本業(JOURNEY)の合間を縫って定期的にソロ活動にも精を出すニール・ショーン(G)。本作は彼がHIGHER OCTIVE MUSICから発表した通算4作目となるソロ・アルバム。 形態としてはカヴァー・アルバムなのですが、珍しいのは収録曲の大半が比較的新しい90年代のヒット曲(アルバム・リリースが'01年なので、ほぼほぼ10年以内の楽曲ばかり)で占められている点。しかもマライア・キャリーの②、ブライアン・アダムスの③、サラ・ブライトマンが“TIME TO SAY GOODBYE”としてカヴァーした⑧、あるいは映画『タイタニック』の主題歌⑨とか、本来なら歌が主役であるポップ・ソングの数々を、「俺のギターが歌の代わり」とばかりに、インスト曲として再構成してしまっている大胆不敵さ。神経が太いというか、よほど己のギターの腕前に自信がなければやれない所業ですよ、これは。 そして実際、例えば誰しもがセリーヌ・ディオンの「エンダァァァ!」のハイトーン・シャウトを期待しているであろう⑨のような楽曲すらも、美しく官能的なフレーズ・センスを駆使してきっちりインスト・ナンバーとして翻案し、魅力的に成立させてしまっているのですから流石ニール・ショーン、凡人とはリーグが違う。個人的に特にグッと来たのは、ルチオ・ダッラの名曲①(布施明も“慟哭”のタイトルで熱唱してましたっけ)と、カーペンターズがヒットさせたことで知られる⑩という、本編の最初と最後を〆る2曲。どちらも絶品の泣きが溢れ出すエモーショナルなGプレイに心が蕩けるかと思いですよ。 『VOICE』のタイトルに相応しく、全編に亘ってニール・ショーンの雄弁に「歌う」ギターを堪能できる、グラミー賞ノミニーも納得の1枚。