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1.
Usher-to-the-ETHER
★★★
(2011-08-26 22:08:34)
2010年発表の1st。
ブラックメタルなのに都会の夜の情景を切り取った、お洒落なジャケが凄く目に付いてしまって…逡巡の末に購入しましたが、これが非常に良い作品でした。
ジャケからはポスト/シューゲイザーブラックっぽさが漂ってるし、確かにロック的なリズムの導入やメロディの儚さにはそうした要素もありますが、基本的にはミディアム中心のテンポにトレモロや掻き鳴らしによる陰鬱なメロディなど、使ってるパーツは鬱ブラックそのもの。
ラストにピアノが出てきますが、本編はSEやノイズなどはおろか、キーボードさえ出てこず、ヴォーカルも全パート喉を潰したようながなりで、クリーンを使わない辺りかなり硬派な路線。疾走も絡めた、ドラマ性のある展開も、安易なミニマリズムに頼らない作曲能力を感じさせてくれ、やはり硬派だと思う。音も適度な生々しさ(低音質ではない)で、特にぼた雪のような刻みリフの音色が好み。
ただ、硬派であっても、ジャケのようなアーバンでサイケな情景描写も当然ないわけではなく、例えば2曲目冒頭のお洒落(?)なギターとベースの絡み、4曲目の何かの警告音のようなギターメロ、5曲目の気力どころか筋力まで萎えしぼんでいきそうな鬱アルペジオなど、アンサンブルやフレーズでしっかりそれを感じさせてくれるところが素晴らしい。
メロディは他の鬱ブラックに比べると、陰鬱さはあるんですが、それが自傷的だったり殺人念慮的だったり、邪悪な方に向かわず、「洗脳的」「倦怠的」な、浮遊感に向かっていっている感じがします。で、時々それが凄まじく効果的に鬱感覚を演出しているんですよね。不安感の中で宙吊りにされたままでの疾走とか、ほんとに怖さを覚えますもん。
何気にこういう、バンドサウンドのみの硬派な音でポストブラック的な浮遊感やアーバニズムを演出しつつ、リフとリズム、メロディの変化のみでドラマティックに聞かせる路線って珍しいんじゃないでしょうか。個人的にはTHRANENKINDやLIAMよりもお勧め。
ちなみにケース内にカプセルが入ってましたが…開けたら何も入ってませんでした。ハッタリでチョークの粉でも入れとけばいいのに(笑)。
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