同名のバンドがドイツにもいるようですが、こっちはフランスのブルターニュ半島南東部を流れるロワール川、その河畔に位置する港湾都市ナント出身の4人組。 数本のデモテープ制作とライブ活動で徐々に人気を獲得、’87年に1st『D.F.R.』デビュー。ゲイリー・ライオンズをプロデューサーに迎えて’89年に発表した2nd『SQUEALER’S MARK』はその年のフランス国内におけるHR/HM系アルバムTOP3に入る好セールスを記録したのだとか。 3rd『THIS IS WHAT THE WORLD IS ALL ABOUT』(’91年)を発表した後、’92年にバンドは解散。最期にライブ音源も発売されているが、メンバーはこれについて「レコード会社が勝手にリリースした」とあまり快くは思っていない模様。
ポール・ディアノが率いたイギリスのKILLERS、ベルギーのKILLER、スイスのKILLER等々、似た名前のバンドは世界中に数あれど、こちらはフランスはバルバドス出身のKILLERS。本国では確固たる人気バンドの地位を築き、現在までに20枚近いアルバムを発表して活動を継続する彼らの記念すべきデビュー作('85年発表)がこちら。ちなみに、後に国内盤仕様のCDが発売された時の邦題は『憎しみの果てに』でした。 当時「フランスのACCEPT」と評されたという彼らのゴリ押しパワー・メタル・サウンドの魅力は、禍々しいイントロを蹴破って、ウド・ダークシュナイダーばりの金属シャウトVo、鼓膜を切り裂く鋭利なGリフ、猪突猛進リズムとが土砂崩れ気味に畳み掛けて来る、まるで「VENOMが演奏する“FAST AS A SHARK”」的迫力を誇るOPナンバー①に集約。音質は酷いもんですが、改めて聴いてもこのカッコ良さにはテンションガン上がりですよ。 それでいて、力押し一辺倒の無骨さのみが武器のバンドかと言えばそんなことはなく。押せ押せの楽曲の中にも緩急や劇的な曲展開がしっかりと息衝いており、仏語詞による柔らかな語感と憂いを帯びたメロディが相俟って、時にサウンドがそこはかとない「優美さ」すら発散する辺りは流石フランス出身バンド。基本バラードながら激しくアップダウンを繰り広げる③、葬送行進曲をイントロに据えて前半は抑え気味に、後半で一気にはっちゃけるバンドのテーマ曲⑥、そして直線的に突っ走りながらも、Voが印象的なメロディを滑らかに歌い上げる名曲⑦等は、そうした彼らの真骨頂が刻まれた逸品ではないかと。 80年代フレンチ・メタル・シーンの充実ぶりを裏付けてくれる名盤の一つです。
フランス南部のバルバドス出身で、'82年に結成。 '85年に1st『...Fils de la haine』でレコード・デビューを飾って以来、強固なファン・ベースを築き一度も解散することなく現在まで活動を継続。リリースしたアルバムはライブ盤含め20枚以上に及ぶご長寿HMバンド。 ちなみに彼らのカタログは、90年代に6thアルバム(+ライブ盤)までは新星堂から、所謂「わら半紙帯」を付けた国内仕様盤がリリースされていて、当時はフレンチ・メタルにさほど興味がなかったので、「なんか安っぽいなぁ」と買い逃してしまったことを未だに悔いています。
オレゴン州といえば、思い出すのはドラマ『オレゴンから愛』(古い)と、ポートランド出身で、百花繚乱のLAメタル・シーンにおいても大きな存在感を放ったBLACK’ N BLUEのこと。本作は彼らがメジャーのGEFFEN RECORDSと契約後、わざわざ西ドイツまで渡りプロデューサーにACCEPTやSCORPIONSとの仕事で知られるディーター・ダークスを起用してレコーディングを行い、'84年に発表した1stアルバム。 初めて本作を手に取った当時、メンバーのイラストが描かれたジャケットを見ただけでは、「ジェイミー・セント・ジェイムズ(Vo)ってディー・スナイダーに似てるなぁ」とぼんやり思う程度で全くテンション上がりませんでしたが、しかし「どうせ能天気なロックンロールを演ってんだろ?」との偏見は、重厚なリフ&リズムが力強く押し出して来るOPナンバー①の迫力を前に、早くも雲散霧消。MTVで人気を博した代表曲④のような、カラッとキャッチーな楽曲を随所に散らしつつ、BLACK’ N BLUEのカタログ中最もメタリックなサウンドが託されている本作は、前述の①や、ハード・ドライヴィンな③、硬派な曲調から仄かに哀愁を帯びたメロディが浮かび上がる⑧、タテノリの疾走ナンバー⑨等、伝説的コンピ盤『METAL MASSACRE』シリーズの第1弾にヘヴィな⑩が起用されて、METALLICAと肩を並べたのは伊達じゃねぇ!と思わされる楽曲の数々が印象に残ります。 あと、重厚なムードも身に纏った音楽性とか、デビュー作のレコーディングが遅延するうちにLAメタル・ブームの波に乗り遅れてしまいヒット・バンドとしての地位を築き損ねた運の悪さとか、妙にROUGH CUTTと重ねて見てしまうことが多い1枚でもあるという。
英国はヨークシャー州ノーザラートン出身。 GUARDIAN RECORDS N’ TAPESからリリースされたコンピレーション・アルバム『PURE OVERKILL』に参加していたTOKYO ROSEを前身に誕生。ドラマーはBATTLEAXEの1stと2ndに参加していたイアン・トンプソン。 印象的なジャケット含め、マニアから愛されるデビュー作『SHADOWS OF THE NIGHT』(’84年)1枚をROADRUNNER RECORDSに残してバンドは消滅。'87年にEPを発表しているとの情報もありますが、実在を示す証拠はない模様。
NWOBHM期に活躍。後にSATAN~PARIAHに参加するイアン・マコーマック(Ds)が在籍していた英国サンダーランド出身のBATTLEAXEが復活。ジョン・サイクスの後釜としてTYGERS OF PAN TANGに加わったことで知られるギタリスト、フレッド・パーサーをプロデューサーに迎え、'14年に発表した通算3枚目となるアルバムがこちら。 再結成の話を耳にしても「需要あったんだ?(笑)」と半笑いを浮かべたままの我が身でしたが、大仰な導入を経てOPナンバー①のGリフがスピーディに走り始めた途端、そのカッコ良さに、舐めくさった態度に正拳突きをかまされたような衝撃を受けましたよ。 「何も足さない」「何も引かない」サントリーウィスキーが如き超超オーソドックスなHMサウンド(バイカーズ・ロック時代のSAXONとかに近しい)は、デビュー当時からまんじりとも変化してませんが、元来、尖がった楽曲や超絶技巧が売りのバンドではなかったがゆえに経年劣化とも無縁。…どころか寧ろ、重厚な音作りから格段に逞しさを増したVoの歌唱力、ツインGの煽情力に至るまで、30年の時を重ねた本作の方が遥かにパワーUPを遂げているのだから度肝を抜かれます。JUDAS PRIESTの“FREEWHEEL BURNING”を思わす(?)⑥、デイヴ・キングのパワフルな歌唱が炸裂する⑦、英国然とした湿ったメロディにグッとくる⑪等、聴いているだけで自然と拳を振り上げ、頭を振りたくなる疾走感とノリの良さを伴う楽曲がズラリ揃った本編は捨て曲なしの充実っぷり。中でも勇ましいVo、シャープなリフ、劇的なツインGが切れ味鋭く疾駆する③は万歳三唱モノの名曲です。 油断している輩のドタマに「戦斧」ぶち込まんとする力作。BATTLEAXEの最高傑作ではないでしょうか?
AⅡZ初のスタジオ録音のシングル『NO FUN AFTER MIDNIGHT』の B面曲で、攻撃的なGリフといい、シンプルかつスピーディな曲調といい まさに「NWOBHM!」感溢れる名曲。 ラーズ・ウルリッヒ編纂のコンピ盤『NWOBHM '79 REVISITED』('90年)に 選曲されたことでちょっぴり注目を集めました。
デイヴ(Vo)とゲイリー(G)のオーウェンズ兄弟が音頭を取って'79年に英国マンチェスターにて結成。 ご近所さんだったPOLYDOR RECORDSの会計士にデモテープを渡してみたら、本当に同レーベルと契約が成立するという夢のようなチャンスを掴むも、待っていたのは、低予算のライブ・レコーディングでデビューという厳しい現実だったという。 その後もドラマーをサイモン・ライトに替え、スウェーデンのシングル・チャートTOP40に入ったらしい“VALHALLA FORCE”や、ラーズ・ウルリッヒお気に入りの“TREASON”、ラス・バラード作曲のポップな“I’M THE ONE WHO LOVES YOU”等のシングルを発表したが、2ndアルバムの制作前にPOLYDORから契約解除を通告されてしまっている。
「トランプったらドナルドじゃなくてマイクだろ」…というファンの期待に応え(?)、マイクトランプを中心に再編されたWHITE LIONが’08年に発表した復活の5thアルバム。 名手ヴィト・ブラッタ(G)の不参加は残念極まりないですが、そうは言ってもアルバム・タイトルは『RETURN TO THE PRIDE』ですからね。こりゃ彼らの代表作たる2nd『PRIDE』(’87年)に通じるサウンドが託されているに違いない…と胸ワクで聴き始めてみれば、荘厳なイントロに続いて流れ出して来るのは、Gがハードにうなり、ヘヴィ且つドラマティックに押し出して来る大作ナンバー①。思わず同名異バンドのアルバムを買ってしまったかとジャケットを二度見してしまいましたよ。 この曲に限らず、アルバム全体がかつてない程にヘヴィ・メタリックにストレッチ。無論ポップなノリの良さが感じられる楽曲も散見はされるもものの、ソリッド(というか素っ気ないというか)なプロダクションと、マイクの荒れた歌声――加齢による衰えのせいなのか、敢えてそうしているのかは判然としませんが――もそうした印象を後押ししてます。 かようにキャッチーなポップ・メタルを期待していた層にうっちゃりを食らわす内容ではあるのですが、じゃあ本作に失望したかといえば、さにあらず。メロディの憂いといい、曲展開のドラマ性といい、1st『華麗なる反逆』を更にHM寄りにしたようなサウンドは「いやこれ十分にありでしょ!」と思わされるカッコ良さ。特に①⑥のエピック・メタルとすら評したくなる重厚な魅力には痺れまくった次第でして。 本作以降、バンドの動きが全く伝わって来なくなってしまったのが残念で仕方ないったら。
良く言えば知る人ぞ知る、ぶっちゃけるとマイナーな存在のオランダのベテラン・パワー・メタル・アクト、MARTYRの’19年発表のライブ盤が日本発売されていることに驚きましたが、それがここ日本で収録されたものだと知って更にビックリ。来日してたんかい(しかも初来日かと思いきや2度目の来日公演だったという)。CD屋で本作を手に取った時はしげしげと眺めてしまいましたよ。 ‘19年2月に大阪で開催されたTRUE THRASH FESTへ参戦した際のライブの模様が収められており、正直、復活以降のアルバムからの選曲が殆どを占める偏ったセットリストは相当に難あり。とてもMARTYR入門盤にはお薦めできません。現役バンドとしての矜持の表われと好意的に解釈するにしても、もうちょいバランスを取れんかったのか、と。 とは言え、未だチェックできていない近作の楽曲も、こうして聴くとパワフルでなかなかにカッコイイことが分かりましたし、あとやはりキメの1曲を持っているバンドは強い。最後に代表曲“SPEED OF SAMURAI”が炸裂してライブが締め括られると、何だか「あぁ良いライブを体験できたなぁ」と、終わり良ければ全て良しな雰囲気が醸成されてしまうのですから。 バンドのMCやパフォーマンスはもとより、ライナーノーツに記された『MARTYR来日記』、それにボーナス・トラックとして収録された“SPEED OF SAMURAI”の日本語歌詞バージョン等からも、彼らの来日公演が実現したことに対する喜びがビンビンに伝わってきて、思わずこっちの顔まで綻んでします。 手放しで絶賛は出来ませんが、それでも愛さずにはいられない1枚。
2nd『SIGN IN THE SKY』(’89年)のヨーロッパ市場における成功を足掛かりに、アメリカ攻略を目指したCHINAが、シンガーをパトリック・メイソンからエリック・ST・ミカエルズにチェンジ後、EP『狂熱のライブ・イン・ヨーロッパ』のリリースを間に挟んで'91年に発表した3rdアルバム。 前任者と声質が非常に似通っているのでシンガーの交代劇は何ら瑕になっていませんが、それよりも音楽性の変化に対する驚きの方が大きかった本作。これまでの寒色系から一転、暖色系の色使いでまとめられたアートワークのイメージが分かり易く物語る通り、HR的なエッジや、メロディからは欧州風味の哀愁や湿り気が後退し、カラッと明るくポップな曲調でアルバム全体がふんわりとまとめられています。 コーラスは相変わらずキャッチーですし、美しいバラード等、随所で魅力的なメロディも顔を覗かせてくれてはいるものの、本編はミドル・テンポの楽曲が大半占め、しかも全15曲、60分弱という長大な収録時間。これじゃいくら何でもメリハリに乏しく胃にもたれますよ。アルバムに起伏を作るためにも、OPを軽快に疾走する爽やかな①や、本編中最もHR然とした仕上がりの⑬みたいな秀曲が、中盤にもあと1、2曲は欲しかったかなぁと。この収録曲の多さといい、音楽性といい、どことなくドイツのBONFIREが'88年に発表した『POINT BLANK』のことを思い出す1枚だったりします。 決して完成度は低くありませんでしたが、グランジ旋風に席巻されつつあったアメリカでは殆ど話題に上らず撃沈。バンドはこれ以降大きく迷走する羽目に…。
GREAT KING RATを始め、マイケル・シェンカー、ジョン・ノーラムらとの活動を通じて、今じゃシンガーとしての知名度の方が遥かに高くなったリーフ・スンディンをニュー・ドラマーとして迎え入れたTREATが、'86年に発表した2ndアルバム。 「ポストEUROPE」とも「北欧のBON JOVI」とも評され、TREATが最もポップ寄りの音楽性を志向していた時期の作品ゆえ、彼らのカタログ中でも存在感の薄さは1、2を争いますが、なかなかどうして完成度の高さは立派なもの。憂いを孕んだ声質の魅力はそのままに、歌唱力をいや増したVo、相変わらず絶品に練られたソロを組み立ててくれているG等、メンバー各々の技量の向上はもとより、一層ポップ&キャッチーに磨き上げられたメロディと、フィーチュア度の上がった煌びやかなシンセにより全編が彩られたサウンドは、それまでにあった野暮ったさが払拭され、洗練された華やかさを身に纏うようになっています。 哀愁薄めのOPナンバー①で、アルバムの大切な「掴み」にしくじっている感は否めないものの(ただ単体で聴けば悪い曲ではない)、甘く切ない胸キュン・ナンバー②で一気にその失地から回復して以降は、BLUE OYSTER CULTも演っていた④、神聖な雰囲気漂うバラード⑤、もろに初期BON JOVI風の⑥、しっかりロックしている⑦etc…とグッとくる名曲/佳曲の大盤振る舞い。CROWN OF THORNSの――哀メロ愛好家的にはFROM THE FIREの――ジーン・ボヴワーがプロデュースを担当し、HRのエッジとこのバンドらしい哀愁が溶け合う先行シングル曲⑨の期待を裏切らない出来栄えも流石です。 BON JOVIやEUROPEの世界的成功劇の影に隠れてしまったことが惜しまれる1枚。