アルバムタイトルを見るといかにもHMなのですが、上で指摘されている方も居られるように、本作は純然たるHM作ではありません。どちらかというと基本的な形はHRです。 また、音が結構きれいに整理されているので、一聴したところスカスカに聴こえないこともない。それもまた違和感を感じる原因かと思われます。 しかし、そんなことはどうでも良いのです。曲が格好良いのですから。 本作はJPには珍しく(失礼!)、捨て曲が無く曲の配置も良く考えられている名作です。この完成度の高さは、管見ながら『PAINKILLER』と『DEFENDERS OF THE FAITH』に匹敵するものと評価しています。これがまた、良い時期に発表されたのでした。時流を先取りすることに秀でていたJPの面目躍如といったところでしょうか(たまに失敗しますが)。
'94年発表。 1曲目の冒頭、ノイジーなギターが「ジャーン」とかき鳴らされた瞬間に私は本作に惚れていた。 前作と比較すると何か「ギラギラ感」が増したような気がする。意味も無くU2の『ACHTUNG BABY』を想起する。 1曲目も良いが、私にとって本作で最も重要な曲は9曲目「I TOOK YOUR NAME」だ。何年も前に研修で奈良に滞在していた時、商店街の角にあるCD屋でBGMに流れていたのを聴いた。「あれ?この曲なんだっけ?俺、知ってるぞ」一瞬、R.E.M.だとわからず、やけにヘヴィでルーズなリフに聞き惚れた。今でもこの曲は大好きだ。何を歌っているのかは知らないが。
2003年発表。13枚目のスタジオアルバム。 アートワークのメインテーマは『死の舞踏』で、中央に死神に扮したエディが立ち、踊りの輪の中に入るよう手を差し出している。向かって右端に最も手前に居る女性も虚ろな目で我々をいざなう。 音的には『THE NUMBER OF THE BEAST』(3rd)以降に構築したこのバンドの持つあらゆる面を総括したような印象を受けた。個々の楽曲についてはすでに上で様々な方が触れているので、ここで全てについて改めて論じないが、①は「ACES HIGH」を彷彿とさせる名曲である。実のところ、このバンドは必殺の一撃を1曲目に持ってくることは少なかったりする。意外と、「疾走感はあるのだが、ややラフ、あるいは少し大味、もしくはちょっと複雑」な楽曲が多い。そんな中で、本作の幕開けは『POWERSLAVE』、『FEAR OF THE DARK』に似ている。 続く②はこのバンドの魅力が大炸裂である。印象的なイントロもさることながら、個人的に最も感動したのは「THE TROOPER」で見られたような2本のツインギターの絡みが、クローズアップされるようになった点だ。しかも現編成はトリプルギターなので、ツインリードギターのバックにはしっかりとザクザクしたリズムギターが刻まれ、さらにそこにハリスの剛直なベースが絡んでいる。この辺の音作りはどうしたって3rdから5thあたりの諸作品を思い出してしまう。 加えて大作として6th以降に確立した複雑かつ抒情性に満ちた楽曲を配している。そういう意味では持っている手札を全て見せた感がある。 結論を言う。本作は『NO PRAYER FOR THE DYING』(8th)以降の諸作品中最も質が高い傑作アルバムである。しかも3rd~5thに肉薄するような仕上がりの。
'00年発表。バラードもしくはバラード系の曲のみを集めたベスト。 HM/HRが嫌いな妻にも聴けるアルバムとして、本作は重宝している。しかし、購入しておいてなんだが、このような企画盤が発表されることからもこのバンドがどういうバンドだったか、レコード会社からどのように売り出されていたのか、そしてそれがある一部のメンバー達の思惑とどれほどのギャップがあったのかがわかろうというものだ。 やはり、「TO BE WITH YOU」が当たってしまったのがそもそもの間違いである。エリックを天狗にしたのみならず、バンドのパブリックイメージを決定付けてしまった。 HRバンドはバラードを最大のヒットにしてはいけないという好例。購入しておいてなんだが。
実のところ、RATTとの出会いはMOTLEYよりも先であった。「YOU'RE IN LOVE」の存在はかなり早くから知っており、「RATTって格好良いな」と思った記憶がある。しかし、本作をCDで入手したのはほんのつい最近。1STは随分前に入手して愛聴していたのだが、本作は長い間「購入保留」の状態だった。 この2NDは基本的には1STの延長線上で、音楽性が大きく変わりもしなければなにか新機軸を打ち出しているわけでもない。そこがいいのだ。RATTはウォーレンがへたなブルーズ趣味に傾倒しだしてからおかしくなったと考えるのは私だけであろうか。そういう意味で、ウォーレンはあまり好きなギタリストではなく、DIOへの加入もなくなったと聞いて嬉しかったりするのであった。 ちなみに本作は傑作である。ミドルテンポの楽曲をこうまでスリリングに聴かせてくれるバンドとして、やはりRATTは稀有な存在であった。
'03年発表。題名のとおり今年の3月3日に行なわれた、武道館公演を収録したライヴ盤。 CD2枚組みで収録時間は約2時間20分。ライヴ盤といえばすでに『LIVE ON TWO LEGS』('98年発表)が存在するが、もし彼等のライヴパフォーマンス未体験の方が居たら、やはり本作がお勧め。 個人的には本作における最も美しい部分は6曲目『DISSIDENT』から9曲目『GIVEN TO FLY』までの流れである。特に7曲目『LOVE BOAT CAPTAIN』は感動的だ。以前『RIOT ACT』の項で"特に突出した楽曲が存在しない"みたいなことを書いたが、訂正する。この曲は(他の曲もだけれど)素晴らしい。 また、以前『DISSIDENT』の項でライヴ盤大量リリースについて批判したが、それも撤回したい(というか保留にしたい)。なぜかというと本作の成立する背景がえらいことになっているからだ。なんと最近の彼等は全ライヴを録音し、ネット上で注文を受けるとMP3ファイルに落とした音源を配信、後にCDを送付するということをしているらしい。要するに自分が行ったライヴが「凄い良いライヴだったな」と思えば、その音源(CD)が入手できるのだ。これはファンにとっては夢のような話だろう。前述したライヴ盤の大量リリースがこのようなファンを重視した行為(単にブートレッグ対策というのではなく)なのだとしたら、それは高く評価してよいと考える。 ただし、ネット上での音源の配信と作品の発表というのは(おそらくこれからはこうした形が主流になるとはいえ)、まだ試験的な段階と言え今後注意を払って見守っていく必要がある。そのような意味で「保留」。 いずれにせよ、本作は非常に出来の良い高品質のライヴ盤であることは疑いない。
'76年発表。『BLOW BY BLOW』に続くギターインストゥルメンタル路線2作目。 なかなか新譜が出ないので、仕方なく(とはいえいつ聴いても良いなあ)昔のを聴いているんだけれど、本作も格好良いね。前作よりも少し黒っぽいかな。やはり一番のお気に入りは「BLUE WIND」。ジェフ=ベックの曲って曲名もクールだよね。
'03年発表。 『FROM NOW ON...』以来の最高傑作との呼び声も高い、現時点での最新作。 確かに、HR度の高さから言えば『FROM・・・』を凌ぐ出来栄えで、アルバム途中にしっとりとした曲を配置するなど楽曲の並びにも気を使い、名作と呼んで差し支えないと思う。 また、本作ではギターの二人が非常に良く頑張っており、HTPで感じた「ときに妙にあっさり聴こえるギター」(それでも十分楽しめた)ではなく、「濃厚なハードロックギター」が全編とおして聴かれ、それがまた嬉しい。 ただ惜しむらくは、『FROM・・・』に収録されていた「THE ONLY ONE」やタイトルトラックのような、メロディアスかつ抒情性に満ちた必殺の名曲があと1曲欲しかった。凄い贅沢な要求なんだけれどね。ともあれ、この路線の追求は絶対正解である。HTPの次作が今から楽しみだ。傑作が発表されるに違いない。