本田美奈子のキャリア低迷期として、今となっては顧みられる機会もないMINAKO WITH WILD CATSが’89年に発表した2ndアルバムにして末期の1枚。 一応はバンド名義なのに相変わらず本田以外のメンバー表記はなし、更に豹柄衣装を身に纏った彼女をジャケットに戴き、『豹的』と書いて『TARGET』と読ませる昭和最後の年/平成最初の年のセンスに冷や汗が垂れる向きもあるやもしれませんが、“あなたと、熱帯”みたいな芸能界的ノリの楽曲が姿を消した今作は、前作以上にメロディアス・ロック路線で統一が図られており、キャッチーな“HEARTS ON FIRE”、哀愁を湛えた“WALK AWAY”、ドラマティックなバラード“愛が聞こえる”等、本田の卓越した歌唱力を生かした楽曲が並ぶ本編は聴き応え十分の仕上がりとなっています。 その一方で、THE BEATLESの名曲“HELTER SKELTER”、カナダ出身の女性ロック・シンガー、リー・アーロン/JOURNEYのジョナサン・ケイン/WRABITのジョン・アルバニ共作曲“HEAT ON ME”、スタン・ブッシュとジョナサン・ケインという稀代のメロディ・メイカーのペンによる“SURRENDER”を日本語詞で収録する等、カヴァー曲多めの構成となっているのは、当時の彼女の洋楽志向の発露ゆえか、単に制作時間がなく弾数不足だっただけなのか?ともあれ、いずれも優れた楽曲なのでカヴァー自体に文句はありませんし、難曲として知られる“HELTER SKELTER”に果敢に挑むを様を聴けば、「アイドル上がりでしょ?」ってな偏見もぶっ飛ばされるというものじゃないでしょうか。 この路線でもう2、3枚はアルバムを聴いてみたかったですよ。