シノプシスがなかったので全体の流れを掴むのが難しいが、それを差し引いても歴代のアルバムの中では一番重い、というか重すぎる仕上がり。 1曲目”By The Hammer Of Zeus"はかなり若返った印象を与えるし、前作の反省からかギターとドラムの音はかなり前面に出ています。ですが、今度は肝心のVo.が連祷のような囁きを多用するようになっており、もう少し使い分けが欲しかった…バランスをとったつもりなのかも知れないけれど。 また、3曲目”The Bread Of Wickedness"は最近の彼らには珍しく、僅か3分で完結しているものの、収録するにはやや尻切れトンボな印象。これを外して、ボーナストラックの方を入れたほうが余程良かったような気がする(この2曲では普通の歌い上げ方で、ひしひしと伝わる心情が素晴らしい!)。 物語は前作から更に進み、時折現れるリリス(神に反逆した最初の女性)がアダムとの再会を果たす(”In A Dream Of Fire")ものの結局は追いつめられ、力尽きてゆく。それは神とアダムにとって拭いがたい後悔となってゆく… ※解釈がもし違っていたら御指摘下さい! その筋の横糸のように”The Orpheus Taboo"や”Necropolis"といった曲が絡まってゆくのだが、どの曲もどこか扱い兼ねているかのように重い。とくに後者の歌詞は痛ましすぎる。 デヴィッドは現実を古典に仮託して曲を作るというが、どのような現実がこの曲を作らせたのか、出来れば知りたいくらいだ。 VIRGIN STEELE独特の、よく曲の中盤から立ち現れる奔放な変化を楽しんできた私には、正直少しきついアルバム。 ただ、先ほどの”In A Dream OF Fire”は名曲!。RUSHの”Afterimage"のおもかげを持った、定められた永訣を胸に秘めてのアップテンポ。また”Nepenth""The Tortures Of The Damned"のように寂寥の浸み出す曲も好きで、だからこそ全体の流れの悪さが残念。
このアルバムで物語の結末がついたのであれば、今度はもう少し陽あたりの感じられる世界を聴かせてほしい(彼らなら出来る筈!!)。 あと、エドワード・パーシノの参加している曲がかなり少ないのも合わせて気になる("House OF Atreus"の山場に現れるキラー・チューンには意外とこの人が作曲で絡んでいたりする)。