1988年8月25日、Elektra Recordsよりリリースされた4thアルバム。
ヨーロッパでは初のヘッドライナーとしてのツアー中にバンドは悲劇に見舞われる。1986年9月27日早朝、スウェーデンからデンマークへ向けて移動中、就寝中のMetallicaのメンバー及びクルーを乗せたツアー用のバスが路面凍結でスリップし、横転。その際Cliff Burtonは窓から投げ出され、バスの下敷きとなり24歳の若さで即死した。クレーンでバスを持ち上げるのを彼らが待っているあいだ、Hetfieldはスリップさせたものを探しに道を駆け出して行った。彼はその夜、2つのホテルの窓をぶち壊した。カードゲームでCliffと寝場所を競ったことで生死を分けてしまったKirk Hammetはとても動揺していたため、電気をつけたまま眠りについた。このことは後年、彼のトラウマになってしまう。Guitar Worldはベーシストの葬儀が10日後にベイエリアで行われ、葬儀のあいだ「Orion」が流されていたことを報じた。運転手は過失致死罪で起訴されたが、飲酒と居眠りの疑いがあるにも関わらず有罪判決にはならず、事故は道路に張っていた薄氷のせいとされた。James HetfieldとKirk Hammetは運転手に向かって叫んだという。因みに、Lars Ulrich以外の3人は当時「俺らはLarsにムカついてた」らしく、「ツアーが終わったらLarsをクビにするつもりだ」とAnthraxのメンバーに打ち明けられていたが、Cliffの急逝によりバンドはそれどころではなくなった。
Cliffを失ったバンドメンバーは落ち込むが、彼の為にも活動を存続することを決意、新しいベーシスト探しを始める。だが、Cliffのプレイは他人にはコピーできない程、特徴的かつアグレッシヴであったため、何人もの候補者をあたる必要があった。結果、元Flotsam and JetsamでベースをプレイしていたJason Newstedが加入する事となったが、Jasonの演奏スタイルはピック奏法のみであり、Cliffとは正反対といって良いタイプである。
Jason Newsted加入後としては初のオリジナルアルバムの制作にあたり、メンバーはCliffの死の悲しみをずっと引きずってたせいかJasonにかなりつらく当たったり、彼の音楽的アイデアを却下したり、レコーディングでほとんど彼のベースが目立たないようにミックスした。このベースの音がほとんど聴こえないミックスのため、本作は物議を醸した。
変拍子の多用や大作指向の楽曲から、allmusicでは「Metallicaの作品中最も複雑で野心的」と評されている。
タイトル・ナンバーは、同名の原題で、腐敗した法曹界を描いた映画『...And Justice for All』にインスパイアされた。ジャケットも、ギリシア神話の法・掟の女神、テミスの石像が縄で縛られ、持っている天秤は金によって傾けられている、という皮肉が込められている。
その他に、腐敗や核戦争など、アルバムを通しての社会的なテーマが強く、従来のヘヴィメタル・バンドのどうしようもない歌詞(ファンタジー、ドラッグやアルコール、自動車や二輪車、性的な内容)と比べ、知的であると新聞等のメディアに取り上げられた。
シングル「One」は、メタリカにとって初のミュージック・ビデオが制作され、同曲はグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス部門を受賞。
2003年までに米国だけで800万枚以上を売り上げている。
Recorded:January–May 1988 at One on One Recording Studios in Los Angeles
Produce:Metallica, Flemming Rasmussen