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絶叫者ヨハネさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 1-61

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絶叫者ヨハネさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 1-61



IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying - No Prayer for the Dying ★★ (2006-03-20 20:35:26)

これまた目立たないが、やっぱり名曲。
激しさこそないものの、何ともいえないかげりをたたえた曲。
疾走パートに入ったときのベースラインが非常に印象的。
何か考え深げなニュアンスがあります。

しかし、No Prayer〰アルバムは
各楽器の音量と定位のバランスが抜群によいですね。


IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying - Hooks in You ★★ (2006-03-20 20:33:46)

No Prayer〰に納められたエイドリアンの置き土産
明るくポップでメロディアス、一昔前のアイドル歌手の曲のような
非常にキラキラ活き活きしたノリが特徴。

しかしブルース先生の声が……、
どうしてそんな汚い声で歌うんでしょう?
おかげでせっかくの曲が……(涙)
とにかくVoと曲とのミスマッチがウルトラ級。


IRON MAIDEN - Brave New World - The Nomad ★★★ (2006-03-20 20:31:57)

Alexander〰と並ぶ歴史叙事詩的大作
そのまま、「BBCヒストリースペシャル」とかの
テーマになりそう

奇妙なリズム感がなかなか体になじまないせいか、
すいぶん過小評価気味ですが、これは文句なしの名曲、
テーマとマッチした、「悠久の時の流れ」を感じさせる曲想、
全体を包むムードがとにかく素晴らしい。

中間部の静かなパートでの、雄大なオーケストレーションと
哀愁のギターソロとの絡みは感動もの。こういう微妙に民族色が
入った感じのメロディは、初めてなのではないでしょうか


IRON MAIDEN - Brave New World - Out of the Silent Planet ★★★ (2006-03-20 20:29:56)

Brave New Worldのクライマックスを担うのがこの曲。
疾走タイプですが、シューティングゲームのラストステージ的
緊張感と壮大な広がりを感じさせます。
歌詞もなにやら「惑星最後の日」という切迫した雰囲気です。

聴き所は何といってもハリス先生のベース!!
宇宙を貫く「アルファにしてオメガの閃光」のごとく
加速減速を交えつつ、曲中の空間を自由自在に
駆けまわってます。

ベースラインだけで、ここまで盛り上がれるのは
本当のこのバンドくらいなもの。
ハリス先生のすごさを改めて思い知らされました。


IRON MAIDEN - The X Factor - The Unbeliever ★★ (2006-03-16 22:25:05)

X Factorのラストを飾る問題曲
非常にプログレッシブな印象が強く
かなりとっつきづらい曲。
しかし、いいようのないほどドラマティック。
メロディはまさに、「終焉」をイメージさせるような響き。


IRON MAIDEN - Seventh Son of a Seventh Son - Seventh Son of a Seventh Son ★★★ (2006-03-16 22:22:13)

なにやら神秘的で予兆めいた気配を感じさせる大曲。
ただごとではないオーラが放たれています。
全体の構成がとにかく圧倒的。

スピードもヘヴィネスもそれほどでもないにもかかわらず、
非常にスリリングで緊迫感が高いのは、
張り切ったリズムと(ここでのニコ先生は何気にすごいと思う)
壮大なメロディのなせるわざでしょうか?

中間部の「静」のパートになっても、落ち着くどころか、
どんどん緊張感がたかまっていき、最後にインストによる
驚愕のクライマックスが叩きつけられる様は圧巻

このバンドの並外れた構成力と楽曲センスが如実に示されている曲


IRON MAIDEN - Fear of the Dark - Judas Be My Guide ★★★ (2006-03-16 22:13:25)

わりと目立たないが、これってものすごい名曲だと思う。
歌詞の内容やらメロディ展開やら、何から何まで
MeidenというよりHMのヒロイック志向を象徴するような曲で、
信じられないほどドラマティックで感動的、
拳を突き上げずにはいられない。

非常にわかりやすいカッコよさがあるので
アニソン好きやメロスピ者をMeidenに誘導するには最適。
ありがとう、マーレイ先生。


IRON MAIDEN - The X Factor - Blood on the World's Hands ★★ (2006-03-16 22:09:25)

これまた隠れた名曲。
実際鳴っている音以上のスリルとヘヴィネスを感じさせるのは
黙示録的な悲壮さをたたえたムードのせいか。
絶望的な歌詞(旧ユーゴの内戦と関係あるそう)のなか、
終始威圧的に進むと思いきや、サビで美しいメロディが炸裂。

聞き込むほどに、深みを増していく曲ですが。
イントロのベースソロはどこかで聴いたような気が……
わかる人にはハリス先生の趣味がよーくわかります。


IRON MAIDEN - Somewhere in Time - Wasted Years ★★★ (2006-03-13 00:42:59)

曲調自体は相当ポップなはずなのに実に奥深いニュアンス、
いいようもなくドラマティックで郷愁あふれる曲
列車の窓から外の景色を見渡した時のように、
都市の夜景が目の前を高速で流れすぎてゆく感じ。
エイドリアン先生の天才を確信させた曲、
Somewhere〰アルバムの時は本当に
神がかっていました。


IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying - Public Enema Number One ★★★ (2006-03-13 00:39:53)

ストレートなカッコよさが光る名曲
そしてあまりにも無視されすぎなとっても不幸な曲
こういう薄幸な名曲たちがMaidenにはとっても多いです。
Voメロや激しく盛り上がる短めのギターソロも最高ですが、
この曲はなんといってもハリス先生のベース!

録音のよさとあいまって、異常なノリと躍動感、
とくに、Aメロの時のベースラインは超強烈、
聴いているだけで体が動きだしてしまいます。
ベースだけだとまるでジョン・ライドンのPILみたい。

No Prayer〰にはこういうリズムの強い曲が多いです
隠れた名曲目白押しなのに……ああ、涙の薄幸アルバムに光あれ。


IRON MAIDEN - Fear of the Dark - Fear Is the Key ★★★ (2006-03-13 00:26:26)

一般的な評価は高くありませんが、非常に気にいってます。
ブルース得意の妖しげ&オカルト路線が炸裂。
Zeppelin風にバウンドするリズムに勇壮なコーラスが絡むという曲調。
リズミカルなミドルテンポでかつ展開がドラマティックというパターン。
この曲はとにかくリフがよいです。作曲がブルースということもあって
Voとはベストマッチ。
余談ですが、ブルースの歌いまわしが、なぜか椎名林檎??


IRON MAIDEN - Powerslave - Back in the Village ★★★ (2006-03-13 00:23:57)

おおっっ、何という過小評価、
何という無視のされようだ。
Powerslaveは始めの二曲以外はさっぱり……
などと言う人に、よく聴いていただきたい曲
ケイレンするような細かいギターリフが特徴で、緊張感が激高。
こういうリフを書くのは……、と思ったらやっぱりエイドリアン先生でした
非常に攻撃的なイメージで、体感スピードではMaiden史上でも最速クラス、
歌詞の「悪夢の逃走劇」の雰囲気がよく出てます。


IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying - Holy Smoke ★★ (2006-03-13 00:20:22)

彼らにしては珍しい、軽快で皮肉の効いた曲調。
明るくノリよく聴きやすいが、軽くはなく、
やっぱり妖しげな感じがするのがポイント。
Maidenがメジャーな曲をやると、なぜかみーんな妖しく
「悪魔のパーティソング」というか、「明るいゴシック」な
感じになってしまうのが謎。
Number of the BeastとかBring Your Daughterとか。
「泣き」を求める人には辛いかもしれませんが、これはこれでよい曲です。
こういう路線でもいい曲を書けるから、Maidenはすごいんです。


IRON MAIDEN - Powerslave - Losfer Words (Big 'Orra) ★★ (2006-03-13 00:13:21)

上の方に同意。まんまゲームミュージックなインスト。
(まだ家庭用ゲームが一般化する前の時代だけど)
そのままグラディウスとかに入ってそうです。
イースシリーズの古代氏の例もあるし、Maidenが日本の
ゲーム音楽に与えた影響って実はかなり大きいのでは?


IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying - Tailgunner ★★★ (2006-03-13 00:10:15)

これとCharlotte the Harlotのすごさがわかるようになれば
あなたも立派なMeidenマニア。あまり人気がないのは
リズム主導の曲調のせい?
実はかなりの名曲だと思うんですけど
リフ・ハーモニーともMeidenらしくてカッコいいですが
なによりニコ&ハリス先生のリズム隊がすさまじいです。
この両巨匠が本気になって暴れると、
とんでもないグルーヴが発生するという見本。
Maidenの要はリズム隊にあり、ということを教えてくれた曲です。


IRON MAIDEN - Somewhere in Time - Deja-Vu ★★★ (2006-03-12 23:58:05)

Maidenに山ほどある「知られざる名曲」の
筆頭クラスがこれ。
メロディがあまりに美しく、中間部のハードなドラミング
からそのまま、透明感あふれるメロディに流れるところは
本当に感動的。
Charlotte the Harlotにしても、Judas be〰にしても
マーレイ先生が書く曲には、とても繊細で
エモーショナルな感覚があります。
知性派のハリス先生
感情派のマーレイ先生
オカルト派のブルース先生
ドラマティック派のエイドリアン先生
と、Maidenの曲にはどれも作曲者ごとの個性がよく出ていて面白いです


IRON MAIDEN - Somewhere in Time - Sea of Madness ★★★ (2006-03-12 23:52:03)

Maidenマジック炸裂の超名曲
こういう「隠れ名曲」がいくつあることか
ノイジーなギターリフと、ニコ先生のハードなドラミングで始まる
イントロからしてインパクト大、跳ねるというより
叩きつけるように進むリズム感が特徴的。
Somewhereアルバム中、もっとも激しい曲ですが、
悠久の時の流れを感じさせる、静かな中間部が最高。
ここでの歌とギターのコンビネーションのセンスには脱帽。
ここまで美しく、しかも盛り上がる「静」のパートは前代未聞
そして「動」パートへの戻り際のかっこよさといったら……。
これを書いたエイドリアンは本当にすごい。大リスペクト。


IRON MAIDEN - Fear of the Dark - Childhood's End ★★ (2006-03-12 23:43:45)

Vo部が弱めなものの、ツインギターが大爆発している曲。
リフ、ソロとも強力、とくにソロのカッコよさは筆舌に尽しがたいです。


IRON MAIDEN - Iron Maiden - Charlotte the Harlot ★★★ (2006-03-12 23:41:34)

この曲が何故こんなところに……。マーレイ先生作ですが
5分弱の間にMaidenのエッセンスのすべてがつまっているような曲
何から何まですばらしいことこのうえなし。
インパクト抜群の不可解な響きの変則リフから入るイントロ、
前のめりにスキップするような、ガタガタと収まりの悪いリズム
落ち着いた叙情を聞かせる中間部のスローパートから、
シャウトとともに一気にバーストするドラムに導かれつつ、
火花を噴き上げながら、再加速していく「戻り」の
部分のカタルシスが最高。
この部分にMeidenのすごさが集約されていると思う。

個人的に1stで最も好きな曲。なのに、ライヴでやってくれないのが無念。


BLIND GUARDIAN - A Night at the Opera ★★ (2006-03-11 20:54:00)

正直聴きにくいアルバムです。私自身も馴染むまでにずいぶん時間がかかりました。

本当に今の自分たちがやりたい音楽をやりたいようにやってみた、という感じです。これを前作Nightfall〰がヨーロッパで売れまくったのをいいことに、リスナー置き去りで(しかもお金と時間をたっぷり使って)好き放題やらかした自己満足的な作品ととらえるか、もしくは理想の音楽を正面きって追求していて素晴らしい、これこそアーティストだと受け取るかで評価が分かれてきそう。

楽曲の形式に関していえば、ついにストレートな2バス連打の疾走曲は完全消失、ここにきて初期のスタイルとは完全に縁を切ったようです。さらに前作同様、楽曲に対してのアプローチがHM的なものから確実に離れてきています。例えば、ラストの超大曲And There Was Silence はまさにその典型。
例えば同じ大曲で、タイム的にもほぼ同じくらいのIron Maiden のRime of Ancient Marinerなどと比べるとその違いは歴然とします。Iron Maidenの曲が長いインストパートやSE的パートを挟みつつも、あくまでリフの繰り返しが中心で、いわば通常のHMの曲構造をそのまま拡張したものだったのに対し、And There Was Silenceの構成法はすでにHMという枠の外に出ていると思います。私の耳にはこれはマイク・オールドフィールドの長尺曲に通じるミニマル&シンフォニックな基本構造を軸として、そこにクラシックの合唱曲風のメロディ展開を導入したように聞こえます。
実際、HM的様式感の耳で聞くと、これは展開の複雑さに反して、非常に単調に聞こえると思います。合唱隊が始終歌い続け、インストパートと歌パートのバランスが極端に偏っているうえ、音圧の強弱とテンポの緩急の差が少ない(いわゆる「静」と「動」の対比が弱い)からです。HM的な、「テンポや音の密度、もしくは音色の変化によるドラマ性の表現」に慣れている人には、一体これのどこがドラマティックなのか、始終クライマックスの連続で起伏に乏しいだけじゃないか、と感じられる方も多いのではないでしょうか?
実際のところ、この曲の「ドラマ」は主に、歌詞と伴って、コーラス部が歌いあげる「メロディ自体の起伏と展開」によって表現されているのですが、これはHMではあまり馴染みのない手法です(そもそもリフ主体で歌メロの間に間奏が入るような音楽では、展開をつけられほどメロディが連続しないのでこういう手法を使うのが難しい)。曲の中でのメロディのヴァリエーション(=物語の起承転結)が異常に多いのも、こう考えるとわかりやすいと思います(もちろんですが、これは私の解釈ですよ)。とりあえず、長年に渡ってHMに慣れ親しんだリスナーにとって、これはかなり「挑戦的」なアプローチであることは確かかと。

他の曲にしても、程度の差こそあれ、どれもいわゆる典型的なHMの型にはまっていません。パーカッションの音色がトライバルなイメージをかもしだすBattle Field(私の耳にはなぜかインディアンの勇士のテーマに聞こえます。)、ファンキーな感触すらある、Sadly Sings Destiny、とくに狂おしい激情が炸裂するPunishment Devine(実は超名曲)での音使いは、デジタル・サイケというか、テクノ/トランス的なニュアンスすらうかがえます(もっとも、これはかのQueensrycheの名曲、Screaming in Digitalの彼ら流の解釈といってもよいでしょう。)。

いずれにしても、こういう発想で楽曲に望むこと自体、ミュージシャンとしての彼らの立ち位置がどこにあるかがうかがえます。まあ、純粋な音楽的力量からいえば、このバンドはもはや駄作はおろか駄曲を作ることすら不可能なほどの境地に達してますので、後はリスナー側の問題なのではないでしょうか。今のバンドの方向性についていけるかどうかということに尽きます。

結局現在の、いやImagination〰あたりからしてすでに、彼らの音楽性は(DT系とは違ったタイプの)「プログレ・メタル」になっており、いわゆるジャーマンメタルーメロスピ系の魅力である「疾走&泣きメロ」や「わかりやすさ」を求める向きには、かなりつらい所のある音楽に変化しています。しかし、最初に「Helloweenフォロワー」という触れ込みで日本に紹介されたのが災いしたのか(彼らが実際にHelloween的な音を出したことは一度もなかったのですが)、メディアなどでもそういう部分があまり伝わっておらず、それが最近の彼らの作品に対する誤解と混乱の元になっていると思います(海外のサイト等をみると最近の作品はProgressive Power Metalと表記されていることが多く、こちらの方がより誤解の恐れが少ないと思います。)。しかし、すでに実際の音楽性からかけ離れているジャンル分けを無批判に踏襲して、かえって余計な誤解を与えるというのは、どうしたことでしょう。今作はもちろん、とりわけNightfall〰は、「ドラマティックなプログレ・メタル」と割り切って聴けば、すばらしい作品なのですが。

まあ良かれ悪しかれ、Somewhere〰までに比べると確実に聴き手に求めるものが大きくなっているのは確かなので、そこらへんをどう評価するによって今作の良否が分かれるのかもしれません。


NEUROSIS - A Sun That Never Sets ★★ (2006-03-11 20:38:00)

地獄のBGM。

一聴して、「見え」ました。溶岩の河と、硫黄のふり積った丘、赤く焼けただれた大地を列を成して呆然と歩く亡者の群れが。……とにかくおそろしい事このうえない音楽です。まさに怪物。

スタイル的には弦・管楽器等も取り入れたプログレテイストのドゥームメタル、特にジャーマン・サイケ・プログレの影響を感じさせる音、と形容できないこともないのですが、彼らの音楽をスタイルどうこうの見地から語るのは的外れもいいところなのでこういう話は止めておきましょう。

なんというか、人が内心深く抱える苦痛や恐怖、罪の意識といった、人類の「業」みたいなものをそのまま音にしたような苦悶に満ちた作風。果てしなくうち続く拷問に、狂わんばかりの叫びをあげる罪人の心境に近いものがあると思います。聴くのがたいへん苦しいです。

彼らのサウンドを表して、「スピリチュアル」という言葉が使われますが、これは「霊的」とか「神聖」という類ではなく、「魔」の精神性。ちょうど、ミルトンの失楽園とか、ダンテの神曲に出てくるような、神に反逆して地獄へ追い落とされた堕天使たちの歌声とか、ブッダが悟りを開く直前に遭遇したマーラ(魔王)の軍団のラッパ手が吹き鳴らす行進曲とか、そういう邪悪なスピリチュアリティーです。

芸術性に満ちあふれた、「すごい音楽」であることは間違いありませんが、聴いて楽しいかとか、幸せな気分になれるかというと、これはこれでまったく別問題。とりあえず気が滅入っている時とか、普段から塞ぎ込みがちな方はあまり手を出さないほうが賢明かと。


QUEENSRYCHE - Rage for Order ★★ (2006-03-11 20:29:00)

80年代Queensrycheの最大の遺産。
若き日の彼らの野心的な姿勢が結実したすばらしい作品。

アルバムトータルでは、彼らの最高傑作はやはりOperation〰でしょうが、曲単位の完成度と型にとらわれない面白さという点ではこちらの方が上だと思います。
当時のRycheがいかに鋭いセンスを備えたバンドだったかがわかります。凡百のバンドとは音に対する感覚の差が歴然、ドラムの音からして説得力が違います。今も昔も、テクニック賛美と「メタルかくあるべし」の精神論的形式主義が幅を利かせるHM/HRフィールドにあって、彼らのようにセンス主導で、定型からの逸脱をおそれないバンドは稀有な存在でした。

デジタルな音響や特殊な録音法はもちろんのこと、従来のHMとは明らかに一線を画した楽曲アプローチが最大の特徴。おそらくリアルタイムでこれに接した人は相当面食らったはず(とくにデジタルメタルの④⑩のアレンジは強烈無比)。しかも、これが単なる「実験」の域にとどまらず、アルバムコンセプトに沿った音楽的「手法」として、きわめて的確に用いられているのがすばらしいところ。実験とか前衛的というのが安易な自己目的化しておらず、プログレッシヴな姿勢を取りつつも、根っこの所ではHM以外の何ものでもない音楽になっています。気がついてみたら、HMというジャンルの表現の幅がいつのまにか広がっていた、という本当の意味で「前進的 Progressive」な作風。これには本当に拍手を送りたいです。

一曲を除いて後はすべてミドルorスローテンポ、かつエクスペリメンタルな作風でありながら、全曲どれもシングルに切れそうなほどキャッチーな仕上がり。方向性の違いこそあれ、どれも基本的にメロディアス&ドラマティックでジワジワと盛り上げていきます。冷たく機械的であると同時に、激烈なまでに感情的な部分があるのがこの時期のRycheの最大の特徴。ミドルテンポ主体で、ここまでテンションが高いのは異例。とりわけ⑦⑨⑩のおそるべき緊張感は歌詞とあいまってただ事ではありません。

さらに、曲ごとのイメージがこうも鮮明で、叙景力豊かなアルバムというのは珍しいのではないのでしょうか? どの曲にも特有の「光景」があるため、決してポップでないにも関わらず、少し聴きこんだけで簡単に曲のタイトルと曲調が覚えられてしまいます。歌詞のテーマと音楽がかもしだすイメージが見事にシンクロしているためです。「曲のイメージに合わない和音は、何が何でも鳴らさないぞ」みたいな、響きへのこだわりがうかがえます。これはすでに音で見る映画(もちろん近未来SFサスペンス調)です。ジャンル問わず、音によってイメージや風景を表現したいミュージシャンにとって、これは最高の教材になるのではないのでしょうか。

あらゆる面でQueensrycheらしい魅力にあふれており、彼らのアルバムの中でもとくにお勧めしたい作品です(Operation〰は何もいわなくとも、みんな聴くよね。)
彼らの曲には一度聴いてよくわからなくとも、なぜかしばらくの間聴き続けてみたい、という気を起こさせるような不思議なフックがあるので、「プログレ」「難解」との評判はそんなに気にすることはないかと。Promised Landあたりに比べればはるかに近づきやすいし(ちなみにHM的に一番ストレートでわかりやすいのはOperation〰だったりする。)

余談ですが、この冒険的で今聴いてもわかりやすいとはいえない作品に対して、リアルタイムで97点(!)という評価を与えた、B!誌の大野女史には敬服いたします。


IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying - Bring Your Daughter... to the Slaughter ★★★ (2006-03-07 23:38:29)

Maiden最大のヒット曲……のわりに目立たないのは色モノすぎるからか。
しかし、個人的にはブルースの最高傑作
本当に面白い曲
「娘を殺戮者のところへ導け
娘を行かせろ
娘を逝かせろ
とにかく娘をイカせるんだ」
と、三通りに解釈できる歌詞が素敵。見事に昼間放送禁止を食らいました。

しかし、こんな歌詞の曲が全英ナンバー1どころか、「90年代最高のシングル・ベスト10」にランクインしてしまう英国はもっと素敵。また、こういう路線の曲をやってほしい。


MORBID ANGEL - Altars of Madness ★★ (2006-03-03 22:42:00)

これって凄い名盤だと思う。楽曲、録音、演奏といった実体的な部分の完成度はいうまでもなく、音の背後に漂う微妙なオーラが「これは紛れもない名盤」「後続のバンドに絶大な影響を与えますよ」という感じなのです。

冗談じゃなく本当に、音の背後に何か「魔的なもの」が宿っている感じがヒシヒシと伝わってくるのです。こういう雰囲気の「人間以上の何かが」侵入している作品って、私が聞いたかぎりでは、あのIron Maidenの「Number of Beast」以来かもしれない(あれはあれで以外にポップな曲調のわりに、ものすごいオカルティックな気配のする作品だった。)。とりあえずリアルタイムでこれを聴いた人の衝撃は相当のものだったはず。なぜデスメタル界において、Morbid Angelが「神」とまで言われているのか、あのNileのメンバーをして「Morbid Angel の前では、俺たちは存在すらしていない。」とまでいわしめた理由がこれを聴くとわかるような気がします。デスメタルが苦手な私にすら、音に秘められた深さと凄みが伝わってくるくらいなので、デス系への感度が高い人が聴いたら、本気でこれは悶絶&昇天モノなのではないでしょうか?

こういう怪しげな話題は別として、純粋に音楽的な完成度の方も極上。楽曲・演奏ともに文句のつけようのない出来で、これがデビュー作とは到底信じられないような完璧さ。音楽に対する彼らの求道的な姿勢がうかがえます。おそらく、すべてが本当に納得のいくレベルに達するまでレコードを出すのを控えていたんじゃないでしょうか(これ以前にすでに完成していた「幻の1st」を「こんなん気にいらん」とそのままお蔵入りにしたというし)。
例えばシンセの音一つを取っても、普通の新人には絶対ありえないような巧みな使い方をしています。普通メタリックな曲にシンセを入れると、たいてい他の楽器の音から浮き上がってしまい、違和感が生じてしまうことが多いのですが、彼らの場合はシンセが他の楽器と同位相で鳴っており、曲の一部としてごく自然に溶け込んでいます。

演奏レベルの高さはいうまでもなし。録音がクリアなせいか、各人のプレイヤーとしての並外れた力量が際立ってます。ピート大元帥の精密機械のようなドラミング(この当時まだ未完成といわれているが、楽器音痴の私にはどこが不完全なのかまったく判別不能。「人間ミシン針」を地で行く速さと精確さ)はもちろんのこと、アザトース大司教の「飛翔する刃の舞い」の如き、流麗かつ鋭利なギターワークは強烈、おもわず「おおっっっ!!」「これは!!」と膝を叩いてしまうような、驚くべきソロを随所で披露しています。とにかく鮮烈で、「霊感の冴え」とか「天与の閃き」を感じさせます。実は私はギターソロというものがあまり好きではないのですが(猫も杓子もやたらにソロを弾きすぎると思う)、これはまったく別物。大司教のギターは技術を越えてほとんど芸術の域、センスと表現力において凡百のギタリストとは完全に違う高みに立っているようです。

たんに「デスメタル」の名盤というにとどまらず、HM全体の名盤として広く聴かれてよいアルバムだと思います。スタイルに対する個人の好悪を超えて、聴き手の心に深く浸透してゆくものを秘めてます。


CATHEDRAL - The Ethereal Mirror ★★ (2006-03-03 22:37:00)

カテドラル……、舌の使い方が悪い人にはきわめて発音しづらいバンド名。
カテドラル……、ヨハン・ボス+水木しげるを地でいく、妖怪百鬼夜行の奇天烈なアートワーク。
カテドラル……、ジャケット裏の余りに強烈すぎるメンバーフォト。魔の気配を放つ四体のサイコ地蔵。
カテドラル……、リー・ドリアン、ドリアンの怪しすぎるキャラ&ヴォーカル
カテドラル……、アンダーグラウンドの怪人にして、ファンからマニアへの生ける洗礼の扉……
カテドラル……、君もおいでよ、地下のお花畑、みんなで踊ろう、サバトの宴。リーが笑顔で待っている。

カテドラル……、
とにかく「妖しい」、「マニアック」、「地下世界」、「クスリ派」と極めてディープな方々とのイメージがありますが、このアルバムは非常に聴きやすいです。彼ら特有の雰囲気を保ちつつも、スロー&ヘヴィな正統派といってもよいHMを繰り広げられています。トリップ感も含まれていますが、素直に格好いい、繊細な哀しみにあふれて感動的、何よりこれこそヘヴィメタル!!!と叫べるようなサウンドです。とくにFountain of Innocenceは醜くき現在から輝いていた過去への、退行的夢想感がなんとも儚く美しい、カテドラル屈指の大名曲。私がこれまで耳にしてきたHM曲の中でも、トップクラスに数えられる素晴らしい曲です。中間部の甘美な叙情から、苦渋に満ちた叫びへの実に滑らかな移行、「醜」から「美」そして再び「醜」への絶妙な流れのなんと素晴らしいことよ!!。

全体を見渡しても、ドゥームにありがちな単調さはなく、ヘヴィなところは徹底的にヘヴィに、逆にメロウな所はメロディがいっそう引き立つようにと、「押し」と「引き」の感覚を心得ていらっしゃいます。こういう「曲展開の美」「流れの自然さ」こそ最近のメタルコアやモダンメタルにもっとも欠けているものです。まさに王道ここにあり、何も疾走&泣きメロばかりがHMではないと、ということを学ぶには最高のサンプルではないのでしょうか。
とにもかくにも、妖しく古びた大聖堂の扉をこじ開け中に入るには、最適の一枚。ポップとカルトのバランス感覚がすばらしいです。


DISCHARGE - Hear Nothing See Nothing Say Nothing ★★ (2006-03-02 00:18:00)

真摯で果敢なロックを求める人すべてに奉げられた不滅のマスターピース。
リリース以来、全世界のパンクスに絶大なインパクトを及ぼし、今日に至るまで「Dischargeの使徒」(フォロワーのこと)を名乗る者たちの列が絶えることのない偉大なバンドの唯一無二の代表作。

ヘヴィなリフのくりかえしとシンプルな高速ビート(通称Dビート)でひたすら突っ走る単調なスタイル。
腕自慢の一流HMバンドに比べれば演奏技術は下手、Cryptopsy等の前では、はっきりいって「無」。

しかし、そんなものはまったく無意味。そういう見地からしかこの音楽に接することができないなら、そういう輩はすでに「愚者」の域を通りこして「不幸」な人間だと思ってよいでしょう(極論)。
自分はメタルでハードコアは……、という分離主義の輩はさらに論外、厳しく指弾しましょう(これも極論)。
そもそも全世界の国と地域の若者に、「こういう音楽のために一生賭けても構わない」と言わせ、果てしなき求道の旅に赴かせるような音楽の力が、HMだのHCだのという「M」と「C」の一文字の差だけで消え失せるわけがないでしょう。

それほどこのアルバムでの彼らの音は、重く、激しく、怒りに震えて、抜き差しならぬ切実さに満ちています。反戦・反核という表層的なメッセージに止まらず、終わりのない搾取と争いを産む社会システムを作り上げた人類という存在そのものを激しく糾弾しているようです。おそらくこの世で最も真実に近い音の一つ。例えばQueensrycheのOperation Mindcrimeに代表されるような「作品としてのリアリティ」というのとはまったく違う次元の真実味です。人知を絶した技巧を誇るいかなデスメタルバンドといえども、未だ唯一つとして到達しえなかった領域の世界が広がっています。
音楽的には決して高レベルとはいえなくとも、アートとしては間違いなく超一流。音楽のもつパワーと求心力が圧倒的なのです。だから歌詞(もちろん英語)がまるでわからなくとも、サウンド自体が言葉以上の雄弁さで、彼らが果たして何ものであり、何を伝えんとしているか語っています。
彼らの音楽を聴いた後では、宣伝文句に「リアル」を掲げてはばからない、死すべき商業パンクはもちろんのこと、音の上では彼らよりはるかに過激で騒々しいエクストリームバンドですら、どこかしら「嘘臭く」、「フリをしている」ように聞こえてしまいます。

まさしく怒りの権化というか、音で描かれた不動明王のようなサウンドですが、ここに現れる怒りは「憎悪」よりは、かえって「義憤」に近いということを聞き逃してはいけません。攻撃的で激しくありながら、内面的な歪みや暴力性をほとんど感じさせないのが特徴で、まるで音をたてず煙を立てずに静かに燃える炎のような透明さがあります。彼らの音にはグランジ・オルタナティヴ世代以降のアーティストのようなひどく屈折した部分とか内向的な憎悪感情(ようするに「恨み」)がありません。

どうにもならない現実に対する自らの感情を、斜に構えることなく、正直に吐き出して続けていく様はある意味「すがすがしい」とも言えます。ここらへんの「握りしめた拳が示す、人としての真っ当さ」は初期のU2にも通じます。こういった点で、いかにもパンクで悪者のような外見とは裏腹に、彼らは極めて正統的なロッカーといえるでしょう(このあたりの過剰な真面目さは、どこかシニカルでファッション&商業戦略ありきのピストルズなどとは大違い。両者ならべてみると、パンク/ハードコアの両極性とダイナミズムが引き立って面白いです。)。

なにはなくとも若い頃(とくに十代)に絶対に聴いておくべきバンド。世俗にまみれて無感覚になってからでは遅すぎます。今これをご覧になっている幸運な(?)若人(年は食っていても心は若人の方もOK)のみなさん、すぐさまお店に走りこれを買ってきましょう。心の中に少しなりとも真面目な部分を持っている人なら、たとえスタイルは気に入らなくても、伝わるものが必ずあるはずです。……まあ、これを聴いて気に入ると、そのままハードコアに入っちゃいそうだけど。


ALICE IN CHAINS - Nothing Safe: The Best of the Box ★★ (2006-02-26 00:19:00)

「ビン詰め男」のアートワークも楽しいAliceのベスト版。メンバーが関わっていたのかどうかわかりませんが、選曲・曲順とも絶妙。1st〰3rdとミニアルバムからの代表曲に加え、未発曲、デモ、ライヴ版、サントラへの提供曲とバラエティーに富んだ内容。ヘヴィでサイケな曲とメロウ&アコースティックな曲のバランスが最高で、これ一枚でオリジナルとしてもきけるほどの充実ぶり。ひょっとしてAliceの文字通りの「ベスト」・アルバムはこれになるかもしれません。

しかしこれを聴くと、彼らがソングライターとしていかに優れたものを持っていたかわかります。同じグランジ/オルタナで(誤って?)くくられるその他大勢のバンドと比べて、メロディのフックとハーモニーの豊かさがズバ抜けており、楽曲の色彩がとにかく鮮明なのです。だからどんな曲をやっても必ずポップに響くし、なにより音の余韻がそのまま耳に残ります。
ドラッグアートで妖しくサイケ、といういかにもマニアックなイメージとは反対に、実はたいへん親しみやすく近づきやすい音。結局彼らは、例えば御大Judas PriestやBlack Sabbathの大半の作品より、はるかに「わかりやすくてカッコよい、ミッドテンポのサイケ風HM」をやっていたのではないかと(3rdは例外として)。とくにリフワークとコーラスには正統メタルの美点が最良の形で集約されています。とりわけ「Would?」は90年代メタルを代表する不出の名曲、100回連続で聴いても一向に飽きません。

とりあえずこれ一枚でAliceの全貌がつかめるような優れモノ。まだAliceを聴いたことがない、という方には本作をおおいにお奨めします。彼らの音には正統メタルよりのファンのハートにアピールするものがたくさん詰まっているのですから。


BRUTAL TRUTH - Need to Control ★★ (2006-02-25 01:09:00)

非常に懐の広い音楽です。個人的に90年代屈指の重要バンドだと思っております。最近になって彼らの偉大さ、そしてこのアルバムの背後に広がる地平の大きさを改めて実感しております。
最初に聴いた時には、あまりの野放図ぶり(とくにVoのワャワァーヒャッワォーンン!!!、という意味不明の悲鳴)にひたすら大笑いだったのも、今となっては懐かしく思われます。

とにかくセンスと霊感の塊のような作品で、聴くたびに微妙にニュアンスを変える万華鏡のようなアルバムです。非常に奥が深く、つい、かしこまって真剣に耳を傾けてしまいます。本当に聴くべき所が尽きないというか、一つ一つの音の微妙なひだまで聞き逃すことができません。ひたすら破壊的で衝動的な外観とは裏腹に、何かしら聴き手の知性を触発するような部分があり、これは頭脳に働きかけるタイプの「知的かつ芸術的な」音楽のように感じられます。これに対してブラストの速さとか、破壊衝動だとかいう話はあまり意味のないことで、「狂える」「暴れられる」という、エクストリームミュージックとしての機能性を求める向きには、「なくていい余計な要素」が入り込みすぎているように感じられるかも知れません。

結局これは「プログレッシヴ・ロック」なのではないでしょうか。プログレッシヴという言い方に語弊があれば、極端なスタイルを通して、エクストリーム系ロックの既成の表現領域を突破することに意識的(実際は半意識的にか?)に挑戦しているといえば何となく伝わるでしょうか?

たんに喧しい、暴力的、衝動的である、そうでなければならぬ、いやそれ以外にはない、というこの手の音楽に課せられた制約を否定し、そもそも「過激な音によっていかなる表現が可能であるか?」と、その可能性を追求し、「エクストリームな音によっても『美』や『哲学』や『芸術的霊感』をあますことなく表現できる」、ということを満天下に知らしめようとしている、そんなサウンドに聴こえます。何にせよ、音楽に対する基本的なアプローチが凡百の激音志向バンドたちとは大きく異なっており、非常に独創的なセンスを感じさせます。外観と違って、決して単純な音楽ではありません。

一つ特徴をいえば、(演奏自体はかなり荒々しいにもかかわらず)彼らは音をとても大切に扱っています。楽器の音色を含め、音の響きがきめ細かく暗示に富んでいるのです。時に美しく、時に思索的で不安げというように表情を豊かに変えていきます。とりあえずコードの響きの奥行きを聞いただけで、彼らがただものではないことがわかります。
そしてもう一つ、——ここがBrutal Truth のBrutal Truthたるゆえんなのですが——彼らはいかなる種類のものであれ、定型化されたスタイルというものを激しく嫌っています。
(ここらへんが同じグラインドのカリスマでもTerrorizerとは対照的。 Terrorizerの音には、強固な「形式への意志」、つまり自分たちの考える理想のスタイルを自らの手で現実化させようとする意気込みがみなぎっていました。だから彼らの音楽は、メタル的な「様式感覚」を備えた耳には非常にメタリックに響きます。実際、彼らの曲には普遍的な「型」としての再使用に耐えうるだけの整合感とポップ性があり、Napalm Deathが色モノ扱いだった当時からして、正統HM界の人々の間で、すでに賞賛の声が上がっていたのが思い出されます。)
一枚のアルバムの中で、グラインド、デスメタル、ノイズ、高速ハードコアと様々なタイプの曲をやっていますが、そのうちどれ一つとしてそのスタイルの正道というか、いかにも○○スタイルの曲、にはなっていません。すべて典型から「崩され」「壊され」て、結果的にBrutal Truth風の曲になっています。

これはまったく個人的な感想ですが、彼らは本当は自分たちの内奥のアーティスティックな衝動それ自体を、純粋なノイズとして、スタイルという枠を通すことなしにダイレクトに伝えたかったのではないか、という気がします。本当はグラインドですらイヤなのだけど、音楽をやる上での実際上の要請として、また形のない混沌とした創造的なエネルギーを物理的に形態化させる不可避のプロセスとして、いわば「やむをえない妥協」として、「しかたなく」これらのスタイルを使っているような節があります。だからどれだけ、スタイルが破壊されようと、定型から崩れようと一行に気にかけない。まるで曲を作るために音を出しているのか、壊すために鳴らしているのかよくわからないところがあり(たぶん両方同時)、自分で自分たちの楽曲をぶち壊しにしつつ、進んでいくような感覚があります。
1stはまだしも、本作やとくに次の3rdなどは、曲によっては「楽曲が楽曲として成立するその臨界点」寸前、あと一歩ですべてが無意味な音塊と化し、音楽として崩壊するその死線ぎりぎりまで無秩序を激化させようとしています。そしてこのデッドライン上のスリル感こそBrutal Truthの真骨頂であり、彼らのセンスが最大限に発揮される場ではないかと。

とりあえず内奥からあふれる創造的かつ破壊的なエネルギー(芸術的には創造的なその力が音楽形式に対しては破壊的に作用する)が、用意されたスタイルを内側から突き破って、そこに彼ら独自の刹那の美が開花していく様が本作の最大の聴き所。

真に自由でクリエイティヴな音楽がここにあります。


CONVERGE - Jane Doe ★★ (2006-02-24 21:24:00)

近年一部で話題のカオティックハードコア、その代表的バンドということで、元来この方面には疎い私も手を出してみましたが……これが何とKing Crimsonです。正しくは70年代中期のへヴィ&ドライなKing Crimsonがハードコアをやっているような音です。

リズムこそ全然違いますが、たぶんギターの感触があまりにもロバート・フリップ教授そっくりなのでCrimsonのように聴こえるのでしょう。音色といいフレーズといい、私には「どこかで聴いたことのあるパターン」(悪くいうとパクリ)が盛りだくさん、ひょっとしてこのバンドのギタリストは教授主催のギター学校の卒業生では?、とまで想像したくなります。ギターだけならAnekdotenなどよりはるかにクリムゾン度高しです。(余談ですが、同じくカオティック系でかの奇才マイク・パットン氏でおなじみのDellinger Escape Planなどは、ギターどころか、曲調までまんま Crimsonというか「Fracture」をやっていてさらに驚きました。この界隈では、クリムゾンブームなのでしょうか?)

では曲もまた素晴らしいかというと…………これが微妙です。つまらなくはないのですが、さりとてそう面白くもないという、どうにも煮え切らない感じです。激音界に生息するバンドですから、当然「曲のよさ」よりは、「激しさ」や「ヘヴィネス」を売り物にしているはずのですが、私はどうにもパワー不足に聞こえます。音が妙に軽くてヤワなのです。

理由の一つは、なぜか低音が弱いこと。HC系にしてはベースの音が目立たないのもありますが、音全体の響きに「打ちこみ感」(布団たたきで思い切り布団を叩いたり、畳の上で勢いよくジャンプして着地したときに感じる「バシリッ」「ズシンッ」という感じで身体に響くあの音)に欠けているので、低音部に重さと残響が加わりません。だから音色の粗さや激しさのわりには重さを感じさせない、カラッとした軽い音になってしまっています。これは狙ってやったのでしょうか?

そしてもう一つ、メタルの様式感に汚染された耳でハードコアを聴くな、とのお叱りを受けそうですが、やはり伝統的HMのミルクを飲んですくすくと育った人間には、どうも曲展開にメリハリがないような気がします。小休止的なパートを挟むとはいえ、一曲を通じてほとんど似たようなノリと勢いでひたすら突進していくため、激しさにアクセントが生れません。曲中でのアグレッションの度合いにあまり起伏がなく、激しさが「平坦に均(なら)されている」ように聞こえるのです。これをグラフで示すと、「激しさの度合い」を示す縦軸のかなり高い位置で水平線が走る、いわゆる「台地状態」になっているようなものです。
なので、最初の方こそアグレッシヴに聴こえても、次第に耳が慣れてしまい、結局あまり激しく聴こえません(余談ですがこういうことを避けるために激しさ志向のメタルやプログレロック、また一部のグラインドコアでは、静寂パートを入れるなり、リズムを工夫するなりして、横線がデコボコ、それもなるべく角度が急になるよう、あれこれ工夫しているようです。中には「頭なぞ使ってられっか」とばかりに馬鹿力のヘヴィネス&激テクで押し切ろうとする熱き肉体派もいらっしゃるようですが)。


ALICE IN CHAINS - Alice in Chains ★★ (2006-02-24 21:14:00)

結果的に最終作になってしまったAliceの3rdは、噂どおりの怪作でした。

アルバムジャケットについては、皆さんもうご存知ですね、「検閲済み」の日本盤をお持ちの方は幸いです。輸入盤の方は……、ええ、表裏とも最悪(又は最高)です。悪趣味なのかアートなのかよくわかりませんが、とりあえず炸裂弾クラスのインパクトを与えてくれます、しかし心優しい彼女とかには見せない方が賢明です。これを見てニヤニヤしていると、何か大切なものを欠いた人間と疑われる恐れがあります。

音的なことを言えば、前作にあったカラフルなポップ色&へヴィメタルとしての重厚さとかっこよさが後退し、より乾いたアシッドな感覚になっているのですが……。まあ、音楽的なことは他の方におまかせするとして、私としては本作の音が私にもたらした「印象」について少々述べておきたいと思います。

Dirtはまだ「病的な」と、「的」で済んでいましたが、本作は本当にビョーキです、もう完全にビョーキです。しかも取り返しのつかないほど病んでおり、深く深く蝕まれてます。なにか芯の所が「腐ってしまった」、本来の適正な形から「歪んでしまった」ようなおかしな感じがあります(思えばこの時点で、すでにレインはどうしようもない状態に陥っていたのかもしれない)。

このアルバムの雰囲気についてはいかんとも形容し難いのですが
前作Dirtが「極彩色の濁流」または「異次元世界の歪んだジャングル」だったとすると、今作は……そうですね、視覚的イメージではなくより生理的な身体感覚に近く、「暗緑色に粘りつく吐き気」のような感じ、とでもいえるでしょうか。トリップ感はあるのですが、これは心地よい「酔い」ではなく「悪酔い」です。気持ちよくありません。

これではまるで音で描かれた「ブロブ」です。
(ブロブ: スライムよりさらに凶悪&汚濁度UPな、下水道汚物の塊のような怪物。ズルズル這いずり、時にゴボゴボ泡立って不快な音を発する。つまり視・聴・嗅・味・触のすべてにおいて、気が狂うほど気持ち悪いクリーチャー。たぶんこいつを考えた人は、人間の不快感覚をそのままイメージ化したんだと思う、天才。でもイマジネーションの有害使用とのそしりは免れない。)

以上あれこれ言ってきましたが、実際、このアルバムは聴くとどうにも気に入らない類の感覚を催してしまい、どうしても曲に集中することが出来なかったので、今作の音楽としての出来・不出来に関してはノーコンテスト、判断不能の作品ということにさせてください。


QUEENSRYCHE - Hear in the Now Frontier ★★ (2006-02-24 21:09:00)

リリース当時、グランジにすり寄ったアルバム、ということで、ファンやプレスに散々に叩かれまくったRyche随一の問題作。

しかし、これは音楽そのものの出来よりも、そのあまりの「タイミングの悪さ」のせいだと思います。これが出た年はまさに伝統HMにとって最悪の時期、特にアメリカを拠点とするバンドにとっては「……その年の冬はかってないほど長く、暗く、厳しかった」時でした。折から吹き荒れるグランジ/オルタナティヴブームの嵐の中、それまで伝統的なHMを支えていたバンドたちは半ば強制的にトレンド追従を余儀なくされ、ファンを失望させた挙句に、次々と倒れてゆきました。

そしてそんな折に出された今作は、一聴するといかにもトレンド迎合路線の鑑のような作風、
「Queensrycheよ、お前もかっっっ、おおおおおお(号泣)!!!!」、「あの(Operation〰を作った)Rycheがぁっっっ(悲鳴)」。
当時の(とくに日本の)HMファンの狼狽ぶりと憤怒の様が目に浮かぶようです。紅い涙を流しつつ、「大駄作ぅぅぅぅぅーーっ!!」と絶叫したくなるのも半ば無理からぬところです……。


…………そして時は流れ、21世紀。
今になって聴いてみると……。いける!、これはなかなかどうして、いいアルバムではありませんか。駄作などとはとても呼べません。さすがに以前の傑作たちには引けを取るとはいえ、「典型的なHM」ではなく「Queensrycheのアルバム」として聴けば、十分聴けるし、曲質も水準並み。非リアルタイム世代のファンならば、こういう路線もアリ、と納得のゆく作品だと思います。
前作Promised Landは彼らのプログレ路線の頂点ともいうべき作品で、楽曲・コンセプトとも徹底的に掘り下げられ、細部まで作りこまれた濃密な作品でしたが、やりすぎて疲れてしまったのか、本作はいい意味でルーズというか、リラックスした作風になっています。
Rycheの作品にしては非常に珍しく、肩の力を抜いて気楽に聴けるのが特徴。みるからに難解で近づきがたい印象があった前作に比べ、第一印象ではこちらの方がずっとよいのではないでしょうか? メロディも豊かでわかりやすくなっていますし。方向性こそ違いますが、親しみやすさでは、Empireと並ぶものがあるのではないかと。ただ、メロディの性格が以前の「英国正統HM〰デジタル産業ロック」ラインから、「グランジ〰フォーク・カントリー」的なものにシフトしており、メロディに正統HM的な悲壮感や産業ロック的な透明感を求める向きにはこれは「つまらない」と感じられるかもしれません(これは案外重要な変化かも。)

グランジ化と言われてはいるものの、安易なトレンド模倣に走ったわけではなく、基本的な部分はこれまで通りのRycheです。そもそもこんなにカッチリしていて、メロディラインがハッキリしたグランジがあるでしょうか。グランジ要素の中でも、Ryche的に一番「活かせる」部分だけを選んで吸収し、それ以外の「不要な」成分(それを入れると自分たちの音楽の雰囲気を損なってしまう部分)は見事に排除されています。ここらへんの選択眼は流石です。とくに⑦⑭などは「最高にカッコいいグランジ・メタル」に仕上がっています。

なので、今までの彼らの売りであった「構築感に富んだ楽曲」「深みのある音のニュアンス」「音を透して世界が見える叙景的な感覚」は(以前ほど強力でないとはいえ)決して揺らいでいません。
そもそも正統派HMをスタイル上のベースとして、そこに時に応じて様々な音楽要素を溶け込ませてゆくのがこのバンドの特徴なので、そこからすれば、今作もまた「Queensrycheの正攻法」に乗っ取った、彼ららしい作品と言えるでしょう。

ただ曲数を入れすぎたせいか、作りこみ不足が目立つ曲(つまり捨て曲ね)が結構多いのと、これまでのような知的でアーティスティックな雰囲気がこのあたりから薄らいできたのは事実だと思いますが……。
それにこの辺から何となく守りに入った作風が目立つようになったのが気になります。以前の作風はとにかく先鋭的で、メタルに対するリスナーの既成概念に激しく挑戦するようなものを秘めていたのですが、今作にはどうもそういう鋭さが感じられません。やはり前作、前々作の商業的成功で(とくに本国アメリカでは)「ビッグ」になってしまった代償でしょうか。
私自身も含めて、身勝手なファンはバンドがいつまでも「先鋭的なプログレメタル」をやり続けてくれることを望みますが、当の彼らは、成功と引きかえにいろんな意味で「守らなければならないもの」ができてしまいました。おかげで、アーティストとしての彼ら本来の美点を活かしきれないでいるような気がします。近年の彼らは、Queenrycheとしてのアイデンティティーの維持と、外的状況が要求するものとの狭間で、絶え間なくゆれ動いてるように見えます。まるで「サクセスは結局、何ももたらしはしなかった」というPromised Landのテーマを、当のバンド自身が皮肉にも体現しているような形で。

さて、我らが賢者は、自ら産み出してしまったこの迷宮をどうやって切り抜けるのでしょうか?
間もなくリリースのOperation Mindcrime 2でその答えが明かされるはずです。


QUEENSRYCHE - Promised Land ★★ (2006-02-24 20:58:00)

Queensrycheの絶頂期の終幕を飾る深遠な作品。まるで「不帰の境界線」の間近へ行ってしまったかのごとき闇(くら)い世界を垣間見せてくれます。まるで思索に沈む哲学者のようなたたずまいの音楽。

しかし、これは渋い。もう激渋。たまに飲むおばあちゃんの玄米茶より渋いこと間違いなし。あまりに渋くて、飲んで味わうのがすごく大変。ですので、
Dragonforce最強ーーっ、とか
チルボドは神っっっ、とか
と熱く叫ぶ、前途有望なメタルスクール新入生の方は間違ってもこれに手を出してはいけません。
撃墜率ほぼ100%だと思いますので。

かくいう私も、先に「Rage for Order」「Operation〰」に聴きなじみ、Rycheの音楽にはもう慣れたぞと密かに自負していたにもかかわらず、あえなく撃沈。これを理解するのに数年余りの「感性の熟成期間」を経なければなりませんでした。途中で一度売ってしまい、思い直してまた買いなおした(やけにたくさん中古屋にあり、しかも安かったのが幸い)アルバムでもあります。とりあえず買ってから聴いて楽しめるようになるまで、最も長くかかったCDだと思います。

今作はそれほど、「ダークで」、「地味で」、「(曲も歌詞も)ヘヴィで」、「強烈に渋く」、不敵なまでに「難しい」作品といってよいでしょう。まるで「オマエら、俺たちのやってることについてこれるか!!」とばかりに、リスナーの知性と感性に真っ向から挑んでくるような野心的な作品。本当にファンに甘い顔をしないバンドだ。しかしこれがアメリカでかなり売れたのが、またすごい。

Operation〰のようなストレートな感動やエキサイトメントとは無縁であり、お世辞にも万人向けとは言えませんが、中身がたいへん濃く、非常に聴き応えのある作品です。前作から4年の歳月をかけただけあって、楽曲・コンセプト・音作り(おそらくロック史上最高ランク)等の細部に至るまで練り上げられています。アルバムトータルでは全作中でも屈指、方向性こそ全然違うものの、完成度の高さはあのOperationにも匹敵すると思います。しかも、あまりに完璧すぎてこれが完璧であるということすら容易には感じさせないという点ではOperation以上かもしれません(Operation〰は聴いてすぐにそのパーフェクト度がわかるが、これはある程度聞き込まないと凄さが見えてこない)。


QUEENSRYCHE - Operation: Mindcrime ★★ (2006-02-19 22:00:00)

ついにこれのレヴューを書く日が来たか……。あまりに素晴らしいすぎるものについて何か言おうとすると、かえって言葉がみつからないといいますが、今の私はまさにそういう状態。

いわく
「80年代最大の奇跡」
「ロック史に輝く不滅の金字塔」
「HM/HR史のクライマックスを飾る窮極のアルバム」

などと賛美のかぎりを尽くしたいところですが、あまりやりすぎるかえって回し者などと疑われそうなので控えめにしておきます。

本作の内容についてすでにみなさん触れられており、いまさら私がつけ加えることもないのですが、一つだけあまり語られていない点について述べさせてください。

実は、とてつもなく「ヘヴィ」で「アグレッシヴ」なアルバムです。
単純に感覚的な音の密度と重量感では、最近のものを含めこれより重いものはいくらでもありますが、全体の音圧、楽曲の緊迫感、なによりメロディラインの燃え上がるほどの狂熱性など、心理的なヘヴィネスとテンションの高さでは全HMアルバム中でも屈指。まるで至近距離で落雷を受けたような異常な緊迫感と圧迫感です。
私的にはJudas のPainkillerやPanteraの諸作品をしのぎ、ドゥーム・メタル/スラッジコアや最近の激音系(Convergeなど)も含め、「ヘヴィネス」「アグレッション」を売りにしている大半のバンドよりはるかにヘヴィに聞こえます(しかも、リマスター化でさらに重たくなった!!)。もちろん重さの表現の仕方が根本的にがちがうので単純な比較は出来ませんが、音のもつ切迫感と説得力において今作に匹敵する作品を聴いたことはほとんどありません。
これに対抗できるのは、私が思いつくかぎり、あのKing Crimsonの終末作「Red」か、忌まわしき怪物Nuerosisくらいなもの。

しかしあまりに強烈すぎ、密度が濃すぎるので聴き終わったとき時の疲労感が半端ではありません。聴いているだけで本当にクタクタ、終曲の後はどっと心地よい脱力感に襲われます。そのせいで、最高のアルバムにもかかわらず、聞いた回数自体はけっこう少ないです。
つまり一回聴くと、本当に疲れ果て、しかも完全に満足しきってしまうので、そうしょっちゅう聴く気が起きない、という超名作にありがちな効果をもっています。(私的にこういう効果の有無で私的な超名作を普通の名作(ヘンな言い方ですね)とを区別する指標にしています。)、

ひょっとすると、HM/HRというジャンルでこれを超えるものはもう出てこないのでは、とも思います。発表からすでに15年以上経ちしましたが(リアルタイムで聴いたわけではありませんが)、私が聴いた範囲で、これ以後出たアルバムで今作を超えるものは皆無。いかなるビッグネームのどんな名作からも、これを超える歓喜と霊感を受けることができないでいます。

今後彼らがどれだけの作品を生み出していくのかわかりませんが、たとえ彼らがHMから離れようと、どれほどの批判を浴びようとも、彼らの名前、そしてこのアルバムのことが忘れ去られることはないでしょう。


PRIMAL FEAR - Devil's Ground ★★ (2006-02-16 23:56:00)

Metal is Forever………「へヴィメタルよ、永遠に」
何という直載な曲名、
これほどまでに自らのアティチュードを明白に表明したバンドが過去に存在しただろうか、
あの生けるHM伝説、Manowarを除いては
Primal Fear……彼らこそ先人より正統HMの聖火を託されるにふさわしい唯一の存在だ
真なるメタルスピリッツより奏でられる、至高のメロディに、
シャウトからほとばしる熱き情動のたぎりに、
言うに尽せぬ感動に震える指先を必死で押えつつ、僕は今このキーを叩いている……


KORN - Korn ★★ (2006-02-16 23:43:00)

わりとKornリアルタイム世代にもかかわらず、耳にしたのは何故かつい最近。どうもブームの波が十年ほど遅れているようです。しかしトレンドの風見鶏に「Kornの時代は終わった」などと囁かれる今だからこそ、かえって彼らの音楽の真価が判るのではないのでしょうか?

スタイルとしてのモダンヘヴィはかなり苦手なのですが、彼らの場合は独特の真に迫った空気とセンス抜群の演奏陣のおかげで退屈することなく聴けます。乾いた隙間の多い音像のおかげで、各人の出している音が際立っていて、一つ一つの音に存在感ありありです。普通はまず全体としての曲が先に聞こえ、そこから個々のパートの音へと耳が向かうものですが、彼らの場合、個々の音が先で、それが重なって後で曲になる、という感覚なのです(聴こえ方からいうとジャズっぽい?)です。
演奏のみなさんもセンスあふれるプレイを披露しており、特にリズム隊は素晴らしいの一言。本当に一音も聞き逃せません。素人でもハイハットの音を聴いていて楽しめるなんていうドラマーは、尋常ではありません。

また楽曲のトーンが本当に独特。「暗い」「絶望的」というより、ひたすら「不穏」で「脅迫的」な感覚が立ちこめています。何かに追われているような感じなのです。まるで○○恐怖症の人が運悪く最悪のシチュエーションに陥り、半ば狂乱状態になりながら必死で平静を装おうともがいているような切羽詰った雰囲気です。ジョナサン氏のVoに至っては屠殺される子羊の憎悪と呻きのような苦々しさです。「俺は虐げられたっ、踏みにじられたっ、嬲(なぶ)りものにされたっっっっ!!!!!!!!!!」と叫び続け、必死に破壊された自己の尊厳の修復に励んでおられます。

やはり彼らは本物です。単に彼らのスタイルを盗用するばかりのフォロワーたち、梅雨時のキノコのように繁殖したその他大勢とは比べものにならない、真剣さと切実さ。
「負の力(ダークフォース)」に満ちた音楽であり、間違っても「聴き手の魂に忘れえぬ感動をもたらす」ような類の作品ではありませんが、どうしようもないネガティヴさの中にも共感を呼ぶのが魅力。


BLACK SABBATH - Tyr ★★ (2006-02-11 00:06:00)

ファンタジーメタルの最高峰。「神話的」とか「叙事詩的」というのはまさにこのアルバムのためにある言葉。

仮に「もっともメタルらしいメタルは?」とアンケート取れば、確実にトップ10に入ってきそうなほど古典的な様式美サウンドですが、神話的なコンセプトを表現するための手段としてこのスタイルを最大限に生かしているのが本作のポイント。故にこれはHMファンのみならず、広く幻想的な音楽を愛する人々すべてに訴えかける懐の広さがあると思います。

この世界観はRPGではなく、本物の神話伝承とか叙事詩の世界。有史以前の北欧とかアングロサクソン侵入時代のブリテンを思わせるような、「歴史の重みと威厳」を感じさせます。ヴァイキングメタルの人たちが泣いて喜びそうな「伝説的で英雄的な」雰囲気と言えばよいのでしょうか。まるで「ニーベルンゲンの指輪」の世界です。

このタイプのサウンドの例にもれず、曲調自体はわりと地味。全体のイメージで聞かせる作品なので、最近のメロスピやシンフフォニックメタルに慣れている人だと、取っ掛かりが少ないように感じるかもしれません。疾走曲は一つだけで後はすべてミドル〰スローテンポ、達人ぞろいにも関わらず各パートとも雰囲気を作ることに専念していて、派手なメロディも華麗なシンフォニーもありません。

しかし、ストイックな作風に徹することからこそ生まれる、この厳粛で荘厳な空気は圧倒的です。どこか神秘的な懐かしさを感じさせる響きは、さながら「伝説に謡われる古き神々の住まう地」のBGMといった趣で、有無を言わせず聴き手を楽曲の世界へ引き込むような魔力があります。とりわけ通しで一曲と言っていい⑤⑥⑦の流れは究極クラスです。
この手の作風は音でヴィジョンを描けないと、コンセプト倒れに終わりかねないのですが、さすがはムード作りの達人トニー・アイオミ、そんな問題はらくらくクリアしてます。

面白いのは楽曲から受ける印象がほぼ完全にクラシックのそれで、いわゆる「ロックらしい」感覚がゼロに等しいこと。今作を聴いて、なぜメタル(正統系メタル)はロックよりクラシックに近い音楽と言われるのか、何となくわかりました。全体に非常に高邁で自己陶酔的な雰囲気が漂っています。こういう空気はメタラー人種にこそ大受けすること請け合いですが、いわゆる「ロック的なアティテュード」の音を愛好する向きには噴飯ものでしょう。後者の傾向の人には恐らく「嫌味な」「幼稚な」「趣味の悪い」ことこのうえない音に聴こえること間違いなし。まるで狙ったかのように、「おまえらはメタルのこういうところが嫌いなんだろう」とばかりに、メタル嫌いのロック系評論家が最も憎む悪のエレメントだけを取り出してギュッと濃縮したような感じです。実に素晴らしく挑発的。「オジーを捨てて様式に走ったSabbathなど……」と飽きもせずに語る、愚かな評論家どもを泣いて歯ぎしりさせるような会心作です。


KILLSWITCH ENGAGE - The End of Heartache ★★ (2006-02-07 22:54:00)

論旨によくない所があったので修正します。……しかし、いつになく批判的で突き放した調子になってしまいましたね……。
下に書いたことはあくまで個人の主観ですので余り気にせぬようにお願いします、ただ実際自分で音を聴いて感じたことであるのは確かです。

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おたまじゃくしサウンド、以上。

いや、これだけだと意味不明なので、例のごとく駄弁の限りを尽くして「気になる点」をつっついて見ましょう。

「メタルコア」なんていうから、てっきり「メタル化に成功したDischarge」とか、「ハードコアへの傾斜を深めたSeplutura」みたいな切迫した音だろう、と思って聴いてみたら、見事期待を裏切られました。
「何だ、ただのメロデスじゃん」というのが第一印象。まあ、細かく聴いていくと確かに違うんだけど、音から受ける印象がなぜか「アメリカのトレンドにすり寄った最近のメロデス」(特にSoilwork)そのものです。これならわざわざ別の呼称をつけなくとも、というのが正直なところ。

楽曲の質自体はなかなか高いと思うけれど、どれもこれもどこかで聞いたことのあるようなフレーズと手法の継ぎはぎに終始している感があり、オリジナリティのかけらも感じられないのは大きなマイナスです。聴いていて、ここはメロデス、あそこはハードコア、ああ、そいでモダンへヴィね、という感じですぐに元ネタが割れてしまうのが情けないです。すでにボロボロになるまで使い古された手法をいまさらリサイクルして、どうするのだ、と言いたくなります。こういう無意味なミクスチャー(パッチワーク?)をやるくらいなら、すでに型として確立されたスタイルを叩き台にして自分たちの個性を表現した方がずっといいと思うのだけれど。

しかも曲展開に脈絡がなく、何故そこでそれをする必要が、と言いたくなるような場所で不意にへヴィリフの刻みやクリーンヴォイスが入ったりします。パートとパートのつなぎにあたる部分が極端に弱いせいで、曲の自然な流れがあちこちで寸断されてしまっているのです。とくにへヴィパートからサビのメロディアスなパートへ移る際に、両者の間の架け橋にあたる部分がないため、クライマックスへ向けてのスムーズな盛り上げが利かないばかりか、唐突な印象さえ与えてしまいます。まるで四コママンガの三コマ目を抜かして、いきなり四コマ目のオチへ飛ばすようなもので、これだとせっかくの美しいメロディが生きません。

もう一つ、彼らはIn FlamesやSoilworkと同様、曲によってイメージを描けないという欠点があります。いや描けない、というより、へヴィパートの時とクリーンパートの時のトーンや雰囲気が違いすぎるせいで、曲全体としての一貫したイメージを持つことができないのです。
よく美と醜のコントラストといわれますが、コントラストはそれが乗せられる土台が共通であってはじめて生じるもので、それがなければ単に無関係な二つのものがあるだけで意味がありません。例えば画面上でのレッドとブルーの対比は、両者が同じ白いキャンパスという土台にあって生じてくるもので、二つの色が別のキャンパスにあったり、そもそもキャンパス自体が真っ黒だったりすると全く意味がありません。しかし今の彼らの曲は限りなくコレに近いものがあります。脈絡のない幾つかのイメージ、印象が並べられているだけに聴こえます。
そのせいで曲全体としての雰囲気とか世界観というものが全然見えてきません、個々のタイルだけがカラフルで、全体としては意味のある図案をなさないモザイク画みたいなものです。

とりあえず音の背後にイメージやドラマ性を宿らせることができないというのは、スタイルより何よりHM特有の「曲が醸し出す雰囲気や世界観」が好きな人間には致命傷でした。

こういうわけで今の彼らの音はまるで「足の生えたおたまじゃくし」のような不自然さです。
彼らが日本でいまいちブレイクしないのは、懐古趣味の保守的な某誌とか古風な人びとのハードコアルーツへの偏見の影響かなとか考えていましたが、実際聴いてみて考えを改めました。

一言でいって、「音に圧倒的な説得力がないから受けない」、「音楽に魅力が欠けるからブレイクしない」、ということだと思います。


SEPULTURA ★★ (2006-02-04 00:13:00)

書き込みがこんなに少ないのは何故? 相当ビッグネームなバンドだと思うのだけど?
彼らの音楽の熱烈なファンと言うわけではないけれど、個人的にリスペクトしてるバンド。とにかくそのまま映画に出来そうなドラマティックなバンドストーリーが素敵。なにしろ
ブラジルの片田舎で楽器すら揃えられないどん底状態から、VenomやSlayerの素朴な模倣に始まり、
やがて本家を凌駕するほどのスラッシュの傑作を生み出すまでに成長し、世界の舞台で活躍するようになり、
時代の趨勢とともにモダン化・トライバル路線を歩んで、評論家も絶賛の決定的名作で不動の名声を獲得、さあ今こそキャリアの絶頂、
というまさにその瞬間にカリスマ的なフロントマンの脱退劇によって運命は急降下
それに続く、兄弟あい食む骨肉の争い、泥沼の裁判闘争によってバンドイメージは一気に低下、解散説すらささやかれるほどに追い詰められるが、
この絶体絶命のピンチに、異人種の大男を後任に迎えるという奇策(日本じゃピンとこないかもしれないけど、これってすごい快挙だと思う。少なくともアメリカのバンドだったら絶対できないような技。人種の壁の低いブラジル人だったからできたことだと思う)によって何とか脱出、
以後、トレンドとは一定の距離を保ちつつも、独自の手法でへヴィミュージックを追求、日本の前衛太鼓集団とコラボレートするなど、初期のイメージからかけ離れた、アーティスティックな顔さえ見せる文化交流トライバル・メタルバンドとして活躍、安定した活動へ、

という、紆余曲折、幾多のトラブルを一歩一歩乗り越えていく、山あり谷ありのバンド人生が非常に熱い!!。(これに、マックス復帰!!、となるとさらに映画度アップ。)。まあ、本人たちはいろいろ大変だったと思いますが。

この界隈では稀に見るほどの自分たちの色を持ったバンドだし、今度とも末永く活動していって欲しいです。…………が、マックス脱退以後、日本では何故か今ひとつ隅に置かれている感じがするのはなぜでしょうか。

やっぱりメタル的には未だに「落ち目のスラッシュを見捨ててモダンに走った恥知らずの変節漢ども」「人気者の兄を金絡みで追い出した卑劣な弟とその郎党」という感じなんでしょうか? 「マックスのいないSepulturaなんて」という人々のしつこい往生際の悪いぞコールのおかげでしょうか、何となくオジー脱退後のブラックサバス状態になっているようで実に不憫です。


SEPULTURA - Chaos A.D. ★★ (2006-02-03 23:49:00)

一般的にはまるで「前門の虎、後門の狼」という具合に「Arise」と「Roots」という二大名作の間に挟まれ、今ひとつ目立たない感じの作品ですが、自分的にはこれが一番好きです(というかSepulturaはこれとライヴ盤くらいしかちゃんと聴いてません、ごめんなさい。)

前作までのハードコアスラッシュ路線と以降のモダン民族路線の橋渡し的な作風ですが、こういう過渡期にしかできない微妙なバランス感が魅力です。楽曲に即効性が少なく、正直最初は地味であまり印象に残りませんが、二度、三度と聞き返すとあちこちに面白いギミックが隠されていているのがわかります。聞くたびに発見があって楽しく、聴き手を飽きさせません。
ハイライトは何と言っても、魅力的なバンドのパフォーマンス、Vo含めて全員が実に味のあるプレイを繰り広げています。特にイゴールのドラムスは最高。この人の場合、テクもさることながら、すごく頭がよさそうな感じというか、センスが抜群なのです。まさにHM界のスティーヴ・ジャンセン。もし自分にドラムが叩けるなら、イゴールのように叩きたい、思うくらいのカッコのよさです。
(余談ですが、Blind Guardianのドラムスは絶対イゴールの影響を受けてると思う、ほとんどパクリ?、というようなフレーズがあちこちに出てきます)。

もう一つ面白いのがアンドレアスのギター。リフワークこそメタリックですが、音色の感触があまりメタルっぽくない機械的な感じで、ソロパートなどまるでダークなUK New Wave(Bauhausとか)のような趣きです。HMでこういうギターの使い方をするのは非常に珍しいと思います。

Sepulturaというとハードコアスラッシュあるいは民族へヴィロックで、どっちにしろ「情動的・肉体的な」「熱い」音楽をやるバンドというイメージがあるのですが、このアルバムからはなぜかすごく無機的で冷徹な印象がただよってきます。先にあげたギターやところどころに出てくるインダストリアル風の音使いのせいか、何故かマシーナリーで不穏、かなり不気味な感じがします。タイトルどおり「不安」・「混沌」・「世紀末」な感触です。
極めつけは「Manifest」、扇動的なリズムにのせて、無感情に祖国の恥部を暴露する反体制ラジオ局風の「声明」が半端じゃなく怖いです!!(歌詞の内容が分かるとゾッとします。ブラジルの刑務所だけには絶対に入りたくない!!)
そういえばこういう雰囲気って、初期のKilling Jokeの得意技だったはず。あんまり語られませんが、このバンドはメタルやハードコア以外のバックグラウンドも結構もっているのでは?

というわけで、Voは激情かつスピリュチュアルな「生命の雄叫び」、ギターはダークで冷酷無情な電気音風、ベースが突進&グルーヴ両対応で、ドラムがトライバル(原始的)で同時にハイセンスという、奇想天外な組合わせ。にもかかわらずバンドの音として完全にまとまっているのだから凄い。類型的なスラッシュ・モダンへヴィとは一味も二味違った個性あふれる音です。こういう非スタンダードな組み合わせって大好きです。


IRON MAIDEN - Virtual XI ★★ (2006-01-04 22:50:00)

これはひどい。目も当てられません。Meidenのアルバムの中では、唯一売却済みです。リリース当時はMeiden大リスペクトの後輩ミュージシャン達からすら激しい非難を浴びたそうで、偉大なる鋼鉄の処女の恥部というべき惨めな作品です。私としても、この作品だけは擁護する気になれません。Killersが未発曲集的凡作、Dance of Deathがセンスに乏しい問題作とすると(どちらも「名作」との絶賛の声が多いのは承知してますが)、このVirtual Ⅺは正真正銘の駄作といってよいでしょう。

一般的には「歌っているのはブレイズのままだが前作よりかはずっとマシ」的評価ですが……。確かに表面的な楽曲スタイルの上では難解な部分があった前作よりもずっとなじみやすく、一聴しての印象はこちらの方がよいとは思います。Furturealのような最高のリフをもった名曲もありますし。しかし、ちょっと聞き込むとすぐボロが出てしまいます。

正直前作とは音楽としての魅力が違いすぎます。思えば前作X FactorはVoやプロダクションなど数え切れない弱点を抱えた穴ボコだらけの作品だったにもかかわらず、聴き手の心に確かに響くものをもっていました。楽曲の深みとイマジネイティヴなムードは過去最高といってもよく、彼らの世界観を好むファンならば「にもかかわらず、にもかかわらず、これは名作だっ、本当は素晴らしいアルバムなんだっ!!!!」と叫ばせるだけの魅力をもっていたのがX Factorというアルバムの不思議なところでした。

……しかし本作はどうでしょう。この凡庸さは何なのでしょう? 楽曲にしてもアレンジにしても、はたまたアルバムトータルでのイメージにしても、どこか中途半端で煮え切らない印象で、製作途中の作品を見切り発車的に無理矢理リリースすることになりました、というような感じがあります。ちょうど当時のMaidenの迷いとためらいが透けて見えるような作風です。当時バンドを取り巻いていた状況やメンバーの心境を考えると同情せずにはいられませんが、とりあえず一リスナーとしてそういう政治的事情に配慮するのはやめておきましょう。

録音状態は前作同様きわめて劣悪、まったく迫力のない薄っぺらい音像でこれにも大いに問題ありですが、結局本作最大の欠点は何といっても楽曲自体の魅力の乏しさに集約されます。ブレイズは何も悪くありません。彼は頑張りました。彼があらゆる面でMeidenに合わないシンガーであるのはどうしようもない事実ですが、それでも自分に出来ることはすべてやったと思います。しかし楽曲の方がどうにもいただけません。
ファンが期待する「従来どおりのMeidenらしさ」と「ブレイズのVoを上手く生かせるような楽曲」というどう考えても両立不可能なことを敢えてやろうとした結果、ひどく不自然で歯切れの悪い曲調になってしまっています。意図的に曲の方向性を宙吊りにしているというか、あえてどっちつかずで焦点のぼやけた、ブルース時代のMeidenとブレイズの間を行きつ戻りつしている感じを受けます。これに関してよく曲をブレイズ向きに仕上げてきた、という評論を目にしますが、私から見ればこれでは全然不十分です、こんな風に妥協するなら全くVoのことを考えないで今まで通りのMeidenらしさを貫いた方がまだ良かったと思います。

しかし本当のことをいえば、ハリス先生には敢然と勝負に出て欲しかったです。ブレイズにすべてを賭けるつもりで、今までのドラマティック路線を捨ててMan on the Edge や Futurealのようなシンプルな曲で攻めるべきでした。そうなっていれば従来のファンを失望させたとしても新しいファンを獲得できただろうし、なによりVo交代の意義を広く人々に納得させられたことでしょう。逆に今までの路線を守りたいなら、涙を飲んでブレイズを切り、楽曲の世界観を表現し切れるだけの力量をもったシンガーを加入させるべきでした。少なくともこういう中途半端なことだけは避けるべきだったと思います。

政治的にやむをえない事情がいろいろあったとは思いますが、そういった動揺や迷いがダイレクトに音楽の出来に反映されてしまっているのは実に痛いところです。これまでのアルバムと違って、今作からは自分たちの音楽に対する入れ込みとか、あるいは今度のMaidenはこれなんだ!!というような「確信」めいたものがあまり感じられません。そのせいで、個々の楽曲の世界観もアルバムトータルのイメージもどうにも曖昧になってしまっています。一言でいって、「顔の見えない」、全体のカラーがはっきりしない作品という印象です。


FALCONER - Falconer ★★ (2005-12-28 19:19:00)

「いやあ、へヴィメタルって本当にイイものですねー」と思わず大仏スマイルを浮かべてしまうような音。のっけからメタルスピリッツ全開、もうこれでもかっ、これでもかっといわんばかりに確信犯的トレンド無視時代遅れ呼ばわり上等だゴラァー的超正統派疾走HMナンバーの連発にガッツポーズの連続、気づいたらあっという間に終わってました。

何でも以前はヴァイキングメタル(デスやパワーメタルに北欧民俗音楽的要素を導入し、勇壮なメロディやコーラスに載せてキリスト教以前のスカンディナヴィアの土着的なカルチャーを賛美する人たちのやるメタルをこう呼ぶらしいです。)をやってた人たちだそうですが、私はその辺にはまるっきり無知なのでちょっとパス。確かにVoの歌いまわしやメロディ・アレンジの節々にフォークっぽいセンスが感じられますが、驚いたことにそれが土台にある正統派HMサウンドとびっくりするほどマッチしてます。
ガチガチの硬質な音色で変則リフ(フォークとメタルの愛の子のようなフレーズ多数)を奏でるギターとフォーキッシュで温もりのある歌声の絡みあいなど未知の快感神経を刺戟されるようで思わずニヤけてしまいます。メタリックな基礎のストロングで無機質な感触とトラッド・フォーク由来の叙情的でヒューマンなタッチが相反するものの調和という具合で上手い具合に互いの魅力を引き出しあっている感じです(まあ、Voが始終民謡系のキャッチーなメロディを歌い続けるせいでサビの盛り上がりが弱くなってしまうという欠点はあるけれど)。特に「ここぞ」という時にやって来る「静かな湖畔」系メロディのコーラスと三拍子系リズムはインパクト大。まさかBlind Guardian以外にこの手のリズムと節回しをHMの曲調の中で使いこなすことができるバンドがいるとは思いませんでした。

バンドの看板的存在(だった)はマティアスのVoですが、ちょうど普通の声でメロディアスに歌った時のハンズィ・キアシュから高潔さを抜いてマイルドにした感じでとても優しく親しみやすい声質です。しかもいざというときには伸びやかに力強く歌い上げる(「叫ぶ」ではありません)こともできます。おまけに英語の発音が抜群にクリアで、歌詞カードを見なくてもここまで歌詞が聞き取れたのはじめてです。しかもこの人、本当に歌うことが楽しくてたまらないようで歌唱が凄く活き活きしてます。聴いているだけでこっちまで楽しくなってくるような歌い方で、彼の歌には聴き手を励ましてくれるような暖かみとパワーがあるのです。しかし、それだけに二作だけでの脱退は非常に惜しいです。音楽の道を進み続けていたら、ひょっとするとキスクやファビオ級のヴォーカリストになれたかもしれないのにね。

音像面の特徴はそのあんまりの無愛想ぶり。いや、こうなる潔いよいです。色香もヘチマもないような無骨すぎる音像、「俺たちに飾りはいらない!!」と豪語する声が響いてきそうです。アラも美点も何もかも剥きだしになる音作り、よほど曲の出来に自信があるのかあるいは単に予算がなかっただけなのか。しかしそれでいてチープな感じやハリボテ感が全然ないのは、彼らの曲が本物だということの証なのでしょう。まったく曲本体はそっちのけでクラシカルなデコレーションに血眼になっているどこかの有名バンドにはこういう「リスナーを欺かない誠実さ」を見習って欲しいものです。

それともう一つ、このバンドは歌詞が凄くいいです。歌詞カードを呼んでいて思わずハッとさせられるようなところがいくつもあります。基本的にシンプルな英語で、テーマも比較的よくあるものなのですが、不思議と書き手の想いや問題意識が素直に伝わってきます。HMバンドの歌詞を呼んでいて思わず共感してしまったり、何か考えさせられることなど滅多にないだけにこれはすごいことです。ギタリスト兼ベーシストが作詞も担当ということですが、彼には本当に詩の才能があるのかもしれません。


NIRVANA - Nevermind ★★ (2005-12-27 00:22:00)

あんまり長くてわかりづらくなったと思うので、言いたいことをうんと縮めていうと、この音楽には美感というものがまるでなく、特定の感性を持った聴き手をすごく参らせるようなものが含まれているということ。
自分にとって価値があるもの、霊感でもいいし、美しいと思える音の響きでも、カッコいいと感じる世界観でも、社会への怒りとかフられた彼女への未練でも、ヴァイキングやジーザスクライストや「生ける連続体」への崇拝でも賛美でも、何でもいいけどとにかく「自分たちにとって素直にイイと思えるもの」を表現しているのではなくて、逆に当人自身ぜんぜん価値を感じていないもの、できれば自分の中から失くしてしまいたいようなヤなものばかりをあえて表現しようと頑張っているように聞こえてしょうがない、ということなんです。それで音楽がそのために酷使されていると、そういう感じなのです。

上の方でちょっと不正確な書き方をしてしまったけれど、別にマイナスの感情を表現すること自体が低劣だとかクズのようなものだとか言いたかったわけではなく、ポジティヴであれネガティヴであれ自分たちにとって「どうでもいい」または「こんなもの無い方がマシなのに」と内心で思っているようなものをあえて見せびらかすようなことが無価値だというつもりでした。

で、あたかもそういうことをやっているように感じられるこのバンドの「音楽」(くどいようだけど、バンド自体が嫌いだ、「バンドの姿勢や考え方が嫌いだ」というのと、「バンドの演っている音楽から受ける印象が嫌い」というのとは違うからね。)自分としては絶対に認められないし、どうにも嫌で気分が悪くなる、ということです。


BLIND GUARDIAN - Somewhere Far Beyond ★★ (2005-12-24 16:40:00)

いわずと知れた超名作。比類なき完成度を誇るだけでなく、この一枚の中にへヴィメタルのすべてが込められたHMの代名詞的作品。Voも楽曲も世界観や音の響きの印象まで、何から何まで完全無欠のHMサウンド、そのうえ明確すぎるほどのオリジナリティも備わっているという文句の言いようのないアルバムです。

このバンドについてはいまだにジャーマンメタル云々と言われてますが、私から見ればこれは完璧な正統派メタル。少なくともこのアルバムに関してはそうです。「Defender of the Faith」の時のJudas Priestがスラッシュメタルを通過し、ドイツという土壌の中で進化するとまさしくこういう音になる感じです。爽快さを通り越してほとんど激烈なまでの疾走感といい、スラッシュに近いニュアンスの刻みといい、全編を支配するダークで神秘的な「闇」を感じさせる雰囲気といい、スタイル的な類似点こそ認められるもの音楽から受ける基本的な印象がHelloween系とはまるで異なります。よってHelloweenやその分派の産業ロック的に過剰にライトアップされた明るさやあざといまでにキャッチーなメロディがどうも苦手、という硬派なスピリットの方も気勢をそがれることはないでしょう(今となっては以外に聞こえますが、この頃の彼らがフェスなどでよくSepalturaやKreaterと共演していたという事実を考えると、日本はともかく本国では当時どういう界隈のバンドと見られていたかが、それとなくわかります。)。

このアルバムは人がHMに求めるもののすべてを備えており、正統派からスラッシュに至る80年代HMのエッセンスを結集したような音と断言してしまってかまいません。つまり、

Judas Priestの威厳と重厚さ
Iron Maidenの構成力とドラマ性
Slayer やかってのSepulturaばりの突進力とアグレッション
絶頂期のQueensrhycheに通じるコンセプチュアルで深遠な世界観

を兼ね備えたサウンドです。さすがに一つ一つのエレメントではそれを本分とするバンドに見劣りしますが、各々が最高のバランスで結合しているため、トータルで圧倒的な完成度が生れています。極端に細分化が進み、デスやメロスピ、シンフォメタルなど本来のHMの部分的要素だけを特化させたようなスタイルがもてはやされる中にあって、このバンドのようにオールマイティな音をだせるバンドは本当に貴重です。そしてそのうえで、彼らのオリジナリティといえる

荘厳にしてキャッチーなクワイアと、激しさと気高さを兼ね備えた「歪んだ美声」のVo
独特の滑らかな音色で奏でられる、流麗にして構築美あふれるギターオーケストレーション
ケルティック・ミュージックや中世音楽の要素に加え、クラシックやゲームミュージックの影響を感じさせる、他に類を見ない独創的なメロディとハーモニー
と融合させたもの、といえばまず間違いないでしょう。曲の構造的な部分に関してだいたい伝統的HMのスタイルを踏襲している(単純ではないがそんなに複雑でもない)のですが、メロディやハーモニーやコードなど音の響きをに関わる部分がきわめて独創的なので結果的に非常に個性的な音に聞こえます。

今になってみれば、80年台HMの遺産を最も純粋な形で受け継ぎ、それを究極まで発展させたのは結局このバンドのこのアルバムだったような気がします。ある意味この音は「メロディ・ドラマ・攻撃性」の三要素の融合を追及する伝統的なHMスタイルの最終発展形といってよく、その最高の成果であると同時に最後の一ページを飾る作品と言い切ってしまってよいと思います。本作のリリースからすでに十年以上経ちますが、私が聴いたかぎり同路線でこれを超える作品はいまだ現れていないようです(そんなにメタルばっかり聴いているわけではないので断言できませんが)。確かにこれ以上同じ方向を追求しても、よくて同一レベルのものの再生産、悪くなると「奇形化」や「パロディ」になってしまいます。
当のブラガ自身、次作以降からプログレッシヴ・ドラマティック路線に転じるわけですが、これは単に同じことを繰り返したくなかったというだけではなく、今作までで正統派メタルの枠内でやれることはすべてやり尽してしまったという感覚があったからだとも思えます。


BLIND GUARDIAN - Battalions of Fear - Majesty ★★★ (2005-12-15 00:25:55)

記念すべき1stアルバムの一曲目、BGの出発点。
ライブで常に演奏され、彼らの成長ともに進化し続けてきた曲。その甲斐あって最新の「Live!」ではおそろしくカッコよくなっています。聴くならぜひともこちらのヴァージョンを。
Judas Priestばりの重たい刻み、Iron Maiden風のベースとユニゾンする変則ギターリフにメロディックなツインリード、プログレ・ロック的(イントロといい、ハンズィの歌い方といい、ピーター・ガブリエルがいたころのGenesisにそっくり!)な複雑な展開など、まさに聴き所満載でこれを聞くと彼らのルーツが正しくどこにあったがわかります。

空前絶後の超名曲というわけではありませんが、私がいままで聴いてきたあらゆるHM曲の中で、もっともHMらしい曲で、へヴィメタルという音楽の定義のような曲です。
「メタルってどんな音楽?」ときかれたら私はJudasでもMetallicaでもなく、まずこれを聴かせます。HMのすべてが詰まった7分40秒をあなたもどうぞ。


BLIND GUARDIAN - Nightfall in Middle-Earth - Mirror Mirror ★★★ (2005-12-14 23:55:11)

かわいいけれどびっくりするほどナマケモノ、丘のふもとの村のプリンセス、黄金(こがね)の巻き毛のイデリーヘルが今日も今日とて羊の番をそっちのけ、楽しい白昼夢にふけってたところに、毎度おなじみパンク妖精スナッビィホーンがやってきて、緑の芝生の花の環のまわりでダンスを踊ろうと彼女を誘った。手を取ったが運のつき、二人の手と手はにかわののりでくっつけたように固く貼りつき、環を描いて踊る二人の影はみるみる速く激しく、水車から紡ぎ車、いまはもう子どもの遊ぶコマのよう。瞳の前をクルクルまわる春の景色にイデリーの頭はもうクラクラ、帽子は飛ばされ服は脱げかけ、耐えきれずに悲鳴を上げる。スナッビィはたいへん喜び、ニヤニヤ笑ってこうささやく。

「HAHAHAHA!ほらほら恥ずかしがらずに、お嬢さん! 靴下留めなんぞ気にせずに、……まだまだお楽しみはこれからさっ!……HUHUHUHU」

歌詞の内容とはまるで無関係ですが、聴いているだけでこういうシーンが浮かんできます。本当に楽しい、素晴らしい曲です。癒やされます。


BLIND GUARDIAN - A Night at the Opera - Punishment Divine ★★★ (2005-12-14 23:31:36)

「地上より隔たることはるか30000フィート!!!!!(by フリードリッヒ・ニーチェ)」の衝撃。
………やってくれた……やってくれましたよ、……もうトランスですよ、この音色に音使いは。それによく聴けばリフの端々にはモダン・ヘヴィネスの影が。従来のスタイルに見事に新要素を融合させ、BGの、いやメタルの未来を切り開いた歴史的な名曲です。
……しかし「神と人類の境で引き裂かれた男の歓喜と苦悶の叫び」というべき壮絶さ。爆発する火山のようなアグレッションと発狂寸前の異常な緊迫感。人跡未踏の聖なる山の頂に雷鳴が轟くようなものものしくも荘厳なメロディ。「超越的な激烈さ」というか、「狂った修道僧が神の名を絶叫しつつ、ひたすら鉄の壁に頭を叩きつけるような宗教的激情」を感じさせるとんでもない曲です。さすがベートーヴェンの子孫たち、あの民族特有の精神性がモロに出ているというか、スタイルは違えどドイツ魂の真髄が炸裂しています。邦題をつけるなら「神の怒りの日」が適当でしょう。うすうす感じていたブラガ最強伝説はついに真実になりました。


TERRORIZER - World Downfall ★★ (2005-12-14 21:55:00)

グラインド・コアの開祖、それも今なお伝説として語り継がれる存在と聞いて、さぞかし過激で目茶目茶な音だろう、とビクビクしながら聴いてみたのですが……。これがビックリ、イメージと違ってとてつもなくクールでスタイリッシュ、最高に格好いい音でした。先鋭的なのに同時に決して野卑にならない趣味のよさ。聴き様によってまるで一部のクラブミュージックのような「オシャレ感覚」すら感じられるのが驚き。
これなら普段グラインドのグの字も知らないような清く正しいIron Maiden万歳派(つまり私のような人々)にも全然OKなはずです。デス・グラインドと聞いて条件反射的に思い浮かべてしまう「醜悪」・「暴虐」・「流血」・「混沌」の四大邪悪元素のいずれもないのが、我々のような善良でか弱い羊人間にはたいへんうれしいところ。

狂ったように速いものの一応キャッチーなリフが主導で、装飾部分をすべて削ぎ落としてソリッドでグルーヴィになった初期型ジャーマンメタルと言えなくもないような音(ちょっと無理か?)。昔のB!誌で、あの愛すべきヨーロピアン熱狂者の某キャプテン氏が絶賛していたのも何となくわかります。
リズムのニュアンスがHMの鋭角/直線ではなく、ハードコアのバウンド型に近いのがポイント。アグレッシヴに徹しつつも、曲づくりもおろそかにしていないようで、小気味よくリフの刻みからの、突進モードへのチェンジ、スローダウン/スピードアップの絶妙なタメなど、細かいところまで気を配った楽曲の質の高さには尊敬の念すら覚えます。似たような曲が続いても全然飽きません。ワンパターンになりがちなエクストリーム系ではこれは異例のことです。

演奏レベルの高さはいうまでもなし。「人の皮をかぶったドラムロボ」サンドヴァル大元帥の人外魔境的なプレイなど、驚きを通り越してただただニッコリ微笑むしかありません。ベースも大いにうねっており、こうなるとほとんど爽やかな気分にすらなります。

メロディアスな部分はありませんが、一音一音が非常に冴えており、音そのものの存在感がすごいです。鈍く光るクロームの輝きとでもいえばいいのか、楽曲も演奏も無情なまでにソリッドでクール、ある意味これこそメタル、といいたくなるような硬質で無機的な感触です。衝動的な荒々しさよりは機械的でデストラクティヴな雰囲気。全編に渡って独特の整合感に貫かれています。グラインドが「コア」でありながら、パンクスよりもかえってメタラー層のからの支持が高い、というのもさもありなんといった所でしょうか?

全体に何か高度に洗練された「破壊の様式美」のようなものが感じられ、バンドの個性という枠を超えて普遍的な「型」として通用するだけのポテンシャルを感じさせます。ある意味これがグラインドコアの理想型となったのも当然と言えば当然。
冗談抜きに単にスタイルだけで正統派をやっているバンドより、はるかに「メタル」を感じさせるのには驚かされます。様式としてのHMではなく、文字通りクールで無機的で攻撃的なメタリックサウンドを求める向きにはぜひぜひ。


ALICE IN CHAINS - Dirt ★★ (2005-12-04 02:45:00)

どう聴いてもメタルなのに、何故にいまだにグランジ扱いなのでしょう? こんなにポップでカラフル、わかりやすいグランジがあるでしょうか? メディアが勝手に付けたくくりをあまり信用してはいけません、これはメロディアスでグルーヴィな病気系へヴィ・アート・サイケデリック・メタルです。昔かたぎのメタルファンの神経を刺激するかの三悪要素、汚らしい音色、ジメッと煙たい雰囲気、しまりのないリズムのいずれもありませんので、私みたいにNirvana系がまったくダメな人でもぜんぜんOKです。

サイケといってもカテドラルのような地の底で重く這いずるような粘着感はなく、案外キレがいい感じです。なによりドロドロベタベタした感じがないのがうれしい所で、泥沼の中をビチャビチャ跳ね回るのではなく、ムンクの叫び系の歪んだ空間を聴かせます。よくブラックサバスが引き合いに出されますが、この歪んだポップ感とドラッグ系アートな感触はまるで超へヴィになったピンクフロイドといってもいいかもしれません。リズムこそ緩めですが、リフやメロディなど楽曲の基本構造が非常に硬くがっちりしているため、「うねる」というより硬質な物体が「ひずむ」または硬くて重いボールが「弾む」といった方が適当です。どなたかご指摘なされていたように、Iron Maidenのベースとグルーヴが好きな人にはこれはたいへんなじみやすいのでは?
ギターもノイジーな金属残響音を伸ばす感じの音で、耳障りなザクザクしたエッジがほとんど聞こえません。メロディもじつにポップ……いや、メロディというより一音一音の響きが非常に鮮やかで、ポップな感覚があります。どうもこのバンドのソングライターは、天性のポップ耳の持ち主のようで、心理的に非常に耳に残りやすい音の響きを知っているような気がします。他のバンドの音に比べ、一音一音の響きがほとんどどぎついまでに濃密で厚みがあり色彩感に富んでいるのがよくわかります。へヴィな曲も凄いですが、アコースティックの使い方も抜群で雰囲気の作り方が非常に上手いです。音だけで完全に自分たちの空間が作れる稀有なバンドであり、歪み切った空の下、毒々しいまでに美しい花々が咲き乱れる異次元の森で生れたままのアリスと戯れるような病的で芸術的な世界観があります。

極彩色の濁流がゴーゴーと大渦を巻くさなか、渦の中心から聞こえてくるのは酔っ払った坊主が適当にお経を読んでいるような異様な歌声です。メロディアスでキャッチーな歌ですが、いかにも人工着色料たっぷりといった感じで、オレンジジュースの素とか色つきキャンデーのようにものすごく身体に悪いものが一杯入ってそうです。爽快感などというものはひとかけらもありません。聴いてるだけで病気になりそうなサウンドです。本当は死ぬほど暗くて憂鬱なのに、アッパー系のお薬(合法・非合法どちらでも可)のおかげでむりやり明るくされたみたいな悲惨な陽気さが怖いです。故レイン氏は時にやる気なさげに、時に世間に悪態つきつつ、時にゴァラーと恫喝口調でひたすらマントラを唱えていらっしゃいますが、溺れ死ぬ寸前のような力尽きた感じが漂ってくるのがなんとも胸を衝きます。夜中に大音量のヘッドホンで聴き、迷子のアリスを追いかけてあちらの世界へ飛んでいきましょう。


IRON MAIDEN - Rock in Rio ★★ (2005-11-25 22:49:00)

感動のライヴ盤。……みてください、リオが、25万人が燃えています。真っ赤に、真っ赤に燃えています。もしこの日の地球を宇宙から見下したなら、真紅の光が惑星南部の一角よりたち登り、宇宙を貫く炎の矢となるのが目撃されたことでしょう。
……いえ、この怪現象はガニメデをはじめ、星系各地の観測球にキャッチされており、目下のところ詳細調査中であります。かの炭素系二足歩行生物が多数居住する本恒星系第三惑星上において重大な異変が生じた可能性も否定しきれず、この件に関してはぺテルギウスの銀河連邦探査局上層部も重大な関心をよせており、われわれ第三象限方面第8次辺境領域管理室にとっても目下最大の懸案事項となりつつあります。現時点での報告を総合するかぎり、惑星南半球においてかの炭素系二足生物が定常的に放散する心理的熱量の短期的な爆発的増大により惑星レベルの精神電磁波バランスが大きく乱されたために生じた異常であると推測されますが、詳細の判明にはなおしばらくの時間を要すると思われ…………おや???

話を銀河連邦の通信文(最近、チャネリングによって入手しました。)から地球人類の音楽に戻すとして、このアルバムの凄さを一言でいうとまさしく「何というパフォーマンス!何というオーディエンス!(ライナーより)」ということに尽きます!!
今作最大の功労者は間違いなく、偉大なるバンドを支える彼ら偉大なるオーディエンスです。彼らの後押しがなければ、今作がこれほどまでに感動を呼ぶ作品とはなりえなかったでしょう。
あたかも「祝福された処女の栄光を讃えるために集った数十万の民の、歓喜の歌が地の四隅、天の頂にまで響き渡る」ように、オーディエンスの歓呼の叫びは最初から最後まで絶えることはありません。この熱狂、常軌を逸した盛り上がりを聴いているだけでゾクゾクしてきます。まるで自分がオーディエンスの一人として、ライヴの現場に居合わせたかのような錯覚すら覚えます。

録音・雰囲気ともとにかく最高、とんでもない迫力です。今作にかんしては、音割れだのノイズだのはまったく無意味、演奏がどうのこうのはさらに無意味、どうでもいいことです。オーヴァーダヴ?それがどうした?というところです。ひたすら大音量で鳴らし、踊り、飛び跳ね、オーディエンスの一人となって狂喜の叫びを上げつづければそれでいいのです。(近所迷惑になるし、「あの人は頭がすこし……」というよからぬ噂がヒソヒソ声でささやかれる羽目になりかねないので、住宅街にお住まいの方は注意)

選曲も問題なし、個人的にライヴで省かれがちな大作が多めなのがうれしいです。全曲スタジオ版とは比べ物にならないほどのパワーとテンションで、とくに録音に問題大ありだったブレイズ時代の二曲など、信じられないほどの変わりようです。劣悪なプロダクションのおかげで屍同然だった曲に、生命の炎が宿り、見事に生まれ変わりました。

個人的には
Wrathchildで狂喜
Sign of Crossに驚愕、
Blood Brothers に感激
Fear of The Darkで失神
Sanctuaryで完全昇天、空の彼方まで飛んで行き、
Run to Hillsで白い粉になってキラキラ輝きながら降ってきた、という感じでした。

「すでに終わったバンド」、「年寄り相手に古いメタルを演り続けている、過去のバンド」などと血迷ったことを言う人々には、何とか誘惑してこれを聴かせてあげましょう。いかに彼らを認めない人でも、演奏のテンション、楽曲の破壊力、トータルなライヴ・パフォーマンスの凄さ、なによりオーディエンスの異常な熱狂など、これらを聴けば彼らがどれほどグレートなバンドであり、今に至るまで全世界の何十万、何百万もの人びとに愛され続けている理由がわかるはずです。
デビュー以来25年、Zeppelinのようにロック史的ビッグ・アーティストとの認知を得ることもなく、Metallicaのように時代の追い風をたぐり寄せるのでもなければ、Nirvanaのようなロック・イコン的カリスマを擁することも、Guns&Rosesのようなスキャンダルにも、かの鬼妻率いる某一家のようなショウビズ的商業戦略にも頼ることもなしに、ひとえに音楽の力とロッド・スモールウッド以下、陰に日向にバンドを支える人々の協力だけで、これほど長くに渡り、これだけ多くの人びとに愛され慕われ続けるグループが今の世界にどれだけ残っているのでしょうか?

私の知るかぎり、いわゆる「正統」ロック史的観点から書かれた本で、彼らが「ロックの歴史を作った偉大なるアーティスト」の列に加えられたことは一度としてありませんでした。おそらく今後もありえないでしょう。また今後とも「時代」が彼らに微笑むことも、彼らが時代の風を引き寄せることもないでしょう。昔も今もこれからも、彼らが時代の空気に応えることもなければ、あえて時代に反逆することもなく、ムーヴメントの喧騒には背をむけつつ、あいも変わらずマニアックで気位の高い「Meidenの音楽」をやり続けていくことでしょう。芸能メディアに彼らの行状が派手に取り沙汰されることもなければ、グラミー賞のステージ上でTV用スマイルを披露することもなく、ブロンズ像がどこかの博物館にお目見えすることもないでしょう。メンバーたちの誰一人、偉大なロックのアーティスト、偉大な「時代」の殉教者、偉大なポップのセレブリティー、はたまた偉大なギターヒーローやベーシスト、名ドラマーに名ヴォーカリストとして人々に記憶されることはないでしょう。彼らは生涯バンドの一員としてのみ、その名を残すにとどまることでしょう。そしてバンドの「顔」はいうまでもなく彼、すなわち「偉大なるエディ」であり、スティーヴ・ハリスでもブルース・ディッキンソンでもありません。

何と素晴らしいことよ!! 何と輝かしい「知られざる英雄」たちではありませんか!!これらすべてゆえに私はIron Maidenのファンであり、祝福された鋼鉄の処女の美と栄光を讃えて歌う25万の群集の一人であり、Iron Maidenこそ地上で最も偉大なアーティストの一つである、とここに断言します。

Meidenを知らない初心者の方も、最近のスタジオ作にご不満の方も、「80年代はよかった……」と古きよき時代の思い出に耽っておられる方も、ぜひ本作に接してMeidenがライヴにおいては、今こそ絶頂にあることを感じていただきたいと思います。とりわけ「オールドスクールなメタルはカッコ悪くてイヤ」と敬遠されがちな、10代、20代のラウドロック・新世代メタル・ファンの方々にこそ、このアルバムを聴いていただきたいところです。これほど熱く、激しく、魂を奮い立たせる音楽にはめったに出会えるものではありませんよ。


IRON MAIDEN - Fear of the Dark ★★ (2005-11-20 22:34:00)

1stから今日に至るまでのMeidenの音楽性の変遷を考える上で、非常に重要なアルバム。4thのPiece of Mindと並び、音楽的な転換点となった作品。議論のあるところかもしれませんが、現在の彼らの音楽性はこのアルバムから始まっているようです。歌詞のテーマも、それまでの映画や文学にインスパイアされたものから同時代的な社会意識や内面的な感情を歌い上げるものが増えてきました。

一聴して、これまでの作品とは音像が大きく変化したのが分かります。狭めの枠の中にぎっしり音を詰めていたこれまでとは変わって、今回は音と音との間の空間がはるかに広がったような感覚です。以前より各パートの音が聞き取りやすくなった分、各々の音が分離して聴こえます。ライヴ的な一体感よりスタジオ録音としての整合性を重視した音作りです(これにはレコーディング方式が変わったこととも関係があるかもしれない)。
この音像は以後度合いを強めつつVirtual XIまで続き、楽曲のヴァイタリティーを奪ってしまうほど極端になってゆきますが、このアルバムではまだその弊害は目立って現れてはいないようです。これならまだ個人の趣味の範囲内、といってよいのでは。ただ私としては前作が音質・音像ともに最高だっただけにこの変化は大いに悔やまれるところ。もし前作のような音であれば、掛け値無しの名作になったと疑いません。

音像の変化とともに、楽曲のムードも一変しました。Piece of Mind〰Seventh Son of Seventh Son期のパノラマティックな色彩感覚とドライなテイストが消失し、Number of The Beast以前の暗く湿ったモノトーンの世界へ戻りました。ただし初期のような冷たい霧に覆われた灰色ではなく、日没後の闇の訪れを想わせる暗く寂しげなものです。
古代エジプトから暗黒の大洋を航海し、時間の回廊を抜けて未来都市をさまよった後、神話の国で透視能力者の運命を垣間見た男たちが、ついに夕闇深い故郷イングランドに帰ってきた、という感じで感慨深いものがあります。そのせいかこれまでになく叙情的な「憂い」の雰囲気が全体に漂っています。Meidenにしては珍しく情緒的というか、楽曲の世界観を描写するよりも、ストレートに感情を表現するような曲想が目立つのも特徴です(以前のMeidenのメロディは、一部の例外を除けば、情感よりも理知的or神秘的なニュアンスが強く、いい意味で「エモーショナルではない」ものが多かった)。

楽曲の方はみなさんもご指摘のように、非常にバラエティーに富んだ仕上がり。有無を言わさぬ突撃ナンバーに始まり、愉快なR&Rあり、グルーヴィで妖しげな曲あり、ドラマティックに展開する曲あり、渋めのバラードあり、奏法実験? という趣きの小曲ありと、いろいろなタイプの曲が詰まっていてまったく飽きさせません。確かにわざわざ入れなくても……と言いたくなるような曲もあるのも事実ですが。

ちなみのこのアルバム独特の楽しさとして、「聴き込むほどに名曲が増えていく」というのがあります。私も最初に聴いた時に印象に残ったのは最初と最後の曲くらいで、あとは「うーん、まあまあかな?」という程度でした。が、その後聴き返す度に「!!!!」という曲が次々と現われ、今では厳しく見ても凡曲・駄曲は後半の⑧⑨⑪くらい、残りはすべて佳曲または名曲といって良い出来です。
序盤の流れを作るには最高のバランスの冒頭三曲やラストを飾る名曲中の名曲Fear of The Darkはもちろんのこと、わずか4分弱の中に信じられないドラマが展開される、マーレイ先生による感動の名曲Judas Be My Guide、悪夢的な妖しさと勇壮かつキャッチーなVoがハイレベルな融合を見せるFear of The Key(あまり人気がないのが悲しいのですが、本当にいい曲です)、 ツインギターが冴えわたるドラマティックなChildhood End(リフ・ソロともおそろしいほどのカッコよさ)などなど、隠れた名曲が盛りだくさんです。これほど多彩な楽曲を高水準にまとめ上げる力量には改めて驚かされます。エイドリアンがいなくても、Meidenは何ら揺らぐことはない、というハリス先生の高笑いが聞こえてくるようです。

アレンジ面では今回はギターが大活躍しています。リフといい、ソロといい、かっこのよいものが多く、聴き所満載です。曲によってはVoの存在がすっかりかすんでしまうほど、ギターが前に出てきています。これにはブルースは不満かもしれませんが、Meiden随一のギターアルバムといっていいとおもいます。

さて楽曲面ではほぼ文句なしの本作にも一つだけ欠点が……。そう、本作で脱退のブルースのVoです。これは……なにやら酷い声です。長年のツアー生活で喉を痛めてしまったのか、それとも新たな唱法で新境地を切り開こうとしたのか分かりませんが、前作同様潰れ気味の引きつった声で歌っています。まあ「ラフ」で「ダーティ」といえなくもありませんが、汚いうえになんだか「車に轢かれて無残な最期をとげたひき蛙のうめき」のような情けなさが漂ってくるのが何とも痛いです。これではブレイズの文句は言えません。はっきりいって楽曲の足を引っ張っています。全曲この声で歌っていないのが幸いなところですが。一体どうしたのでしょう。

個人的なお気に入り度は中の上といったところですが、「Meiden聴きたいんだけど……、たくさんあってどれにしようかな?」という方には、聴きやすいSeventh Son〰か、本作から入る事をおすすめします。楽曲のバラエティーが広く、好みにヒットするタイプの曲を見つけやすいうえ、最後には万人向けの超名曲が用意されているので買って後悔ということはあまりないと思います。


IRON MAIDEN - The X Factor ★★ (2005-11-19 18:25:00)

みなさんに大人気(笑)のX Factorです。書くことがいろいろあるので、二段構成にします。

いきなり結論を言いますが、もし今これをご覧になっているあなたが本当に心からIron Meidenの音楽を愛しているなら迷うことはありません。ぜひともこのアルバムを購入しましょう。これまでにない曲の渋さと深遠な世界観に打たれると思います。しかし、もしあなたがMaidenファンというより一般的なHM/HRファン、もしくは、速くて激しくてカッコよくてメロディアスで泣きながら頭を振れる音楽が好き好きでどうしようもないという方なら、悪いことはいいません、買うのはおやめなさい。「世間的には問題作扱いでも、聴いてみれば意外と……」などと、うがった期待をしてはいけません。後悔します。これはディープなMeidenファン向けの非常にマニアックな作品です。逆にこれを余裕で楽しめるなら、他のアルバムもだいたいOKでしょう。ある意味、これを楽しめるか否かで、その人がMeiden向きの体質かどうかが判定できるリトマス試験紙的アルバムです。

基本的には出来の悪いアルバムではなく、曲のクオリティーの点で特に劣っているというわけではありません。このアルバムにしかない、独特の味わいというのも存在します。聴きようによっては名作といえるかもしれません。が、全体の方向性がどうにも一般受けしづらいのと、作品の完成度という点から見ると重大な欠陥があるのは事実です。主要な問題をあげると、ご存知われらのブレイズ・ベイリーのVo、録音傾向からくる全体の音像、楽曲の方向性、やばいジャケットの四つです。いまさら……、という気もしますがとりあえず問題点を指摘して、なぜこの作品がこうも一般受けしないのか明らかにしてみましょう。

まずはいまやすっかり過去の人になった感のあるブレイズのVoについて。私としては彼のロック・シンガーとしてのセンスと力量を疑う気はありません。しかし、やはりIron MaidenのVoとしては不適格だったと思いますし、彼を後任のヴォーカリストとして選んだバンド(というかスティーヴ・ハリス)はどうも判断を誤ったように思われます。
彼はいまだに音痴とののしられがちですが、私としては上手いとはいえないまでも、そんなに下手だったとは思いません。Piece of MindやLive After Deathの頃のブルースとは、案外いい勝負だったかもしれません。驚くほど上手くなった最近はともかく、昔のブルースは案外ヘタだった気がします(他の一流どころと比べれば、の話ですが)。ライヴでもミスが多いシンガーとして有名だったそうですし。(もっともミスをあたかも歌唱上の演出であるかのように見せかけるテクニックでは達人級だったそうですが)。しかし問題は歌の上手い下手ではなく、声質と唱法にあります。
ブレイズの声質は、太くパワフルで適度に粗い感じ、といえば聞こえはいいのですが、別の言い方をすれば、まるで泥だらけのダイコンやゴボウのような感じです。いかにも田舎臭く、はっきりいって「ダサい」感じの声です。こういった音声は、古典的で格調高いIron Maidenの楽曲にはあまりにもミスマッチです。ブルースの声が時に濁りつつも金属的な照り返しをもった残響感というか、ヴェルヴェットのような光沢と品格ある鋭さを失わなかったのとは大違いです。ブレイズの声は響きません。加えて彼の唱法は一語一語に力をこめて投げ放つような短くいきむ感じのスタイルで、メロディを高らかに歌い上げるものではなく、音を伸ばしません。しかしブルース時代のMeidenの楽曲は曲のハイライトで「ずぃっいーぼぅざぁっ、めんどぅ!!おーなぁのぉぉーーのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーー ×4」とか「ふぅぃあおーざだぁぁー、ふぅぃあおーざだぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああーーーーーっっ」という具合に、「ぁ」や「ぉ」や「ー」の多い長音のメロディが激しく連呼されるのが基本です。が、これは唱法の都合上ブレイズが真似するのはほとんど不可能です。おまけにブレイズの声は反響が悪く、語尾を伸ばしてもきれいには響きません。したがってブルース時代のMeidenを聞きなれている耳にはサビの盛り上がりがどうしても弱く、地味な感じに聞こえてしまいます。
加えて声音の表現のヴァリエーションが狭く(ほとんど一色)、ひたすら直線的に歌うことしかできず、声を使い分けて楽曲の世界観を巧みに表現することができません。この方面では前任者がそれこそHM界屈指と言える才覚をもっていたのに比べると、この落差があまりに大きいです。
一言でいえば、従来のMeidenの曲にはブレイズが本来の実力を発揮できるような場がもともと用意されていないのです。VoはVoで楽曲の魅力を引きだすどころか逆に損なってしまい、他方曲は曲でブレイズ本来の持ち味を発揮出来ないような無理の歌唱を彼に強いるという、実に悲劇的な組み合わせです。

さらにVo以上に重大な欠点があるのは録音の傾向と全体の音像です。楽器の音の間にすき間が多い、という前作で現れた病状が今作では一段と悪化してしまったようです。Voも含めて各楽器の音がひどく分離して聞こえます。録音に対する楽器の音量レベル(聴覚上の空間に占める楽器の音の面積の割合)が異常に低いです。加えて厚みのまったくない、まるでシールを貼り合わせたようなペラペラした音像が楽曲から迫力を抜き去ってしまっています。Gtの音がやけに細いうえ、奥へ下がり気味でまるで蚊が飛んでいるかのような量感に乏しい音で、曲の土台に添え物としてつけ加えられたかのような扱いですHM/HRまたはロックとしても、これはあまりにパワー不足の感が否めません。

次に楽曲ですが、このアルバムは彼らの歴代作の中でも、あのSeventh Son〰とならんでもっともHMから離れた曲想になっています。Seventh Son〰がきわめてソフトな音でありながらバンドを代表する傑作となりえたのはひとえに楽曲の完成度と高いポップセンスのおかげでした。それまでのMeidenになじんでいた人々にもさほど違和感を覚えさせることなく聴かせることができました。しかし本作の志向はバリバリの内省系プログレロックです。何曲かの例外を除いて、とにかく暗く、地味な曲ばかりで、一聴してすぐノレるようなわかりやすさに欠いています。速くてメロディアスな曲を期待する人なら失望間違いなしの、ミドル〰スローテンポの曲が大半を占めます。しかも曲調が似通っており、リフ主導ではなく大きくバウンドするリズムが主導のすき間の多い曲がメインです。通しで聴いてもHM的な高揚感を覚えるような部分が、特に後半ではほとんどありません。「頭を振れない!」、「拳を振り上げられない!」、「飛び跳ねられない!」、つまり典型的なHMの楽しみ方がまったくできない、非常に無愛想なサウンドになっています。

最後にジャケットですが、これは説明不要でしょう。インパクトこそあるものの……、痛い、醜い、気持ち悪いと三拍子そろった最悪なジャケットです……。これをジーっと眺めていると気分が悪くなってきます。

と、ここまで書けば、この作品の評判が非常によろしくない理由は十分でしょう。


IRON MAIDEN - Brave New World ★★ (2005-11-19 17:51:00)

「…………これだけ期待させておきながら……何だこの地味さは……このメンバーならもっとすごいものができたはずなのに……。」

と、肩を落としていたのも今は昔。聴き込むにつれどんどんレベルアップし、今ではFear of The Dark以降の最高傑作!!と素直に叫べるようなアルバムにまでなってしまいました。最初の印象からは想像もできぬほどの躍進ぶり。80年代の名作群がゴールドメダルの最優秀主演賞だとすると、本作はさながらシルバーメダルの最優秀助演賞という感じ。非常に渋くカッコのよいポジションの作品です。しかしブルース&エイドリアン復帰第一弾としてあれだけ話題作りに励んでおきながら、これほど通好みのアルバムを持ってくるとは……(しかもこれが商業的にも大成功)。
超名曲こそ見当たりませんが、楽曲はどれも精鋭ぞろい、名曲・佳曲がズラリと揃った鉄壁の布陣です。捨て曲はおろか、平均的な曲すらないというのは、あの究極傑作Somewhere in Time以来ではないのでしょうか。

再編直後の周囲の熱狂とは裏腹に、冷たく厳しい空気が全編を支配しています。Maiden史上もっとも体感温度が低いアルバムかもしれません。前作までのウェットで情緒的な部分が何処かへ消え去り、ドライで荒涼とした空気がたちこめています。まるで北の果ての石の原野を吹きすさぶ一陣の風のようです。実にMeidenらしい峻厳な空気といえばその通りなのですが、今作には何か聴き手を突き放すような険しさがあります。曲自体はかなりキャッチーなのに、親しみやすさがほとんどないのが特徴。メロディも静かに哀感と郷愁をにじませるような感じのもので、以前のようなストレートな泣きメロではないため、最初のうちはかなりとっつきにくく感じるかも。

全10曲トータル67分、うち7曲が6分以上という過去最大の大作軍団を前にして思わずひるんでしまう人も多いかもしれません。最初は長いうえに曲調が覚えづらく展開も一本調子、途中で眠くなってしまうなどなかなか厳しいアルバムですが、気楽な気持ちで時間を置いて二度三度と聴き返ししてみましょう。最初つまらなくても落胆することはありません。とりあえず脇に放っておき、ひまな時に思い出したら聴けばよいのです。アルバムの世界になじむに連れ、最初あれほど地味に聞こえた楽曲たちが次第に輝きを放つようになると思います。
「聴きこむほどに新たな名曲が現れる」のがFear Of The Darkの魅力だったとすると、「聴きこむたびに曲が良くなっていく」のが本作独特の楽しさです。こういう聴き手の耳で楽曲を育てるような育成型の作品というのはなかなか貴重です。誰もが「インパクトで勝負!」と考えがちな復活作にこういう路線のアルバムを迷わず当ててくるあたり、じつに不敵で挑戦的な人たちですが、リスナーの耳をあくまで信頼する姿勢に好感を感じてしまいます。とくにおすすめの曲をあげれば、
ガレキの下からのぞく小さな靴を見つめるような、深い喪失感と哀感をたたえたBrave New World(単純な曲調ですが、情感表現の深さはこれまでにないほど。)
ワルツのリズムにのせて、どこか懐かしいメロディと力強いコーラスの交錯が静かな感動を呼ぶBlood Brothers (ライヴ曲としては最高。バンドとオーディエンスの一体感は格別です)
重厚&ミドルテンポが、迫り来る危機を予感させるFallen Angel
(まさに「エイドリアン先生が帰ってきた!!」というヘヴィでキャッチーな曲)
変則リズムに奇妙なリフ、雄大なスケールのオーケストラルKeyの組み合わせが不可思議な情景を織り成す異色の大曲The Nomad
(後半のシンフォニックなKeyと哀愁あふれる静かなギターの掛け合いが絶品の名曲)
物語はいよいよ終局へ、というムードのなか、ハリス先生のベースが空間を縦横無尽に駆けめぐるOut Of Silent Planet
(メロディアスで本作中唯一、派手な印象。最近では珍しいPiece of Mind〰Seventh Son期に通じる色彩感があり、切り返しの多い展開が魅力)
ブルース復活を高らかに告げる感動的なVoメロディが炸裂する前半、静かに熱い楽器隊が何ともいえない余韻を残すインストメンタル中心の後半という、対照が映えるラスト曲Thin Line Between Love And Hate
(本編終了後のスタッフロールのような雰囲気の後半の演出がこころにくいです。こういうアルバムでの曲順まで意識したような曲を書けるセンスはさすが。)。

不変のMeidenらしさがいたるところに散りばめられている一方、新たなリズムや本格的なオーケストレーションの導入など、新しい試みが随所に見られるのが特徴です。今までありそうでなかった⑨の展開や疾走なしにメロディの起伏だけで盛りあげる④、いつものMeidenに慣れた耳には違和感ありまくりの⑧のリフとリズム、意表をつく⑩の展開と変わったアレンジセンスなど、部分部分はMeidenそのものなのに、曲全体だと何かヘンで新鮮な印象が受けるのがポイントです。

黄金期のメンバーでの「復活」という側面がクローズアップされすぎたほか、実に「らしい」フレーズやパターンがまるで「まき餌」のように要所要所にまかれていることもあってか、リリース当時は目立ちませんでしたが、今聴くとかなり音楽的に冒険した作品ではないでしょうか? わりと賛否両論分かれるのも判る気がします。これまで築きあげてきた音楽的遺産を継承しつつも、新たなメイデン・スタンダードとなるスタイルを確立せんとする、野心的な姿勢がわりにうかがえます。それまでの音楽性の総まとめと新たな方向性を示したアルバム、という点では5thのPowerslaveに近い前進的な作風といえるでしょう。

以上、全体を見回してみると、名実ともに復活作にふさわしい傑作ではあるのですが、やはり少々通好みの作風が目立ちます。ある程度Meidenに慣れている人のほうがこのアルバムの魅力は伝わりやすいでしょう。楽曲にしても音像にしても個性がはっきりしているので、結構聴く人を選ぶようなところがあるようです(私とは相性ばっちりですが)。一撃必殺の名曲も見当たりませんし。よってこれからMeidenを聴こうという人は、とりあえずこのアルバムはあとの楽しみとして取って置くとよろしいでしょう。


IRON MAIDEN - Piece of Mind ★★ (2005-11-19 17:32:00)

音楽的な転換点となった4thアルバム。第2期Iron Maidenのオープニングに当たる作品です(音楽性の変遷を手がかりにして、大まかに彼らの歴史を区切ってみると、1st〰2ndが第1期、4th〰7thまでが第2期、9th〰現在までが第3期になると思います。なお3rdと8thが移行期に当たっており、それぞれ1.5期、2.5期とするのがよいと思われます。……私の勝手な分類ですが。)

とりあえず初期の三作とは曲の雰囲気がかなり変化しています。アレンジと作曲面の方向性も同様です。20年前の作品なのに、なぜか最近のアルバムに近い気がするのは、今の曲のルーツがこの作品あたりだからかな?

それまでの暗く湿った霧が吹き払われ、陽の光が差し込んできたような感じといえばよいでしょうか。彼らにしては珍しく「熱」や「光」(温かみ、とは違いますが)といったニュアンスを感じさせる乾いた質感になっています。サウンド全般がメジャー調を帯びてきたというか、音色やコードの響きがカラフルで、夏の午後の光の照り返しを思わせるようになりました。
曲調もスピード感あふれるリフ展開で押しまくる攻撃的で緊迫感重視のスタイルから、メロディックなフレーズを主体に練りこまれた曲展開の妙を聴かせる方向へと重心が移ったようです。四作目にしてはやくも脱メタル化・楽曲重視のプログレ・ハードポップ路線が始まったよう。しかも何故か次の5thや6thよりもいっそうこの度合いが激しく、7thに近い感覚なのが面白いところ。

今作を一言でいえば、強烈なインパクトにこそ欠けるものの、どれも水準以上の良曲がそろった良質のアルバム、といったところでしょうか。自作の評価に厳しそうなハリス先生も今作の楽曲の出来栄えにはおおいに満足していたらしく、おすすめのアルバムの一枚として名を挙げていました。とくに印象的な曲をあげれば、
最近再び(20数年ぶり!)にシングルカットされ、当時を越えるヒット(!!)を記録した時を超えた名曲The Trooperをはじめ、
オープニングを飾る勇壮な打撃系雪中行軍マーチWhere Eagles Dare、
コンパクトながら重々しく崇高な威厳を感じさせるFlight of Icharus
ノリが良く切り返し満載の曲展開がライヴで真価を発揮するDie with Your Boots On、
繊細なメロディをいくつも織り合わせた異色曲Still Life(メロディアス度ではMeiden屈指の一曲)、
予兆に満ちた気配が、異界のエナジーを放射する謎の終曲 To Tame a Land (平たくいうと、RPGのラスボス曲のような「邪神復活!!」的な雰囲気です。)
など、どれも強烈にマニアックな曲想です。およそ彼ら以外にやりそうもない特殊なムード&曲調が満載で、いかにも「Maidenらしい」作風に仕上がってます。ハリス先生お気に入りの理由はこの辺りにあるのかもしれません。

余談ですが、このアルバムの曲はどれもライヴの方が断然よいです。楽曲のヴァイタリティーがアルバムとはまるっきり違います。レコードでは録音がやや硬くかすれ気味、各楽器の音の芯が捉えられていないうえ、各パートの音の配置が平面的すぎて音に奥行きがありません。おまけに、いかにもスタジオで切り張りして作ったようなぎこちなさがあります(ついでにブルースのVoも上ずり気味、はっきりいうと「ヘタ」に聞こえる所が結構あります)。この悪い録音では、楽曲本来のパワーの50%くらいしかとらえきれていないような気がします。逆にライヴ、とくに最近では、どの曲も凄いこと凄いこと……。「Early Days」ツアーでのDie with Boots Onなど、その場にいたら失神確実のものすごさです。

以上手早く「オススメです」といって終わりたい所ですが、実をいうと個人的にこのアルバムには長いことなじめませんでした。最初のうちは退屈で仕方なく、CDラックの奥の暗い所に何年も放り込まれていました。どうも刃が鈍ったというか、The Number of The Beast の終末的な緊張感が失くなって、妙にヤワな音になってしまった……、という感じでした。もしリアルタイムでこれを聴いていたら、「Meidenは死んだっっっ!!!」とかいって泣き叫んでたかもしれません。……数年後、ふと聞き返してみて、はじめて今作のよさに「目覚め」ました。

こういう個人的な事情のほかにも、上に述べたようにただでさえアクの強いこのバンドの中でも、かなり濃いめの作風であること、インパクトでは1stと3rdに大きく劣り、楽曲の魅力では6thや7thには及ばず、5thのAces Highや9thのFear of The Darkのような一撃必殺の大名曲があるわけでもない、ということを考えると、初心者にこれを勧めるのは少々ためらいを感じます。
どちらかというと、Meidenをすでに何枚か聴いて彼らの音楽に親しむようになった人が、次なるステップとして向うべきアルバム、という位置づけでしょうか。HM的フレーズを用いれば、ちょうど鋼鉄の守護者が守る城門をくぐり抜けた後に、中心にそびえる処女の神殿へ向かう巡礼者がたどる園路の踏み石のような趣きの作品といってよいでしょう。


IRON MAIDEN - Seventh Son of a Seventh Son ★★ (2005-11-19 17:21:00)

黄金期のラストを飾る傑作7th。創作面の閃きがピークにあった時期にリリースされた、メンバー公認の代表作です。未来を見通す超常の力をもって生れた〈七番目の息子の七番目の息子〉なる人物の悲劇的な運命を描いた、神話的なコンセプトアルバム。

「あのアルバムには魔法がある。これこそIron Maidenだ、いいたくなるような何か神秘的で壮大なものがあった。」とメンバー自身が後に語っているように、今作には当の本人たちにもわからない何か謎めいた力が宿っているようです。
前作同様、音の向こうに世界が広がる独特の曲調は、もはやロックの枠を超えて古典芸術の域。楽曲のレベルの高さはもちろんのこと、メンタルな面に作用するような魅力があります。スピリチュアルなパワーを秘めた作品ということでは、3rdに通じますが、あちらが歌詞のテーマとあいまってかなり「Evil 邪悪」な雰囲気だったのと対照的に、こちらはどことなく「Holy 神聖」な気配がします。

Somewhere〰のノイジーで荒廃した音像とは、音の雰囲気がガラリと変わりました。 前作のネオンライトの刺激的な色彩から、辺りに広がるラベンダーの花畑のようなパステルで柔らかい色調になっています。たまに風に乗って涼しい香りがやって来たりもします。Keyやギターシンセの冷たく澄んだ音色といい、全体を包む幻想的な淡い空気といい、とても優美で女性的な柔らかさを感じさせます。ちょうどバンド名を構成する二つの単語Iron(鋼鉄)とMaiden(処女)のうち、後ろの〈処女〉のイメージをもっとも強く感じさせるアルバム。
冷たく美しい乙女の肖像という感じで、一般受けがよさそうなポップで上品な雰囲気が特徴。ロック的な熱さを抑えて、音楽的な美と洗練を正面切って追求しているようです。もはやデビュー当時の「娼婦ハーロット」的ないかがわしさはひとかけらもありません。いわゆる「メタル」のイメージとは程遠い、クールでエレガントな音像です。

前作にも増して曲がメロディアスになり、ほとんどメロディ主導の音楽になっています。Maidenの美学の結晶といえる名曲④やツインギターが活躍するバラード風の②、後半の荘厳な展開が感動を呼ぶ神話的大曲⑤、神秘的な美しさをもつ旋律に意表をつく展開が重なる⑦、透明な哀しみの中、流れるように疾走するラスト曲⑧など、ほとんどすべての曲に耳を惹くメロディが備わっています。しかもただ綺麗なだけではなく、独特の透きとおった哀感と儚さを感じさせるのが魅力的です。テーマにふさわしく夢幻的な浮遊感があり、それでいてやや不吉な感じをはらんでいます。

しかし、このスタイリッシュで水晶のように澄んだサウンドを、HMと呼ぶのはためらわれます。いつも以上に当たりの柔らかいGや、攻撃性を抑えた楽曲に加え、空間的な広がりを大事にした音響感覚からして、これはHMというよりプログレ風ハード・ポップ、と形容したくなります。
つまりこれはIron Meidenというバンドの代表作ではあっても、へヴィメタルというジャンルを代表する作品ではありません。

もともとこのバンドの音は、メタルというにはやや軽く、曲の方も典型的なHMとは一線を画した独特のスタイルで、音楽的にはRainbowやJudas Priestのような、いわゆる“正統派"の流れからは明らかに外れたバンドでした。(サウンド面では、ベースの音量が大きく輪かくがハッキリしていること、反対にギターは軽くてエッジが弱いのが特徴。このため、音像全体の質感が通常のメタルとは明らかに異なり、どちらかというとパンク/ハードコアに近い印象になる。また曲の上では、複雑な展開に加え、独特の跳ねるリズム感による影響が大きい。)
実際デビュー当時は、「これはパンクなのか?、ハードロックなのか?、それともプログレッシヴ・ロックか?」ということで、どの文脈で扱えばいいか困るバンドだったそうです。同じ有名バンドでもMetallicaやJudas Priest、Helloweenなどと比べると、MaidenはHM好きの間でもわりと好悪が分かれるというか、よく「素晴らしいことは確かだが、あまり初心者向きではないバンド」と表現されることが多いのも、ここらへんの非HM色の濃い出目と関係があるようです。

実際、メタル度が高かったのは初期の三作と5thくらいなもので、それ以外はメタリックなギターを主軸とした、知的でドラマティックなプログレ・パンクといった趣きでしたが、このアルバムではそれがよく現れています。メタリックな音にこだわることなく、自分たちの音楽のエッセンスを今一度見つめ直したことが、今作の大成功につながったように見えます。

その一方で、5thまでの音楽性を好む人々は前作やこのアルバムあたりから「軟弱になった」「大げさになりすぎた」と感じることがあるようです。これは結局、彼らに初期のような「尖ったHMサウンド」を期待するのか、それとも「Iron Maidenらしいセンスの音楽」を求めているかによるのでは、と思います。私としては、以前よりHM的でなくなったといっても、彼らの音楽の本質には何のかかわりも無い、と思うのですが。

以上のような事情から、本作は「HMというジャンルの傑作」としては素直に勧められる作品ではありません。しかしたいへん聴きやすく、絶頂に達したバンドの創造力がいかんなく発揮されている点から見て、これからIron Maidenの世界に足を踏み入れようとする人は、まずはこのアルバムで歓喜の洗礼を受けるのがよいかと思います。


IRON MAIDEN - Powerslave ★★ (2005-11-12 19:57:00)

黄金三部作の幕開けを飾る5thアルバム(5th〰7thの三作を勝手にこう呼んでおります。この時期のMeidenはあらゆる面で神だったと思うので。)

これまでの集大成的な色合いとともに、次作以降の展開を予見させる長編叙事詩的な趣きの作品。このあたりから彼らのアーティスティックで文学的なセンスが本格的に発揮されはじめた感があります。たんに速くてドラマティックな曲を演る若いバンドから、知性と気品を備え、物語性に富む曲作りを得意とするインテリジェントなグループへと変化し始めた頃の作品です。以前に比べて、アレンジ能力の向上が著しく、複雑な曲でも聴いていて不自然な部分がまったくありません。楽曲の整合性が飛躍的に上がったせいで、ディアノ時代とは同じバンドとは思えないほど統制の効いた音になっています。アレンジの統一感ではMeidenの全作品中でもトップクラスといってよいでしょう。

曲調自体は前作よりも3rdに近いアグレッシヴなものですが、何か楽曲の雰囲気自体がThe Number of The Beastまでとは根本的に変わってきたような感じです。
3rdまでが深いグレーを基調に、全体が白と黒の濃淡がかもしだすモノクロームの雰囲気に覆われていたとすると、4th以降、とくにこのアルバムからSeventh Son〰までの作品には、ちょうど霧が晴れるとともに色彩が陽の光の中で一気に開花するような、鮮やかな開放感が漂っています。初期のいかにもブリティッシュという雰囲気の暗く湿った質感が消え、かわりに地中海あたりを思わせる、乾いて澄んだ空気が流れ込んできた感じです。理論的なことには疎いのでよくわかりませんが、こういう音の変化を和声感がより明確になったとか、ハーモニーがより豊かになったというのでしょうか?

一部で言われるような、アメリカンになったというのとも違う気がします。風通しがよくなって感覚的な音の明度がこそ増したものの、情緒的には全然「アメリカン(陽気&楽観的)」には程遠い、相変わらずのシリアス路線です。ただし初期の頃のあのアンダーグラウンドな雰囲気、大都会のいかがわしい路地裏とか墓場の地下の死体安置所のようなよどんだ空気は跡形もなくなっているので、その手のムードを愛好していた人が前作やこのアルバムを境にMeidenから離れていくのはまあ無理からぬ話かと。

もはや説明不要の名曲①②、ゲーム・ミュージックっぽい軽快なインスト③、中間部の④⑤はちょっと一休みという感じで、ケイレン系リフが印象的な⑥(体感速度ではMeidenでも最速クラス)で再び加熱しはじめ、ミステリアス&エキゾチックなグルーヴが炸裂するタイトル曲⑦、そしてもはや伝説の神秘的超大作⑧でフィナーレという具合です。地味な印象の中盤二曲を除けばどの曲も個性がはっきり出ていてしていて、曲順を間違って憶えてしまうようなことがありません。

一般的には始めの二曲に人気が集中しているようですが、終盤のプログレッシヴな二曲も素晴らしい完成度。とくにラストのRime of Ancient Marinerの恐るべき構成力と芸術的な曲想には度肝を抜かれました。これを書いていた時のハリス先生は、創造のデーモンに憑かれていたにちがいありません。究極の叙景力で一大スペクタクルが繰り広げられています。この曲だけはぜひとも歌詞を読んで理解し、詩が語る物語の内容と奇跡的なまでにシンクロした曲展開に心ゆくまで驚愕していただきたいものです。
とりわけ3分すぎあたりから始まる、「死の海へ漂着〰幽霊船出現〰死の女神と生死をかけた賭け」のシーンでのメロディは異常きわまるもの。深淵から流れ出る暗い波動というか、闇の彼方から聞こえてくる死霊の呼び声というか、はたまた破滅へ誘うセイレーンの魔の歌声とでもいえば少しは伝わるでしょうか。ようするに通常の人間的感性の次元から隔たった深い地点から発せられているような、まがまがしくも魅惑的な響きです。ある意味Morbid Angelなんかが表現しようとしていることに近いかも。もちろんこれ以後のMeidenのどの作品にも、こんなフレーズは二度出てきません。ハリス先生の身に一体が何が起こったのでしょうか

これこそMeidenの最高傑作、と絶賛する向きがあるのも納得できる優れた作品。老若男女問わず広くMeidenファンに支持される人当たりのよいアルバムといった趣きです。最高傑作とはいかなくても、これが全然ダメ、凡作だという声はあまり聞きません。極端な話Aces Highだけでもお釣りがきてしまいますし。金メダルは取れなくても、出れば必ず銀や銅を取るオリンピック選手のような感じで、まずは必聴の一枚。この頃のMaidenの曲には、本当に何かが降りているというか、音の背後で神秘的な力が脈打っています。


IRON MAIDEN - No Prayer for the Dying ★★ (2005-11-12 19:41:00)

ズラリと並んだMeidenの名作群に囲まれて、あまりに目立たないというか、不遇というか、おそろしくワリを食っている不幸な作品です。「巨人に挟まれた大男は小人だ」、いわく傑作の間に挟まれた秀作は凡作扱いされる、というパターンの典型かも。しかもエイドリアン脱退—ヤニック加入直後ということもあって、本作の曲とは何のかかわりもないヤニックにまで火の粉が降りかかる始末。うーん……好きなアルバムなのに残念。

というわけで普段あまり語られることのないこのアルバムの魅力について力を込めて語ってみます。

まず最大の魅力として挙げられるのが録音の素晴らしさ、そしてそこから生れてくる全体の音像の綺麗さです。各楽器の音色、音量バランス、相互の音の配置など、どれをとっても理想的な完成度です。堅くも柔らかくもなく、適度に音のエッジが抑制された上品で耳なじみのよい音色、一人の音が他より出すぎることも引っ込むこともないフェアな音量バランス、各パートの音がクリアーに聴きとれる音立ちのよさにバンドとしての一体感あふれる瑞々しい演奏……、聴いているだけで惚れ惚れするような素晴らしい音像が展開されています。もちろん個人の好みもありますが、この音の良さ、美しさはHR/HMレコードとしては最高級の出来栄えといってよいでしょう。
またきわめて一体感の強い音の出方も印象的です。私は音響・レコーディング関係のことはまったくわからないので、あくまでいろいろなCDを聴いたかぎりでの印象ですが、一般に各パートの音のりん郭が明瞭になるような録音だと、どうしても各々のパートの音の間に空間(すき間)ができてしまい、音同士の間に分離感が生じて結果的に全体の一体感を損なってしまうことが多い(この傾向は次のFear of The Darkで顕著に現われる)のですが、そういった問題はこのアルバムではまったく生じていません。

次に注目すべきは、ライヴ感覚あふれる演奏のノリの良さです。全編ライヴ・レコーディング、しかもほとんど一発取りに近いかたちで録音されただけあって、スタジオライヴといってもよい生気に満ちた躍動感ある演奏が繰り広げられています。何というか一つ一つの音がすごく新鮮というか、まるで生きて呼吸しているかのようなヴァイタルな印象を受けるのが特徴です。この生命感はあの名作Somewhere in Timeの極限まで作りこまれた、美しくも荒涼としたマシーナリーな音の感触とはまさしく対極に位置するものと呼べるでしょう。Somewhereが細部に至るまで緻密に練り込まれた曲想を選び抜かれた音と演奏を積み重ねて表現し切ろうとする完全性志向の作品だとすると、こちらは楽曲の完成度よりライヴのもつ一回性の面白さというか、それまで紙の上や頭の中の譜面上にしか存在しなかった楽曲に生命が宿るその誕生の瞬間を捕えようとしている感じです。
比較的シンプルな曲で演奏に重点を置いたアルバム、という点では1stとも似ています。(音の響きも初期の曲を思わせるものが多いです)せいか、さすがにあれほどの鋭さと緊張感はありません。殺伐とした演奏よりも、とにかくプレイを楽しもうとしている所がうかがえます。どちらかというメタルよりも、ロックンロールの精神でやっている気がします。それまでがあんまり真面目すぎて疲れたから、ここらで少し遊んでみよう、という感じでしょうか?

最後は曲です。このアルバムの楽曲については、とかく「地味」、「メイデンらしさがない」、「練り込みが甘い」、等々といわれていますが、これはある意味ではそのとおりですが、しかし全然的外れのような気がします。表面的には、ツインギターの美麗なメロディも、劇的な展開も控えめで、アレンジも割とオーソドックスというかシンプルで、初期の頃に似たストレートな曲をややポップにしたような曲が大半です。さらにハリスはこの頃Queensrycheが気に入っていたらしく、彼らの影響が随所に感じられます。(⑤など、Drをスコット・ロッケンフィールドに叩かせて、ジェフ・テイトに歌わせれば、そのままRycheのアルバムに入れられるような曲です。)全体に前作までのような、ドラマティズムやスケール感、神秘的なムードはグッと後退しています。
しかし曲のクォリティーが落ちたわけではなく、単に方向性を変えてみただけ、というのが実際のところです。らしくないといっても、音の響きは①の冒頭の一小節だけで、「おお、Meidenの曲が始まったぞ」とわかるほど相変わらずの音色をキープしているし、何よりすでに不変のスタイルをしっかり確立した後での方向性の転換なので、聴いていてそんなに違和感はありません。それどころか、私は最初聞いた時からずっと、これは実にMeidenらしい作品だと感じていました。音の運びといい、ギターのハーモニーといい、曲の根っこのところはまったく彼ら以外の何物でもなく、よく言われる原点回帰という意味はこれだったのか、と妙に得心したものです。


IRON MAIDEN - Iron Maiden ★★ (2005-11-07 01:29:00)

読み返して見て、不適当なところがあったので、ちょっと修正します。

鋭い。音質も演奏も鋭利きわまるサウンドです。白熱したサーベルの刃で切りつけられるような感覚とでもいえばいいのでしょうか。
荒々しいとかブルータルとかいうよりも、ほとんど殺気に近いような冷ややかな空気が終始漂っています。物理的なスピードや音の激しさといった要素とはまた違った次元の、楽曲と演奏そのものから放射される圧倒的な攻撃感がこのデビューアルバムの最大のポイントです。この鋭さはメタル史上でも超A級、音の速さと激しさの追求に血眼になっている凡百のエクストリーム系グループとはまったく表現のレベルが違います。重機関砲で粉砕(デスメタルの得意技)するとか、金属ドリルで貫通(これはインダストリアル)するとか、大型バイクで轢殺(もちろん暴走R&R)するとか、派手ではあるけれど粗野で見た目もあまりよろしくないやり方に比べ、このアルバムでのメイデンは、ちょうど殺しのアートを窮めた居合いの名人なんかが敵を一撃で葬り去るような、より美しく芸術的に洗練されたやり方で攻撃性を表現しているような感があります。

作曲力の向上とともに楽曲志向・ドラマ性重視の作風へシフトした三作目以降(これにはVo交代の影響も大)の楽曲に比べて、切り貼りのあとがあきらかにわかる曲構成や美感に訴えるよりも印象重視の風変わりな響きのメロディ、言葉を投げつけるように歌う荒いVo(何となく犬の吠え声に似ている)など、はっきり好みを分けそうな部分が見られるのは確かです。しかしその分、様式として完成される前のオリジナルの輝きのようなものがここにはあります。ちょうど試行錯誤の暗闇から、明日につながる確かなスタイルを見出したときのようなひらめきが。

上にも書いたように、演奏のテンションは文句なく最高、本当にシャレにならないくらいすごいです。灼熱の赤どころか、白く輝くまで熱せられた鋼鉄のようです。技術的な上手い下手はともかく、気合の入り方が他のアルバムとは全然違う気がします。とりわけアルバム後半の三曲、Transylvania, Charlotte Harlot, Iron Maidenでのテンションは異常に高く、悪魔に憑かれたかのような凶悪なプレイが繰り広げられています。
ちなみに私はCharlotte Harlotの「ズダダダダダッ!」という必殺のドラミングであっさり昇天させられました。……クライブ・バー、彼はスティックで人をあの世送りにできる唯一のドラマーです。彼にはもっと長くメイデンにいて欲しかった…。

他に注目すべき点としては、メイデン特有のあの上下に激しく跳ねるパーカッシヴなドライヴ感がこれと次の「killers」ではまだ控えめで、緩急の変化はあってもノリ自体は意外と平坦というか、わりとプリースト型の正統HMに近い直線的な感覚で進んでいくことでしょうか。あの独特のやかましいリズムが苦手、という人もこのアルバムなら安心して聴けるのでは。ただ、そのぶん実際のスピードに比べて体感速度が落ちていますが…。

音質はこの時代(70年代と80年代の境目あたり)の録音によくあるような、カラカラに乾いた厚みのない音ですが、余分な装飾を一切排除するようなこうした音像は、1stの志向に意外に合っています。こういう広がりのない、各楽器の音が剥きだしになる音像は、Killing Jokeの1stやJoy Divisionのアルバムによく似ていて、以外にニューウェーヴ寄りです。これも時代性でしょうか?


IRON MAIDEN - Killers ★★ (2005-10-31 22:28:00)

ほとんど神格化されている初期、しかもポール・ディアノ在籍時の最後のアルバムということもあって、世間的にはたいへんな名作との評価ですが、実際聞いてみると意外と平凡な印象。出来のよい「ごく普通のアグレッシヴなロック」という感じで、ぼんやり聴いているうちにあっさり終わってしまいます。はっきりいって……VirtualⅪよりはずっとよいものの……結構凡作ですよ、これは。

一聴して、曲の雰囲気がいつものMaidenと違うことに気がつきます。どことなく「世俗的」というか、昔のロックによくあるようなあまり「頭がよくなさそうな」感じが漂っています。そのせいでサウンドから3rd以降のような、「透徹した知性」を感じさせる音使いはもちろん、無愛想なまでの格調の高さと厳粛さが欠けています。Meidenのカリスマ性の源であり、彼らを唯一無二の存在へと押し上げていた、「音の響きによぎる神秘の影」のようなものが感じられないのが痛いところです。いまだ独自の世界観が形作られる以前の段階、というところでしょうか。(ついでに言えば、歌詞も浅くてつまらないものが多いです。やはり「知性」ではブルース>>ポールなのでしょうか。「カリスマ」なら反対になるかもしれませんが)。

楽曲のスタイルもまだ開発途上、未完成だと思います。ブルース加入後の楽曲の、ロックとは思えぬほどの構築性と比べると、ずいぶん粗く、ぎこちなく聞こえる箇所がいくつもあります(これぐらいが普通なのか)。この「若さゆえの拙さ」を、いかにもあの時代の新人バンドらしく、パンクの長所が素直に生かされていて良いと評価する向きもありますが、曲の完成度という点ではやはり数段落ちてしまいます。
例外的な数曲を除くと、どの曲にも展開に「足の生えたおたまじゃくし」のような不自然さがありますが、これは曲中の各パートの切れ目がはっきりしすぎているせいです。いかにもリフやフレーズを張り合わせて、最後に一曲にしてみました、というのがありありとわかります。しかも、各々のパーツがあちこちでズレたりはみ出したりしていて本来あるべき位置にないのに、力わざでムリヤリねじ込んだ跡さえあります。

加えて今作のウリである「衝動性にあふれたストリート感覚のサウンド」の方ですが……リリース当時はこれはこれでインパクトがあったかもしれませんが……、どう聴いてもMortorheadを始めとするその筋の大物に比べると迫力不足という感は否めません。
ちょうど上流育ちの根がお嬢さんな女の子が、例の思春期の嵐に吹き流されて、無茶してBガール風になってみました、みたいな「さまになっていない」感じがするのがいただけません。外見はそれらしく決めていても、ふと髪を撫でる動作がお嬢さんそのもので、すぐ出目がばれてしまうあの構図に似てます。アグレッシヴに走ろうとする勢いが、本来の構築美とあちこちで激突して止められたり、急ターンさせられたりしています。この段階では、まだパンク・ハードコア的な攻撃性をうまく消化できないでいるようです。

次作Number of The Beastを聴いた後でこれを聴くと、全体の構成力と展開のスムーズさのあまりの差に唖然とさせられますが、同時に「ディアノ時代こそMaidenの絶頂期!!」、「Maidenは最初の二枚で終わった!!」と叫ぶ人たちの気持ちがなんとなくわかります。Voはもちろんのこと、曲の組み立て方からして3rd以降とは別モノといっていいほど異なるのもありますが、なによりスタイリッシュに様式化される以前の、オリジナルの熱さと輝きみたいなものがあるのです。楽曲の完成度や音楽としての洗練度とは別の次元でのパワーというか、ロックミュージックが原初にもっていたであろう、「アグレッションとアーティスティックな閃きが溶け合ったような強烈な熱さ」のようなものがあるのは事実です。人によっては、これは作曲面での未熟さをカバーして余りある、と感じる方も多いのではないのでしょうか。

以上、純粋な楽曲の完成度という点では、残念ながらMeidenの全作品中最低クラスの作品といってよいでしょう。同じ初期でも、1st(こちらは評判通りの名作でした)に比べて、曲のクオリティが大きく落ちます。水準以上と呼べるのはライヴでおなじみWrathchild、勢いのあるMurder in Rue Morgue、 緊張感あふれるタイトル曲Killers、疾走&メロディアスなPurgatoryの4曲のみ。
しかし、これらはどうもMeidenというより、Meidenの前身バンドの未発表曲のような気がするのが不思議です。確かにありますが。実際、グルーヴ感重視の曲やストレートなノリのR&Rなど本作で見られる曲調の多くはほぼ今作かぎりで消滅し、それらの要素は以後楽曲の中の一要素としてのみ生き残りました。これは1stが初期特有の荒さを残しつつも、3rd以降のMeidenにずっと近い作風でその後の彼らの音楽性の基本となったのと対照的です。


IRON MAIDEN - The Number of the Beast - The Number of the Beast ★★★ (2005-10-24 01:11:45)

アイアンメイデンのテーマソングといってよい曲。この曲以降「ビースト」がかれらの通り名になったようです。
ギラギラしたギターとベースのドライブ感が素晴らしく、独特の高揚感がある曲です。当然ライヴでは大いに盛り上がりますが、なんだか秘密宗教の祝祭(もちろんかがり火&生け贄つき)のような邪悪な熱狂を感じます。曲としては明るい方なのですが、パーティというより、悪魔のカーニバルのような不穏さです。黙示録の一節を読み上げるOPとか、最後のブルースの奇声とか…。「陽気なゴシック」とでもいうような雰囲気です。bring your daughterとかもそうですが、メイデンが明るめの曲をやるといつも妖しくなってしまうのはなぜでしょうか。


IRON MAIDEN - Somewhere in Time - Stranger in a Strange Land ★★★ (2005-10-24 00:36:08)

メイデンの知られざる傑作の代表格。エイドリアン・スミス渾身の一撃。個人的には彼のベスト曲です。何かが迫りくるようなイントロ、ノイジーかつ重厚なギターリフ、劇的かつ激情的なコーラス、なんともいえない寂寥感をたたえたギターソロ〈テクニックよりも渋み全開系)、そして圧倒的なスケール感をもつサビのメロディと、完璧な構成です。ブルースの歌唱も、凄いことになっています。ここまでヒステリックで荒々しいシャウトは、ひょっとしてこの曲だけでは?
しかしなぜこれほどの曲をライヴで出し惜しみしているのでしょうか。


IRON MAIDEN - Iron Maiden - Sanctuary ★★★ (2005-10-24 00:10:09)

シングルでの発売以来、20年余に渡ってライブのアンコール&フィナーレを飾ってきた名曲。パンクに対するメタルサイドからの応答という感じですが、中間部でのメロディアスなパートはとんでもなく盛り上がります。この曲になると私はいてもたってもいられなくなり、部屋の中でも布団の中でも、ピョンピョン跳びはねながら聴いています。