F&Jの代表作と言えば、やはり2nd「NO PLACE FOR DISGRACE」で決まりだろうが、ジェイソン・ニューステッドが 唯一参加している、この'86年発表のデビュー作も、完成度の高さでは負けていない。 兎に角、(俺のように)METALLICAでジェイソン・ニューステッドというベーシストの存在を知り、 遡ってこのアルバムを聴くと、その活き活きとハジけるように動き回る魅力的なベース・プレイに 「METALLICAと全然違うなぁ」と驚かされること請け合い。これが若さか・・・なんて。 ぶっちゃけた話、彼が殆ど手掛けたという収録曲のクオリティも、「...AND JUSTICE FOR ALL」以降の METALLICAの楽曲より断然上だ。(と言っても、これは単なる好みの問題なんだけれども) 本作は、のっけからガツンとカマされる勇壮な①“HAMMERHEAD"を筆頭に、F&Jのアルバム史上、 最もスラッシュ・メタル色が色濃く打ち出されている1枚で、そのエネルギーの原動力は、勿論、ジェイソンのリードB。 一方で、⑤“DOOMSDAY FOR THE DECEIVER"のような劇的な盛り上がりをみせる大作では、 2本のギターが中心となって、美味しいメロディを積み重ねながらドラマ性を演出していく。 この強力なツインGがあったればこそ、中心メンバーだったジェイソンを引き抜かれた後も、 作品のクオリティを落とすことなく活動を継続できたんじゃなかろうか? また、フロントマンのエリック・AKも、確かな歌唱力を備えながら、3rdアルバム以降の脱スラッシュ路線では 歌メロの弱さを指摘される場面もしばしばだったが、ここでは有無を言わせぬ攻めの姿勢で聴き手を圧倒。 耳をつんざくパワフルなハイトーンVoで、作品のアグレッション演出に大きく貢献している。
'90年発表の3rd。再結成第1弾アルバム「THE ART OF DYING」が余りに素晴しい出来だったので、購入して1、2度聴いて以来、 「いまいちピンとこないや」と長らく放置状態にしていた本作を、久し振りに引っ張り出して聴き直してみたのだけれど・・・ あれ?これってこんなにイイ感じのアルバムでしたっけ? 「スラッシュ・メタルとファンクの融合」が意欲的に推し進められた作品として知られているが、 その試みは飽くまでリズム面のみに留められていて、クランチーなリフの刻みや、強靭且つしなやかなグルーヴ、 そして、時に強烈な哀愁を発散するメロディからは、ファンク的なユルさや能天気な雰囲気が感じられる場面は殆どない。 特に、パッションを秘めた繊細なアコギに導かれてスタートし、やがて濃厚に泣きまくるGによって 劇的な盛り上がりを見せるバラード⑥“A ROOM WITH A VIEW"は、個人的にアルバムのハイライト・チューン。 聴く度に脳裏に「南国の黄昏時」の風景が勝手に思い浮かび、ドップリと浸れます。 哀メロの質が、欧州風味よりスパニッシュ風味の方が強く効いてる辺りが、このバンドらしいところかな、と。 それにしても、MORDREDの1stや2ndといい、本作といい、「先入観は目(耳か)を曇らせる」と痛感させられるアルバムでした。
'89年発表の4thアルバム。バンドのメロディ面を一手に担っていたボビー・ガスタフソン在籍時代最後の作品であり、 これまでの集大成的作風ゆえ、本作をOVERKILLの代表作として挙げるファンも多い。 曲調に広がりの見られた前作に比べ、心持ち初期の剛速球路線に揺り戻されてる印象で、キャッチーさは薄れたものの、 より強靭に引き締まったリフ&リズムは、さながら鉄塊の如くガツガツと刻まれ、硬質なサウンド・プロダクションと相俟って、 突進パートでは全身に弾丸を浴びているかのような感覚を味わえる。 その一方で、前作で培ったドラマ性も十二分に活かされていて、「これぞOVERKILL!」な高速スラッシュに、 劇的なインスト・パートを持ち込んだ、名曲中の名曲②“ELIMINATION"、重く引き摺るリフとダイナミックな曲展開が BLACK SABBATHを思わせる⑤“PLAYING WITH SPIDERS/SKULLKRUSHER"、初のパワー・バラード⑧“THE YEARS OF DECAY"、 激しくアップダウンを繰り返す⑨“E.VIL N.EVER D.IES"といった楽曲は、きっちりアルバムの聴かせ所として機能している。 本作を最後にボビー・ガスタフソンが脱退してしまった為、以降、彼らのアルバムで、ここで聴かれるような流麗なメロディ展開を 耳にする機会は、残念ながらかなり減ってしまった。(今のマッチョ路線なOVERKILLも嫌いではないのだけれど)
ボビー・ガスタフソン在籍時代の作品は、いずれも甲乙付け難い高い完成度を誇るが、その中でも、この'88年発表の3rdはマイ・ベスト。 攻撃的な硬派スラッシュ・メタルという基本はそのままに、楽曲のクオリティが急上昇。曲調にも幅/メリハリ/緩急が出て来て、 全9曲、捨て曲がないのは勿論、どの曲も非常にキャッチーで、聴いてると勝手に体が動き出す衝動的エネルギーに満ち溢れている。 中でも、高速ロックンロール・スラッシュ③“HELLO FROM THE GUTTER"と、スラッシュ版IRON MAIDENといった趣の ドラマチックな⑦“END OF THE LINE"は、従来にはなかったタイプの異色曲ながら、2曲とも完全にOVERKILL色に染め上げられていて 違和感は全くなし。どころか、どちらもアルバム前半と後半のハイライト・チューンの役割を果たしている。 金属的艶を感じさせるボビー・ブリッツ・エルズワースのハイテンションなVo、縦横無尽に動き回り、楽曲を牽引するD.D.ヴァーニのB、 アグレッシブ且つメロディックなソロをキメまくるボビー・ガスタフソンのGという、OVERKILLの三本柱が完璧に機能している、 彼らのカタログ中、最もスラッシュ・メタル色が強く出た1枚。
'93年発表の3rd。丁度、北欧メタルが再び盛り上がりを見せていた日本でも国内盤がリリースされ、ファンから高い評価を得た作品。 この時期の北欧バンド群は「1作目は良かったのに次作で流行に擦り寄ってコケる」というパターンが非常に多かったのだが、TAROTの作品は 安定して高いクオリティを保持。中でも本作は特に楽曲が粒揃いで、全14曲捨て曲なし。バンドの最高傑作に推す声も多い。(俺の中で) 基本はトニー・マーティン在籍時のBLACK SABBATHを彷彿とさせる(実際、カヴァー曲⑬“CHILDREN OF THE GRAVE"を収録)、 ダークさと潤いの同居するドラマチックな様式美メタル・サウンドながら、どこかヒンヤリとした空気を伝える楽曲は 北欧のバンドならではの味。これは、氷塊のように硬質なリフと、透明感と哀感を演出するKey、 それに「憂いを帯びたロニー・J・ディオ」風のマルコ・ヒエタラのVoに依るところ大。 まぁ兎に角、アルバムのOPチューン①“DO YOU WANNA LIVE FOREVER"や、本編ラストを劇的に締めるバラード⑭“GUARADIAN ANGEL" といった楽曲を聴いてみて欲しい。北欧メタル・ファンのみならず、メロディ重視派の方ならグッと掴まれること請け合いよ?
GCの代表作を2nd「SPACE IN YOUR FACE」とする意見に異論はない(寧ろ賛成だ)が、 個人的に、彼らのアルバムの中で最も気に入っているのは、'91年発表のこのデビュー作だったりする。 アグレッシブなリフ&リズムの上に乗っかる、浮遊感漂う歌メロと、美麗なボーカル・ハーモニーの妙・・・という 個性的なスタイルは既に完成されているのだが、それを美しく彩るメロディの質が「ポップ」「キャッチー」「ソウルフル」な 2nd以降とは異なっていて、ポップでキャッチーなのは間違いないのだけど、もう少し叙情的で哀感が強く演出されている (ように感じられる)のがその理由。言うなれば、GCの前身バンドAWFUL TRUTHの音楽性に最も近い感じ? スパニッシュ風のアコギやら、カントリー調のハーモニカやら、スラッシーな疾走パートやら、 色々な要素をギュッと詰め込んでドラマチックに仕上げた①“I'M NOT AMUSED"や、スピーディな⑦“KILL FLOOR"から、 組曲形式で大作⑩“SPEAK TO ME"へと展開していく、スペーシー且つプログレッシヴな流れは、何度聴いても最高。
黒人スラッシャー、グレッグ・フルトン率いるドラマチック・スラッシュ・メタル・バンド、'91年発表のデビュー作。 ドラマチックと言っても大仰さは然程感じられず、物憂げな叙情性と、スラッシーな疾走感を併せ持つ練り上げられた楽曲からは、 むしろ洗練されたクールな雰囲気が強く漂う。都会的とでも言いましょうか・・・。 特に、作品の二枚看板とでも言うべき、鋭いカッティングが気持ち良いリフ・ワークから、繊細なアコギ・プレイ、 多分に「泣き」を含んだソロまで流麗にこなすグレッグ・フルトンのGと、憂いを帯びた歌メロを確かな歌唱力で歌い上げる (太く掠れた声質がイカス)ブライアン・トロックのVoとが、タイト極まりないリズム隊と一体となって疾走する①“WHY" ③“WORDS JUST ARE WORDS"⑥“I HATE THEREFORE IAM"といった起伏に富んだスラッシュ・チューンの数々は劇的なまでのカッコ良さを誇る。 中でもアルバムのタイトル・トラック“I HATE~"におけるGソロの泣き具合ときたら、思わず眉毛が八の字になるほど強力。
このバンドの出自については殆ど何も知らず、また、アルバムもこれ一枚きりしか持っていないのだが、 それでも本作がスラッシュ・メタル冬の時代('93年頃)にリリースされた時は、それこそCDが擦り切れんばかりに愛聴させて貰った思い出の一枚。 前半こそハードコア/パンク風味が強いものの(但し質は高い。マカロニ・ウェスタン風のリフを持つ“EVERY GOOD BOY DOES FINE"がユニーク)、 後半は加速度的にスラッシュ・メタル化が進行。特に7曲目以降、迫力の怒号Voに、歯切れの良いリズム隊、時にメロウなフレーズを閃かせ、 聴き手をハッとさせる油断ならないGとが、ガッチリと噛み合ってタイトに畳み掛けて来る展開はかなり気持ち良い。 中古屋へ行くと、僅か3桁の値段で叩き売られているので、是非とも御一聴を。
裏ジャケに一番目立つ文字で「PRODUCED BY THE H-TEAM」と誇らしげにクレジットされてるだけあって、 ザクザクと刻まれる肉厚なリフの感触は、まさしくEXODUSのそれ。 実際に、H-TEAMからインプットがあったのかどうかは定かではないが、アグレッシブな中にも、キャッチーな要素を含んだリフの アイデアはかなり良質。曲作りだけでなく、耳に残るメロディアスなソロも披露するGはなかなかの逸材ではなかろうか。 本家に比べると、どうしても優等生的で小さくまとまってしまっている印象は拭えないものの、 EXODUSファンなら聴いて損は無い、良質のスラッシュ・メタル・アルバム。
コアなスラッシュ・メタル・バンドから、「速い曲もやるメタル・バンド」へと、音楽性を拡散させ始めた'91年発表の4thアルバム。 勿論、スラッシーな突撃チューンは健在だが、そういった曲よりも、アコースティック・ギターと、 しっかりと「歌う」ジョン・コネリーのVoをフューチュアしたヘヴィ・チューン“TOO YOUNG TO DIE"のような曲の方が強く印象に残る・・・ という事実が、本作の方向性を端的に物語る。(疾走曲にしてもストレートに駆け抜けるのではなく、静と動/緩急が演出されている) そして極めつけが、インスト大作“SAVE THE PLANET"!繊細なアコギ・プレイにキーボード・ソロまで盛り込まれたそのドラマチックな曲展開には 「一体どこの様式美バンドだ?」と唸らされること請け合いの異色の名曲。 ダイ・ハードなスラッシュ・ファンからは失望の溜息の一つも聞こえて来そうな作風ではあるが、 少なくともメタル好きなら一聴の価値ありと、個人的には信じて疑わない次第。
評価も知名度も完成度も1stに比べると劣る物の、個人的には結構お気に入りの一枚。 全体的に疾走感は抑え気味で、低~中速でスタート、リフ/リズム・チェンジを繰り返しながら、 徐々にスピードを速めて盛り上がっていくタイプの曲が大勢を占めているが、リフの鋭さや、メロディの扇情力に鈍りは殆ど感じられない。 また、テンポが落ちた分、2本のGが奏でるメロディの質の高さが浮き上がって聴こえるのもポイント。 インスト・パートの劇的さが鳥肌モノの“AT THE ABYSS"、腰の据わったヘヴィ・チューン“DRAGON'S CULT"、激烈スラッシュ“SHUT UP"、 アコギ・パートから疾走に転じる曲展開がガッツポーズもののカッコ良さの“TWO SIDES OF A COIN"等、聴かずに捨て置くには惜しい名曲・佳曲を多数収録。 本作最大の弱点は、後半に並ぶ曲が地味なので、聴き終えた後のスッキリ感がイマイチな点だろうか。
全体的に音圧が下がって、アグレッションで聴き手を圧倒するよりも、凝ったアレンジや曲展開で聴き手をグッと惹き込むサウンド・スタイルへと転換が図られているため、スラッシャー的には評価の割れる作品かもしれませんが、個人的にはDESPAIRの最高傑作に押したい'92年発表の3rdアルバム。 尤も、彼らは元々メロディに強い拘りを持つバンドでしたし、本作はそのセンスがここに来て遂に大爆発しただけのこと。特に、2人のギタリストによって紡ぎ出され、アルバム全編で乱舞するクラシカルなメロディは、聴き手の感性のツボをグイグイ刺激してくる絶品さです。 メンバーの高い演奏技術に裏打ちされた攻撃性や疾走感はそのままに、キーボードとアコギの大胆な導入で耽美性が増大。荘厳なイントロダクションに導かれて疾走を開始する名曲中の名曲“DEAF AND BLIND"、ミステリアスな雰囲気の前半と、激しく盛り上がる後半のコントラストが美しい“IN THE DEEP"、アラビア・メロディ風のアコギ・ソロに耳奪われる“RAGE IN THE EYES"、ラストをドラマチックに締めるインスト曲“CROSSED IN SORROW"(最初と最後にインスト曲を配置するこの様式美!)等、アルバム全編これ捨て曲なし。 これが最終作とは残念至極。ヴァルデマー・ゾリヒタ(G)様におかれましては、一日も早いDESPAIRの再結成をご祈念申し上げます。
この曲を初めて聴いたのは、 S.O.D.がSTORMTROOPERS OF DEATH名義で参加したオムニバス・アルバム「STARS ON THRASH」でだったか・・・。 とにかく一発で気に入り、後に「SPEAK ENGLISH OR DIE」も買ったが、やはりこの曲のベストの座は揺ぎ無かった。 笑っちゃうぐらい速く、スカッと短く(2分ちょい)、でもリフは驚異的なまでのカッコ良さを誇る。 思わず一緒に叫びたくなるキャッチー(?)なサビも良い。 反復リフで徐々にテンションを上げていく、ミッドテンポの後半も最高。 つまり文句なしの超名曲って事ですな。
リック・エメットがクラシック・ギターに挑んだ(と言うにはリラックスした作風だが)オール・インスト・アルバム。 ロケンロール!的エネルギーや激しさは皆無の音楽性なれど、リック・エメットのアーバンな雰囲気漂わせた絶品のギター・プレイと、叙情メロディに彩られた楽曲の数々は、TRIUMPH時代の“LITTLE BOY BLUES"、ソロになってからの“OUT OF THE BLUE"といったスロー・ナンバーにグッと来た経験の持ち主なら、時が経つのも忘れてドップリと浸れる事をお約束する一枚。 長い夜のお供にお薦めです。
(皆さんが仰るとおり)ブンブン唸りながら刻まれるキャッチーなベース・ラインが◎ 「SET THE WORLD ON FIRE」のポップサイドの代表曲が“SOUNDS GOOD TO ME"なら、へヴィ・サイドの代表曲はこれだ! 疾走曲、複雑な展開を持つ曲は言うに及ばず、こういうシンプルなミッドテンポの名曲も書けちゃう辺り、ジェフ・ウォーターズの懐の深さが感じられます。