前作の手応えを受け手なのか今作は音楽性をより大衆的なものに寄せてきた。とは言え、このバンドらしい情緒のあるパワフルなメロディは健在。前半と後半でイメージの変更を図るなど工夫を凝らしている。④はユーライアヒープも取り上げた曲があるのが、その証拠だろう。デヴィッド・デファイスがシンガーとして一本立ちしたと言える安定したパフォーマンスも功を奏し、非常にバランスの良いサウンドへと変換している。 自動登録にはないが私が知っているヴァージョンは6曲目にThe Burning of Rome (Cry for Pompeii)という楽曲があり、これが実にメロディックかつパワフルなナンバーであり、このバンドの代名詞のようなワクワクドキドキとさせる勇壮さのあるドラマティックな一曲であり、これがあるとないとで大違いだ。 今作は実にややこやしい一枚として知られる。それは90年代に再発されたものは、大幅に楽曲を追加収録、曲順も大胆に変えオリジナル盤とはガラリと試聴感が変る。どれを知っているかで評価も大きく変るだろうが、欧州風味も取り入れたアメリカンパワーメタラーの実力の程に驚かされる。 誰かの批評を永遠に上書きできない偏屈野郎の意見など、もはやイチミリも介入できないクオリティ。一瞬にして溶岩の餌食となったポンペイの悲劇を歌い上げるThe Burning of Rome (Cry for Pompeii)、パワフルな疾走ナンバー Let It Roarという流れに、今作の真の姿を垣間見るだろう。 楽曲のバラエティが広がっているので守備範囲は広い。1988年という時代をタップリと楽しめる一枚になっているだろう。 ワタクシは欠点よりも長所を愛でるタイプなので、今作は今でも年一は通して聴く一枚ですね。
ジャック・スターのプロキャリア最初の作品と言われるバンドの1st。のちに音楽性の違いでバンドを離れバンド名義も引き継げなかった男なのですが、今作ではイニシアチブを握りジャックのギタープレイをフィーチャー、RAINBOW系の楽曲からアメリカンハードありと、わりと典型的なアメリカンメタルをやっています。そこにねじ込まれるジャックが持ち込んだヨーロピアンな感性、のちにマイク・ヴァーニー主催のUSメタルなるコンピ作に提供するChildren of the Stormも収録と将来の有望株として、マイナーリーグでしのぎを削る活動をしていました。なんと言っても今作はデモ音源を叩き台に短気でレコーディングした代物、それ故に、そこまでのクオリティは期待できないが、Still in Love with Youのような大泣かせのバラードあり、男らしいメロディックメタルDanger Zone、バラードの後を引き継ぎ流れ出すドラマ性の高いChildren of the Stormなど質の高い楽曲も収録されている。 古き良きアメリカンメタル、今の主流とはかけ離れたスタイルだが、こういう音を待ち望んでいるマニアにはたまらんでしょう。まだ海のものとも山のものともつかぬ、そんなサウンドってどこか引き寄せるものがありますよね。ワタクシはこういうサウンドに焦がれます。欠点をあげつらうよりも長所を愛でるタイプなので、問題なしなのですが、メジャー流通に慣れている方には厳しいでしょうね。
ディフェイス自身もMANOWARとの共通点というか共感する部分を認めている訳ですが、そのMANOWARのロス・ザ・ボス在籍ラスト作となった名作"Kings Of Metal"収録の名曲"Hail And Kill"を敢えてこのVIRGIN STEELEの曲に当てはめるとしたらこの曲がかなぁ...なんて思うんですけど...(勿論、曲自体は全く違うけど)