事件に巻き込まれ記憶を失った少女の実話をモチーフにした'94年発表のコンセプト・アルバムで、PINK FLOYD的なプログレッシヴ・ロックを英国特有の叙情的サウンドで聴かせてくれる。 中でもスティーヴ・ホガースのウェットで力強い歌声とスティーヴ・ロザリーの流麗なギターは絶品で、達人の域に達していると言っていい。 目の前に情景が広がってくるような「BRIDGE」に幕を開け、地味ながらもウェットで美しいサウンドが続いていくが、ドラマティックな曲展開の「GOODBYE TO ALL THAT」、慟哭のような歌唱がパワフルな「HARD AS LOVE」、歌声とギターが美しくメロディアスな「ALONE AGAIN IN THE LAP OF LUXURY」、明るくスウィングするような「PAPER LIES」、圧倒的な説得力を持つ歌声と流麗なギターが圧巻の「THE GREAT ESCAPE」等、決してとっつき易いアルバムでは無いものの、「これぞ英国ロック!」とサウンドが主張しているようである。
この作品が持つ濃い世界観に浸かりきったまま、気がつけば70分超。 常に漂う緊張感に魅了され、時間を忘れて聴き入ってしまいます。 そして、最後の⑪"Made Again"を聴き終ると、優しい感動に包まれ、 まるで一つの素晴らしい物語を読んだ後のように、余韻にどっぷりと浸りたくなります。 このような芸術作品こそ、時間をかけて集中して鑑賞するに値すると感じます。 …と、いたずらにハードルを高くしている気もしますが、決して複雑な曲構成なわけでもないので、 プログレ系が苦手な人でも、そんなに構えて聴かなくても大丈夫だと思いますよ。 個人的には、まずは、③"Runaway"や⑦"Alone Again In The Lap Of Luxury"のような、 比較的分かりやすい抒情的な曲を聴いてみて気に入ったのなら、ぜひとも勧めたいです。