今は『Quintet: Live In Europe 1969 The Bootleg Series Vol.2』で同時期のライヴをまとめて聴けますが、長らくロスト・クインテットの音源は、この日本のみ発売のライヴ盤(邦題『1969マイルス』)だけが公式音源だったようです。 ウェイン・ショーター(sax)、チック・コリア(key)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds)を迎え、アコースティックからエレクトリックへ、ジャズから得体のしれない何かへと突き進んでいた時期の、凄絶な記録。 大学生の時に中古屋で何気なく手にし、聴いてびっくり。ジョン・ゾーンやビル・ラズウェルを聴いて、アヴァンギャルドをわかったつもりで優越感に浸っていた若造に、メインストリームのジャズの恐ろしさを思い知らせてくれました。 当時もナパーム・デスやブルータル・トゥルースといったグラインドコア・バンドと同じ感覚で聴いていましたが、いま聴き直してもやはり規格外の過激さに打ちのめされます。真のヘヴィ・ミュージック。
『Round About Midnight』や『Kind of Blue』と並んで、マイルスの名盤として有名・・・ですが、前記2枚とは全くの別物です。 いわゆる「ジャズ」なるものを期待して聴くと、だいぶ趣が違います。エレクトリックでノイジーですが、銘菓ひよこさんのおっしゃるように、フュージョンやロックとも言い難い。ファンクの影響はあっても踊れない。 実際はファンクやロックのファン層にも受けて、よく売れたアルバムのようですが、わけわからんし、けっこうダルいというのが正直なところ。 とはいえ、まずジャケが素晴らしい。LPサイズで買って、飾りたい衝動に駆られます。タイトルとあいまって、どことなく淫靡で呪術的。この圧巻の音絵巻にぴったりで、そそられます。 そしてメンバー超豪華。ウェザー・リポートと、リターン・トゥ・フォーエヴァーと、マハヴィシュヌ・オーケストラはここから派生しています(フュージョンの大元締めみたい?)。 リズム隊大増強による混沌ポリリズムと刺激的なエレキ・サウンドにとんがったホーンの突き刺さり具合は独特で、わけわかんないなりに、大音量で聴くと気持ちいい。特にタイトル曲はゾクゾクします。 聴いていて普通にかっこいいのは、皆さん挙げられている「Spanish Key」です。けっこう盛り上がります。 正直、この前後のライヴ作品(『1969 Miles Festiva De Juan Pins』や『At Fillmore』や『Live Evil』)の方が断然ノリがよくて好きですが、電化マイルスの基準点的作品として、けっこう頻繁に手の伸びるアルバムです。