりの違いが見られるわけだが、本作は丁度その中間、ウェイン時代の楽曲をハウが歌うという、
過渡期ならではの味わいが魅力の1枚。


CORONER - Mental Vortex ★★ (2006-12-16 00:04:00)

スイスの技巧派スラッシュ・メタル・トリオ、'91年発表の4thアルバム。
神経質なまでにリフ/リズム・チェンジを繰り返す、複雑怪奇な曲展開がストレートに整理整頓されているのが
本作の大きな特徴で、それゆえ、発表当時は「地味」「大人しくなってしまった」との評価を受けたが
(実際それは当たってる)、個人的には、この「聴き易さ」を支持したい。
派手な展開が抑えられ、アコギの効果的な導入等で「静」の表現力に磨きが掛けられたことで、
このバンドが持つメロディ・センスの良さが浮かび上がって来たし、何より、これまでどうにも取っ付き難い
印象の強かった楽曲に、キャッチーさが備わった点が大きい。
その最大の成果が、アルバムの幕開けを飾る7分に及ぶ大作①。スラッシーな疾走感と叙情的な
インスト・パートの対比も絶妙なドラマチックな名曲。また、疾走するGソロがパワー・メタル的な
カッコ良さを演出する⑥、BEATLESの名曲の独創的なカヴァー⑧といった楽曲も素晴しい。
その一方で、殆ど印象に残らない地味な曲が幾つか収録されてるのも事実なので、とてもCORONERの
最高傑作と呼べるような作品ではないのだけど(バンドの本質が表れてる作品というわけでもないし)、
個人的には彼らの全アルバム中、最もお気に入りの1枚だったりする。


METAL CHURCH - The Dark ★★ (2006-12-14 21:19:00)

多くのファンが「デヴィッド・ウェイン在籍時代の最高傑作」と太鼓判を押す、'86年発表の2ndアルバム。
勢い任せの荒っぽさが影を潜め、まさに『THE DARK』な収録曲の数々はより一層練り上げられ、
重厚さを増したサウンド・プロダクションも充実と、バンドがデビュー作『METAL CHURCH』から
格段の成長を遂げた事実が、しかと刻み込まれたクオリティを誇る。
怒涛の突進力と、シャープなツインGが奏でる欧州風味のメロディのコンビネーションが強力な
「これでツカミはOK」のOPチューン①に始まるアルバム本編の方も、スピード・チューンは更に鋭く
(ウェインの噛み付くような歌唱がスラッシーな雰囲気を演出)、ゾクゾクさせられる不穏な緊張感を孕んだ
ヘヴィ・チューンは益々ヘヴィにと、メリハリの効いた曲作りが為されていて、だからこそ、
憂いを帯びたヘヴィ・バラード風の④や、中期IRON MAIDENを彷彿とさせるドラマチックな③といった楽曲の存在も活きて来る。
全10曲、捨て曲なし。METAL CHURCH初心者が先ず最初に聴くべきはこのアルバムだろう。
個人的にも、彼らのアルバムの中では本作がベスト1。


SILVER MOUNTAIN - Universe - Why ★★★ (2006-12-13 22:03:42)

名曲“VIKING"に勝るとも劣らないピアノ・ソロが聴ける、2nd収録のキラー・チューン。
あちらが「動」なら、こちらのピアノ・ソロは「静」の魅力に溢れていて、
タンゴ調のメロディが胸に染みます。
何より、ドラマチック極まりない曲自体のクオリティが、“VIKING"を大きく上回っているのが素晴しい。


SILVER MOUNTAIN - Shakin' Brains - Vikings ★★★ (2006-12-13 21:52:08)

NWOBHM的なリフが疾走する楽曲自体は、それほど特筆すべき点はないものの、
曲の後半部分で炸裂する、イェンス・ヨハンソン入魂のピアノ・ソロ・パートは鳥肌モノの迫力。
何度聴いても痺れます。


SILVER MOUNTAIN - Universe ★★★ (2006-12-13 21:47:00)

ありゃー、人気ないのね、この作品。個人的には、この'85年発表の2ndアルバムこそ、SILVER MOUNTAINの最高傑作であるだけでなく、80年代の北欧メタル・ブームを代表する名盤の1つだと思っているのだけど・・・。
傑作ではあったものの、ヨナス・ハンソンの素人っぽいVoと、デモテープ並の劣悪な音質に大きく足を引っ張られていたデビュー作『SHAIKIN' BRAINS』に比べ、今回は歌える専任Vo.クリスター・メンツァーの加入と、サウンド・プロダクションの飛躍的な向上(前作が悪過ぎただけともいう)で、その2つの弱点をしっかりカバー。
そして何より素晴しきは、DEEP PURPLE的なロックンロール色が減退し、北欧様式美メタル分が強化された収録曲の数々!名手ヨナス・ハンソンによる、北欧民謡風のメロディが胸に染みる①②、泣きのバラード④、ペア・スタディンのリードBも勇ましい⑥といった楽曲も冴えているが、特筆すべきは、如何にも北欧的な寒々しいリフと、クラシカルなメロディが疾走するスピード・チューン③と、脱退した天才Key奏者イェンス・ヨハンソンの後任として参加している助っ人Keyが、イェンスに勝るとも劣らないピアノ・ソロを披露するドラマチックな⑤(曲の完成度は“VIKING"以上)。
共に「これぞ北欧メタル!」という魅力をギュッと凝縮したかの如き必殺の名曲。メタル・ファンは聴かずに死ぬ事なかれ。


OVERKILL - W.F.O. ★★ (2006-12-12 20:49:00)

鉄の塊がガッツンガッツンぶつかって来るかのような感覚に襲われる①を聴いた瞬間、
多くのファンがOVERKILLの復活を確信したに違いない、'94年発表の7thアルバム。
復活と言っても、純粋に高速スラッシュ・チューンと呼べるのは②④ぐらいのもので、
疾走感自体は前作『I HEAR BLACK』と比べても大差ないのだが、それよりもダークな雰囲気や
引き擦るようなリフ・ワークが大きく後退し、演奏に歯切れの良さと躍動感が戻って来ているのが大きい。
とにかく、全体的にストロングでエネルギッシュな作風なのだ。(メロディが薄れてしまったのは残念だが・・・)
ただ、ゴリゴリと鳴りまくるD.D.バーニのBの存在感の大きさや、クオリティUPを果たした
ミッド・テンポの楽曲の魅力は、前作での試行錯誤を経たからこそ獲得できたもの。特に、
ボビー“ブリッツ"エルズワースの歌う力強いメロディに、背負った男の哀愁が漂うヘヴィ・チューン⑩はその代表格か。
本作は高い評価も納得の充実した内容を誇るが、これが力作とされるなら、
ついでに6th『I HEAR BLACK』も意欲作として再評価を望みたいところ。


C.I.A - In the Red ★★ (2006-12-08 23:31:00)

NUCLEAR ASSAULT(以下NA)のドラマー、グレン・エヴァンスのサイド・プロジェクトが、'90年に発表したデビュー作。
最近はソロ・アルバム(プロジェクト)でも「自分1人が目立つような作品は作りたくないんだ」と
大人な発言をするミュージシャンが増えたが、本作でのグレンは思いっきり目立ちまくり。
持ち前のドカドカと豪快なドラミングを駆使して楽曲を牽引し、アグレッシブにシャウトをキメ、
トドメにドラム・ソロ曲まで披露したり(あんまり大した曲じゃないけど/爆)と、ムチャクチャ楽しそう。
やっぱりソロ活動するなら、これぐらい自己主張しないとね。
で、作品の内容はといえば、これが音質にしろ楽曲にしろかなりラフ。NAからメタリックな整合感を差っ引いて、
代わりにパンクやロックンロールのノリをぶち込んだ感じ?正直、NAの音を期待するとスカされるが、
①③④⑤といったスピード・チューンは単純にカッコイイし、例えば同時期に発表されたジョン・コネリーの
ソロ・アルバムよりは、遥かにスラッシャー向き。いきなり正統派へヴィ・メタルな⑨、
グレンがじっくりと歌い上げるバラード⑩といった実験的な楽曲が並ぶ後半も、なかなか興味深いしね。
完成度を云々するよりも、聴いてるとグレンの楽しそうな顔が脳裏に浮かび、こちらまでハッピーな気分になれる1枚。


ONSLAUGHT - In Search of Sanity ★★ (2006-12-08 22:53:00)

歌える新Voスティーヴ・グリメットを迎えて、'89年に発表された3rdアルバム。
いや、化けたなぁ。前作の時点でその予兆はあったが、今回は更に曲調がドラマチック&メロディアス化。
ツインGの絡みはより一層煽情度を増して・・・と、とにかく「聴かせる」姿勢を全面展開。
これを可能にしたのが、パワーと表現力を兼ね備えたスティーヴ・グリメットのVo。何しろ12分以上にも及ぶ
パワー・バラードの大作⑦を、全くダレさせることなく聴かせきってしまうのだから、
その技量は半端じゃない。やっぱりシンガーってのは顔じゃないなぁ。(失礼)
メロディ重視のスタイルに変化したからといって、軟弱になってしまったなんて事もなく、
Gアルペジオの使い方が印象的な②、強烈なリフの刻みと、思わず一緒に叫びたくなるサビを持つ③④、
劇的なツイン・リードが聴ける⑧といったスピード・チューンには、如何にも英国産といった感じの堂々たる貫禄が漂う。
これはサウンド・プロダクションの向上で、楽曲に重量感が加わったことも大きいのかな?
また、AC/DCの名曲を完全に自分のものにしてカヴァーしている⑤も秀逸!
最早スラッシュ・メタルと言い切るには躊躇を覚える作風ながら、そんな事はどうでもよくなる程の高い完成度を誇る名盤。


ICED EARTH - Night of the Stormrider ★★★ (2006-12-07 22:51:00)

「ドラマティック・スラッシュ・メタル」と聞くと、DESPAIRの3rd『BEYOND THE REASON』と共に真っ先に頭に思い浮かぶのが、このICED EARTH'92年発表の2ndアルバム。
既に確固たる個性を築いていたとは言え、まだオーソドックスなパワー/スラッシュ・メタル風味が強く、収録曲のクオリティにもバラつきが見られたデビュー作に比べ、今回はメンバー・チェンジでVoの
歌唱力がUP(特にメロウな歌い上げが魅力)。よりツインGの煽情度も高まり、各楽曲の平均クオリティとドラマ性が飛躍的に向上・・・と、捨て曲皆無の高い完成度を誇る作品に仕上がっている。
そして何より、コンセプト・アルバムという舞台装置を用意し、アコギ、生ピアノ、オーケストレーションの大胆且つ効果的な導入、アコースティックな小曲で曲間を繋ぎ、ドラマを流麗に物語っていく
その演出手腕には、いよいよ「ICED EARTH本領発揮!」といった感が強く漂う。
その最高峰が、世のメタラー諸氏の度肝を抜いた事で知られる、劇的極まりない名曲①。カール・オルフの“FORTUNA"ばりにドカンと炸裂するイントロには、個人的にも失禁しそうになるぐらい痺れさせて頂きました。
②を筆頭に、エッジーなリフの刻みを聴けば、この頃の彼らが未だスラッシュ・メタルのフィールドに留まっている事が分かるが(そしてまたそこが良い)、本作の成功で自信を深めたジョン・シェイファー(G)は、これ以降、ドラマティシズムの追求に血道を上げていくことになる。


METAL CHURCH - Metal Church ★★ (2006-12-07 22:32:00)

ヘヴィ・メタルの空洞化現象が叫ばれていた頃のアメリカで、SAVATAGEやVICIOUS RUMORSと並んで気を吐いた
パワー/スラッシュ・メタル・バンド、'85年発表の1stアルバム。
欧州風味のツインGと、強力なVoの2枚看板で知られるバンドだが、その魅力はアグレッシブ且つドラマチックな
OPチューン①から早くも全開。この後にも、地を這うリズムとGリフの刻みが強烈な②、スラッシーに疾走する③、
劇的に盛り上がるパワー・バラード④、正統派へヴィ・メタリックな⑤、勇壮な歌メロと
印象的なツイン・リード・パートを持つ⑧、DEEP PURPLEの名曲のカヴァー⑨(アレンジにもう一工夫欲しかった)・・・と、
次々に畳み掛けてくる展開は圧巻。⑥⑦のみ大人しめだが、それもデヴィッド・ウェインのVoにかかれば
力技で聴き応えのあるメタル・チューンに早変わり。この人、一発でそれと分かる個性的な声質といい、
尖がったシャウトからバラードまで、余裕で歌いこなせる幅広い表現力といい、本当に凄いシンガーであった・・・。(R.I.P)
METAL CHURCHの全アルバム中、最もスラッシーで荒々しい攻撃性を発散する1枚。


OVERKILL - I Hear Black ★★ (2006-12-06 20:47:00)

デビュー以来、一貫して自己流のスラッシュ・メタル道を邁進してきたOVERKILLが、
唯一、流行に影響されて作り上げたと思しき、'93年発表の6thアルバム。
中~低速のヘヴィ・チューンがウネリまくる作風は、明らかに90年代型モダン・へヴィネスからの
悪影響(と言い切ってしまう)が伺えるものの、演奏自体は相変わらずパワフルなので、
速度が落ちたとは言え突進力までは失われていない。
ドスの効いたOPチューン①、緊張感を伴ったメロディアスなリフ・ワークが冴える③、ヘヴィ・バラード⑤
といった楽曲は、前作で感じられた「ミッド・テンポの曲の魅力不足」を見事に解消。また、⑧⑫と要所に
高速スラッシュ・チューンを配して、全体の流れが一本調子になるのを防ぐベテランらしい心遣いも○。
ただ、楽曲の出来・不出来にかなり差がある事と、ボビー“ブリッツ"エルズワースのマッチョなVoと、
妖しくウネル楽曲の相性は良いとは言えず、折角のメロディアスな歌唱もマヌケに響く場面が散見される点は大きなマイナス。
良くも悪くも「実験作」を域を出ない内容ながら、個人的には必要最低限のクオリティは備えている作品と力説しておきたい。


SHELL SHOCK - PROTEST AND RESISTENCE ★★ (2006-12-05 22:05:00)

今から十数年前、BURRN!!のスラッシュ・メタル特集を読んでいたら、本作が海外のバンドに混じって
「お薦めの1枚」として取り上げられていて、早速買いに走った記憶がある(うろ覚え)'91年発表の2ndアルバム。
高純度のスラッシュ・メタル・アルバムだったデビュー作『MORTAL DAYS』に対し、今回はハードコア度が
大幅に増しているのが大きな特徴で(⑦⑪のような瞬間最大風速ナンバーを収録)、直線的な歌メロを
ドスを効かせて歌いこなす迫力のVo、リフにソロにと鋭く切り込んでくるG、作品のビルドアップに大きく貢献、
リード楽器の役割も果たしているB、急き立てられるかのように疾走するDs、そして無駄なく
タイトに引き締まった楽曲と、いずれもハイテンションなカッコ良さを誇る。特に、イントロ①を皮切りに、
極上のスラッシュ・チューンが連打される②~④の猛ラッシュには、スラッシャーならノックダウン必至。
B主導で突っ走る一際キャッチーな⑫、中間部のメロウなBソロ冴える⑬といったスピード・チューンも素晴しい。
スラッシュ度とハードコア度の比率が絶妙な本作、SHELLSHOCKの最高傑作と言えばやはりコレでしょうか。


MORTAL SIN - Mayhemic Destruction ★★ (2006-12-05 20:17:00)

ロック未開の地(当時)オーストラリアから現れた5人組スラッシュ・メタル・バンドが、自主レーベルのMEGA METAL RECORDSから'86年に発表した1stアルバム(邦題は『地獄の叫び』。KISSか?)。僅か3日間のレコーディング期間と40時間のミックス作業のみで突貫制作、当初は2000枚しかプレスされなかったロー・パジェット作品でしたが、イギリスのMETAL FORCESを中心に高評価を獲得したことで瞬く間に完売。彼らにメジャー・レーベルとの契約をもたらす成功作となりました。
で、その音はと言えば、荒削りながらダイナミックな曲展開を売りにしたスラッシュ・メタル。ぶっちゃけて言えば、当時シーンにキラ星の如く溢れかえっていたMETALLICAのいちフォロワーといった感じでしょうか(でもラーズ・ウルリッヒは「良いバンドだよね!」とMORTAL SINに好意的だったとか)。前述した理由により音質はイマイチですし、キレに欠ける演奏(特にモタるDs)、邪悪さを狙った筈が逆に笑いが取れてしまったマヌケさ漂うアートワーク等、全体的に漂うモッサリ感は隠しようがありません。
しかしながら、その冴えなさ具合が本作の魅力を絶妙に担っているという。独特のイモっぽさが醸し出す、クドくない程度のオドロオドロしさをその身に纏い、垢抜けない湿り気を含んだリフ・ワークや、煮え切らない歌メロを拾うヘタウマVoの存在と併せて、NWOBHM的な雰囲気が強く漂う①②③④⑧といった楽曲は、なかなか聴き応え有り。
ふと我に返ると繰り返し聴いてる自分に気付く、切り捨て難い味わいを備えたB級スラッシュ・メタル・アルバム。


FORCED ENTRY - Uncertain Future ★★ (2006-12-04 21:51:00)

一筋縄ではいかないスラッシュ・サウンドを聴かせる3ピース・バンド、'89年発表の1stアルバム。
スラッシュといっても、有無を言わせぬスピードで聴き手を捻じ伏せるのではなく、複雑且つ自由奔放な曲展開と、
3人編成とは思えぬ音の厚さ&ハイテクニックを誇る楽器陣がスリリングに絡み合い生み出す緊張感が、彼ら最大の武器。
正直、キャッチーとは言い難い作風で個人的には苦手なタイプなのだが、不思議と本作が何度も聴けてしまうのは、
難解さは控えめに走るべきパートでは痛快に突っ走るメリハリの効いた曲構成と、テクニカル且つメロディアスな
フレーズを弾き出すG、そして強烈なウネリの生み出しバンドの中核を担う、個性的なBの存在によるところが大。
(これでVoにもっと魅力があったなら尚良かったのだが・・・)
特に、“ANACONDA"のタイトル通りにBが激しくのたうつ④、目まぐるしく緩急を入れ替えながら、
中盤ではドラマチックな盛り上がりを聴かせる⑦等は、一聴の価値のある佳/名曲かと。
ATHEIST辺りがイケル口のスラッシャーには、是非とも1度試して頂きたい作品。
尚、現在出回っている輸入盤は、解散前の'95年に発表された4曲入りEP『THE SHORE』とのお得なカップリング仕様。


OVERKILL - Horrorscope ★★ (2006-12-03 20:52:00)

多くのファンがOVERKILLの代表作と認める4th『THE YEARS OF DECAY』と、逆に随一の問題作と言われる
6th『I HERE BLACK』の間に挟まれ、どうにも印象の薄い'91年発表の5thアルバム。
まず一聴して驚かされるのが、その余りに分厚いサウンド・プロダクション。ボビー・ガスタフソンが抜け、
新たにツインG編成へと移行した効果か、これまでのゴツゴツとした無骨さから一転、
何も知らずに聴いたらベイエリアのバンドかと思うぐらい、クランチーで重厚な音作りが為されている。
このサウンド・プロダクションと、攻撃的なツインGを活かした①~⑤のスピード・チューン5連発は圧巻で
(中でも、キャッチーな風味も感じられる③はお薦めの1曲)、まさに息吐く暇もなく畳み掛けてくるといった感じ。
それに比べ、中盤以降に並ぶミッド・チューンの完成度はいずれもイマイチで、本作の大きな弱点となっている印象。
これは、やはりバンドのメロディ・メイカーだったボビー・ガスタフソンの不在が大きいと思われ、
この点に関してはGを2人加入させても、彼が抜けた穴は埋め切れなかったということか・・・。
ただ、ラストを締めるパワー・バラード⑪は、OVERKILLの叙情面を語る上で外す事の出来ない必聴の名曲だ。


OVERKILL - Feel the Fire ★★ (2006-12-02 02:21:00)

現在も活動中の、NY出身のベテラン・スラッシュ・メタル・バンド、'85年発表の1stアルバム。
古参スラッシャーの多くのデビュー・アルバムがそうであったように、本作もまた、NWOBHMを始めとする
欧州HMからの影響が色濃く表れた作風で、上等とは言い難い音質や、スラッシュというよりパワーメタル的なサウンドに
物足りなさを覚えるファンもいるかもしれないが、個人的にはこれはこれで非常にお気に入りの1枚。
特に、アグレッシブなシャウトとメロディアスな歌い上げを使い分けるボビー“ブリッツ"エルズワースの歌唱は
この頃から光っていて、②⑥のような起伏に富んだ楽曲で聴く事の出来る雄々しい歌唱は、
時に同郷バンドMANOWARの名Voエリック・アダムスの初期の頃のそれを彷彿とさせる場面も。
(そう思って聴くと、MANOWARの1stアルバムと本作の共通点は意外に多い。ベース中心の曲作りとか)
勿論、①⑤⑨といったスピード・チューンを牽引するD.D.バーニの派手なB、ともすれば剛直一辺倒に陥りがちな楽曲に
華麗な彩りを加える(⑧のソロは絶品!)ボビー・ガスタフソンのGの素晴しさは言うに及ばず。
曲作りの詰めの甘さとイマイチな音質を、バンドの前のめりな勢いが補って余りあるデビュー作である。


OVERKILL - Taking Over ★★ (2006-12-02 02:10:00)

NY出身のベテラン・スラッシャー、'87年発表の2ndアルバム。
次作以降はメキメキと楽曲をビルドアップさせ、スラッシュ・メタル度を高めていく彼らだが、
本作の時点では、未だその音はスラッシュ・メタルの半歩手前。ストリートに根差した硬派なパワーメタルといった趣き。
D.D.バーニのBが中心となって生み出す「鋼の如き質感」が特徴的なスラッシーなスピード・チューン
①②⑧(押し出しの強いサビがカッコイイ)は既に健在なれど、ボビー“ブリッツ"エルズワースの歌う
雄々しい歌メロは、現在と違ってかなりメロディアスだし(シャウターとしては兎も角、
シンガーとしてのブリッツは過小評価されていると思う)、ボビー・ガスタフソンのGも、
元々メロディックなプレイを得意としていたとはいえ、ここでは更に正統派テイストの色濃いソロを披露。
結果として、スピード・チューン以上に印象的な③⑥⑦といったミッド・チューン、そして全てを
兼ね備えた名曲⑨は、ヨーロピアンHMばりの劇的な盛り上がりを聴かせてくれることに。
それでいて、過剰な大仰さや臭みを感じさせない辺りは流石OVERKILL。クールな都会派の面目躍如といったところか。
まだまだ発展途上の段階とは言え、上り調子のバンドの勢いが如実に反映された力作。


KREATOR - Enemy of God ★★ (2006-11-30 21:28:00)

前作『VIOLENT REVOLUTION』において、初期のカミソリの如き疾走感と、中期ゴシック路線で培った
激しくも悲しいメロディを融合させることで、新たな激烈スラッシュ・メタルの創出に成功した
KREATORが、そのスタイルを更に発展させて'05年に発表した傑作11thアルバム。
とにかく楽曲が粒揃い。前作に比べ、ササクレ立った突進力は若干後退したように感じられるものの、
それ以上に魅力的なのが、リフにしろサビメロにしろ、1度聴いただけで簡単に覚えてしまえそうな「キャッチー」さ。
特に頭3曲は、アグレッシブで尚且つキャッチーという、今回の作風を象徴したかのような名曲。
そして何より本作の白眉は、アルバム全編で激情のメロディを展開する、ミレ・ペトロッツァ(意欲的に表現力の幅を広げたVoも◎)
&サミ・ウリ・シルニヨによるツイン・ギター・プレイ!
マイケル・アモットまでもがゲスト参戦を果たし、期待通りのトリプル・ギター・バトルを繰り広げる⑦に至っては、
シャープ且つ勇壮に疾走する楽曲そのものの完成度の高さと相俟って、間違いなく本作のハイライト・チューン。
ラストを劇的に締める⑪~⑫の流れも素晴しい。
11枚もアルバムを発表したベテランでありながら、全く守りに入らないKREATOR。いやはや、恐れ入った。


ZNOWHITE - Act of God ★★ (2006-11-28 21:14:00)

後にCYCLONE TEMPLEを結成する黒人スラッシャー、グレッグ・フルトン(G)が在籍していた事で知られる
イリノイ州シカゴ出身の4人組スラッシュ・メタル・バンド、'88年発表の2ndアルバム。
そのグレッグ(当時はイアン・タフォーヤと名乗っていた)が全曲手掛けた収録曲は、CYCLONE TEMPLE時代に
比べると曲展開が直線的で、メロディよりもスラッシーな疾走感が強調された仕上がり。
とは言え、ダークな楽曲は欧州的な湿り気をたっぷりと帯びているし、緩急の効いた⑤や
9分以上に及ぶ⑧といった大作からは、後のドラマチック・スラッシュ路線への萌芽が既に感じ取れる。
アグレッシブ且つ流麗なグレッグの精度の高いGと、このバンドのもう1つの売りである女性Voニコル・リーの、
力強くも憂いを帯びた(ちょっと赤尾和重に似た声質の)歌声も非常に強力で、特に、両者の
強烈な「泣き」っぷりが威力の高いフックとなって、聴き手へと抉り込んでくる疾走チューン①⑥は
「これを聴くためだけにアルバム買っても損はない!」と断言したくなるほどの超名曲。
最近、本作のデジタル・リマスター盤が再発されたので、未聴の方はこの機会に是非。


ZOETROPE - A Life of Crime ★★ (2006-11-26 20:46:00)

イリノイ州シカゴ出身のギャングスタ・スラッシャー、ZOETROPE(イートロープ)の'88年発表の2ndアルバム。
ランニング・タイムがいずれも2~3分台とタイトに絞られた楽曲は、硬派なVo、湿度低めの乾いたリフ、
そして威勢良く疾走するリズムと、男気系ロックンロール的な雰囲気を強く漂わす。
とにかく、骨太な演奏(特にDsが秀逸)に支えられ、小細工抜きで疾走しまくるサウンドが非常に気持ち良い1枚。
それでいて必要以上の「熱さ」を感じさせない辺りは、いかにもシカゴの都会派といった感じだ。
時折、楽曲から匂い立つ哀愁や、勇壮なリフ、2本のギターのハモリ具合なんかがIRON MAIDENを
彷彿とさせる、②⑨のような佳曲の存在が良いアクセントとなっていて、単調さも殆ど感じられない。
また、しつこさや重さのないアッサリとした作風なので、確かに何度でも聴けてしまう(聴き返したくなる)
かなり中毒性の高い作品でもある。


HEATHEN - Victims of Deception ★★ (2006-11-25 20:00:00)

ベイエリアの苦労人スラッシャーが、数々のトラブルを乗り越えて、'91年に漸く発表した2ndアルバム。
まず一聴して耳を疑うのが(失礼)、デイヴィッド・ゴッドフレイのVoの上達振り。思わずブックレットで
メンバーの名前を確認してしまったぐらい、別人のような歌唱でRAINBOWの名曲のカヴァー④や、泣きのパワー・バラード⑥といった、
(かつての歌唱能力で演ったら失笑間違いなしの)難易度高めの楽曲を堂々と歌いこなしていて驚かされる。
作品自体も、イマイチ垢抜けなかった——でもそこが大きな魅力だった——1stアルバムに比べ、
パワー、スピード、ヘヴィネス、それに重厚なサウンド・プロダクションと、全てにおいて格段に洗練された印象。
ただ、それと引き換えに欧州ヘヴィ・メタリックな湿り気が後退していて、その点で大作化した楽曲に多少の冗長さを
感じるのも事実だが、どっこい、リー・アルタス&ダグ・ピアシーの名コンビによる劇的なツイン・リードGは健在。
その涙腺を刺激する泣きメロの洪水には、僅かな鈍りも見られないので安心されたし。


NUCLEAR ASSAULT - Survive ★★★ (2006-11-25 00:04:00)

NUCLEAR ASSAULTの代表作と言えば、やはり3rd『HANDFUL WITH CARE』辺りということになるのだろうが、個人的に彼らの作品で最もお気に入りの1枚は、'88年発表のこの2ndフル・アルバム。
リフと疾走感のハイテンションなカッコ良さは抜きん出ていたものの、似たり寄ったりの楽曲の画一性という弱点(…というと言い過ぎか。むしろ「そこが良いんじゃない!という人もいるだろうし)を抱えていた前作『GAME OVER』に対して、今回は収録曲1つ1つが明確に個性を主張。これは、よりスラッシュ・メタル度が高まり曲展開にダイナミズムが増した事と、金属的な声質は魅力ながらともすれば単調になりがちだったジョン・コネリーの歌唱に、メリハリが備わった事が大きいと思われる。
Gソロも単なる彩り以上の存在感を発揮し始めているし、緩急の効いた①、暴力的なアグレッションを撒き散らす④、「ハイパー化したIRON MAIDEN」との印象を残す⑤⑦等、NUCLEAR ASSAULTいよいよ本領発揮!といった感じの名曲が並ぶ。
音質の悪さを差し引いても、スラッシュ・メタル史に燦然と輝く名盤の1つ・・・じゃないかな、と。いやでも音質はもうちょっと頑張って欲しかったところではあるのですが。


SANCTUARY - Refuge Denied ★★★ (2006-11-23 17:31:00)

MEGADETHのデイヴ・ムスティンによるプロデュースと、強烈なハイトーンを操るワレル・ディーンのVoが
話題になった、シアトル出身のパワー/スラッシュ・メタル・バンド、'88年発表の1stアルバム。(邦題は『新たなる聖地へ』)
歌メロや曲展開にキャッチーさの欠けるQUEENSRYCHEタイプのスラッシュ・メタル・バンドってのは
苦手中の苦手なのだが、本作はその数少ない例外の1つ。アグレッシブでありながらも非常にキャッチーな名曲③や、小気味良く疾走する⑧、「押し」と「引き」を心得たワレルの歌唱が堪能できる、“支配者の仮面”なる邦題の冠されたドラマティックな⑨といった楽曲の存在はやはり大きい。全体的に良い意味で分かり易い作風なのだ。
デイヴ・ムスティンがプロデュースを務めている関係からか、各楽曲からそこはかとなく漂うMEGADETHっぽい雰囲気も、個人的にはプラスに作用。JEFFERSON AIRPLANEのカヴァー⑥ではGソロも担当)
実際、ジャケット・デザインから楽曲まで、より本格派への成長を遂げた作品として評価の高い2ndアルバムは、前述の要素が薄まってしまっていて、個人的には今ひとつピンとこない作品なのであった・・・。


HOLY MOSES - Strength, Power, Will, Passion ★★ (2006-11-23 00:42:00)

長らくバンドの司令塔だったアンディ・クラッセンが、その活動から完全に身を引いてしまったため、
HOLY MOSES史上初めてアンディ抜きで製作された、'05年発表の9thアルバム。
今回、曲作りの中心に座ったのは、バンドの看板Voザビーネ・クラッセンと、新加入のGマイケル・ハンケルで、
正直、その情報を耳にした時は不安に思ったものだが、実際、出来上がった作品を聴いてみると、
これが嘗ての作品群と比較しても何ら遜色のないクオリティを誇っていて、嬉しい驚きを覚えた。
勿論、アンディ不在の影響が皆無なわけではなく、ミッド・テンポの曲にイマイチ冴えが感じられない点や、
欧州的な陰りを湛えたメロディが後退してしまった点は(個人的には)痛い。
しかし、以前よりもグッとビルドアップされて、デス・メタル的な殺気すら放つようになった硬質な楽曲群は単純にカッコイイ。
更にブルータル度を増したザビーネ姐御のVoと、ボトムの効いたサウンド・プロダクションも迫力の演出に大きく貢献。
総合的には、新生HOLY MOSESの門出を祝うに相応しい力作に仕上がっている。


WHIPLASH - Insult to Injury ★★ (2006-11-21 23:00:00)

歌える専任Voの加入に伴い、疾走感よりもメロディを重視した作風への変化が賛否両論を呼んだ、'89年発表の3rdアルバム。
スピードとメロディのバランスが絶妙だった前作を愛する身には、この変化は歓迎出来るモノではなく、
1、2回聴いたきりでCDを売っ払ってしまった記憶があるのだが、リマスター盤が出回り始めたのを期に
改めて購入して聴き直してみたら、これが案外悪くない。というか、とても良い。
インスト曲⑨は、彼らがスピードに頼らずとも素晴しい曲が書ける事の証明のようなものだし、
従来のスラッシュ路線を踏襲した激烈な⑥⑪、「日本が原爆落されたのは自業自得だぜ~」と歌う歌詞はともかく、
曲自体は正統派へヴィ・メタリックで非常にカッコイイ(唸りをあげるBがナイスな)②等、
しっかりとした練り上げの感じられる名曲・佳曲が目白押し。
ただ皮肉な事に、練り上げ過ぎが原因で楽曲の即効性が落ちてしまっているのもまた事実なわけなのだが・・・。
取り合えず、スルメ盤として根気強く付き合って頂きたい1枚である。


WHIPLASH - Ticket to Mayhem ★★★ (2006-11-20 22:45:00)

ニュージャージー出身の爆走トリオ・スラッシャー、'87年発表の2ndアルバム。
プアーな音質さえもブッちぎるGリフのカッコ良さと、タコメーターが振り切れんばかりの疾走感が際立っていた1st『POWER AND PAIN』に対し、今回はスピード・ナンバーで畳み掛ける基本姿勢はそのままに、重厚感を増したサウンド・プロダクションの下、バラードリーな③や、ドラマティックな曲展開を聴かせる⑧のような楽曲を収録することで本編の流れに緩急を演出。ガムシャラな突撃精神を抑制し、作品全体の完成度を見据えた姿勢にバンドの成長ぶりが見て取れます。(それを喜ぶか、悲しむかは人それぞれ)
前作ではメロディもへったくれもなかったVoが、本作ではヘシャゲ声なりに「歌って」いて、WIPLASH流バラードと呼べそうな③における歌唱は、なかなかどうして聴かせてくれます。また、これまで以上に印象的なメロディで斬り込んで来るGも、非常に良い仕事をしている事を付け加えておきたいところ。
スラッシュ・アルバムとしての魅力は前作に軍配が上がるでしょうが、名手TJ・スカグリオーネ(Ds)をSLAYERに引き抜かれる(しかもデイヴ・ロンバートがすぐに出戻った為、TJはあっという間にお払い箱となった)というトラブルにもめげず、直ちに体勢を立て直して発表されたガッツ溢れる本作だって決して舐めたもんじゃない。
というか「WHIPLASH初めて聴く」という初心者には、まず本作をプッシュしたいところですよ。個人的には。


LUDICHRIST - Powertrip ★★ (2006-11-19 21:05:00)

前作に比べてググッとスラッシュ度をアップさせた、NYのクロスオーバー・スラッシャー、'88年発表の2ndアルバム。
饒舌なVoはラップから、弾けるグルーヴはファンクから、怒涛の突進力はハードコアから、
ハイ・テクニックに支えられた自由奔放な曲展開はジャズから、そして唐突にクラシカルな
インスト曲を披露したりと、様々なジャンルからの影響を巧みに消化して、ユニークな
スラッシュ・メタル・サウンドを創出するその洗練された手腕は、流石、都会派NY出身といった感じ。
アルバム全編に、陽性というかファニーな雰囲気が横溢していて、個人的にはもう少し「陰り」の感じられる音が
好みなのだけど(⑨のようなタイプの曲がもっとあれば・・・)、この個性と質の高さは確かに魅力的。
ただ、モッサリとしたドラム・サウンドには、もう少しキレが欲しかったかな。
折角の疾走感が、だいぶスポイルされてしまっているような気がするのだけど・・・。


HOLY MOSES - Disorder of the Order ★★ (2006-11-17 23:20:00)

EP『MASTER OF DISASTER』で復活の狼煙を上げたHOLY MOSESが'02年に発表した、実に8年振りとなる通算8枚目のフル・アルバム。
驚いた事に、中心メンバーだったアンディ・クラッセンがラインナップにその名を連ねておらず、
「それじゃ復活しても意味ねーだろ」と不安に思うも、裏方として作曲やプロデュースに関わっているようなのでホッと一安心。
そのアンディが全曲手掛けた収録曲はと言えば、これがかなり強力な仕上がり。先のEPを聴いた時点で心配はしていなかったが、
パワーダウンしていたり、モダン方向へ妙な色気を見せる事無く、バンドの全盛期を思わせる
勇猛且つダイナミックなスラッシュ・チューンがズラリ。イントロに続いて②のリフが走り始めた瞬間、
多くのファンが本作のクオリティを確信したのではなかろうか。また、アグレッシブでありながらも非常にキャッチーな
③のような楽曲も収録されていて、全体としては3rd『THE NEW MACHINE OF LICHTENSTEIN』の作風に近い感じ?
アンジェラ・ゴソウの先輩格である、ザビーネ・クラッセン姐御の強力無比な野獣Voも当然健在で、
容姿も声も衰え知らず。(不良娘→女王様といった風格の変化は感じられるが)
HOLY MOSES未体験のスラッシャーにも自信を持って薦められる、会心の復活作である。


AWFUL TRUTH - Awful Truth, The ★★ (2006-11-17 23:04:00)

GALACTIC COWBOYSの前身として知られるトリオ・バンド、AWFUL TRUTH(オーフル・トゥルース)が唯一残した'89年発表のデビュー作。
サウンド的には「スラッシュ・メタル+70年代ロック÷プログレッシブ・ロック」といった趣きで、
これも一種のクロスオーバー現象の産物なのだろうか?正直、スラッシュ・メタルというジャンルに
入るかどうかは微妙だけど、ブンブン唸りをあげるBが刻む骨っぽいリフには、確かにスラッシーな感触が宿る。
後にGALACTIC COWBOYSで全面開花する、キャッチーなメロディ、浮遊感を湛えた歌メロ、美麗なVoハーモニーと、
スラッシーなリフが生み出すミスマッチの妙・・・という独特な味わいは、この時点で既に殆ど完成の域に達している。
GCと異なる点と言えば、こちらの方がより叙情的でドラマチックという部分だろうか。
とりあえず、先の読めない曲展開と、とても3人編成のバンドとは思えない音の広がりが魅力の名曲④は必聴。
非常に高い個性と完成度を備えた1枚ながら、これがリリースされた時には既にバンドは解散していたといのだから、
これが本当の「恐るべき真実」。(お後が宜しいようで・・・)


DESPAIR - Decay of Humanity ★★★ (2006-11-17 22:50:00)

ドイツの5人組様式美スラッシュ・メタル・バンド、'91年発表の2ndアルバム。
正常な感性の持ち主の購買意欲を著しく減退させる、悪趣味なイラスト・ジャケットは頂けないが(CETTURY MEDIA所属バンドらしいと言えば、まぁその通りですが)、内容の方はハイクオリティ。
傑作3rd『BEYOND ALL REASON』ほどの一種宗教的な荘厳さや、ドラマチックな曲展開は聴かれないものの、スラッシーなリフ&リズムの上でツインGが流麗且つ華麗に乱舞する、時に気品すら漂う独特なスラッシュ・サウンドはこの時点で既に完成をみています。
アグレッシブな濁声と朗々歌い上げるクリーンVoを使い分けるニュー・シンガー、アンドレアス・ヘンシェルの加入は確実にバンドのレベルを数段上に引き上げており、小気味良く疾走するリフ&リズムと、クラシカルなメロディの緊張感を孕んだ絡みが絶品の①⑥、中間部にて突如挿入されるアコギ・ソロが非常に効果的な⑦といった楽曲も素晴しいが、何と言っても白眉は④。特にサビ部分のネオ・クラシカル調のメロディ展開には心が震えます。
スラッシュ・テイストとクラシカルな味わいがバランス良く配合された、DESPAIR入門編にもお薦めできる名盤で、これを聴いてしまうと、ヴァルデマー・ゾリヒタには「こんな凄い才能持ってるんだから、VOODOOCULTやGRIP INC.での活動は止めて、さっさとDESPAIRを再結成してくれ!」とお願いしたくなるってもんですよ。


HALLOWS EVE - Monument ★★ (2006-11-16 20:30:00)

快活なアメリカン・パワー/スラッシュ・メタルを聴かせる5人組の、'88年発表の3rdアルバム。
良くも悪くもB級スラッシュという印象の強かった前2作に比べ、本作は一皮ベロリと剥けて、本格派の装いのその身に纏わせている。
とにかく音の太さがまるで違う。そこに宿る重量感もこれまでの比ではない。お陰で①(タイトルもズバリ“SPEED FREAK")を
筆頭にスピード・チューンには迫力が出たし、③④のようなヘヴィ・チューンにも説得力が増した。特に、ブッ太いリフが
力強くザクザクと刻まれるミドル・チューンのカッコ良さは、本作の肝。ドスの効いたVoと、歯切れの良い演奏、
そして以前よりも練り上げられたGのフレーズと相俟って、聴いていると勝手に体が動き出します。
ちなみに②はQUEENの有名曲のカヴァーだが、元々、カラリと湿度の低いサウンドが持ち味のバンドなので、
このノリノリのロック・チューンも違和感なくハマっている。収録位置も良い。


FASTKILL - Infernal Thrashing Holocaust ★★ (2006-11-15 22:23:00)

「名は体を現す」とはよく言ったもので、まさにFASTでKILLなスラッシュ・メタルを聴かせる、
日本の5人組スラッシャー、'04年発表の1stアルバム。
とても90年代を通過したとは思えぬ、80年代的なつんのめり気味の疾走感がアルバム全編を支配していて、
狂ったようなテンションで喚きまくるヒステリックなVo、カミソリの如き殺傷力を備えたクランチ・リフ、
タイトに突っ走るリズム隊、スカッと短いランニング・タイム(全9曲で30分弱)と、初期ジャーマン・スラッシュ・メタル的
雰囲気を濃厚に漂わせた1枚で、成る程、KREATORやDESTRUCTIONのカヴァーを演ったらハマリそうだ。
終始「躁」状態で一瞬たりとも緩まないテンションと、強烈なスピード感に身を任せているうちに、
あれよあれよと聴き終えられる勢いの良さは買いだが、個人的には楽曲の画一性が気になったりもする。
ここぞ!という強力な聴かせ所があれば尚良かったのだけれど・・・まぁ、好みの問題かな。


PARADOX - Heresy ★★ (2006-11-15 22:09:00)

ジャーマン・スラッシュ・メタル史に残る名作として、燦然と光り輝く'89年発表の2ndアルバム。
勇壮なリフ、ツインGの煽情力、歌メロの質、曲展開、様式美に則ったアルバムの構成と、
あらゆる要素がデビュー作から桁違いのグレードアップを遂げており、十字軍を題材にした
(昨今話題の『ダ・ヴィンチ・コード』にも通じるものがある)コンセプト・アルバムということで、
ドラマ性に満ちたスケール感も、これまでの比ではない。
JUDAS PRIEST、IRON MAIDENばりのメロディックなツイン・リードGが際立っていた前作に対し、
今回は豊潤なメロディがアルバム全編を貫き、HELLOWEENを初めとするメロディック・パワー・メタルへ接近した印象。
勿論、スラッシュ・メタル・バンドならではの攻撃性や疾走感は十分に保たれていて、それはアグレッシブなリフの刻みや、
硬派な歌メロにも明らか。(とは言え、このNWOBHM風の弾けきらない歌メロは好き嫌いが分かれるか)
まぁとにかく、1度アルバムのタイトル・チューン①を聴いてみて欲しい。起承転結が完璧に決まった
劇的極まるドラマの海で溺死すること請け合いですから。また、⑤のエンディングのアコギの余韻を切り裂いて、
スラッシーな⑥のリフが走り出す展開には「くぅ~、これよこれ!」と、思わずガッツポーズもの。


PARADOX - Product of Imagination ★★ (2006-11-15 21:11:00)

ドラマチックなスラッシュ・メタルを聴かせるドイツの5人組スラッシャー、'87年発表の1stアルバム。
彼らの人気を決定付けた名作『HERESY』に比べると、本作はまだまだ青い。歌メロにしろ、曲展開にしろ、
かなり直線的で若さに任せた荒々しさが目立ち、全体的に練り込み不足との印象は否めない。
尤も、それは『HERESY』と比較しての評価なわけで、本作単品で見るなら、その新人離れしたクオリティの高さは十分驚異的。
これぞスラッシュ・メタル!たる疾走感は次作以上に味わえるし、何より、JUDAS PRIESTやIRON MAIDENといったバンドの
最良の部分をお手本にしたかのような、劇的なツイン・リードGの威力は、この時点で既に半端ではない。
また、組曲形式でアルバムのOPを飾る、バンドのテーマソング①②、本編随一の大作曲④、
叙情的なインスト⑤を経て炸裂する⑥といった楽曲は、次作で完全開花する
「ドラマチック・スラッシュ・メタル」路線への萌芽として、見逃せない名曲。


SABBAT (日本) - Karmagmassacre ★★ (2006-11-13 21:39:00)

NWOBHM的な、コテコテの男臭いメタル・サウンドを聴かせてくれる日本は三重出身のSABBAT、'03年発表の8thアルバム。
曲名や歌詞、内ジャケに載せられたメンバーの気合の入ったコスプレ写真からも、ブラック・メタル道一直線な
バンドである事がビンビンに伝わってくるが、彼らが目指しているのは北欧のそれではなく、
飽くまでVENOMや初期SLAYERのような、どこかファニーなエンターテイメント路線。
ダミ声と素っ頓狂なハイトーンを使い分けるVoの歌唱や、わざわざ手間暇かけて再現しているチープな音作りからも、
80年代初頭の雰囲気を狙っている事は明らか。(チープと言っても素材の良さをブチ壊す類のモノではないし)
だから、禍々しく疾走するリフが北欧のブラック・メタル勢を彷彿とさせる①③といった名曲よりも、
スラッシュ・メタル黎明期を思い起こさせる②⑥⑧のようなゴリ押しスピード・チューンにこそ、
このバンドの本質が表れている様に感じるのは、決して気のせいではない・・・筈。
ただ勢い任せなだけでなく、しっかりと構築された劇的なツイン・リードG、要所で良い仕事をしているBも素晴しい。
色物バンドと侮る事なかれ。聴かずに置くには惜しい作品。


CASBAH - RUSSIAN ROULETTE ~NO POSERS ALLOWED 1985-1994 ★★★ (2006-11-12 12:10:00)

メジャー・デビュー以前に発表された、デモ・テープやLPの音源をまとめて収録した、2枚組ベスト(?)アルバム。
今となっては殆どが入手困難な作品ばかり、しかも、そのいずれもが1曲入魂の名曲揃いなので、
『BOLD STATEMENT』でCASBAHというバンドに興味を持った人間(俺だ)なら、非常に重宝する筈。
比較的最近の曲から始まり、どんどん過去へと遡っていくアルバム構成になっていて、楽曲に試行錯誤の跡が見受けられる
DISK-1も興味深いが、やはり迷いなくスラッシュ・メタル道を邁進しているDISK-2が、個人的にはツボ。
兎に角、楽曲に漲るエネルギーが半端じゃなく、音質的には今ひとつなれど(一応、リマスターはされてのかな)、
尋常ならざる前のめりな勢いの前には、そんなものは全く気にならない。
何しろ、過去の名曲群をリ・レコーディングしたベスト・アルバム『DINOSAURS』と比べても、
(録音技術には天と地ほどの開きがある筈なのに)楽曲に宿る「熱さ」「迫力」といった要素が桁違いなのだ。
これの前には『DINOSAURS』が色褪せて聴こる・・・というのが正直なところ。大好きなんですけどね、あのアルバムも。


HOLY MOSES - Reborn Dogs ★★ (2006-11-11 01:19:00)

次作『NO MATTER WHAT'S THE CAUSE』をアンディ・クラッセンのソロ・アルバムと考えるなら、
実質、HOLY MOSESのラスト作となる'92年発表の6thアルバム。
ランニング・タイムはいずれも2~3分台、ギター・ソロも殆どなし、欧州のメタル・バンドならではの湿り気を排し、
徹底的にビルドアップが図られた硬質な楽曲群は、最早、スラッシュ・メタルと言うよりハードコアの領域。
マッチョ化に一役買ってるベースを前面に押し出した音作りは、如何にも90年代的なモダンさを漂わせるが、
本作が素晴しいのは、スローダウンして内省方向に流される事なく、リフのカッコ良さにも疾走感にも、
全く鈍りが見受けられない点。特に④⑦⑧⑩といった、殺気立ったスピード・チューンの破壊力は相当なものだ。
HOLY MOSESの真価が発揮されている作品か?と問われれば答えは「NO」だが、単品で評価するなら、暴力的にイカス1枚。
ちなみに、自分が初めて購入したHOLY MOSESのアルバムだったりする。BURRN!!のレビューで30点(うろ覚え)という
ハイスコアを叩き出し、ボロクソに貶されていたのを読んで逆に興味を惹かれたんだっけな・・・。


HOLY MOSES - Terminal Terror ★★ (2006-11-09 20:52:00)

バンドのグレードアップに大きく貢献したウリ・カッシュが脱退し、何だかアンディ&ザビーネのWクラッセンによる
スラッシュ・メタル・プロジェクトと化した感のある(グループショットにも2人の姿しかない)'91年発表の5thアルバム。
とは言え、出来の方は相変わらず強力だ。ウリ・カッシュ離脱の影響か、ダイナミックな曲展開は
それほど聴かれなくなったものの、直線的な楽曲からは前作で目立ったパンク色が一掃され、
再び、曲調が王道ジャーマン・スラッシュ・メタルのスタイルで統一されているのが、本作の大きなポイント。
頭1つ抜きん出た楽曲が見当たらないので、聴き始めこそ地味な印象だが、総合点では前作を
上回っているのではないだろうか。個人的には、OPを飾るお約束のスピード・チューン②、
メロディックなインスト・パートを持つ③、ソプラノ声を導入して荘厳な雰囲気を演出する⑧なんかがお薦め。
ザビーネ姐御のVoも凶暴性に一層拍車が掛かった印象で、今回はデス声に片足(両足?)を
突っ込んだかのような咆哮を披露。最早、この声を聴いて「実は女性Vo」と言われても誰も信じまいて。


HOLY MOSES - World Chaos ★★ (2006-11-08 22:49:00)

サイドGが抜け、1st以来の4人編成に戻って'90年に発表された4th。(実際はBもアンディ・クラッセンが弾いてるのだが)
完成度は高かったにも関わらず、3rdアルバム1枚きりでメジャー・レーベルからドロップしてしまった
鬱憤を晴らすかの如く、今回はスラッシーな雰囲気が復活。①からゴリッゴリに飛ばしまくる。
いつになくアグレッシブに刻まれる、ハードコア風の硬質なリフ・ワークが前面の押し出された分、
メロディが後退。ザビーネ・クラッセンのVoも、再び凶暴性を取り戻している印象。
パンクからの大きな影響を筆頭に、実は曲調は前作以上にバラエティ豊かだったりするのだが
(⑥はDEAD KENNEDYSの、⑫はBEASTIE BOYSのカヴァーだ)、①④⑨⑩⑪といった高速スラッシュ・チューンが
物語る通り(②も良い曲)、バンドとしての基本軸にブレがないので、散漫な印象は皆無。
まぁ個人的には、各楽曲のクオリティは今一歩前作には及んでいないような気がするけど・・・。
尚、ダイナミックなドラミングでバンドのグレードアップに大きく貢献したウリ・カッシュは、本作を最後に脱退。


RITUAL CARNAGE - I, Infidel ★★ (2006-11-08 20:28:00)

逆輸入スラッシュ・メタル・バンドの代表格RITUAL CARNAGE、'05年発表の4thアルバム。
前作『THE BIRTH OF TRAGEDY』は、楽曲のクオリティは高かったものの、低音咆哮を止めたVoと、
妙にこじんまりとしたサウンド・プロダクションの迫力不足が気になってイマイチ入り込めない作品だったのだが、
今回は過去最高にも思える良好なサウンド・プロダクションに仕上がっていて、文句なし。
完全にハイトーン主体のスタイルに切り替えたVo(時々、FORBIDDENのラス・アンダーソンっぽい)の
線の細さが気になるものの、充実した楽曲群の前には枝葉末節。
特に、迫力、疾走感、リフのカッコ良さ、ツインGが生み出すメロディの旨みといった要素が、それまでより
数段ランクアップして畳み掛けてくる(曲間が殆どないのも効果的)、7曲目以降の展開は何度聴いても最高としか。


HOLY MOSES - Queen of Siam ★★ (2006-11-06 21:43:00)

女性ブルータル・シンガーの元祖、ザビーネ・クラッセン擁するドイツのベテラン・スラッシャー、'86年発表の1stアルバム。
本作を一聴してまず耳を捉えるのは、やはりザビーネ姐御の強烈なVo。その断末魔の如きシャウトは
女性・・・いや、人間離れした凶悪なブルータリティを発散。しかもブックレットの写真を見れば判るとおり、
ARCH ENEMYのアンジェラ・ゴソウに勝るとも劣らない美貌の持ち主なんだから、素晴しいじゃありませんか。
その彼女によって歌われるサウンドの方は、既に「スピーディで勇猛な王道ジャーマン・スラッシュ・メタル」という方向性が
しっかりと定まっているものの、デビュー作という事で、まだまだ大人しい印象が強い(飽くまで2nd以降と比較しての話だけど)。
これはウリ・カッシュの前任Dsが、オーソドックスなドラミングに終始している事も大きいと思われる。
尤も、それが悪いなんて事もなく、エッジーなリフ主導で突っ走る楽曲の数々は、①④⑦辺りを筆頭に
NWOBHMからの影響が色濃く薫り、アンディ・クラッセン(G)も、後にも先にもこれっきりの
メロディックなGプレイを随所で炸裂させている。未完成な部分も含めて、非常に魅力的な1枚。


HOLY MOSES - Finished With the Dogs - In the Slaughterhouse ★★★ (2006-11-05 12:20:06)

いかにもジャーマンな猛々しいリフを刻むアンディ・クラッセンのG、
人間離れした咆哮を響かせるザビーネ・クラッセンのVo、
そして地鳴りの如きリズム隊とが一丸となって突進する様がド迫力の、
HOLY MOSES屈指の高速スラッシュ・チューン。
中でも、前任者とは比較にならないダイナミックなビートを叩き出す
ウリ・カッシュのDsは白眉。


HOLY MOSES - Finished With the Dogs ★★ (2006-11-04 22:32:00)

3rd『THE NEW MACHINE OF LIECHTENSTEIN』と並んで、初期HOLY MOSESの最高傑作と名高い、'87年発表の2ndアルバム。
猛々しく刻まれるリフ、地鳴りの如く疾駆するリズム隊、邪悪な絶叫Vo・・・と、ジャーマン・スラッシュ・メタルの
王道を行くそのド迫力サウンドは、マイ・ベストである3rd『THE NEW MACHINE~』のメロディ重視路線に
物足りなさを覚えた硬派スラッシャーの諸兄にも、自信を持ってお薦め出来る強力な仕上がり。
徹底的に磨き上げられたタイトな楽曲(ランニング・タイムは全て2~3分台)に漲る、アグレッション、スピード感、
ドラマ性は、いずれも1stから段違いにパワーアップを遂げ、特に、つんのめり気味に疾走する①、
怒涛の突進力に圧倒される②、歯切れの良い演奏が痛快な③、本作のハイライト・チューン的存在の名曲④という、
頭4曲の高速スラッシュ・ナンバーによる畳み掛けと、ミッド・チューン⑤で一息入れた後の、6曲目以降の再加速感は圧巻。
そして何より重要なのが、このアルバムからバンドに加入した名手ウリ・カッシュの存在。
重量感とタイトさを兼ね備えたその強力無比なドラミングは、楽曲のスケール感とダイナミズム演出に
大きく貢献していて、流石、メタル・シーンきっての「タイム・キーパー」の異名は伊達じゃない。
アンディ・クラッセンの高い作曲能力とツボを突いたGプレイ、ザビーネ・クラッセン姐さんの
まさにアルバム・ジャケットに描かれている野獣を思わせる咆哮Vo、そして新たに加わったウリ・カッシュのDsと、
初期HOLY MOSESの三本柱が揃って高いレベルで機能している、まさに最高傑作の1つに数えられるに相応しい作品。


HOLY MOSES - The New Machine of Liechtenstein ★★ (2006-11-03 23:54:00)

HOLY MORSESの全カタログの中でも、1、2を争う高い完成度を誇る'89年発表の3rdアルバム。
バンドのメジャー・デビュー作(日本でも国内盤が発売された筈)と言う事で、クリーンな
サウンド・プロダクションの下、以前よりメロディ重視の姿勢が貫かれ、リフが
よりキャッチーに練り上げられて、正統派へヴィ・メタルへの接近を感じさせるのが本作の大きな特徴。
例えば、野獣の如き咆哮を響かせるザビーネ・クラッセンのVoも、ここでは(ダーティではあるものの)一応メロディを
なぞって歌っているし、そこはかとなく「艶」を感じさる歌唱は、これなら女性Voだと信じる気になるというもの(笑)。
また、②の間奏部分のように、押しと引きを活かしたメロディアスなGソロも、以前には聴かれなかった要素だ。
全体的にかなり聴き易い作風に仕上がってはいるが、それでも十分過ぎる程にアグレッシブ。
何しろ収録全9曲のうち、ラストを重厚に締める⑨を除く全ての楽曲がスラッシーな疾走チューンと来たもんだ。
(その⑨にしても、ちゃんと疾走パートが組み込まれているわけで)
HOLY MORSESの作品に初めて触れるという方には、まず本作を聞く事を強力にお薦めさせて頂く。


DESTRUCTION - Release From Agony ★★★ (2006-11-03 18:57:00)

ジャーマン・スラッシュ・メタル史上、随一のインパクトを誇るジャケットのアートワークも凄まじい、'87年発表の3rdアルバム。
新たにサイドGを加えたツイン・ギター編成となり、サウンド的にも大きな変化を遂げたこの作品、音質の方も、前作が「触れれば切れる研ぎ澄まされた剃刀」の如きそれだったのに対して、今回は「ぶっとい鉈」といった趣き。切れ味はそれほどでもないけど、破壊力は抜群だ。
シャープな疾走感が後退し、テクニカルに動き回る2本のGを最大限に活かしたリフまたリフの壁と、構築美すら感じさせる複雑怪奇な曲展開で畳み掛けるスタイルは、大多数のファンから高評価を得る一方で、筋金入りのスラッシャーからは「駄作」との厳しい評価の声も。
だがしかし。穏やかながら不安感漂うインスト曲①に導かれて炸裂する名曲中の名曲②、美しくも邪悪極まるスロー・チューン④を筆頭に、緩急、美醜、正気と狂気、知性と獣性、バイオレンスとユーモアが目まぐるしく錯綜する楽曲群は、4人編成の彼らだからこそ生み出し得た、唯一無二のユニークさに満ちている。(本編エンディングに唐突に挿入される、グレン・ミラー・バンドの“IN THE MOOD”の陽気さがまた怖い)
個人的にはDESTRUCTION史上、いやさ、ジャーマン・メタル史上に残る名盤と信じて疑わない。


CARNIVORE - Retaliation ★★ (2006-11-03 01:02:00)

TYPE O NEGATIVEのカリスマ・フロントマン、ピーター・スティールが在籍していた事で知られる
ニューヨークはブルックリンのスラッシュ・メタル・トリオ、'87年発表の2ndアルバム。
強烈なSE(笑)で幕を開ける本作のサウンドは、ピーターの変幻自在のBプレイにリードされる形で、
無軌道且つバイオレントに暴走しまくるハードコア罹ったスラッシュ・メタル・・・といった趣き。
マッチョで硬派な作風は時に息苦しさを覚える程だが、デタラメなまでにダイナミックな演奏と、
男の哀愁を漂わせたメロディアスな⑤、クラシック風のインスト・パートが印象的な⑧のような楽曲が
良いアクセントとなって、ダレや単調さを感じる場面は少ない。(ジミ・ヘンドリックスのカヴァー⑨も収録)
野太い声でアジりまくるピーターのVoも個性的で、その「ブルータルになった筋肉少女帯の大槻ケンヂ」唱法は、
聴き始めこそ耳障りかもしれないが、慣れると結構クセになります。
昔は、防毒服姿の兵士達の背後に聳え立つミサイルのイラストが描かれていたと記憶するアルバム・ジャケットが、
今は切り絵風の物に変更されていて、成る程、これは確かにウルトラマンに見えます(笑)


ABATTOIR - The Only Safe Place - Bring on the Damned ★★★ (2006-11-02 22:21:10)

泣きのインスト序曲“BEYOND THE ALTAR"で徐々に高められたテンションは、
勇壮なリフがドカンと炸裂するイントロ部分で早くも頂点に達する。
慌しい疾走感、野卑なハイトーンVoによって歌われる力強いコーラス、
そして中間部の劇的なツイン・ギター・ソロにも耳奪われます。


ABATTOIR - The Only Safe Place ★★★ (2006-11-02 22:03:00)

昔、EVILDEADのアルバムを買ってライナーを読むまで、バンド名をどう発音するのか知らなかった、元HERETICのVoマイク・トレスを擁するLAの5人組スラッシャー「アバトール」(最近のデータだとアバトワール?)の'86年発表の2ndアルバム。
後にAGENT STEELを結成するジョン・サイリースやフォアン・ガルシアが在籍していた事でも知られるバンドだが、両名とも本作発表以前に既に脱退済み。とは言え、作品の完成度には微塵も揺るぎなく、寧ろ、クオリティの高さは1作目をも凌ぐ。
前掛かりのスラッシーなビートに乗って、劇的なメロディ、シャープに斬り込んで来るツインG、強力なハイトーンVoが一丸となって疾走するサウンドは、やはりAGENT STEELを想起させるが、あちらよりもグッと骨太な印象が強く、IRON MAIDEN寄りのテイスト。②⑧⑩等、魅力的なスピード・チューンを揃える一方で、④のようなミドル・チューンもしっかりと聴かせる曲作りの巧さが光り、個人的にはAGENT STEELよりも贔屓にしていたりする。
ラインナップの不安定さが最後まで足を引っ張り、残念ながら本作発表後に解散してしまった。


ICED EARTH - Iced Earth ★★ (2006-10-30 21:52:00)

2nd以降はよく見かけるのに、どういうわけか本作だけは入手困難な状態が続いている、'91年発表の1stアルバム。
デビュー作という事で、まだ現在のようなスケールのデカイ大仰さは然程感じられず、どちらかと言えばオーソドックスなパワー/スラッシュ・メタルの要素が濃厚。楽曲は比較的コンパクトにまとめられ、クセの強いVoの存在と相俟って、彼らの全カタログ中、最もストレートな作風に感じられる。
だがしかし。ザクザクと刻まれるゴン太リフ、重々しく疾走するリズム、扇情的なツインG、繊細なアコギ、Keyを効果的に導入したドラマ性に満ちた曲展開etc・・・と、既にICED EARTHならではの個性はガッチリ確立済み。
特に、クライマックスへと向かって力強く盛り上がっていく②、組曲形式でアルバムの締めを飾る⑥⑦⑧は、その辺りが強く発揮された、繊細さと攻撃性の同居するドラマチックな名曲で必聴。
せっかくバンド名まで冠したのに、OPチューン①が大した曲じゃなかったりと、新人バンドならではの詰めの甘さを感じる場面は多々あれど、後の大成を予感させるのに十分な完成度を誇る1枚。


SKYCLAD - Jonah's Ark ★★ (2006-10-20 22:36:00)

実際のところは定かじゃないが、日本ではこれが最も売れたSKYCLADのアルバムのような気がする'93年発表の3rd。
因みに、国内盤は6曲入りEPとのカップリング仕様。(邦題は『ヨナの箱舟』だった)
GEORGEさんの仰る通り、スラッシュ・メタル的な攻撃性が大きく減少した収録曲は、幾つかの佳曲以外はどーにも地味で、
アルバムで一番印象に残るのが、THIN LIZZYのカヴァー曲“EMERALD"ってのは不味いんじゃないの?と。
但し、フォーク、トラッド、ケルト、おまけにスパニッシュといった民族音楽からの大きな影響が
これまで以上に積極的且つ自然に楽曲の中に取り入れられ、英国的な気品と叙情性を演出するバイオリンも、
単なる装飾に留まらず、リフにリードにと、しっかりバンドの一員として機能していたりと、
SKYCLADならではの個性は本作で確立された感が強い。批判の対象になる事の多かったマーティン・ウォルキーアの
わめき型Voも、ハードコア的な怒号Voや、デス声が珍しくなくなった現在なら、何ら問題なく許容できるレベル。
その後の欧州メタル・シーンの流行の推移を見るに、ある意味、時代を先取りした(早過ぎた)作品と言えなくもないような。


BLOOD FEAST - Chopping Block Blues ★★ (2006-10-20 22:16:00)

デビュー作で炸裂していた、歪みまくりのダーティなVoと、ジリジリとノイジーで破壊的な
Gの音色が改善され(されてしまった?)、随分と聴き易くなった'89年発表の2ndアルバム。
相変わらずスラッシュ・メタル以外の何者でもないサウンド・スタイルを貫いているが、
今回は若干メロディにも気を使った作風ゆえ、無闇矢鱈な迫力が後退してしまっていて、
その辺に不満を覚える硬派なスラッシャーも多かろうが、メリハリの効いた楽曲は前作より格段に
ダイナミズムに溢れ、そのクオリティは確実にUPしてると思うので、個人的には無問題。
但し、個々の楽曲は悪くないのに、通して聴くと強烈な聴かせ所(キメ曲)に乏しいため、
アルバム単位での印象がイマイチ薄いという弱点は、1stの時と同じ。


PYRACANDA - Two Sides Of A Coin ★★ (2006-10-18 22:25:00)

ドイツ産5人組スラッシャー、'90年発表のデビュー作。
DESTRUCTIONの『RELEASE FROM AGONY』に匹敵するキモジャケで知られる1枚だが、DESTRUCTIONのそれが
「狂気に彩られたスラッシュ・メタル」という作品内容を幾らか表現できていたのに対して、本作は、
リズム・チェンジを繰り返しながらドラマチックに盛り上がっていく、時にHELLOWEEN等を彷彿とさせるパワー・メタルがかった
メロディックなスラッシュ・サウンドが魅力なわけで、それをこのジャケで十分に表現出来ているかと言えば・・・うーむ。
まぁそれは兎も角、内容の方は高品質。当時のドイツ産スラッシュ・バンドと言えば、三羽鴉を筆頭に、
邪悪な吐き捨てシャウトを響かせるバンドが多かったが(?)、このバンドは、ヘタウマながら歌えるVoを擁して、
メロディ重視の姿勢を貫いている辺りが(個人的には)好印象。スピーディでドラマチックなインスト・パートも絶品で、
例えばアルバムのOPを飾る①。スタート時こそ平凡なスラッシュ・ソングといった趣きで
掴みとしては弱い印象なれど、中盤のインスト・パートからグイグイと力強く盛り上がっていく様は圧巻。
歌メロとインスト・パートの魅力が上手く噛み合った⑥⑦⑨は、このバンドを代表する名曲ではなかろうか。
解散前の'92年に2ndアルバムも発表しているが、よりプログレッシブ方向に舵を切ったそちらも、なかなか聴き応えのある作品だと思う。


DARKNESS - Conclusion and Revival ★★ (2006-10-17 22:19:00)

『遊星からの物体Ⅹ』を思わせるキモジャケがインパクト大な、'89年発表の3rdアルバム。
(実際、彼らは『遊星~』のテーマ曲をカヴァーした前歴がある)
前任者よりも幅広い声域を備えた新Voの加入効果で、かなり聴き易くなった印象を受けるが、
だからと言ってヤワになったわけではなく、従来通りのストレートなスラッシュ・チューン②③⑧⑫を
要所に配しつつも、Keyの隠し味が効いている正統派へヴィ・メタリックな④⑩のような楽曲も収録。
歌えるVoを活かした、よりメロディ重視のパワー・メタル路線への歩み寄りが感じられる
作風に仕上がっている。(中には⑨の如き異色曲も収録されているけど)
特に、スラッシーな疾走感を基調に、そこにドラマチックな曲展開を持ち込んだ6分以上に及ぶ大作⑦は、
リード楽器の役割を果たすBの存在の大きさもあって(このBは、ソロにリフにとアルバム全編で大活躍)、
IRON MAIDENを彷彿。デビュー当時からちょこちょこと匂わせていたドラマ志向が、遂に実を結んだ
名曲と言えるのではなかろうか。(と言っても実は2nd収録曲のリメイクなのだが。ちなみに⑥⑪もそう)
本作がラスト・アルバムになってしまったとは、残念至極。


ARTILLERY - Terror Squad ★★ (2006-10-13 00:29:00)

3rd「BY INHERITANCE」は、これまで聴いてきた全スラッシュ・メタル・アルバムの中でも、五指に入るぐらい
愛して止まない作品なれど、この'87年発表の2ndアルバムも、後の飛躍を予感させる気合の入った力作で捨て難い。
「BY~」では、起承転結のハッキリしたドラマチック・スラッシュを聴かせてくれた彼らだが、
この2ndの時点では、まだ初期衝動に任せた疾走感がアルバム全体を支配。Voがより「歌う」ことを意識し、
練り上げられたテクニカルなGソロも強く個性を主張してはいるものの、未だ東洋風のメロディが聴けない事もあってか、
それはメロディアスではあっても叙情的と言うのとはちょっと違う。もっと勢い重視で、
例えるなら初期SLAYERのメロディアスさに近い感じ?
とは言え、曲展開は既に十分過ぎる程ダイナミックだし、何より、北欧のバンドならではの
ヒヤリとした荒涼感を伴った、流麗なリフ・ワークが強力無比。これはちょっとクセになるカッコ良さ。
再結成ARTILLERYの復活作「B.A.C.K」は、この2ndアルバムの作風に一番近いように感じるのだが、
案外、彼らも本作のメロディと疾走感のバランスこそが、自分たちの理想的スタイルと考えているのかもしれない。


AGENT STEEL - Skeptics Apocalypse ★★ (2006-10-09 20:46:00)

ジョン・サイリース(Vo)率いるパワー/スラッシュ・メタル・バンド、'85年発表のデビュー作。
人格的には問題の多い人物らしいが、その歌唱能力は確かだったジョン・サイリースの
パワフル(過ぎて少々鬱陶しく感じられる場面も・・・笑)なハイトーンVoと、鋭く切り込んでくる
ツイン・ギターを前面に押し出したサウンドは、スラッシーになったJUDAS PRIESTといった趣きで、なかなかにカッコイイ。
勿論、本家に比べれば楽曲にも歌唱にも深みはないし、繊細な表現力なんぞを求めるべくもないが、
それでも、この、ただひたすらに押して押して押しまくる、剛球一直線な猪突猛進振りは、聴いてて非常に痛快。
特に、そのコテコテさ加減が嬉しいバンドのテーマ・ソングとも言える①~②と、
華麗なるツイン・ギター(片割れは後にEVILDEADを結成するホアン・ガルシア)プレイが聴きモノの
アルバム後半のハイライト・チューン⑦は、劇的なメタル・ナンバー愛好家なら一聴の価値がある名曲。
尤も、この2曲のインパクトが大き過ぎるせいで、アルバム全体の印象が薄まってしまっているような気が
しないでもないが、まぁ、そんなところもB級(?)バンドらしくて良い、ということで。


OUTRAGE - The Final Day ★★ (2006-10-07 00:10:00)

名曲中の名曲①を収録、OUTRAGEの名をスラッシャー以外にも広く知らしめた、'91年発表の4thアルバム。
NWOBHM、スラッシュ・メタル、実験精神と、前3作の長所を程好くブレンドした感じの
本作を一言で表現するなら、それは「キャッチー」。
とにかくリフにしろメロディにしろ、(必要にして十分なアグレッションを保ちつつも)
耳馴染みが抜群に良く、それが高速スラッシュだろうが、引き摺るようなヘヴィ・リフを持つ曲、
バラードやドラマチック・チューンだろうが、非常に取っ付き易い。
前作から更なる成長を遂げた橋本直樹(Vo)の歌メロも過去最高の充実度で、本作のキャッチーさの演出に大きく貢献している。
OUTRAGE未体験者が先ず最初に聴くべきは、間違いなくこのアルバムだろう。


VIO-LENCE - Oppressing the Masses ★★★ (2006-10-05 23:02:00)

1st『悪夢』をいきなり米メジャー、MCA傘下のMECHANIC RECORDSからリリースして華々しくデビューを飾るも、それ1枚きりであっさりドロップ。その後、ベイエリア・スラッシャーといえばここ!のMEGAFORCEと新たに契約を結び、’90年に発表した2ndアルバム。タイトルは『オプレッシング・ザ・マッセズ』…って、これにも何か気の利いた邦題をつけたれよと。シュールなジャケットはなかなかのインパクト。
VIO-LENCE作品に初めて触れたのが本作で、その割には碌に聴きもせず長らく箪笥の肥やしにしていましたが、ここ最近の(己の中での)ベイエリア・スラッシュ熱の高まりが昂じて、改めて引っ張り出して来て聴き直してみたら…いや、なかなかどうして力作でした。
LAAZ ROCKITにも匹敵する獰猛な音色で切り刻まれる、輪郭のクッキリとしたクランチ・リフ、切迫感を醸し出す上擦り気味のシャウトVo、気合の入った掛け声コーラス、「ヴァイオレンス」なんてバンド名に反して、実は結構メロディックなソロを要所で閃かせるGチームetc.…いずれも聴き応え十分。でも実は何より気に入っているのは、音数を詰め込みまくって突っ走るDsという。畳み掛ける性急なビートには体内のスラッシュ魂にボッと火を点される思いですよ。多少のドタバタ感はあれど、そのタメ知らずの前のめりっぷりに却ってグッと来ます。
歌詞がヤバ過ぎて発禁食らった⑤が代表曲として知られていますが、存外キャッチーですらある掛け声コーラスをフィーチュアして憑かれたように突っ走る①⑥⑨等、それ以外の収録曲の平均レベルもかなり高め。クオリティでは前作に一歩も引けを取りませんよ。


SADUS - A Vision of Misery ★★ (2006-10-02 22:37:00)

スティーブ・ディジョルジオが在籍していた事で知られるベイエリア・スラッシュ・バンド、'92年発表の3rdアルバム。
溜めと疾走を繰り返しながら、クライマックスへ向けて昇り詰めていくという、実にオーソドックスな
SLAYER型スラッシュ・メタルを実践しているバンドながら(Voも音程無視のシャウト・スタイル)、
そこに名手スティーブ・ディジョルジオの個性的なBが加わる事によって、他のバンドにはない独特の魅力が発生している。
フレットレス・ベースを駆使して目まぐるしく動き回り、強烈なウネリを生み出すそのBプレイは確かに素晴しいが、
個人的には、しっかりとバンド・サウンドの要となり、楽曲をスリリングに盛り上げている点を評価。
特に、タイトなDsと一体となって疾走した時のドライブ感は、ちょっと堪えられない爽快さでクセになります。
また、彼の影にかくれがちながら、メロディアスなソロを聴かせるGコンビも、非常に良い仕事をしている事も付け加えておきたい。
作品全体としては、①~④曲目までのテンションが余りに高過ぎるがゆえに、それ以降が尻すぼみに
聴こえてしまう難点はあるものの、とりあえず、その4曲を聴くためだけに本作を購入しても損はない(と思う)。
中でも、前半のへヴィ・パートで溜め込んだエネルギーを、後半の疾走パートで劇的に炸裂させる④はSADUS屈指の名曲だ。


DARK ANGEL - Time Does Not Heal ★★★ (2006-10-01 16:14:00)

「聴かせる」姿勢が、より明確に表れた'91年発表の4thアルバム。
日本ではDEATHの作品に参加した事で一気に知名度を上げた感のあるジーン・ホグランだが、ドラマーとしての腕前はこの頃から既に一流で、時にリード楽器の役割も果たす、そのヘヴィネスと疾走感を兼ね備えたドラミングはまさに圧巻。
彼がその殆どを手掛けた収録曲も、OPとEDを飾る高速スラッシュ①⑨、中盤の盛り上がりを演出する④⑤⑥⑦等、いずれもハイクオリティ。特に10分に及ぼうかという長尺曲⑥は、ストレートな疾走感と、煮え切らない歌メロ&メロディアスなGの絡みが秀逸な、本作のハイライト的存在の名曲。
「67分で9曲、246のリフ」という名キャッチコピーからも分かる通り、大作主義、頻繁なリフ/リズム・チェンジ等、複雑な曲展開が前面に押し出された仕上がりなわけだが、ドラマーが曲作りの中心に座っているせいか、理屈っぽさが感じられず、頭よりも体に直に訴えかけてくる衝動性が非常に素晴しい。そのため展開の複雑さに反して、楽曲は「走ってる」印象が強い。
愛想はないがしっかりとメロディを追いかけるVo、アグレッシブにリフの壁を築く一方、メロディアスなソロやハーモニー・プレイを聴かせるGコンビ、手数の多いジーンのDsと、がっちりスクラムを組むB・・・と、各メンバーの仕事振りもナイスで、作品自体は以前よりメロディ重視の姿勢が打ち出されているとは言え、軟弱な印象は欠片もない。
スラッシュ・メタル・シーン末期の名作の1つではないだろうか。


OUTRAGE - Blind to Reality ★★ (2006-10-01 15:48:00)

破壊力抜群のへヴィ・リフが疾走する、日本スラッシュ・メタル史上に残る
(と勝手に思っている)名曲①⑤を収録した、'89年発表の2ndアルバム。
OUTRAGEの全カタログ中、最もスラッシーな突進力が堪能できる1枚ながら、
勢いだけで押し切るのではない、随所で聴ける(彼らならではの)練り上げられ、
しっかりと構築されたメロディ使いが大きな魅力。
特に、重々しいイントロから疾走へと転じ、繊細な泣きパートを経て再び疾走へ・・・
という劇的な曲展開を持つ④は、全スラッシャー必聴の名曲。


LAAZ ROCKIT - Annihilation Principle ★★ (2006-09-26 21:33:00)

サンフランシスコのクランチ軍団こと、LAAZ ROCKITが'88年に発表した4thアルバム。
彼らの最高傑作は?と聞かれると、よりメロディアスでパワーメタル風味の前作『KNOW YOUR ENEMY』とコレ、
どちらを挙げるべきか悩ましいところなのだが、ライブでは観客の大合唱を誘発する、勇壮なOPチューン①、
DEAD KENNEDYSのカヴァーで、シングル・カットもされたノリノリの⑤、叙情的なイントロから
ドラマチックに疾走を開始する⑧、厳粛な雰囲気漂うパワー・バラード⑨等、LAAZ ROCKITの代表曲、
必聴の名曲、ライブの定番曲がズラリ揃ったこの作品こそが、やはり個人的にはベストだろうか。
そして何より、本作を大きく特徴付けているのが、そのサウンド・プロダクション。特に、壁を築くかの如く
ジャキジャキと刻み込まれるエッジの効いた分厚いGリフは、さながらクランチ・サウンドの権化といった趣き。
「ベイエリア・クランチ」という言葉は知ってるけど、それが具体的にどういう音を指すのかはよく分からない、
と言う人は、まず本作を聴いてみるとこをお薦めさせて頂く。
実際、あまりに隙間なく音の塊が攻め立てて来るので、ずっと聴いてると疲れるという欠点はあるものの、
個人的には心地良い疲労感なので無問題。パワフルだが一本調子のマイケル・クーンズのVoも、
ここへ来てかなり上達した感じで、特にバラード⑨での押し引きを心得た歌唱なぞ、立派なものだ。
尚、国内盤はダイナモ・フェスティバルでのライブ・テイク2曲を収録。迫力のパフォーマンスが楽しめる。


EVILDEAD - Annihilation of Civilization ★★ (2006-09-25 22:35:00)

JUDAS PRIESTタイプのAGENT STEELと、IRON MAIDENタイプのABATTOIR、
2つのスラッシュ・メタル・バンドのメンバーが結成したEVILDEAD、'89年発表のデビュー作。
出自が出自だけに、てっきり華麗なツイン・リード・ギターが乱舞する、ドラマチックな
スラッシュ・サウンドを聴かせてくれるものとばかり思っていたが、実際聴いて見ると、
それよりも硬派な疾走感がグッと強調された、ストロング・スタイルが身上のバンドであった。
とにかく突っ走った時の爽快感が半端じゃなく、マッチョなVoと、歯切れの良い演奏、
そして分厚いサウンド・プロダクション(LAのバンドなのにベイエリア風)が、それを見事に援護射撃している。
勿論、AGENT STEELとABATTOIRのファンが期待する要素もちゃんとフォローされていて、
特に、随所で炸裂するツインGが紡ぎ出す、一捻り加えられた流麗なメロディはかなり印象的。
叙情的なアコギと、山あり谷ありの曲展開が劇的なドラマを演出する⑤なんかは、
本作のハイライト・チューンといっても過言ではない(と思う)。
日本盤は(多分、今じゃ輸入盤も)、パンク・バンドBLACK FLAGのカヴァー曲“RISE AVOVE"を
含む4曲入りEPとのカップリング仕様。これまた全曲走りまくりの大変素晴しい内容だ。


ANTHRAX - Among the Living ★★ (2006-09-25 21:36:00)

Voが二ール・タービンからジョーイ・べラドナに代わって2作目、バンドの体制もより一層強固なものとなり、
いよいよ本領発揮といった感じの、'86年発表3rdアルバム。
前作「SPREADING THE DISEASE」では、未だ欧州へヴィ・メタルからの影響の名残りがそこかしこに見受けられたが
(そこがまた素晴しかったわけだけど)、今回はそうした要素は一掃・・・というか、その手の影響を完全に消化しきって
自らの血肉へと変え、METALLICAの構築美とも、SLAYERの破壊力とも、MEGADETHの複雑さとも違う、
エネルギッシュでスポーティな(汗の似合う)ANTHRAX流スラッシュ・メタルの創出に、見事成功している。
ヨーロピアン風味の湿り気は大きく後退したものの、躍動感溢れる縦ノリのリズム、引き締まったリフワーク、
そして、どことなく体育祭の応援団を思わせる、気合入りまくりの雄々しい野郎コーラスなど、
スラッシュ・メタル・バンドとしてのカッコ良さは飛躍的に増大。特に、へヴィなイントロから疾走に転じる①に始まり、
シリアスな名曲⑥に至るまでのアルバム前半構成は、「この1曲のためにアルバムを買っても損はない」レベルの
名曲が次々に繰り出されるという、全く隙のない圧巻のクオリティを誇る。勿論、全9曲捨て曲なしだ。
個人的には、ANTHRAXの(現時点での)最高傑作は、本作であると信じて疑わない。


ANTHRAX - Fistful of Metal ★★ (2006-09-23 02:34:00)

スラッシュ四天王の中で、個人的に最も思い入れが少ないのが実はANTHRAXだったりする。他の3バンドと違って
ライブを見た事がないからか、はたまた、アメリカンなネアカさが一番強く感じられるからか・・・理由は自分でも
よう分からんのだけれど、しかしそんな不届き者ですら、彼らの初期3枚のアルバムの完成度には、脱帽せざるを得ない。
特に、この'84年発表の1stは、他のスラッシュ四天王やEXODUSのデビュー作がそうであったように、NWOBHMからの影響が
微笑ましいぐらいにモロ出しで非常に好感が持てる1枚。中でも、アルバムをOPを猛スピードで駆け抜ける①や、
JUDAS PRIESTばりの攻撃的且つ華麗なツイン・リードGがドラマチックな④といった欧州風味の湿り気を帯びた楽曲は、
この1stでしか聴く事の出来ないタイプの名曲。実力的にはジョーイ・べラドナに及ばないとは言え、
如何にも80年代前半のメタル・シンガー的な二ール・タービンのヒステリックな濁声Voも、雰囲気を大いに盛り上げてくれます。
間違っても「ANTHRAXの最高傑作!」とは言えないし、突出した出来の数曲を除けば、残りは詰めの甘さを感じる曲が
多かったりするのだが、それでも気が付くとCDを手に取ってリピート再生しているという、クセになる仕上がりの作品である。


SLAYER - Reign in Blood ★★ (2006-09-23 02:11:00)

このマスターピースに関しては既に大勢さんが賛辞を寄せているので、今更、自分なんぞが付け足すことは何もないのだが、
敢えて1つだけ言わせて貰えるなら、時々、雑誌なんかで見かける「スラッシュ未体験者はまず本作を聞いて、
それでピンとこなかったら、もうスラッシュ・メタルを聴く必要はない」という物言いは、ちと違うんじゃなかろうか・・・ということ。
こんな凶悪な、メロディもへったくれもないスピード至上主義(褒め言葉)の作品を初心者に聴かせたって拒絶反応が出るだけで(?)
それよりは楽曲にある程度のメロディと構築美の感じられる、METALLICAやTESTAMENT等のアルバムの方が入門書としては最適。
本作は寧ろ、色々なデス/スラッシュ・メタルを聴き漁ってきたスラッシャーが「でも、やっぱりコレだよなぁ」と、
最後に戻ってくる場所(1枚)ではないかと思う。そう、例えるなら、旅行好きのオバちゃんが自宅へと帰ってきて
「やっぱり我が家が一番ねぇ」とこぼすように・・・って、例えが意味不明過ぎるか。


SACRED REICH - The American Way ★★ (2006-09-21 21:26:00)

アメリカ/アリゾナ州フェニックス出身の4人組スラッシャー、'90年発表の2ndアルバム。
リフ/リズム・チェンジをしっかり組み込みつつ、前のめりで突っ走る実にスラッシュ・メタルらしい
スラッシュ・サウンドを聴かせたデビュー作『IGNORANCE』に比べ、今回はグッとスピードを抑え目にした、
重量感溢れる作風が特徴。勿論、スピード・チューンがなくなってしまったわけではなく、
アルバムは後半に向けて尻上がりに速度を増していく構成なのだが、やたら重々しいバスドラの鳴りといい、
重心低く、分厚く、力強く刻まれるリフといい、やはり印象に残るのは疾走感よりも、そのヘヴィさ。
とは言え、3rd『INDEPENDENT』以降のPANTERA型へヴィネス路線とは違って、このバンド独特の
緊張感を孕んだ流麗なメロディは健在だし、何より楽曲が⑥を筆頭に、これまで以上に静と動、
緩急の効いたダイナミック仕上がりなので聴き苦しさは全くなく、寧ろ爽快感の方が強いぐらい。
速度は落ちたとは言え、間違いなく本作も立派なスラッシュ・メタル・アルバムだ。
また、このバンドの個性の1つに、母国アメリカや国際社会、企業を鋭く斬りまくる歌詞があるわけだが、
今回の彼らの攻撃対象は、メタルしか聴こうとしないメタル・ファン。
「世の中には他にも素晴しい音楽が沢山あるんだからもっと色々聴けよ」という説教が耳に痛い。


SLAYER - Christ Illusion ★★ (2006-09-11 21:38:00)

速いから素晴しいのではなく、速くてカッコイイ曲を演ってるから素晴しいのですよ!と、
強く主張しておきたい、前作『GOD HATES AS ALL』以来、5年振りに発表された待望の9thアルバム。
デイヴ・ロンバートの出戻りという大イベントを経た所為か、原点回帰(この場合の原点は3rd『REIGN IN BLOOD』を指す)の
姿勢が強く打ち出されている感じで、ここ数作の「速い曲も演る」スタイルから一転、アグレッション漲る
スピード・チューンが収録曲の大半を占める。増加傾向にあった曲数も再び10曲まで絞られ、
ランニング・タイムも40分弱とスカッとタイト。それでいて異様なまでに密度が濃いので、
聴き終えた後に物足りなさが残らないという、まったく恐れ入る仕上がり。
小細工を排して、生々しく迫ってくるトム・アラヤのハイテンションVoの迫力も前作以上だ。
何より特筆すべきは、アグレッシブでありながら非常にキャッチーという点で、中でもジェフ・ハンネマンのメロディアスなGソロに
耳奪われる①、2本のGが刻むリフにゾクゾクさせられる⑤、印象的なサビを持つ先行シングル⑨なんかは、そうした部分が顕著に現れた名曲。
このキャッチーさ(ポップという意味ではないので悪しからず)あったればこそ、本作は「ビルボード初登場5位」という、
SLAYERの作品史上最高位の成績を収められたのではなかろうか。疑いの余地なく傑作。


SILENT SCYTHE - Suffer in Silence ★★ (2006-09-08 23:49:00)

スウェーデン産の5人組パワー/スラッシュ・メタル・バンド、'04年発表の1stアルバム。
(正確には'03年に自主制作した作品のリニューアル盤らしい)
製作過程がかなりドタバタと慌しかったようで、どうにもマテリアル不足の感は否めず、全8曲のうち、
イントロ代わりのSE①と、ボーナス・トラック的なスタジオ・ライヴ・テイク⑧を除けば、僅か30分ちょいという
アルバムのランニング・タイムに物足りなさが残るが、それは本作の仕上がりが強力だからこそ。
サウンド・プロダクションや歌メロにはモダンな雰囲気が感じられるものの、そこに北欧のバンドならではの
憂いを帯びたメロディやリフ・ワーク、ドラマチックなGソロが加わる事で、独特な魅力が発生。
特に、凄まじいアグレッションを撒き散らしながら疾走する、AT THE GATES風の高速スラッシュ・チューン②、
IRON MAIDENばりのツイン・リードが印象的な⑤(これに限らずGコンビはアルバム全編で非常に良い仕事をしている)、
スピーディな曲調と浮遊感漂うサビ、そして劇的なGソロの対比が美しい⑥といった楽曲は、その好例か。
ラフな仕上がりながら、ラテン風味の効いたアコギ・バラード⑧も○。
メンバーでは、メロディックな歌い上げもこなす一方、NUCLEAR ASSAULTのジョン・コネリーを彷彿とさせる
ハイテンションなシャウトもキメまくるVoの存在が光るが、何とその彼氏はアルバムの発売を待たずして脱退。
既にバンドには後任Voが加入済みとのこと。果たしてこの逸材Voの穴を埋められるほどの実力者か否か・・・
完成間近と伝えられる2ndアルバムの発表を待ちたいところ。


RITUAL CARNAGE - The Highest Law ★★ (2006-09-04 22:16:00)

2nd「EVERY NEVER ALIVE」が、かなりカッコイイ出来だったので、遡って聴いてみた'98年発表の1stアルバム。
うん。こちらもなかなかイケてます。
分厚く刻まれるリフ、全編をスピーディに疾走するリズム、そしてメロディックなツイン・ギターといった要素は
もう既にこの時点で耳にすることが出来るが、オーセンティックなヘヴィ/スラッシュ・メタルからの影響が
色濃く感じられた「EVERY~」に比べると、本作はもう少しコア寄りなスタイル。轟然とした音作りといい、
Voの歌唱もデス・メタル風だし、時にブラスト・ビートが炸裂したりと、所謂メロディック・デス・メタル的なアプローチが目立つ。
まだまだ、有無を言わせぬ迫力は感じられないものの、クオリティの高さは折り紙付き。
特に、シャープ且つメロディアスな2本のGの絡みが勇壮さを演出する、アルバムのタイトル・トラック④や、
ベテラン・スラッシュ・バンドへのトリビュート・ソングといった趣きの⑨等の楽曲は、
次作で開花するスラッシュ・メタル路線への萌芽として、聴き応え十分。ONSLAUGHTの名曲“DEATH METAL"を
カヴァーするセンスにも◎を差し上げたい。(⑨もONSLAUGHTの名曲と同タイトルなれど、こちらは同名異曲)
リーダーであるVo兼Bがアメリカ人である事を抜きにしても、「日本のバンドにしては」等という注釈無用の
優れたデビュー作であるように思う。


RITUAL CARNAGE - Every Nerve Alive ★★ (2006-09-02 00:48:00)

大した予備知識もなしに、骸骨武者&2丁拳銃というイカしたアルバム・ジャケットに惹かれて購入してみたら、
これが大当たり。極太のリフがバリバリ刻まれ、スタスタと2ビートが猛スピードで駆け抜けていく
スラッシュ・メタルの力作であった。(ライナーによれば'00年発表の2ndアルバムとのこと)
とにかく徹頭徹尾、疾走しまくりの1枚で、本編ラストをヘヴィに締める⑩(とは言え、この曲にだって
疾走パートが組み込まれているんだが)以外は、METALLICAのカヴァー曲“HIT THE LIGHTS"他、
日本盤のみのボーナス・トラック4曲も含めて、収録曲全てが高速スラッシュ・チューン。
「緩急?知らねーよ」とばかりに飛ばしまくる、スラッシュ馬鹿一代っぷりが存分に堪能できる1枚。
それでいて単調さが然程感じられないのは、欧州へヴィ・メタルからの影響が色濃いリフ・ワークと、
メロディックなツイン・ギターに宿る高いドラマ性ゆえか。
Voはメロディ無視の吐き捨てスタイルながら、デス声の手前で踏み止まって聴かせる、ドスの効いた硬質なシャウトは
なかなかの迫力。スピーディでアグレッシブな曲調にも非常にマッチしている。
篭もり気味のサウンド・プロダクションが惜しい。(迫力という点では文句なしなんだけど)


ANNIHILATOR - Double Live Annihilation ★★ (2006-08-26 19:41:00)

'03年発表の2枚組ライブ・アルバム。9th「WAKING THE FURY」に伴う欧州ツアーの模様を捉えたものらしいが、
偏りのない選曲はなかなかツボを突いていて、これなら確かにベスト盤としても十分に機能すると思われ。
勿論、「漏れ」も結構あるけど、歴史の長いバンドだけに致し方なしと言ったところか。
DISKⅠに比較的新しめの曲を、DISKⅡに初期の名曲を集めた構成になっていて、やはりDISKⅡの怒涛の盛り上がりは圧巻。
実験色の濃いサウンドだった「WAKING~」からの楽曲も、こうして装飾の取っ払われたライブで聴くと、
非常に純度の高いスラッシュ・メタル・チューンと化していて面白い。
ジェフ・ウォーターズ(G)を筆頭に、楽器陣の一糸乱れぬ、それでいてライブならではの熱さと
前のめり感を漂わせた、素晴しく達者な演奏ぶりは今更言うに及ばず、歴代フロントマンの中でも
屈指の実力を誇る逸材Voジョー・コミューのダイナミックな歌唱もお見事!
個人的には、もう少し観客とのエネルギーのやり取りが感じられるライブ盤の方が好みだし、
欧州メタル・ファンの嗜好を考慮した結果か、ANNIHIRATORのもう1つの顔である「メロウな側面」が
フォローされていないのも残念だが、ともあれ、ジョー・コミューを擁したバンドの3度目の来日公演を見逃した
己の迂闊さを呪いたくなる、ハイクオリティなライブ盤であることは間違いない。


ANNIHILATOR - Schizo Deluxe ★★ (2006-08-23 22:23:00)

前作「ALL FOR YOU」に引き続きベーシスト不在のまま、ジェフ・ウォーターズが兼任する形でレコーディング
(リフが印象的な佳曲⑧ではリードVoも披露)、'05年に発表された11thアルバム。
似たようなスタイルを2作続けない事を旨とする(?)ANNIHILATOR。前作が大作主義に傾いたシアトリカルな作風だった事への
反動か、今回はコンパクトにまとめられた(彼らにしては)直線的な楽曲がズラリと並ぶ。バラードもない、かなり硬派な仕上がり。
ただ、ここで気になるのは、器用だがパンチに欠ける声質のデイヴ・パッデン(Vo)のありがちな歌唱スタイルが、
せっかくの楽曲の個性をスポイルしてしまっているように聴こえる点。③⑤⑨のようなドラマチックで多彩な表現力を
必要とする楽曲におけるハマリっぷりは、相変わらず最高なんだけど・・・。
とは言え、疾走感と勇壮なメロディが融合を果たした②⑤⑦のようなスピード・チューンは、
その辺りの不満を差し引いても十分カッコ良く、全体的な完成度には揺るぎはない。
また、今回はなかなか興味深いボーナス・トラックが何曲か収録されていて、1つはシングルのみの収録だった⑪。
全楽器が一丸となって突進する「らしい」スラッシュ・チューン。そしてもう1つは、バンド名をタイトルに
冠した⑬(4th収録のモノとは同名異曲)。リフ主体で組み立てられた、如何にも'85年という時代を感じさせるHMチューンで、
ジェフがNWOBHMから大きな影響を受けていたことが伺え、微笑ましい。
それにしても、これだけ素晴しい作品を発表し続けているのに、ここ暫く来日がないのはどういうことか。
単独公演が難しいなら、THRASH DOMINATIONに1バンドとしてでも構わないので、日本に呼んで貰えないもんかな~。


ANNIHILATOR - All for You ★★ (2006-08-17 22:28:00)

3枚の作品を残して、逸材Voジョー・コミューが脱退。代わりに無名の新人デイヴ・パッデンを加えて、'04年に発表された10thアルバム。
その新Voは、この御時世アメリカには掃いて捨てる程いそうな、クリーンボイスと怒号を使い分けるタイプだが、
流石ジェフ・ウォーターズの眼鏡に適っただけあって、③のようなスラッシュ・チューンも、④のようなバラードも
歌いこなせる確かな実力の持ち主。力んでもしなやかさを失わない声質は、前任者の「硬」の対して「軟」。
スタイル的には三代目Voのアーロン・ランドールに近い感じ?
そんな今風のVoの存在ゆえか、本作はモダンな空気が強いように感じられるかもしれないが、どっこい。
腰を据えて聴き込んでみると、スピーディでメロディアス、且つドラマチックというANNIHILATORサウンドの基本は
きっちり守られていることに気付く。まぁ1曲目のタイトル・チューンは、ジェフ自身が「NU METALっぽいだろ」と
ぶっちゃけてた通りの仕上がりなんだけど。とは言え、流麗なインスト・パートと、憂いを帯びた歌メロの魅力は
このバンドならでは。そもそも、流行を意識した曲をOPに持って来るのは昔からだしね。
そして何より、今回は初期のシアトリカルな雰囲気が復活を遂げている事が大きい。特に②⑤⑥⑨といった
大作志向の楽曲で聴く事の出来る、妖しくもドラマチックな曲展開と、それを絶妙にアシストするVoの
芝居がかった歌唱は本作の白眉。必聴。
あと個人的には、バラード⑧で久し振りにジェフの歌声が聴けるのも嬉しい(やはり上手い)。
今回は全編でBもプレイ。随所でメロディアスなフレーズを閃かせていて、久々にマルチ・プレイヤーの本領発揮といったところか。


ANNIHILATOR - Waking the Fury ★★ (2006-08-16 22:05:00)

前々作、前作と、ANNIHILATORの理想像に忠実な作品を発表してきたジェフ・ウォーターズ先生が、
久々に頭をもたげて来た実験精神を全開にして作り上げた、'02年発表の9thアルバム。また、ジェフ自身が兼任してて時期を除けば、
同じシンガーのまま、2枚目のアルバムを作る事が出来たという意味でも画期的(笑)な作品。
さて本作。CDを再生すると、いきなり斬り込んでくるノイジーなギター・サウンドに思わず仰け反らされる。
前作「CARNIVAL DIABLOS」はキャッチーとも言える仕上がりをみせていたが、今回は「獣性を呼び起こせ」の題名通り、
再びアグレッシブ方向に揺り戻されていて、凄まじいアグレッションを撒き散らしながら疾走する①、
鉈で両断されるが如きリフの刻みが強烈な③、殆どハードコア・チューンなノリの⑩、
といった楽曲に代表されるように、全体的にかなり前のめりな作風。
それでも本作が、賛否両論分かれた実験作「REMAINS」の再現になっていないのは、その豊潤なメロディの魅力ゆえ。
復活作「CRITERIA FOR A BLACK WIDOW」で開眼した、ジェフのメロディ重視の姿勢は②⑧等の楽曲に明らかなれど、
先述のスピード・チューンにしても、インスト・パートは非常にメロディアスで、アグレッシブな曲調と、
次々に湧き上がって来るメロディの対比が堪らなくドラマチックだ。そして、その極みが⑨“STRIKER"。
前作にもIRON MAIDENを彷彿とさせる名曲“EPIC OF WAR"が収録されていたが、こちらはシャープに乱舞するツインGと、
ジョー・コミューのパワフルな歌唱とが相俟って、スラッシーなJUDAS PRIESTといった趣き。
ジェフの作曲能力の高さを改めて思い知らされる名曲である。(正直、ブレイク・パートはいらなくね?と思わなくもないけど)


ANNIHILATOR - Carnival Diablos ★★★ (2006-08-14 22:47:00)

人気ないなー、このアルバム。個人的にはANNIHILATORの最高傑作!と断言したくなるぐらい気に入っているんだけど・・・。
快作「CRITERIA FOR A BLACK WIDOW」で、それまでの迷いを断ち切り完全復活を遂げたANNIHILATORが、'01年に発表した8thアルバム。
「CRITERIA~」でバンドに電撃復帰を果たしたランディ・ランペイジが、案の定、アルバム1枚きりで脱退(というか解雇)、本作からは、その後任として元OVERKILLのジョー・コミューが参加しているのだが、これがアグレッシブなシャウトから、ロブ・ハルフォードばりのスクリーム、更にはブルース・ディッキンソン風の雄々しい歌唱まで幅広くこなせる、二代目フロントマン コバーン・ファー以来の逸材。
「歌える」Voの加入効果か、楽曲の方も意図的に激しさ/複雑さが前面に押し出されていた前作に対し、今回はリフにしろ、メロディにしろ、ツインGの絡みしろ非常にキャッチー。曲展開も必要最低限に整理され、ある意味、正統派へヴィ・メタル的とも言える仕上がりをみせる。ここ暫くは封印されていた、バンド初期の必殺技「ここぞという箇所でのアルペジオ」が効果的にフィーチュアされているのも、その印象を強めている一因かな?
結果として、スラッシーな雰囲気は若干後退したものの(勿論③⑩のような高速スラッシュ・チューンも収録しているが)、シャープに疾走する①“DENIED"、へヴィな曲調と哀愁を帯びたVoハーモニーの対比が美しい④“CARNIVAL DIABLOS"、ジョー・コミューのダイナミックな歌唱が劇的な盛り上がりを演出する⑥“TIMEBOMB"、そして全てを兼ね備えた名曲中の名曲⑨“EPIC OF WAR"といったハイクオリティな収録曲の前には、そんなことは枝葉末節。
中期以降のANNIHILATORの何たるかが知りたければ、まず本作を聴くことをお薦めさせていただきまうす。


ANNIHILATOR - Remains ★★ (2006-08-10 22:45:00)

ANNIHILATOR最大の問題作と言えば、やはりこの'97年発表の6thアルバムでしょうか。
何せレコーディング・メンバーはジェフ1人(全てのパートを担当)という、文字通りのソロ・プロジェクト状態。
内容の方も、シンプルというか素っ気無いデザインのアルバム・ジャケットに嫌な予感を覚えつつCDを再生してみれば、
1曲目から聴こえてくるのは、明らかに打ち込みのDs、無機質なリフ、エフェクトのかかりまくったVoといった、
如何にも90年代風の(当時としては)モダンなサウンド・・・そりゃファンもドン引きするわ。
2曲目以降も似たようなスタイルの楽曲が続く事からも明らかな通り、彼らのアルバムの中でも最も実験色の濃い1枚で、
複雑な曲展開を排して、ひたすらシンプルにアグレッシブに攻めてくる楽曲は兎も角、全般的にGソロに冴えが見られないのが痛い。
どうやら、私生活でのゴタゴタで溜まったフラストレーションが、もろ作風に影響を与えてしまったらしいのだが・・・。
とは言え、それで本作を駄作と切って捨てるのは早計というもの。ジェフの成長著しいVoが素晴しい、
ここ数作では出色のバラード⑥“IT'S YOU"を皮切りに、うっすらと哀愁を帯びたリフが駆け抜ける⑦“I WANT"
初期ANNIHILATORの空気を濃厚に漂わせたスラッシュ・チューン⑧“TRICK&TRAPS"⑪“REACTION"等、
中盤以降には聴き応えのある曲が並び、個人的には前作「REFRESH THE DEMON」よりも評価の高いアルバムだったりする。
実験色の濃い曲も、装飾を取っ払ってしまえば、骨格となるリフのアイデアは悪くないしね。
そんな感じで、単体としては結構好きな作品なのだが「じゃあANNIHILATORのアルバムとしてはどうなのよ?」と聞かれると・・・うーむ・・・。


ANNIHILATOR - Refresh the Demon ★★ (2006-08-09 22:09:00)

'96年発表の5thアルバム。丁度この時期は、メロディ志向の日本市場と、ヘヴィ志向の欧米市場のギャップが
埋め難いほどに広がってしまっていて、メロディとヘヴィさのバランスこそ最大の武器であったANNIHILATORにとっては
「あちらを立てれば、こちらが立たず」ってな具合で、最も活動が困難な時期だったのではなかろうか。
そんなわけで(?)本作は、複雑でドラマチックな曲展開を控えめにした、かなりヘヴィでソリッドな仕上がり。
前作の経験を踏まえて、自分の荒々しい声にあった、ストレートなアグレッシブ・チューンをズラリ揃えた
その判断は的確で、作曲能力の高さも含めて、流石、ジェフ・ウォーターズといったところなのだが、
問題はその作風が、叙情メロディと劇的な曲展開を愛する日本のファンには、余り受け入れて貰えなかった点か。
(美しいバラード“INNOCENT EYES"を「日本盤のみのボーナス・トラック」として収録してる辺りにも彼の苦悩が伺える)
従来のANNIHILATOR節が堪能できる①“REFRESH THE DEMON"、軽快に疾走するポップ・チューン⑦“CITY OF ICE"、前述のバラード⑪等、
佳曲も多数収録されていて、決してつまらない作品ではないのだが(というかANNIHILATORに駄作はない)、
大多数の日本のファンがこのバンドに求める理想像と、ジェフが生き残るために選択したスタイルとのズレが、いよいよ顕著に表れた1枚。


KREATOR - Coma of Souls ★★ (2006-08-08 21:53:00)

「おおぅ、こりゃ本当にパワー・メタル・アルバムだ」と、思わず感心してしまった、'90年発表の5thアルバム。
とは言っても、メロスピ/メロパワ・バンド宜しく、ミレ・ペトロッツァが朗々とハイトーンVoで歌い上げたり、
楽曲自体がメロディアスになったりする筈はなく、触れれば切れそうな疾走感も、高い殺傷力の誇るシャープなリフも、
ミレのヒステリックなシャウトも健在。それより寧ろ、とにかく勢い重視で、無軌道に暴走しまくっていた(そこが大きな魅力だった)
初期作品に比べ、楽曲の枠組みがキッチリ定まり、その枠内で「タメ」と「疾走」を繰り返しながら、
ダイナミックに盛り上がっていく曲展開、そして、これまで以上に流麗に、欧州へヴィ・メタリックな
ドラマ性に満ちたメロディを紡ぎ出すGの存在が、非常にパワー・メタル的なカッコ良さを感じさせる。
これを「大人しくなった」と不満に思う硬派スラッシャーも多かろうが、個人的には、前作「EXTREAM AGGRESSION」辺りから
明確になってきた、敢えてスピードよりも完成度の高さを追求する姿勢を支持したい。
特に(その甲斐あってか)アルバム前半の楽曲の充実度は半端でなく、中でも、JUDAS PRIESTの“THE HELLION"を
思わせるイントロを持つ⑤“TERROR ZONE"は、様式美的な「起承転結」がドラマチックな盛り上がりを演出する、
本作のハイライト・チューンとでも呼ぶべき逸品。
次作「RENEWAL」が、かなり実験色の濃い作品だったことを考えると、本作は、初期KREATORの集大成とも言えるのではなかろうか。
(ここから、1stアルバムへ向かって遡って聴いていくのが、KREATORの本質に迫る近道じゃないかな、と)


DEATH - Scream Bloody Gore ★★ (2006-08-06 16:01:00)

よく「処女作には作家の本質が表れる」と言われますが、なるほど。チャック・シュルデナー率いるDEATHが、
'87年に発表したこの1stアルバムを聴くと、その言葉の意味が良く分かる。
中期~後期の作品に比べると、驚くほど飾り気のないスラッシュ・サウンドで、あまりにもストレートに疾走するリズム・パートは、
ショーン・レイナート、ジーン・ホグランといったスーパー・ドラマーによる、オカズ満載の超絶プレイに慣れ親しんでいる身には
物足りなく聴こえるかもしれないが(とは言え、クリス・レイファートのドラミング自体は非常に堅実で気持ち良い)、
耳を捕らえて離さない禍々しいリフ、狂気を帯びた絶叫Vo、そして何より、邪悪極まりない曲調と見事な迄に美醜の対比を描き出す、
華麗にして流麗なGソロといった、DEATHならではの強烈な特異性は、このデビュー作の時点で既にギラリと光を放っていて、
凡百のスラッシュ・メタル・バンドとの格の違いを見せ(聴かせ)つけてくれる。
ちなみに、個人的にお気に入りの楽曲は⑨“EVILDEAD"。ドラマチックなイントロに導かれて、
僅か3分足らずのランニング・タイムを、荒々しくも(BURRN!!風に言うなら)慟哭のメロディを纏って駆け抜けて行く
「元祖メロデス」風なリフが、非常にカッコイイ一曲。


ANNIHILATOR - Never, Neverland ★★ (2006-08-05 09:46:00)

その完成度の高さから、ANNIHILATORの最高傑作に推すファンも多いと聞く、'90年発表の2NDアルバム。3rd以降の音楽的変化を考えると、
確かに、攻撃性と叙情性のバランスが絶妙なこの作品こそ、初期テクニカル・スラッシュ路線のベスト盤かな、と。
前作では、曲展開が唐突だったり強引過ぎたりと、やや未整理な部分(そこがまた魅力だったわけだけど)が目に付いたが、
ここではそうした無駄が省かれ、カッチリと整理整頓。激烈スラッシュ・チューン⑧⑩を収録しつつも、
ストレートな疾走感よりダイナミズムが強調された楽曲は、シャープ且つテクニカルなリフ、流麗なGソロ、構築美を感じさせる曲展開と、
三拍子揃った隙のない仕上がり。中でも、これぞANNIHILATOR!たるシアトリカルな曲展開の①“THE FUN PALACE"
勇壮なパワー・メタル・チューン④“STONE WALL"、ドラマチック極まりない⑤“NEVER,NEVERLAND"といった楽曲は
その真骨頂か。ここぞというタイミングで炸裂する、美しいアルペジオも非常に効果を挙げている。
新Voとして迎えられた、歴代シンガーの中でも屈指の実力派コバーン・ファーの、多彩な表現力を備えた強力な歌唱も、
楽曲のドラマ性の底上げに大いに貢献。確かに、良くも悪くも個性の塊みたいな声質だったランディ・ランペイジを失ったことで
病的な雰囲気は大きく後退してしまったが、メジャー感、ドラマティシズム等、得たものはそれ以上に多いので、個人的には無問題。
本作を聴けば、何故、デイヴ・ムスティンがMEGADETHにジェフ・ウォーターズを欲したのか、よく分かるはず。


ANNIHILATOR - King of the Kill ★★ (2006-08-02 21:44:00)

ジェフ・ウォーターズ率いる技巧派スラッシュ・メタル・バンド、'94年発表の4thアルバム・・・と同時に、
裏ジャケにジェフ1人しか写っていない事からも明らかな通り、なかなか安定しないバンドのラインナップに業を煮やした彼が、
遂に開き直って自らVoも担当、ANNIHILATORのソロ・プロジェクト化を宣言した最初の作品でもある。
前作の(日本でのみ好評を得た)メロディ重視路線から、若干、アグレッシブ方向へ軌道修正が図られている感じで、
ジェフの荒々しい歌唱スタイルと相俟って、かなりヘヴィな印象を受けるかもしれないが、実際に聴き込んでみると、
疾走チューンあり、バラードあり、穏やかなイントロから一転、ドラマチックな盛り上がりを見せる曲あり・・・と、
これまでの作風と大差はない事に気付く。寧ろ、コンパクトに練り上げられた楽曲が次々に繰り出される様は爽快ですらある。
中でも、バンド名をタイトルに冠した③“ANNIHILATOR"は、シンプルなミッド・チューンながら、
キャッチーで歯切れの良い、弾けるような躍動感溢れる演奏がクセになる気持ち良さ。聴いてるだけで勝手に体が動き出します。
・・・と、かなり充実した内容にも関わらず、どうも過小評価に甘んじている気がする本作(来日公演の客入りもイマイチだったし)。
その原因の1つはやはりジェフのVoだろうが、歴代シンガーに比べ声域の狭さは如何ともし難いものの、
別に音痴ではないし、優しさの滲むバラード⑤“ONLY BE LONELY"における表現力など立派なものだ。
それより問題なのは、アルバムのOPを飾るANNIHILATOR屈指の駄曲①“THE BOX"の存在ではなかろうか。
素直にスピーディな名曲②“KING OF THE KILL"辺りで始めていれば、アルバム全体の印象も、もう少し向上したと思うのだが・・・。


ANNIHILATOR - Alice in Hell ★★ (2006-08-02 21:26:00)

ジェフ・ウォーターズ率いる技巧派スラッシュ・メタル・バンド、'89年発表のデビュー作で、
ANNIHILATORのアルバムの中では、比較的ストレートな疾走感が堪能できる1枚。(飽くまで「彼らにしては」だけど)
物語を感じさせるアルバム・ジャケットといい、クセの強いVoの存在といい、シアトリカルな曲展開といい、ついでに発売元が
同じROADRUNNERである事といい、本作を例えて「スラッシュ化したKING DIAMOND」とは正に言い得て妙。座布団1枚!
KING DIAMONDがホラー・メタルなら、こちらはサイコ・ホラー・メタルとでも形容すべき独特の雰囲気が漂っていて、
それを主に演出するのが、ランディ・ランペイジのヒステリックなキ○ガイVo、そして、痙攣の発作の如き執拗なリフの刻みと、
高いドラマ性を有しながら、どこか不安を掻き立てるメロディが印象的なソロを聴かせる、ジェフ・ウォーターズのGワーク。
特に、絡み合う2本のアコギが、文字通り水晶のような美しさを感じさせる序曲①“CRYSTAL ANN"と、
組曲形式で続く②“ALICE IN HELL"は、不気味なヘヴィ・パート/ひねくれたインスト・パート/オペラティックなパート
/スラッシーな疾走パート等が目まぐるしく入れ替わる、芝居がかった劇的な曲展開が素晴しい、
初期ANNIHILATORの何たるかを「ギュッ」と凝縮した名曲。
デビュー作にして早くも、新人離れした高い完成度とインテリジェンスを誇る楽曲の数々を作り上げてしまうジェフ・ウォーターズ、
その才、恐るべし。