長く続く廃盤状態のせいで、近年、中古盤の価格が急騰しているというザ・デモリションマン在籍時代のVENOM作品群。この状況を鑑みたマンタス&トニー“ザ・デモリションマン”ドーランが、『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』『THE WASTE LANDS』の3枚から選りすぐった楽曲をリ・レコーディング、更に新曲2曲も加えて'13年にMPIRE OF EVILの名の下に発表したリメイク・ベスト盤(?)がコレ。 ライブ映えを念頭に置いたのか、リメイク作業はスピーディorアグレッシブな楽曲を中心に行われていて、我が愛聴盤『TEMPLE~』からはたった1曲の選出に留まっている点は「そりゃ殺生な」ってな感じですが、まぁ名曲を山ほど抱えているバンドゆえ、どう選んだって漏れは出ますわな。 轟然たる音作りのもと新たに蘇った荒くれナンバーの数々は、速い曲はより速く、ミドルの楽曲はより禍々しく・・・といった具合に一層のビルドアップを遂げていて、トニーの野太い咆哮とBプレイ、厄いリフ・ワークからメロディックなソロ・パートまで剛柔自在のマンタスのG、それにジャクソンのエクストリーミリーなドラミングとが三位一体となった冒頭3曲、取り分けOPナンバーの“TEMPLE OF ICE”はスラッシャー及びパワー・メタラー必聴の名曲かと。この中に並ぶと新曲2曲がやや弱く聴こえてしまうのは如何ともし難いですが、それらも比較論抜きで評価すれば、バイオレントなスラッシュ・ナンバーで十分にカッコイイ。 ザ・デモリションマン時代のVENOMの再評価を促すのみならず、来るべきMPIRE OF EVILの新作に対する期待感を煽るのにも十分な1枚。出来れば『TEMPLE OF ICE』や『THE WASTE LANDS』のリマスター再発もお願いしたいところですが・・・。
「KISSのようなライブを演り、JUDAS PRIESTばりのシャープなエッジと、MOTORHEADに匹敵するラウドさを併せ持ったサウンドを追求する」というVENOM時代の身上に基づき(?)、2曲のオリジナル・ナンバーと共に、JUDAS PRIESTの“EXCITER”、MOTORHEADの“MOTORHEAD”、KISSの“GOD OF THUNDER”、それとAC/DCの“HELL AIN'T A BAD PLACE TO BE”等、彼らのルーツというべきバンドのカヴァー4曲も収録されている'10年発表のデビューEP。 カヴァーのチョイスはハッキリ言ってベタもいいところですが、とにかく個性の強い人たちが集まりゆえ、アレンジは比較的オリジナル・バージョンに忠実にも関わらず、より禍々しく、よりオドロオドロしい色合いが強く感じられる辺りは流石というか何と言うか。 また、カヴァー曲の強烈な存在感に押されて霞がちなオリジナル・ナンバーの方も、単体で聴けばVENOM時代の流儀を受け継いだ、厄いオーラを発散する剛直なメタル・ナンバーであり十分にカッコイイ。(特に4曲目の“REPTILE”は○) フル・アルバムに対する期待感を煽るには申し分ないクオリティを有した1枚。今なら1stフル『HELL TO THE HOLY』の国内盤を購入すれば漏れなく本作も付いてきますので、おつまみ感覚(?)でどうぞ。
「VENOMつったらクロノス脱退以降こそが最高ッスよ!」という自分のような人間にとっては、現行VENOMよりもテンションが上がる存在、マンタス(G)、トニー“ザ・デモリションマン”ドーラン(B、Vo)、アントン(Ds)ら、旧VENOM構成員らによって結成されたMPIRE OF EVILが'12年に発表した1stフル・アルバム。 80年代アングラ・メタル的な轟然たる音作りの下、スラッシーなリフ捌きから構築美を宿したGソロまでシャープにこなすマンタス、Bプレイも歌声も容貌同様の厳つさを誇るザ・デモリションマン、燃費の悪いアメ車が排ガス撒き散らしながらかっ飛ばしてるようなアントンの豪快なドラミングによって作り出されるサウンドは、トリオ編成とは思えぬヘヴィネスと禍々しい邪気をプンプンと発散しており、イーヴル且つ剛直な①や、ダーティで埃っぽいロックンロール・テイストも塗された⑤⑧といった疾走ナンバーは、VENOMが最もVENOMらしかった時期の音像に忠実に寄り添った作りで、彼らのファンも大満足間違いなし。か? 個人的には、この面子にはもっと後期VENOM寄りのスタイルを期待していたのですが、とは言え、スピード・メタリックなGリフとマンタス会心のGソロが駆け抜ける③や、そこはかとなくメロディアスで荘厳な⑥といった名曲もちゃんと収録されているので、総合的には十分満足行く内容なのは確か。 ちなみに初回盤は、デビューEP『CREATURES OF THE BLACK』も同梱された限定2枚組使用なので、売り切れる前にレコード屋さんへGO!・・・と書こうと思いましたが、間違っても飛ぶように売れるタイプの作品じゃないので、まぁボチボチ聴いてみて下さい。